説明

エレクトロニクス材料の凸版印刷方法

【課題】表示パネルにおける配線の形成、電極の形成及び絶縁材料や有機EL素子の作製に最適な、線太りの抑制と膜厚均一性の向上とが可能な凸版印刷方法を提供する。
【解決手段】レリーフを有する印刷用凸版を、該レリーフの頂面を外側に向けた状態で円筒形とし、該レリーフの頂面にアニロックスロールからインクを供給しながら円筒軸を中心に該印刷用凸版を転動させることによって、該印刷用凸版から被印刷体に対して該インクを転写する転写工程を含み、該印刷用凸版が、開口面積10μm2以上1600μm2以下の窪みを該レリーフの頂面に複数個有し、該アニロックスロールの線数が400線/インチ以上700線/インチ未満であり、かつ該窪み1つ当たりの開口面積が該アニロックスロールのセル1つ当たりの開口面積よりも小さくされている凸版印刷方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロニクス材料に関して、凸版印刷法を用いてパタ−ニングを行なう印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、表示パネルや回路のパターン等のうち微細なサイズのものの形成には、一般的にフォトリソ法が用いられてきた。印刷法はフォトリソ法と比較して処理速度が速い、プロセスに関わる廃棄物が少ない、材料の利用効率が高い等の利点があるためコスト低減が可能な方法として期待されているが、印刷物の性能の点では要求に応えきれていなかった。そこで、最近では各種印刷法を用いて、エレクトロニクス材料をパターニングする方法の改良が試みられるようになってきた。
【0003】
有機EL素子は、Tang及びVanSlykeによって、Appl.Phys.Lett.,51,p.913(1987)において報告されて以来、活発に研究開発が行なわれている。一般に、有機EL素子は低分子系有機物と高分子系有機物の2つに分けられる。低分子系有機物はその製膜方法としては真空蒸着を用いることが一般的である。しかし、蒸着法では、真空中で製膜するために大面積化が難しく、材料の利用効率も十分ではない。
【0004】
一方、高分子系有機物の製造方法としては各種印刷法を用いることができる。各種印刷法としては、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法、スプレー法等が挙げられる。これらは大気圧で製膜することが可能であり、蒸着法に比べ大面積化が容易である。また、材料の利用効率も高いためにコスト面で有利である。有機薄膜太陽電池も、有機EL素子と同様に大面積化や材料の利用効率、プロセススピードの観点から印刷法が検討されている。
【0005】
上記のように、回路パターンや有機EL素子、有機薄膜太陽電池等のエレクトロニクス関連において各種印刷法が検討されてきている。これらエレクトロニクス関連においては、印刷用のインクを塗布する基板としてはガラス基板を用いることが多いため、グラビア印刷法等のように金属製の印刷版等の硬い版を用いる方法は不向きである。また、非画像部にインクが付着すると汚染等の問題が生じる。インクジェット法は、汚染等の問題はないが、印刷スピードに問題があった。
【0006】
凸版印刷法の代表例として、樹脂材料からなる版を使用したフレキソ印刷法がある。図1は凸版印刷法の概略図である。フレキソ印刷法は、版が樹脂製であるため、版の加工が比較的容易であること、版材に柔軟性があるため基板へのダメージ、及び重ね刷り時に於いて先に形成されたパターンへ与えるダメージが低減されること、凸版であるため非画像部にインクが付着しないこと、印刷スピードが速いこと等の特長がある。電子デバイスへの応用を想定した場合は、これらの特長は有利に働く(例えば特許文献1を参照)。
【0007】
しかしながら、微細パターンを印刷形成するための手段として、凸版及び凸版印刷法は殆ど使用されていなかった。その主な理由は、線太りや印刷物の膜厚均一性が悪いという問題があり、微細パターンを正確に形成することが難しかったからである。図2は、凸版印刷における転写時の課題を示す図であり、図2(a)は印刷用凸版の断面図、図2(b)はインクを基板へ押し付けた状態を示す断面図、図2(c)は基板へ転写されたインクを示す平面図である。凸版印刷方式においては、図2に示すようなインクの転写を行なう工程で印圧を加えなければならないが、印刷用凸版のレリーフ7と基板1とに挟まれたインク2が、レリーフ先端からその周囲にはみ出してインクのはみだし8を形成し、印刷用凸版の元のパターン10よりも印刷されたパターンの方が大きくなる線太り9が生じる。よって印刷パターンが所定の寸法を維持することが困難になる。
【0008】
更にパターンが高精細になり、パターン間の距離が小さくなると、線太りにより隣のパターンと繋がってしまうという問題が発生する。特に、配線や電極等の導電性パターンを形成する場合、パターンが繋がることはショートを発生させることになり、正常に機能させることができなくなるという問題があった。前述の特許文献1には、アニロックスロールの線数を適切に設定することによって印刷用凸版の凸状部の頂部面以外の非画線部である低位部及び凹部にインキが流入しない。したがって、パターン形状の崩壊、膜厚変動しない旨の記載があるが、上記線太りの抑制の具体的な課題及び解決法については示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−135326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題点を解決し、表示パネルにおける配線の形成、電極の形成及び絶縁材料や有機EL素子の作製に最適な、線太りの抑制及び印刷物の膜厚均一性の向上が可能な凸版印刷方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記のような問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は以下の通りである。
【0012】
[1] レリーフを有する印刷用凸版を、該レリーフの頂面を外側に向けた状態で円筒形とし、該レリーフの頂面にアニロックスロールからインクを供給しながら円筒軸を中心に該印刷用凸版を転動させることによって、該印刷用凸版から被印刷体に対して該インクを転写する転写工程を含み、
該印刷用凸版が、開口面積10μm2以上1600μm2以下の窪みを該レリーフの頂面に複数個有し、
該アニロックスロールの線数が400線/インチ以上700線/インチ未満であり、かつ
該窪み1つ当たりの開口面積が該アニロックスロールのセル1つ当たりの開口面積よりも小さくされている、凸版印刷方法。
[2] 上記転写工程において、該印刷用凸版の該レリーフと該被印刷体との押し込み量が200μm以下となる印圧で該転写を行なう、上記[1]に記載の凸版印刷方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の凸版印刷方法を用いてパターン形成を行なうことにより、印刷用凸版のレリーフ先端に設けられた窪みが印刷時のインクの流れ出しを阻止するように働き、ラインでの線太りが抑制され、パターン形成においてパターン同士が繋がることを防ぐことができる。更に印刷物の膜厚均一性を向上できる。このため、線幅(ライン(L))が狭く、且つ、線間隔(スペース(S))が狭い場合にも高精度な印刷を達成できる。その結果、印刷法による電子デバイス(例えば配線の形成、電極の形成、並びに絶縁材料や機能材料を用いた機能素子及び回路の形成)への応用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】凸版印刷法の概略図である。
【図2】凸版印刷における転写時の課題を示す図である。
【図3】レリーフの頂面に複数個の窪みを設ける一形態を示す平面図である。
【図4】ライン/スペースの形状と窪みの形状を示す図である。
【図5】アニロックスロールの線数と線幅増加率との関係を示す図である。
【図6】アニロックスロールの線数と(端部の膜厚/中央の膜厚)比との関係を示す図である。
【図7】アニロックスロールの線数と線幅増加率の関係を示す図である。
【図8】アニロックスロールの線数と(端部の膜厚/中央の膜厚)比との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。本発明の効果を奏する限り、種々の形態変更をしてもよい。
【0016】
本発明の凸版印刷方法は、レリーフを有する印刷用凸版を、該レリーフの頂面を外側に向けた状態で円筒形とし、該レリーフの頂面にアニロックスロールからインクを供給しながら円筒軸を中心に該印刷用凸版を転動させることによって、該印刷用凸版から被印刷体に対して該インクを転写する転写工程を含み、
印刷用凸版が、開口面積10μm2以上1600μm2以下の窪みを該レリーフの頂面に複数個有し、
アニロックスロールの線数が400線/インチ以上700線/インチ未満であり、かつ
窪み1つ当たりの開口面積がアニロックスロールのセル1つ当たりの開口面積よりも小さくされている凸版印刷方法である。本発明の凸版印刷方法において使用する印刷用凸版は図1中の版6に対応し、レリーフの頂面に窪みを有する印刷用凸版である。本発明において使用する印刷用凸版は、凸版のレリーフの頂面に供給されたインクを被印刷体へ転写する凸版印刷に用いるものであって、レリーフの頂面に、開口面積10μm2以上1600μm2以下の窪みをレリーフ1つにつき複数個設けている(以下、本発明において設けられるこの窪みを「微小窪み」ともいう)。
【0017】
図3は、レリーフの頂面に複数個の窪みを設ける一形態を示す平面図であり、(a)は窪みの開口形状が円形の場合、(b)は窪みの開口形状が四角形の場合、をそれぞれ示している。本発明に係る印刷用凸版には、凸版のレリーフの頂面11、つまり、インクがアニロックスロールから転写される部分に微小窪み12が複数形成されている。
【0018】
窪みの形状は、四角柱状の穴(非貫通で有底)や円柱状の穴(非貫通で有底)の形状であることができる。窪みが複数個形成される領域はレリーフの頂面の全域に亘っていることが好ましく、更に窪みがレリーフのエッジに掛かって形成されていないことが好ましい。
【0019】
窪みの配列は、図3に示したような碁盤の目状の配列のみならず、例えば千鳥配列等としてもよい。
【0020】
複数個の窪みは、図3に示したような同一の大きさの窪みとして配列してもよく、大きさを変えて配列してもよい。
【0021】
上記のいずれの形態に於いても、レリーフ端部の窪みの形状は、レリーフ端部形状を途切れさせないように配列するか、配列の都合上レリーフ端部に窪みが重なる場合は、窪みの端部と重なる部分が端部形状に一致する側壁で閉じられていることが好ましい。
【0022】
レリーフの厚みは、窪みを設ける必要性と押し込み量の観点から正確な印刷が出来る点、及び印刷物の汚れの防止の観点から10μm以上であることが好ましく、解像性、耐刷性及び耐久性の観点から500μm以下であることが好ましい。ここでレリーフの厚みとは、頂面が印刷面となる凸部の高さである。レリーフの厚みが500μmを超えると解像性が悪くなる傾向があり、精細なパターンの場合は均一性やラインの直線性が悪くなる傾向がある。また、特に高精細時において、ラインのよれ等の影響から、ラインの再現性向上や線太り抑制の観点でもレリーフの厚みは500μm以下が好ましい。レリーフの厚みは10μm以上、400μm以下であることがより好ましい。
【0023】
本発明によれば、レリーフの頂面に窪みを設けることによって、凸版を印刷基板に押し付けた時に発生するレリーフ外側へのインクの流れが阻止されるため、線太りの発生を低減させることができる。レリーフ端部において、窪みがレリーフ端部に掛からずにレリーフが本来の形状に沿った縁辺の線部を有するように窪みが配置される場合には、パターンの再現性も向上する。また、窪みにより、転写されるインクの膜厚の調整が可能となり、従って印刷物の膜厚の調整も可能となる。レリーフ上に形成される窪みの深さは、線太りの抑制効果の観点で、1μm以上30μm以下が好ましく、1μm以上20μm以下がより好ましい。
【0024】
レリーフ上に形成した窪みの面積率は、印刷物の膜厚均一性の観点から30%以上、70%未満が良い。ここで面積率とは、(レリーフの頂面に形成した窪みの合計開口面積)/(レリーフの頂面の全面積)のことである。
【0025】
本発明においては、レリーフの頂面上に形成する窪みの開口面積は、印刷物の膜厚均一性の観点から10μm2以上1600μm2以下とする。更に、窪み1つ当たりの開口面積をアニロックスロールのセル1つ当たりの開口面積よりも小さくし、これにより微小窪みに相当する印刷抜けが発生しないため、高精細な印刷が可能になる。
【0026】
次に印刷用凸版の製造方法について述べる。印刷用凸版のパターンの形成方法としては、例えば(1)光により形成する方法、(2)型から複製する方法、(3)彫刻により形成する方法、がある。
【0027】
(第1の方法:光によりパターンを形成する方法)
光によりパターンを形成する方法では感光性樹脂が使用可能であり、該方法としては次の方法が挙げられる。通常の感光性樹脂を用いた方法に従って、感光性樹脂をレリーフの形状に合わせ、レリーフ上部の微小窪みに相当しない部分において光を透過しそれ以外の部分では光を透過しないネガフィルムを準備する。露光前が液状の感光性樹脂を用いる場合、このネガフィルムをガラス板の表面に積層した後、その上に液状の感光性樹脂を塗布し、その表面に透明なベースフィルムを積層し、更にその表面にガラス板を積層する。なお感光性樹脂層の厚みは所定の寸法になるよう設定する。次いでランプを用い、上側のガラス板とベースフィルムを介して感光性樹脂に紫外線を照射すると共に、下側のガラス板とネガフィルムを介して感光性樹脂に紫外線を照射する。画像露光用の照射光源は公知のものを使用可能である。上記の液状感光性樹脂からなる層の上面全体から入った光と、ネガフィルムの光を透過する部分を透過した光とが所定量届いた部分が硬化される。硬化後上下のガラス板、ネガフィルムを取り除き、未硬化部分を洗浄除去し、レリーフ形成側に紫外線を照射し硬化を促進し、印刷用凸版とする。
【0028】
別の方法として、レリーフ形成のために、感光性樹脂を硬化可能な波長のレーザー光源を用い、硬化に必要な光量を走査露光しても良い。常温で液状タイプでなく常温で固溶体状の感光性樹脂を用いる場合、感光性樹脂を加熱して所定の厚みに成形したのち、同様に画像露光以降の操作を行なえばよい。
【0029】
更に、上記ではネガタイプの感光性樹脂を使用した際の印刷用凸版の製造方法を説明したが、ポジタイプの感光性樹脂をポジフィルムと共に用いることも可能である。
【0030】
また、フォトマスク上に予め型(モールド)を作製しておき、窪みの深さをより正確に制御する方法も採用できる。例えば、上記ネガフィルム上に微小窪みの深さに相当する膜厚でポジタイプの感光性樹脂を被着し、ネガフィルム側から紫外線を照射し、露光部分を現像処理したものである。これにより、ネガフィルムの遮光部上に微小窪みに対応した微小突起が形成される。このネガフィルム上に形成した型上に、更にネガタイプの感光性樹脂を所望のレリーフ厚みに応じて塗布し、その表面にベースフィルムを積層する。次いでネガフィルム及び型を通して下側(ネガフィルム側)から紫外線を照射し、ネガフィルム及びモールドを取り除き、未硬化部分を洗浄除去することで、ベースフィルム上に微小窪みを有するレリーフを精度良く形成することができる。この際、拡散反射率の比較的高いベースフィルムを使用する場合、入射紫外線がベースフィルム表面で拡散反射し、レリーフ部全体の硬化を促進させることができる。尚、ネガフィルムに型を確実に被着させるために、ネガフィルム表面に紫外線透過性を有する市販の接着剤(ゴム系、ポリエステル系、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、シラン系等)によるコーティング処理を施すこと、ハードコート(アクリル系等)等の各種コーティング材を接着層上に設けること、及びカップリング剤等による表面処理を行なうことができる。
【0031】
(第2の方法:型からパターンを複製する方法)
型から複製パターンを作製する方法としては次の方法を挙げることができる。パターン形状に対応した型を作製し、レリーフが樹脂製であることにふさわしい方法で型取りする。方法としては、1)光硬化法、又は2)熱硬化法、を採用することができる。又は3)加熱した型を樹脂に押し付け、パターンに相当する形状を付与する熱転写法(冷却凝固法ともいう)、でも良い。上記1)には感光性樹脂、上記2)には室温で液体又は固溶体状の熱硬化性樹脂、上記3)には熱可塑性樹脂がそれぞれ使用可能である。型は、採用する加工方法及び解像度により公知のものから選択すればよく、例えば金属金型、Si型、石英型、SiC型、Ni電鋳型、樹脂型等が使用可能である。
【0032】
(第3の方法:彫刻によりパターンを形成する方法)
彫刻によりパターンを形成する方法としては、次の方法を挙げることができる。架橋されたゴム系材料や、硬化された熱硬化性樹脂、同じく硬化された光硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂等を版材料として使用することが可能である。固体の版材料を彫刻する方法としては、レーザーによる彫刻方式を挙げることができる。現実的には必要とするパターン形状の寸法に応じレーザーを使い分ければよい。炭酸ガスレーザー、YAG3倍波若しくは4倍波レーザー、又はエキシマレーザー等の各種レーザーを解像度や彫刻性に応じて選定して彫刻することができる。この方法を用いれば、レリーフの頂面と溝部の表面自由エネルギーが異なる組み合わせの版も作ることができる。この場合、レリーフ先端層とその下の層とで、異なる材料を積層する、異なる材料を塗布し重ねる、或いは、プラズマ処理を行なう等の各種方法で、レリーフ先端層とその下の層で表面自由エネルギーの異なる組み合わせを作り、レーザーで下の層まで達するよう彫刻する方法を採ることもできる。
【0033】
本発明に係る印刷用凸版を形成する材料としては、上記のように室温で固体、高温で流動性を有する熱可塑性樹脂、及び室温で粘凋若しくは固溶体状の感光性樹脂又は熱硬化性樹脂を使用でき、それぞれの可塑性又は硬化性の性質を利用して版を成型することができる。樹脂の種類について特に制約は無い。版として使用する形態における力学的物性、例えば硬度、ヤング率、反発弾性、引張強伸度、表面張力、或いは耐溶剤性等の化学的物性が所望する印刷に適するように樹脂を選択、設計すればよい。また、架橋されたゴム系材料も本発明に係る印刷用凸版を形成する材料であることができる。
【0034】
ネガタイプの感光性樹脂としては、ラジカル重合系、光カチオン重合系、光アニオン重合系又は光二量化反応系等が適用可能である。以下、汎用的なラジカル重合系を例に説明する。
【0035】
ラジカル重合性樹脂組成物の多くが本発明に適用され得るが、その中で代表的なものとしてプレポリマー、モノマー、開始剤及び熱重合禁止剤を配合した組成物が使用可能である。
【0036】
プレポリマーとしては、重合性二重結合を分子中少なくとも1個以上有し、例えば、不飽和ポリエステル、不飽和ポリウレタン、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリレート樹脂、不飽和メタクリレート樹脂又はこれらの各種変性物等を少なくとも1種類用いたものを挙げることができる。
【0037】
モノマーは、典型的には重合性二重結合を有するエチレン性不飽和単量体であり、例えば、スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルシアヌレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメタクリルアミド、α−アセトアミド、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、α−クロロアクリル酸、パラカルボキシスチレン、2,5−ジヒドロキシスチレン、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート等、及びフォトポリマー懇話会著、「フォトポリマーハンドブック」、(株)工業調査会刊、1989年6月26日、p.31−36に記載の材料を用いることができる。
【0038】
開始剤としては、エチレン付加重合性不飽和基を用いて三次元架橋反応を行なうときに反応効率を高めるために用いる公知の光重合開始剤又は熱重合開始剤を用いることができる。光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、キサントン、チオキサントン、クロロキサントン、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシアセトフェノン、(2−アクリロイルオキシエチル)(4−ベンゾイルベンジル)ジメチル臭化アンモニウム、(4−ベンゾイルベンジル)塩化トリメチルアンモニウム、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−3−,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オン−メソクロライド,1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(Oベンゾイル)オキシム、チオフェノール、2−ベンゾチアゾールチオール、2−ベンゾオキサゾールチオール、2−ベンズイミダゾールチオール、ジフェニルスルフィド、デシルフェニルスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジベンジルスルフィド、ジベンゾイルジスルフィド、ジアセチルジスルフィド、ジビニルジスルフィドジメトキシキサントゲンジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムテトラスルフィド、ベンジルジメチルジチオカーバメイトキノキサリン、1,3−ジオキソラン、N−ラウリルピリジニウム等が例示できる。一方、熱重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、過硫酸塩−亜硫酸水素ナトリウム等の過酸化物、アゾ化合物、レドックス開始剤といった公知のものが使用できる。
【0039】
本発明に用いる熱重合禁止剤として、ハイドロキノン、モノ第三ブチルハイドロキノン、ベンゾキノン、2,5‐ジフェニル‐p‐ベンゾキノン、ピクリン酸、ジ‐p‐フルオロフェニルアミン、p‐メトキシフェノール、2,6‐ジ第三ブチル‐p‐クレゾール等を挙げることができる。
【0040】
感光性樹脂組成物としては特開昭52−90804号公報、特公昭48−19125号公報、特開昭49−109104号公報、特公昭48−41708号公報等に記載の物が挙げられる。更に、東レリサーチセンター調査研究事業部編、「フォトポリマー技術の新展開」東レリサーチセンター刊、1993年3月10日、p.35〜37、山岡亜夫監修、「フォトポリマーの基礎と応用」シーエムシー出版、2003年3月27日、第4章製版材料とフォトレジスト、や松井真二他監修、「ナノインプリントの開発と応用」、シーエムシー出版刊、2005年8月31日、p.50及びp.151に記載の材料を用いることができる。同じくp.158及びp.159に記載のフッ素変性したフルオロアルキル基を有するアクリレート、メタクリレートや含フッ素のエポキシ系の感光性樹脂を用いることもできる。
【0041】
また少なくとも未加硫ゴム、重合性二重結合を有する単量体及び重合開始剤からなる光重合性ゴム組成物、いわゆる感光性エラストマーといわれているもの(例えば特開昭51−106501号公報及び特開昭47−37521号公報を参照)、並びに、発インク性とのバランスが必要であるもののジアルキルシリコン系樹脂の使用が可能である。
【0042】
熱可塑性樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、環状ポリオレフィン樹脂(COP)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルペンテン(TPX)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PSt)、塩化ビニル(PVC)、塩化ビニリデン(PVDC)、アクリロニトリル/スチレン(AS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)、フッ素系樹脂としてフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン/ノルボルネン共重合体等のフッ素化ポリオレフィン、含フッ素アクリル樹脂、含フッ素ポリイミド樹脂、含フッ素ビニルエーテル樹脂等が挙げられ、これら以外でも熱により加工できるものであれば使用でき、例えば三羽忠広著、「基礎合成樹脂の科学」、技報堂出版(株)、1987年6月15日、p.113−p.397、各論 1.重合型樹脂 2.縮合型樹脂 に記載の熱可塑性樹脂を使用しても良い。
【0043】
熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル、不飽和ポリウレタン、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリレート、不飽和メタクリレートの樹脂又はこれらの各種変性物を少なくとも1種、重合性二重結合を有するエチレン性不飽和単量体、及び熱重合開始剤を含むラジカル重合性樹脂組成物や、エポキシに硬化剤を添加した樹脂組成物、シリコン系のポリジメチルシロキサン系樹脂等を使用しても良い。フッ素系樹脂としては、架橋材や熱によりラジカルの発生する重合開始剤を含むフッ素モノマーや含フッ素オリゴマーを用いた熱硬化性樹脂を使用しても良い。これ以外にも例えば三羽忠広著、「基礎合成樹脂の科学」、技報堂出版(株)、1987年6月15日、p.240−p.397、各論 2.縮合型樹脂 に記載の熱硬化性樹脂を使用しても良い。
【0044】
ゴム系材料としては、天然ゴム、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ブチル、エチレンプロピレン、スチレンブタジエン、ポリイソブチレン、スチレンブタジエン、ニトリル、アクリル、エピクロルヒドリン、ウレタン、シリコン、フッ素系ゴムを使用しても良い。
【0045】
以上に記した方法や材料を用いることにより、本発明に係る印刷用凸版を製版することができる。
【0046】
本発明において使用する印刷用凸版は、支持体上に上述のような各種樹脂を用いて版を形成したものであることができる。支持体としては、寸法変化が小さく、版胴に巻きつけて使用する場合が多いという使用態様に適合するように版胴の径に合わせて曲げることが可能であることが好ましい。具体的には、PET基板等のプラスチック基板、アルミ基板、ステンレス(SUS)基板、各種金属基板等が挙げられる。特に寸法変化が小さくさびにくい点でガラス複合プラスチック基板及びSUS基板が好ましい。また、本発明において使用する印刷用凸版は、図1に示したようなシート状だけでなく、例えばロール状のシームレス版でも良い。シート状の印刷用凸版を用いる場合には、レリーフを外側に向けた状態で印刷用凸版を円筒形の版胴の外周面に配置することにより、該印刷用凸版を円筒形とすることができる。またロール状の印刷用凸版を用いる場合には版胴が不要であるため、取り付け時に曲げることは考慮する必要はない。よって、ロールの素材としては特に限定はないが、寸法変化の小さいものが良い。
【0047】
次に、本発明の凸版印刷方法に使用できる印刷機の例について説明する。印刷機としては、例えば市販されている図1に示す方式のものを用いることができる。これは一例であり、この方式に限定されるものではない。印刷は以下のようにして行なう。図1に示した方式の印刷機を使用し、凹凸を設けたアニロックスロール3とドクターブレード4とが合わさっている上にインク2を供給し、アニロックスロール3が回転することによってインクが計量される。次にアニロックスロール3と版胴5に巻かれた版6とが接触すると、レリーフの先端である頂面にインクが付着する。この状態で版6を基板1に押し付けインクを転写する。
【0048】
本発明の凸版印刷方法においては、印刷用凸版が、上述したように開口面積10μm2以上1600μm2以下の窪みをレリーフの頂面に複数個有し、かつ、アニロックスロールの線数が400線/インチ以上700線/インチ未満とされる。印刷用凸版の窪みの開口面積及びアニロックスロールの線数をともに上記範囲内とすることにより、印刷時のインクの流れ出しを防止し、線太りを抑制するとともに印刷物の膜厚を均一にすることができる。アニロックスロールの線数を400線/インチ以上700線/インチ未満に設定することによるインクの流れ出し防止効果は、特にインクの粘度が200mPa・S以下の場合に顕著である。
【0049】
アニロックスロールのセル形状は、例えば六角形、四角形等の多角形や丸等であることができる。
【0050】
本発明においては、前述したように、印刷用凸版のレリーフの頂面の窪み1つ当たりの開口面積がアニロックスロールのセル1つ当たりの開口面積よりも小さくされるが、窪み1つ当りの開口面積(A)の、アニロックスロールのセル1つ当たりの開口面積(B)に対する比A/Bは、A/B=5/100〜99/100の範囲であることが好ましい。上記比が5/100以上である場合、線太り抑制効果があり、99/100以下である場合、微小窪みに相当する印刷抜けの防止効果がより良好である。上記比は、10/100〜90/100の範囲であることがより好ましい。
【0051】
アニロックスロールのセルの深さは、インクの保持と出入りのしやすさの観点から1μm以上、60μm以下が好ましい。
【0052】
転写工程においては、印刷用凸版のレリーフと被印刷体との押し込み量が200μm以下となる印圧で転写を行なうこと、すなわち、レリーフと被印刷体とを印圧なしで互いに接触させた状態から印刷用凸版及び/又は被印刷体が厚み方向に押し込まれる量が、両者の合計で200μm以下となるような印圧をかけて転写を行なうことが好ましい。該押し込み量が200μmよりも高くなる印圧の場合、レリーフがつぶれてしまい、窪みの効果が小さくなり、線太り抑制効果や印刷物の膜厚均一性に問題が生じる場合がある。本発明においては、上記押し込み量が100μm以下となる印圧で転写を行なうことが更に好ましい。
【0053】
次に、本発明の凸版印刷方法を使用して形成される印刷物の例について述べる。印刷物としては、例えば、有機EL素子、有機薄膜太陽電池、トランジスタ、電極、配線等が挙げられる。
【0054】
印刷物の例としてトランジスタについて説明する。まず基板の上にゲート電極及び配線に相当する導電性のパターンを、凸版印刷によって作製する。導電性パターン形成用のインクとしては金属微粒子を分散させたものや導電性のポリマー等を用いることができる。次に、形成したパターン上の所定の位置に合わせ、トランジスタのゲート絶縁膜に相当するパターンを印刷する。印刷用凸版は絶縁膜のパターンに相当するものに交換しておく。以後パターンを変更するたびに版を変更する。ゲート絶縁膜形成用のインクとしては有機系の材料を溶剤に溶解したものや無機系の塗布材料、例えばポリシラザン系の材料等が使用可能である。次に所定の位置にソース電極とドレイン電極及びこれらに接続される配線を形成する。次にソース電極とドレイン電極とを跨るように半導体のパターンを形成する。半導体パターン形成用のインクとしては溶剤に可溶なポリチオフェン系誘導体やポリアセン系等の有機半導体が使用可能である。次いで素子を保護するため、これらのパターンを覆うように保護膜パターンを形成する。保護膜の材料としては高分子の樹脂材料等を溶剤に溶解させたものが使用可能である。
【0055】
また、印刷物の別の例として有機EL素子について説明する。有機EL素子はディスプレイや照明用途にて用いられる。有機EL素子は有機物を陽極と陰極とで挟み込んだ構造をとっている。その中で本発明の印刷方法を用いる工程としては、電極形成時並びに電極に挟み込まれた有機物、具体的にはホール注入材料や発光材料を塗布する工程が適している。電極形成方法としては、ガラス基板若しくはプラスチック基板に酸化インジウム・スズ(ITO)等の透明電極を所望のパターンにて印刷する。この透明電極を作製する際に本発明に係る印刷方法を用いてパターンを作製することができる。また、ITO電極の上のホール注入材料及び/又はホール輸送材料、更にその上の発光材料を形成する場合においても本発明に係る印刷方法を使用することができる。
【0056】
ホール注入材料又はホール輸送材料又はこれら両材料の機能を有するホール注入輸送材料の例としては、芳香族アミン系材料、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)等のフタロシアニン系錯体、アニリン系共重合体、ポリフィリン系化合物、イミダゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、さらにアントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン等のアセン系化合物等が挙げられる。また、これらのアセン系化合物の誘導体、すなわち、上記アセン系化合物にアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、ケトン基、エステル基、エーテル基、アミノ基、ヒドロキシ基、ベンジル基、ベンゾイル基、フェニル基、ナフチル基等の置換基を導入した誘導体や、上記アセン系化合物のキノン誘導体等も挙げられる。
【0057】
また、ポリアニリン、ポリビニルアントラセン、ポリカルバゾール、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリフルオレン、ポリ(エチレンジオキシ)チオフェン/ポリ(スチレンスルフォン酸)(PEDOT/PSS)、チオフェン−フルオレン共重合体、フェニレンエチニレン−チオフェン共重合体、ポリアルキルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、その他、チオフェン系化合物等の高分子系正孔注入材料又は高分子系正孔輸送材料等も挙げられる。
【0058】
発光材料としては、ポリ(パラ−フェニレンビニレン)、ポリ(チオフェン)、ポリ(フルオレン)又はこれらの誘導体等の高分子系発光材料を挙げることができる。また、トリス(8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体(BeBq2)、フェナントロリン系ユウロピウム錯体(Eu(TTA)3(phn))、ペリレン、クマリン誘導体、キナクリドン、イリジウム錯体(Ir(ppy)3、Firpic、Ir(ppy)2(acac))といった蛍光材料や燐光材料等を挙げることができる。
【0059】
これらは、ホール若しくは電子輸送性又はその両方を有するホスト材料に少量ドープして用いても良い。そのようなホスト材料としては4,4’−ビス(9−カルバゾール)ビフェニル(CBP)、2,7−ジ−9−カルバゾリル−9,9’−スピロビフルレン(spiro−CBP)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)等が挙げられる。
【0060】
本発明の印刷方法を用いる場合は、上記の各種材料(例えば、ホール注入材料、ホール輸送材料、発光材料、有機半導体材料等)を各種溶媒に分散若しくは溶解させて使用できる。その時の溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン(デカリン)、テトラリン等の炭化水素類等が挙げられる。
【0061】
また、印刷物の別の例として有機薄膜太陽電池について説明する。有機薄膜太陽電池は有機物を陽極と陰極とで挟み込んだ構造をとっている。その中で本発明の印刷方法を用いる工程としては、電極形成時並びに電極に挟み込まれた有機物、具体的にはp型有機半導体材料を含むインクやn型有機半導体材料を含むインク、p型有機半導体材料とn型有機半導体材料とを混合したインクを塗布する工程が適している。電極形成方法としては、ガラス基板若しくはプラスチック基板に酸化インジウム・スズ(ITO)等の透明電極を所望のパターンにて印刷する。この透明電極を作製する際に本発明に係る印刷方法を用いてパターンを作製することができる。また、ITO電極の上にp型有機半導体材料を含むインクやn型有機半導体材料を含むインク、p型有機半導体材料とn型有機半導体材料とを混合したインクを塗布する場合においても本発明に係る印刷方法を使用することができる。
【0062】
p型有機半導体材料としては、ペンタセン、6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン等のペンタセン誘導体、テトラセン、2−ヘキシルテトラセン等のテトラセン誘導体、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(NPD)、N,N’−ジフェニル−N、N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)、1,3,5−トリス(3−メチルジフェニルアミノ)ベンゼン(m−MTDATA)、等の芳香族アミン系材料が挙げられる。また、その他にも、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)等のフタロシアニン系錯体、ポリフィリン系化合物、ペリレン系誘導体、イミダゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体等が挙げられる。また、チオフェンの誘導体、ポリフェニルビニレン(PPV)の誘導体等が挙げられる。チオフェンの誘導体として、具体的には、P3HT(Poly(3−hexylthiophene−2,5−diyl))、P3OT(Poly(3−octylthiophene−2,5−diyl))、P3DDT(Poly(3−dodecylthiophene−2,5−diyl))等が挙げられる。
【0063】
n型有機半導体材料としては、フッ素化アセン系化合物、60PCBM([6,6]−PhenylC61butyric acid methyl ester)や70PCBM([6,6]−PhenylC71butyric acid methyl ester)等のフラーレン系化合物、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体等が挙げられる。
【実施例】
【0064】
以下に本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0065】
1)微小窪みを有する印刷用凸版の製造方法
図4は、ライン/スペースの形状と窪みの形状を示す図である。図4のようなライン/スペース(L/S 200μm/400μm、長さ20mm)形状において、光透過部の中に微小窪みに対応する四角形の遮光部を等間隔に有する厚さ2.3mmの石英クロムマスクを用意した。石英クロムマスク表面をUV洗浄装置にて処理した後、窒素雰囲気下でHMDS(1,1,1,3,3,3−Hexamethyldisilazane)(1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン)の気流処理を20分間行なった。この石英クロムマスク表面にポジ型感光性樹脂をスピンコーターによって乾燥後厚みが13μmになるように塗布、風乾後、110℃、7分加熱処理を行なった。ポジ型感光性樹脂は東京応化社製PMER(P−LA300PM)を用いた。次にオーク社製平行光露光装置を用いて石英クロムマスク側から露光、ディップ現像(現像液P−7G)を行ない、風乾後、更に110℃、5分加熱処理を行なった。この石英クロムマスク上に形成した樹脂モールド上に、離型剤として旭硝子社製サイトップ(CTX−809AP2)の4wt%液をスピンコーターにより乾燥後厚みが0.5μmになるように塗布し、110℃で10分乾燥させた。得られた離型剤処理された樹脂モールド上に、旭化成ケミカルズ社製ネガ型液状感光性樹脂APR−G31(ポリエステル系樹脂)を100μmの厚みになるようにナイフコータ−を用いて塗布した後、塗布上面にベースフィルムとして厚み150μmのステンレスシート(SUS304)をラミネートした。尚、ステンレスシートは信越化学工業社製シランカップリング剤(KBM−503)によって表面処理したものを用いた。露光は石英クロムマスク側からオーク社製平行光露光装置を用いて露光量500mj/cm2(350nmで測定)で行なった。樹脂モールドからベースフィルムを剥離し、0.1wt%炭酸ナトリウム溶液と界面活性剤からなる洗浄液で洗浄し、後露光を行ない、レリーフの頂面に所定の微小窪みを有するL/Sパターンの印刷用凸版1を得た。印刷用凸版1はレリーフ厚みが100μm、線幅が200μmであり、レリーフの頂面に開口形状が正方形の微小窪みを有し、その微小窪みの1辺の長さは34.8μm、微小窪み1つ当たりの開口面積は1208μm2、微小窪み間の距離は12.2μm、微小窪みの深さは13μmであった。深さに関しては光干渉を用いた顕微鏡(Vert Scan2.0/株式会社菱化システム)により測定した。
【0066】
2)微小窪みを有していない印刷用凸版の製造方法
旭化成ケミカルズ社製ネガ型液状感光性樹脂APR−G31(ポリエステル系樹脂)を100μmの厚みになるようにナイフコータ−を用いて塗布した後、塗布上面にベースフィルムとして厚み150μmのステンレスシート(SUS304)をラミネートした。尚、ステンレスシートは信越化学工業社製シランカップリング剤(KBM−503)により表面処理したものを用いた。露光は石英クロムマスク側からオーク社製平行光露光装置を用いて500mj/cm2で行なった。樹脂モールドからベースフィルムを剥離し、0.1wt%炭酸ナトリウム溶液と界面活性剤からなる洗浄液で洗浄し、後露光を行ない、100μm厚のレリーフを有するL/Sパターンの微小窪みを有していない印刷用凸版2を得た(L/S 200μm/400μm、長さ20mm)。印刷用凸版2はレリーフ厚みが100μm、線幅が200μmであり、レリーフの頂面に微小窪みがなく、平らな構造をしているベタ版である。
【0067】
[実施例1]
印刷用凸版1を用いて、印刷実験を行なった。印刷条件としては、得られた印刷用凸版を円筒形の版胴に取り付けた。印刷に用いたインクは、ハリマ化成(株)製の銀インク(NPS−J 金属重量分57%、8.4mPa・S)である。印刷方法としては、アニロックスロール(線数:550線/インチ)を用い、アニロックスロールから印刷用凸版へインキングを行ない、更に印刷用凸版からガラス基板へインクを転写した。ワークへの転写時の印圧は、押し込み量で定義し、押し込み量は定盤の高さで調整した。本実験では、押し込み量30μmで行なった。印刷後のガラス基板は220℃にて30分乾燥した。評価には光干渉を用いた顕微鏡(Vert Scan2.0/株式会社菱化システム)を使用した。
【0068】
[実施例2]
印刷用凸版1を用いて、印刷実験を行なった。印刷条件としては、得られた印刷用凸版を円筒形の版胴に取り付けた。印刷に用いたインクは、ハリマ化成(株)製の銀インク(NPS−J 金属重量分57%、8.4mPa・S)である。印刷方法としては、アニロックスロール(線数:550線/インチ)を用い、アニロックスロールから印刷用凸版へインキングを行ない、更に印刷用凸版からガラス基板へインクを転写した。ワークへの転写時の印圧は、押し込み量で定義し、押し込み量は定盤の高さで調整した。本実験では、押し込み量50μmで行なった。印刷後のガラス基板は220℃にて30分乾燥した。評価には光干渉を用いた顕微鏡(Vert Scan2.0/株式会社菱化システム)を使用した。
【0069】
[比較例1]
印刷用凸版2を用いて、印刷実験を行なった。印刷条件としては、得られた印刷用凸版を円筒形の版胴に取り付けた。印刷に用いたインクは、ハリマ化成(株)製の銀インク(NPS−J 金属重量分57%、8.4mPa・S)である。印刷方法としては、アニロックスロール(線数:550線/インチ)を用い、アニロックスロールから印刷用凸版へインキングを行ない、更に印刷用凸版からガラス基板へインクを転写した。ワークへの転写時の印圧は、押し込み量で定義し、押し込み量は定盤の高さで調整した。本実験では、押し込み量を30μmで行なった。印刷後のガラス基板は220℃にて30分乾燥した。評価には光干渉を用いた顕微鏡(Vert Scan2.0/株式会社菱化システム)を使用した。
【0070】
[比較例2]
印刷用凸版1を用いて、印刷実験を行なった。印刷条件としては、得られた印刷用凸版を円筒形の版胴に取り付けた。印刷に用いたインクは、ハリマ化成(株)製の銀インク(NPS−J 金属重量分57%、8.4mPa・S)である。印刷方法としては、アニロックスロール(線数:300線/インチ)を用い、アニロックスロールから印刷用凸版へインキングを行ない、更に印刷用凸版からガラス基板へインクを転写した。ワークへの転写時の印圧は、押し込み量で定義し、押し込み量は定盤の高さで調整した。本実験では、押し込み量30μmで行なった。印刷後のガラス基板は220℃にて30分乾燥した。評価には光干渉を用いた顕微鏡(Vert Scan2.0/株式会社菱化システム)を使用した。
【0071】
[比較例3]
印刷用凸版1を用いて、印刷実験を行なった。印刷条件としては、得られた印刷用凸版を円筒形の版胴に取り付けた。印刷に用いたインクは、ハリマ化成(株)製の銀インク(NPS−J 金属重量分57%、8.4mPa・S)である。印刷方法としては、アニロックスロール(線数:700線/インチ)を用い、アニロックスロールから印刷用凸版へインキングを行ない、更に印刷用凸版からガラス基板へインクを転写した。ワークへの転写時の印圧は、押し込み量で定義し、押し込み量は定盤の高さで調整した。本実験では、押し込み量30μmで行なった。印刷後のガラス基板は220℃にて30分乾燥した。その結果、印刷物のラインに微小窪みに相当する抜け(印刷されない部分)があり、きれいに印刷されなかった。よって、印刷物を評価することができなかった。
【0072】
[比較例4]
印刷用凸版2を用いて、印刷実験を行なった。印刷条件としては、得られた印刷用凸版を円筒形の版胴に取り付けた。印刷に用いたインクは、ハリマ化成(株)製の銀インク(NPS−J 金属重量分57%、8.4mPa・S)である。印刷方法としては、アニロックスロール(線数:550線/インチ)を用い、アニロックスロールから印刷用凸版へインキングを行ない、更に印刷用凸版からガラス基板へインクを転写した。ワークへの転写時の印圧は、押し込み量で定義し、押し込み量は定盤の高さで調整した。本実験では、押し込み量50μmで行なった。印刷後のガラス基板は220℃にて30分乾燥した。評価には光干渉を用いた顕微鏡(Vert Scan2.0/株式会社菱化システム)を使用した。
【0073】
[比較例5]
印刷用凸版1を用いて、印刷実験を行なった。印刷条件としては、得られた印刷用凸版を円筒形の版胴に取り付けた。印刷に用いたインクは、ハリマ化成(株)製の銀インク(NPS−J 金属重量分57%、8.4mPa・S)である。印刷方法としては、アニロックスロール(線数:300線/インチ)を用い、アニロックスロールから印刷用凸版へインキングを行ない、更に印刷用凸版からガラス基板へインクを転写した。ワークへの転写時の印圧は、押し込み量で定義し、押し込み量は定盤の高さで調整した。本実験では、押し込み量50μmで行なった。印刷後のガラス基板は220℃にて30分乾燥した。評価には光干渉を用いた顕微鏡(Vert Scan2.0/株式会社菱化システム)を使用した。
【0074】
[比較例6]
印刷用凸版1を用いて、印刷実験を行なった。印刷条件としては、得られた印刷用凸版を円筒形の版胴に取り付けた。印刷に用いたインクは、ハリマ化成(株)製の銀インク(NPS−J 金属重量分57%、8.4mPa・S)である。印刷方法としては、アニロックスロール(線数:700線/インチ)を用い、アニロックスロールから印刷用凸版へインキングを行ない、更に印刷用凸版からガラス基板へインクを転写した。ワークへの転写時の印圧は、押し込み量で定義し、押し込み量は定盤の高さで調整した。本実験では、押し込み量50μmで行なった。印刷後のガラス基板は220℃にて30分乾燥した。評価には光干渉を用いた顕微鏡(Vert Scan2.0/株式会社菱化システム)を使用した。
【0075】
[印刷実験結果まとめ1]
実施例及び比較例にて使用したアニロックスロールのセル1つ当りの開口面積をデジタルマイクロスコープにて実測した所、該開口面積は、300線/インチの場合、4300μm2から5450μm2の間であり、550線/インチの場合、1300μm2から1800μm2の間であり、700線/インチの場合、850μm2から1200μm2の間であった。
【0076】
実施例1と比較例1及び2との印刷結果を図5、6にまとめた。図5は、アニロックスロールの線数と線幅増加率との関係を示す図であり、横軸にアニロックスロールの線数、縦軸に線幅増加率をとった。線幅増加率とは{(印刷物のライン幅)−(レリーフの頂面のライン幅)}/(レリーフの頂面のライン幅)×100(%)である。また、図6は、アニロックスロールの線数と(端部の膜厚/中央の膜厚)比との関係を示す図であり、横軸にアニロックスロールの線数、縦軸に(端部の膜厚)/(中央の膜厚)比の値をとった。
【0077】
その結果、実施例1と比較例1及び2とを比較すると、実施例1では線幅増加率が低く、(端部の膜厚)/(中央の膜厚)の比が1に近かった。つまり、実施例1では、印刷物の線太りが抑制され、かつ印刷物の膜厚均一性が高いことがわかる。
【0078】
[印刷実験結果まとめ2]
実施例2と比較例4、5及び6との印刷結果を図7,8にまとめた。図7は、アニロックスロールの線数と線幅増加率との関係を示す図であり、横軸にアニロックスロールの幅1インチ当りの線数、縦軸に線幅増加率をとった。線幅増加率とは{(印刷物のライン幅)−(レリーフの頂面のライン幅)}/(レリーフの頂面のライン幅)×100(%)である。また、図8は、アニロックスロールの線数と(端部の膜厚/中央の膜厚)比との関係を示す図であり、横軸にアニロックスロールの線数、縦軸に(端部の膜厚)/(中央の膜厚)比の値をとった。
【0079】
その結果、実施例2と比較例4、5及び6とを比較すると、実施例2では線幅増加率が低く、(端部の膜厚)/(中央の膜厚)の比が1に近かった。つまり、実施例2では、印刷物の線太りが抑制され、かつ印刷物の膜厚均一性が高いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、エレクトロニクス材料に関連する微細なパターン作製を凸版印刷法で実施する場合に好適である。
【符号の説明】
【0081】
1 基板
2 インク
3 アニロックスロール
4 ドクターブレード
5 版胴
6 版
7 レリーフ
8 インクのはみだし
9 線太り
10 元のパターン
11 レリーフの頂面
12 微小窪み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レリーフを有する印刷用凸版を、前記レリーフの頂面を外側に向けた状態で円筒形とし、前記レリーフの頂面にアニロックスロールからインクを供給しながら円筒軸を中心に前記印刷用凸版を転動させることによって、前記印刷用凸版から被印刷体に対して前記インクを転写する転写工程を含み、
前記印刷用凸版が、開口面積10μm2以上1600μm2以下の窪みを前記レリーフの頂面に複数個有し、
前記アニロックスロールの線数が400線/インチ以上700線/インチ未満であり、かつ
前記窪み1つ当たりの開口面積が前記アニロックスロールのセル1つ当たりの開口面積よりも小さくされている、凸版印刷方法。
【請求項2】
前記転写工程において、前記印刷用凸版の前記レリーフと前記被印刷体との押し込み量が200μm以下となる印圧で前記転写を行なう、請求項1に記載の凸版印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−158883(P2010−158883A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249310(P2009−249310)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】