説明

エレクトログラフティングを用いて導電性または半導電性の表面にマクロオブジェクトを固定する方法、それにより得られる表面、及びその用途

【課題】エレクトログラフティングを用いて、導電性または半導電性の表面にマクロオブジェクトを固定する方法を提供する。
【解決手段】マクロオブジェクトを溶解、粒子状または乳化された形態で含み、50ppm以上のプロトンを含む電解質溶液を調整し、電解セル中で該溶液を電気分解して、電解還元または電解酸化によって、作用電極としての誘導電性または半導電性の表面上にマクロオブジェクトまたはその縮合生成物のグラフトされたコーティングを生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトログラフティング(electrografting)を用いて導電性または半導電性の表面にマクロオブジェクト(macro−object)を結合させる方法に関し、そしてこの方法を用いて得られる導電性または半導電性の表面及びその用途にも関する。
【背景技術】
【0002】
マクロオブジェクト、特にポリマーフィルム、で被覆された導電性または半導電性の表面の製造は、多くの分野において、特に、電子部品または集積光学装置の製造のため、生物医学分野またはバイオテクノロジーにおいて用いられ得る装置(DNAチップ、プロテインチップ等)を製造するため、防錆保護のため、及び金属または半導体の表面特性の任意の改変のために大きな関心を集めている。
【0003】
今日、導電性表面からの重合反応のエレクトロイニシエーション(electroinitiation)と引き続くモノマー毎の鎖の成長(growth)を用いて、導電性表面上への活性化ビニルモノマーのエレクトログラフティングによってグラフトされた(grafted)ポリマーフィルムを得ることができることは受け入れられているようである。エレクトログラフティングの反応機構は、特に、C.Bureauらによる文献(Macromolecules、1997、30、333;C Bureau及びJ.Delhalle、Journal of Surface Analysis、1999、6(2)、159及びC.Bureauら、Journal of Adhesion、1996、58、101)に記載されている。
【0004】
例として、カソード重合によるアクリロニトリルのエレクトログラフティングについての反応機構は、以下のスキーム1によって表すことができ、ここで、グラフティング反応(grafting reaction)は、表面から成長が生じる工程No.1に対応し、;工程No.2は、グラフトされていないポリマーが得られる結果となる主要な寄生反応(parasite reaction)である:
スキーム1
【0005】
【化1】

【0006】
従って、グラフトされた鎖の成長は、純粋な化学重合を用いて生じる(すなわち、グラフティングを生じた導電性表面の分極とは無関係である)。従って、この工程は、(特に、プロトンを介する)成長の化学阻害剤の存在に敏感である(特にそれによって妨害される)。
【0007】
カソード分極を用いるアクリロニトリルのエレクトログラフティングを論じている上記スキーム1において、グラフトされた鎖の成長は、アニオン重合(anionic polymerization)によって生じる。この成長は、特にプロトンによって妨害され、そしてプロトン含量が溶液中のポリマーの形成、及びこの合成の過程で回収される情報(特に、この合成に伴うボルタモグラムの出現(appearance))を制御する主要なパラメータを構成さえすることが実証されている(特に、C.Bureauによる文献(Journal of Electroanalytical Chemistry、1999、479、43)を参照のこと)。
【0008】
微量の水(そしてより一般的には、プロトン性溶媒由来の不安定なプロトン)は、グラフトされた鎖の成長に有害なプロトンの供給源を構成する。
【0009】
ビニルモノマーのエレクトログラフティングについての反応機構が理解される前でさえ、この技術的障害は、これらの化合物を基礎として開発された種々の詳細な方法によって証明されたように、当業者に、明らかに確認されていた:
フランス国特許出願公開第2 480 314号において、その著者らは、高々10-3mol/lまでの含水率を有する溶液を調製する工程を含む、ビニルモノマーをエレクトログラフトする方法を言及しており、そして、好ましい実施形態において、この含水率が高々5×10-4mol/lまでであるべきであることを明記してさえいる;
欧州特許出願公開第0 618 276号において、その著者らは、非プロトン性溶媒を用いてビニルモノマーをエレクトログラフトする方法を言及している;
欧州特許出願公開第0 665 275号においても、その著者らは、非プロトン性有機溶媒を用いてビニルモノマーをエレクトログラフトする方法を言及している。さらに、この先行文献の明細書欄は、電気分解浴の含水率が、好ましくは10-3M未満であることを明記している。従って、電気分解の前に、この電気分解浴は、高々5ppmの水及び10ppmの酸素を含む不活性ガスを通してバブリングすることによって脱気される;
米国特許第6,180,346号において、その著者らは、ビニル置換基を含む分子の電解重合法を使用している。実施例によると、著者らは、溶媒としてのアセトニトリルの使用を言及し、そしてこれが使用前に脱水されるべきであることを明記している。これは、当業者に、高々数十ppmのオーダーの残留含水率を想定させる。
【0010】
ビニルモノマーのエレクトログラフティングに必要とされる非常に低い含水率は、前述した従来技術の文書の教示によれば、一般的に、合成の間またはその前の、種々の脱水技術を介して(例えば、乾燥不活性ガス(窒素、アルゴンなど)の噴霧を介して)維持され、その含水率は数ppmのオーダーである。
【0011】
反応媒体におけるプロトン供給源の含量の制御についての類似する理由から、研究の溶媒において非プロトン性溶媒及びそれ自体が非プロトン性である(すなわち、(ブレンステッドの意味での)酸機能を有する官能基を含まない)モノマーのみが、エレクトログラフトされた有機フィルムを得るために提唱されてきた。
【0012】
実際、これらの溶媒の含水率は、例えば、化合物の脱水(例えば、五酸化リン(P25))もしくは(例えば、4オングストロームの孔を有する)モレキュラーシーブに対する一定期間の時間を介してか、希不活性ガス(窒素、アルゴンなど)の減圧下での蒸留を介してか、またはこれらの方法の組み合わせを介して、長く困難な調製を費やすことで減少する。従って、以下のことが注目される:
フランス国特許出願公開第2 480 314号において、その著者らは、用いられるモノマーとの寄生反応をもたらさない非プロトン性有機溶媒の使用を薦めている;
欧州特許出願公開第0 618 276号において、その著者らも、非プロトン性溶媒の使用を薦めている;
欧州特許出願公開第0 665 275号において、非プロトン性溶媒の使用を言及することに加えて、その著者らは、用いられ得るモノマー構造について述べており、そしてモノマーの可能性のあるプロトン性官能基は予めマスクされるべきであることを明記している。
【0013】
実際、電気合成のために用いられるモノマーは、種々の添加物(特に、生成物を安定化し、そして保存条件下でボトル中でのその重合を回避するために製造者によって添加された重合防止剤)を除去するために使用前に蒸留される。
【0014】
欧州特許出願公開第0 665 275号が成長するポリマー鎖の末端に新しい官能基を導入することを可能にするための特定の防止剤の使用を言及していることのみが注目される。しかし、特に、C.Bureauら、1996(前述)による文献において、表面上でのポリマー鎖の成長が必然的にアニオン性であり、そしてその著者らによって導入されたラジカルインヒビターがこの合成の最後にフィルム中に存在することがあり得るが、それはこれらが電極の表面上に吸着しそして/または還元される(これらは一般的に電気活性である)からであり、欧州特許出願公開第0 665 275号に示されるようにこれらが鎖の成長を妨害するからではないことが実証されている。
【0015】
最後に、ごく最近、無水媒体中での予め形成されたポリマー(特に、ポリエステル)のエレクトログラフティングによって導電性表面上にポリマーフィルムを形成する方法であって、これらのポリマーがエレクトログラフト可能なペンダント基(例えば、アクリレート基)で官能化されている、方法も提唱されている(インターネット上で以下のアドレス:
http://pubs.acs.org/isubscribe/journals/langd5/pdf/la011289g.pdf;
で入手可能なLouら、American Chemical Society、Langmuir、ASAP articles、2002;C.Detrembleurら、Angewandte Chemie International Edition in English、2001、40、1268)。その著者らによれば、このエレクトログラフティングは、厳密に無水の操作条件下で実施される。さらに、良好な品質のフィルムを得るために、著者らは、エレクトログラフトされることが意図されるポリマーが、金属表面へのポリマーの吸着を生じさせるための最小限の数のエレクトログラフト可能なペンダント基(electrograftable group)を含むべきであることを示している。この文献によれば、この最小数は、約40%より多い置換度に対応する(すなわち、ポリマー鎖のモノマー単位のうち40%がアクリレート基を有する)ようである。最後に、電解質溶液中の予め形成されたポリマーのアクリレートの濃度が、特定の値より高い場合、エレクトログラフティングは生じない。この限界濃度は、この鎖に沿ったアクリレート基の置換度に依存するようであるが、3mol/lのアクリレート基のオーダーであるようである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
溶媒及びモノマー合成の型、反応媒体中の含水率、ならびに最後に、用いられるエレクトログラフト可能な基の数及び濃度に同時に関連するこれらの厳しい制限に起因して、導電性または半導電性表面へのビニルモノマーまたはエレクトログラフト可能なペンダント基を含む予め形成されたポリマーのエレクトログラフティングは、依然、工業規模で応用することが困難なプロセスである。
【0017】
さらに、全ての−従って、モノマーの性質及び反応媒体の両方に関連する−これらの条件は、非常に限定的である。なぜなら、これらは、エレクトログラフティングにより結合され得る化合物の列挙の中の非常に多数のマクロ分子、そして、特に以下のマクロ分子を排除するからである:
−ポリマーでない(この用語の狭い意味で、すなわち、同じ単位の繰り返しから生じるマクロ分子を構成しない)マクロ分子。例えば、生物学的に興味深いマクロ分子(例えば、オリゴヌクレオチド及び一本鎖または二本鎖DNA、一本鎖または二本鎖RNA、オリゴペプチド、タンパク質(特に酵素、抗体、または成長因子)、セルロース及び修飾セルロース、デキストラン、キトサン、及びより一般的な多糖類、そしてこれらのベース単位またはその混合物から生じる任意のマクロ分子(例えば、ペプチドグリカン等)が言及され得る。非ポリマー性であり狭義のマクロ分子でない全てのマクロ構造(macro−structure)(例えば、2次元または3次元のネットワークの架橋によって得られるもの(例えば、ゴムなど)、リポソーム及び任意の型の全てのマクロイオンまたはミネラル凝集物(例えば、シリカビーズ、ナノオブジェクト、ナノビーズ、ナノチューブ、フラーレン)など)、生きた細胞なども言及され得る;
−ビニルモノマー及び/又は環状分子の重合または共重合から生じないポリマー。これは、特に、縮合反応によって得られる全てのポリマーもしくはコポリマー(特にこれらが、プロトン性の基を保有する場合、乳酸、グリコール酸、及びε−カプロラクトンのポリマーもしくはコポリマー)、ナイロン及びより一般的にはポリアミド、ポリシロキサン、ポリ(オルトエステル)、ラジカル重合によってのみ得ることができるポリマーもしくはコポリマー(モノマーの性質に関わらない)(例えば、ポリイソプレンまたはパリレン)、またはZiegler−Natta型の重合、Diels−Alder反応などによって得られるポリマーもしくはコポリマーに関連する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、これらの主要な問題を改善するために、本出願人は、本発明の主題であるものを開発した。
【0019】
それは、特に、合成の間、大気の簡易な調節を用いて、必ずしも非プロトン性でない溶媒中で、そして蒸留されていない(すなわち、これらの可能性のある開始剤をなお含む)試薬及び/又は溶媒を用いて、少なくとも100倍〜1000倍高い含水率で、導電性または半導電性の表面上に、全ての型のマクロオブジェクト(macro−object)をエレクトログラフティングするための方法を提供することを目的とする。
【0020】
従って、本発明の第一の主題は、エレクトログラフティングによって導電性または半導電性の表面にマクロオブジェクトを結合する方法であり、この方法は、以下から構成されることを特徴とする:
a)少なくとも1つの電気活性基で官能化され、かつ、前記表面への前記マクロオブジェクトのエレクトログラフティングをもたらすことができるマクロ構造部分からなる少なくとも1つのマクロオブジェクトを、溶解された形態、粒子状の形態または乳化された形態で含む、電解質溶液を調製する工程であって、該電解質溶液は、50ppm以上のプロトン含量を有する;次いで
b)作用電極としてコーティングされる該導電性または半導電性の表面、及び少なくとも1つの対極を用いて電解セル中で該溶液を電気分解し、該溶液の電解還元または電解酸化によって、該表面上に該マクロオブジェクトまたはその縮合生成物のグラフトされたコーティングを生じさせる工程。
【0021】
電解重合または予め形成されたポリマーのエレクトログラフティングを含む反応の間のプロトンの存在を禁止する先行技術の教示とは異なり、最低限の量のプロトンを必然的に用いる、本発明に従う方法は、非常に驚くべきことに、少なくとも1つのエレクトログラフト可能なペンダント基を含む全ての型のマクロオブジェクトを、電解質溶液中のその基の濃度に関わらず、エレクトログラフトすることを可能にする。
【0022】
驚くべきことに、プロトンの存在は、ペンダント電気活性基の重合により形成される鎖のサイズに関わらず、成長するエレクトログラフトされた層の安定化を促進する。
【0023】
結果として、本発明に従う方法は、特にプロトン含有率に起因して従来、当業者に利用可能な技術に従うと導電性または半導電性表面にエレクトログラフトすることが出来なかったマクロオブジェクトまたはマクロ分子のエレクトログラフティングを可能にするという利点を有するだけでなく、それは、このエレクトログラフティングが生じ得る操作条件をより扱いやすくすることを可能にし、従って、溶媒及び試薬の事前の蒸留の使用を回避し、そして本発明の産業上の利用可能性をもたらす。
【0024】
従って、本発明の方法を用いることによって、以下のものを得ることができる:
−作用電極の表面上に化学的にグラフトされ、そしてその厚さが合成条件によって調整され得る有機フィルム;これらのフィルムは、リンス、特に超音波でのリンスに対して耐久性を有する;
−同時に、外部環境に対する(例えば、腐食に対する)保護を提供し得、そして/または官能化後に有用な有機官能基を有するグラフトされたコーティングを提供し得る任意の導電性または半導電性の有機被覆フィルム;
−任意の導電性または半導電性の表面上の、任意の型のポリマーまたはマクロオブジェクトの、グラフトされたフィルムの形態での特性。
【0025】
本発明に従う方法の有利な実施形態によれば、プロトン含有率は、約50〜100000ppmの間の範囲をとる。
【0026】
電解質溶液中のプロトンは、この溶液を構成する溶媒によって、そして/またはそれら自体がエレクトログラフティング法の過程において用いられかつ電解質溶液中に存在するマクロオブジェクトによって提供され得る。
【0027】
本発明の目的のために、用語「マクロオブジェクト」は、導電性または半導電性表面上、電解質溶液中でカソードまたはアノード分極により電気活性であり(すなわち、電解還元または電解酸化され得)、そしてその還元(夫々、酸化)生成物がその表面に化学結合を形成する少なくとも1つの基で官能化された任意のポリマー性または非ポリマー性のマクロ構造を意味することが意図される。
【0028】
好ましくは、本発明による方法に従い用いられ得る電気活性基は、以下から選択される:
−エレクトロイニシエーションを受けたポリマーの求核性成長部位からの求核付加を受けることができる求電子基;
−エレクトロイニシエーションを受けたポリマーの求電子性成長部位に対する求核付加をもたらすことができる求核基。
【0029】
求電子基のなかで、特に、電子吸引性基(例えば、:メタクリレート、アクリレート、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジンなどの基)またはそうでなければ求核攻撃または求電子攻撃により開裂可能な環式基(例えば、エポキシ基、そしてより一般的には、オキシラン、ラクトンなど)により活性化されたビニル基が言及され得る。
【0030】
求核基のなかでは、特に、電子供与基(例えば、N−ビニルピロリドンなどからなる基)またはそうでなければ求核攻撃または求電子攻撃により開裂可能な環式基(例えば、エポキシ基、またはより一般的には、オキシラン)により活性化されたビニル基が言及され得る。例えば、それは、その鎖の末端もしくはその鎖に沿ってまたはその架橋領域において官能化された任意の架橋または非架橋ポリマー、あるいは任意の全体的もしくは部分的に官能化されたマクロ分子、あるいはナノサイズもしくはマイクロサイズもしくはそれより大きいオブジェクトであって、エレクトロイニシエーションを受けたポリマーの、求核
性(夫々、求電子性)成長部位(その上で夫々求核付加を受けることができる)から求核付加を受けることができる少なくとも1つの求電子(夫々、求核)基でその表面を官能化することが可能であったものであり得る。
【0031】
求電子マクロオブジェクトは、例えば、その鎖の末端もしくはその鎖に沿って、または架橋領域において官能化された任意の架橋または非架橋ポリマー、あるいは任意の全体的もしくは部分的に官能化されたマクロ分子、あるいはナノメートルサイズもしくはマイクロメートルサイズもしくはそれより大きいオブジェクトであって、電子吸引基で活性化されたビニル基(例えば:メタクリレート、アクリレート、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジンなどのような基)を用いてか、あるいは環式基(例えば、エポキシ基、または、より一般的には、オキシランもしくはラクトン(例えば、ε−カプロラクトン))を用いて、その表面を官能化可能であるものから構成され得る。
【0032】
求核性マクロオブジェクトは、例えば、その鎖の末端もしくはその鎖に沿って、または架橋領域において官能化された任意の架橋または非架橋ポリマー、あるいは任意の全体もしくは部分的に官能化されたマクロ分子、あるいはナノメートルサイズもしくはマイクロメートルサイズもしくはそれより大きいオブジェクトであって、電子供与基で活性化されたビニル基(例えば:4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルピロリジンなどのような基)を用いてか、または環式基(例えば、エポキシ基、オキシランもしくはラクトン(例えば、ε−カプロラクトン))を用いて、その表面を官能化可能であるものから構成され得る。
【0033】
ボルタンメトリー条件、定電位条件、またはインテンシオスタティック(intensiostatic)条件下で、分極を得ることができ、そしてその分極により、作用極表面上に前記マクロモノマーまたはその縮合生成物のグラフトされたフィルムを作製する。
【0034】
これらのマクロオブジェクトの使用により、マクロ構造部分を含むエレクトログラフトされたフィルムを得ることができる。このグラフティングは、マクロ構造部分上の、求電子基または求核基の存在に起因して起こる。これらの基は、マクロ構造部分に連結するので、この表面上へのこの部分のエレクトログラフティングが得られる。
【0035】
本発明に従い用いられ得るマクロオブジェクトは、これらの求電子または求核官能基の存在に起因して、以下の特性のうち少なくとも1つを有する:
−このマクロオブジェクトは、電気活性であり、そして特に、導電性または半導電性の表面上にエレクトログラフトされ得る;
−このマクロオブジェクトは、エレクトロイニシエートされたポリマーの求核性成長部位からの求核付加を受けることができるか、またはエレクトロイニシエートされたポリマーの求電子性成長部位に求核付加をもたらすことができるかのいずれかである;
−このマクロオブジェクトは、電解重合され得る。
【0036】
本発明に従い、マクロ試薬(macroreagent)の溶液の電気分解を、ボルタンメトリー条件、定電圧条件、またはインテンシオスタティックな条件下での分極によって実施する。
【0037】
合成溶媒が有機溶媒である場合、好ましくは、それは、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、アセトニトリル、及びテトラヒドロフランから選択される。
【0038】
本発明に従う方法は、溶媒が含む水を除去するためにそれらを事前の蒸留に供することも、反応媒体上の雰囲気の含水率の厳密な制御をすることも必要とせず、それらの直接的な使用を可能にするという利点を有する。結果として、本発明に従う方法は、容易に、産業規模で実行され得る。
【0039】
本発明に従う方法に従い用いられ得るマクロオブジェクトは、好ましくは、以下の式の化合物から選択され:
A−P
A−P−B
P(A)n
[M(A)]n
A−[M(B)]n
A−[M(B)]n−C
A−P−[M(B)]n
A−P−[M(B)]n−C
ここで:
−Pは、以下から選択されるマクロ構造であり:
・有機または無機のオリゴマーおよびポリマー、
・1つ以上の試薬の重縮合により得られるポリマー、
・ポリシロキサン、ポリ(オルトエステル)、ポリホスフェート、パリレン及び置換パリレンベースのポリマー、
・導電性ポリマー、
・オリゴペプチド及びタンパク質、
・核酸分子、
・多糖類、
・置換または非置換のポルフィリン、
・置換または非置換のフタロシアニン、
・上記の列挙の中の置換モノマーからかまたは置換マクロ分子から形成されたポリマー、
・上記の列挙の中のモノマー及び/又はマクロ分子に基づくプレポリマー、マクロマーまたはテレケリック(telecheric)、
・これらのポリマーからか、これらの構成モノマーからか、または上記のマクロ分子(置換されていても置換されていなくてもよい)から形成され得るコポリマー及び/又は混合物;
・ポリマー性でも狭義のマクロ分子でもないマクロ構造(例えば、2次元または3次元のネットワークの架橋によって得られるマクロ構造(例えば、ゴムなど))、
・ミネラル凝集物、
・脂質小胞(例えば、リポソーム及びニオソーム)、及び
・生きた細胞
・少なくとも1つの電気活性基、特にエレクトログラフト可能な基で官能化され得る少なくとも1つの表面を含むオブジェクト;
−nは、1以上の整数であり;
−Mは、前記構造がポリマーの場合、上で規定されるP型の構造の構成モノマー単位であり;
−A、B、及びCは、同一でも異なっていてもよく、アニオン重合の成長に参加するかもしくはこれをブロックすることができる求電子性官能基、またはカチオン重合の成長に参加するかもしくはこれをブロックすることができる求核性官能基から選択され、A、B及びCは、マクロ構造部分Pまたはモノマー部分Mと、共有結合、イオン結合、もしくは配位結合を介してか、または水素結合を介して結合される。
【0040】
Pで定義されるポリマーの中で、特に、架橋または非架橋ビニルポリマー(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシルプロピルメタクリレート、シアノアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン及びその誘導体、N−ビニルピロリドン、ビニルハライド、ならびにポリアクリルアミドのポリマー;イソプレン、エチレン、プロピレン、エチレンオキシド、及び求核または求電子攻撃により開裂可能な環を含む分子(例えば、ラクトン、そして特にε−カプロラクトン)のポリマーなど)が言及され得る。
【0041】
1つ以上の試薬の縮重合によって得られるポリマーの中で、特に、乳酸またはそのオリゴマー、ラクトンそして特にε−カプロラクトン、グリコール酸、エチレングリコール、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(オルトエステル)、及びポリアスパラギン酸のポリマー及びコポリマーが言及され得る。
【0042】
導電性ポリマーの中で、特に、アニリン、チオフェンもしくはエチレンジオキシチオフェン(EDOT)、ピロール、これらのアナログまたはこれらの置換誘導体に基づくポリマーが言及され得る。
【0043】
タンパク質の中で、特に、抗原、酵素、成長因子、抗体、及びコラーゲンが言及され得る。
【0044】
核酸分子の中で、特に、一本鎖及び二本鎖DNA、ならびに一本鎖及び二本鎖RNAが言及され得る。
【0045】
多糖類の中で、特に、例として、セルロース及び置換セルロース、キトサン及び置換または官能化キトサン、デキストラン及び置換または官能化デキストラン、アミロース、ペクチン、スターチ、ならびにヘパリンが言及され得る。
【0046】
ミネラル凝集体の中で、特に、シリカ及びより一般的には酸化物のビーズ、ならびに任意の性質のナノオブジェクト(ナノビーズ、ナノチューブ、フラーレンなど)が言及され得る。
【0047】
少なくとも1つの電気活性基で官能化され得る少なくとも1つの表面を有するオブジェクトの中で、金属、有機またはミネラル表面から選択される、少なくとも1つの導電性、半導電性または絶縁性表面を有する非液体及び非気体のオブジェクト(例えば、木、ガラス、プラスチック、植物繊維、ケラチン材料、有機もしくはミネラルゲル、これらの複合物またはこれらの混合物)が言及され得る。
【0048】
nについて規定され得る最大の数は、本発明によれば重要ではなく、それは、電気活性基で官能化され得るマクロ構造部分上に存在する官能基の数に依存する。
【0049】
官能基A、B及びCの中で、特に、夫々、電子の空位(vacancy)(そして、特に、元素BまたはAl、イオン化または非イオン化遷移金属、希土類金属などを含む基)または電子対(そして、特に、元素N、O、S、アニオン、及び特にカルボキシレート、サルフェート、スルホナート、ホスフェート、ホスホナートなどの基を含む基)を有するルイス酸及び塩基;アニオン経路を介して重合され得る有機官能基(例えば、ビニル基(例えば、メタクリレート、アクリレート、アクロレイン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアノアクリレート、ビニルハライド、スチレン及びその誘導体、2−及び4−ビニルピリジン及びこれらの誘導体、ビニルイミダゾール及びこれらの誘導体、など));求核攻撃によって開裂され得る環を含む分子(例えば、オキシラン、及びラクトン)、カチオン経路によって重合され得る有機性官能基(例えば、以下の基:N−ビニルピロリドン、2−及び4−ビニルピリジン、スチレン及びその誘導体など);ならびに求電子攻撃によって開裂され得る環を有する分子(特に、オキシラン及びラクトン)が言及され得る。
【0050】
従って、例として、P(A)nは、n個の適切な求電子性または求核性基Aで官能化された、上で規定されるとおりのマクロ構造Pを示す。
【0051】
単純に求電子性のマクロオブジェクトを得るために、任意のポリマーまたはマクロ構造は、例えば、電気活性化ビニル基で官能化され得る。
【0052】
この官能化は、例えば、これらのヒドロキシル基とメタクリロイルクロリド(MAC)との反応を用いてメタクリルエステルを形成することによって得られ、これは、メタクリレート求電子基をマクロ構造中に導入し、そしてそれを本明細書中、以下のスキーム2に従い、本発明に従う方法によってエレクトログラフトさせることを可能にする:
スキーム2
【0053】
【化2】

【0054】
ここで、Mは、上で示した意味を有する。
【0055】
同じ型の反応は、例えば、メタクリロイルクロリドの代わりにグリシジルメタクリレートを用いて想像され得る。
【0056】
ビニルモノマーとマクロ構造との間の共有結合の形成を得るために、スペーサー要素としての役割を果たし得る分子(例えば、ジイソシアネート、エピクロロヒドリン、及びより一般的には、任意の二官能性分子)の使用も考慮され得る。
【0057】
本発明に従う方法の第一の改変によれば、マクロオブジェクトは、少なくとも1つの求電子性有機官能基を含む。
【0058】
この第一の改変によれば、マクロオブジェクトのエレクトログラフティングは、カソードとしての役割を果たす導電性または半導電性の表面上での電解還元によって実施される。
【0059】
好ましくは、電解質溶液中の求電子性マクロオブジェクトの濃度は、10-6〜5mol/lの間である。
【0060】
この第一の改変の有利な実施形態によれば、この有機溶液は、上で規定される溶媒から選択され得る溶媒を含む。
【0061】
この第一の改変の別の有利な形態によれば、この有機溶液は、特に、第四級アンモニウム塩(例えば、過塩素酸塩、トルエンスルホン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、または第四級アンモニウムハロゲン化物)、硝酸ナトリウム、及び塩化ナトリウムから選択され得る少なくとも1つの支持電解質を含む。
【0062】
これらの第四級アンモニウム塩の中で、特に、例として、テトラエチルアンモニウム過塩素酸塩(TEAP)、テトラブチルアンモニウム過塩素酸塩(TBAP)、テトラプロピルアンモニウム過塩素酸塩(TPAP)、またはベンジルトリメチルアンモニウム過塩素酸塩(BTMAP)が言及され得る。
【0063】
用いられる求電子性マクロオブジェクトが電解重合可能である場合、それは、合成溶媒中で唯一の電気活性な種を構成し得る。
【0064】
この場合、グラフティング及びこのフィルムの成長は、カソード電位が、絶対値で、求電子官能基の電解還元電位より高くなるとすぐに、カソード上で生じる。
【0065】
この電位は、求電子基の、そして所定の求電子基については、求電子性マクロオブジェクトのマクロ構造部分の性質の関数として変化する。
【0066】
例として、求電子性マクロオブジェクトがメタクリレート基でその末端の両方を官能化されたポリエチレングリコール(PEG)ジメタクリレートから構成される場合、中心のPEG部分のモル質量に従い、−2.7〜−3.4V/(Ag+/Ag)(TEAPの存在下でジメチルホルムアミド(DMF)中の金電極で測定)の間の最終電圧を用いるボルタンメトリー条件下で、電解還元が実施される。
【0067】
求電子性マクロオブジェクトが重合可能でない場合、合成溶液は、求電子性マクロオブジェクトに加えて、特に、求電子性マクロオブジェクトの目的の求電子基を構成するものから選択される1以上の電解重合可能なモノマーを含有し得る。この場合、該モノマーが、溶媒の代わりに用いられ得る。
【0068】
この場合、フィルムのグラフティング及び成長は、カソードの電位が、絶対値で、以下:
(i)求電子性マクロオブジェクトについての還元電位;
(ii)電解重合可能なモノマーについての還元電位、
からなる2つの電位のうち最小カソード電位より高くなるとすぐにカソード上で生じる。
【0069】
合成媒体が重合可能でない求電子性マクロオブジェクト及び少なくとも1つの重合可能なモノマーを含有する場合、このフィルムのグラフティング及び成長は、カソードの電位が、絶対値で、重合可能なモノマーについての還元電位より高くなるとすぐにカソード上で生じ、マクロモノマーの結合が、このモノマーから形成された鎖の成長を終結させる反応によって生じる。
【0070】
この電位は:
−参照電極(例えば、銀電極)に対して適切な値で作用電極をカソード分極することによってか;
−または参照電極に対して測定されたその電位が正しいように、対極に対して作用電極をカソード分極することによってか;
−または電気回路に電流を印加することによって(ここで、処理される表面が、この表面の電位が正しくなるように電極のうちの1つ(好ましくはカソード)である)
のいずれかによって得ることができる。
【0071】
本発明に従う方法の第二の改変によれば、マクロオブジェクトは、少なくとも1つの求核性有機官能基を含む。
【0072】
この第二の改変によれば、マクロオブジェクトのエレクトログラフティングは、アノードとしての役割を果たす導電性または半導電性表面上での電解酸化によって実施される。
【0073】
好ましくは、求核性マクロオブジェクトの濃度は、10-6〜5mol/lである。
【0074】
この第二の改変の有利な実施形態によれば、この有機溶媒は、上で規定された溶媒から選択され得る溶媒を含む。
【0075】
この第二の改変の別の有利な実施形態によれば、有機溶媒は、特に、上で規定されるような第四級アンモニウム塩から選択され得る少なくとも1つの支持電解質を含む。
【0076】
用いられる求核性マクロオブジェクトが電解重合可能である場合、それは、合成溶媒中で唯一の電気活性種を構成し得る。
【0077】
この場合、フィルムのグラフティング及び成長は、アノード電位が、絶対値で、求核性官能基についての電解酸化電位より高くなるのとすぐにアノード上で生じる。
【0078】
この電位は、求核基の、そして所定の求核基については、求核性マクロ試薬のマクロ分子部分の、性質の関数として変化する。
【0079】
この求核性マクロオブジェクトが重合可能でない場合、合成溶液は、求核性マクロオブジェクトに加えて、特に、この求核性マクロオブジェクトの目的の求核基を構成するものから選択される、1つ以上の電解重合可能なモノマーを含み得る。この場合、これらのモノマーは、溶媒の代わりに用いられ得る。
【0080】
この場合、フィルムのグラフティング及び成長は、アノード電位が、絶対値で、以下:
(i)求核性マクロオブジェクトについての酸化電位;
(ii)電解重合可能なモノマーについての酸化電位、
からなる2つ電位の最大アノード電位より低くなるとすぐに、アノード上で生じる。
【0081】
合成媒体が重合可能でない求核性マクロオブジェクト及び少なくとも1つの重合可能なモノマーを含有する場合、このフィルムのグラフティング及び成長は、その電位が、絶対値で、重合可能なモノマーの酸化電位より高くなるとすぐに、アノード上で生じ、このモノマーから形成される鎖の成長を終結させる反応によってマクロモノマーの結合が生じる。
【0082】
この電位は、
−参照電極(例えば、銀電極)に対して適切な値で作用電極をアノード分極することによってか;
−または参照電極に対して測定されたその電位が正しいように、対極に対して作用電極をアノード分極することによってか;
−または電気回路中に電流を印加することによって(ここで、処理される表面は、これらの電極のうちの1つ(好ましくはアノード)であり、その結果その表面電位が正しい)
のいずれかによって得ることができる。
【0083】
全ての場合(求電子性または求核性マクロオブジェクト)において、作用電極及び対極は以下のとおりであり得る:
−同じ溶液、またはそうでなければ異なる溶液に接触している;
−1つのコンパートメント、またはそうでなければ別々のコンパートメントの中に配置されている。
【0084】
一般的に、マクロ構造中心部分のモル質量が増加する場合、ボルタンメトリー電流は減少し、他の全ての場合も同様であることが観察される。このことは、反応媒体の増加した粘度に関係し、そして電解質溶液の粘度が増加するにつれて、カソードEfinal電位が好ましいという結果を生じる。
【0085】
さらに、本発明の主題は、上記の方法を実施することによって得られる導電性または半導電性の表面であり、そしてその表面の少なくとも1つの面は、上で規定されるようなマクロオブジェクトのグラフトされたコーティングで被覆されている。
【0086】
一般的に、このコーティングは、少なくともマクロオブジェクト中に含まれる最大のマクロ構造部分のサイズと同じ厚さを有する。
【0087】
本発明の好ましい実施形態によれば、このコーティングは、1nm〜10μmの間の厚さを有する。
【0088】
それは、特に、ポリマーフィルム、生物学的マクロ分子の有機フィルム、ビーズまたはナノチューブの層、生きた細胞の層、等の形態であり得る。
【0089】
これらの表面の中で、金属表面(例えば、スライドまたはコンタクト(contact)の形態の金、銀、白金、鉄、クロム、アルミニウム、合金(例えば、鉄鋼またはステンレス鋼)、チタン)、導電性ポリマー、及び半導電性表面(例えば、ドープシリコンまたは非ドープシリコン、窒化チタン、窒化タングステン、窒化タンタル、酸化チタン、アリールジアゾニウム塩から得られる導電性ポリマーまたはコーティングの表面などが言及され得る。
【0090】
最後に、このマクロオブジェクトが肉眼で見えるサイズのオブジェクトであり、その表面の少なくとも一部を、(本発明の方法、または例えば、フランス国特許出願公開第2 781 232号もしくは国際出願WO 98/55162に記載される方法のような別の方法のいずれかを用いて)活性化ビニル基を含むフィルムで被覆することが可能であった場合、本発明の方法は、目的の導電性または半導電性の表面上にこの表面を配置し、それによって目的の表面への前記表面の結合を得ることによる「エレクトロボンディング(electrobonding)」を実施するために用いられ得る。
【0091】
従って、本発明の主題は、導電性または半導電性の表面上にマクロオブジェクトをエレクトロボンディングするための、本発明に従う方法、及び上で記載された方法の使用でもある。
【0092】
上記構成以外に、本発明はまた、以下の、金電極の表面へのPEGジメタクリレートのエレクトログラフティングによるポリマーフィルムの形成の実施例、本発明に従うエレクトログラフティング法が少なくとも100ppmの水を含む有機溶媒中で実施され得ることを実証する実施例、金スライド(gold slide)の表面でのポリ(PEG−ジメタクリレート)−コ−メチルメタクリレートポリマーフィルムの調製の比較例、金電極の表面でのポリ(ポリジメチルシロキサン−メタクリレート)フィルムの形成の実施例、及び金電極の表面でのデキストラン/メタクリレートフィルムの形成の実施例、そしてまた添付の図面、を言及する以下の記載から明らかになる他の構成も含む。
【実施例1】
【0093】
実施例1:電気活性かつ重合可能なマクロ求電子体(PEG−ジメタクリレート)のエレクトログラフティングによるポリマーフィルムの形成
本実施例の目的は、マクロ求電子体(すなわち、非電気活性のマクロ分子部分に共有結合された少なくとも1つの求電子基を含む分子)をエレクトログラフトすることが、少なくとも100ppmのプロトンの存在下で可能であること、及びこの条件が、特定の厚さを有するグラフトされたフィルムを得るために必要であることを実証することである。
【0094】
用いたマクロ求電子体は、以下の式(I)のPEG−ジメタクリレート(PEG330)であり:
【0095】
【化3】

【0096】
nは、4、9または16である。
【0097】
これについて、最初に、金電極の表面にこのマクロ求電子体が単純に浸漬される場合それはグラフトされないが、カソード系におけるこの電極の分極後には、それがグラフトされることを示す。
【0098】
これを実行するために、クロム下層上に蒸発により金でコーティングした顕微鏡用ガラススライドを、ジメチルホルムアミド(DMF)中、0.04mol/lのPEG330ジメタクリレート(式(I)、n=4)の溶液中に、10分間、浸漬する。
【0099】
添付の図1は、超音波の存在下でのアセトン中で2分間、そして超音波の存在下での水中での2分間のリンスの前そして後の、金スライドの赤外(IR)スペクトルを表す。この図において、透過率(%)は、波数(cm-1)の関数として表される。
【0100】
PEG330ジメタクリレートの(特に、1740cm-1でのカルボニルの)バンドの特徴的なピークの完全な消滅が、リンスの影響下で観察された。
【0101】
従って、これらの結果は、このマクロ求電子体の溶液中に単純に金表面を浸漬することによって、金表面上に長期間残存する様式で、マクロ求電子体をグラフトすることが不可能であることを示す。
【0102】
比較として、そして本発明に従う方法によって、金スライド上への3つの式(I)のPEGジメタクリレート(PEG330:n=4:PEG550:n=9及びPEG875:n=16)のエレクトログラフティングを実施する。
【0103】
これを実行するために、上で用いたものと同一である金スライドを、以下の電位についてのプロトコル(100mV/sの速度で、Einitial=−0.5V(Ag+/Ag)からEfinal=−2.7V(Ag+/Ag)までを10回スキャンするボルタンメトリー条件)に従い、5×10-2mol/lのテトラエチルアンモニウム過塩素酸塩(TEAP)を含むDMF中、0.04mol/lのPEGジメタクリレート(PEG330;PEG550またはPEG875)の溶液中で分極する。
【0104】
本実施例において、PEGジメタクリレート及びDMFを、製造者から入手したままで(すなわち、特に事前の蒸留を行わずに)用いた(従って、この生成物の重合インヒビターが存在し、そして媒体中のプロトン含有率は、50ppmより高い)ことに注目することが重要である。
【0105】
次いで、上記のプロトコルに従い、これらのスライドをアセトン、次いで水でリンスする。
【0106】
リンス後のこれらのスライドのIRスペクトルは、波数(cm-1)の関数として透過率(%)を表す添付の図2に記録されている。
【0107】
リンス後、ポリ(PEGジメタクリレート)の特徴を有する厚さ100nmのフィルムが観察される。
【実施例2】
【0108】
実施例2:増加濃度の水の存在下でエレクトログラフトされるポリ(PEGジメタクリレート)のフィルムの調製
本実施例の目的は、分極相の間の水の存在が、本発明に従い得られるフィルムの品質に対して有害でなく、反対に、良好な品質及び所望される厚さの範囲を得るために、それが必要であることを実証することである。
【0109】
金スライドを5×10-2mol/lのTEAPを含むDMF中、1mol/lのPEG550ジメタクリレートの溶液中で分極する。
【0110】
各々の分極の前に、この溶液に種々の容量の蒸留水を添加することによって、合成のための媒体の含水率を調整し、次いで、Karl Fischer法によって測定する。
【0111】
500ppm〜4500ppmの範囲の含水率を試験した。
【0112】
電位プロトコルは、以下のとおりである:100mV/sの速度で、Einitial=−0.7V(Ag+/Ag)からEfinal=−2.7V(Ag+/Ag)までを10回スキャンするボルタンメトリー条件。
【0113】
次いで、これらのスライドを、上記実施例1に記載されるプロトコルに従い、アセトン及び水を用いてリンスする。
【0114】
試験した含水率の各々についての第一のボルタモグラムを、図3に示す。ここで、電流(アンペア)を、Ag+/Ag対極の電位の関数として表す。
【0115】
概して、含水率が高くなるにつれて電流が大きくなることが注目される。
【0116】
それにも関わらず、アセトン及び水を用いてリンスした後、その構造(IR)がポリ(PEGジメタクリレート)に匹敵し、そしてプロフィロメトリーによって測定されたその厚さが以下の表Iに要約される有機フィルムが観察される:
表I
【0117】
【表1】

【0118】
ポリ(PEGジメタクリレート)のエレクトログラフティングの特定の文脈において、これらの結果は、第一に、反応媒体の含水率が50ppm未満である場合にグラフトされたポリマーフィルムが、500〜3500ppmの間の量の水の存在下でグラフトされたフィルムについて観察される厚さより少ない厚みを有することを示す。
【0119】
これらの結果はまた、50nmに近い厚さのフィルムのグラフティングを、4500ppmの水分で達成することができることも実証し、さらにより高くさえある含水率またはプロトン性溶媒含量で単純に検出可能であるグラフティングを得ることが可能であることを示唆している。しかし、本発明に従う方法により用いられるタンパク質の最大限の量が、エレクトログラフトされることが意図されるマクロオブジェクトの性質の関数としてかなり変化し得ることを明確に理解するべきである。
【0120】
求電子性マクロ試薬PEG550ジメタクリレートのエレクトログラフティングは、狭い意味でのエレクトログラフト可能なモノマー(例えば、メチルメタクリレート(MMA)など)について許容され得るものより相当高い含水率条件下でグラフトされ、そして産業レベルでの本発明に従う方法の実施のために最も有利なポリマーフィルムを得ることを可能にすることが注目される。
【0121】
実際、900ppmより多い水分で、この含水率が支持電解質含有量(5×10-2mol/l)より高いこと、そして商業的「標準DMF」品質(すなわち、超高純度ではない)のDMFは、入手時に、300ppmオーダーの含水率を有することが観察されている。
【0122】
これらの結果は、前述の結果と組み合わせて、産業目的のためのポリマーのエレクトログラフティングの使用の文脈において、本発明において示されるような型の求電子性または求核性のマクロオブジェクトを用いることの実際上の利益を例示する。
【実施例3】
【0123】
実施例3:ポリ(PEGジメタクリレート)−コ−メチルメタクリレートのエレクトログラフティングによる有機フィルムの調製
金スライドを、DMF中の5×10-2mol/lのTEAPを含有する種々の溶液中で分極する:
溶液A:5mol/lのメチルメタクリレート(MMA)+10容量%のPEG550ジメタクリレート;
溶液B:10容量%のMMA+1mol/lのPEG550ジメタクリレート;
溶液C:5mol/lのMMA単独;
溶液D:1mol/lのPEG550ジメタクリレート単独。
【0124】
この実施例において、反応媒体のプロトン含量は、50ppmより多い。
【0125】
電位プロトコルは、以下の通りである:100mV/sの速度で、Einitial=−0.7V(Ag+/Ag)からEfinal=−2.7V(Ag+/Ag)までを10回スキャンするボルタンメトリー条件。
【0126】
種々の溶液A〜Dの各々についての最初のボルタモグラムを、図4に示す。ここで、電流(アンペア)は、Ag+/Ag対極の電位の関数として表される。
【0127】
図5(透過率(%)が、波数(cm-1)の関数として表され;ベースラインは、その読み取りを容易にするようにシフトされている)に表される、得られる対応するフィルムのIRスペクトルの領域2500〜3300cm-1は、開始溶液に適合する相対割合でのMMAとPEG550ジメタクリレートの共重合を示す。
【0128】
実際得られたフィルムのIRスペクトルは、観察されるPEG及びPMMAの相対比率が、最初の混合物の組成、特に、PEGに対するMMAの比率に従うことを示し、そして本発明に従う方法が50ppm以上のプロトン含量の存在下でエレクトログラフトされたPEG/PMMAコポリマーを得ることを可能にすることを確証させる。
【0129】
これらの結果は、MMA単独のエレクトログラフティングは−2.5V(Ag+/Ag)から生じ得、一方でPEGジメタクリレートのエレクトログラフティングが−2.7V(Ag+/Ag)を超えて初めて得られることを示す。
【0130】
しかし、これら2つの場合において、エレクトログラフトされた有機フィルムを得ることができることが観察され、このことは、明らかに、表面へのPEGジメタクリレートのエレクトログラフティングが以下のいずれかに起因することを示す:
−その電気活性に起因する、PEGジメタクリレートの直接的なエレクトログラフティング(−2.7V/(Ag+/Ag)よりカソーディックな電位および分極の場合);
−またはPEGジメタクリレートのメタクリレート基の求電子性:従って、マクロ電子プロファイル(macroelectric profile)は、成長化学と引き続くMMAへのエレクトログラフティングによって「捕捉」される(−2.7V/(Ag+/Ag)よりカソーディックでない電位での分極の場合)。
【0131】
溶液A及びBを用いて得られるフィルムは、約90nmの厚さを有する。
【実施例4】
【0132】
実施例4:エレクトログラフトされたポリ(ポリジメチルシロキサン−メタクリレート)フィルムの調製
本実施例の目的は、100ppmより多いプロトン含量の存在下で、1つの電気活性基のみを含むマクロ求電子体をエレクトログラフトすることができることを実証することである。本明細書中で用いられるマクロモノマー以外に、上記の実施例1との本質的な差異は、以下の通りである:
(i)このマクロモノマーが、1つの電気活性な求電子官能基(メタクリレート官能基)のみを保有すること;
(ii)このマクロモノマー部分が、非常により高い質量(Mw=10 000)を有すること。
【0133】
用いられるマクロ求電子体は、式H2C=C(CH3)C(=O)−O−(Si(CH32−O−)nH(n=134)のポリジメチルシロキサン(PDMS)−メタクリレートである。
【0134】
上記実施例1において用いられたものと同一の金スライドを、以下のプロトコル(Efixed=−3.2V/(Ag+/Ag)で2400秒間)に従う定電位条件下で、5×10-2mol/lのテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(TATB)を含む酢酸エチル(50ml)中のPDMS−メタクリレート(10g)の0.05mol/l溶液中で、カソード分極によって重合する。
【0135】
次いで、この金スライドを、上記実施例1において記載されるプロトコルに従い、アセトン、次いで水でリンスする。
【0136】
添付の図6は、カソード分極によってエレクトログラフトされたPDMS−メタクリレートのフィルムでコーティングされた金表面のIRスペクトルを表す(透過率(%)は、波数(cm-1)の関数として表される)。
【0137】
リンスの後、PDMの赤外の特徴を有する、110nmの厚さのエレクトログラフトされたフィルムが観察される。
【0138】
このスライドのXPS解析(これは、添付の図7に表され、そして表面上のシリコンの存在を示す)は、この結果(結合エネルギー(eV)の関数としてのカウント数(a.u.))を確証させる。
【実施例5】
【0139】
実施例5:エレクトログラフトされたデキストラン/メタクリレートフィルムの調製
本実施例の目的は、グリシジルメタクリレート(GMA)基で官能化されたデキストランからなるマクロ求電子体を用いて、エレクトログラフトされたフィルムを調製することができることを実証することである。本実施例は、特定の分野(ここで、マクロ求電子体は、実際、既存のマクロ分子であるが、ポリマーではない)において本発明を例示する。
【0140】
想定しているマクロ求電子体(デキストラン−GMAと呼ぶ)は、以下の式によって表される:
【0141】
【化4】

【0142】
上記の式において、そして明確化の目的で、1つのヒドロキシルのみがGMAで置換されているように示されている。実際には、この割合は、合成条件の関数として変化する。
【0143】
デキストラン−GMAは、van Dijk−Wolthuis、O.Franssen、H.Talsma、M.J.van Steenbergen、J.J.Kettenes−van den Bosch、W.E.HenninkによるW.N.E.、Macromolecules、1995、28、6317に記載されるプロトコルに従って、質量M=15 000のデキストラン及びグリシジルメタクリレート(2,3−エポキシプロピルメチルプロペノエート)から得られる。
【0144】
1H NMRおよび13C NMRによる生成物の分析(表示せず)は、デキストラン−GMAが77%の置換度で得られることを示す。
【0145】
10-2mol/lのTEAPを含む50mlのDMF中に0.25gのデキストラン−GMAを溶解することによって、デキストラン−GMA溶液として示される溶液を調製する。従って、この溶液は、約3.3×10-4mol/lのデキストラン−GMAを含む。
【0146】
クロムミストで前処理したガラススライド上に、Joule効果を用いて、金を噴霧することによって、数個の金表面(金スライドと呼ぶ)を調製する。
【0147】
デキストラン−GMA溶液中にこの金スライドを浸漬することによって第一のサンプルを調製する。
【0148】
約2ml/cm2の割合で、攪拌を用いて5分間、水でリンスする前及び後に、このスライドを、分析する(IRAS)。
【0149】
得られた結果を、図8に示す。ここで、透過率(%)は、波数(cm-1)の関数として表される。
【0150】
単純な浸漬によって得られたデキストラン−GMAフィルムがリンスの後に消失することが観察される。
【0151】
次に、以下の電位プロトコル(−100mV/sの速度で、Einitial=−0.6V(Ag+/Ag)からEfinal=−2.8V(Ag+/Ag)までを15回スキャンするボルタンメトリー条件)に従い、デキストラン−GMA溶液中で、三電極アセンブリ中の作用電極として用いる金スライド上に、本発明に従う方法によってデキストラン−GMAをエレクトログラフトする。
【0152】
このスライドを、上記実施例1に記載されたものと同じプロトコルに従ってアセトン及び水でリンスした後、200nmの厚さであり、かつIR分光法により実証されるその特徴がポリ(デキストラン−GMA)の特徴に対応するフィルムが得られる(図9、ここで、下の曲線がリンス前のスライドのIRスペクトルを表し、そして上の曲線がリンス後のIRスペクトルを表す)。
【0153】
合成溶液の含水率が5000ppmのオーダーであったことに注目することが重要である。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】図1は、金スライドが単に、DMF中0.04mol/lのPEG330ジメタクリレート溶液中へのこのスライドの単純な浸漬(エレクトログラフティング工程なし)により得られるポリマーフィルムで被覆されている場合の、種々のリンス操作の前及び後の赤外(IR)スペクトルを表す。
【図2】図2は、種々のPEGジメタクリレート(PEG330、PEG550、及びPEG875)のポリマーフィルムが本発明に従う方法によってエレクトログラフトされている金スライドの赤外(IR)スペクトルを表す。
【図3】図3は、金スライドの表面へのPEG550ジメタクリレートのエレクトログラフティングの間の、増加する含水率を含む溶媒のボルタモグラムを表す。
【図4】図4は、金スライドの表面でのポリマーフィルムの形成のための試験における、種々の溶液(溶液A:5mol/lのメチルメタクリレート(MMA)+PEG550ジメタクリレート(10容量%);溶液B:10容量%のMMA+1mol/l PEG550ジメタクリレート;溶液C:5mol/lのMMA単独、及び溶液D:1mol/lのPEG550ジメタクリレート単独)のボルタモグラムを表す。
【図5】図5は、上記の溶液A〜Dを用いて得られたポリマーフィルムのIRスペクトルを表す。
【図6】図6は、カソード分極によってエレクトログラフトされたポリジメチルシロキサン−メタクリレートで被覆された金表面のIRスペクトルを表す。
【図7】図7は、カソード分極によってエレクトログラフトされたポリジメチルシロキサン−メタクリレートフィルムで被覆された金表面のXPSスペクトルのSi2s領域を表す。
【図8】図8は、デキストラン−GMAの溶液中での金スライドの単純な浸漬によって得られるフィルムの、水中でのリンスの前及び後のIRASスペクトルを表す。
【図9】図9は、金スライド上へのデキストラン−GMAのエレクトログラフティングによって得られるフィルムの、水中でのリンスの前及び後のIRASスペクトルを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトログラフティングによって導電性または半導電性の表面にマクロオブジェクトを結合するための方法であって、該方法は、以下の工程:
a)少なくとも1つの電気活性基で官能化され、かつ、前記表面への前記マクロオブジェクトのエレクトログラフティングをもたらすことができるマクロ構造部分からなる少なくとも1つのマクロオブジェクトを、溶解された形態、粒子状の形態または乳化された形態で含む、電解質溶液を調製する工程であって、該電解質溶液は、50ppm以上の水含量を有し、前記マクロオブジェクトは、以下の式の化合物から選択されることを特徴とする:
A−P
A−P−B
P(A)n
[M(A)]n
A−[M(B)]n
A−[M(B)]n−C
A−P−[M(B)]n
A−P−[M(B)]n−C
ここで:
−Pは、以下から選択されるマクロ構造であり:
・乳酸またはそのオリゴマー、ラクトン、グリコール酸、エチレングリコール、ポリアミド、ポリウレタン、ならびにポリアスパラギン酸のポリマー及びコポリマーから選択される1つ以上の試薬の重縮合により得られるポリマー、
・ポリシロキサン、ポリホスフェート、パリレン及び置換パリレンベースのポリマー、
・セルロース及び置換セルロース、キトサン及び置換または官能化キトサン、デキストラン及び置換または官能化デキストラン、アミロース、ペクチン、スターチならびにヘパリンから選択される多糖類、
・上記列挙の中の置換モノマーまたは置換マクロ分子から形成されたポリマー、
・上記列挙の中のモノマー及び/又はマクロ分子に基づくプレポリマー、マクロマーまたはテレケリック、
・置換または非置換であり得る、該ポリマーからか、該構成モノマーからか、または上記のマクロ分子から形成され得るコポリマー及び/又は混合物;及び、
・ポリマー性でも狭義のマクロ分子でもないマクロ構造、
−nは、1以上の整数であり;
−Mは、該構造がポリマーの場合、上で規定されるP型の構造の構成モノマー単位であり;
−A、B及びCは、同一または異なり得、アニオン重合の成長に参加するかもしくはこれをブロックすることができる求電子性官能基、またはカチオン重合の成長に参加するかもしくはこれをブロックすることができる求核性官能基から選択され、A、B及びCは、マクロ構造部分Pもしくはモノマー部分Mと、共有結合を介して結合する
次いで
b)作用電極としての、コーティングされる該導電性または半導電性の表面、及び少なくとも1つの対極を用いて電解セル中で該溶液を電気分解し、該溶液の電解還元または電解酸化によって、該表面上に該マクロオブジェクトまたはその縮合生成物のグラフトされたコーティングを生じさせる工程、
から構成されることを特徴とする。
【請求項2】
水含量が50〜4500ppmの間の範囲をとることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電解質溶液中の水が、該溶液を構成する溶媒によって、そして/または前記エレクトログラフティング法の過程で用いられそして該電解質溶液中に存在するマクロオブジェクトによって提供されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
電気活性基が:
−電子吸引基で活性化されたビニル基または求核攻撃もしくは求電子攻撃によって開裂可能な環式基で活性化されたビニル基から選択される求電子基;
−電子供与基で活性化されたビニル基または求核攻撃もしくは求電子攻撃によって開裂可能な環式基で活性化されたビニル基から選択される求核基、
から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
官能基A、B及びCが、夫々、電子空位(electron vacancy)または電子対を含むルイスの酸及び塩基;アニオン経路を介して重合され得る有機官能基及びカチオン経路を介して重合され得る有機性官能基から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法を実施することによって得られる導電性または半導電性の表面であって、該表面のうち少なくとも1つは、前記マクロオブジェクトのグラフトされたコーティングで被覆されていることを特徴とする。
【請求項7】
前記コーティングが1nm〜10μmの間の厚さを有することを特徴とする、請求項6に記載の表面。
【請求項8】
前記コーティングが、ポリマーフィルム、または生物学的マクロ分子の有機フィルムの形態である、請求項6または7に記載の表面。
【請求項9】
導電性または半導電性の表面上にマクロオブジェクトをエレクトロボンディングするための、請求項1〜5のいずれか一項に記載のエレクトログラフティングによりマクロオブジェクトを結合するための方法の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−168658(P2010−168658A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296124(P2009−296124)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【分割の表示】特願2003−578485(P2003−578485)の分割
【原出願日】平成15年3月19日(2003.3.19)
【出願人】(506423291)コミサリア ア レネルジィ アトミーク エ オ ゼネ ルジイ アルテアナティーフ (85)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【Fターム(参考)】