説明

エレクトロルミネセンスポリマーおよびその使用

本発明は、式(I)の新規構造単位を含むポリマーに関する。本発明による材料は、ポリマー有機発光ダイオードにおける使用時に、改善された効率とより長い寿命を示す。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
ポリマー(有機)発光ダイオード(PLED)に基づく、ディスプレイおよび照明要素の商品化についての幅広い研究が、約13年間行われている。この開発は、WO 90/13148 に開示される基本となる開発により始まった。最初の、単純なものであるが製品(フィリップス(PHILIPS)N.V.社製のかみそりにおける小さなディスプレイ)は、短期間市場に出ていた。しかしながら、これらのディスプレイを、現在市場を支配している液晶ディスプレイ(LCD)の真の競合物にするためには、用いられる材料における大幅な改良がなお必要である。
【0002】
全ての3つの発光色を生成するために、ある種のコモノマーを、対応するポリマーに共重合することが必要である(例えば、WO 00/46321、 WO 03/020790 および WO 02/077060 を参照されたい)。例えば、青色発光基本ポリマー(骨格)から出発して、次いで2つの他の原色である赤色と緑色を生じることが一般に可能である。
【0003】
種々のクラスの材料が、フルカラーディスプレイ要素のためのポリマーとして、既に提案され、あるいは開発されている。中でも、ポリフルオレン誘導体が、検討され始めている。さらに、ポリスピロビフルオレン、ポリジヒドロフェナントレン、およびポリインデノフルオレン誘導体も、実現性がある。2つの最初に述べた構造要素の組み合わせを含むポリマーが、既に提案されている。一般に、構造要素としてポリ−パラ−フェニレン(PPP)を含むポリマーが、このような用途に見込まれる。
【0004】
従来技術に従うポリマーは、場合によっては、PLEDにおける使用において、良好な性質を既に示している。既に達成されている進展にも関わらず、しかしながら、これらのポリマーは、高品質のアプリケーションのためにこれらに課された要件を未だに満たさない。特に、緑色、およびとりわけ青色発光ポリマーの寿命は、多くのアプリケーションについてなお不十分であり、赤色発光ポリマーの効率も同様である。さらに、従来技術に従う青色を発光する多くのポリマーにおける発光色は、未だに、十分に深い青色ではない。
【0005】
驚くべきことに、新規のクラスのポリマーが、上記した従来技術を超える非常に良好な性質を有するということをここに見出した。従って、本発明は、これらのポリマー、およびPLEDにおけるその使用に関する。新規の構造単位は、ポリマー骨格として特に適しており、また、置換パターンによって、正孔伝導体、電子伝導体、またはエミッタとしても適している。
【0006】
エレクトロルミネセンスポリマーにおけるフェナントレンの使用は、既に、例えば、WO 02/077060、WO 03/020790 および WO 05/014689 において、概括的な言葉で時折述べられている。しかしながら、非常に多数の他のモノマーのように、これらの構造要素が、実際のポリマー骨格に加えて、可能性のある他の要素として存在してもよいということを、その中に概括的な言葉で挙げているのみである。これらの単位の詳細な利点は記載されていない。さらに、これらは、非芳香族置換基により置換されていてもよく、あるいは置換されなくてもよいということを、非常に概括的な言葉で記載するのみである。しかしながら、無置換のフェナントレン単位の使用は、不溶性のポリマーをもたらし、従って、これらの単位を、非常に少ない割合でしか用いることができない。しかしながら、どの置換基が特に適しており、およびフェナントレン単位のどの部位にこれらの置換基が好ましくは結合すべきかということは、これらの記載からは明らかではない。新規の構造単位が、ポリマー中により高い割合で用いられるのに特に適するということは、これらからは殆ど明らかではない。従来技術においては、これらは、比較的少ない割合のコモノマーとして記載されるのみであるためである。従って、当業者にも、どのようにこれらの単位をエレクトロルミネセンスポリマー中で有利に用いることができるかということは明らかでない。従って、無置換のフェナントレン単位、または所望されるとおりに置換されるフェナントレン単位の一般的な言及は、偶然の開示とみなされるべきである。
【0007】
9位または9,10位におけるフェナントレン単位の置換、およびポリマー中での2,7位における結合は、驚くべきことに、フェナントレン単位の他の位置における置換と比較して、著しく適していることが判明した。この好ましさは、これらの位置において置換される単位の特に優れた合成の容易さにより説明され得、また、より優れた光学的性質および電子的性質によっても説明され得る。
【0008】
本発明は、少なくとも5モル%、好ましくは少なくとも10モル%、特に好ましくは少なくとも30モル%、非常に特に好ましくは少なくとも50モル%の式(1)の単位を含むポリマーに関する
【化3】

【0009】
(式中、用いられる記号および添え字は、以下の意味を有する。すなわち、
Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、1〜40個のC原子を有する直鎖の、分岐のまたは環状のアルキル鎖(これは、Rにより置換されていてもよい)(ここで、1個以上の非隣接のC原子は、N−R、O、S、O−CO−O、CO−O、−CR=CR−、または−C≡C−により置き換えられてもよく(但し、ヘテロ原子は、直接的にフェナントレン単位に結合しない)、並びに1個以上のH原子は、F、Cl、Br、IまたはCNにより置き換えられてもよい)、または2〜40個のC原子を有する芳香族環系若しくは複素環式芳香族環系(これらは、1個以上のR基により置換されていてもよい)、または複数のこれらの系の組み合わせであり、2個のR基は、互いに、さらなる単環または多環の脂肪族環系を形成していてもよく、但し、2個のR基のうちの少なくとも1つは、Hではなく、
Xは、出現毎に同一であるか異なり、−CR=CR−、−C≡C−、またはN−Arであり、
Yは、出現毎に同一であるか異なり、2〜40個のC原子を有する二価の芳香族環系または複素環式芳香族環系(これらは、1個以上のR基により置換されていてもよく、あるいは置換されない)であり、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、1〜22個のC原子を有する直鎖の、分岐の若しくは環状のアルキル鎖またはアルコキシ鎖(ここで、1個以上の非隣接のC原子は、N−R、O、S、O−CO−O、CO−O、−CR=CR−、−C≡C−により置き換えられてもよく、並びに1個以上のH原子は、F、Cl、Br、IまたはCNにより置き換えられてもよい)、または5〜40個のC原子を有するアリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、若しくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1個以上の非芳香族のR基により置換されていてもよく;2個以上のR基は、互いに、および/またはRと環系を形成していてもよい)、またはF、Cl、Br、I、CN、N(R、Si(R、またはB(Rであり、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、または1〜20個のC原子を有する脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、
Arは、出現毎に同一であるか異なり、2〜40個のC原子を有する一価の芳香族環系または複素環式芳香族環系(これらは、Rにより置換されていてもよく、または置換されない)であり、
nは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、
mは、出現毎に同一であるか異なり、0、1または2であり、
式(1)の破線結合は、全ての他の式におけるように、ポリマーにおける結合を示し、メチル基を示すことを意図しない)。
【0010】
記載から明らかであるが、式(1)の構造単位は、非対称的に置換されていてもよく、すなわち、異なる置換基RまたはRが、単位上に存在していてもよく、または存在する場合には、置換基XおよびYは、異なるか、あるいは片側にのみ存在するということを明示的に記載しておく。
【0011】
本発明の目的のために、芳香族環系または複素環式芳香族環系とは、必ずしも芳香族基または複素環式芳香族基のみを含むものでなく、代わりに、複数の芳香族基または複素環式芳香族基が、例えばsp混成C、O、N等のような短い非芳香族単位(H以外の<10%の原子、好ましくはH以外の<5%の原子)により中断されていてもよい系を意味するものとする。つまり、例えば、9,9’−スピロビフルオレン、9,9−ジアリールフルオレン、トリアリールアミン等のような系も、芳香族環系として理解されるものとする。ここで芳香族環系は、少なくとも6個のC原子を含有し、および複素環式芳香族環系は、少なくとも2個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子(好ましくはN、Oおよび/またはSから選択される)を含有する(但し、C原子とヘテロ原子の合計は、少なくとも5である)。
【0012】
本発明の目的のために、C−〜C40−アルキル基(ここで、個々のH原子またはCH基は、上記した基により置換されていてもよい)は、特に好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、2−メチルブチル基、n−ペンチル基、s−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、n−オクチル基、シクロオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、シクロペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ヘプテニル基、シクロヘプテニル基、オクテニル基、シクロオクテニル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、またはオクチニル基を意味すると解釈される。C−〜C40−アルコキシ基は、特に好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、または2−メチルブトキシ基を意味するものと解釈される。C−〜C24−アリール基またはヘテロアリール基(用途に応じて一価のまたは二価であり得る)(これは、いずれの場合も、上記したR基により置換されていてもよく、およびいずれもの所望の位置によって芳香族基または複素環式芳香族基に結合されていてもよい)は、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾピレン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ−5,6−キノリン、ベンゾ−6,7−キノリン、ベンゾ−7,8−キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール(naphthimidazole)、フェナントロイミダゾール(phenanthrimidazole)、ピリジイミダゾール(pyridimidazole)、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール(anthroxazole)、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2−チアゾール、1,3−チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、ピラジン、フェナジン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジン、およびベンゾチアジアゾールから誘導される基を意味するものと解釈される。芳香族環系は、特に、ビフェニレン、テルフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、またはシス−若しくはトランス−インデノフルオレンを意味するものと解釈される。
【0013】
本発明の1の側面は、共役ポリマーに関する。本発明のさらなる側面は、非共役ポリマーに関する。本発明のなおさらなる側面は、部分的に共役するポリマーに関する。共役ポリマーまたは部分的に共役するポリマーが好ましい。
【0014】
本発明の目的のために、共役ポリマーは、主鎖に、主にsp混成炭素原子(これは、対応するヘテロ原子により置き換えられてもよい)を含むポリマーである。最も単純な場合には、これは、主鎖中での二重結合と単結合の交互の存在を意味する。共役の中断をもたらす自然発生的な欠陥が、「共役ポリマー」という語を損なわないということを主として意味する。さらに、共役という語を、同様に、例えばアリールアミン単位および/またはある種のヘテロ環(すなわち、N、OまたはS原子を介して共役)、および/または有機金属錯体(すなわち、金属原子を介して共役)が主鎖中に存在する場合も、本明細書中においては用いる。一方、例えば、単純なアルキル架橋、(チオ)エーテル、エステル、アミドまたはイミド結合のような単位は、明らかに、非共役部位として定義され得る。部分的に共役するポリマーは、主鎖中の比較的長い共役部分が、非共役部分により中断されている、または主鎖において非共役であるポリマーの側鎖中に比較的長い共役部分を含むポリマーを意味するものと解釈されたい。
【0015】
式(1)の単位に加えて、本発明によるポリマーは、さらなる構造要素を含んでいてもよい。これらは、とりわけ、WO 02/077060 および WO 05/014689 に開示され、広範囲に渡って挙げられているものである。さらなる構造単位は、例えば、以下に記載されるクラスに由来する。
【0016】
群1:ポリマーの正孔注入性および/または正孔輸送性を高める単位、
群2:ポリマーの電子注入性および/または電子輸送性を高める単位、
群3:群1および群2からの個々の単位の組み合わせを有する単位、
群4:電場蛍光(electrofluorescence)の代わりに電場リン光(electrophosphorescence)が得られ得るまでに発光特性を変化させる単位、
群5:一重項状態から三重項状態への遷移を改善する単位、
群6:形態または生じるポリマーの発光色に影響を与える単位、
群7:骨格として典型的に用いられる単位。
【0017】
本発明による好ましいポリマーは、少なくとも1つの構造要素が、電荷輸送性を有する、すなわち、群1および/または2からの単位を含むものである。
【0018】
正孔輸送性を有する群1からの構造要素は、例えば、トリアリールアミン、ベンジジン、テトラアリール−パラ−フェニレンジアミン、トリアリールホスフィン、フェノチアジン、フェノキサジン、ジヒドロフェナジン、チアントレン、ジベンゾ−p−ジオキシン、フェノキサチイン(phenoxathiyne)、カルバゾール、アズレン、チオフェン、ピロールおよびフラン誘導体、並びに高いHOMO(HOMO=最高被占軌道)を有する他のO−、S−、またはN−含有ヘテロ環であり、これらのアリールアミンおよびヘテロ環は、好ましくは、−5.8eV(真空準位に対して)を超える、特に好ましくは−5.5eVを超えるポリマーにおけるHOMOをもたらす。
【0019】
電子輸送性を有する群2からの構造要素は、例えば、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサジアゾール、キノリン、キノキサリン、ベンゾチアジアゾール、およびフェナジン誘導体であり、並びにトリアリールボランおよび低いLUMO(LUMO=最低空軌道)を有する他のO−、S−またはN−含有ヘテロ環である。これらの単位は、好ましくは、−2.7eV(真空準位に対して)未満、特に好ましくは−3.0eV未満のポリマーにおけるLUMOをもたらす。
【0020】
本発明によるポリマーが、正孔移動度を高め、および電子移動度を高める構造(すなわち、群1および2からの単位)が、互いに直接的に結合される群3からの単位を含むことが好ましい。これらの単位のいくつかは、エミッタとして働き、発光色を緑色、黄色または赤色にシフトする。従ってこれらの使用は、例えば、本来は青色を発光するポリマーからの他の発光色の生成に適している。
【0021】
群4に従う構造単位は、室温においてさえも高い効率で、三重項状態から光を放射することができるもの、すなわち、電場蛍光の代わりに電場リン光を示すもの(これは、しばしば、エネルギー効率における向上をもたらす)である。まず第一に、36を超える原子番号を有する重原子を含有する化合物が、この目的に適している。上記の条件を満たすd遷移金属またはf遷移金属を含有する化合物が、特に適している。8〜10族(Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt)からの元素を含有する対応する構造単位が非常に特に好ましい。本発明によるポリマーに適切な構造単位は、例えば、例えば特許明細書 WO 02/068435、WO 02/081488、EP 1239526 および WO 04/026886 に記載されている種々の錯体である。対応するモノマーが、WO 02/068435 および未公開特許出願 DE 10350606.3 に記載されている。
【0022】
群5からの構造単位は、一重項状態から三重項状態への遷移を改善し、並びに群4からの構造要素を支持して用いられる場合には、これらの構造要素のリン光性質を改善するものである。WO 04/070772 および WO 04/113468 に記載されるカルバゾール単位、および架橋されたカルバゾール二量体単位がこの目的に特に適している。未公開特許出願 DE 10349033.7 に記載されるケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシドおよび同様の化合物も、この目的に適している。
【0023】
形態またはポリマーの発光色に影響を与える群6からの構造要素は、上記したものに加えて、上記の群の分類に入らない、少なくとも1つのさらなる芳香族構造または他の共役構造を有するもの、すなわち、電荷担体移動度にほんのわずかに影響を有するもの、有機金属錯体でないもの、または一重項−三重項遷移に対する影響を有さないものである。このタイプの構造要素は、形態および生じるポリマーの発光色に影響を与え得る。従って単位によっては、これらを、エミッタとして用いることができる。6〜40個のC原子を有する芳香族構造、またはトラン、スチルベンまたはビススチリルアリーレン誘導体(これらのそれぞれは、1個以上のR基により置換されていてもよい)が好ましい。1,4−フェニレン、1,4−ナフチレン、1,4−若しくは9,10−アントリレン、1,6−若しくは2,7−若しくは4,9−ピレニレン、3,9−若しくは3,10−ペリレニレン、4,4’−ビフェニリレン、4,4’’−テルフェニリレン、4,4’−ビ−1,1’−ナフチリレン、4,4’−トラニリレン、4,4’−スチルベニレン、または4,4’’−ビススチリルアリーレン誘導体の取り込みが特に好ましい。
【0024】
群7からの構造要素は、6〜40個のC原子を有する芳香族構造を含む単位であり、これは、典型的には、ポリマー骨格として用いられる。これらは、例えば、4,5−ジヒドロピレン誘導体、4,5,9,10−テトラヒドロピレン誘導体、フルオレン誘導体、9,9’−スピロビフルオレン誘導体、9,10−ジヒドロフェナントレン誘導体、5,7−ジヒドロジベンゾオキセピン誘導体、並びにシス−およびトランス−インデノフルオレン誘導体である。しかしながら、式(1)の単位の割合は、非常に特に好ましくは、少なくとも50モル%であるため、これらの構造要素は、好ましくは、主となるポリマー骨格としてここでは用いられない。
【0025】
式(1)の構造単位に加えて、群1〜7から選択される1つ以上の単位を同時にさらに含む本発明によるポリマーが好ましい。同様に、1つの群からの1つを超える構造単位が同時に存在することも好ましい。
【0026】
式(1)の単位の割合は、好ましくは少なくとも10モル%であり、特に好ましくは少なくとも30モル%であり、非常に特に好ましくは少なくとも50モル%である。この好ましさは、式(1)の単位がポリマー骨格である場合に特に当てはまる。他の機能の場合には、他の割合が好ましく、例えば、エレクトロルミネセンスポリマー中の正孔伝導体またはエミッタの場合には、ほぼ5〜20モル%程度の割合である。他のアプリケーションについては、例えば有機トランジスタについては、好ましい割合は、この場合もやはり異なり、例えば、正孔伝導単位または電子伝導単位の場合には最大で100モル%までであり得る。
【0027】
式(1)の構造単位に加えて、上記の群からの少なくとも1つの構造単位も含む、本発明によるポリマーが好ましい。上記したものの異なるクラスからの少なくとも2つの構造単位が特に好ましい。非常に特に好ましくは、これらの構造単位のうちの1つは、正孔伝導単位の群から選択され、他の群は発光単位であり、ここで、これらの2つの機能(正孔伝導および発光)が、同じ単位により得られてもよい。
【0028】
式(1)の単位は、白色発光コポリマーの合成に特に適している。これらは、好ましくは、十分に少ない割合の緑色および赤色発光単位を含み、全体として白色発光をもたらす。白色発光コポリマーを合成することができる方法は、未公開特許出願 DE 10343606.5 に詳細に記載されている。
【0029】
本発明によるポリマーは、好ましくは、10〜10,000の、特に好ましくは50〜5000の、非常に特に好ましくは50〜2000の繰り返し単位を有する。
【0030】
ポリマーの必要な溶解性は、特に、式(1)の単位における、および任意に、存在するさらなる単位における置換基RまたはRにより確実にされる。さらなる置換基が存在する場合には、これらは、溶解性に寄与する。
【0031】
十分な溶解性を確実にするために、平均して少なくとも2個の非芳香族C原子が、繰り返し単位ごとの置換基中に存在することが好ましい。少なくとも4個の、特に好ましくは少なくとも6個のC原子がここでは好ましい。これらのC原子のいくつかは、OまたはSにより置き換えられてもよい。しかしながら、このことは、ある割合の繰り返し単位は、さらなる非芳香族置換基を全く有さないということを意味することが十分に可能である。
【0032】
ポリマーの必要な溶解性は、特に、式(1)の単位における、および任意に、存在するさらなる単位における置換基RまたはRにより確実にされる。さらなる置換基が存在する場合には、これらは、溶解性に寄与する。
【0033】
十分な溶解性を確実にするために、平均して少なくとも2個の非芳香族C原子が、繰り返し単位ごとの置換基中に存在することが好ましい。少なくとも4個の、特に好ましくは少なくとも6個のC原子がここでは好ましい。これらのC原子のいくつかは、OまたはSにより置き換えられてもよい。しかしながら、このことは、ある割合の繰り返し単位は、さらなる非芳香族置換基を全く有さないということを意味することが十分に可能である。
【0034】
フィルムの形態を損なうことを回避するために、直鎖において12個を超えるC原子を有する長鎖置換基を有さないことが好ましく、好ましくはいずれも8個を超えるC原子を有さず、特に好ましくはいずれも6個を超えるC原子を有さない。
【0035】
非芳香族C原子は、例えば式(1)におけるRおよびRの記載におけるように、対応する直鎖の、分岐の若しくは環状のアルキル鎖またはアルコキシ鎖に存在する。
【0036】
出現毎に同一か異なる記号Rが、2〜15個のC原子を有する直鎖の、分岐の若しくは環状のアルキル鎖(ここで、1以上の非隣接のC原子は、N−R、O、S、O−CO−O、CO−O、−CH=CH−または−C≡C−により置き換えられてもよく(但し、ヘテロ原子は、フェナントレン単位に直接的に結合しない)、並びに1個以上のH原子は、FまたはCNにより置き換えられてもよい)、または4〜20個のC原子を有する芳香族基若しくは複素環式芳香族基(これらは、1個以上の非芳香族基Rにより置換されていてもよい)、または複数のこれらの系の組み合わせを表すところの本発明によるポリマーが好ましい。ここで2個のR基は、互いに、さらなる単環または多環の脂肪族環系を形成していてもよい。出現毎に同一か異なるRは、特に好ましくは、4〜8個のC原子を有する直鎖の、分岐の若しくは環状のアルキル鎖、特に好ましくは分岐のアルキル鎖(ここで、1個以上の非隣接のC原子は、N−R、O、S、−CR=CR−または−C≡C−により置き換えられてもよく(但し、これらは、フェナントレン単位に直接的に隣接していない)、並びに1個以上のH原子は、Fにより置き換えられてもよい)、または5〜10個のC原子を有するアリール基またはヘテロアリール基(これらは、Rにより置換されていてもよく、または置換されない)を表し、2個のR基は、互いに、さらなる単環または多環の脂肪族環系を形成していてもよい。
【0037】
出現毎に同一か異なる記号Xは、−CH=CH−、−C≡C−またはN−Arを表す。
【0038】
さらに、出現毎に同一か異なる記号Yが、4〜25個のC原子を有する二価の芳香族環系または複素環式芳香族環系(これらは、1以上のR基により置換されていてもよい)を表すところの本発明によるポリマーが好ましい。出現毎に同一か異なるYは、特に好ましくは、6〜16個のC原子を有する二価の芳香族環系若しくは複素環式芳香族環系、またはスピロビフルオレン(これらのそれぞれは、1個以上の非芳香族基Rにより置換されていてもよい)を表す。
【0039】
さらに、出現毎に同一か異なる記号Arは、4〜25個のC原子を有する一価の芳香族環系または複素環式芳香族環系(これは、Rにより置換されていてもよく、または置換されない)を表すところの本発明によるポリマーが好ましい。出現毎に同一か異なるArは、特に好ましくは、4〜16個のC原子を有する一価のアリール基またはヘテロアリール基(これらは、非芳香族基Rにより置換されていてもよい)を表す。
【0040】
さらに、出現毎に同一か異なる添え字mが、0または1であるところの本発明によるポリマーが好ましい。
【0041】
置換パターンによって、式(1)の単位は、ポリマーにおける種々の機能に適する。つまり、これらを、好ましくは(電子伝導)ポリマー骨格として、正孔伝導体として、またはエミッタとして用いることができる。どの化合物が、どの機能に特に適しているかは、とりわけ、置換基XおよびYにより表現される。置換基Rは、式(1)の単位の電子性質に対する影響を有する。
【0042】
つまり、以下が、好ましくは、ポリマー骨格としての使用に適用される。すなわち、
nは、出現毎に0であり、つまり、純粋に芳香族構造単位である。
【0043】
以下が、好ましくは、正孔輸送単位としての式(1)の単位の使用に適用される。すなわち、
nは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、ここで、少なくとも1つのn=1であり、
mは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、または2であり、ここで、対応するn=1の場合にはmは0でなく、
Xは、出現毎にN−Arであり
つまり、これらは、フェナントレンのトリアリールアミン誘導体である。
【0044】
さらに、添え字n=0である場合、R基(またはRに結合しているR)のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのジアリールアミン基を含む場合に、正孔輸送単位として式(1)の単位を使用することができる。
【0045】
以下が、好ましくは、エミッタとしての式(1)の単位の使用に適用される。すなわち、
nは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、ここで、少なくとも1つのn=1であり、
mは、出現毎に同一であるか異なり、0、1または2であり、ここで、対応するn=1の場合には、mは0ではなく、
Xは、出現毎に同一であるか異なり、−CR=CR−、−C≡C−、またはN−Arであり、ここで、少なくとも1個のXは、−CR=CR−または−C≡C−であり、
すなわち、これらは、最も広い意味においてジアリールビニレンまたはジアリールアセチレン誘導体であり、これらは、さらに、トリアリールアミン単位を含んでいてもよい。
【0046】
さらに、添え字n=0である場合、R基(またはRに結合しているR基)のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのジアリールビニレン基またはジアリールアセチレン基を含む場合には、発光単位として式(1)の単位を使用することができる。
【0047】
さらに、フェナントレン単位の9,10位において対称的に置換されている式(1)の単位が好ましい。この好ましさは、モノマーのより優れた合成のし易さにより説明できる。従って、式(1)の単位における全てのRが同一であり、特に好ましくは全く同様に置換されていることが好ましい。この好ましさは、置換基XおよびYを、片側のみに存在すること、あるいは異なることから除外しない。
【0048】
式(1)の好ましい単位の例は、以下の例1〜36に従う構造であり、ここで、いずれの場合にも、ポリマーにおける結合は、破線により示される通り、フェナントレン単位の2,7位により行われる。R基における可能性のある置換基は、より明瞭にするために一般的には示さない。Rについて記載した通り、ここでのアルキルは、脂肪族アルキル基を表し、アリールは、芳香族系または複素環式芳香族系を表す。例1〜21は、骨格単位の例であり、例22〜33は、発光単位の例であり、および例34〜36は、正孔伝導単位の例である。
【化4】

【化5】

【化6】

【0049】
本発明によるポリマーは、ホモポリマーであるか、コポリマーである。
【0050】
1つ以上の式(1)の構造に加えて、本発明によるコポリマーは、場合によって、1つ以上のさらなる構造、好ましくは上記した群1〜7からの構造を有していてもよい。
【0051】
本発明によるコポリマーは、ランダム構造、交互構造、ブロック様構造を有していてよく、または交互に複数のこれらの構造を有していてもよい。ブロック様構造を有するコポリマーを得ることができる方法は、例えば、WO 05/014688 に詳細に記載されている。
【0052】
複数の異なる構造要素の使用は、溶解性、固相形態、色、電荷注入性および電荷輸送性、温度安定性、電気光学特性等のような性質を調節することを可能にする。
【0053】
本発明によるポリマーは、1つ以上のタイプのモノマーを重合することにより調製され、このうちの少なくとも1つのモノマーは、ポリマー中に式(1)の単位をもたらす。原則として、多くの対応する重合反応が存在する。しかしながら、C−C結合またはC−N結合をもたらすいくつかのタイプが、ここでは特に功を奏することが判明した。すなわち、
(A)スズキ重合、
(B)ヤマモト重合、
(C)シュティレ(STILLE)重合、
(D)ハルトビヒ−ブーフバルト(HARTWIG-BUCHWALD)重合
である。
【0054】
これらの方法により重合を行うことができる方法、並びにポリマーを反応媒体から分離し、精製する方法は、WO 04/037887 に詳細に記載されている。
【0055】
本発明によるポリマー中に式(1)の構造単位をもたらすモノマーは、9および/または10位において適切に置換されており、且つ2,7位に(存在する場合には、Yの適切な位置に)適切な官能性(これは、このモノマー単位が、ポリマー中に取り込まれることを可能にする)を有するフェナントレン誘導体である。これらのモノマーは新規であり、従って同様に、本発明の主題である。
【0056】
本発明は、式(2)
【化7】

【0057】
の二官能モノマー化合物に関し、同一か異なる2つの官能基Aが、C−CまたはC−N結合反応の条件下で共重合し、他の記号および添え字は、式(1)と同じ意味を有することを特徴とする。
【0058】
Aは、好ましくは、Cl、Br、I、O−トシレート、O−トリフレート、O−SO、B(OR、およびSn(Rから選択され、特に好ましくは、Br、I、およびB(ORから選択され、ここで、Rは、上記したものと同じ意味を有し、また、2以上のR基は、互いに環系を形成していてもよい。
【0059】
C−C結合反応は、好ましくは、スズキカップリング、ヤマモトカップリング、およびシュティレ(STILLE)カップリングの群から選択され、C−N結合反応は、好ましくは、ハルトビヒ−ブーフバルト(HARTWIG-BUCHWALD)カップリングである。
【0060】
式(1)の構造単位について上記したものと同じ好ましさが、式(2)の二官能モノマー化合物にも適用される。
【0061】
純粋な物質としてではなく、いかなる所望の他のポリマー物質、オリゴマー物質、樹脂状物質、または低分子量物質と共に混合物(配合物)として、本発明によるポリマーを使用することが好ましい。これらは、例えば電子性質を改善することが、一重項状態から三重項状態への遷移に影響を与えることが、またはこれら自身が一重項状態または三重項状態から光を放射することができる。しかしながら、電子的に不活性な物質も、例えば形成されるポリマーフィルムの形態に影響を与えるため、またはポリマー溶液の粘度に影響を与えるために適している。従って、本発明は、また、これらのタイプの配合物に関する。
【0062】
本発明はさらに、1種以上の溶媒中の本発明による1種以上のポリマーまたは配合物の溶液および調合物に関する。ポリマー溶液を調製することができる方法は、例えば、WO 02/072714、WO 03/019694、およびこれらの中に挙げられる文献中に記載されている。これらの溶液を、例えば、表面コーティング法(例えばスピンコーティング)、または印刷法(例えばインクジェット印刷)により薄いポリマー層を製造するために用いることができる。
【0063】
本発明によるポリマーを、PLEDにおいて用いることができる。これらは、陰極、陽極、発光層、並びに例えば、好ましくは正孔注入層、および任意に、正孔注入層と発光層との間の中間層のような任意にさらなる層を含む。PLEDを製造することができる方法は、WO 04/037887 に一般方法として詳細に記載されており、これは、個々のケースに対応して合わせて変化させる必要がある。
【0064】
上記したように、本発明によるポリマーは、このような方法で製造されるPLEDまたはディスプレイにおけるエレクトロルミネセンス材料として非常に特に適している。
【0065】
本発明の目的のために、エレクトロルミネセンス材料とは、PLEDにおける活性層として用いることができる材料であるとみなす。活性層とは、層が、電場の適用時に光を放射することができること(発光層)、並びに/または正電荷および/若しくは負電荷の注入および/若しくは輸送を改善すること(電荷注入層または電荷輸送層)を意味する。正孔注入層と発光層との間の中間層であってもよい。
【0066】
従って、本発明は、また、特にエレクトロルミネセンス材料としての、PLEDにおける本発明によるポリマーの使用に関する。
【0067】
従って、本発明は同様に、1つ以上の活性層(ここで、これらの活性層のうちの少なくとも1つは、本発明による1以上のポリマーを含む)を有するPLEDに関する。
【0068】
活性層は、例えば、発光層、および/または輸送層、および/または電荷注入層、および/または中間層であり得る。
【0069】
本発明によるポリマーは、直近の従来技術としてここに挙げた WO 03/020790 に記載されているポリスピロビフルオレン、および WO 02/077060 に記載されているポリフルオレンに対して、以下の驚くべき利点を有する。
【0070】
(1)本発明によるポリマー(その他の点では同一のまたは同様の組成を伴う)は、使用時に、より高い発光効率を有するということを見出した。このことは、特に、青色発光を示すコポリマーに当てはまる。これは、同じ輝度を、低いエネルギー消費と同時に達成することができるために非常に重要であり、このことは、とりわけ、充電式バッテリーおよび標準的なバッテリーに依存する携帯アプリケーション(携帯電話のディスプレイ、ポケベル、PDA等)において非常に重要である。逆に、より高い輝度が、同じエネルギー消費で得られ、このことは、例えば、照明アプリケーションについて興味深い。
【0071】
(2)かさねて直接の比較において、本発明によるポリマーは、特に緑色および青色発光PLEDの場合に、より長い駆動寿命を有するということがさらに驚くべきことに見出された。
【0072】
(3)色の到達性および達成は、従来技術と比較して、本発明によるポリマーの場合には同じであるか、より優れる。特に青色発光ポリマーの場合には、改善された色座標と、より飽和した青色発光が観察される。
【0073】
(4)電子伝導コモノマーの使用を伴わなくても、本発明によるポリマーは、良好な電子伝導体である。従来技術に従う多くの電子伝導体は、高品質のアプリケーションについて十分に安定ではなかったために、ポリマーにおける電子伝導性は、これまでは達成するのが困難であった。
【0074】
(5)式(1)の新規なポリマー骨格は、それ自体が、紺青色の発光をもたらすため、ポリマーにおいて青色発光をさらにもたらす発光単位を導入することが容易に可能である。このことは、ポリマーにおいて電荷輸送性と発光性を分離することを容易に可能にする。特定の理論に拘束されることを望まないが、本発明者等は、このことは、安定なポリマーを得るために必要であると考えている。しかしながら、ポリマー骨格は、同時にそれ自体、常に発光するために、このことは、これまでは困難であった。
【0075】
本明細書、および以下の例は、PLEDおよび対応するディスプレイに関する本発明によるポリマーまたは配合物の使用に向けられる。この記載の制限に関わらず、当業者は、さらなる発明を必要とすることなく、本発明によるポリマーを他の電子デバイス、例えば、いくつかの例を挙げると、有機集積回路(O−IC)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機太陽電池(O−SC)、有機電界クエンチデバイス(organic field-quench device)(O−FQD)、または有機レーザダイオード(O−laser)において用いることができる。
【0076】
記載した注釈を、対応するオリゴマーまたはデンドリマーにも同様に適用することができる。本発明は、同様にそれらに関する。
【0077】
本発明を、以下の例により極めて詳細に説明するが、これらに制限されることを望まない。
【0078】

例1:2,7−ジブロモ−9,10−ジメチルフェナントレン(本発明によるモノマーEM1)の合成
a)2,7−ジブロモ−9,10−ジメチル−9,10−ジヒドロフェナントレンの合成
【化8】

【0079】
34.3g(94mmol)の2,7−ジブロモフェナントレン−9,10−キノンを、600mlの乾燥THF中に、−10℃、アルゴン下で懸濁させ、141ml(282mmol)のメチルマグネシウムクロライド(THF中2モル溶液)を、内部温度が0℃を超えない速度で滴下して加えた。その後、この混合物を終夜、室温で攪拌した。50mlの氷酢酸を、氷冷しながらバッチに加え、この混合物を酢酸エチルで希釈した。飽和塩化ナトリウム溶液で2回洗浄した後、混合物を硫酸マグネシウムにて乾燥させ、溶媒を除去すると、43.4gの生成物を与え、これをさらに精製せずに続く工程に用いた。
【0080】
H−NMR(CDCl):[ppm]7.84(d,HH=2.0Hz,2H),7.52(d,HH=8.0Hz,2H),7.46(dd,HH=2.0Hz,HH=8.4Hz,2H),2.10(s,DOで交換可能,2H,OH),1.30(s,6H)。
【0081】
(b)2,7−ジブロモ−9−ケト−10,10−ジメチル−9,10−ジヒドロフェナントレンの合成
【化9】

【0082】
132.8g(294mmol)の2,7−ジブロモ−9,10−ジヒドロキシ−9,10−ジメチル−9,10−ジヒドロフェナントレンを、アルゴン下で、420mlの酢酸と210mlのトリフルオロ酢酸中に懸濁させ、この混合物を還流下で3時間攪拌した。混合物を終夜、室温で攪拌した後に、吸引しながらろ過し、残渣を水とメタノールを用いて洗浄し、トルエン中に溶解させ、この溶液をシリカゲルを通してろ過し、溶媒を除去すると、89.9g(理論の80.4%)の生成物を与え、これを、さらに精製せずに用いた。
【0083】
H−NMR(CDCl):[ppm]8.17(d,HH=2.4Hz,1H),7.77(m,3H),7.63(d,HH=2.0Hz,1H),7.48(dd,HH=8.4Hz,HH=2.0Hz,1H),1.53(s,6H)。
【0084】
(c)2,7−ジブロモ−9−ヒドロキシ−10,10−ジメチル−9,10−ジヒドロフェナントレンの合成
【化10】

【0085】
2.16g(57mmol)の水素化アルミニウムリチウムを、(加熱することにより乾燥させた)フラスコ中に導入した。100mlのTHFを氷冷しながら加えた。続いて、150mlのTHF中の43.4g(114mmol)の2,7−ジブロモ−9−ケト−10,10−ジメチル−9,10−ジヒドロフェナントレンを滴下して加え、その後、混合物を還流下で加熱した。この混合物を終夜、室温にまで冷却させ、2mlのHOを注意深く加えた。混合物を15分間攪拌した後、2mlの15%NaOHを加え、混合物を15分間攪拌し、6mlのHOを滴下して加え、混合物を15分書く攪拌した。生じる固体を吸引しながらろ過し、THFを用いて洗浄し、溶媒をろ液から除去すると、43.4gの生成物を与え、これを、さらに精製せずに用いた。
【0086】
H−NMR(DMSO−d):[ppm]7.77(m,2H),7.64(d,HH=1.7Hz,1H),7.56(d,HH=2.0Hz,1H),7.50(m,2H),5.62(d,HH=5.0Hz,1H),4.35(d,DOで交換可能,HH=5.0Hz,1H),1.23(s,3H),1.03(s,3H)。
【0087】
d)2,7−ジブロモ−9,10−ジメチルフェナントレン(EM1)の合成
【化11】

【0088】
43.4g(113mmol)の2,7−ジブロモ−9−ヒドロキシ−10,10−ジメチル−9,10−ジヒドロフェナントレンを、610mlの酢酸中に懸濁させた。780mgのヨウ素と酢酸中の3.5mlのHBrを加え、この懸濁液を加熱し還流させる。混合物を終夜、攪拌しながら冷却した。残渣を吸引しながらろ過し、水とメタノールを用いて洗浄すると、35.8g(理論の87.0%)の生成物を与えた。
【0089】
H−NMR(CDCl):[ppm]8.46(d,HH=8.7Hz,2H),8.21(d,HH=1.7Hz,2H),7.68(dd,HH=8.7Hz,HH=1.7Hz,2H),2.67(s,6H)。
【0090】
例2:2,7−ジブロモ−9,10−ビス(2−エチルヘキシル)フェナントレン(本発明によるモノマーEM2)の合成
【化12】

【0091】
合成を、メチルマグネシウムクロライドの代わりに2−エチルヘキシルマグネシウムクロライドを用いて、例1と同様に行った。
【0092】
H−NMR(CDCl):[ppm]8.48(d,HH=8.7Hz,2H),8.25(d,HH=1.3Hz,2H),7.67(dd,HH=9.0Hz,HH=1.7Hz,2H),3.11(m,4H),1.68(m,2H),1.26(m,16H),0.88(m,12H)。
【0093】
例3:2,7−ジブロモ−9,10−ビス(4−tert−ブチルフェニル)フェナントレン(本発明によるモノマーEM3)の合成
【化13】

【0094】
合成を、メチルマグネシウムクロライドの代わりに4−tert−ブチルフェニルマグネシウムクロライドを用いて、例1と同様に行った。生成物をトルエンから、およびクロロベンゼンからの再結晶を繰り返すことにより精製した。
【0095】
H−NMR(CDCl):[ppm]8.57(d,HH=9.0Hz,2H),7.84(d,HH=2.0Hz,2H),7.73(dd,HH=9.0Hz,HH=2.0Hz,2H),7.18(d,HH=8.4Hz,4H),7.18(d,HH=8.7Hz,4H),1.27(s,18H)。
【0096】
例4:2,7−ジブロモ−9,10−ビス(n−オクチル)フェナントレン(本発明によるモノマーEM4)の合成
【化14】

【0097】
合成を、メチルマグネシウムクロライドの代わりに1−オクチルブロミドから作ったグリニャール試薬を用いて、例1と同様に行った。生成物を、MeOH/アセトンからの再結晶を繰り返すことにより精製した。
【0098】
H−NMR(CDCl):[ppm]8.48(d,HH=9.0Hz,2H),8.18(d,HH=2.0Hz,2H),7.67(dd,HH=9.0Hz,HH=2.0Hz,2H),3.01(m,4H),1.66(m,4H),1.54(m,4H),1.43(m,4H),1.32(m,12H),0.91(t,HH=7.0Hz,6H)。
【0099】
例5:2,7−ビス(エチレングリコールホウ酸エステル)−9,10−ビス(n−オクチル)フェナントレン(本発明によるモノマーEM5)の合成
【化15】

【0100】
200mlの乾燥THF中、34.4g(61.4mmol)のEM4および3.14g(129.1mmol)から調製されるグリニャール試薬の溶液を、70mlの乾燥THF中の20.6ml(184.2mmol)のホウ酸トリメチルの溶液に、−75℃で滴下して加え、この混合物を−75℃で3時間攪拌した後、室温の状態にさせた。この懸濁液を、酢酸エチル、10mlの氷酢酸および水を用いて希釈し、有機層を分離し、水を用いて2回洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥させ、および溶媒を除去した。残った固体をトルエン中に懸濁させ、6.8ml(368.4mmol)の無水エチレングリコールを加え、懸濁液を水分離器上で2時間、激しく沸騰させて加熱した。溶媒を再び除去し、残渣を、酢酸エチルから、99.9%の純度にまで再結晶した。
【0101】
H−NMR(CDCl):[ppm]8.74(d,HH=9.0Hz,2H),8.62(d,HH=2.0Hz,2H),7.97(dd,HH=9.0Hz,HH=2.0Hz,2H),4.46(s,8H),3.20(m,4H),1.72(m,4H),1.59(m,4H),1.44(m,4H),1.32(m,12H),0.91(t,HH=7.0Hz,6H)。
【0102】
例6:N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−9,10−ジメチルフェナントレン−2,7−ジアミン(本発明によるモノマーEM6)の合成
【化16】

【0103】
a)N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−9,10−ジメチルフェナントレン−2,7−ジアミン
250mlのトルエン中の30.75g(84.5mmol)の2,7−ジブロモ−9,10−ジメチルフェナントレンおよび36.0g(162mmol)の4−tert−ブチルフェニルフェニルアミン(J. Org. Chem. 2003, 68, 452に記載される通りに合成)の脱気した溶液を、Nで1時間飽和させた。最初に、313mg(1.55mmol)のP(Bu)、続いて173mg(0.76mmol)のPd(OAc)を、この溶液に加え、固体状態の9.7g(101mmol)のNaOBuを続いて加えた。反応混合物を還流下で5時間加熱した。室温にまで冷却した後、1.4gのNaCNと70mlの水を注意深く加えた。有機層を、4×100mlのHOを用いて洗浄し、MgSOにて乾燥し、および溶媒を減圧下で除去した。シリカゲルでのクロマトグラフィー精製により、黄色オイルを与えた。収量は、HPLCによると99.2%の純度で、59g(理論の99%)であった。H−NMR(DMSO−d,500MHz):1.33(s,18H),2.34(s,6H),6.97−7.89(m,10H),7.95(d,J=8.36Hz,2H),7.25(d,J=8.7Hz,2H),7.30(t,J=7.7Hz,4H),7.36(d,J=8.7Hz,4H),7.59(d,J=2.3Hz,2H)。
【0104】
b)N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−9,10−ジメチルフェナントレン−2,7−ジアミン(EM6)
30g(54.9mmol)のN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−9,10−ジメチルフェナントレン−2,7−ジアミンを、最初に、600mlのTHF中に導入した。続いて、400mlのTHF中に溶解させた19.03g(106.0mmol)のNBSの溶液を、光を排除しながら、0℃で滴下して加え、この混合物を室温になるまでおいて、さらに4時間攪拌した。続いて、600mlの水をこの混合物に加え、混合物をCHClにより抽出した。有機層をMgSOにて乾燥し、および溶媒を、減圧下で除去した。生成物を、熱ヘキサンと攪拌することにより洗浄し、吸引しながらろ過すると、35.1g(理論の94.3%)の無色の固体が得られ、これは、酢酸エチルから繰り返し再結晶した後に、99.9%のHPLC純度を有した。
【0105】
H−NMR(DMSO−d,500MHz):1.30(s,18H),2.51(s,6H),6.85(d,J=8.7Hz,2H),6.96(d,J=8.7Hz,3H),7.09(d,J=8.7hz,3H),7.25(d,J=8.76Hz,2H),7.39(d,J=8.7Hz,4H),7.45(d,J=8.7Hz,4H),7.68(m,2H),8.61(d,J=8.8Hz,2H)。
【0106】
例7:N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−9,10−ビス(n−オクチル)フェナントレン−2,7−ジアミン(本発明によるモノマーEM7)の合成
【化17】

【0107】
a)N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−9,10−ビス(n−オクチル)フェナントレン−2,7−ジアミン
合成を、例6a)と同様に行い、ここで、用いた出発原料は、47.3g(84.5mmol)の2,7−ジブロモ−9,10−ビス(n−オクチル)フェナントレンであった。シリカゲルでのクロマトグラフィー精製により、黄色オイルを与えた。収量は、HPLCによれば99.2%の純度で、50g(理論の91%)であった。
【0108】
H−NMR(DMSO−d,500MHz):0.91(t,J=6.7Hz,6H),1.34(s,18H),1.36−1.45(m,12H),1.47(m,4H),1.58(m,4H),1.69(m,4H),3.09(t,J=8.3Hz,4H),6.96−7.88(m,10H),7.96(d,J=8.35Hz,2H),7.23(d,J=8.7Hz,2H),7.30(t,J=7.7Hz,4H),7.36(d,J=8.7Hz,4H),7.59(d,J=2.3Hz,2H)。
【0109】
b)N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−9,10−ビス(n−オクチル)フェナントレン−2,7−ジアミン(EM7)
合成を、例6b)と同様に行い、ここで、用いた出発材料は、55.3g(54.9mmol)のN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−9,10−ビス(n−オクチル)フェナントレン−2,7−ジアミンであった。76.1g(理論の90.3%)の無色固体が得られ、これは、酢酸エチルから再結晶を繰り返した後に、99.9%のHPLC純度を有した。
【0110】
H−NMR(DMSO−d,500MHz):0.92(t,J=6.7Hz,6H),1.33(s,18H),1.36−1.45(m,12H),1.48(m,4H),1.58(m,4H),1.70(m,4H),3.10(t,J=8.3Hz,4H),6.85(d,J=8.7Hz,2H),6.96(d,J=8.7Hz,3H),7.09(d,J=8.7Hz,3H),7.25(d,J=8.76Hz,2H),7.39(d,J=8.7Hz,4H),7.45(d,J=8.7Hz,4H),7.68(m,2H),8.61(d,J=8.8Hz,2H)。
【0111】
例8:2,7−ビス[2−(4−ブロモフェニル)ビニル]−9,10−ジオクチルフェナントレン(本発明によるモノマーEM8)
【化18】

【0112】
調製を、EM4から出発してEM5の調製と同様にグリニャール試薬の調製により、および続く10当量のDMFとの反応により行った。酸処理、抽出および溶媒の除去後、得られたアルデヒドを、H−NMRによる特性決定後、さらに精製せずに、ジスチルベンへと変換した。10.7g(35mmol)の(4−ブロモベンジル)ホスホン酸ジエチルを、100mlの乾燥DMF中に溶解し、6.7g(70mmol)のNaOBuを、保護ガス下、約5℃で加え、5℃で30分攪拌した後、フェナントレンビスアルデヒド(7.3g、159mmol)を最高で5℃で加え、続いて、この混合物を1時間5℃で攪拌した。処理のために、20mlの4MのHClと50mlのMeOHを滴下して加え、生じる沈殿を吸引しながらろ過し、99.8%の純度にまでトルエンから再結晶した。
【0113】
H−NMR(CDCl):[ppm]8.64(d,HH=9.0Hz,2H),8.29(d,HH=1.0Hz,2H),7.77(dd,HH=9.0Hz,HH=1.0Hz,2H),7.33(d,HH=8.4Hz,4H),7.25(d,HH=16Hz,2H),7.11(d,HH=16Hz,2H),7.03(d,HH=8.4Hz,4H),3.25(m,4H),1.75(m,4H),1.62(m,4H),1.45(m,4H),1.32(m,12H),0.91(t,HH=7.0Hz,6H)。
【0114】
例9:ポリマーP1〜P3、および比較ポリマーC1
ポリマーを、WO 03/048225 に記載されるように合成した。用いた他のモノマー(既に上記したもの以外)を、以下に示す。
【化19】

【0115】
PLEDを、(WO 04/037887 に記載される一般方法に従って)全てのポリマーを用いて構成した。ポリマーの組成、およびエレクトロルミネセンス測定の結果を、表1に示す。
【表1】

【0116】
表1:本発明によるいくつかのポリマーおよび比較ポリマーのELデータ(ここで効率は、最大効率を表し、電圧は、100cd/mの輝度に必要な電圧であり、および色を、CIE x/y座標で表す)。
【0117】
全てのポリマーは、同程度の効率で青色ルミネセンスを示した。本発明によるポリマーの電圧は、従来技術に従う比較ポリマーよりも低いものであった。加えて、本発明によるポリマーは、従来技術に従う比較ポリマーと比べてより深い青色発光を示し、従って、アプリケーションにより適している。寿命は、C1の場合と比較して、P1〜P3の場合には、約5〜10%長かった
例10:ポリマーP4および比較ポリマーC1
本発明によるポリマーP4は、50モル%のEM5、30モル%のM2、10モル%のM3、および10モル%のM4を含む。比較ポリマーC1は、本発明によるモノマーの代わりに、モノマーM1を含む。PLEDを、(WO 04/037887 に記載される一般方法に従って)双方のポリマーを用いて構成した。本発明によるポリマーP4は、4.3cd/Aの効率で、青色ルミネセンスを示し、比較ポリマーは、4.1cd/Aの効率であった。本発明によるポリマーP4は、100cd/mについて4.3Vの電圧を必要とした一方、比較ポリマーC1を用いると、同じ輝度について4.4Vの電圧を必要とした。加えて、P4(CIE x/y 0.18/0.30)は、C1(CIE x/y 0.19/0.33)と比較して、より濃い青色を示し、従って、従来技術に従う比較ポリマーと比べてアプリケーションにより適している。寿命は、P4の場合に、C1の場合と比較して約30%より長かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも5モル%の式(1)
【化1】

(式中、用いられる記号および添え字は、以下の意味を有する。すなわち、
Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、1〜40個のC原子を有する直鎖の、分岐の若しくは環状のアルキル鎖(これは、Rにより置換されていてもよい)(ここで、1個以上の非隣接のC原子は、N−R、O、S、O−CO−O、CO−O、−CR=CR−または−C≡C−により置き換えられてもよく(但し、ヘテロ原子は、フェナントレン単位に直接的に結合しない)、並びに1個以上のH原子は、F、Cl、Br、IまたはCNにより置き換えられてもよい)、または2〜40個のC原子を有する芳香族環系若しくは複素環式芳香族環系(これらは、1個以上のR基により置換されていてもよい)、または複数のこれらの系の組み合わせであり、2個のR基は、互いにさらなる単環若しくは多環の脂肪族環系を形成していてもよい(但し、2個のR基のうち少なくとも1つは、Hではない)、
Xは、出現毎に同一であるか異なり、−CR=CR−、−C≡C−、またはN−Arであり、
Yは、出現毎に同一であるか異なり、2〜40個のC原子を有する芳香族環系または複素環式芳香族環系(これらは、1個以上のR基により置換されていてもよく、または置換されない)であり、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、1〜22個のC原子を有する直鎖の、分岐の若しくは環状のアルキル鎖またはアルコキシ鎖(ここで、1個以上の非隣接のC原子は、N−R、O、S、O−CO−O、CO−O、−CR=CR−、−C≡C−により置き換えられてもよく、並びに1個以上のH原子は、F、Cl、Br、IまたはCNにより置き換えられてもよい)、または5〜40個のC原子を有するアリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、若しくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1個以上の非芳香族基Rにより置換されていてもよい)であり、2個以上のR基は、互いに、および/またはRと環系を形成していてもよく、またはF、Cl、Br、I、CN、N(R、Si(R、またはB(Rであり、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、または1〜20個のC原子を有する脂肪族炭化水素基若しくは芳香族炭化水素基であり、
Arは、出現毎に同一であるか異なり、2〜40個のC原子を有する一価の芳香族環系または複素環式芳香族環系(これらは、Rにより置換されていてもよく、または置換されない)であり、
nは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、
mは、出現毎に同一であるか異なり、0、1または2であり、
ここで、破線は、ポリマー中での結合を示し、ここではメチル基を示すことを意図しない)
の単位を含むポリマー。
【請求項2】
共役しているか、または部分的に共役しているポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記式(1)の単位に加えて、さらなる構造要素を含むことを特徴とする請求項1および/または2に記載のポリマー。
【請求項4】
正孔注入性および/または正孔輸送性を高める前記さらなる構造要素が、トリアリールアミン、ベンジジン、テトラアリール−パラ−フェニレンジアミン、トリアリールホスフィン、フェノチアジン、フェノキサジン、ジヒドロフェナジン、チアントレン、ジベンゾ−p−ジオキシン、フェノキサチイン(phenoxathiyne)、カルバゾール、アズレン、チオフェン、ピロールおよびフラン誘導体、並びに高いHOMOを有する他のO、S、若しくはN含有へテロ環の群から選択されることを特徴とする請求項3に記載のポリマー。
【請求項5】
電子注入性および/または電子輸送性を高める前記さらなる構造要素は、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサジアゾール、キノリン、キノキサリン、ベンゾチアジアゾール、およびフェナジン誘導体、並びにトリアリールボランおよび低いLUMOを有する他のO、SまたはN含有ヘテロ環の群から選択されることを特徴とする請求項1〜4の一項以上に記載のポリマー。
【請求項6】
前記さらなる構造要素が、請求項4に記載の、および請求項5に記載の個々の単位の組み合わせを有することを特徴とする請求項1〜5の一項以上に記載のポリマー。
【請求項7】
前記さらなる構造要素が、電場リン光(electrophosphorescence)を、電場蛍光(electrofluorescence)の代わりに得ることができる程度にまで発光特性を変化させることを特徴とする請求項1〜6の一項以上に記載のポリマー。
【請求項8】
前記さらなる構造要素が、一重項状態から三重項状態への遷移を改善し、カルバゾールおよび架橋されたカルバゾール二量体単位、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド、スルホンおよびシラン誘導体から選択されることを特徴とする請求項1〜7の一項以上に記載のポリマー。
【請求項9】
前記さらなる構造要素が、1,4−フェニレン、1,4−ナフチレン、1,4−若しくは9,10−アントリレン、1,6−若しくは2,7−若しくは4,9−ピレニレン、3,9−若しくは3,10−ペリレニレン、4,4’−ビフェニリレン、4,4’’−テルフェニリレン、4,4’−ビ−1,1’−ナフチリレン、4,4’−トラニリレン、4,4’−スチルベニレン、または4,4’’−ビススチリルアリーレン誘導体のクラスから選択されることを特徴とする請求項1〜8の一項以上に記載のポリマー。
【請求項10】
前記さらなる構造要素が、典型的に骨格として用いられ、4,5−ジヒドロピレン誘導体、4,5,9,10−テトラヒドロピレン誘導体、フルオレン誘導体、9,9’−スピロビフルオレン誘導体、9,10−ジヒドロフェナントレン誘導体、5,7−ジヒドロジベンゾオキセピン誘導体、並びにシス−およびトランス−インデノフルオレン誘導体のクラスから選択されることを特徴とする請求項1〜9の一項以上に記載のポリマー。
【請求項11】
前記式(1)の単位の割合が、少なくとも10モル%であることを特徴とする請求項1〜10の一項以上に記載のポリマー。
【請求項12】
前記式(1)の単位に加えて、前記ポリマーが、請求項4〜10に記載の異なるクラスからの少なくとも2つの構造単位を含むことを特徴とする請求項1〜11の一項以上に記載のポリマー。
【請求項13】
これらの構造単位のうちの1つが、正孔伝導単位の群から選択され、且つ他の群が、発光単位であることを特徴とする請求項12に記載のポリマー。
【請求項14】
出現毎に同一か異なる記号Rが、2〜15個のC原子を有する直鎖の、分岐の若しくは環状のアルキル鎖(ここで、1個以上の非隣接のC原子は、N−R、O、S、O−CO−O、CO−O、−CH=CH−または−C≡C−により置き換えられてもよく(但し、ヘテロ原子は、フェナントレン単位に直接的に結合しない)、並びに1個以上のH原子は、FまたはCNにより置き換えられてもよい)、または4〜20個のC原子を有する芳香族基若しくは複素環式芳香族基(これらは、1個以上の非芳香族基Rにより置換されていてもよい)、または複数のこれらの系の組み合わせを表し、2個のR基は、互いに、さらなる単環の若しくは多環の芳香族環系または脂肪族環系を形成していてもよいことを特徴とする請求項1〜13の一項以上に記載のポリマー。
【請求項15】
出現毎に同一か異なる記号Xが、−CH=CH−、−C≡C−またはN−Arを表すことを特徴とする請求項1〜14の一項以上に記載のポリマー。
【請求項16】
出現毎に同一か異なる記号Yが、4〜25個のC原子を有する二価の芳香族環系または複素環式芳香族環系(これらは、1個以上のR基により置換されていてもよい)を表すことを特徴とする請求項1〜15の一項以上に記載のポリマー。
【請求項17】
出現毎に同一か異なる記号Arは、4〜25個のC原子を有する一価の芳香族環系または複素環式芳香族環系(これらは、Rにより置換されていてもよく、または置換されない)を表すことを特徴とする請求項1〜16の一項以上に記載のポリマー。
【請求項18】
出現毎に同一か異なる添え字mは、0または1を表すことを特徴とする請求項1〜17の一項以上に記載のポリマー。
【請求項19】
骨格として前記式(1)の単位を含み、並びに以下が適用される、すなわち、nは、出現毎に0であることを特徴とする請求項1〜18の一項以上に記載のポリマー。
【請求項20】
正孔輸送単位として前記式(1)の単位を含み、並びに以下が適用される、すなわち、
nは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、ここで、少なくとも1つのn=1であり、
mは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、または2であり、ここで、対応するn=1の場合には、mは0でなく、
Xは、出現毎にN−Arである
ことを特徴とする請求項1〜18の一項以上に記載のポリマー。
【請求項21】
エミッタとしての前記式(1)の単位を含み、並びに以下が適用される、すなわち、
nは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、ここで、少なくとも1つのn=1であり、
mは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、または2であり、ここで、対応するn=1の場合にはmは0でなく、
Xは、出現毎に同一であるか異なり、−CR=CR−、−C≡C−またはN−Arであり、ここで、少なくとも1個のXは、−CR=CR−または−C≡C−である
ことを特徴とする請求項1〜18の一項以上に記載のポリマー。
【請求項22】
前記式(1)の単位が、フェナントレン単位の9,10位において、対称的に置換されていることを特徴とする請求項1〜21の一項以上に記載のポリマー。
【請求項23】
スズキ重合、ヤマモト重合、シュティレ(STILLE)重合、またはハルトビヒ−ブーフバルト(HARTWIG-BUCHWALD)重合により調製されることを特徴とする請求項1〜22の一項以上に記載のポリマー。
【請求項24】
式(2)
【化2】

の二官能モノマー化合物であって、出現毎に同一か異なる2つの官能基Aが、C−CまたはC−N結合反応の条件下で共重合し、他の記号および添え字は、請求項1に記載したものと同じ意味を有することを特徴とする二官能モノマー化合物。
【請求項25】
Aが、Cl、Br、I、O−トシレート、O−トリフレート、O−SO、B(OR、およびSn(R(ここで、Rは、請求項1に記載したものと同じ意味を有し、また、2個以上のR基は、互いに環系を形成していてもよい)から選択されることを特徴とする請求項24に記載の二官能モノマー化合物。
【請求項26】
C−C結合反応が、スズキカップリング、ヤマモトカップリング、およびシュティレ(STILLE)カップリングの群から選択され、またはC−N結合反応が、ハルトビヒ−ブーフバルト(HARTWIG-BUCHWALD)カップリングであることを特徴とする請求項24および/または25に記載の二官能モノマー化合物。
【請求項27】
請求項1〜23の一項以上に記載の1種以上のポリマーと、さらなるポリマー物質、オリゴマー物質、樹脂状物質、または低分子量物質との混合物(配合物)。
【請求項28】
1種以上の溶媒中の請求項1〜23の一項以上および/または請求項27に記載の1種以上のポリマーまたは配合物の溶液並びに調合物。
【請求項29】
ポリマー発光ダイオードにおける、請求項1〜23の一項以上および/若しくは請求項27に記載のポリマーまたは配合物、または請求項28に記載の溶液の使用。
【請求項30】
1以上の活性層を有し、これらの活性層のうちの少なくとも1つが、請求項1〜23の一項以上および/または請求項27に記載の1種以上のポリマーまたは配合物を含むことを特徴とする有機電子部品。
【請求項31】
ポリマー発光ダイオード(PLED)、有機集積回路(O−IC)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機太陽電池(O−SC)、有機電界クエンチデバイス(organic field-quench devices)(O−FQD)、または有機レーザダイオード(O−laser)であることを特徴とする請求項30に記載の有機電子部品。
【請求項32】
ポリマー発光ダイオードであることを特徴とする請求項31に記載の有機電子部品。

【公表番号】特表2007−534815(P2007−534815A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509955(P2007−509955)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004448
【国際公開番号】WO2005/104264
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】