説明

エレクトレット性微粒子の製造方法

【課題】エレクトレット性微粒子の製造方法であって、従来の粉砕や分級を必要とせず、微粒子であっても簡便且つ効率的に製造できる方法を提供する。
【解決手段】常圧又は加圧下で液状の含フッ素化合物を、当該含フッ素化合物が相溶しない液体中で乳化することにより乳化粒子とし、当該乳化粒子に電子線又は放射線を照射することによりエレクトレット性微粒子を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルカラーの電気泳動表示装置(いわゆる電子ペーパー)に用いる泳動粒子として有用なエレクトレット性微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、荷電微粒子(エレクトレット性微粒子)の電気泳動による電気泳動表示方法が、次世代表示装置の最適技術と考えられている。しかしながら、荷電微粒子の形状、帯電電位(ζ電位)が小さく不安定なこと、泳動粒子の二次凝集や沈殿、前歴表示画像の消去や応答速度が不十分である等の多くの課題を抱えている。
【0003】
特許文献1、2には、画像表示装置用粉体としてエレクトレット性微粒子が記載されている。具体的には、特許文献1には、作製したエレクトレット材料(例えばフィルム)を粉砕して正帯電性又は負帯電性のエレクトレット性微粒子を製造することが記載されている。このような粉砕により得られる粒子は粒子径が大きく、分級が必要となるので製造の歩留まりが悪い。また、特許文献2にも樹脂の粉砕、分級が必要なエレクトレット性微粒子の製造方法が記載されており、特許文献1と同じ問題がある。特許文献2には、その他の製造方法として、電圧を印加しながら樹脂を溶融状態で空気中又は液体中に押出し、又は噴霧により粒子を得る方法が記載されている。しかしながら、この方法でも押出し口の寸法の限界や噴霧された粒子どうしの付着・凝集の課題があり、微粒子化に限界があり、効率的な製造が困難であるとされている。
【0004】
従って、エレクトレット性微粒子の製造方法であって、従来の粉砕や分級を必要とせず、微粒子であっても簡便且つ効率的に製造できる方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−31189号公報
【特許文献2】特開2007−206570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、エレクトレット性微粒子の製造方法であって、従来の粉砕や分級を必要とせず、微粒子であっても簡便且つ効率的に製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべき鋭意研究を重ねた結果、常圧又は加圧下で液状の含フッ素化合物又は含フッ素重合性化合物を乳化することにより微粒子化する場合には上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記のエレクトレット性微粒子の製造方法に関する。
1.常圧又は加圧下で液状の含フッ素化合物を、当該含フッ素化合物が相溶しない液体中で乳化することにより乳化粒子とし、当該乳化粒子に電子線又は放射線を照射することによりエレクトレット性微粒子を製造する方法。
2.前記乳化粒子をマイクロカプセル化し、当該マイクロカプセル粒子に電子線又は放射線を照射する、上記項1に記載の製造方法。
3.前記マイクロカプセル粒子を電気泳動媒体に再分散させて電子線又は放射線を照射する、上記項2に記載の製造方法。
4.常圧又は加圧下で液状の含フッ素重合性化合物を、当該含フッ素重合性化合物が相溶しない液体中で乳化することにより乳化粒子とし、当該乳化粒子を硬化させた後、当該硬化粒子に電子線又は放射線を照射することによりエレクトレット性微粒子を製造する方法。
5.前記硬化粒子を電気泳動媒体に再分散させて電子線又は放射線を照射する、上記項4に記載の製造方法。
6.前記乳化粒子をマイクロカプセル化した後に硬化させる、上記項4又は5に記載の製造方法。
7.前記硬化粒子をマイクロカプセル化した後に電子線又は放射線を照射する、上記項4又は5に記載の製造方法。
8.前記乳化粒子が疎水性顔料を含有する、上記項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
9.前記含フッ素化合物及び/又は前記含フッ素重合性化合物が相溶しない液体が電気泳動媒体である、上記項1、2、4、6〜8のいずれかに記載の製造方法。
10.前記エレクトレット性微粒子の平均粒子径が0.01〜20μmである、上記項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【0009】
以下、本発明のエレクトレット性微粒子の製造方法について詳細に説明する。
【0010】
本発明のエレクトレット性微粒子の製造方法は、第1態様の含フッ素化合物(非重合性)と第2態様の含フッ素重合性化合物を用いる場合に大別される。
(第1態様)
第1態様の製造方法は、常圧又は加圧下で液状の含フッ素化合物を、当該含フッ素化合物が相溶しない液体中で乳化することにより乳化粒子とし、当該乳化粒子に電子線又は放射線を照射することによりエレクトレット性微粒子を製造する。なお、加圧下で液状の含フッ素化合物は、温度0〜100℃程度、圧力5〜30bar程度で液体のものが好適に利用でき、その場合には液体となる条件下において乳化粒子を調製する。含フッ素化合物としては、公知のフッ素系樹脂、フッ素系オイル、フッ素系接着剤等が広く利用できる。
【0011】
上記フッ素系樹脂としては、四フッ化エチレン樹脂等が挙げられる。具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)「FRC=R=F又はH、R=F又はH又はCl又は任意」等が挙げられる。
【0012】
上記フッ素系オイルとしては、パーフルオロポリエーテルオイル、三フッ化塩化エチレン低重合体等が挙げられる。具体例としては、パーフルオロポリエーテルオイル(商品名「デムナム」ダイキン工業製)、三フッ化塩化エチレン低重合体(商品名「ダイフロイル」ダイキン工業製)等が挙げられる。
【0013】
上記フッ素系接着剤としては、紫外線硬化型フッ素化エポキシ接着剤等が挙げられる。具体例としては、(商品名「オプトダイン」ダイキン工業製)等が挙げられる。
【0014】
上記含フッ素化合物が相溶しない液体としては限定的ではないが、例えば、水、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、グリセリン、シリコーンオイル等が挙げられる。これらの中から、用いる含フッ素化合物に応じて適宜選択する。含フッ素化合物が相溶しない液体は、いわゆる電気泳動媒体を用いてもよい。電気泳動媒体としては、例えば、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、グリセリン、シリコーンオイル、フッ素系オイル、石油系オイル等が挙げられる。上記シリコーンオイルとしてはジメチルシリコーンオイル等が挙げられる。また、上記フッ素系オイルとしてはパーフルオロポリエーテルオイル等が挙げられる。
【0015】
乳化に用いる乳化剤としては、ポリビニルアルコール、エチレン無水マレイン酸等が挙げられる。乳化剤の含有量は、上記含フッ素化合物が相溶しない液体中に1〜10重量%程度とすることが好ましい。乳化粒子を調製する際は、これらの成分を攪拌機、ミキサー、ホモジナイザー等の公知の混合機に投入し、均一に混合することによって調製することができる。この場合、加熱しながら混合することが好ましい。
【0016】
予め含フッ素化合物に疎水性顔料を配合しておくことにより、着色された乳化粒子を得ることができる。この場合には、最終的に着色されたエレクトレット性微粒子が得られ、フルカラーの電子ペーパー材料として有用である。
【0017】
疎水性無機顔料としては限定されないが、例えば、炭素を主成分とする黒色顔料として、カーボンブラック、油煙、ボーンブラック、植物性黒等が挙げられる。また、白色顔料として、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化珪素等が挙げられる。これらの白色顔料は、白色泳動粒子の製造や粒子比重調整のために適宜使用できる。
【0018】
疎水性有機顔料としては限定されないが、例えば、β−ナフトール系、ナフトールAS系、アセト酢酸、アリールアミド系、ピラゾロン系、アセト酢酸アリールアミド系、ピラゾロン系、β−ナフトール系、β−オキシナフトエ酸系(BON酸系)、ナフトールAS系、アセト酢酸アリリド系のアゾ顔料が挙げられる。また、フタロシアニン系、アントラキノン系(スレン系)、ペリレン系・ペリノン系、インジゴ系・チオインジゴ系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、金属錯体顔料、メチン・アゾメチン系、ジケトピロロピロール等の多環状顔料が挙げられる。その他、アジン顔料、昼光蛍光顔料(染料樹脂固溶体)、中空樹脂顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料等が挙げられる。
【0019】
具体的な市販品としては、DIC(株)製のSymuler fast yellow 4GO、Fasdtogen super magenta RG、Fasdtogen blue TGRや、富士色素(株)製のFuji fast red 7R3300E、Fuji fast carmine 527等が挙げられる。
【0020】
これらの疎水性顔料の粒子径としては、0.02〜20μm程度が好ましく、0.02〜3μm程度がより好ましい。
【0021】
乳化により得られる乳化粒子の平均粒子径は限定されないが、0.01〜20μm程度が好ましく、0.1〜5μm程度がより好ましい。
【0022】
乳化粒子はそのまま電子線又は放射線によりエレクトレット化しても良いが、マイクロカプセル化した後にエレクトレット化することが好ましい。その場合は、乳化粒子をマイクロカプセルの壁材原料と混合・撹拌することにより容易にマイクロカプセル化できる。
【0023】
マイクロカプセルとしては、内包物が乳化粒子である以外は公知のマイクロカプセルと同様の構造を採用できる。例えば、乳化粒子を壁膜で内包したマイクロカプセルである。
【0024】
壁膜としては、通常は樹脂系壁膜を好適に採用することができる。樹脂としては、例えば各種の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を使用するこができる。より具体的には、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、尿素−ホルムアルデヒド系樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、ブチル化尿素樹脂、尿素−メラミン系樹脂等が挙げられる。これら樹脂成分は1種又は2種以上で使用することができる。マイクロカプセルを製造する際は、これらの原料を用い、これらを高分子化することにより好適にマイクロカプセル化することができる。
【0025】
マイクロカプセル化の方法としては、例えば、界面重合法(重縮合、付加重合)、インサイチュー重合法、コアセルベーション法、液中乾燥法、噴霧乾燥法等が挙げられる。
【0026】
具体的に、マイクロカプセル化の一例(インサイチュー重合法)としては、例えば、1)上記含フッ素化合物(実施例における油相)を撹拌する第1工程、2)上記含フッ素化合物が相溶しない液体と乳化剤との混合物(実施例における水相)を撹拌する第2工程、3)上記水相を撹拌しながら油相を混合することにより乳化粒子を調製する第3工程、4)乳化粒子のエマルションに壁膜原料となる上記樹脂を添加して加熱撹拌する第4工程を含む方法により、好適にマイクロカプセルを製造することができる。
【0027】
乳化粒子又はマイクロカプセル粒子は、懸濁状態のまま又は電気泳動媒体に再分散させた状態で電子線又は放射線を照射してエレクトレット化させることができる。電子線又は放射線の照射条件は粒子をエレクトレット化できる限り限定されない。例えば、電子線加速器を用いて10〜50kGy程度の電子線を照射すればよい。また、放射線については、例えば、1〜15kGy程度のガンマ線を照射すればよい。
【0028】
上記過程を経て、好適な実施態様においては、0.01〜20μm程度の均一性の高いエレクトレット微粒子が効率的に得られる。本発明の製造方法によれば、従来の粉砕及び分級が不要であり、ほぼ全ての乳化粒子が一定以上の荷電粒子(負電荷)となり均一性の高い粒子径のエレクトレット微粒子が歩留まり良く簡便に得られる。
(第2態様)
第2態様の製造方法は、常圧又は加圧下で液状の含フッ素重合性化合物を、当該含フッ素重合性化合物が相溶しない液体中で乳化することにより乳化粒子とし、当該乳化粒子を硬化させた後、当該硬化粒子に電子線又は放射線を照射することによりエレクトレット性微粒子を製造する。なお、加圧下で液状の含フッ素重合性化合物は、温度0〜100℃程度、圧力5〜30bar程度で液体のものが好適に利用でき、その場合には液体となる条件下において乳化粒子を調製する。含フッ素重合性化合物としては、公知のフッ素系エラストマー、フッ素塗料ワニス、重合性フッ素樹脂等が広く利用できる。
【0029】
上記フッ素系エラストマーとしては、直鎖状フルオロポリエーテル化合物が挙げられる。具体例としては、(商品名「SIFEL3590−N」、「SIFEL2610」、「SIFEL8470」いずれも信越化学工業製)等が挙げられる。
【0030】
上記フッ素塗料ワニスとしては、四フッ化エチレン/ビニルモノマー共重合体(商品名「ゼッフル」ダイキン工業製)等が挙げられる。
【0031】
上記重合性フッ素樹脂としては、重合性アモルファスフッ素樹脂(商品名「CYTOP」旭硝子製)等が挙げられる。
【0032】
上記含フッ素重合性化合物が相溶しない液体としては限定的ではなく、上記含フッ素化合物が相溶しない液体として例示したものが使用できる。また、乳化剤や疎水性顔料についても前記と同じものが使用できる。乳化により得られる乳化粒子の平均粒子径は限定されないが、0.01〜20μm程度が好ましく、0.1〜5μm程度がより好ましい。
【0033】
第2態様では乳化粒子を加熱又は紫外線照射等により硬化させる。加熱硬化の場合には、例えば、80℃程度で1時間加熱して硬化させればよい。また、紫外線照射による場合は、波長365nmの紫外線を1〜2J/cm程度照射して硬化させればよい。
【0034】
乳化粒子は硬化させる前後に必要に応じてマイクロカプセル化することができる。マイクロカプセル化の方法については前記と同じである。
【0035】
硬化粒子又はマイクロカプセル粒子は、懸濁状態のまま又は電気泳動媒体に再分散させた状態で電子線又は放射線を照射してエレクトレット化させることができる。電子線又は放射線の照射条件は粒子をエレクトレット化できる限り限定されない。例えば、電子線加速器を用いて10〜50kGy程度の電子線を照射すればよい。また、放射線については、例えば、1〜15kGy程度のガンマ線を照射すればよい。
【0036】
上記過程を経て、好適な実施態様においては、0.01〜20μm程度の均一性の高いエレクトレット微粒子が効率的に得られる。本発明の製造方法によれば、従来の粉砕及び分級が不要であり、ほぼ全ての乳化粒子が一定以上の荷電粒子(負電荷)となり均一性の高い粒子径のエレクトレット微粒子が歩留まり良く簡便に得られる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の製造方法によれば、従来の粉砕及び分級が不要であり、均一性の高い粒子径のエレクトレット微粒子が簡便に得られる。このようなエレクトレット微粒子は、電子写真用トナー、電子ペーパー用エレクトレット微粒子として有用であり、しかもエレクトレットによる大きな電荷付与により書き換え速度が速く、均一性の高い微粒子であることにより精細な画像が得られ易い。その他、エレクトレット繊維、不織布、濾材(フィルタ)、集塵袋、エレクトレットコンデンサマイクロフォン等の材料としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1(配合A)、実施例2(配合B)で得られたマイクロカプセル微粒子のSEM観察像及び粒度分布測定結果を示す図である。
【図2】実施例3(配合C)、実施例4(配合D)、実施例5(配合E)で得られたマイクロカプセル微粒子のSEM観察像及び粒度分布測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に調製例及び試験例を示して本発明を具体的に説明する。但し本発明は調製例及び試験例に限定されない。
【0040】
調製例で用いたフッ素化合物(フッ素系オイル)及びフッ素重合性化合物(フッ素系エラストマー)の種類及び物性は次の表1、表2の通りである。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
調製例1〜2(マイクロカプセル微粒子の調製)
下記表4に示す配合A、B、A’(A’はAに顔料(Fastgen super magenta RG)を添加した組成である)の原料混合物を用意した。
【0045】
【表4】

【0046】
調製手順は次の通りとした。
【0047】
水相成分を常温で15分撹拌後、75℃で1時間加熱撹拌し、常温で冷却した。これを水相とする。
【0048】
メラミンにイオン交換水を添加し加熱攪拌(65℃、1000rpm、5分)した後、ホルマリンを添加して加熱攪拌(65℃、1000rpm、15分)した。これを壁材とする。
【0049】
上記水相に、油相を攪拌しながら添加した(20℃、1500rpm、5分)。この水相と油相の混合物を75℃に加温し、壁材を添加して加熱攪拌(65℃、1000rpm、2時間)した。これによりマイクロカプセル微粒子が分散した懸濁液を得た。上記マイクロカプセル微粒子のSEM観察像及び粒度分布測定結果を図1に示す。
【0050】
調製例3〜5(重合微粒子の調製)
下記表5に示す配合C、D、E、F、C’の原料混合物を用意した。(C’はCに顔料(Symuler fast yellow)を添加した組成である)
【0051】
【表5】

【0052】
調製手順は次の通りとした。
【0053】
フッ素系エラストマー(配合例C、D、E、C’)又はフッ素塗料ワニス(配合例F)を乳化液に入れてホモミキサにより撹拌した(6000rpm、6分)。その後、乳化液をディゾルバーで加熱撹拌した(300rpm、80℃、8時間)。これにより微粒子が分散した懸濁液を得た。上記微粒子のSEM観察像及び粒度分布測定結果を図2に示す。
【0054】
試験例1(電気泳動試験)
調製例1〜5で得られた微粒子をそれぞれ白色絶縁性液体(シリコンオイル、KF96L−0.65、信越化学工業製)に分散した。
【0055】
7cm四方のPETフィルム(テイジン製マイラー850、厚み15〜30μm)に各分散液を2ccずつ包含し、四方をヒートシールした。全体の厚みは0.5〜1μmとなるようにした。次に、電子線加速器を用いて電子線照射(400keV、150μAの条件で10分間)することにより各分散液をエレクトレット化した。これにより、エレクトレット性微粒子分散液(5種類)のサンプルを得た。
【0056】
比較のため、電子線照射をしないサンプル(5種類)も作製した。
【0057】
各サンプル及び比較サンプルの両端をクリップで挟み、高圧電源の端子につないだ。クリップ間に2000Vの電圧をかけて電気泳動の様子を観察した。
【0058】
その結果、エレクトレット化した各サンプルは、規則的且つ高速に電気泳動し、全て+極に移動した。他方、エレクトレット化しない各サンプルは、不規則に電気泳動し、+極に移動するものや−極に移動するものがあった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常圧又は加圧下で液状の含フッ素化合物を、当該含フッ素化合物が相溶しない液体中で乳化することにより乳化粒子とし、当該乳化粒子に電子線又は放射線を照射することによりエレクトレット性微粒子を製造する方法。
【請求項2】
前記乳化粒子をマイクロカプセル化し、当該マイクロカプセル粒子に電子線又は放射線を照射する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記マイクロカプセル粒子を電気泳動媒体に再分散させて電子線又は放射線を照射する、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
常圧又は加圧下で液状の含フッ素重合性化合物を、当該含フッ素重合性化合物が相溶しない液体中で乳化することにより乳化粒子とし、当該乳化粒子を硬化させた後、当該硬化粒子に電子線又は放射線を照射することによりエレクトレット性微粒子を製造する方法。
【請求項5】
前記硬化粒子を電気泳動媒体に再分散させて電子線又は放射線を照射する、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記乳化粒子をマイクロカプセル化した後に硬化させる、請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記硬化粒子をマイクロカプセル化した後に電子線又は放射線を照射する、請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記乳化粒子が疎水性顔料を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記含フッ素化合物及び/又は前記含フッ素重合性化合物が相溶しない液体が電気泳動媒体である、請求項1、2、4、6〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記エレクトレット性微粒子の平均粒子径が0.01〜20μmである、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−12222(P2011−12222A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159760(P2009−159760)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(390039734)株式会社サクラクレパス (211)
【Fターム(参考)】