説明

エレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム

【課題】低電圧で導電性液体を駆動できるエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムを提供する。
【解決手段】光学素子100は、第1基板101、第1電極102、エレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム103、隔壁104、疎水性液体105、導電性液体106、第2電極107、第2基板108、および側壁109を有し、エレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムはフッ化ビニリデン系重合体を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロウエッティング(electrowetting)とは、電界を用いて、疎水性誘電体フィルムの表面の濡れ性(wettability)を疎水性(撥水性)から親水性の間で変化させることを意味する。このエレクトロウエッティングにより、前記表面上に配置した導電性液体を駆動することができる。この機構は、機械的可動部無しで導電性液体を駆動できる点で、装置の小型化および長寿命化に有利である。従って、エレクトロウエッティングデバイスは、特に、ディスプレイ装置における光学素子、焦点距離を任意に変化させられる液体レンズ、および検査機器における少量液体の輸送などの様々な用途への応用が提案されている。
【0003】
しかし、このような導電性液体の駆動には高い電圧が必要であり、その結果、装置の消費電力が高くなるという問題がある。このことはエレクトロウエッティングデバイスの実用化の妨げになっている。
【0004】
ところで、疎水性誘導体フィルムの表面の濡れ性は、接触角によって表される。
【0005】
印加電圧がVのときの導電性液体と疎水性誘電体フィルムとの間の接触角θは、下記の式(1)により示されることが知られている。
【0006】
【数1】

【0007】
ここで、式中の記号の意味は次の通りである。
【0008】
θ:印加電圧がVのときの導電性液体と疎水性誘電体フィルムの間の接触角
θ:電圧を印加していないときの導電性液体と疎水性誘電体フィルムの間の接触角
γLG:導電性液体の表面張力
ε:疎水性誘電体フィルムの比誘電率
ε:真空中の誘電率
l:誘電体膜の膜厚
V:印加電圧
【0009】
前述のように、導電性液体の駆動は、疎水性誘電体フィルムの濡れ性の変化に基づくので、この式から理解されるように、導電性液体の駆動に必要な電圧を低くするためには、誘電体膜の膜厚を小さくすること、または誘電率を大きくすることが必要である。
【0010】
しかし、膜厚を小さくするとピンホールが生じやすくなり、これにより絶縁破壊が起こりやすくなるという問題がある。
【0011】
なお、従来、疎水性フィルムとしてフッ素材料から構成される疎水性フィルムが使われている例があるが、このような疎水性フィルムは、比誘電率が低い(5以下)。
【0012】
この問題を解決するため、例えば、特許文献1では、電極になる金属の表面のみを陽極酸化して誘電体膜にすることにより、ピンホールの発生を抑制し、誘電体膜の薄膜化を可能にし、その結果、駆動電圧を低下させること、が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−107826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしなお、低い電圧での導電性液体駆動を可能にする技術の提供が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、
フッ化ビニリデン系重合体(A)、および
高誘電性無機粒子(B)
を含有するエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム
によって、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
すなわち、本発明は、下記の項に記載の態様などを提供する。
【0017】
[項1]
フッ化ビニリデン系重合体を含有するエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム。
[項2]
フッ化ビニリデン系重合体が、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン系共重合体である前記項1に記載のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム。
[項3]
更に高誘電性無機粒子を含有する前記項1または2に記載のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム。
[項4]
高誘電性無機粒子が、
(Ba) 式:
nanbnC
(式中、
は周期表2族金属元素であり;
は周期表4族金属元素であり;
naは0.9〜1.1であり;
nbは0.9〜1.1であり;および
ncは2.8〜3.2である)で示される金属酸化物、および
(Bb) 式:
nab’nb’nc
(式中、
は周期表2族金属元素であり、
b’は周期表第5周期金属元素であり、
naは0.9〜1.1であり、
nb’は0.9〜1.1であり、および
ncは2.8〜3.2である)
で示される金属酸化物
からなる群から選択される1種以上の金属酸化物の粒子である前記項1〜3のいずれかに記載のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム。
[項5]
金属酸化物が、チタン酸バリウムである前記項4に記載のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム。
[項6]
フッ化ビニリデン共重合体100質量部に対し、高誘電性無機粒子を10〜100質量部含有する前記項3〜5のいずれかに記載のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム。
[項7]
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に、移動可能に配置された導電性液体と、
前記第1電極と前記導電性液体との間に、前記第1電極を前記第2電極から絶縁するように配置された、前記項1〜6のいずれかに記載のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムと
を有するエレクトロウエッティングデバイス。
【発明の効果】
【0018】
本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムは、低い電圧で導電性液体を駆動できる。
【0019】
本発明のエレクトロウエッティングデバイスは、これが有する導電性液体が低い電圧で駆動され得るので、消費電力が低い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態である光学素子の全体構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した光学素子の動作を説明するための概略図である。
【図3】本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムを有する積層体の一具体例の構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.エレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム
本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムは、フッ化ビニリデン系重合体を含有する。
【0022】
1.1.フッ化ビニリデン系重合体
フッ化ビニリデン系重合体(VdF系重合体)の例としては、(1)VdFの単独重合体(PVdF)、および(2)VdFと、当該VdFと共重合可能な他の単量体の1種または2種以上との共重合体が挙げられる。
【0023】
VdFと共重合可能な他の単量体の例としては、
テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、モノフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、およびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)などの含フッ素オレフィン類;
含フッ素アクリレート;および
官能基を有する含フッ素単量体が挙げられる。
【0024】
なかでも、溶剤溶解性が良好な点から、好ましい例として、TFE、CTFE、TrFEおよびHFPが挙げられる。
【0025】
なお、本明細書中、「パーフルオロ」とは炭化水素化合物(または炭化水素基)中の全ての水素(または1個の水素を除く全ての水素)がフッ素で置換されていることを意味する。
【0026】
VdF系重合体におけるVdFの共重合割合は、比誘電率が高い点、および溶剤溶解性が高い点から、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上である。
【0027】
VdF系重合体の具体例としては、PVdF、VdF/TFE系共重合体、VdF/TFE/HFP系共重合体、VdF/HFP系共重合体、VdF/TrFE系共重合体およびVdF/CTFE系共重合体が挙げられ、なかでも、比誘電率が高い点、および溶剤溶解性が良好な点から、好ましい例として、PVdF、VdF/TFE系共重合体、VdF/TrFE系共重合体、およびVdF/HFP系共重合体が挙げられ、より好ましい例として、PVdF、VdF/TrFE系共重合体、およびVdF/TFE系共重合体が挙げられ、特に好ましい例として、VdF/TFE共重合体が挙げられる。VdF/TFE共重合体は比誘電率が特に高いので、これから構成されるエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムを用いた消費電力を特に低くできる。
【0028】
VdF系重合体がVdF/TFE系共重合体である場合、耐電圧が高い点から、好ましくは、VdF単位含量が60〜95モル%で、かつTFE単位含量が5〜40モル%であり、より好ましくは、VdF単位が65〜90モル%で、かつTFE単位が10〜35モル%である。
【0029】
VdF系重合体の比誘電率(25℃、1kHz)の下限は、耐電圧、絶縁性、および比誘電率が高い点、ならびにフィルムにしたときの比誘電率が高い点から、好ましくは3、より好ましくは5、更に好ましくは8、特に好ましくは9以上である。その上限は特に制限されないが、通常12、好ましくは11である。
【0030】
VdF系重合体(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムにおける含フッ素重合体(A)の含有量は、好ましくは50w/w%以上である。
【0032】
1.2.高誘電性無機粒子(B)
高誘電性無機粒子(B)は、好ましくは、例えば、下記の(Ba)の金属酸化物および(Bb)の金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物の粒子である。
【0033】
(Ba) 式:
nanbnC
(式中、
は周期表2族金属元素であり、
は周期表4族金属元素であり、
naは0.9〜1.1であり、
nbは0.9〜1.1であり、および
ncは2.8〜3.2である)で示される金属酸化物(以下、金属酸化物(Ba)と称する場合がある)。
【0034】
金属酸化物(Ba)における周期表2族金属元素Mの好ましい例としては、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、およびバリウム(Ba)が挙げられる。周期表4族金属元素Mの好ましい例としては、チタン(Ti)、およびジルコニウム(Zr)が挙げられる。式(Ba)で表される金属酸化物の粒子において、M、およびMは、それぞれ1種の元素であってもよく、2種以上の元素であってもよい。
【0035】
金属酸化物(Ba)の具体例としては、チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸カルシウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、およびジルコン酸ストロンチウムが挙げられ、なかでも、チタン酸バリウムが特に好ましい。
【0036】
(Bb) 式:
nab’nb’nc
(式中、
は周期表2族金属元素であり、
b’は周期表第5周期金属元素であり、
naは0.9〜1.1であり、
nb’は0.9〜1.1であり、および
ncは2.8〜3.2である)
で示される金属酸化物(以下、金属酸化物(Bb)と称する場合がある)。
【0037】
金属酸化物(Bb)における周期表2族金属元素Mの好ましい例としては、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、およびバリウム(Ba)が挙げられる。周期表第5周期金属元素Mb’の好ましい例としては、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ジルコニウム(Zr)、およびインジウム(In)が挙げられる。式(Bb)で表される金属酸化物の粒子において、M、およびMb’は、それぞれ1種の元素であってもよく、2種以上の元素であってもよい。
【0038】
金属酸化物(Bb)の具体例としては、スズ酸マグネシウム、スズ酸カルシウム、スズ酸ストロンチウム、スズ酸バリウム、アンチモン酸マグネシウム、アンチモン酸カルシウム、アンチモン酸ストロンチウム、アンチモン酸バリウム、ジルコン酸マグネシウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸ストロンチウム、ジルコン酸バリウム、インジウム酸マグネシウム、インジウム酸カルシウム、インジウム酸ストロンチウム、およびインジウム酸バリウムが挙げられる。
【0039】
なかでも、比誘電率が高い点から、好ましい例として、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウムカルシウム、およびチタン酸ストロンチウムが挙げられ、より好ましい例としてチタン酸バリウムが挙げられる。
【0040】
高誘電性無機粒子(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
また、このような金属酸化物の粒子との組み合わせにおいて、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸亜鉛、およびチタン酸鉛などの他の金属酸化物(特に、前記したもの以外の、酸化チタンの複合酸化物)の粒子を用いてもよい。
【0042】
高誘電性無機粒子(B)の質量平均一次粒子径の上限は、フィルムの均一分散性に優れる点から、好ましくは500nm、より好ましくは100nmである。一方、当該質量平均粒子径が小さすぎると、高い比誘電率が得られない場合があるので、質量平均粒子径の下限は、好ましくは10nmであり、より好ましくは20nm、更に好ましくは50nmである。
【0043】
高誘電性無機粒子(B)の比誘電率(25℃、1kHz)の下限は、好ましくは100であり、より好ましくは300である。その上限は特に制限されないが、通常3000程度である。
【0044】
本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムにおける、高誘電性無機粒子(B)の含有量の下限は、VdF系重合体(A)100質量部に対して、好ましくは10質量部、より好ましくは50質量部、更に好ましくは150質量部である。この量が少なすぎる場合、フィルムの比誘電率は、低くなる傾向がある。一方、この含有量の上限は、好ましくは300質量部、より好ましくは250質量部、更に好ましくは100質量部である。この量が多すぎると、フィルムは、脆くなる傾向がある。
【0045】
1.3.その他の成分
本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムは、所望により、親和性向上剤などの、その他の成分を含有してもよい。
【0046】
親和性向上剤は、高誘電性無機粒子とフッ化ビニリデン系重合体との間の親和性を高め、高誘電性無機粒子をフッ化ビニリデン系重合体に均一に分散させ、高誘電性無機粒子とフッ化ビニリデン系重合体をフィルム中でしっかり結合させ、ボイドの発生を抑制し、および比誘電率を高めることができる。
【0047】
親和性向上剤としては、カップリング剤、界面活性剤、またはエポキシ基含有化合物が有効である。
【0048】
親和性向上剤としての「カップリング剤」の例としては、有機チタン化合物、有機シラン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、および有機リン化合物が挙げられる。
【0049】
有機チタン化合物の例としては、アルコキシチタニウム、チタニウムキレート、およびチタニウムアシレートなどのカップリング剤が挙げられ、なかでも、高誘電性無機粒子(B)との親和性が良好な点から、好ましい例として、アルコキシチタニウム、およびチタニウムキレートが挙げられる。
【0050】
その具体例としては、テトライソプロピルチタネート、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコレート、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、ジイソプロポキシチタンジイソステアレート、テトライソプロピルビス(ジオクチルフォスファイト)チタネート、およびイソプロピルトリ(n−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネートが挙げられる。
【0051】
有機シラン化合物は、高分子型であっても、低分子型であってもよく、その例として、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、およびテトラアルコキシシランなどのアルコキシシランが挙げられる。 また、ビニルシラン、エポキシシラン、アミノシラン、メタクロキシシラン、およびメルカプトシランなども好適に使用できる。
【0052】
アルコキシシランを用いる場合、加水分解により、表面処理の効果である体積抵抗率のより一層の向上(電気絶縁性の向上)を図ることができる。
【0053】
有機ジルコニウム化合物の例としては、アルコキシジルコニウム、およびジルコニウムキレートが挙げられる。
【0054】
有機アルミニウム化合物の例としては、アルコキシアルミニウム、およびアルミニウムキレートが挙げられる。
【0055】
有機リン化合物の例としては、亜リン酸エステル、リン酸エステル、およびリン酸キレートが挙げられる。
【0056】
親和性向上剤としての「界面活性剤」は、高分子型であっても、低分子型であってもよく、その例としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、およびカチオン性界面活性剤が挙げられる。なかでも、熱安定性が良好な点から、高分子型の界面活性剤が好ましい。
【0057】
非イオン性界面活性剤の例としては、ポリエーテル誘導体、ポリビニルピロリドン誘導体、およびアルコール誘導体が挙げられ、なかでも、高誘電性無機粒子(B)との親和性が良好な点から、ポリエーテル誘導体が好ましい。
【0058】
アニオン性界面活性剤との例としては、スルホン酸、およびカルボン酸、およびそれらの塩を含有するポリマーなどが挙げられ、なかでも、VdF系重合体(A)との親和性が良好な点から、好ましい例として、アクリル酸誘導体系ポリマー、メタクリル酸誘導体系ポリマー、が挙げられる。
【0059】
カチオン性界面活性剤の例としては、アミン系化合物、およびイミダゾリンなどの含窒素系複合環を有する化合物、およびそのハロゲン化塩が挙げられる。
【0060】
親和性向上剤としての「エポキシ基含有化合物」は、低分子量化合物であっても、高分子量化合物であってもよく、その例としては、エポキシ化合物、およびグリシジル化合物が挙げられる。なかでも、VdF系重合体(A)との親和性が特に良好な点から、エポキシ基を1個有する低分子量の化合物が好ましい。
【0061】
エポキシ基含有化合物の好ましい例としては、特にVdF系重合体(A)との親和性に優れている点から、式:
【0062】
【化1】

【0063】
(式中、
Rは、
(1)(a)水素原子、
(b)メチル基、
(c)酸素原子、もしくは窒素原子を介在してもよい炭素数2〜10の炭化水素基、または
(2)置換されていてもよい芳香環基
を表し;
lは、0または1を表し;
mは、0または1を表し;および
nは、0〜10の整数を表す。)
で示される化合物が挙げられる。
【0064】
その具体例としては、
【0065】
【化2】

【0066】
などの、ケトン基、またはエステル基を有する化合物が挙げられる。
【0067】
親和性向上剤は、本発明の効果が失われない範囲内の量で使用できるが、具体的には、均一な分散、および得られるフィルムの比誘電率が高い点から、その量は、高誘電性無機粒子(B)100質量部に対して、好ましくは0.01〜30質量部、より好ましくは0.1〜25質量部、更に好ましくは1〜20質量部である。
【0068】
更に、本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムは、本発明の効果が失われない範囲内で、他の添加剤を含有してもよい。
【0069】
本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムの膜厚の上限は、導電性液体の駆動に必要な電圧を低くする点から、好ましくは15μm、より好ましくは10μm、更に好ましくは5μm、特に好ましくは2μmである。本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムは薄いことが好ましいが、機械的強度を維持するため、通常、その膜厚の下限は約10nmである。
【0070】
本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムの比誘電率(測定条件:30℃、100Hz〜10kHz)で、好ましくは9以上、より好ましくは15以上、更に好ましくは20以上である。
【0071】
本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムは、自立したフィルム(self-supporting film)であってもよく、塗膜(coated film)であってもよい。
【0072】
(製造方法)
本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムは、溶融押出法またはキャスト法のような公知のフィルム形成方法によって製造することができる。
【0073】
簡便さ、および得られるフィルムの均質性に優れる点から、キャスト法を採用することが有利である。
【0074】
キャスト法による製造方法としては、例えば、
(1)前記で説明した、VdF系重合体(A)、高誘電性無機粒子(B)、および所望による他の成分(C)を溶媒中に溶解または分散させて液状組成物を調製すること、
(2)当該液状組成物を基材上に塗布し、および乾燥させてフィルムを形成すること、および
(3)所望により、前記基材からフィルムを剥離すること
を含む方法が挙げられる。
【0075】
溶媒としては、VdF系重合体(A)を溶解または均一に分散し得る任意の溶媒を使用できるが、特に、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒の好ましい例としては、ケトン系溶剤、エステル系溶媒、カーボネート系溶媒、環状エーテル系溶媒、およびアミド系溶剤が挙げられ、その好ましい具体例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド(DMF)、およびジメチルアセトアミドが挙げられる。
【0076】
液状組成物を基材上に塗布する方法としては、例えば、ナイフコーティング法、キャストコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ブレードコーティング法、ロッドコーティング法、またはエアドクタコーティング法などを使用できるが、なかでも、操作性が容易な点、膜厚のバラツキが少ない点、生産性に優れる点から、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、またはキャストコーティング法が好ましい。
【0077】
このようなコーティング法を採用した場合、非常に薄い膜厚のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムを得ることができる。
【0078】
本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムは、その表面に電荷を印加されることにより、その表面の濡れ性が変化し、その表面に接触している導電性液体を駆動する。また、本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムは、その表面に電荷を印加されることにより、当該表面に電荷が蓄積されるので、その電荷のクーロン力によって、近距離の液体を駆動する。
【0079】
導電性液体の例としては、これに限定されるものではないが、水、および電解質(例、塩化カリウム、塩化ナトリウム)含有水性溶液が挙げられる。導電性液体は、通常、極性液体である。
【0080】
「導電性液体を駆動する」とは、導電性液体を移動させること、および導電性液体を変形させることを含む。
【0081】
本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムは、前述のように高い比誘電率を有し、それにより、低い電圧で導電性液体を駆動できるので、光学素子、表示装置(ディスプレイ)、可変焦点レンズ、光変調装置、光ピックアップ装置、光記録再生装置、現像装置、液滴操作装置、分析機器(例、試料の分析のため微小の導電性液体を移動させる必要がある、化学、生化学、および生物学的分析機器)などにおけるエレクトロウエッティングデバイスに好適に用いることができる。
【0082】
また、本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムは、可撓性を有するので、このような種々の用途に好適に用いることができる。
【0083】
本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムを前記のようなエレクトロウエッティングデバイスに用いるために、例えば、
基板と、
前記基板の少なくとも一部の上に形成された電極と、
前記電極を覆うように前記基板の上に配置された無機高誘電体層と、
前記無機高誘電体層の上に配置された本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムと
からなる積層体が構成されてもよい。
【0084】
前記電極が、前記基板の一つの主面全体に形成される場合、当該電極は、前記基材と前記無機高誘電体層との間に介在する。
【0085】
基板は、例えば、ガラス、または透明樹脂のような、光透過性の絶縁材料によって構成され得るが、その上に電極を形成できるものであれば、特に限定されない。透明樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、およびポリスチレン樹脂などが挙げられる。
【0086】
基板の厚さは特に限定されないが、例えば、1μm〜100mmである。
【0087】
電極は、例えば、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、またはInとSnOとの混合物である酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin Oxide)などの透明な導電材料から構成され得る。また、電極は、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)またはフッ素(F)などがドープされた、In膜、SnO膜またはITO膜であることができる。
また、電極は、例えば、酸化マグネシウム(MgO)または酸化亜鉛(ZnO)などからも構成され得る。また、電極は、アルミニウム(Al)がドープされたZnO膜であるAZO膜、ガリウム(Ga)がドープされたZnO膜であるGZO膜、またはインジウムがドープされたZnO膜であることができる。
更にまた、電極は、例えば、チオフェン系導電性ポリマー、ポリアニリン、およびポリピロールなどの導電性ポリマーから選択される透明な有機導電材料;またはアルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛、ステンレス、金、銀、白金、タンタル、チタン、ニオブ、モリブデンなどの金属材料から構成され得る。
【0088】
無機高誘電体層は、絶縁性が高く、誘電率も高いことが好ましい。例えば、無機高誘電体層の絶縁性および誘電率は、それぞれ本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムと同じ程度であることが好ましい。この無機高誘電体層の存在は、積層体の電気絶縁性および耐電圧性を向上させることができる。
【0089】
無機高誘電体層は、例えば、シリカを含有する無機絶縁コーティング材から構成される。このような無機絶縁コーティング材の例としては、市販の無機コート材を使用することができる(例、AT−201(商品名)、日産化学工業)。
【0090】
無機高誘電体層の体積抵抗率は、高い電気絶縁性と高い耐電圧を得る目的から、好ましくは1013Ω・cm以上、より好ましくは1014Ω・cm以上、更に好ましくは1015Ω・cm以上である。
【0091】
無機高誘電体層の厚さの下限は、良好な絶縁性および耐電圧の向上が得られる点から、好ましくは0.5μm、より好ましくは1μm、更に好ましくは2μmである。その上限は、高誘電性を維持する点から、好ましくは5μm、より好ましくは3μmである。
【0092】
このような積層体は、例えば、下記の方法で製造できる。
【0093】
前記のような基板上に、スパッタ法または蒸着法などにより電極を形成する。次いで、当該電極を覆うように、前記基板の主面上に、前記のような無機絶縁コート材の溶液をスピンコート法などによって塗り、次いで焼成して、無機高誘電体層を形成させる。次いで、当該無機高誘電体層の上に、例えば、前記のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムの製造方法で説明したキャスト法などにより、本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムを形成させて、積層体を得る。
【0094】
2.エレクトロウエッティングデバイス
本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムは、エレクトロウエッティングデバイス用フィルムとして、好適に用いることができる。
【0095】
本発明のエレクトロウエッティングデバイスは、
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に、移動可能に配置された導電性液体と、
前記第1電極と前記導電性液体との間に、前記第1電極を前記第2電極から絶縁するように配置された、本発明のエレクトロウエッティングデバイス用フィルムと、
を有する。
【0096】
本発明のエレクトロウエッティングデバイスにおいて、第1電極と第2電極との間に所定の電圧を印加すると、エレクトロウエッティングデバイス用フィルム表面に電界が印加される。これにより、前記で本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムについて説明したように導電性液体が駆動される。
【0097】
導電性液体は、極性を有する液体材料であり、その例としては、水、および電解質(例、塩化カリウム、塩化ナトリウム)含有水性溶液が挙げられる。
【0098】
導電性液体は、前記で本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムについて説明したものと同じであり、および低粘度であることが好ましい。
【0099】
第1電極および第2電極は、それぞれ、前記積層体について説明した電極と同様のものであることができる。。
【0100】
本発明のエレクトロウエッティングデバイスは、例えば、光学素子、表示装置(ディスプレイ)、可変焦点レンズ、光変調装置、光ピックアップ装置、光記録再生装置、現像装置、液滴操作装置、ストロボ装置、分析機器(例、試料の分析のため微小の導電性液体を移動させる必要がある、化学、生化学、および生物学的分析機器)などに好適に適用できる。
【0101】
以下に、本発明のエレクトロウエッティングデバイスの一実施形態である光学素子を、図を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。理解し易さを優先するため、これらの図面は、各寸法の比を正確に表してはいない。また、以下で説明される構成要件は、必ずしも本発明に必須の構成要件ではない。なお、以下の図において、特に記載の無い限り、同符号のものは同様の意味を表す。
【0102】
図1に、本発明のエレクトロウエッティングデバイスの一実施形態である光学素子100の構成を説明するための断面図を表す。図1の光学素子100においては、2つのセル領域zが見られるが、光学素子は、図1の左右方向、および前後方向に、それぞれ任意の数のセル領域zを有していてもよく、例えば、セル領域zの数は1個でもよい。
【0103】
光学素子100は、第1基板101、第1電極102、エレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム103、隔壁104、疎水性液体105、導電性液体106、第2電極107、第2基板108、および側壁109を有する。一方、制御部200は、スイッチ201、および電源202を有している。
【0104】
第1基板101および第2基板108は、側壁109によって支持されて対向するように配置される。
【0105】
第1基板101および第2基板108は、前記積層体の基板について説明した材料によって構成される。
【0106】
第1基板101には、セル領域z毎に、駆動素子111、および当該駆動素子111(例、薄膜トランジスタ)を個別に駆動させるために制御部200から発せされる信号を伝達する信号線(図示せず。例、電線)が設けられている。
【0107】
第1電極102は、セル領域z毎に電圧を印可できるように、複数に分割され、互いに絶縁され、およびその各電極が各セル領域zに対応して配置されている。第1電極102電極は、それぞれ各駆動素子111に接続されている。
【0108】
第1電極102および第2電極107は、前述の材料によって構成される。
【0109】
エレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム103は、前記で説明した本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムである。
【0110】
隔壁104は、光が透過する単位領域となるセル領域zを区画する仕切部材であり、エレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム103上に縦に配置されている。
【0111】
隔壁104を構成する材料は、疎水性液体105にも導電性液体106にも溶解せず、かつ、反応しないことが必要である。このような材料としては、例えば、アクリル樹脂、およびエポキシ樹脂のような高分子材料が挙げられる。
【0112】
隔壁104の表面は、導電性液体106に対して親和性を示すように親水化処理されていてもよい。親水化処理は、紫外線照射、酸素プラズマ照射、レーザ照射などの公知の方法によって実施することができる。
【0113】
隔壁104によって区画されたセル領域z内には、疎水性液体105が保持されている。すなわち、隔壁104によって、隣接する他のセル領域zへの疎水性液体105の移動(流出)が防がれている。各セル領域zにおける疎水性液体105の量は、エレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム103表面に電界が付加されていないときに各セル領域zにおけるエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム103の表面を全て覆うのに十分な量であることが好ましい。
【0114】
疎水性液体105は、媒質として疎水性有機溶媒を含有する。疎水性有機溶媒の例としては、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、ウンデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ブチルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレンなどの炭素数6〜35の炭化水素;およびシリコーンオイルが挙げられる。
【0115】
これらの疎水性有機溶媒は、単独で、または組み合わせて用いることができる。
【0116】
疎水性液体105は、所定の波長の光(例、可視光)を吸収する顔料または染料を含有する。顔料または染料は、前記媒質中に分散または溶解している。
【0117】
顔料の例としては、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、アゾ顔料(例、アゾレーキ)、および多環式顔料(例、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料)を挙げることができる。顔料は、疎水性液体105への高い分散性を有することが好ましい。
【0118】
染料の例としては、オイルブルーN(アルドリッヒ社)が挙げられる。染料は、疎水性液体105への高い溶解性を有することが好ましい。
【0119】
疎水性液体105は、低粘度であり、かつ導電性液体106と混和しないことが好ましい。
【0120】
なお、疎水性液体105は、通常、非極性液体である。また、疎水性液体105は、通常、非導電性液体である。
【0121】
導電性液体106は、エレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム103と第2電極107との間に保持される。疎水性液体105と導電性液体106は、分離して2つの層を形成する。好ましくは、エレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム103と第2電極107との間の空間は、疎水性液体105と導電性液体106とで満たされている。この場合であっても、疎水性液体105は流動体なので、導電性液体106は移動可能である。
【0122】
導電性液体106は、極性を有する透明な液体材料であり、その例としては、水、および電解質(例、塩化カリウム、塩化ナトリウム)含有水性溶液が挙げられる。
【0123】
導電性液体106は、低粘度であり、かつ疎水性液体105と混和しないことが好ましい。
【0124】
側壁109は、第1基板101および第2基板108と共に疎水性液体105および導電性液体106を密封するシール部材である。側壁109を構成する材料の例としては、シリコーンが挙げられる。
【0125】
制御部200は、光学素子100に対する駆動制御を行う。
【0126】
制御部200は、スイッチ201と電源202とを備える。
【0127】
スイッチ201の一方の端子は、導線によって第2電極107と接続され、その他方の端子は、導線によって、電源202および駆動素子111を介して、第1電極102と接続されている。
【0128】
スイッチ201は、両端子の間を電気的に接続するオン状態と、両端子の間を電気的に切断するオフ状態との2つの状態を選択できる。
【0129】
電源202としては、電圧の大きさを変化させることができ、かつ、一定にできる電源を用いることが好ましい。
【0130】
これにより、制御部200は、スイッチ201の操作と、電源202の電圧制御とにより、第1電極102と第2電極107との間に所定の電圧を印加することができる。所定の電圧を印可するセル領域zの選択は、ゲートドライバ(図示せず)によって駆動素子111を選択することによって実施する。
【0131】
次に、図2を参照して、上記のように構成された光学素子100の動作について説明する。図2は、光学素子100におけるセル領域zの1つを拡大して表したものである。
【0132】
制御部200においてスイッチ201をオフ状態にし、第1電極102と第2電極107との間に電圧を印加しない場合には、図2(A)に示すように、顔料または染料で着色された疎水性液体105が広がって各セル領域zの全体を覆う。それによって、例えば、疎水性液体105が可視光の全波長を吸収する場合、図2(A)の第1基板101の側から、あるセル領域zに入射した入射光Linは、疎水性液体105によって遮断され、セル領域zを通過しない。一方、制御部200においてスイッチ201をオン状態とし、第1電極102と第2電極107との間に電圧を印加した場合には、図2(B)に示すように、導電性液体106はセル領域zの一部の領域(領域b)でエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム103と接触し、一方、疎水性液体105は各セル領域zのその他の領域(領域a)に集まる。そのため、第1基板101の側から、あるセル領域zに入射した入射光Linのうち、領域aに入射した光Lin-aは疎水性液体105によって遮断されるが、領域bに入射した残りの光Lin-bは当該領域を通過し、透過光Loutとして射出する。
【0133】
図3に本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムを備えた積層体の一具体例を示す。
【0134】
積層体150は、
第1基板101の少なくとも一部の上に形成された第1電極102と、
前記第1電極102を覆うように前記第1基板101の上に配置された無機高誘電体層112と、
前記無機高誘電体層112の上に配置されたエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム103と
からなる。
【0135】
無機高誘電体層112は、前述の材料によって構成される。
【0136】
第1基板101、第1電極102、およびエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム103は、それぞれ図1におけるこれらと同様である。
【0137】
このような積層体150は、例えば、図1に示した光学素子100における、第1基板101、第1電極102およびエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム103からなる部分に替えて用いられ得る。
【実施例】
【0138】
以下に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0139】
なお、本明細書で使用している特性値は、つぎの方法で測定したものである。
【0140】
(膜厚)
デジタル測長機(ニコン製のMF−1001)を用いて、フィルムの厚さを測定した。
【0141】
(誘電正接および比誘電率)
フィルムを真空中で両面にアルミニウムを蒸着しサンプルとした。このサンプルをLCRメーター(ZM2353、エヌエフ回路設計ブロック社)にて、ドライエアー雰囲気下、30℃にて、周波数100Hz〜10kHzでの静電容量と誘電正接を測定した。膜厚と静電容量から比誘電率を算出した。
【0142】
実施例1
1Lポリビン中にメチルエチルケトン(MEK)(キシダ化学)440質量部とVdF/TFE共重合体(VdF/TFE=67/33)(ダイキン工業)を60質量部入れ、ローターで攪拌し、12w/w%濃度のフッ素樹脂溶液を得た。
【0143】
このフッ素樹脂溶液を、マイクログラビアコーターを用いて、離型処理を施した38μm厚の非多孔質ポリエステルフィルムであるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にキャストし、乾燥炉を通すことにより、PETフィルム上にフッ素樹脂フィルムが形成された積層フィルムを得た。ついで、PETフィルムから剥離することにより、膜厚4.5μmのフィルムを得た。
【0144】
実施例2
1Lポリビン中にメチルエチルケトン(MEK)(キシダ化学)480質量部とVdF/TFE共重合体(VdF/TFE=67/33)(ダイキン工業)を120質量部入れ、ローターで攪拌し、20w/w%濃度のフッ素樹脂溶液を得た。用いたVdF/TFE共重合体の比誘電率は9.8(25℃,1kHz)である。
【0145】
このフッ素樹脂溶液(濃度20w/w%)500質量部に、チタン酸バリウム(メジアン径:20nm。BTO−020、戸田工業)30質量部、メチルエチルケトン(MEK)333質量部を加えた。この混合物を、ビーズミル(LMZ015、アシザワ・ファインテック社)にて回転数10m/s、30分間分散処理を行い、コーティング用組成物を得た。
【0146】
このコーティング組成物を、マイクログラビアコーターを用いて、離型処理を施した38μm厚の非多孔質ポリエステルフィルムであるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にキャストし、乾燥炉を通すことにより、PETフィルム上にVdF系樹脂フィルムが形成された積層フィルムを得た。ついで、PETフィルムから剥離することにより、膜厚6.0μmの高誘電性フィルムを得た。
【0147】
実施例3
実施例2でチタン酸バリウムの量を60質量部にした以外は、同様にコーティング組成物を作成し、キャストすることで膜厚9.1μmの高誘電性フィルムを得た。
【0148】
実施例4
実施例1でVdF/TFE共重合体の組成比を(VdF/TFE=80/20)にした以外は、同様にコーティング組成物を作成し、キャストすることで膜厚6.0μmの高誘電性フィルムを得た。
【0149】
実施例5
実施例1でVdF/TFE共重合体の替わりにPVdF(ダイキン工業、VP825)を用いたこと以外は、同様にコーティング組成物を作成し、キャストすることで膜厚6.2μmの高誘電性フィルムを得た。
【0150】
実施例6
100mlポリビン中にメチルエチルケトン(MEK)(キシダ化学)44質量部とVdF/TFE共重合体(VdF/TFE=67/33)(ダイキン工業)を6質量部入れ、ローターで攪拌し、12質量%濃度のフッ素樹脂溶液を得た。この溶液をアルミ板にバーコーターで塗布し、100℃の乾燥炉で溶剤を揮発させ、アルミ板の上に膜厚4.0μmの高誘電性フィルムを得た。
【0151】
試験例1
実施例1〜5で得られたフィルムについて、比誘電率、および誘電正接のデータを得た。
結果を表1に示す。
【0152】
【表1】

【0153】
表1から明らかなように、VdF系重合体および高誘電性無機粒子を含有するフィルムは、高い比誘電率を有する。
【0154】
試験例2
実施例6で得られたフィルムについて、接触角のデータを得た
接触角は、接触角計(協和界面科学)を用いて測定を行った。
【0155】
高誘電性フィルムの上に、直径3mmの濃度1w/w%食塩水を滴下し、接触角を測定した。3回測定を行い、平均値を電圧印加前(0V)の接触角とした。次に水滴に120Vの電圧を印加し、電圧印加中の接触角を同様に測定した。結果を表2に示す。
【0156】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムは、低い電圧で導電性液体を駆動でき、光学素子、表示装置(ディスプレイ)、可変焦点レンズ、光変調装置、光ピックアップ装置、光記録再生装置、現像装置、液滴操作装置、分析機器(例、試料の分析のため微小の導電性液体を移動させる必要がある、化学、生化学、および生物学的分析機器)などにおけるエレクトロウエッティングデバイスに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0158】
100 光学素子
101 第1基板
102 第1電極
103 エレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム
104 隔壁
105 疎水性液体
106 導電性液体
107 第2電極
108 第2基板
109 側壁
111 駆動素子
112 無機高誘電体層
150 積層体
200 制御部
201 スイッチ
202 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化ビニリデン系重合体を含有するエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム。
【請求項2】
フッ化ビニリデン系重合体が、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン系共重合体である請求項1に記載のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム。
【請求項3】
更に高誘電性無機粒子を含有する請求項1または2に記載のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム。
【請求項4】
高誘電性無機粒子が、
(Ba) 式:
nanbnC
(式中、
は周期表2族金属元素であり;
は周期表4族金属元素であり;
naは0.9〜1.1であり;
nbは0.9〜1.1であり;および
ncは2.8〜3.2である)で示される金属酸化物、および
(Bb) 式:
nab’nb’nc
(式中、
は周期表2族金属元素であり、
b’は周期表第5周期金属元素であり、
naは0.9〜1.1であり、
nb’は0.9〜1.1であり、および
ncは2.8〜3.2である)
で示される金属酸化物
からなる群から選択される1種以上の金属酸化物の粒子である請求項1〜3のいずれかに記載のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム。
【請求項5】
金属酸化物が、チタン酸バリウムである請求項4に記載のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム。
【請求項6】
フッ化ビニリデン系重合体100質量部に対し、高誘電性無機粒子を10〜100質量部含有する請求項3〜5のいずれかに記載のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルム。
【請求項7】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に、移動可能に配置された導電性液体と、
前記第1電極と前記導電性液体との間に、前記第1電極を前記第2電極から絶縁するように配置された、請求項1〜6のいずれかに記載のエレクトロウエッティング用疎水性誘電体フィルムとを有するエレクトロウエッティングデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−181513(P2012−181513A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−23650(P2012−23650)
【出願日】平成24年2月7日(2012.2.7)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】