エレクトロルミネッセンスパネル
【課題】エレクトロルミネッセンス素子の開口率を高くする。
【解決手段】基板2の上面に形成された画素電極20aと、画素電極20a上に形成された有機EL層20bと、有機EL層20b上に形成された対向電極20dと、画素電極20aを囲む開口部33を有する絶縁膜と、を備える発光パネルにおいて、絶縁膜は保護絶縁膜32と、保護絶縁膜32上に設けられた隔壁6からなり、隔壁6は画素電極20aと重ならない位置に設けられている。
【解決手段】基板2の上面に形成された画素電極20aと、画素電極20a上に形成された有機EL層20bと、有機EL層20b上に形成された対向電極20dと、画素電極20aを囲む開口部33を有する絶縁膜と、を備える発光パネルにおいて、絶縁膜は保護絶縁膜32と、保護絶縁膜32上に設けられた隔壁6からなり、隔壁6は画素電極20aと重ならない位置に設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンスパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子はアノードとカソードとの間に例えば電子注入層、有機化合物層、正孔注入層が介在した積層構造を為している。アノードとカソードの間に順バイアス電圧が印加されると、電子注入層から有機化合物層に電子が注入され、正孔注入層から有機化合物層に正孔が注入され、有機化合物層内で電子と正孔が再結合を引き起こして有機化合物層が発光する。
【0003】
アクティブ駆動の場合、画素トランジスタを基板上に形成した後、画素トランジスタを覆う保護絶縁膜を形成し、保護絶縁膜の上に画素電極を形成した後に画素電極上に有機化合物層を形成する構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−234391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、製造プロセスの簡略化のために、図15〜図17に示す構造が検討されている。この構造のエレクトロルミネッセンスパネルを製造するには、まず、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する画素電極120aと、画素トランジスタ121とを基板上に形成する。次に、画素トランジスタ121及び画素電極120aを保護絶縁膜132で覆う。そして、保護絶縁膜132に画素電極120aを露出させる開口部133を形成した後に、保護絶縁膜132の上部に画素電極120aの外周部と重なるように網目状の隔壁106を形成する。ここで、保護絶縁膜132は無機材料からなり、隔壁106は有機材料からなる。
【0006】
なお、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する有機化合物層120bと、隔壁106とが接触していると、隔壁106の形成時に用いる溶媒が有機化合物層120bに不測の影響を及ぼすおそれがあるため、隔壁106の開口部108の外周は保護絶縁膜132の開口部133の外周よりも外側に配置される。
その後、開口部133内の画素電極120a上に有機化合物層120bを形成する。
【0007】
ところで、隔壁106を画素電極120aの外周部に重なるように形成すると、保護絶縁膜132の開口部133の大きさを隔壁106の開口部108よりも小さくする必要があるため、有機化合物層120bの形成領域が小さくなり、開口率が低くなるという問題があった。
【0008】
本発明の課題は、エレクトロルミネッセンス素子の開口率を高くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、本発明の一の態様によれば、基板の上面に形成された第一電極と、前記第一電極上に形成された担体輸送層と、前記担体輸送層上に形成された第二電極と、前記第一電極を囲む開口部を有する絶縁層と、を備える発光パネルにおいて、前記絶縁層は第一絶縁層と、前記第一絶縁層上に設けられた第二絶縁層からなり、前記第二絶縁層は前記第一電極と重ならない位置に設けられていることを特徴とする発光パネルが提供される。
好ましくは、前記第一絶縁層は無機材料からなり、前記第二絶縁層は有機材料からなる。
好ましくは、前記第一絶縁層は前記第一電極の外周部を被覆する。
好ましくは、前記基板の上面に形成され、前記第一電極に接続されたトランジスタを更に備え、
前記第一電極と前記トランジスタとの接続部においては、前記隔壁は前記第一電極と重なっている。
【0010】
本発明の他の態様によれば、基板の上面に形成された第一電極と、前記第一電極の外周部を被覆するとともに中央部を露出させる開口部が設けられた第一絶縁層と、前記絶縁膜の上部に設けられた第二絶縁層と、前記第一電極の上部に形成された担体輸送層と、少なくとも前記担体輸送層の上部に形成された第二電極とを備え、前記第一電極の外周部の少なくとも一辺は、前記第二絶縁層と重ならない位置に設けられていることを特徴とする発光パネルが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エレクトロルミネッセンス素子の開口率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ELディスプレイパネル10における1つの画素PXの回路図である。
【図2】1つの画素PXを示す平面図である。
【図3】図2のIII−III矢視断面図である。
【図4】図2のIV−IV矢視断面図である。
【図5】図2のV−V矢視断面図である。
【図6】(a)、(b)はトランジスタアレイパネル50の製造工程を示す説明図である。
【図7】(a)、(b)はトランジスタアレイパネル50の製造工程を示す説明図である。
【図8】(a)、(b)はトランジスタアレイパネル50の製造工程を示す説明図である。
【図9】(a)、(b)はトランジスタアレイパネル50の製造工程を示す説明図である。
【図10】(a)、(b)はトランジスタアレイパネル50の製造工程を示す説明図である。
【図11】(a)、(b)はトランジスタアレイパネル50の製造工程を示す説明図である。
【図12】(a)、(b)はトランジスタアレイパネル50の製造工程を示す説明図である。
【図13】(a)、(b)はトランジスタアレイパネル50の製造工程を示す説明図である。
【図14】(a)、(b)はトランジスタアレイパネル50の製造工程を示す説明図である。
【図15】従来のELディスプレイパネル110における1つの画素PXを示す平面図である。
【図16】図15のXVI−XVI矢視断面図である。
【図17】図15のXVII−XVII矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence)という用語をELと略称する。
【0014】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係るエレクトロルミネッセンスパネルとして、ELディスプレイパネルを挙げて説明する。図1は、ELディスプレイパネル10における1つの画素PXの回路図である。このELディスプレイパネル10においては、赤、青及び緑の画素PXによって1ドットの画素が構成され、このような画素が表示領域全域にマトリクス状に配列されている。図1の水平方向の配列に着目すると赤の画素PX、青の画素PX、緑の画素PXの順に繰り返し配列され、図1の上下方向の配列に着目すると同じ色が一列に配列されている。
【0015】
このELディスプレイパネル10においては、画素PXに各種の信号を出力するために、複数の走査線25、信号線24及び供給線26が設けられている。走査線25と信号線24とは互いに直交する方向に延在している。
【0016】
画素PXは、2つのnチャネル型トランジスタ21,22と、キャパシタ27と、を有する画素回路PC及び有機EL素子40を有する。2つのnチャネル型トランジスタ21,22及びキャパシタ27は、走査線25、信号線24及び供給線26の入力信号に応じて有機EL素子40に電圧を印加する。
【0017】
図2は1つの画素PXを示す平面図であり、図3は図2のIII−III矢視断面図であり、図4は図2のIV−IV矢視断面図であり、図5は図2のV−V矢視断面図である。図2〜図5に示すように、透明な絶縁基板2の上にトランジスタ21,22のゲート電極21G,22Gが設けられるとともに、キャパシタ27の一方の電極27a、信号線24が設けられ、これらが共通のゲート絶縁膜31によって被覆されている。なお、図2に示すように、電極27aとゲート電極21とは一体に形成されている。
【0018】
ゲート絶縁膜31の上には、図3に示すように、キャパシタ27の他方の電極27b、トランジスタ21,22の半導体膜21a,22a、チャネル保護膜21b,22b、不純物半導体膜21c,21d,22c,22d、ソース電極21S,22S及びドレイン電極21D,22D、走査線25及び供給線26が設けられている。なお、図2に示すように、ドレイン電極21Dは供給線26と一体に形成されており、ソース電極22Sはコンタクトホール28aによりゲート電極21G及び電極27aと導通されており、信号線24はコンタクトホール28bによりドレイン電極22Dと導通されており、走査線25はコンタクトホール28cによりゲート電極22と導通されている。また、ソース電極21Sと電極27bとは一体に形成されている。
【0019】
また、ゲート絶縁膜31の上には、サブピクセル電極20a(画素電極)がマトリクス状に配列されている。これらサブピクセル電極20aは、気相成長法によってゲート絶縁膜31上に成膜された導電性膜(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO))をフォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いてパターニングすることによって形成されたものである。サブピクセル電極20aはトランジスタ21のソース電極21Sの一部と重なるように形成され、ソース電極21Sと導通している。
【0020】
トランジスタ21,22のソース電極21S,22S及びドレイン電極21D,22D、キャパシタ27の他方の電極27b、走査線25及び供給線26、サブピクセル電極20aは共通の保護絶縁膜32によって被覆されている。保護絶縁膜32のサブピクセル電極20aの部分にはサブピクセル電極20aを露出させる開口部33が形成されている。開口部33が形成されることにより保護絶縁膜32はサブピクセル電極20aの間を縫うように網目状に形成されるとともにサブピクセル電極20aの一部外縁部に重なり、サブピクセル電極20aを囲繞している。開口部33内に後述する有機EL層20bが形成される。
なお、絶縁基板2から保護絶縁膜32までの積層構造がトランジスタアレイパネル50である。
【0021】
保護絶縁膜32上には、網目状の隔壁6が形成されている。隔壁6は、例えばポリイミド等の樹脂により形成されたものであり、トランジスタ21,22の各電極、走査線25、信号線24、供給線26よりも十分に厚い。隔壁6の形成時に用いる溶媒が有機EL層20bに不測の影響を及ぼし、有機EL層20bを劣化させる恐れがあるため、隔壁6の開口部8は、保護絶縁膜32の開口部33よりも大きく設定されている。保護絶縁膜32と隔壁6の積層膜を絶縁膜と呼ぶ。
【0022】
図2〜図4に示すように、サブピクセル電極20aは、ソース電極21Sとの接続部を除き、隔壁6と重なっていない。すなわち、隔壁6の開口部8の外周は、サブピクセル電極20aのソース電極21Sと接続される一辺を除く他の3辺よりも外側に設けられている。このため、保護絶縁膜32の開口部33をサブピクセル電極20aの大きさに合わせて極力大きくすることができる。したがって、有機EL素子20の開口率を高くすることができる。なお、トランジスタ21があるため、サブピクセル電極20aのソース電極21Sと接続される一辺は、開口率の向上に寄与しない。
【0023】
なお、図2〜図4においては、サブピクセル電極20aとソース電極21Sとの接続部を除き、サブピクセル電極20aと保護絶縁膜32との重なり幅は約2μmであるが、重なり幅は任意である。また、開口部8の外縁は開口部33の外縁よりも約2μm外側に配置されているが、開口部8の外縁が開口部33の外縁よりも外側に配置されていればその幅は任意である。好ましくは、サブピクセル電極20aと保護絶縁膜32との重なり幅よりも大きい2〜4μmであればよい。
【0024】
サブピクセル電極20a上には正孔注入層20e、発光層20fが順に積層されて有機EL層20b(担体輸送層)が形成されている。正孔注入層20eは、導電性高分子であるPEDOT及びドーパントであるPSSからなり、発光層20fは、ポリフェニレンビニレン系発光材料やポリフルオレン系発光材料等の共役ポリマーからなる。サブピクセルが赤の場合には発光層20fが赤色に発光し、サブピクセルが緑の場合には発光層20fが緑色に発光し、サブピクセルが青の場合には発光層20fが青色に発光するように、それぞれの材料を設定する。
【0025】
正孔注入層20e及び発光層20fは、湿式塗布法(例えば、インクジェット法)によって成膜される。この場合、正孔注入層20eとなるPEDOT及びPSSを含有する有機化合物含有液をサブピクセル電極20aに塗布して成膜し、その後、発光層20fとなる共役ポリマー発光材料を含有する有機化合物含有液を塗布して成膜する。なお、厚膜の隔壁6が設けられるので、隣り合うサブピクセル電極20aに塗布された有機化合物含有液が隔壁6を越えて混ざり合うことを防止することができる。
【0026】
なお、発光層20fの上にさらに電子輸送層を設けても良い。また、有機EL層20bはサブピクセル電極20aの上に形成された発光層、電子輸送層からなる二層構造であっても良いし、担体輸送層と発光層との組合せは任意に設定できる。また、これらの層構造において適切な層間に担体輸送を制限するインタレイヤ層が介在した積層構造であっても良いし、その他の積層構造であってもよい。
【0027】
発光層20f、保護絶縁膜32及び隔壁6の上部には、有機EL素子20のカソードを構成する電子注入層20cが成膜されている。電子注入層20cは、サブピクセル電極20aよりも仕事関数の低い材料で形成されており、例えば、インジウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム、バリウム、希土類金属の少なくとも一種を含む単体又は合金より1〜10nmの厚さに形成されている。あるいは、電子注入層20cは、上記各種材料の層が積層された積層構造となっていても良い。
【0028】
電子注入層20cの上部には、例えばアルミニウム、クロム、銀やパラジウム銀系の合金等の導電性材料を気相成長法によって100nm以上成膜することによって対向電極20dが形成されている。
サブピクセル電極20a、有機EL層20b、電子注入層20c、対向電極20dの順に積層されたものが有機EL素子20である。
【0029】
なお、図示しないが、対向電極20dの上には、封止層が堆積されており、封止層は表示部3全体を被覆するように形成されている。つまり、封止層は、複数の有機EL素子10全体を被覆するように形成されている。封止層は、絶縁性を有し、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂等からなり、これらの樹脂にシリカ充填材等を加えたものでもよい。封止層は有機EL素子20が外気に露出されることを防ぐ役割を果たす。
【0030】
次に、ELディスプレイパネル10を製造する製造工程について説明する。まず、図6〜図14を用いてトランジスタアレイパネル50の製造工程について説明する。なお、図6〜図14において、(a)は図3と同じ断面の図であり、(b)は図5と同じ断面の図である。
【0031】
まず、絶縁基板2の上部にべた一面にゲート金属35を成膜し、パターニングすることで、図6に示すように、ゲート21G,22G及び電極27a、信号線24を形成する。次に、図7に示すように、これらを被覆するゲート絶縁膜31、半導体膜21a,22aとなるアモルファスシリコン又はポリシリコンからなる半導体層36、及び、半導体層36の上に窒化シリコン又は酸化シリコンの層37をべた一面に形成する。次に、図8に示すように、窒化シリコン又は酸化シリコンの層37をパターニングすることでチャネル保護膜21b,22bを形成する。
【0032】
次に、図9に示すように、不純物半導体膜21c,21d,22c,22dとなるn型の不純物イオンを含むアモルファスシリコンからなる層(n+シリコン層38)をべた一面に形成する。次に、図10に示すように、コンタクトホール28a,28b,28c及び開口部33が形成される位置のゲート絶縁膜31、半導体層、及びn+シリコン層にゲート金属が露出するように孔を形成する。
【0033】
次に、ソース・ドレイン金属39をべた一面にする。このとき、ゲート絶縁膜31、半導体層36、及びn+シリコン層38に形成された孔の部分でゲート金属35とソース・ドレイン金属39とが接合され導通し、コンタクトホール28a,28b,28cが形成される。
【0034】
次に、図11に示すように、ソース・ドレイン金属39をパターニングすることでキャパシタ27の他方の電極27b、ソース電極21S,22S及びドレイン電極21D,22D、走査線25及び供給線26を形成する。
次に、図12に示すように、気相成長法によって導電性膜を成膜し、パターニングすることでサブピクセル電極20aを形成する。
【0035】
次に、トランジスタ21,22のソース電極21S,22S及びドレイン電極21D,22D、キャパシタ27の他方の電極27b、走査線25及び供給線26、及びサブピクセル電極20aを覆う保護絶縁膜32をべた一面に形成し、図13に示すように、サブピクセル電極20aの部分に開口部33を形成する。
【0036】
次に、保護絶縁膜32及びサブピクセル電極20aの上部にポリイミド等の樹脂をべた一面に塗布し、パターニングすることで、図14に示すように、隔壁6を網目状に形成する。以上により、トランジスタアレイパネル50が形成される。
【0037】
次に、トランジスタアレイパネル50上へ有機EL素子20を形成し、ELディスプレイパネル10を製造する製造工程について説明する。
【0038】
まず、トランジスタアレイパネル50を洗浄する。次に、サブピクセル電極20aの表面を、有機EL層20bの形成に使用する有機化合物含有液に対して親液化させる。例えば有機化合物含有液に親水性の溶剤を用いる場合には、酸素プラズマ処理やUVオゾン処理等を施すことにより親水化させる。
【0039】
次に、親水性の溶剤に対して溶解性を示し且つ疎水性の溶剤に対して難溶性又は不溶性である正孔注入材料(例えば導電性高分子であるPEDOT及びドーパントとなるPSS)を水に溶解した有機化合物含有液をサブピクセル電極20aに塗布する。塗布方法としては、インクジェット法(液滴吐出法)、その他の印刷方法を用いても良いし、ディップコート法、スピンコート法といったコーティング法を用いても良い。サブピクセル電極20aごとに独立して正孔注入層20eを成膜するためには、インクジェット法等の印刷方法が好ましい。
【0040】
このように湿式塗布法により正孔注入層20eを形成した場合、厚膜の隔壁6が設けられているから、隣り合うサブピクセル電極20aに塗布された有機化合物含有液が隔壁6を越えて混ざり合わない。そのため、サブピクセル電極20aごとに独立して正孔注入層20eを形成することができる。
【0041】
正孔注入層20eを形成した後、正孔注入層20eを大気に曝露した状態で、ホットプレートを用いてトランジスタアレイパネル50を160〜200℃の温度で乾燥させ、残留溶媒の除去を行う。
【0042】
次に、発光色が赤、緑、青の共役ポリマー発光材料をそれぞれ疎水性の有機溶剤(例えば、テトラリン、テトラメチルベンゼン、メシチレン)に溶かし、赤、緑、青それぞれの有機化合物含有液を準備する。そして、赤のサブピクセルの正孔注入層20e上には赤の有機化合物含有液を塗布し、緑のサブピクセルの正孔注入層20e上には緑の有機化合物含有液を塗布し、青のサブピクセルの正孔注入層20e上には青の有機化合物含有液を塗布する。これにより、正孔注入層20e上に発光層20fを成膜する。塗布方法としてはインクジェット法(液滴吐出法)、その他の印刷方法を用いて、色ごとに塗り分けを行う。
【0043】
このように湿式塗布法により正孔注入層20e及び発光層20fを形成した場合、厚膜の隔壁6が設けられているから、隣り合うサブピクセルに塗布された有機化合物含有液が隔壁6を越えて混ざり合わない。そのため、サブピクセルごとに独立して発光層20fを形成することができる。
【0044】
次に、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素ガス雰囲気)下でホットプレートによってトランジスタアレイパネル50を乾燥させ、残留溶媒の除去を行う。なお、真空中でシーズヒータによる乾燥を行っても良い。
【0045】
次に、発光層20f、保護絶縁膜32、及び隔壁6の上部に電子注入層20cを気相成長法により成膜する。具体的には、真空蒸着法によってCa又はBaの薄膜を成膜する。次に、電子注入層20cの上部に対向電極20dを気相成長法により成膜する。
以上により、トランジスタアレイパネル50上に有機EL素子20が形成される。
【0046】
最後に、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂等を対向電極20dの上部に塗布し、硬化させて封止層を形成する。
以上により、ELディスプレイパネル10が完成する。
【0047】
本実施形態によれば、隔壁6の開口部8の外周が、サブピクセル電極20aのソース電極21Sと接続される一辺を除く他の3辺よりも外側に設けられているため、保護絶縁膜32の開口部33をサブピクセル電極20aの大きさに合わせて極力大きくすることができ、有機EL素子20の開口率を高くすることができる。
【0048】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。例えば、上記実施形態においては、隔壁6の開口部8の外周が、サブピクセル電極20aのソース電極21Sと接続される一辺を除く他の3辺よりも外側に設けられていたが、本発明はこれに限ることはなく、少なくともサブピクセル電極20aの一辺よりも外側に隔壁6が配置されていればよい。また、上記実施の形態においてはELディスプレイパネルのような表示装置について説明したが、本発明はこれに限らず、例えばプリンタヘッド等の露光装置に応用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
2 基板
6 隔壁
20a 画素電極
20b 有機EL層(担体輸送層)
20d 対向電極
21 トランジスタ
32 保護絶縁膜
33 開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンスパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子はアノードとカソードとの間に例えば電子注入層、有機化合物層、正孔注入層が介在した積層構造を為している。アノードとカソードの間に順バイアス電圧が印加されると、電子注入層から有機化合物層に電子が注入され、正孔注入層から有機化合物層に正孔が注入され、有機化合物層内で電子と正孔が再結合を引き起こして有機化合物層が発光する。
【0003】
アクティブ駆動の場合、画素トランジスタを基板上に形成した後、画素トランジスタを覆う保護絶縁膜を形成し、保護絶縁膜の上に画素電極を形成した後に画素電極上に有機化合物層を形成する構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−234391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、製造プロセスの簡略化のために、図15〜図17に示す構造が検討されている。この構造のエレクトロルミネッセンスパネルを製造するには、まず、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する画素電極120aと、画素トランジスタ121とを基板上に形成する。次に、画素トランジスタ121及び画素電極120aを保護絶縁膜132で覆う。そして、保護絶縁膜132に画素電極120aを露出させる開口部133を形成した後に、保護絶縁膜132の上部に画素電極120aの外周部と重なるように網目状の隔壁106を形成する。ここで、保護絶縁膜132は無機材料からなり、隔壁106は有機材料からなる。
【0006】
なお、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する有機化合物層120bと、隔壁106とが接触していると、隔壁106の形成時に用いる溶媒が有機化合物層120bに不測の影響を及ぼすおそれがあるため、隔壁106の開口部108の外周は保護絶縁膜132の開口部133の外周よりも外側に配置される。
その後、開口部133内の画素電極120a上に有機化合物層120bを形成する。
【0007】
ところで、隔壁106を画素電極120aの外周部に重なるように形成すると、保護絶縁膜132の開口部133の大きさを隔壁106の開口部108よりも小さくする必要があるため、有機化合物層120bの形成領域が小さくなり、開口率が低くなるという問題があった。
【0008】
本発明の課題は、エレクトロルミネッセンス素子の開口率を高くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、本発明の一の態様によれば、基板の上面に形成された第一電極と、前記第一電極上に形成された担体輸送層と、前記担体輸送層上に形成された第二電極と、前記第一電極を囲む開口部を有する絶縁層と、を備える発光パネルにおいて、前記絶縁層は第一絶縁層と、前記第一絶縁層上に設けられた第二絶縁層からなり、前記第二絶縁層は前記第一電極と重ならない位置に設けられていることを特徴とする発光パネルが提供される。
好ましくは、前記第一絶縁層は無機材料からなり、前記第二絶縁層は有機材料からなる。
好ましくは、前記第一絶縁層は前記第一電極の外周部を被覆する。
好ましくは、前記基板の上面に形成され、前記第一電極に接続されたトランジスタを更に備え、
前記第一電極と前記トランジスタとの接続部においては、前記隔壁は前記第一電極と重なっている。
【0010】
本発明の他の態様によれば、基板の上面に形成された第一電極と、前記第一電極の外周部を被覆するとともに中央部を露出させる開口部が設けられた第一絶縁層と、前記絶縁膜の上部に設けられた第二絶縁層と、前記第一電極の上部に形成された担体輸送層と、少なくとも前記担体輸送層の上部に形成された第二電極とを備え、前記第一電極の外周部の少なくとも一辺は、前記第二絶縁層と重ならない位置に設けられていることを特徴とする発光パネルが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エレクトロルミネッセンス素子の開口率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ELディスプレイパネル10における1つの画素PXの回路図である。
【図2】1つの画素PXを示す平面図である。
【図3】図2のIII−III矢視断面図である。
【図4】図2のIV−IV矢視断面図である。
【図5】図2のV−V矢視断面図である。
【図6】(a)、(b)はトランジスタアレイパネル50の製造工程を示す説明図である。
【図7】(a)、(b)はトランジスタアレイパネル50の製造工程を示す説明図である。
【図8】(a)、(b)はトランジスタアレイパネル50の製造工程を示す説明図である。
【図9】(a)、(b)はトランジスタアレイパネル50の製造工程を示す説明図である。
【図10】(a)、(b)はトランジスタアレイパネル50の製造工程を示す説明図である。
【図11】(a)、(b)はトランジスタアレイパネル50の製造工程を示す説明図である。
【図12】(a)、(b)はトランジスタアレイパネル50の製造工程を示す説明図である。
【図13】(a)、(b)はトランジスタアレイパネル50の製造工程を示す説明図である。
【図14】(a)、(b)はトランジスタアレイパネル50の製造工程を示す説明図である。
【図15】従来のELディスプレイパネル110における1つの画素PXを示す平面図である。
【図16】図15のXVI−XVI矢視断面図である。
【図17】図15のXVII−XVII矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence)という用語をELと略称する。
【0014】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係るエレクトロルミネッセンスパネルとして、ELディスプレイパネルを挙げて説明する。図1は、ELディスプレイパネル10における1つの画素PXの回路図である。このELディスプレイパネル10においては、赤、青及び緑の画素PXによって1ドットの画素が構成され、このような画素が表示領域全域にマトリクス状に配列されている。図1の水平方向の配列に着目すると赤の画素PX、青の画素PX、緑の画素PXの順に繰り返し配列され、図1の上下方向の配列に着目すると同じ色が一列に配列されている。
【0015】
このELディスプレイパネル10においては、画素PXに各種の信号を出力するために、複数の走査線25、信号線24及び供給線26が設けられている。走査線25と信号線24とは互いに直交する方向に延在している。
【0016】
画素PXは、2つのnチャネル型トランジスタ21,22と、キャパシタ27と、を有する画素回路PC及び有機EL素子40を有する。2つのnチャネル型トランジスタ21,22及びキャパシタ27は、走査線25、信号線24及び供給線26の入力信号に応じて有機EL素子40に電圧を印加する。
【0017】
図2は1つの画素PXを示す平面図であり、図3は図2のIII−III矢視断面図であり、図4は図2のIV−IV矢視断面図であり、図5は図2のV−V矢視断面図である。図2〜図5に示すように、透明な絶縁基板2の上にトランジスタ21,22のゲート電極21G,22Gが設けられるとともに、キャパシタ27の一方の電極27a、信号線24が設けられ、これらが共通のゲート絶縁膜31によって被覆されている。なお、図2に示すように、電極27aとゲート電極21とは一体に形成されている。
【0018】
ゲート絶縁膜31の上には、図3に示すように、キャパシタ27の他方の電極27b、トランジスタ21,22の半導体膜21a,22a、チャネル保護膜21b,22b、不純物半導体膜21c,21d,22c,22d、ソース電極21S,22S及びドレイン電極21D,22D、走査線25及び供給線26が設けられている。なお、図2に示すように、ドレイン電極21Dは供給線26と一体に形成されており、ソース電極22Sはコンタクトホール28aによりゲート電極21G及び電極27aと導通されており、信号線24はコンタクトホール28bによりドレイン電極22Dと導通されており、走査線25はコンタクトホール28cによりゲート電極22と導通されている。また、ソース電極21Sと電極27bとは一体に形成されている。
【0019】
また、ゲート絶縁膜31の上には、サブピクセル電極20a(画素電極)がマトリクス状に配列されている。これらサブピクセル電極20aは、気相成長法によってゲート絶縁膜31上に成膜された導電性膜(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO))をフォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いてパターニングすることによって形成されたものである。サブピクセル電極20aはトランジスタ21のソース電極21Sの一部と重なるように形成され、ソース電極21Sと導通している。
【0020】
トランジスタ21,22のソース電極21S,22S及びドレイン電極21D,22D、キャパシタ27の他方の電極27b、走査線25及び供給線26、サブピクセル電極20aは共通の保護絶縁膜32によって被覆されている。保護絶縁膜32のサブピクセル電極20aの部分にはサブピクセル電極20aを露出させる開口部33が形成されている。開口部33が形成されることにより保護絶縁膜32はサブピクセル電極20aの間を縫うように網目状に形成されるとともにサブピクセル電極20aの一部外縁部に重なり、サブピクセル電極20aを囲繞している。開口部33内に後述する有機EL層20bが形成される。
なお、絶縁基板2から保護絶縁膜32までの積層構造がトランジスタアレイパネル50である。
【0021】
保護絶縁膜32上には、網目状の隔壁6が形成されている。隔壁6は、例えばポリイミド等の樹脂により形成されたものであり、トランジスタ21,22の各電極、走査線25、信号線24、供給線26よりも十分に厚い。隔壁6の形成時に用いる溶媒が有機EL層20bに不測の影響を及ぼし、有機EL層20bを劣化させる恐れがあるため、隔壁6の開口部8は、保護絶縁膜32の開口部33よりも大きく設定されている。保護絶縁膜32と隔壁6の積層膜を絶縁膜と呼ぶ。
【0022】
図2〜図4に示すように、サブピクセル電極20aは、ソース電極21Sとの接続部を除き、隔壁6と重なっていない。すなわち、隔壁6の開口部8の外周は、サブピクセル電極20aのソース電極21Sと接続される一辺を除く他の3辺よりも外側に設けられている。このため、保護絶縁膜32の開口部33をサブピクセル電極20aの大きさに合わせて極力大きくすることができる。したがって、有機EL素子20の開口率を高くすることができる。なお、トランジスタ21があるため、サブピクセル電極20aのソース電極21Sと接続される一辺は、開口率の向上に寄与しない。
【0023】
なお、図2〜図4においては、サブピクセル電極20aとソース電極21Sとの接続部を除き、サブピクセル電極20aと保護絶縁膜32との重なり幅は約2μmであるが、重なり幅は任意である。また、開口部8の外縁は開口部33の外縁よりも約2μm外側に配置されているが、開口部8の外縁が開口部33の外縁よりも外側に配置されていればその幅は任意である。好ましくは、サブピクセル電極20aと保護絶縁膜32との重なり幅よりも大きい2〜4μmであればよい。
【0024】
サブピクセル電極20a上には正孔注入層20e、発光層20fが順に積層されて有機EL層20b(担体輸送層)が形成されている。正孔注入層20eは、導電性高分子であるPEDOT及びドーパントであるPSSからなり、発光層20fは、ポリフェニレンビニレン系発光材料やポリフルオレン系発光材料等の共役ポリマーからなる。サブピクセルが赤の場合には発光層20fが赤色に発光し、サブピクセルが緑の場合には発光層20fが緑色に発光し、サブピクセルが青の場合には発光層20fが青色に発光するように、それぞれの材料を設定する。
【0025】
正孔注入層20e及び発光層20fは、湿式塗布法(例えば、インクジェット法)によって成膜される。この場合、正孔注入層20eとなるPEDOT及びPSSを含有する有機化合物含有液をサブピクセル電極20aに塗布して成膜し、その後、発光層20fとなる共役ポリマー発光材料を含有する有機化合物含有液を塗布して成膜する。なお、厚膜の隔壁6が設けられるので、隣り合うサブピクセル電極20aに塗布された有機化合物含有液が隔壁6を越えて混ざり合うことを防止することができる。
【0026】
なお、発光層20fの上にさらに電子輸送層を設けても良い。また、有機EL層20bはサブピクセル電極20aの上に形成された発光層、電子輸送層からなる二層構造であっても良いし、担体輸送層と発光層との組合せは任意に設定できる。また、これらの層構造において適切な層間に担体輸送を制限するインタレイヤ層が介在した積層構造であっても良いし、その他の積層構造であってもよい。
【0027】
発光層20f、保護絶縁膜32及び隔壁6の上部には、有機EL素子20のカソードを構成する電子注入層20cが成膜されている。電子注入層20cは、サブピクセル電極20aよりも仕事関数の低い材料で形成されており、例えば、インジウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム、バリウム、希土類金属の少なくとも一種を含む単体又は合金より1〜10nmの厚さに形成されている。あるいは、電子注入層20cは、上記各種材料の層が積層された積層構造となっていても良い。
【0028】
電子注入層20cの上部には、例えばアルミニウム、クロム、銀やパラジウム銀系の合金等の導電性材料を気相成長法によって100nm以上成膜することによって対向電極20dが形成されている。
サブピクセル電極20a、有機EL層20b、電子注入層20c、対向電極20dの順に積層されたものが有機EL素子20である。
【0029】
なお、図示しないが、対向電極20dの上には、封止層が堆積されており、封止層は表示部3全体を被覆するように形成されている。つまり、封止層は、複数の有機EL素子10全体を被覆するように形成されている。封止層は、絶縁性を有し、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂等からなり、これらの樹脂にシリカ充填材等を加えたものでもよい。封止層は有機EL素子20が外気に露出されることを防ぐ役割を果たす。
【0030】
次に、ELディスプレイパネル10を製造する製造工程について説明する。まず、図6〜図14を用いてトランジスタアレイパネル50の製造工程について説明する。なお、図6〜図14において、(a)は図3と同じ断面の図であり、(b)は図5と同じ断面の図である。
【0031】
まず、絶縁基板2の上部にべた一面にゲート金属35を成膜し、パターニングすることで、図6に示すように、ゲート21G,22G及び電極27a、信号線24を形成する。次に、図7に示すように、これらを被覆するゲート絶縁膜31、半導体膜21a,22aとなるアモルファスシリコン又はポリシリコンからなる半導体層36、及び、半導体層36の上に窒化シリコン又は酸化シリコンの層37をべた一面に形成する。次に、図8に示すように、窒化シリコン又は酸化シリコンの層37をパターニングすることでチャネル保護膜21b,22bを形成する。
【0032】
次に、図9に示すように、不純物半導体膜21c,21d,22c,22dとなるn型の不純物イオンを含むアモルファスシリコンからなる層(n+シリコン層38)をべた一面に形成する。次に、図10に示すように、コンタクトホール28a,28b,28c及び開口部33が形成される位置のゲート絶縁膜31、半導体層、及びn+シリコン層にゲート金属が露出するように孔を形成する。
【0033】
次に、ソース・ドレイン金属39をべた一面にする。このとき、ゲート絶縁膜31、半導体層36、及びn+シリコン層38に形成された孔の部分でゲート金属35とソース・ドレイン金属39とが接合され導通し、コンタクトホール28a,28b,28cが形成される。
【0034】
次に、図11に示すように、ソース・ドレイン金属39をパターニングすることでキャパシタ27の他方の電極27b、ソース電極21S,22S及びドレイン電極21D,22D、走査線25及び供給線26を形成する。
次に、図12に示すように、気相成長法によって導電性膜を成膜し、パターニングすることでサブピクセル電極20aを形成する。
【0035】
次に、トランジスタ21,22のソース電極21S,22S及びドレイン電極21D,22D、キャパシタ27の他方の電極27b、走査線25及び供給線26、及びサブピクセル電極20aを覆う保護絶縁膜32をべた一面に形成し、図13に示すように、サブピクセル電極20aの部分に開口部33を形成する。
【0036】
次に、保護絶縁膜32及びサブピクセル電極20aの上部にポリイミド等の樹脂をべた一面に塗布し、パターニングすることで、図14に示すように、隔壁6を網目状に形成する。以上により、トランジスタアレイパネル50が形成される。
【0037】
次に、トランジスタアレイパネル50上へ有機EL素子20を形成し、ELディスプレイパネル10を製造する製造工程について説明する。
【0038】
まず、トランジスタアレイパネル50を洗浄する。次に、サブピクセル電極20aの表面を、有機EL層20bの形成に使用する有機化合物含有液に対して親液化させる。例えば有機化合物含有液に親水性の溶剤を用いる場合には、酸素プラズマ処理やUVオゾン処理等を施すことにより親水化させる。
【0039】
次に、親水性の溶剤に対して溶解性を示し且つ疎水性の溶剤に対して難溶性又は不溶性である正孔注入材料(例えば導電性高分子であるPEDOT及びドーパントとなるPSS)を水に溶解した有機化合物含有液をサブピクセル電極20aに塗布する。塗布方法としては、インクジェット法(液滴吐出法)、その他の印刷方法を用いても良いし、ディップコート法、スピンコート法といったコーティング法を用いても良い。サブピクセル電極20aごとに独立して正孔注入層20eを成膜するためには、インクジェット法等の印刷方法が好ましい。
【0040】
このように湿式塗布法により正孔注入層20eを形成した場合、厚膜の隔壁6が設けられているから、隣り合うサブピクセル電極20aに塗布された有機化合物含有液が隔壁6を越えて混ざり合わない。そのため、サブピクセル電極20aごとに独立して正孔注入層20eを形成することができる。
【0041】
正孔注入層20eを形成した後、正孔注入層20eを大気に曝露した状態で、ホットプレートを用いてトランジスタアレイパネル50を160〜200℃の温度で乾燥させ、残留溶媒の除去を行う。
【0042】
次に、発光色が赤、緑、青の共役ポリマー発光材料をそれぞれ疎水性の有機溶剤(例えば、テトラリン、テトラメチルベンゼン、メシチレン)に溶かし、赤、緑、青それぞれの有機化合物含有液を準備する。そして、赤のサブピクセルの正孔注入層20e上には赤の有機化合物含有液を塗布し、緑のサブピクセルの正孔注入層20e上には緑の有機化合物含有液を塗布し、青のサブピクセルの正孔注入層20e上には青の有機化合物含有液を塗布する。これにより、正孔注入層20e上に発光層20fを成膜する。塗布方法としてはインクジェット法(液滴吐出法)、その他の印刷方法を用いて、色ごとに塗り分けを行う。
【0043】
このように湿式塗布法により正孔注入層20e及び発光層20fを形成した場合、厚膜の隔壁6が設けられているから、隣り合うサブピクセルに塗布された有機化合物含有液が隔壁6を越えて混ざり合わない。そのため、サブピクセルごとに独立して発光層20fを形成することができる。
【0044】
次に、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素ガス雰囲気)下でホットプレートによってトランジスタアレイパネル50を乾燥させ、残留溶媒の除去を行う。なお、真空中でシーズヒータによる乾燥を行っても良い。
【0045】
次に、発光層20f、保護絶縁膜32、及び隔壁6の上部に電子注入層20cを気相成長法により成膜する。具体的には、真空蒸着法によってCa又はBaの薄膜を成膜する。次に、電子注入層20cの上部に対向電極20dを気相成長法により成膜する。
以上により、トランジスタアレイパネル50上に有機EL素子20が形成される。
【0046】
最後に、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂等を対向電極20dの上部に塗布し、硬化させて封止層を形成する。
以上により、ELディスプレイパネル10が完成する。
【0047】
本実施形態によれば、隔壁6の開口部8の外周が、サブピクセル電極20aのソース電極21Sと接続される一辺を除く他の3辺よりも外側に設けられているため、保護絶縁膜32の開口部33をサブピクセル電極20aの大きさに合わせて極力大きくすることができ、有機EL素子20の開口率を高くすることができる。
【0048】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。例えば、上記実施形態においては、隔壁6の開口部8の外周が、サブピクセル電極20aのソース電極21Sと接続される一辺を除く他の3辺よりも外側に設けられていたが、本発明はこれに限ることはなく、少なくともサブピクセル電極20aの一辺よりも外側に隔壁6が配置されていればよい。また、上記実施の形態においてはELディスプレイパネルのような表示装置について説明したが、本発明はこれに限らず、例えばプリンタヘッド等の露光装置に応用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
2 基板
6 隔壁
20a 画素電極
20b 有機EL層(担体輸送層)
20d 対向電極
21 トランジスタ
32 保護絶縁膜
33 開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上面に形成された第一電極と、前記第一電極上に形成された担体輸送層と、前記担体輸送層上に形成された第二電極と、前記第一電極を囲む開口部を有する絶縁層と、を備える発光パネルにおいて、
前記絶縁層は第一絶縁層と、前記第一絶縁層上に設けられた第二絶縁層からなり、前記第二絶縁層は前記第一電極と重ならない位置に設けられていることを特徴とする発光パネル。
【請求項2】
前記第一絶縁層は無機材料からなり、前記第二絶縁層は有機材料からなることを特徴とする請求項1に記載の発光パネル。
【請求項3】
前記第一絶縁層は前記第一電極の外周部を被覆することを特徴とする請求項1又は2に記載の発光パネル。
【請求項4】
前記基板の上面に形成され、前記第一電極に接続されたトランジスタを更に備え、
前記第一電極と前記トランジスタとの接続部においては、前記隔壁は前記第一電極と重なっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発光パネル。
【請求項5】
基板の上面に形成された第一電極と、
前記第一電極の外周部を被覆するとともに中央部を露出させる開口部が設けられた第一絶縁層と、
前記絶縁膜の上部に設けられた第二絶縁層と、
前記第一電極の上部に形成された担体輸送層と、
少なくとも前記担体輸送層の上部に形成された第二電極とを備え、
前記第一電極の外周部の少なくとも一辺は、前記第二絶縁層と重ならない位置に設けられていることを特徴とする発光パネル。
【請求項1】
基板の上面に形成された第一電極と、前記第一電極上に形成された担体輸送層と、前記担体輸送層上に形成された第二電極と、前記第一電極を囲む開口部を有する絶縁層と、を備える発光パネルにおいて、
前記絶縁層は第一絶縁層と、前記第一絶縁層上に設けられた第二絶縁層からなり、前記第二絶縁層は前記第一電極と重ならない位置に設けられていることを特徴とする発光パネル。
【請求項2】
前記第一絶縁層は無機材料からなり、前記第二絶縁層は有機材料からなることを特徴とする請求項1に記載の発光パネル。
【請求項3】
前記第一絶縁層は前記第一電極の外周部を被覆することを特徴とする請求項1又は2に記載の発光パネル。
【請求項4】
前記基板の上面に形成され、前記第一電極に接続されたトランジスタを更に備え、
前記第一電極と前記トランジスタとの接続部においては、前記隔壁は前記第一電極と重なっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発光パネル。
【請求項5】
基板の上面に形成された第一電極と、
前記第一電極の外周部を被覆するとともに中央部を露出させる開口部が設けられた第一絶縁層と、
前記絶縁膜の上部に設けられた第二絶縁層と、
前記第一電極の上部に形成された担体輸送層と、
少なくとも前記担体輸送層の上部に形成された第二電極とを備え、
前記第一電極の外周部の少なくとも一辺は、前記第二絶縁層と重ならない位置に設けられていることを特徴とする発光パネル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−205580(P2010−205580A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50242(P2009−50242)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
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