説明

エレクトロルミネッセンス素子

【課題】 耐湿性に優れ信頼性の高いエレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】 エレクトロルミネッセンス層の両面に電極を設け、一方の電極を覆うように基材を配設し、他方の電極を覆うように保護層を配設して積層構造体とし、上記の基材および保護層を、バリア層を備える積層体とすることにより、エレクトロルミネッセンス素子とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はエレクトロルミネッセンス素子に係り、特にディスプレー装置に使用される薄膜型のエレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0002】
【従来の技術】エレクトロルミネッセンス(EL)素子は、自己発色による視認性の高さ、液晶ディスプレーと異なり全固体ディスプレーであること、温度変化の影響をあまり受けない、視野角が大きい等の利点をもっており、近年、ディスプレー装置の画素、および、液晶ディスプレーの背面光源等としての実用化が進んでいる。
【0003】EL素子には、無機EL素子と有機EL素子とがある。無機EL素子は、例えば、硫化亜鉛にマンガンを添加した発光層の両面を強誘電体層で挟んでEL層を構成し、このEL層の一方の面に短冊状透明電極を、他方の面に短冊状電極を設け、短冊状透明電極側にガラス基板を配したような構造である。また、有機EL素子は、例えば、アルミニウムキノリン錯体等からなる発光層にジアミン等からなる正孔注入層を積層してEL層を構成し、このEL層の一方の面に短冊状透明電極を、他方の面に短冊状電極を設け、短冊状透明電極側にガラス基板を配したような構造である。有機EL素子としては、また、上記の発光層にぺリレン誘導体等からなる電子注入層を積層したEL層を有するもの、発光層を正孔注入層と電子注入層で挟んだ構造のEL層を有するものもある。
【0004】しかし、上述のような無機EL素子および有機EL素子は、いずれも湿気による耐久性の低下が問題となっている。例えば、外部からEL素子中に湿気が侵入すると、動作通電による温度上昇に伴い湿気が気化して膨張し、EL層と電極との剥離が生じる。このような剥離が発生すると、電圧がEL層に印加されなくなり、発光せずに黒点欠陥となる。
【0005】このような問題を解消するために、防湿シートと吸湿シートによりEL層と電極を覆うような構造のEL素子(特開平2−24992号)、ゾル−ゲル法により有機金属化合物から合成された高分子量化ゾルをバインダーとして使用することにより耐湿性を向上させたEL素子(特開平2−33888号)、電極上に吸水性樹脂フィルムと防湿性樹脂フィルムを積層した構造のEL素子(特開平2−260388号)、EL層と電極をフッ素系高分子薄膜によって被覆した構造のEL素子(特開平4−355096号)等が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述のような従来のEL素子は、湿気による問題を完全には排除しきれていない、あるいは、製造が煩雑であったり、製造コストが高い等の問題があった。
【0007】本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、耐湿性に優れ信頼性の高いエレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成するために、エレクトロルミネッセンス素子の第1の発明は、エレクトロルミネッセンス層と、該エレクトロルミネッセンス層の両面に設けられた電極と、一方の電極を覆うように配設された基材と、他方の電極を覆うように配設された保護層とからなる積層構造体を有し、前記基材および前記保護層はバリア層を備える積層体であるような構成とした。
【0009】エレクトロルミネッセンス素子の第2の発明は、エレクトロルミネッセンス層と、該エレクトロルミネッセンス層の両面に設けられた電極と、一方の電極を覆うように配設された基材と、他方の電極を覆うように配設された保護層とからなる積層構造体を有し、バリア層を備えたバリアフィルムにより前記積層構造体が被覆されているような構成とした。
【0010】また、第2の発明のエレクトロルミネッセンス素子において、前記基材および前記保護層の少なくとも一方がバリア層を備える積層フィルムであるような構成とした。
【0011】上記のような本発明では、バリア層が水蒸気の透過を確実に防止するので、エレクトロルミネッセンス素子の内部は湿気を排除した状態に保たれる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明について図面を参照しながら説明する。
【0013】第1の発明図1は、エレクトロルミネッセンス(EL)素子の第1の発明の一例を示す概略断面図である。図1において、EL素子1は、EL層3の両面に所定のパターンで設けられた電極4,5と、一方の電極4を覆うように配設された基材6と、他方の電極5を覆うように配設された保護層7とからなる積層構造体2を備えるものである。そして、基材6はバリア層6aを中間層として備える積層体であり、保護層7はバリア層7aを中間層として備える積層体である。
【0014】また、図2は、EL素子の第1の発明の他の例を示す概略断面図である。図2において、EL素子11は、EL層13の両面に所定のパターンで設けられた電極14,15と、一方の電極14を覆うように配設された基材16と、他方の電極15を覆うように配設された保護層17とからなる積層構造体12を備えるものである。そして、基材16は電極14との界面に位置するバリア層16aを備えた積層体であり、保護層17は電極15との界面に位置するバリア層17aを備えた積層体である。
【0015】上述のEL素子1,11は、いずれもEL層3,13における発光を基材6,16側から視認する例である。
【0016】以下に、上述のEL素子1,11の構成部材を説明する。
[EL層]上述のEL素子1,11を構成するEL層3,13は、発光層のみの単層でもよいが、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層等を、例えば、下記のように組み合わせた多層構成であってもよい。尚、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層等の各層は、単層構造、多層構造いずれであってもよい。
(アノード電極)/正孔注入層/発光層/(カソード電極)
(アノード電極)/発光層/電子注入層/(カソード電極)
(アノード電極)/正孔注入層/発光層/電子注入層/(カソード電極)
【0017】また、発光波長を調整したり、発光効率を向上させる等の目的で、上記の各層に適当な材料をドーピングすることもできる。
【0018】EL層3,13の各層に用いる発色材料、ドーピング材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子注入材料等は、下記に例示するような無機材料、有機材料いずれでもよい。また、EL層3,13の各層は、蒸着、スパッタリング等の真空成膜法、あるいは、上記材料を用いた塗布液を塗布、乾燥する方法により成膜することができ、湿気の排除と膜厚の均一性の点から、真空成膜法が好ましい。
【0019】(発色材料)
■色素系発色材料シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等が挙げられる。
【0020】■金属錯体系発色材料アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポリフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、中心金属にAl、Zn、Be等、または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体が挙げられる。
【0021】■高分子系発色材料ポリパラフェニレンビニレン錯体、ポリチオフェン錯体、ポリパラフェニレン錯体、ポリシラン錯体、ポリアセチレン錯体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレン錯体等が挙げられる。
【0022】(ドーピング材料)ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポリフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン等が挙げられる。
【0023】(正孔輸送材料)オキサジアゾール系、オキサゾール系、トリアゾール系、チアゾール系、トリフェニルメタン系、スチリル系、ピラゾリン系、ヒドラゾン系、芳香族アミン系、カルバゾール系、ポリビニルカルバゾール系、スチルベン系、エナミン系、アジン系、トリフェニルアミン系、ブタジエン系、多環芳香族化合物系、スチルベン二量体等が挙げられる。
【0024】また、π共役系高分子として、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリ(P−フェニレン)、ポリ(P−フェニレンスルフィド)、ポリ(P−フェニレンオキシド)、ポリ(1,6−ヘプタジエン)、ポリ(P−フェニレンビニレン)、ポリ(2,5−チエニレン)、ポリ(2,5−ピロール)、ポリ(m−フェニレンスルフィド)、ポリ(4,4′−ビフェニレン)等が挙げられる。
【0025】また、電荷移動高分子錯体として、ポリスチレン・AgC104、ポリビニルナフタレン・TCNE、ポリビニルナフタレン・P−CA、ポリビニルナフタレン・DDQ、ポリビニルメシチレン・TCNE、ポリナフタアセチレン・TCNE、ポリビニルアントラセン・Br2、ポリビニルアントラセン・I2、ポリビニルアントラセン・TNB、ポリジメチルアミノスチレン・CA、ポリビニルイミダゾール・CQ、ポリ−P−フェニレン・I2、ポリ−1−ビニルピリジン・I2、ポリ−4−ビニルピリジン・I2、ポリ−P−1−フェニレン・I2、ポリビニルピリジウム・TCNQ等が挙げられ、さらに、電荷移動低分子錯体として、TCNQ−TTF等が、高分子金属錯体としては、ポリ銅フタロシアニン等が挙げられる。
【0026】正孔輸送材料としては、イオン化ポテンシャルの小さい材料が好ましく、特に、ブタジエン系、エナミン系、ヒドラゾン系、トリフェニルアミン系が好ましい。
【0027】(正孔注入材料)フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。
【0028】(電子注入材料)アルミリチウム、フッ化リチウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0029】[電極]電極4,14はアノード電極またはカソード電極であり、これに対応して、電極5,15はカソード電極またはアノード電極となる。アノード電極としては、正孔を注入し易いように仕事関数の大きい導電性材料が好ましく、逆にカソード電極としては、電子を注入し易いように仕事関数の小さい導電性材料が好ましい。また、電極4,5および電極14,15は、複数の導電材料を組み合わせて形成してもよい。ただし、いずれの電極も、電気抵抗はできるだけ小さいものが好ましく、一般には、金属材料が用いられるが、有機物あるいは無機化合物を用いてもよい。具体的には、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化第2スズ、金、ポリアニリン、マグネシウム合金(MgAg等)、アルミニウム合金(AlLi、AlCa、AlMg等)、金属カルシウム等の、従来公知の材料を挙げることができる。
【0030】電極4,14はアノード電極、カソード電極いずれであってもよいが、EL層3,13からの発光の基材6,16側への透過率を良好とするために、ITO、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化第2スズ等の導電材料を用いて、蒸着、スパッタリング等の真空成膜法により形成した透明電極とする。尚、電極5,15は、蒸着、スパッタリング等の真空成膜法、めっき法、印刷法等、いずれの方法でも形成することができるが、湿気排除の点から、真空成膜法がこのましい。
【0031】電極4,5および電極14,15の形状は、EL素子1,11の使用目的等に応じて、短冊状のパターン電極、面電極等、適宜設定することができる。
【0032】また、電極4,5および電極14,15の厚みは、真空成膜法により形成した場合、10〜1000nm、塗布方法により形成した場合、0.05〜20μm程度の範囲で設定することができる。
【0033】[基材]上述のEL素子1を構成する基材6は、バリア層6aを中間層として備え、外側に基材層6b、内側に基材層6cを備える積層体である。また、上述のEL素子11を構成する基材16は、バリア層16aと基材層16bとの積層体であり、電極14との界面にバリア層16aが位置するものである。
【0034】(基材のバリア層)バリア層6a,16aは、室温40℃、相対湿度100%での水蒸気透過度が2.0g/m2・day・atm以下、室温25℃、相対湿度90%での酸素透過度が2.0cc/m2・day・atm以下の透明なバリア層であり、具体例として、下記の■〜■のバリア層を挙げることができる。
【0035】■ 無機(酸化)物薄膜と無機酸化物を含む被覆層との積層バリア層気相成長法により成膜された無機物あるいは無機酸化物からなる薄膜層と、下記の一般式(1)で表される珪素化合物の加水分解による重縮合物を少なくとも含む塗料を塗布し成膜された被覆層と、の積層薄膜をバリア層とすることができる。
R′SiR3 … (1)
(上記一般式(1)において、R′は加水分解に対して安定で、熱および/または電離放射線の照射により重合可能な基、RはOH基および/または加水分解を受けやすい基)
【0036】上記の無機物あるいは無機酸化物からなる膜層は、化学気相蒸着(CVD)法、物理気相蒸着(PVD)法により成膜することができる。
【0037】CVD法により成膜する場合に使用するモノマーガスとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等を挙げることができ、特に1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサンが好ましく用いられる。
【0038】CVD法により形成する薄膜は、珪素酸化物SiOxを主体とする連続薄膜であり、透明性の点からSiOx(X=1.3〜2.0)である薄膜が好ましい。また、この薄膜の厚みは400Å以下、好ましくは100〜250Å程度である。
【0039】一方、PVD法により薄膜を形成する場合、蒸着材料として酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉄等の金属酸化物を使用することができ、蒸着方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、イオンクラスタビーム等が挙げられる。また、蒸着材料の加熱方式として、抵抗加熱、高周波誘導加熱、エレクトロンビーム(EB)加熱等が挙げられる。さらに、上記の蒸着材料を直接加熱して蒸着膜を成膜する他に、加熱蒸発させた蒸着材料を気相あるいはプラズマ気相中で酸素ガスと反応させる、反応性蒸着法により薄膜を形成してもよい。
【0040】PVD法により形成する薄膜の厚みは、100〜1000Å、好ましくは、200〜500Å程度である。
【0041】被覆層について、上記の一般式(1)の基R′としては、例えば、下記のエポキシ原子団、炭素二重結合を含む基を挙げることができる。
・エポキシ原子団 : グリシジルオキシアルキル基、特にアルキル部に1〜4個の炭素原子団をもつ基であり、特に好ましい例として、γ−グリシジルオキシプロピルが挙げられる。
炭素二重結合を含む基 : 選択的に置換したアルケニル基およびアルキニル基であり、例えば、2〜20個、好ましくは2〜10個の炭素原子、および少なくとも1つの炭素二重結合をもつ直鎖または環状基で、特にビニル、1−および2−プロペニル、ブテニル、イソブテニル、スチレルおよびプロパルギルのような低級アルケニル基、およびアルキニル基、あるいは、メタクリルまたはアクリル基を含む原子団が特に好ましい。
【0042】また、一般式(1)における基Rは、例えば、水素、ハロゲン、アルコキシ、ヒドロキシル、アルキルカルボニルであり、より具体的には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、イソブトキシ、β−メトキシエトキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、モノメチルアミノ、モノエチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、N−エチルアニリノ、メチルカルボニル、エチルカルボニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等が挙げられる。一般式(1)の基Rは、最終生成物の中には存在せず、加水分解により失われ、その加水分解生成物も、直ちに、あるいは、後に適当な方法で除去しなけらばならないので、置換基をもたず、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノール等の低級アルコール類のような低分子量の加水分解生成物を生じるような基が好ましい。
【0043】一般式(1)の化合物は、全部またはその一部を予備縮合の形で、すなわち、一般式(1)の化合物の部分加水分解により生じた化合物を単独で、または、下記のような他の加水分解性化合物と混合して使用することができる。そのようなオリゴマーは、好ましくは反応媒体に可溶で、直鎖または環状の縮合度が約2〜100、特に2〜6である低分子量の部分縮合物(ポリオルガノシロキサン)が好ましい。
【0044】一般式(1)の化合物の例としては、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0045】また、一般式(1)の化合物は、下記の一般式(2)で表される化合物と混合し、これらの化合物を加水分解、好ましくは完全加水分解により、相当する酸化物の水和物に転換することができる。
MRn … (2)
(上記一般式(2)において、Mは珪素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ホウ素、スズから選ばれる金属元素、RはOH基および/または加水分解を受けやすい基、nは金属元素の価数)
【0046】一般式(2)における基Rは、一般式(1)における基Rと同一でも異なっていてもよい。また、一般式(2)で示される化合物は、一般式(1)の珪素化合物と、モル比で1:99〜99:1の割合で混合させることが可能である。
【0047】バリア層を構成する被覆層には、一般式(1)、(2)で示される化合物の他に、バインダー成分として、水素結合形成基を有する樹脂を含むことも可能である。水素結合形成基を有する樹脂の例としては、ヒドロキシル基を有するポリマーとその誘導体(ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、フェノール樹脂、メチロールメラミン等とその誘導体);カルボキシル基を有するポリマーとその誘導体(ポリ(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の重合性不飽和酸の単位を含む単独または共重合体と、これらのポリマーのエステル化物(酢酸ビニル等のビニルエステル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル等の単位を含む単独または共重合体)等);エーテル結合を有するポリマー(ポリアルキレンオキサイド、ポリオキシアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、珪素樹脂等);アミド結合を有するポリマー(>N(COR)−結合(式中、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を示す)を有するポリオキサゾリンやポリアルキレンイミンのN−アシル化物);>NC(O)−結合を有するポリビニルピロリドンとその誘導体;ウレタン結合を有するポリウレタン;尿素結合を有するポリマー等を挙げることができる。
【0048】上記のような水素結合形成基を有する樹脂は、一般式(1)、(2)で示される化合物100重量部に対して、1〜1000重量部、好ましくは5〜30重量部の範囲で使用することができる。
【0049】被覆層形成用の塗布液は、従来公知の方法により調製することができる。例えば、原料をエタノールやプロパノール等の適当な溶剤に溶解し、それを化学量論的に必要な量の水、好ましくは1部または数部過剰の水と接触させる。使用する溶剤は、上記の低級脂肪族アルコールの他に、アセトン、メチルイソブチルケトン等の低級ジアルキルケトン類、エステル類、好ましくはジエチルエーテルのような低級ジアルキルエーテル、THF、アミド類、エステル類、特に酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、および、それらの混合物が挙げられる。
【0050】加水分解は一般に−20〜130℃、好ましくは0〜30℃の温度、あるいは、使用する溶剤の沸点で行う。接触させる方法は、使用する原料の反応性に応じて適宜設定することができ、例えば、溶解した原料を水にゆっくり滴下する方法、溶解した原料に水を一度に、または数回に分けて加える方法等がある。また、水をそのまま加えるのではなく、水を含む無機系物質(モレキュラーシーブ等の水を含む吸着材等)あるいは有機系物質(80%濃度のエタノール等)を使用して水を反応混合物に導入することできる。さらに、水が形成される反応、例えば、酸とアルコールからエステルを形成する反応により水を加えることもできる。
【0051】重縮合は、触媒、例えば、プロトンまたはヒドロキシルイオンを放出する化合物、または、アミン類を加えて行うことができる。触媒濃度は、1リットル当たり3モル以下が好ましい。原料化合物の全量が加水分解(重縮合)開示時に存在する必要はなく、原料化合物の一部だけを最初に水と接触させ、その後、残りの原料化合物を加えてもよい。
【0052】反応に要する時間が原料化合物、使用する触媒、反応温度等に応じて適宜設定することができる。また、反応時の圧力は、通常、大気圧とするが、加圧あるいは減圧下としてもよい。
【0053】尚、塗布液に市販の光重合開始剤を添加することにより、電離放射線により硬化可能な塗布液とすることができる。また、塗布液に熱反応開始剤(例えば、過酸化ジベンゾイル、過安息香酸tert−ブチル、アゾビスイソブチロニトリル等)を添加することにより、熱硬化可能な塗布液とすることができる。さらに、塗布液にイオン重合反応を開始する開始剤を添加することもできる。このような反応開始剤を添加する場合、添加量は0.5〜2重量%程度が好ましい。
【0054】バリア層を構成する被覆層の形成は、上述のように調製した塗布液をディップコート、フローコート、カーテンコート、スピンコート、スプレイコート、バーコート等により塗布し乾燥、硬化することにより行うことができる。この被覆層の厚みは0.01〜1.0μm程度とすることが好ましい。
【0055】■ CVD法により形成した薄膜からなるバリア層少なくとも有機珪素化合物の蒸気と酸素とを含有するガスを用いてプラズマCVD法により形成した薄膜であり、珪素酸化物SiOx(x=1〜2)を主体とし、炭素、水素、珪素および酸素のなかの1種以上の元素から成る化合物を少なくとも1種含有したものである。
【0056】原料の有機珪素化合物としては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等を挙げることができ、特に1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサンが好ましく用いられる。
【0057】珪素酸化物SiOxの厚みは、10〜3000Å、好ましくは60〜400Åであり、透明性の点から、珪素酸化物SiOx(x=1.3〜2)であることが好ましい。
【0058】また、バリア層中に珪素酸化物SiOxとともに存在する化合物としては、例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、または、炭素単体がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラーレン状になっている場合、さらに原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を含む場合がある。具体的には、CH3部位をもつハイドロカーボン、SiH3シリル、SiH2シリレン等のハイドロシリカ、SiH2OHシラノール等の水酸基誘導体等を挙げることができる。上記以外でも、蒸着過程の条件を変化させることにより、バリア層に含有される化合物の種類、量等を変化させることができる。これらの化合物のバリア層中における含有率は、0.1〜50重量%、好ましくは5〜20重量%程度である。
【0059】■ 酸化珪素薄膜と無機・有機ハイブリット膜との積層バリア層酸化珪素SiOx(x=1〜2)を蒸着源とし、酸化珪素の蒸発ガスとともに必要ならば酸素ガスを同時に供給し、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、クラスターイオンビーム法等のPVD法、あるいは、プラズマCVD法、熱CVD法、光CVD法等を利用して、厚み50〜3000Å程度の酸化珪素薄膜を形成する。この酸化珪素薄膜上に、ゾルゲル成膜による無機・有機ハイブリット膜を形成してバリア層とする。無機・有機ハイブリット膜は、有機珪素化合物の加水分解反応で得られる珪素―酸素―珪素の結合からなる金属酸化物重合体を部分的に有機修飾した有機・無機複合体を使用した薄膜である。
【0060】上記の無機・有機ハイブリット膜の形成は以下のように行うことができる。まず、一般式、M(OR)n(ただし、式中、MはSi、Al、Sr、Ba、Pb、Ti、Zr、La、Na等の金属元素、Rはメチル、エチル、プロピル、ブチル等の炭素数が1〜8個のアルキル基を示す)で示される金属アルコキシドの1種または2種以上を使用し、これを水、アルコールの共存下で加水分解反応および縮重合反応を起こし、あるいは、この反応の過程、または、反応終了後に、有機物や触媒を添加し、高分子量化してゾル状のコート液を調製する。このコート液をグラビアコート、ロールコート、リバースコート、ナイフコート等の方法により酸化珪素薄膜上にコートし、70〜200℃程度の温度範囲で加熱すると、非結晶性のセラミックス質の透明な無機・有機ハイブリット膜が得られる。この無機・有機ハイブリット膜の厚みは、1000Å〜50μm程度とする。
【0061】上記のゾルゲル成膜において、反応系に添加する有機物としては、例えば、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、アミド、アミン、イソシアネート等の化学反応性に富む官能基を有する低分子物ないし高分子物を使用することができる。また、触媒としては、有機酸、有機塩基、無機酸、無機塩基、金属酸化物等を使用することができる。上記のゾルゲル成膜により形成された無機・有機ハイブリット膜は、酸化珪素薄膜とともに極めて良好なバリア性を発現する。
【0062】(基材の基材層)基材6を構成する基材層6b,6c、および、基材16を構成する基材層16bは、光透過性を有するガラス材料、樹脂材料、これらの複合材料等により形成することができ、基材層に可撓性を有する樹脂フィルムを用いることにより、積層フィルムからなる基材が得られる。また、各基材層6b,6c、16bは単層構造であってもよく、2種以上の材料からなる多層構造であってもよい。このような基材層6b,6c、16bの厚みは、基材6や基材16に要求される機械的強度や加工適性等を考慮して、5〜25μmの範囲内で適宜設定することができる。
【0063】[保護層]上述のEL素子1を構成する保護層7は、バリア層7aを中間層として備え、外側に基材層7b、内側に基材層7cを備える積層体である。また、上述のEL素子11を構成する保護層17は、バリア層17aと基材層17bとの積層体であり、電極15との界面にバリア層17aが位置するものである。
【0064】(保護層のバリア層)バリア層7a,17aは、室温40℃、相対湿度100%での水蒸気透過度が2.0g/m2・day・atm以下、室温25℃、相対湿度90%での酸素透過度が2.0cc/m2・day・atm以下のバリア層であり、上述のバリア層6a,16aと同様のバリア層とすることができる。また、EL素子1,11の例は、いずれも、EL層3,13における発光を基材6,16側から視認する例であり、バリア層7a,17aに透明性は要求されない。
【0065】(保護層の基材層)保護層7を構成する基材層7b,7c、および、保護層17を構成する基材層17bは、ガラス材料、樹脂材料、これらの複合材料等により形成することができ、基材層に可撓性を有する樹脂フィルムを用いることにより、積層フィルムからなる保護層とすることができる。また、各基材層7b,7c、17bは単層構造であってもよく、2種以上の材料からなる多層構造であってもよく、特に透明性は要求されない。このような基材層7b,7c、17bの厚みは、保護層7や保護層17に要求される機械的強度や加工適性等を考慮して、5〜25μmの範囲内で適宜設定することができる。
【0066】尚、上述のようなEL素子1において、基材6をEL素子11の基材16と同様の構成としてもよく、また、保護層7をEL素子11の保護層17と同様の構成としてもよい。
【0067】第2の発明図3は、エレクトロルミネッセンス(EL)素子の第2の発明の一例を示す概略断面図である。図3において、EL素子21は、EL層23の両面に所定のパターンで設けられた電極24,25と、一方の電極24を覆うように配設された基材26と、他方の電極25を覆うように配設された保護層27とからなる積層構造体22を備え、この積層構造体22はバリアフィルム28,29により被覆されている。バリアフィルム28,29は、それぞれバリア層28a,29aを中間層として備える積層フィルムであり、その周辺部において相互に固着されている。上述のEL素子21は、EL層23における発光を基材26側から視認する例である。
【0068】以下に、上述のEL素子21の構成部材を説明する。
[EL層]EL素子21を構成するEL層23は、上述のEL素子1,11を構成するEL層3,13と同様とすることができ、ここでの説明は省略する。
【0069】[電極]EL素子21を構成する電極24はアノード電極またはカソード電極であり、これに対応して、電極25はカソード電極またはアノード電極となる。電極24はEL層23からの発光を基材26側へ透過しやすくするために、透明電極とする。このような電極24は、上述のEL素子1を構成する電極4、あるいは、EL素子11を構成する電極14と同様とすることができ、また、電極25は、上述のEL素子1を構成する電極5、あるいは、EL素子11を構成する電極15と同様とすることができ、ここでの説明は省略する。
【0070】[基材]基材26は、光透過性を有するガラス材料、樹脂材料、これらの複合材料等により形成することができ、単層構造であってもよく、2種以上の材料からなる多層構造であってもよい。このような基材26の厚みは、要求される機械的強度や加工適性等を考慮して、5〜25μmの範囲内で適宜設定することができる。
【0071】[保護層]保護層27は、ガラス材料、樹脂材料、これらの複合材料等により形成することができ、単層構造であってもよく、2種以上の材料からなる多層構造であってもよい。保護層27は、特に透明性は要求されず、その厚みは、保護層27に要求される機械的強度や加工適性等を考慮して、5〜25μmの範囲内で適宜設定することができる。
【0072】[バリアフィルム]上述のEL素子21を構成するバリアフィルム28は、バリア層28aを中間層として備え、外側に基材フィルム28b、内側に基材フィルム28cを備える積層フィルムである。また、バリアフィルム29は、バリア層29aを中間層として備え、外側に基材フィルム29b、内側に基材フィルム29cを備える積層フィルムである。
【0073】(バリアフィルムのバリア層)バリア層28a,29aは、室温40℃、相対湿度100%での水蒸気透過度が2.0g/m2・day・atm以下、室温25℃、相対湿度90%での酸素透過度が2.0cc/m2・day・atm以下のバリア層であり、上述のEL素子1,11を構成するバリア層6a,16aと同様のバリア層とすることができる。尚、EL素子21の例は、EL層23における発光を基材26側から視認する例であり、バリア層29aに透明性は要求されない。
【0074】(バリアフィルムの基材フィルム)バリアフィルム28を構成する基材フィルム28b,28cは、光透過性を有するフィルムである。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、アセタール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の延伸(一軸ないし二軸)または未延伸の可撓性樹脂フィルムを用いることができる。基材フィルム28b,28cの厚みは、5〜25μmの範囲内で適宜設定することができる。
【0075】バリアフィルム29を構成する基材フィルム29b,29cは、上述の基材フィルム28b,28cと同様に可撓性樹脂フィルムとすることができるが、光透過性は必要ではない。このような基材フィルム29b,29cの厚みは、5〜25μmの範囲内で適宜設定することができる。
【0076】上記の基材フィルム28cと基材フィルム29cとして、熱融着性を有する樹脂フィルムを使用することにより、バリアフィルム28,29による積層構造体22の被覆時のバリアフィルム周辺部の固着を熱溶融により行うことができる。
【0077】尚、上述のEL素子21において、バリアフィルム28をバリア層28aと、その外側に位置する基材フィルム28bの2層構成とし、バリアフィルム29をバリア層29aと、その外側に位置する基材フィルム29bの2層構成としてもよい。この場合、バリアフィルム28,29による積層構造体22の被覆時のバリアフィルム周辺部の固着は、接着剤を用いて行なわれる。
【0078】また、基材26を、EL素子1を構成する基材6またはEL素子11を構成する基材16と同様のものとしてもよい。さらに、保護層27を、EL素子1を構成する保護層6またはEL素子11を構成する保護層16と同様のものとしてもよい。
【0079】
【実施例】次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
【0080】[実施例1]
基材Aの作製まず、基材層として厚み25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人(株)製NSC、片面コロナ処理品)を準備し、このPETフィルムのコロナ処理面に、CVD法により下記の条件で厚み120Åの薄膜層(SiOx(X=1.6))を形成した。これを基材Aとした。尚、薄膜層の厚みは、蛍光X線分析装置((株)理学電気製RIX2000)を用いて、ファンダメンタルパラメータ法により測定した。
(CVD成膜条件)
・反応ガス混合比(単位=slm):ヘキサメチルジシロキサン/酸素ガス/ヘリウム=1/10/10・真空チャンバー内の真空度:5.5×10-6mbar・蒸着チャンバー内の真空度:6.5×10-2mbar・冷却電極ドラム供給電力:18kW・PETフィルム搬送速度:80m/分
【0081】基材Bの作製メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン113g、および、メチルトリメトキシシラン41gを室温で容器に入れて混合した。この混合物を攪拌しながら、アルミニウムsec−ブチラート62gをゆっくり滴下した。滴下が完了した後、さらに5分間攪拌し、その後、この混合物を15℃に冷却した。次に、上記混合物の完全加水分解に必要な化学量論的な量の1/16の量の水を、混合物を攪拌しながら徐々に滴下して加えた。この混合物をさらに5分間攪拌し、その後、8℃に冷却した。さらに、上記の完全加水分解に必要な化学量論的な量の2/16の量の水を、混合物を攪拌しながら徐々に滴下して加え、この混合物を15分間攪拌した。次いで、上記の完全加水分解に必要な化学量論的な量に相当する水を、混合物を攪拌しながら徐々に滴下(添加した水の総量は、完全加水分解に必要な化学量論的な量よりも3/16過剰な量である)し、その後、2時間攪拌して被覆層用塗布液1を得た。
【0082】次いで、上記の基材Aの薄膜層上に、上記の被覆層用塗布液1をバーコート法により塗布し乾燥(120℃、1時間)して、厚み約2μmの被覆層を形成した。これにより、薄膜層と被覆層との積層薄膜からなるバリア層を形成して、基材Bとした。
【0083】基材Cの作製まず、エチルシリケート25g、エタノール25g、2N塩酸1.86gおよび水1.5gを混合し、80℃で1時間攪拌した。この混合物において、エチルシリケートと水のモル比は1:1.51である。次いで、エポキシシラン(東レダウコーニング(株)製SH604)2.5gを加えて攪拌した。この混合物に、水素結合形成基を有する樹脂としてポリビニルアセタール(クラレ(株)製(重合度2000))を10重量%含む水溶液17.4g加え、1時間攪拌して透明となった時点で、N,N−ジメチルベンジルアミンを35重量%含むエタノール溶液0.1gを加えて攪拌して被覆層用塗布液2を得た。
【0084】次いで、上記の基材Aの薄膜層上に、上記の被覆層用塗布液2をバーコート法により塗布し乾燥(120℃、1時間)して、厚み約2μmの被覆層を形成した。これにより、薄膜層と被覆層との積層薄膜からなるバリア層を形成して、基材Cとした。
【0085】基材Dの作製上記の基材Bのバリア層上に、基材層として、厚み12.5μmのPETフィルム(帝人(株)製NSC)をドライラミネーションによりラミネートして、基材Dを作製した。
【0086】基材Eの作製上記の基材Cのバリア層上に、基材層として、厚み12.5μmのPETフィルム(帝人(株)製NSC)をドライラミネーションによりラミネートして、基材Eを作製した。
【0087】基材Fの作製まず、基材層として厚み25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人(株)製NSC、片面コロナ処理品)を準備し、このPETフィルムのコロナ処理面に、プラズマCVD法により下記の条件で厚み800Åの薄膜層(SiOx(X=1.6))を形成し、基材Fを得た。
(プラズマCVD成膜条件)
・反応ガス混合比(単位=slm):ヘキサメチルジシロキサン/酸素ガス/ヘリウム=1/3/3・真空チャンバー内の真空度:5.5×10-6mbar・蒸着チャンバー内の真空度:6.5×10-2mbar・電極−塗布ドラム間供給電力:18kW・PETフィルム搬送速度:110m/分
【0088】基材Gの作製上記の基材Fのバリア層上に、基材層として、厚み12.5μmのPETフィルム(帝人(株)製NSC)をドライラミネーションによりラミネートして、基材Gを作製した。
【0089】さらに、基材として、厚み25μmのPETフィルム(帝人(株)製NSC)のみからなるPET基材を準備した。
【0090】これらの基材A〜G、PET基材について、下記の方法により酸素透過度および水蒸気透過度を測定し、結果を下記の表1に示した。
(酸素透過度)酸素ガス透過度測定装置(モダンコントロール社製MOCON OX−TRAN2/20)を用いて、温度25℃、湿度90%RHで測定した。
(水蒸気透過度)水蒸気透過度測定装置(モダンコントロール社製MOCON PERMATRAN)を用いて、温度40℃、湿度100%RHで測定した。
【0091】
【表1】


電極とEL層の形成上述のように作製した基材A〜G、および、PET基材を用い、これらの基材上(基材A〜C、Fにおいてはバリア層上)に、エレクトロンビーム蒸着法によって、面積抵抗20Ω/cm2、膜厚500nmの酸化インジウムスズ(ITO)電極を形成し、その後、UV照射洗浄機で洗浄した。
【0092】次いで、このように形成したITO電極(アノード電極)上に、下記の構造式(I)で示される正孔輸送材料(N,N′−ジフェニル[1,1′−ビフェニル]−4,4′−ジアミン)を1×10-6torrの真空度で5nm/秒の速度で蒸着して、厚み60nmの正孔輸送層を形成した。
【0093】
【化1】


次に、この正孔輸送層上に、下記の構造式(II)で示されるトリス(8キノリノレート)アルミニウムを1×10-6torrの真空度で5nm/秒の速度で蒸着して、厚み60nmの発光層を形成した。
【0094】
【化2】


次いで、上記のように形成した発光層上に、MgAg(Mg:Ag=10:1)を1×10-6torrの真空度で5nm/秒の速度で蒸着して、面積0.16cm2、厚み100nmのカソード電極を形成した。
【0095】保護層用のフィルムの作製基材A〜Gと同様にして、保護層用のフィルムA〜Gを作製した。さらに、厚み25μmのPETフィルム(帝人(株)製NSC)からなる保護層用PETフィルムを準備した。
【0096】EL素子の作製基材Aを用いて形成したアノード電極/EL層/カソード電極からなる積層上に、保護層用フィルムAを重ね、120℃で熱圧着することにより、図2に示されるような層構造を有するEL素子(試料1)を作製した。
【0097】同様に、基材B,C,Fを用いて形成したアノード電極/EL層/カソード電極からなる積層上に、対応する保護層用フィルムB,C,Fを重ね、120℃で熱圧着することにより、図2に示されるような層構造を有するEL素子(試料2,3,6)を作製した。
【0098】また、基材Dを用いて形成したアノード電極/EL層/カソード電極からなる積層上に、バリア層がカソード電極の当接するように保護層用フィルムDを重ね、120℃で熱圧着することにより、図1に示されるような層構造を有するEL素子(試料4)を作製した。
【0099】同様に、基材E,Gを用いて形成したアノード電極/EL層/カソード電極からなる積層上に、対応する保護層用フィルムE,Gを重ね、120℃で熱圧着することにより、図1に示されるような層構造を有するEL素子(試料5,7)を作製した。
【0100】さらに、PET基材を用いて形成したアノード電極/EL層/カソード電極からなる積層上に、保護層用PETフィルムを重ね、120℃で熱圧着することによりEL素子(試料8)を作製した。
【0101】EL素子の発光特性の評価図4に示される発光測定装置を用いて、上述の各EL素子(試料1〜3)の発光特性を評価した。すなわち、発光測定装置は、パソコン51にソースメータ52(ケースレー(株)製2400)と輝度計53(トプコン(株)製BM−8)を接続した構成とした。そして、EL素子のアノード電極をソースメータ52の正極に、カソード電極をソースメータ52の負極に接続し、輝度計53により下記の方法で発光輝度を測定し、結果を下記の表2に示した。
(発光輝度測定方法)EL素子の両極間に直流電圧を印加して、輝度計で測定した初期の発光輝度を200cd/m2とし、20℃、Rh80%の雰囲気下で連続的に発光させ、35時間経過後、70時間経過後における発光輝度を測定した。
【0102】
【表2】


表2に示されるように、試料2〜7は、高湿度雰囲気下においても安定した発光特性を維持し、信頼性が極めて高いことが確認された。また、試料1は基材および保護層のバリア層の特性がやや低く、耐湿性が試料2〜7に比べてやや劣るものであった。これに対して、試料8は耐湿性が大幅に劣るものであった。
【0103】[実施例2]
電極とEL層の形成基材として、厚み25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人(株)製NSC、片面コロナ処理品)からなる基材を用い、この基材上に、実施例1と同様にして、ITO電極(アノード電極)、正孔輸送層、発光層、MgAg電極(カソード電極)を積層した。
【0104】積層構造体の作製次に、厚み25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人(株)製NSC、片面コロナ処理品)からなる保護層用フィルムを準備し、上記のように形成したアノード電極/EL層/カソード電極からなる積層上に、保護層用フィルムを重ね、120℃で熱圧着することにより、図3に示されるような積層構造体を作製した。
【0105】バリアフィルムの作製まず、基材フィルムとして厚み25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人(株)製NSC)の一方の面に、CVD法により下記の条件で厚み120Åの薄膜層(SiOx(X=1.6))を形成した。
(CVD成膜条件)
・反応ガス混合比(単位=slm):ヘキサメチルジシロキサン/酸素ガス/ヘリウム=1/10/10・真空チャンバー内の真空度:5.5×10-6mbar・蒸着チャンバー内の真空度:6.5×10-2mbar・冷却電極ドラム供給電力:18kW・PETフィルム搬送速度:80m/分
【0106】次いで、上記の薄膜層上に、実施例1において調製した被覆層用塗布液1を塗布し乾燥(120℃、1時間)して、厚み約2μmの被覆層を形成した。これにより、薄膜層と被覆層との積層薄膜からなるバリア層を形成した。
【0107】次に、上記のバリア層上に、基材層として、厚み12.5μmのPETフィルム(帝人(株)製NSC)をドライラミネーションによりラミネートして、バリアフィルムAを作製した。
【0108】EL素子の作製上述の積層構造体を1組のバリアフィルムAによって被覆し、バリアフィルムAの周囲を120℃にて熱融着することにより、図3に示されるようなEL素子(試料I)を作製した。また、バリアフィルムとして、厚み25μmのPET(帝人(株)製NSC)を用い、上記と同様にしてEL素子(試料II)を作製した。
【0109】EL素子の発光特性の評価実施例1と同様にして、上述の各EL素子(試料I、II)の発光特性を評価し、結果を下記の表3に示した。
【0110】
【表3】


表3に示されるように、本発明のEL素子である試料Iは、高湿度雰囲気下においても安定した発光特性を維持し、信頼性が極めて高いことが確認された。
【0111】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によればバリア層によって外部から水蒸気がエレクトロルミネッセンス素子内に侵入することが防止され、これによりエレクトロルミネッセンス素子内部での湿気の気化、膨張による欠陥の発生が阻止され、耐湿性に優れ信頼性の高いエレクトロルミネッセンス素子となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエレクトロルミネッセンス素子の一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明のエレクトロルミネッセンス素子の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図3】本発明のエレクトロルミネッセンス素子の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図4】実施例において用いる発光測定装置の構成図である。
【符号の説明】
1,11,21…エレクトロルミネッセンス(EL)素子
2,12,22…積層構造体
3,13,23…エレクトロルミネッセンス(EL)層
4,14,24…電極
5,15,25…電極
6,16,26…基材
6a,16a…バリア層
7,17,27…保護層
7a,17a…バリア層
28,29…バリアフィルム
28a,29a…バリア層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 エレクトロルミネッセンス層と、該エレクトロルミネッセンス層の両面に設けられた電極と、一方の電極を覆うように配設された基材と、他方の電極を覆うように配設された保護層とからなる積層構造体を有し、前記基材および前記保護層はバリア層を備える積層体であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】 エレクトロルミネッセンス層と、該エレクトロルミネッセンス層の両面に設けられた電極と、一方の電極を覆うように配設された基材と、他方の電極を覆うように配設された保護層とからなる積層構造体を有し、バリア層を備えたバリアフィルムにより前記積層構造体が被覆されていることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】 前記基材および前記保護層の少なくとも一方はバリア層を備える積層フィルムであることを特徴とする請求項2に記載のエレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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