説明

エレクトロウェッティングおよび誘電泳動を利用した、液体制御用アクティブマトリクス装置および駆動方法

【課題】駆動メカニズム(EWODまたはDEP)を、任意の時点にてアレイ素子に含まれる各列に応じて個別に選択可能なように構成されたアクティブマトリクス駆動回路を提供する。
【解決手段】マイクロ流体装置は、アレイ上の1個または複数の液滴4を操作するように構成されている複数のアレイ素子43と、アクティブマトリクス駆動回路84とを備えており、各アレイ素子は、上部基板36上に形成されている上部基板電極28と、下部基板72上に形成されている駆動電極38A、38Bとを含んでおり、上記上部基板電極および上記駆動電極の間に上記1個または複数の液滴を配置可能であり、上記アクティブマトリクス駆動回路は、上記複数のアイレ素子の、上記上部基板電極および上記駆動電極に駆動信号を与え、上記複数のアレイ素子の間で、上記1個または複数の液滴を操作するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブマトリクスアレイおよび当該アレイの素子に関する。本発明は、その一態様において、デジタルマイクロ流体工学に関し、より詳細には、アクティブマトリクス型の誘電体エレクトロウェッティング(AM−EWOD:Active Matrix Electrowetting-On-Dielectric)に関する。ここで、誘電体エレクトロウェッティング(EWOD:Electro-Wetting-On-Dielectric)とは、アレイ上の液滴を操作する公知の技術である。アクティブマトリクスEWOD(AM−EWOD)は、EWODを、アクティブマトリクスアレイにおいて、例えば薄膜トランジスタ(TFT)を利用して、実施することを指す。また、本発明は、上述の装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体エレクトロウェッティング(EWOD)は、電場の印加によって液滴を操作する公知の技術である。ゆえに、EWODはラボオンチップ(lab-on-a-chip)技術に関するデジタルマイクロ流体工学に対して好適な技術である。上記技術の基礎的な原理への導入は、「“Digital microfluidics: is a true lab-on-a-chip possible?”,R. B. Fair,Microfluid Nanofluid (2007年)第3巻245-281」に見出すことができる。
【0003】
米国特許6565727号(A. Shenderov; 2003年5月20日発行)には、液滴を、アレイを通して移動させるためのパッシブマトリクス型のEWOD装置が開示されている。
【0004】
米国特許6911132号(V. Pamula et al.; 2005年6月28日発行)には、2次元での液滴の位置および移動を制御するための2次元EWODアレイが開示されている。
【0005】
さらに、米国特許6565727号には、液滴の分割および結合ならびに液滴および他の物質の混合を含む他の液滴操作方法が開示されている。また、一般的に、典型的な液滴操作には、高電圧が必要とされる。ここで、従来技術(例えば、米国特許7329545号(Pamula et al.; 2008年2月12日発行))には、当該電圧の値を20V〜60Vの範囲にすることが開示されている。また、当該値の必要値は、絶縁体および疎水層(疎水面)の製造に利用される技術に依存して定まる。
【0006】
ここで、EWOD駆動メカニズムの特筆すべき特徴としては、固体表面に対する液滴の接触角が、駆動電圧の平方に依存する点を挙げることができる。つまり、印加する電圧の正負の符号は、直接的に重要ではない。このため、EWODは、交流または直流の駆動スキームにより実現することができる。
【0007】
ここで、EWODを交流駆動スキームにより実現することには、以下のような利点がある。
・装置の寿命劣化の抑制
・絶縁体の信頼性の改善
・液滴ダイナミクスの改善
このため、EWODを研究するグループの大半は、交流駆動スキームを利用しており、典型的な駆動周波数としては10kHz以上を利用している。
【0008】
最近の液晶(LC)ディスプレイの多くでは、アクティブマトリクス(AM)構成を利用しており、この構成により薄膜トランジスタが、液晶層に作用する電荷を維持している。
【0009】
ここで、LCディスプレイでは、一般的に、液晶に印加する電圧は、交番(反転)されることが好ましい。これは、直流電場を適用することにより、LCを構成する物質に悪影響が及ぶためである。大半のLC反転スキームにおいては、ディスプレイに書き込まれる情報のフレームごとに、印加しているLC電圧の正負の符号を反転させる操作が行われている。ここで、当該反転操作の周波数は、典型的には、50Hz〜60Hzの範囲の値をとる。
【0010】
「“Ultra-Low Power System-LCD with Pixel Memory Circuit”,Matsuda et al.,Proceedings of IDW ’09, AMD1-2」には、ピクセルメモリ駆動スキームを備えたLCDが開示されている。ここで、ピクセルメモリとは、ピクセルに含まれるSRAMメモリセルを利用して、ディスプレイに書き込まれるデータを記憶する技術のことである。つまり、当該ディスプレイは、黒または白を表示できるだけの1ビットディスプレイであって、階調を有するグレーレベルを表示できるわけではない。このような構成による利点としては、ディスプレイに書き込まれる電圧を繰り返しリフレッシュする必要を抑制し、消費電力を低減可能である点を挙げることができる。ここで、LC層に印加する電圧の反転を機能させるためには、ピクセル内に反転回路をさらに追加する必要がある。これにより、反転の周波数を、ディスプレイのデータリフレッシュレートよりも高くすることができる。
【0011】
米国特許第7163612号(J. Sterling et al.; 2007年1月16日発行)には、AMディスプレイ技術において援用される構成と非常に似た回路構成により、EWODアレイに与える電圧パルスのアドレッシングを制御する、TFTベースの電子回路を利用する構成が開示されている。
【0012】
このようなアプローチを、“アクティブマトリクス型の誘電体エレクトロウェッティング”(AM−EWOD:Active Matrix Electro-Wetting On Dielectric)と呼ぶことができる。ここで、TFTベースの電子回路を利用したEWODアレイの制御においては、以下のような利点がある。
・駆動回路を、AM−EWODアレイ基板上に集積することができる点
・TFTベースの電子回路は、AM−EWOD用途に好適である点
・比較的大きいエリアを有している基板は比較的低コストで製造できるため、TFTベースの電子回路も安価となる点
標準的なプロセスにおいて製造されるTFTは、標準的なCMOSプロセスにおいて製造されるトランジスタよりも、高い電圧で動作するように設計されている。多くのEWOD技術において、EWOD駆動電圧として20Vを超える電圧が必要とされるため、TFTが高い電圧で動作するように設計されていることは、重要である。
【0013】
液滴マイクロ流体工学を実現するための他の技術として、誘電泳動(DEP;Dielectrophoresis)が挙げられる。誘電泳動とは、誘電性の粒子に対して、変化する電場を作用させることにより、当該誘電性の粒子に力を作用させることができる現象である。
【0014】
EWODが面の性質と関係する接触線に基づく現象であることとは異なり、DEPは、誘電性の粒子および当該粒子を取り巻く媒体の、異なる分極率と関係するバルク的な現象である。ここで、「“Integrated circuit/microfluidic chip to programmably trap and move cells and droplets with dielectrophoresis”,Thomas P Hunt et al,Lab Chip,2008年,8,81-87」には、デジタルマイクロ流体工学に適用可能な誘電泳動アレイを駆動するシリコン集積回路(IC)バックプレーンが開示されている。また、当該文献には、図1に示すような、アレイ素子に交流波形を印加するための集積回路が開示されている。当該回路は、データを書き込み・保存可能である標準的なSRAMメモリセル104、スイッチ回路106、および出力バッファステージ108から構成されている。ここで、スイッチ(トランジスタ)110およびスイッチ112を操作することにより、交流信号Vpix(この例では、5Vかつ1MHzの矩形波として示されている)またはVpixを反転した相補的な信号のいずれかが、ピクセルに書き込まれる。また、当該文献には、DEPの物理的性質の概要が開示されている。また、当該文献には、DEP力がどのように電場の勾配の平方、粒子および誘電性の媒体の複素誘電率、ならびに幾何的な要因に依存するかについても開示されている。
【0015】
「“Lab Chip”,2008年,8,1325-1331(Fan et al,2008年5月28日)”」は、EWODおよびDEPがどのようにパッシブEWOD装置として実現されるかについて開示している。ここで、当該装置は、液滴および液滴に含まれる粒子(の移動)の双方を制御する。図2は、当該装置に含まれる電極の基本的な配置を示す図である。ここで、大型の正方形の電極48は、EWOD駆動メカニズムにより液滴の位置を操作することに利用される。なお、EWOD駆動メカニズムは、よく知られたメカニズムである。また、より小型の方形の電極50は、DEP駆動計測により液滴に含まれる誘電性の粒子を操作することに利用される。当該操作は、例えば、誘電性の粒子を液滴の片側に集中化させる操作であってもよい。
【0016】
ここで、このようなEWODおよび/またはDEPを実現するためのパッシブアーキテクチャにおいては、別々の配線(例えば、52)を各電極に対して個別に設けなければならない点が、特筆すべき不利な点であると言える。これにより、アレイに含まれる個別に制御可能な素子の総数が、装置の電気的な入力の数により制限される。このため、大型のアレイを実現することが、非現実的になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明では、駆動メカニズム(EWODまたはDEP)を、任意の時点にてアレイ素子に含まれる各列に応じて個別に選択可能なように構成されたアクティブマトリクス駆動回路を提供することを目的とする。また、本発明では、液滴に作用させる駆動信号は、液滴をEWODにより操作する直流電圧信号もしくは低周波数の交流電圧信号、または液滴をDEPにより操作する高周波数の交流電圧信号のいずれかから選択できる駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様によれば、アレイ上の1個または複数の液滴を操作するように構成されている複数のアレイ素子と、アクティブマトリクス駆動回路とを備えており、各アレイ素子は、上部基板上に形成されている上部基板電極と、下部基板上に形成されている駆動電極とを含んでおり、上記上部基板電極および上記駆動電極の間に上記1個または複数の液滴を配置可能であり、上記アクティブマトリクス駆動回路は、上記複数のアイレ素子の、上記上部基板電極および上記駆動電極に駆動信号を与え、上記複数のアレイ素子の間で、上記1個または複数の液滴を操作するように構成されているマイクロ流体装置が提供される。ここで、上記アクティブマトリクス駆動回路は、1個または複数の上記アレイ素子について、誘電体エレクトロウェッティング(EWOD:Electro-wetting-on-Dielectric)および誘電泳動(DEP:Dielectrophoresis)の両方によって、上記アレイ素子内にある上記1個または複数の液滴を選択的に操作するように、上記上部基板電極および上記駆動電極に上記駆動信号を与えるよう構成されている。
【0019】
本発明の他の態様によれば、アレイ上の1個または複数の液滴を操作するように構成された複数のアレイ素子を含んでいるマイクロ流体装置を駆動する方法が提供される。ここで、当該方法は、誘電体エレクトロウェッティング(EWOD:Electro-wetting-on-Dielectric)および誘電泳動(DEP:Dielectrophoresis)のそれぞれによって、上記1個または複数の液滴を操作するように、アクティブマトリクス駆動回路を利用して、上記1個または複数のアレイ素子に含まれる上記1個または複数の液滴に、直流電圧または比較的低周波数の交流電圧、および比較的高周波数の交流電圧を選択的に与える工程を含んでいる。
【0020】
上述および関連する目的を達成するために、本発明は、本明細書において十分に説明され、特に特許請求の範囲において指摘される特徴を含む。以下の説明および添付の図面は、本発明の特定の典型的な実施形態を詳細に示すものである。これらの実施形態は、説明のためのものであるが、本発明の原理を利用することが可能である様々な方法のうちのいくつかに過ぎない。本発明の他の目的、利点、および新規の特徴は、以下の発明の詳細な説明を図面とともに考慮することによって、明らかとなろう。また、添付の図面では、同様の参照番号は、同様の部材または特徴を示すものである。
【発明の効果】
【0021】
汎用的な形態において、再構成可能なAM−EWOD装置に、DEP機能をさらに付与することができる。ここで、第2の駆動メカニズムとして、DEPをさらに備えることにより、液滴に含まれる誘電性の粒子(例えば、細胞、玉)を、液滴の媒体とは分離して操作することができる。これは、サンプル洗浄および集細胞などに応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来技術に係る、誘電泳動を利用した液滴制御用バックプレーンのアレイ素子回路を示す図である。
【図2】従来技術に係る、EWODおよびDEPを実現するためのパッシブディバイスアーキテクチャーを示す図である。
【図3】本発明の典型的な実施形態に係るAM−EWOD装置の概要を示す斜視図である。
【図4】上記AM−EWOD装置の複数のアレイ素子を横断する断面を示す図である。
【図5】上記AM−EWOD装置における薄膜電子回路の配置の概要を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るアレイ素子回路の概要を示す図である。
【図7】上記第1の実施形態に係る第2の列駆動回路の概要を示す図である。
【図8】上記第1の実施形態に係る駆動信号V1A、V1B、およびV1C、の典型的なタイミング信号を示す図である。
【図9】絶縁体層、疎水層(疎水面)、および液滴の、電気的特徴を表すモデル回路を示す図である。
【図10A】DEPを利用して粒子集中化操作を実施する上記第1の実施形態に係る装置の操作中の状況を示す図である。
【図10B】DEPを利用して粒子集中化操作を実施する上記第1の実施形態に係る装置の操作中の状況を示す図である。
【図10C】DEPを利用して粒子集中化操作を実施する上記第1の実施形態に係る装置の操作中の状況を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る薄膜電子回路の配置の概要を示す図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係るアレイ素子回路の概要を示す図である。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る薄膜電子回路の配置の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、EWODおよびDEPメカニズムを利用して液滴を操作するためのアクティブマトリクスアーキテクチャについての発明である。換言するならば、本発明は、EWODまたはDEPを利用して液滴を操作可能とするアクティブマトリクス回路を実現すると言ってもよい。
【0024】
図3は、本発明の典型的な実施形態に係る液滴マイクロ流体装置を示す図である。また、当該液滴マイクロ流体装置は、EWODおよびDEPを利用して流体を操作可能なアクティブマトリクス装置である。さらに、当該装置は、アレイのある部位においてEWODを利用して液滴を操作可能であるとともに、当該アレイの他の部位においてDEPを利用して液滴を同時に操作可能である。また、当該装置は、ある時点でEWODによって、かつ別の時点でDEPによって、アレイの所定の部位において1個の液滴を操作可能であるように再構成されてもよい。
【0025】
当該液滴マイクロ流体装置は、下部基板72を有しており、下部基板72上には薄膜電子回路74が配されている。ここで、薄膜電子回路74は、アレイ素子電極38を駆動するように構成されている。また、複数のアレイ素子電極38は、電極アレイ42に含まれており、M×Nアレイの構成を有している。ここで、MおよびNは、任意の数値であってもよい。なお、典型的な例においては、MおよびNは2以上である。また、液滴4は、基板(下部基板)72および上部基板36の間に封入されている。ここで、複数の液滴4が封入されている形態も、本発明の技術的範囲に含まれている。すなわち、1個または複数の液滴4が、アレイに含まれていてもよい。また、液滴4は、内部に1個または複数の粒子44を保持していてもよい。また、粒子44は、液滴および/または液滴4の内部に含まれている他の粒子と異なる電気的性質を有していてもよい。
【0026】
図4は、上記アレイ素子の対を示す断面図である。ここで、上記装置は、下部基板72を含んでおり、下部基板72の上には、薄膜電子回路74が配されている。また、下部基板72の最上部層(薄膜電子回路74の一部と考えることもできる)には、複数の電極38(例えば、図4に示す38Aおよび38B)をなすように、パターンが形成されている。このような構成を、EW駆動素子と呼んでもよい。ここで、当該EW駆動素子は、特定のアレイ素子と関連付けられた電極38であってもよいし、当該電極38に直接接続された電子回路のノードであってもよい。また、イオン物質からなる液滴4が、下部基板72と上部基板36との間の平面に束縛されている。ここで、スペーサ32を利用して当該2枚の基板間の合間を適切に確保してもよいし、非イオン液体34(例えば、油)を利用して、液滴4が充填されていない空間を充填してもよい。また、下部基板72の上に配されている絶縁体層20は、導電性の電極38Aおよび電極38Bを疎水層(疎水面)16から分離する。ここで、液滴4は、疎水層(疎水面)16上にθで表される接触角6をなして配されている。また、上部基板36上には、液滴4に接触する他の疎水層26が配されている。また、上部基板36と疎水層26との間には、上部基板電極28が配されている。典型的な実施形態では、上部基板電極28が、すべてのアレイ素子に共有されている。しかしながら、各アレイ素子または複数のアレイ素子のグループが、それぞれ固有の上部基板電極を有していてもよい。
【0027】
薄膜電子回路74を適切に設計および駆動することにより、EW駆動電圧(例えばV、V、およびV00)といった異なる電圧が、異なる電極(例えば駆動素子電極28、38A、および38B)に印加されてもよい。また、疎水層(疎水面)16の疎水性を制御して、2つの基板(下部基板)72と基板(上部基板)36との間の横平面における液滴の運動を促進してもよい。
【0028】
図5は、基板(下部基板)72上における薄膜電子回路74の配置構成を示す図である。ここで、電極アレイ42の各アレイ素子43は、対応する電極38の電極電位を制御するために、アレイ素子回路84を含んでいる。また、集積された行駆動回路76および第1の列駆動回路78は、薄膜電子回路に実現されており、アレイ素子回路84に制御信号を与える。また、第2の列駆動回路86も、(薄膜電子回路に)実現されており、アレイ素子回路84に制御信号を与える。典型的な実施形態では、行駆動回路76、第1の列駆動回路78、第2の列駆動回路86、およびアレイ素子回路84が、上部基板電極28および各アレイ素子43の駆動素子電極(電極)38に駆動信号を与えるように、アクティブマトリクス駆動回路を構成する。
【0029】
シリアルインターフェース80は、シリアル入力データストリームを処理し、要求された電圧を電極アレイ42に書き込むように構成されていてもよい。ここで、電圧供給インターフェース83は、本明細書に記載されているように、対応する供給電圧、上部基板駆動電圧などを与えてもよい。また、アレイ基板(下部基板)72と、外部の駆動電子回路または電源などとの間の接続配線82の本数は、アレイサイズが大きい場合であっても、比較的少なくてもよい。
【0030】
図6は、本発明の第1の実施形態に係るアレイ素子回路84を示す図である。ここで、AM−EWOD装置について後述している構成以外の構成は、前述した一般的な構成と同様である。
【0031】
各アレイ素子回路84は、駆動電圧VEWを液滴4に印加するように構成されており、以下の構成要素を含んでいる。
・メモリ回路222
・反転回路224
ここで、メモリ回路222は、以下の構成要素を含んでいる。
【0032】
・列書込線COL(第1の列駆動回路78から引き出されている;同じ列に含まれるアレイ素子により共有されていてもよい)
・行選択線ROW(行駆動回路76から引き出されている;同じ行に含まれるアレイ素子により共有されていてもよい)
・ストレージキャパシタ203
・直流供給電圧Vref
・スイッチトランジスタ206
また、反転回路224は、以下の構成要素を含んでいる。
【0033】
・第1のアナログスイッチ214
・第2のアナログスイッチ216
・供給電圧V(第2の列駆動回路86から供給されている;同じ列に含まれるアレイ素子により共有されていてもよい)
・第2供給電圧V(第2の列駆動回路86から供給されている;同じ列に含まれるすべての素子により共有されていてもよい)
・インバータ212
ここで、アレイ素子回路84は、以下のように接続されている。
【0034】
まず、列書込線COLは、スイッチトランジスタ206のソースに接続されている。また、行選択線ROWは、スイッチトランジスタ206のゲートに接続されている。また、ストレージキャパシタ203は、直流供給電圧Vrefとスイッチトランジスタ206のドレインとの間に接続されている。また、スイッチトランジスタ206のドレインは、インバータ212の入力、第1のアナログスイッチ214のn型トランジスタのゲート、および第2のアナログスイッチ216のp型トランジスタのゲートに接続されている。また、インバータ212の出力は、第1のアナログスイッチ214のp型トランジスタのゲートおよび第2のアナログスイッチ216のn型トランジスタのゲートに接続されている。また、供給電圧Vは、第1のアナログスイッチ214の入力に接続されている。また、供給電圧Vは、第2のアナログスイッチ216の入力および上部基板電極28に接続されている。また、第1のアナログスイッチ214の出力および第2のアナログスイッチ216の出力は、EW駆動電極を形成する電極38にそれぞれ接続されている。
【0035】
また、アレイ素子回路84は、電圧信号(VまたはVのいずれか一方)を各アレイ素子のEW駆動電極(電極)38に与えるように動作する。
【0036】
ここで、アレイ素子回路84は、以下のように動作する。
【0037】
アレイ素子回路84は、上述の2つの機能ブロックを含んでいる。ここで、2つの機能ブロックとは、メモリ回路222および反転回路224のことである。また、メモリ回路222は、標準的なDRAM回路である。また、論理値“0”状態または論理値“1”状態で表現されるデジタル書込電圧VWRITEは、所望の電圧で列書込線COLからロードした後に、ハイレベル電圧パルスを行選択線ROWに与えることにより、メモリへ書き込まれてもよい。これにより、スイッチトランジスタ206がオンされた後に、書込電圧がメモリノード210に書き込まれ、ストレージキャパシタ203に保存される。なお、スイッチトランジスタ206のリークのため、メモリ回路222は、メモリノード210における電圧(デジタル書込電圧)VWRITEをリフレッシュするために、繰り返し再書込みされなければならない。
【0038】
論理値“1”状態がメモリ回路222に書き込まれる場合において、反転回路224は、第1のアナログスイッチ214をオンし、第2のアナログスイッチ216をオフするように構成されている。この結果、供給電圧Vは、EW駆動素子(電極)38を形成している電極に与えられる。また、論理値“0”状態がメモリ機能(メモリ回路)222に書き込まれる場合において、反転回路224は、第1のアナログスイッチ214をオフし、第2のアナログスイッチ216をオンするように構成されている。この場合、供給電圧Vは、EW駆動電極(電極)38を形成している導電性の電極に与えられる。
【0039】
供給電圧Vおよび供給電圧Vは、同じ列に含まれるアレイ素子により共有され、第2の列駆動回路86によって与えられてもよい。ここで、供給電圧Vおよび供給電圧Vは、列ラインVおよび列ラインVとして参照される。また、第2の列駆動回路86は、以下のように構成されてもよい。第2の列駆動回路86は、複数の回路素子(第2の列駆動回路素子)500を含んでおり、アレイの各列に対して1個の素子(第2の列駆動回路素子)500が対応してもよい。ここで、図7は、第2の列駆動回路86の素子(第2の列駆動回路素子)500を含む回路の配置構成例を示す図である。各回路素子(第2の列駆動回路素子)500は、以下の構成要素を含んでいる。
・3個のスイッチからなる第1のバンク502
・3個のスイッチからなる第2のバンク504
・デジタル出力選択回路506
・デジタル制御回路508
デジタル制御回路508は、外部クロック入力CKおよび出力Qを有している。ここで、出力Qは、デジタル出力選択回路506のクロック入力CKAに接続されている。また、デジタル出力選択回路506は、ビットデータ入力DATA1およびビットデータ入力DATA2ならびにビット並列データ出力O1、ビット並列データ出力O2、およびビット並列データ出力O3を有している。また、デジタル出力選択回路506の出力(ビット並列データ出力)O1、出力(ビット並列データ出力)O2、および出力(ビット並列データ出力)O3は、スイッチからなるバンク502およびスイッチからなるバンク504に含まれる3個のスイッチを制御するために利用される。また、バンク502に含まれる3個のスイッチの出力は、互いに接続されており、出力Vに接続されている。ここで、出力Vは、供給電圧であり、各アレイ素子に含まれる第1のアナログスイッチ214に与えられる。また、バンク504に含まれる3個のスイッチの出力は、互いに接続されており、出力Vに接続されている。ここで、出力Vは、供給電圧であり、各アレイ素子に含まれる第2のアナログスイッチ216および上部基板電極28に与えられる。また、入力V1A、入力V1B、および入力V1Cは、3個のスイッチからなるバンク502の3個の入力を備えている。そして、入力V2A、入力V2B、および入力V2Cは、3個のスイッチからなるバンク504の3個の入力を備えている。また、3個の入力は、装置に外部から与えられるグローバル信号であってもよい。
【0040】
ここで、第2の列駆動回路素子500は、以下のように動作する。まず、第2の列駆動回路素子500の基本的な機能を説明すると、第2の列駆動回路素子500は、入力信号V1A、入力信号V1B、または入力信号V1Cを1つ選択して、出力Vを出力する。そして、出力Vは、アレイの特定の列に含まれるアレイ素子に入力される。同様に、入力信号V2A、入力信号V2B、または入力信号V2Cは、1つ選択されて、出力Vが出力される。これにより、V=V1AであればV=V2Aとなり、V=V1BであればV=V2Bとなり、V=V1CであればV=V2Cとなる。
【0041】
また、Vとして出力される入力信号は、入力(ビットデータ入力)DATA1および入力(ビットデータ入力)DATA2におけるデジタルワードを利用して選択される。例えば、DATA1=0、DATA2=0である場合に、V1AをVとして出力するように設定されてもよい。また、例えば、DATA1=0、DATA2=1である場合に、V1BをVとして出力するように設定されてもよい。また、例えば、DATA1=1、DATA2=0である場合に、V1CをVとして出力するように設定されてもよい。また、デジタル出力選択回路506は、標準的な論理素子(例えば、インバータやNANDゲート)を標準的な方法で利用して実現されてもよい。このような構成は、広く知られている。また、デジタル制御回路508は、シフトレジスタ素子として実現されてもよい。例えば、フリップフロップおよびラッチを利用して、入力Dの論理値レベルが、クロック入力(外部クロック入力)CKのエッジの立ち上がりに応じてサンプリングされ、出力Qに出力されてもよい。また、出力Qは、デジタル出力選択回路506のクロック入力CKAに、順番に入力される。これにより、DATA1およびDATA2の論理値レベルがサンプリングされ、出力(ビット並列データ出力)O1、出力(ビット並列データ出力)O2、および出力(ビット並列データ出力)O3に出力される。また、DATA1、DATA2、D、およびCKの値は、シリアルインターフェース80を介して外部ソースから第2の列駆動回路素子500に与えられる。これは、例えば、所望の対応するアレイにおいて、EWODまたはDEP操作を実行するように行われる。
【0042】
以上のように、第2の列駆動回路素子500は、アレイの各列に対して列ラインV1に出力する信号(つまり、V1A、V1B、またはV1C)を決定する。同様に、第2の列駆動回路素子500は、アレイの各列に対して列ラインV2に出力する信号(つまり、V2A、V2B、またはV2C)を決定する。
【0043】
図8は、供給電圧V1A、供給電圧V1B、および供給電圧V1Cの波形の時間依存性を示す図である。まず、V1Aは、直流信号であって、その論理値がハイレベルである。また、V1Bは、比較的低周波数である周波数fを有している矩形波である。ここで、比較的低周波数とは、エレクトロウェッティング力が大きくなるように選択されるような周波数を意味しており、この場合、EWODを利用して液滴を操作することができる。また、このような周波数の例としては、10kHz、1kHz、100Hzを挙げることができる。
【0044】
次に、V1Cは、比較的高周波数である周波数fを有している矩形波である。ここで、周波数fは、DEPを利用して液滴に含まれる粒子を操作することに適した周波数となるように選択されてもよい。よって、このような用途に好適な周波数は、液滴4および操作される粒子の誘電的性質に依存することになる。ここで、このような用途に好適な周波数fの典型例としては、100kHzから10MHzの範囲の周波数を挙げることができる(例えば、1MHzであってもよい)。
【0045】
次に、図示していないV2A、V2B、およびV2Cは、V1A、V1B、およびV1Cをそれぞれ論理反転したものである。ここで、V1A、V1B、およびV1Cは、例えば、外部PCBにより与えられて生成された、グローバル信号であってもよい。
【0046】
すなわち、周波数fおよび周波数fは、外部から制御可能であってもよいし、所望の操作に応じて決定および設定されてもよい。また、これらの値は、後述するような構成により簡単に与えられてもよい。
【0047】
つまり、薄膜電子回路74の一般的な機能を、以下のようにまとめることができる。まず、各アレイ素子回路84は、行駆動回路76および列駆動回路78により書込電圧の方式によってプログラムされるような、プログラム可能な1ビットメモリ機能を備えている。ここで、書き込み電圧に基づいて、EW駆動電極38に信号Vまたは信号Vのいずれが書き込まれるかが決定される。また、第2の列駆動回路86は、アレイの所定の列のV信号として、グローバル入力信号V1A、グローバル入力信号V1B、またはグローバル入力信号V1C、これら3信号のうちいずれの信号が書き込まれるかを決定することに利用される。同様に、第2の列駆動回路86は、アレイの所定の列におけるV信号として、グローバル入力信号V2A、グローバル入力信号V2B、またはグローバル入力信号V2Cのうちいずれの信号が書き込まれるかを決定することに利用される。
【0048】
信号V1A、信号V1B、および信号V1Cの形態は、直流エレクトロウェッテイング、交流エレクトロウェッテイング、およびDEPのそれぞれ利用して液滴4を動かすように構成されている。図9は、これらの信号の機能を説明する図であって、絶縁体層20、疎水層16、および液滴4の電気的特性を表現する回路モデルを示す図である。ここで、当該回路モデルは、駆動電極38と上部基板電極28との間の回路モデルを表現しており、アレイの特定の位置に液滴4が存在している状態を表現している。ここでは、説明を簡潔にするため、液滴4内に浮遊している粒子の影響はないものと考える。さて、液滴4は、抵抗RDROPおよび並列に接続されたキャパシタCDROPとして表現することができる。ここで、40と記載されている回路ノードは、液滴4と疎水層(疎水面)16との境界に相当する。また、絶縁体層20および疎水層(疎水面)16を組み合わせた構成は、キャパシタCとして表現することができる。また、直流エレクトロウェッティング、交流エレクトロウェッティング、およびDEPは、以下のように実施される。
【0049】
直流エレクトロウェッティングを行うために、電圧供給源であるV2Aは、上部基板電極28に接続される。また、アレイ素子回路84は、所定の位置において、V1AまたはV2Aのいずれか一方が駆動電極38に接続されるように、プログラムされていてもよい。ここで、V1Aが駆動電極38に書き込まれる場合には、Cに作用する、V1A−V2Aで表される電位差(直流の電位)は、電極38と上部基板電極28との間において維持される。そして、図9に示す構成によって、当該直流の電位はキャパシタCに渡って完全に降下し、当該降下によって、液滴4と疎水層16との境界において、電場をもたらす。これにより、従来技術においてよく知られているように、エレクトロウェッテイングのメカニズムにより、接触角が変化する。一方、V2Aが駆動電極に書き込まれる場合には、電極38と上部基板電極28との間の電位差が0となり、液滴4と疎水層16との境界には、電場が作用しない。つまり、異なるアレイ素子に与える信号を適切に選択することにより、従来技術においてよく知られているように、アレイにおける液滴4の位置を操作することができる。
【0050】
次に、交流エレクトロウェッテイングについて説明する。ここで、電圧供給源であるV2Bは、上部基板電極28に接続されている。また、アレイ素子回路84は、所定のアレイ素子において、V1BまたはV2Bが駆動電極(電極)38に接続されるように、プログラムされていてもよい。ここで、V1Bが駆動電極(電極)38に書き込まれる場合には、V1B−V2Bで表される電位差(直流の電位)は、電極38と上部基板電極28との間において維持される。これは、周波数fを有している交流の電位に相当する。ここで、図9に示す構成によって、周波数fを適切に選択することにより、交流エレクトロウェッティングを利用して液滴4を制御することができる。この場合、エレクトロウェッティング力は、液滴4と疎水層(疎水面)16との境界における電場に依存する。なお、このような構成においては、印加された電圧が液滴4自体を通しては降下せず、当該電圧の大部分がキャパシタCに渡って降下することを、一般的な要件として挙げることができる。ここで、周波数は、抵抗RDROPに応じて設定されてもよい。しかしながら、典型的な例において、周波数は、低い値となる(例えば、10kHz)。このように、周波数が低い場合には、疎水層16と液滴4の境界(図9に示すノード40)において交流の電場が作用し、良く知られるように、交流エレクトロウェッテイングによって液滴4が操作される。一方、V2Bが駆動電極に書き込まれるようにアレイ素子回路84がプログラムされている場合には、電極38と上部基板電極28との間の電位差が0となり、エレクトロウェッティング力が作用しない。つまり、異なるアレイ素子に与える信号を適切に選択することにより、従来技術においてよく知られているように、エレクトロウェッティングを利用してアレイにおける液滴4の位置を操作することができる。
【0051】
DEPを実行するために、電圧供給源であるV2Aは、上部基板電極28に接続される。また、アレイ素子回路84は、所定の位置において、V1CまたはV2Cが駆動電極(電極)38に接続されるように、プログラムされていてもよい。これにより、時間的に変化する電場が、駆動電極(電極)38と上部基板電極28との間に作用する。なお、DEPを実現するためには、電圧パルスV1Cおよび電圧パルスV2Cの周波数fは、電極38と上部基板電極28との間に作用する電位差の大部分が液滴4に渡って降下するように、充分大きな値となっていなければならない。これにより、液滴4の実体に対して時間的に変化する電場が印加され、液滴4に含まれる誘電性の粒子44(例えば、泡や細胞であってもよい)を操作することができる。また、周波数fを精密な選択は、液滴の媒体および操作されている液滴に含まれる粒子の、誘電率の実数部および虚数部の関数である。このような周波数依存性は、DEP現象に関する従来技術に係るよく知られたClaussius-Mossotti要因により説明することができる。基本的には、fを選択することにより、粒子を液滴4の誘電性の媒体より大きく分極させる(正のDEP)、または、液滴の誘電性の媒体を粒子44より大きく分極させる(負のDEP)ことができる。つまり、周波数、および正または負のいずれのDEPを利用するかの選択は、液滴4および操作されている粒子44の、誘電的性質に大きく依存している。つまり、異なるアレイ素子に与える信号を適切に選択することにより、DEPを利用して液滴に含まれる粒子の位置を操作することができる。一方、信号V2Bを上部電極に与えることによっても、DEPを実施することができる。この操作は、基本的に上述の操作と同様であるが、V1CおよびV2Cの信号の極性を、V2Bの論理値がハイレベルであるときに、反転する必要があるという点において異なっている。これにより、V2Bの論理値がハイレベルであるときもロウレベルであるときも、装置における電場の大きさは同じ値になる。
【0052】
図10A〜図10Cは、どのようにDEPおよびEWODを利用して、液滴に含まれる粒子を操作できるかということについて示す図である。また、図4と同じように、図10A〜図10Cは、装置の断面を示すとともに、駆動素子電極(電極)38A、駆動素子電極(電極)38B、および駆動素子電極(電極)38Cの3つの駆動素子電極を示している。ここで、液滴4は、多数の粒子44を含んでいる。また、図10A〜図10Cは、装置がどのようにDEPを利用して、液滴に含まれる粒子の集中化を行うかということについて示している。また、各図、図10A、図10B、および図10Cは、時間的に処理の状況がどのように変遷するかを示している。これによると、電極38A、電極38B、および電極38Cに与える信号を時間的に変化させることにより、電場は、液滴4の片隅(つまり、図10Cにおける右側)に誘電性の粒子44を移動させるように作用する。その後、駆動メカニズムを直流EWODに切り替えて、液滴4を分割してもよい。以上のように、液滴4に含まれる粒子44を集中化することができる。これは、例えば、粒子44を取り囲む液体により、余分な試薬を除去するといった、洗浄操作に利用することができる。また、他の応用例としては、広く一般的な、化学または生化学の多くの分析に利用可能な、細胞や玉を一箇所へ集める処理を挙げることができる。
【0053】
ここで、EWODおよびDEPの駆動に必要な事項は似通っていると言える。また、一方と他方とを切り替えることにより、電極38と上部基板電極28との間に与えられる電圧波形の周波数が変化すると言える。また、2つの駆動メカニズムは、物理的には完全に異なっていると言える。ここで、エレクトロウェッティングは、基本的には表面に作用する現象であり、エレクトロウェッティング力の強さは、液滴4と疎水層(疎水面)16との境界における電場の強さに依存している。一方、DEPは、バルク的に作用する現象であり、DEP力は、液滴のバルクに作用し時間的に変化する電場の形態に依存している。
【0054】
本実施形態によれば、同一のアクティブマトリックス装置を利用したEWODおよびDEPメカニズムにより、液滴4および粒子44を、独立して制御することができる。これは、粒子の集中化、洗浄、粒子の選別などに応用することができ、AM−EWOD技術の応用において広く必要とされる工程に利用することができる。また、これは、例えば、ポイント・オブ・ケア診断法(Point of Care diagnostics)のための免疫学的検定に利用することができる。また、アクティブマトリクス装置におけるEWODおよびDEPによる駆動メカニズムは、汎用性を有しており、完全に再構成可能な装置の汎用的な形態を提供するものである。これは、当該装置が、複雑なデジタルマイクロ流体操作を行ったり、同一の装置により多くの操作を並列的に行ったりできるということである。
【0055】
さらに、本実施形態によれば、上述の構成を、完全に再構成することができる。特に、アレイの任意の所定の列において、EWODまたはDEPを任意の時点にて利用するような構成とすることができる。また、特に、異なる複数の列において、異なる機能を同時に実現することができる。換言すると、EWODまたはDEP駆動は、各例に対して個別に選択可能である。
【0056】
さらに、本実施形態によれば、上述の回路の実現において、アレイ素子回路に含まれる電子部品の数を、比較的少なくすることができる。具体的には、本実施形態において単にDEPだけを機能させるとしたときに利用されるトランジスタの数と、図1に示す構成および背景技術に記載の構成において利用されるトランジスタの数とは、同程度である。
【0057】
さらに、本実施形態によれば、EWODおよびDEPを利用した操作にそれぞれ対応している周波数fおよび周波数fは、完全にフレキシブルであり、独立して制御可能である。ここで、独立して制御可能であるとは、装置の操作に関連する他のタイミングパラメータとは独立して、周波数fおよび周波数fを制御可能であるということである。このことは、最適な操作周波数が液滴4の媒体および液滴4に含まれる任意の誘電性の粒子44の性質に依存し得るため、有利である。
【0058】
さらに、本実施形態によれば、V1A、V1B、およびV1C(ならびに、これらの論理反転)の、ハイおよびロウ電圧レベルを調整し、EWODおよびDEP操作メカニズムの強さを制御することができる。ここで、DEPおよびEWODを実現するために必要となる電圧レベルは、同一でなくてもよい。このことは、これにより、例えば、高周波数でDEPを実施する際に過度の電力が消費されてしまうことを回避できるため、重要である。
【0059】
本明細書の開示内容に基づけば、当業者が上述の実施形態を種々の形態に拡張して実施可能であることは明らかであろう。例えば、アレイ素子に与えられる信号Vおよび信号Vを、同じ行に含まれる素子に与えて共有させる構成は、同じ列に含まれる素子に与える構成を拡張して実現できるであろう。これにより、EWODまたはDEP駆動を各行に対して個別に選択することができる。また、第2の列駆動回路86は、2つの選択肢だけに基づいて信号Vおよび信号Vを選択するように、拡張できるであろう。つまり、上述のようなV1AおよびV1Cを、直流EWODまたはDEPを利用して液滴4を駆動する形態に応じて選択するように、拡張できるであろう。
【0060】
以下では、本発明に係る第2の実施形態について説明する。ここで、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の構成となっている。また、第2の実施形態では、アレイ素子43は、大きなアスペクト比を有するように構成されている。これにより、アレイ素子43は、行方向よりも列方向において非常に長くなっている。このような、大きなアスペクト比は、例えば、アレイ素子43の長辺の長さが、短辺の長さの2、5、10、20、または50倍を越えるように構成することで実現できる。図11は、本実施形態に係る薄膜電子回路74の構成を示す図である。ここで、本実施形態において、回路構成の概要は、第1の実施形態と同様であってもよい。また、大きなアスペクト比は、公知のレイアウト技術を利用して実現されてもよい。また、アレイ素子43を行方向において小さくし、隣接する列に含まれるアレイ素子に他のDEP駆動信号を与えることにより、電場の勾配、つまりDEP力の強さが大きくなる。例えば、V1Cを列Zに含まれるアレイ素子の電極38に与え、V2Cを列Z+1に含まれるアレイ素子の電極38に与えてもよい。つまり、本実施形態を実施することにより、DEPを利用して、行方向において液滴4に含まれる誘電性の粒子44を選択的に操作することができる。また、アレイ素子43の短辺方向において、DEP力を最大化することができる。また、本実施形態によれば、DEP力の最大化を利用して、DEPの実施の効果を大きくすることができる。ここで、DEPの実施とは、例えば、粒子の選別であってもよい。さらに、このような形状を変化させる手法によるDEP駆動力の最大化を利用することで、信号V1Cおよび信号V2Cの電圧振幅が小さい場合であっても、十分なDEP力を得ることができる。これにより、消費電力などを低減することができる。
【0061】
ここで、アレイ素子43の短辺を列方向に伸ばし、上述の構成と同様に動作するように、本実施形態を変更することは、当業者にとっては明らかなことであろう。
【0062】
以下では、本発明に係る第3の実施形態について説明する。ここで、第3の実施形態は、第1の実施形態と同様の構成となっている。また、図12に示すように、アレイ素子回路84aが、代替利用されている。また、AM−EWOD装置の他の部分は、上述の標準的な構成となっており、上部基板電極28を有している上部基板36を含んでいる。また、本実施形態に係るアレイ素子回路84aは、第1の実施形態と同様の機能を奏する。つまり、電圧ラインV1または電圧ラインV2のいずれかが、電極38に与えられる。また、電極38と上部基板電極28との間に与えられる電圧信号が制御される。また、当該電圧信号が、液滴4に作用する。
【0063】
本実施形態においてアレイ素子回路84aは、以下の構成要素を備えている。
・メモリ回路222a
・反転回路224a
ここで、メモリ回路222aは、以下の構成要素を含んでいる。
【0064】
・列書込線COL(第1の列駆動回路78から引き出されている;同じ列に含まれるアレイ素子により共有されていてもよい)
・行選択線ROW(行駆動回路76から引き出されている;同じ行に含まれるアレイ素子により共有されていてもよい)
・n型のスイッチトランジスタ206
・p型のスイッチトランジスタ230
・第1のインバータ226
・第2のインバータ228
また、反転回路224aは、以下の構成要素を含んでいる。
【0065】
・第1のアナログスイッチ214
・第2のアナログスイッチ216
・供給電圧V(アレイに含まれるすべての素子により共有されていてもよい)
・第2の供給電圧V(アレイに含まれるすべての素子により共有されていてもよい)
ここで、回路(アレイ素子回路)84aは、以下のように接続されている。
【0066】
まず、列書込線COLは、スイッチトランジスタ206のソースに接続されている。また、行選択線ROWは、スイッチトランジスタ206のゲートおよびスイッチトランジスタ230のゲートに接続されている。また、スイッチトランジスタ230のドレインは、スイッチトランジスタ206のドレインおよび第1のインバータ226の入力に接続されている。また、第1のインバータ226の出力は、第2のインバータ228の入力、第1のアナログスイッチ214のp型トランジスタのゲート、および第2のアナログスイッチ216のn型トランジスタのゲートに接続されている。また、第2のインバータ228の出力は、第1のアナログスイッチ214のn型トランジスタのゲート、第2のアナログスイッチ216のp型トランジスタのゲート、およびスイッチトランジスタ230のソースに接続されている。また、電圧供給Vは、第1のアナログスイッチ214の入力に接続されている。また、電圧Vは、第2のアナログスイッチ216の入力および上部基板電極28に接続されている。また、第1のアナログスイッチ214の出力および第2のアナログスイッチ216の出力は、EW駆動電極を形成する導電性の電極38にそれぞれ接続されている。
【0067】
ここで、本実施形態は、第1の実施形態と同様に動作する。まず、ハイ電圧パルスが行選択線ROWに与えられることにより、メモリにおいて書き込み動作が機能する。つまり、スイッチトランジスタ206およびスイッチトランジスタ230がオンになる。また、列書込線COLに印加されている電圧が、メモリノード210に書き込まれる。また、反転回路224aは、第1の実施形態と同様に動作する。しかしながら、反転回路224aは、反転メモリノード信号を、インバータ(第1のインバータ)226とインバータ(第2のインバータ)228との間のノードから取得できる点において、第1の実施形態とは異なる動作をする。
【0068】
本実施形態では、メモリ回路222aがSRAMメモリ構造を有していることにより、リフレッシュを繰り返す必要がない点において有利である。これにより、DRAMメモリ機能を利用する構成と比較して、より低消費電力で、装置を容易に動作させることができる。また、アレイ素子回路84aは、最少数の有効構成要素(10個のトランジスタ)を利用して実現されている。これにより、レイアウト範囲を最小化し、生産性を最大化することができる。
【0069】
以下では、本発明に係る第4の実施形態について説明する。ここで、第4の実施形態は、上述した実施形態と同様の構成となっている。つまり、第4の実施形態は、EWOD/DEPの双方の機能を、アクティブマトリクス装置の一部分だけに限定して作用させる構成となっている。図13は、本実施形態における薄膜電子回路の構成例を示す図である。本構成において、アレイの列(Col)1〜列X(図13の左側)は、EWODだけを利用して液滴を操作するように設計されている。ここで、これらの列に与えられる信号Vおよび信号Vは、供給配線を利用した接続(例えば、V1AおよびV1B)により与えられても良く、駆動方式を切り替えるために必要とされるわけではない。つまり、列1〜列Xは、EWODだけによる液滴の操作に利用されてもよい。また、アレイの列(Col)X+1〜列Yは、上述のアーキテクチャにより構成されており、第2の列駆動回路86を有している。これにより、上述の第1の実施形態のように、これらの列に含まれるアレイ素子に与えられる信号線Vおよび信号線Vは、V1A、V1B、またはV1Cなどを選択することができる。つまり、アレイのこれらの列においては、液滴4は、EWODまたはDEPを上述のように利用して操作することができる。また、本実施形態によれば、AM−EWOD装置は、専用の“DEPゾーン”46(つまり、列X+1〜列Y)を有しており、当該ゾーンにおいてDEPを実施することができる。また、装置は、DEPを実施するために、液滴を、エレクトロウェッティングを利用してDEPゾーン46内のいずれかの位置へ移動させるように、動作してもよい。また、必要なDEP操作(例えば、細胞の選別)は、液滴4をアレイの他の位置へ移動させる前に、実施されてもよい。例えば、所定の検査の次工程において、当該操作の実施が必要とされている場合に、当該操作を実施してもよい。
【0070】
本発明の一態様によれば、アクティブマトリクス回路は、駆動メカニズム(EWODまたはDEP)を、任意の時点にてアレイ素子に含まれる各列に応じて個別に選択可能なように構成されている。
【0071】
また、本発明のさらなる態様によれば、開示された駆動方法においては、液滴に与えられる駆動信号は、液滴をEWODにより操作する直流電圧信号もしくは低周波数の交流電圧信号、または液滴をDEPにより操作する高周波数の交流電圧信号のいずれかから選択できる。
【0072】
また、本発明の一態様によれば、上記アクティブマトリクス駆動回路は、ある時点においてEWODによって、かつ別の時点においてDEPによって、上記アレイの所定の部位における上記1個または複数の液滴を操作可能とするように上記装置を再構成する。
【0073】
また、本発明の他の態様によれば、上記アクティブマトリクス駆動回路は、上記1個または複数のアレイ素子の、上記上部基板電極および上記駆動電極に上記駆動信号を選択的に与えるように構成されており、上記1個または複数の液滴に渡る電圧波形について、EWODを利用する場合には、上記電圧波形が直流または比較的低周波数の交流のいずれかの電圧波形となるようにし、DEPを利用する場合には、上記駆動信号が比較的高周波数の交流の電圧波形となるようにし、上記1個または複数の液滴を操作する。
【0074】
また、本発明の他の態様によれば、上記1個または複数のアレイ素子は、上記アレイの異なる部位に配置されており、上記アクティブマトリクス駆動回路は、EWODを利用した上記部位の一部分における上記1個または複数の液滴の中の複数個の液滴の操作と、DEPを利用した上記部位の他の部分における上記1個または複数の液滴の中の他の液滴の操作とを同時に行うことが可能なように構成されている。
【0075】
また、本発明の他の態様によれば、上記アレイ素子は、M×Nアレイであり、上記Mおよび上記Nは、2以上である。
【0076】
また、本発明の他の態様によれば、上記アクティブマトリクス駆動回路は、任意の時点にて、上記アレイに含まれる各列に対して、EWODまたはDEPによる駆動を個別に選択可能であるように構成されている。
【0077】
また、本発明の他の態様によれば、上記アクティブマトリクス駆動回路は、上記アレイに含まれる行を選択するように構成されている行駆動回路と、選択された所定の行に含まれる上記アレイ素子に書込電圧を与える第1の列駆動回路と、上記アレイに含まれる各列の、上記上部基板電極および上記駆動電極に上記駆動信号を与え、各列に含まれる上記アレイ素子に与えられる上記書込電圧に基づいて、EWODまたはDEPを利用して、各列に含まれる上記1個または複数の液滴を選択的に操作する第2の列駆動回路とを含んでいる。
【0078】
また、本発明の他の態様によれば、上記アクティブマトリクス駆動回路は、上記アレイに含まれる複数の列について、EWODのみを利用して上記1個または複数の液滴を操作し、上記アレイに含まれる他の列について、選択的に、EWODまたはDEPを利用して上記1個または複数の液滴を操作する。
【0079】
また、本発明の他の態様によれば、上記アクティブマトリクス駆動回路は、任意の時点において、上記アレイに含まれる各行に対して、EWODまたはDEPによる駆動を個別に選択可能であるように構成されている。
【0080】
また、本発明の他の態様によれば、上記駆動信号は、直流信号および比較的低周波数の信号、比較的高周波数の信号、ならびに各信号の論理否定のうちの少なくとも1つである。
【0081】
また、本発明の他の態様によれば、上記直流信号および当該信号の論理否定は、所定のアレイ素子の、上記上部基板電極および上記駆動電極に選択的に与えられ、直流EWODを利用して上記1個または複数の液滴を操作する。
【0082】
また、本発明の他の態様によれば、上記比較的低周波数の信号および当該信号の論理否定は、所定のアレイ素子の、上記上部基板電極および上記駆動電極に選択的に与えられ、交流EWODを利用して上記1個または複数の液滴を操作する。
【0083】
また、本発明の他の態様によれば、上記比較的高周波数の信号および当該信号の論理否定は、所定のアレイ素子の上記上部基板電極および上記駆動電極に選択的に与えられ、DEPを利用して上記1個または複数の液滴を操作する。
【0084】
また、本発明の他の態様によれば、上記アレイ素子は、大きなアスペクト比を有している。
【0085】
また、本発明の他の態様によれば、上記アレイ素子は、共通の上部基板電極を有している。
【0086】
また、本発明の他の態様に係る方法では、ある時点においてEWODによって、かつ別の時点においてDEPによって、上記アレイの所定の部位における上記1個または複数の液滴を操作する工程を含んでいる。
【0087】
また、本発明の他の態様に係る方法では、EWODを利用した上記アレイの一部分における上記1個または複数の液滴の中の複数個の液滴の操作と、DEPを利用した上記アレイの他の部分における上記1個または複数の液滴の中の他の液滴の操作とを同時に行なう工程を含んでいる。
【0088】
また、本発明の他の態様に係る方法では、上記アレイ素子は、M×Nアレイであり、上記Mおよび上記Nは、2以上であり、上記アクティブマトリクス駆動回路は、任意の時点において、上記アレイに含まれる各列に対して、EWODまたはDEPによる駆動を個別に選択可能であるように構成されている。
【0089】
また、本発明の他の態様に係る方法では、上記アクティブマトリクス駆動回路は、上記アレイに含まれる行を選択するように構成されている行駆動回路と、選択された所定の行に含まれる上記アレイ素子に書込電圧を与える第1の列駆動回路と、上記アレイに含まれる各列に駆動信号を与え、各列に含まれる上記アレイ素子に与えられる上記書込電圧に基づいて、EWODまたはDEPを利用して、各列に含まれる上記1個または複数の液滴を選択的に操作する第2の列駆動回路とを含んでいる。
【0090】
また、本発明は、汎用的な形態を含んでいる点において有利である。例えば、本発明に係る再構成可能なAM−EWOD装置は、DEP機能をさらに備えることができる。ここで、第2の駆動メカニズムとして、DEPをさらに備えることにより、液滴に含まれる誘電性の粒子(例えば、細胞、玉)を、液滴の媒体とは分離して操作することができる。これは、サンプル洗浄および集細胞などに応用することができる。
【0091】
本発明を、特定の1つのまたは複数の実施形態を参照しながら図示するとともに説明したが、当業者は、本明細書および添付の図面を参照することによって、同等の代替例および変形例に想到できるであろう。特に、上述の素子(構成部品、アセンブリ、装置、構造など)によって実行される様々な機能に関して、このような素子を説明するために利用される用語(「手段」への言及を含む)は、他に記載がない限り、開示されている本発明の典型的な1つまたは複数の実施形態における機能を実行する構成と、構造的に同等でなくても、当該特定の機能を実行する任意の素子(すなわち、機能的に同等の素子)に対応することが意図される。さらに、本発明の特定の特徴を、1つまたは複数の実施形態だけを参照して説明してきたが、このような特徴は、他の実施形態の1つまたは複数の他の特徴と、所望のように、および、所定のまたは特定の用途にとって都合がよいように、組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
上記AM−EWOD装置は、ラボオンチップシステムの一部として利用してもよい。このような装置は、化学、生化学、または生理学における物質の操作、反応および検知に利用することができる。本発明の用途としては、医療診断検査、化学または生化学における物質の合成、プロテオミクス、生命科学および法医科学研究のための器具などを挙げることができる。
【符号の説明】
【0093】
4 液滴
6 接触角θ
16 疎水層
20 絶縁体層
26 疎水層
28 上部基板電極
32 スペーサ
34 非イオン液体
36 上部基板
38 電極
40 回路ノード
42 電極アレイ
43 アレイ素子
44 粒子
46 DEPゾーン
48 電極
50 電極
52 配線
72 下部基板
74 薄膜電子回路
76 行駆動回路
78 第1の列駆動回路
80 シリアルインターフェース
82 接続配線
83 電圧供給インターフェース
84 アレイ素子回路
86 第2の列駆動回路
104 SRAMメモリセル
106 スイッチ回路
108 出力バッファステージ
110 スイッチトランジスタ
112 スイッチトランジスタ
203 ストレージキャパシタ
206 スイッチトランジスタ
210 メモリノード
212 インバータ
214 第1のアナログスイッチ
216 第2のアナログスイッチ
222 メモリ回路
224 反転回路
226 第1のインバータ
228 第2のインバータ
230 スイッチトランジスタ
500 第2の列駆動回路素子
502 3個のスイッチからなる第1のバンク
504 3個のスイッチからなる第2のバンク
506 デジタル出力選択回路
508 デジタル制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体装置であって、
アレイ上の1個または複数の液滴を操作するように構成されている複数のアレイ素子と、
アクティブマトリクス駆動回路とを備えており、
各アレイ素子は、
上部基板上に形成されている上部基板電極と、
下部基板上に形成されている駆動電極とを含んでおり、
上記上部基板電極および上記駆動電極の間に上記1個または複数の液滴を配置可能であり、
上記アクティブマトリクス駆動回路は、
上記複数のアイレ素子の、上記上部基板電極および上記駆動電極に駆動信号を与え、上記複数のアレイ素子の間で、上記1個または複数の液滴を操作するように構成されており、
1個または複数の上記アレイ素子について、誘電体エレクトロウェッティング(EWOD:Electro-wetting-on-Dielectric)および誘電泳動(DEP:Dielectrophoresis)の両方によって、上記アレイ素子内にある上記1個または複数の液滴を選択的に操作するように、上記上部基板電極および上記駆動電極に上記駆動信号を与えるよう構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
上記アクティブマトリクス駆動回路は、ある時点においてEWODによって、かつ別の時点においてDEPによって、上記アレイの所定の部位における上記1個または複数の液滴を操作可能とするように上記装置を再構成することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
上記アクティブマトリクス駆動回路は、
上記1個または複数のアレイ素子の、上記上部基板電極および上記駆動電極に上記駆動信号を選択的に与えるように構成されており、
上記1個または複数の液滴に渡る電圧波形について、
EWODを利用する場合には、上記電圧波形が直流または比較的低周波数の交流のいずれかの電圧波形となるようにし、
DEPを利用する場合には、上記駆動信号が比較的高周波数の交流の電圧波形となるようにし、
上記1個または複数の液滴を操作することを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
上記1個または複数のアレイ素子は、上記アレイの異なる部位に配置されており、
上記アクティブマトリクス駆動回路は、
EWODを利用した上記部位の一部分における上記1個または複数の液滴の中の複数個の液滴の操作と、
DEPを利用した上記部位の他の部分における上記1個または複数の液滴の中の他の液滴の操作とを同時に行うことが可能なように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
上記アレイ素子は、M×Nアレイであり、
上記Mおよび上記Nは、2以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
上記アクティブマトリクス駆動回路は、任意の時点にて、上記アレイに含まれる各列に対して、EWODまたはDEPによる駆動を個別に選択可能であるように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
上記アクティブマトリクス駆動回路は、
上記アレイに含まれる行を選択するように構成されている行駆動回路と、
選択された所定の行に含まれる上記アレイ素子に書込電圧を与える第1の列駆動回路と、
上記アレイに含まれる各列の、上記上部基板電極および上記駆動電極に上記駆動信号を与え、各列に含まれる上記アレイ素子に与えられる上記書込電圧に基づいて、EWODまたはDEPを利用して、各列に含まれる上記1個または複数の液滴を選択的に操作する第2の列駆動回路とを含んでいることを特徴とする請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
上記アクティブマトリクス駆動回路は、
上記アレイに含まれる複数の列について、EWODのみを利用して上記1個または複数の液滴を操作し、
上記アレイに含まれる他の列について、選択的に、EWODまたはDEPを利用して上記1個または複数の液滴を操作することを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
上記アクティブマトリクス駆動回路は、任意の時点において、上記アレイに含まれる各行に対して、EWODまたはDEPによる駆動を個別に選択可能であるように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項10】
上記駆動信号は、直流信号および比較的低周波数の信号、比較的高周波数の信号、ならびに各信号の論理否定のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
上記直流信号および当該信号の論理否定は、所定のアレイ素子の、上記上部基板電極および上記駆動電極に選択的に与えられ、直流EWODを利用して上記1個または複数の液滴を操作することを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
上記比較的低周波数の信号および当該信号の論理否定は、所定のアレイ素子の、上記上部基板電極および上記駆動電極に選択的に与えられ、交流EWODを利用して上記1個または複数の液滴を操作することを特徴とする請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
上記比較的高周波数の信号および当該信号の論理否定は、所定のアレイ素子の上記上部基板電極および上記駆動電極に選択的に与えられ、DEPを利用して上記1個または複数の液滴を操作することを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
上記アレイ素子は、大きなアスペクト比を有していることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
上記アレイ素子は、共通の上部基板電極を有していることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
アレイ上の1個または複数の液滴を操作するように構成された複数のアレイ素子を含んでいるマイクロ流体装置を駆動する方法であって、
誘電体エレクトロウェッティング(EWOD:Electro-wetting-on-Dielectric)および誘電泳動(DEP:Dielectrophoresis)のそれぞれによって、上記1個または複数の液滴を操作するように、アクティブマトリクス駆動回路を利用して、上記1個または複数のアレイ素子に含まれる上記1個または複数の液滴に、直流電圧または比較的低周波数の交流電圧、および比較的高周波数の交流電圧を選択的に与える工程を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項17】
ある時点においてEWODによって、かつ別の時点においてDEPによって、上記アレイの所定の部位における上記1個または複数の液滴を操作する工程を含んでいることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
EWODを利用した上記アレイの一部分における上記1個または複数の液滴の中の複数個の液滴の操作と、DEPを利用した上記アレイの他の部分における上記1個または複数の液滴の中の他の液滴の操作とを同時に行なう工程を含んでいることを特徴とする請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
上記アレイ素子は、M×Nアレイであり、
上記Mおよび上記Nは、2以上であり、
上記アクティブマトリクス駆動回路は、任意の時点において、上記アレイに含まれる各列に対して、EWODまたはDEPによる駆動を個別に選択可能であるように構成されていることを特徴とする請求項16から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
上記アクティブマトリクス駆動回路は、
上記アレイに含まれる行を選択するように構成されている行駆動回路と、
選択された所定の行に含まれる上記アレイ素子に書込電圧を与える第1の列駆動回路と、
上記アレイに含まれる各列に駆動信号を与え、各列に含まれる上記アレイ素子に与えられる上記書込電圧に基づいて、EWODまたはDEPを利用して、各列に含まれる上記1個または複数の液滴を選択的に操作する第2の列駆動回路とを含んでいることを特徴とする請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−78758(P2013−78758A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−195519(P2012−195519)
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】