説明

エレクトロルミネセンスへの応用を目的とし、シリコン過剰酸化物からシリコンナノ粒子をDC反応性スパッタリングによって形成する方法

【課題】シリコン過剰酸化物ELデバイス形成に関するもので、高い発光効率と低費用で、かつドーパントも可能な製造方法を提供する。
【解決手段】ナノメートルサイズのシリコン粒子を内部に含んだ、シリコン過剰酸化物層を形成する方法であって、基板を用意する工程12と、ターゲットを用意する工程14と、基板およびターゲットをスパッタリングチャンバに配置する工程16と、スパッタリングチャンバのパラメータを設定する工程18と、材料をターゲットから基板上に堆積し、シリコン過剰酸化物層を形成する工程20と、基板をアニーリングし、その中に、ナノメートルサイズのシリコン粒子を形成する工程22と、を含む方法10。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の技術分野〕
本発明は、シリコンベースのエレクトロルミネセンスデバイスに関するものであり、特に、シリコン過剰酸化物ELデバイスの形成に関するものである。
【0002】
〔発明の背景〕
CastagnaらによるHigh efficiency light emission devices in silicon, Mat. Res. Soc. Symp. Proc., Vol. 770, I2.1.1. - I2.1.12, (2003)によって、シリコン過剰酸化物(SRSO)を発光材料として用いてエレクトロルミネセンス(EL)デバイスを形成することが示されて以来、シリコンベースのELデバイスは、シリコンベースの集積回路にますます組み入れられるようになってきた。経済的な理由から、シリコンベースのELデバイスの研究は重要事項となっている。シリコン発光材料の基本的構造は、シリコンをナノメートルサイズの粒子まで微細化して適切な基板へ埋め込むことを必要とする。量子閉じ込め効果および希土類ドーピングにより、シリコンナノ粒子(NPs)を含む材料は様々な波長の光を放つことができる。最大の技術的問題は、二酸化ケイ素マトリックスに分散させる高密度のシリコンNPsを生成することである。
【0003】
二酸化ケイ素マトリックスに高密度のシリコンNPsを分散させる2つの技術が報告されている。1つ目の技術では、SRSO膜を堆積させ、該膜を高温下においてアニーリングすることによってNPsを形成する。このとき、過剰なシリコンが拡散される。二つ目の技術では、超格子(SL)とも称されることがあるSi/SiO多層構造を形成し、その後、上記SLを高温下においてアニーリングし、シリコンNPsを形成する。SRSOを堆積させる方法には、CVD、および、SiOへのシリコンイオン注入がある。また、希土類ドーピングは通常、イオン注入によって行われる。Si/SiOSL構造では、CVDはまた、一般的に、ガス組成を変えて行われる。シリコン膜を堆積させるRFスパッタリング、および該膜を部分的に酸化させる酸素プラズマが試みられているが、好結果は得られていない。上記の堆積方法においては、通常1回以上のイオン注入が必要であるが、これによって費用がかさみ、商業化への柔軟性が制限されてしまう。上記方法には界面ドーパント技術を用いることができない。
【0004】
従来技術では、CVDを用いてSRSOまたはSL膜構造を生成し、その後、シリコンまたは希土類ドーパントをイオン注入する。注入が一回だけでは、上記膜の活性膜厚全体にドーパントを均一に分散することができないため、複数回、注入する。しかしこのような注入によっても、高い発光効率が得られず、費用効率も悪い。また同時に、界面ドーパント技術を用いることができない。RFスパッタリングは、SL構造を生成するために用いられる。このとき、シリコン膜を堆積し、さらに該膜の一部をプラズマ酸化するが、その工程が複雑であり、また、商業的な利用に適さない可能性がある。
【0005】
〔発明の要旨〕
ナノメートルサイズのシリコン粒子を内部に含んだ、シリコン過剰酸化物層を形成する方法であって、基板を用意する工程と、ターゲットを用意する工程と、該基板および該ターゲットをスパッタリングチャンバに配置する工程と、該スパッタリングチャンバのパラメータを設定する工程と、材料を上記ターゲットから上記基板上に堆積させ、シリコン過剰酸化物層を形成する工程と、上記基板をアニーリングし、その中に、ナノメートルサイズのシリコン粒子をその膜中に形成する工程と、を含む方法。
【0006】
本発明に関するこの概要は、本発明の本質を素早く理解できるようにするためのものである。好適な実施形態に関する下記の説明を図面と共に参照することにより、本発明をより詳しく理解することができるであろう。
【0007】
〔本発明の好ましい実施形態の詳細な説明〕
本発明では、反応性DCスパッタリング法を用いて、シリコン過剰酸化物(SRSO)を低堆積温度において堆積させる。熱アニーリングすることにより、SiO中においてシリコンナノ粒子を生成する。希土類ドーピングは、同時スパッタリングによって、または、ドーパントが埋め込まれたターゲットを用いて、行われる。このドーパントが埋め込まれたターゲットを用いることによって、イオン注入工程を省略し、製造費用および時間を削減し、かつ上記膜におけるドーピング密度およびドーピング特性(profile)をよりよく制御する。1個のシリコンターゲットのみを使用するため、製造工程を容易に最適化することができる。本発明は、シリコンNPsを生成する、適応性のある簡単な方法を提供するものであり、本方法によって、希土類ドーピングおよび位置制御を容易に達成することができる。
【0008】
図1を参照すると、本発明による方法が、概略的に10において示されている。本発明は、工程12において示される、回路基板を用意する工程を含む。該基板は、バルクシリコン基板または、その上に形成した集積回路デバイスを有する基板であってよい。また、そのうえに組み立てた集積回路の別の構成要素を有する基板であってもよい。次に、工程14において示される、スパッタリングターゲットを用意する。ターゲットは、純シリコンであってよく、または、任意の所望するドーパントがドーピングされているアモルファスシリコンであってもよい。DCスパッタリング堆積を、Edwards360システムにおいて行う。このとき、4インチのシリコンターゲットを用いる。上記シリコンターゲットを、工程12において用意した基板と共に上記チャンバに配置する。次に、工程18において示される、堆積チャンバのパラメータを設定する。
【0009】
工程20において示される堆積は、アモルファスシリコン膜を用いた場合は室温において行ってもよく、アモルファスシリコンおよびシリコン酸化膜を用いた場合は約250℃において行ってもよい。堆積圧力を、約933.1〜1066.4ミリパスカル(mPa)(7mtorr〜8mtorr)の範囲内に維持する。アルゴンフローに対する酸素フローの比率を30%から0%に変えることによって、ガス相における酸素濃度を変化させる。この結果、図2に示しているように、膜組成がSiOから純シリコンへとそれぞれ変化する。この図2は、シリコンおよびSiOの膜厚測定を示す。図2は、純アルゴンを用いた場合、および、酸素15%およびアルゴン85%の比率の混合ガスを用いた場合、それぞれにおいて堆積させたシリコンおよびSiOの膜厚測定を示す。シャッターを開ける前に最初の洗浄工程を行うため、y切片は2〜3Åの厚みから始まる。約1.46〜1.8の範囲の屈折率値を有するSRSO膜は、シリコンELデバイスへの使用に最も適していると考えられる。所望の屈折率を得るために、あらかじめ混合し、比率を酸素15%およびアルゴン85%に固定した混合ガスを用いること、およびスパッタリング電力を変えることによって、組成制御する。
【0010】
表1は、150W〜300Wのスパッタリング電力を与えることによって250℃において堆積させた3つのサンプルの結果を示す。上記膜の原子組成を、ラザフォード後方散乱法(RBS)を用いて測定した。図3は、酸素15%およびアルゴン85%の比率にあらかじめ混合したガスを用いて、異なるスパッタリング電力において堆積させたSRSO膜の組成特性を示しており、電力を150W〜300Wまで変えた場合におけるケイ素原子に対する酸素原子の比率の変化を示す散布図である。150Wにおけるx値は2.0であり、これは化学量論的な二酸化ケイ素であることを示す。電力量を増加させた場合、上記膜のシリコン含有量が増加する。200W、および633nmにおける屈折指数は約1.52であり、x値は1.7である。300W、および633nmにおける屈折指数は1.78であり、SiOx膜におけるx値は1.34に低下する。これはシリコン含有量50%においても同等である。図4は、上記3つのサンプルにおける、異なる電力において堆積させた、異なるシリコン過剰酸化物の光学的な特性変化を示す偏光解析測定であり、RBS結果は、これらの膜の光学的特性によって確認された。
【0011】
【表1】

【0012】
図1における工程22に示される、約850℃〜1,200℃の温度において熱アニーリングすることによって、上記スパッタリング方法を用いて堆積させたシリコン過剰酸化物から、シリコンナノ粒子を、二酸化ケイ素マトリックス中において生成することができる。図5は、異なる温度においてアニーリングした後における、結晶の大きさの変化を示す。850℃においてポスト熱アニーリングした後、アモルファス堆積膜から、粒子サイズが約3.3nmであるシリコンナノ粒子が生成される。温度を900℃まで上昇させた場合、結晶は48Åまで大きくなる。温度を、例えば約950℃までさらに上昇させても、結晶はこれ以上大きくならない。これは、ここで使用できるシリコン原子が減少したことを示している。
【0013】
上記の結果から、DC反応性スパッタリングシステムを用いることによって、x値0〜2であるSiOx膜が堆積されることは明らかである。ドーパントを含有する別のターゲットを用いて同時スパッタリング工程を行うこと、またはドーパントを埋め込んだターゲットを用いることによって、希土類ドーピングを達成することもできる。シリコンナノ粒子の大きさは、熱アニーリングによって制御することができる。上記方法により、製造工程を最適化する簡便な方法が提供される。
【0014】
上述のように、フォトルミネセンスへの応用を目的とし、DC反応性スパッタリングを用いて、シリコン過剰酸化物からシリコンナノ粒子を形成する方法がここに開示された。上述の請求項に明示されている本発明の範囲内において、さらなる変形および改変を加えることができることは言うまでもない。
【0015】
また、本発明に係る方法は、次のように表現することもできる。
【0016】
(第1の方法)
ナノメートルサイズのシリコン粒子を含んでいるシリコン過剰酸化物層を形成する方法であって、
あらかじめ希土類元素がドーピングされているシリコンをスパッタリングすることによって、希土類元素を含んでいる層を基板に堆積させる堆積工程と、
上記層が堆積されている上記基板をアニーリングすることによって、上記希土類元素を含んでいるシリコン過剰酸化物層を形成するアニーリング工程とを含んでいる方法。
【0017】
(第2の方法)
上記基板がバルクシリコン基板であることを特徴とする上記第1の方法に係る方法。
【0018】
(第3の方法)
上記堆積工程において、堆積チャンバ内の温度を室温〜約250度に維持し、圧力を約933.1〜1066.4ミリパスカル(mPa)(7mtorr〜8mtorr)に維持することを特徴とする上記第1の方法に係る方法。
【0019】
(第4の方法)
上記堆積工程において、堆積チャンバ内にアルゴンと酸素からなる混合ガスを流入させ、その際、上記混合ガスに対する酸素の比率を30%〜0%に変化させると共に、上記混合ガスに含まれている残りのガスをアルゴンにすることを特徴とする上記第1の方法に係る方法。
【0020】
(第5の方法)
上記アニーリング工程を、約850℃〜1,200℃の温度条件下において行うことを特徴とする上記第1の方法に係る方法。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による方法のブロック図である。
【図2】SiおよびSiO堆積による膜厚測定(calibration)を示す図である。
【図3】電力を150Wから300Wまで変化させた場合における、ケイ素原子に対する酸素原子の比率変化の散布図である。
【図4】3つのサンプルの偏光解析測定を示す図である。
【図5】アニーリング温度を変化させた場合の、結晶の大きさの変化を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノメートルサイズのシリコン粒子を内部に含んだ、シリコン過剰酸化物層を形成する方法であって、
基板を用意する工程と、
ターゲットを用意する工程と、
上記基板および上記ターゲットをスパッタリングチャンバに配置する工程と、
上記スパッタリングチャンバのパラメータを設定する工程と、
材料を上記ターゲットから上記基板上に堆積させ、シリコン過剰酸化物層を形成する工程と、
上記基板をアニーリングし、その中にナノメートルサイズのシリコン粒子を形成する工程と、を含む方法。
【請求項2】
上記基板を用意する工程が、バルクシリコン基板を用意する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ターゲットを用意する上記工程が、純シリコンターゲットと、ドーピングされたシリコンターゲットとからなるターゲットのグループから選択されたターゲットを用意する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記スパッタリングチャンバのパラメータを設定する上記工程が、上記チャンバの温度をほぼ室温から約250℃までの温度に設定する工程と、上記チャンバ内の圧力を約933.1〜1066.4ミリパスカルに維持する工程と、を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記スパッタリング圧力チャンバのパラメータを設定する上記工程が、ガスフローを酸素約30%から0%にし、残りのガスの割合をアルゴンとする工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
アニーリングする上記工程が、約850℃〜1,200℃の温度において上記基板をアニーリングする工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ナノメートルサイズのシリコン粒子を内部に含んだ、シリコン過剰酸化物膜を形成する方法であって、
基板を用意する工程と、
ターゲットを用意する工程と、
上記基板および上記ターゲットをスパッタリングチャンバに配置する工程と、
ガスフローを酸素約30%から0%にし、残りのガスの割合をアルゴンとする上記スパッタリングチャンバのパラメータを設定する工程と、
材料を上記ターゲットから上記基板上に堆積させ、シリコン過剰酸化物層を形成する工程と、
上記基板をアニーリングし、その中に、ナノメートルサイズのシリコン粒子を形成する工程と、を含む方法。
【請求項8】
基板を用意する上記工程が、バルクシリコン基板を用意する工程を含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ターゲットを用意する上記工程が、純シリコンターゲットと、ドーピングされたシリコンターゲットとからなるターゲットのグループから選択されたターゲットを用意する工程を含む請求項7に記載の方法。
【請求項10】
上記スパッタリングチャンバのパラメータを設定する上記工程が、上記チャンバの温度をほぼ室温から約250℃までの温度に設定する工程と、上記チャンバ内の圧力を約933.1〜1066.4ミリパスカルに維持する工程と、を含む請求項7に記載の方法。
【請求項11】
アニーリングする上記工程が、上記基板を約850℃〜1,200℃においてアニーリングする工程を含む請求項7に記載の方法。
【請求項12】
ナノメートルサイズのシリコン粒子を含んでいるシリコン過剰酸化物層を形成する方法であって、
あらかじめ希土類元素がドーピングされているシリコンをスパッタリングすることによって、希土類元素を含んでいる層を基板に堆積させる堆積工程と、
上記層が堆積されている上記基板をアニーリングすることによって、上記希土類元素を含んでいるシリコン過剰酸化物層を形成するアニーリング工程とを含んでいる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−214004(P2006−214004A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8845(P2006−8845)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】