説明

エレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置

【課題】構成部品の点数が少なく、組立工程も少なくなされ、製造が容易化され、製造コストの低廉化が可能であるとともに、薄型化が可能であって、さらに、押圧操作部がエレクトロルミネッセンスシートからの照明光によって十分に照明されるようになされたエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置を提供する。
【解決手段】可撓性を有するエレクトロルミネッセンスシート1と、静電容量の変化量を検知するスイッチング機能を有しエレクトロルミネッセンスシート1上に積層された可撓性を有する透明電極シート2と、エレクトロルミネッセンスシート1及び透明電極シート2に接続され透明電極シート2における静電容量の検知回路及びエレクトロルミネッセンスシート1の駆動回路が実装された基板3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス(EL)シートを用いてスイッチング機能を有する透明電極シートを照明するようにしたエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話等の電子機器においては、LED等の発光素子を使用して、操作キーの部分などを筐体内部より照明している。ところが、近年においてこれら電子機器の一層の小型化及び操作キーの狭ピッチ化が図られたことにより、LED等の発光素子を実装するための容積が確保できなくなってきている。
【0003】
また、LED等の発光素子を使用する場合の問題点として、操作キーの上面を均等な輝度で照明することができないということがある。
【0004】
そこで、近年においては、例えば、特許文献1に記載されているように、このような操作キー等の照明のために、シート状の無機エレクトロルミネッセンスシートを使用したスイッチ装置が提案されている。特許文献1に記載されたスイッチ装置は、キーパッドの背面側にエレクトロルミネッセンスシート及びドーム状の変位部材(いわゆるメタルドーム、皿バネ)が配置されて構成されている。このスイッチ装置においては、キーパッドは、背面側より、エレクトロルミネッセンスシートからの照明光によって照明される。そして、このスイッチ装置においては、キーパッドを押圧操作すると、このキーパッドの下端部に設けられた突起(プランジャ部)によってドーム状の変位部材が押圧され、スイッチ操作がなされる。
【0005】
エレクトロルミネッセンスシートを使用することの利点としては、LED等の発光素子の実装を行う必要がなく、電子機器の筐体の容積を削減することができ、また、操作キーの上面を均等な輝度で照明することができるということがある。このようなエレクトロルミネッセンスシートは、PET(ポリエチレンテレフタレート:poly ethylene terephthalate)やポリエステル(polyester)薄膜上に発光体等を積層して形成することが可能である。
【0006】
このようなエレクトロルミネッセンスシートは、交流電圧を印加することにより発光する。エレクトロルミネッセンスシートへの交流電圧の印加は、絶縁基板上に形成された電極に対して異方導電性ペースト(ACP)や異方導電性フイルム(ACF)を介してエレクトロルミネッセンスシートを接続させることによって行っている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−68161公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前述のようにエレクトロルミネッセンスシートを有して構成された従来のスイッチ装置においては、構成部品の点数が多く、組立工程も多いため、製造が煩雑であり、製造コストの低廉化が困難であった。このようなスイッチ装置は、例えば、ケース、ノブ、エレクトロルミネッセンスシート、ドーム状の変位部材、接点部品等といった部品により構成されている。
【0009】
また、従来のスイッチ装置においては、キーパッドによってドーム状の変位部材を押圧し、この変位部材の変位によってスイッチ操作がなされる構成であるため、キーパッド及び変位部材を重ねた厚さを有しており、薄型化には限界がある。
【0010】
さらに、このスイッチ装置においては、キーパッドの厚さや材料によっては、エレクトロルミネッセンスシートからの照明光が十分に透過しないという問題がある。また、このスイッチ装置においては、キーパッドの下端部には、ドーム状の変位部材を押圧するための突起(プランジャ部)が設けられており、この突起(プランジャ部)は、エレクトロルミネッセンスシートに設けられた透孔に挿通されてドーム状の変位部材上に達している。そのため、ドーム状の変位部材の直上部分には、エレクトロルミネッセンスシートからの照明光が到達せず、この部分は照明されないという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、構成部品の点数が少なく、組立工程も少なくなされ、製造が容易化され、製造コストの低廉化が可能であるとともに、薄型化が可能であって、さらに、押圧操作部がエレクトロルミネッセンスシートからの照明光によって十分に照明されるようになされたエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成のいずれか一を有するものである。
【0013】
〔構成1〕
本発明に係るエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置は、可撓性を有するエレクトロルミネッセンスシートと、静電容量の変化量を検知するスイッチング機能を有しエレクトロルミネッセンスシート上に積層された可撓性を有する透明電極シートと、エレクトロルミネッセンスシート及び透明電極シートに接続され透明電極シートにおける静電容量の検知回路及びエレクトロルミネッセンスシートの駆動回路が実装された基板とを備えたことを特徴とするものである。
【0014】
〔構成2〕
本発明に係るエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置は、構成1を有するエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置において、基板は、フレキシブル基板であって、エレクトロルミネッセンスシート及び透明電極シートの背面側に折り返されていることを特徴とするものである。
【0015】
〔構成3〕
本発明に係るエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置は、構成2を有するエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置において、エレクトロルミネッセンスシート、透明電極シート及び基板は、湾曲可能であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置においては、構成1を有することにより、構成部品の点数が少なくなっており、組立工程も少なく、製造が容易化されており、製造コストの低廉化も可能である。また、このエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置においては、透明電極シートとエレクトロルミネッセンスシートとが積層された構造であるため、薄型化が可能である。こらに、このエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置においては、透明電極シートの透光性が高いため、エレクトロルミネッセンスシートからの照明光の明るさが維持され、また、操作部全体を照明することが可能である。
【0017】
また、本発明に係るエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置においては、構成2を有することにより、基板は、エレクトロルミネッセンスシート及び透明電極シートの背面側に折り返されているので、一層の小型化が可能である。
【0018】
さらに、本発明に係るエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置においては、構成3を有することにより、エレクトロルミネッセンスシート、透明電極シート及び基板が湾曲可能であるので、例えば、曲面状の配置部に沿わせて配置することが可能となる。
【0019】
すなわち、本発明は、構成部品の点数が少なく、組立工程も少なくなされ、製造が容易化され、製造コストの低廉化が可能であるとともに、薄型化が可能であって、さらに、押圧操作部がエレクトロルミネッセンスシートからの照明光によって十分に照明されるようになされたエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明に係るエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置の第1の実施の形態における構成を示す斜視図である。
【0022】
図2は、本発明に係るエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置の第1の実施の形態における構成を示す分解図である。
【0023】
このエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置は、図1及び図2に示すように、可撓性を有するエレクトロルミネッセンスシート1と、このエレクトロルミネッセンスシート1上に積層された可撓性を有する透明電極シート2と、これらエレクトロルミネッセンスシート1及び透明電極シート2に接続された基板3とを備えて構成されている。
【0024】
エレクトロルミネッセンスシート1は、可撓性のある材料、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート:poly ethylene terephthalate)やPEN(ポリエチレンナフタレート:poly ethylene naphthalate)等を用いて構成されている。この実施の形態において使用しているエレクトロルミネッセンスシート1は、交流の駆動電圧を用いるいわゆる薄膜AC型エレクトロルミネッセンス素子である。薄膜AC型エレクトロルミネッセンス素子は、長時間の使用に耐え、電子機器の薄型化が可能となる点で、分散型エレクトロルミネッセンス素子や、直流の駆動電圧を用いるAC型エレクトロルミネッセンス素子よりも電子機器に使用するに好適である。
【0025】
このエレクトロルミネッセンスシート1は、SnO等の透明電極を蒸着したPETやPEN、または、ポリエステル(polyester)等の薄膜上に発光層を塗布し、その発光層の上に発光層の絶縁破壊防止のための誘電体層を形成し、その上に背面電極を蒸着して構成されている。このエレクトロルミネッセンスシート1においては、透明電極側のみに光が放射されるようになっている。発光層は、適当な不純物を導入したZnS等の発光粉末を、誘電体バインダとして作用する合成樹脂、あるいは、低融点ガラスに分散させて形成されている。発光層の厚みは、数十μm程度である。このエレクトロルミネッセンスシート1は、基板3のパターンにおけるエレクトロルミネッセンス用電極部より電圧を印加され、10〜10V/cmの電界(50μm厚の素子で約200V)がかかると発光する。
【0026】
透明電極シート2は、静電容量の変化量を検知するスイッチング機能を有している。この透明電極シート2は、可撓性のある材料(PETやPEN等)を用いて、ITOやPEDOT等の透明導電性材料を塗布し、パターニングして、さらに、これを可撓性のある材料で挟み込んで構成されている。
【0027】
基板3には、エレクトロルミネッセンスシート1の駆動回路及び透明電極シート2における静電容量の検知回路が実装されている。これら駆動回路及び検知回路は、基板3のパターンを介して、エレクトロルミネッセンスシート1及び透明電極シート2に接続されている。この基板3は、硬質の基板でもよいが、フレキシブル基板とすることが好ましい。
【0028】
図3は、本発明に係るエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置における基板と透明電極シートとの間の接続を示す斜視図である。
【0029】
この基板3のパターンと透明電極シート2との間は、図3に示すように、異方導電性ペースト(ACP)、または、異方導電性フイルム(ACF)を介して接続されている。また、基板3のパターンとエレクトロルミネッセンスシート1との間は、ACP、または、ACF、あるいは、半田等によって接続されている。
【0030】
このエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置においては、エレクトロルミネッセンスシート1から発せられた光は、透明電極シート2を裏面側より照明する。そして、このエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置においては、透明電極シート2が表面側より手又は指にて接触(押圧)操作されることによって、この透明電極シート2における静電容量が変化し、この静電容量の変化が検知回路によって検知されることによって、スイッチ操作がなされる。
【0031】
そして、このエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置においては、エレクトロルミネッセンスシート1及び透明電極シート2が可撓性のある材質からなることにより、湾曲可能となっている。さらに、基板3としてフレキシブル基板を用いることにより、この基板3も含めて、湾曲可能となる。このように湾曲可能であることにより、例えば、曲面状の配置部に沿わせて配置することが可能となる。
【0032】
また、このエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置においては、総厚を、エレクトロルミネッセンスシート1の厚さ及び透明電極シート2の厚さを合わせたものとすることができ、薄型化が可能である。
【0033】
〔第2の実施の形態〕
図4は、本発明に係るエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置の第2の実施の形態における構成を示す斜視図である。
【0034】
このエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置は、基板3をフレキシブル基板とした場合においては、図4に示すように、この基板3は、エレクトロルミネッセンスシート1及び透明電極シート2の背面側に折り返すことができる。この基板3は、エレクトロルミネッセンスシート1及び透明電極シート2との接続部分以外の部分で、折り返すことが可能である。
【0035】
このように基板3を折り返すことにより、一層の小型化がなされたエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置を構成することができる。
【0036】
〔第3の実施の形態〕
図5は、本発明に係るエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置の第3の実施の形態における構成を示す分解斜視図である。
【0037】
図6は、本発明に係るエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置の第3の実施の形態における構成を示す斜視図である。
【0038】
そして、このエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置においては、図5及び図6に示すように、透明電極シート2をなすITOやPEDOTを所定形状にパターニングし、この透明電極シート2上に、例えば、文字や絵柄を印刷した透明シート4を配置するようにしてもよい。
【0039】
この場合には、透明シート4に印刷された文字や絵柄がエレクトロルミネッセンスシート1からの照明光によって照明されるとともに、これら文字や絵柄が透明電極シート2におけるパターニングに対応しているので、これら文字や絵柄によって手又は指にて接触(押圧)操作するべき箇所が指示される。
【0040】
〔第4の実施の形態〕
図7は、本発明に係るエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置の第4の実施の形態における構成を示す斜視図である。
【0041】
図8は、本発明に係るエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置の第4の実施の形態における構成を示す断面図である。
【0042】
また、このエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置においては、図7及び図8に示すように、エレクトロルミネッセンスシート1及び透明電極シート2を積層させた状態の周囲部(端部)を樹脂材料5によって封止し、または、熱溶着等によって封止し、さらに、部品実装部分を樹脂材料などでモールドすることにより、防水性及び防湿性に優れたエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係るエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置の第1の実施の形態における構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置の第1の実施の形態における構成を示す分解図である。
【図3】本発明に係るエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置における基板と透明電極シートとの間の接続を示す斜視図である。
【図4】本発明に係るエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置の第2の実施の形態における構成を示す斜視図である。
【図5】本発明に係るエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置の第3の実施の形態における構成を示す分解斜視図である。
【図6】本発明に係るエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置の第3の実施の形態における構成を示す斜視図である。
【図7】本発明に係るエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置の第4の実施の形態における構成を示す斜視図である。
【図8】本発明に係るエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置の第4の実施の形態における構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 エレクトロルミネッセンスシート
2 透明電極シート
3 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するエレクトロルミネッセンスシートと、
静電容量の変化量を検知するスイッチング機能を有し、前記エレクトロルミネッセンスシート上に積層された可撓性を有する透明電極シートと、
前記エレクトロルミネッセンスシート及び前記透明電極シートに接続され、前記透明電極シートにおける静電容量の検知回路及び前記エレクトロルミネッセンスシートの駆動回路が実装された基板と
を備えたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置。
【請求項2】
前記基板は、フレキシブル基板であって、前記エレクトロルミネッセンスシート及び前記透明電極シートの背面側に折り返されている
ことを特徴とする請求項1記載のエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置。
【請求項3】
前記エレクトロルミネッセンスシート、前記透明電極シート及び前記基板は、湾曲可能である
ことを特徴とする請求項2記載のエレクトロルミネッセンス照明付きスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−194093(P2007−194093A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11757(P2006−11757)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】