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エレクトロルミネッセンス素子
説明

エレクトロルミネッセンス素子

【課題】電界発光素子において、高発光効率、高耐久性および高い取り出し効率を得る。
【解決手段】電極11、17間に、複数の層12〜16が積層されてなり、複数の層12〜16の間に、電極11、17間への電界の印加により発光する発光領域14を備えた、エレクトロルミネッセンス素子1において、複数の層12が、素子1内に発光領域14からの発光光による定在波19の電界強度が最大となる領域19aが、発光領域14と略一致するような共鳴条件を満たす層厚と屈折率とを有するものとし、発光光によるプラズモン共鳴を表面に生じせしめる金属部材20を発光領域14の近傍に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界の印加により発光を生じる電界発光素子(エレクトロルミネッセンス素子)に関し、特に、発光の高効率化を図ったエレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子やLED(発光ダイオード)、半導体レーザなどのエレクトロルミネッセンス素子(EL素子)は、基板上に電極層や発光層等が積層された構成をしており、一般に、発光層において発光した光を、透明電極を介して取り出している。その際、各層の屈折率の影響により、光取り出し側の層界面において臨界角以上で入射された光は、全反射して素子内に閉じ込められてしまい、外部に取り出すことができない。そのため、発光した光を高効率に取り出すことが難しく、ITO等の現在よく用いられている透明電極の屈折率の場合、その取り出し効率は20%程度であると言われている。
【0003】
また、例えば有機ELにおいては、本質的に有機材料は、励起状態に長時間存在することで、化学結合が壊れ、発光性能が、経時的に低下していくことが知られており、有機物を発光素子に用いる際の大きな課題である。発光効率についても、蛍光を利用する限り、上準位の生成効率が理論的に25%に制限され、これ以上の発光効率は不可能である。燐光を用い、項間交差を促進することで、原理的には、上準位をすべて3重項で生成できるため、理論限界は75%から100%に上昇しうる。しかし、3重項は、上準位寿命が許容遷移である蛍光に比べて長く、励起子同士の衝突確率が大きいために、発光光率が低下するとともに、素子の劣化が早く耐久性が低いという問題がある。
【0004】
このように、EL素子においては、取り出し効率、発光効率が低いことから、発光された光の利用効率が非常に低いことが問題となっており、利用効率の向上が課題となっている。
【0005】
かかる課題に対し、取り出し効率の向上、発光光率の向上(あるいは発光増強)をさせるための様々なアプローチが為されている。
【0006】
たとえば、取り出し光の利用効率を向上させるため、特許文献1には、電極の表面に凹凸を設け、発光スペクトル幅の狭い発光物質からなる発光層を備え、発光指向性を制御した有機EL素子が提案されている。
【0007】
また、非特許文献1、2および3には、発光光率を向上(発光増強)させる手法として、マイクロキャビティ効果を利用する方法、プラズモン増強効果を利用する方法が提案されている。
【0008】
マイクロキャビティ効果を利用する方法とは、有機EL素子の内部に、共振器を設けることで、発光の指向性の制御(狭窄化)を行うとともに、発光部に定在波の腹(定在波による電界が最大となる位置)をマッチさせることによる発光増強を図るものである。非特許文献1においては、有機EL素子の両端に銀、銅のミラーを配し、ミラーで素子を挟み込んだ構造を採用することにより、マイクロキャビティ効果を積極的に発現させる方法が提案されている。
【0009】
一方、プラズモン増強効果を利用する方法とは、有機発光素子の近傍(たとえば数10nm)に金属(望ましくは、島状構造)を配置することで、発光の増強を図るものである(例えば、非特許文献2、3参照。)。この発光の増強は、発光素子からの双極子放射が金属表面にプラズモン(あるいは局在プラズモン)を誘起し、エネルギーを吸収したのちに、再放射する新たな発光が加わることに伴うものである。従って、発光素子の持つ発光過程に新たなプラズモンによる発光遷移が付け加わった形となり、上準位寿命(励起寿命)を短縮する効果が発現できる。このように、プラズモン増強を利用することにより、発光効率の向上と共に、励起寿命の短縮化による耐久性の向上効果も期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006-313667号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Proc. SPIE (米国)vol.6038, 603824 (2005)
【非特許文献2】Journal of Modern Optics(米国) vol. 45, pp.661-699, 1998
【非特許文献3】Proc. SPIE (米国) Vol.7032, 703224(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のように、有機EL素子に対し、マイクロキャビティを適用されてきた。しかしながら、マイクロキャビティ効果による発光の増強は、実用レベルとしては不十分である。また、特許文献2において開示されている、プラズモン増強効果による発光の増強は、光励起型の発光素子(フォトルミネッセンス素子:PL素子)においては報告されているが、EL素子においては成功例が報告されていない。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高発光効率、高耐久性、高い取り出し効率を実現するEL素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のエレクトロルミネッセンス素子は、電極間に、複数の層が積層されてなり、該複数の層の間に、前記電極間への電界の印加により発光する発光領域を備えた、エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記複数の層が、該素子内に前記発光領域からの発光光による定在波の電界強度が最大となる領域が、前記発光領域と略一致するような共鳴条件を満たす層厚と屈折率とを有するものであり、
前記発光光によるプラズモン共鳴を表面に生じせしめる金属部材が前記発光領域の近傍に配置されたことを特徴とするものである。
【0015】
すなわち、本発明は、エレクトロルミネッセンス素子において、マイクロキャビティ効果と、プラズモン増強とを組み合わせ利用可能な構造としたことを特徴とするものである。
【0016】
ここで、エレクトロルミネッセンス素子は、電界印加により発光する素子の総称であり、有機EL素子、無機EL素子、発光ダイオード(LED)および半導体レーザ(LD)を含むものとする。
【0017】
有機EL素子である場合には、前記複数の層は、それぞれ有機層から形成された、少なくとも電子輸送層、発光層、正孔輸送層からなることが望ましい。LEDあるいはLDである場合には、前記複数の層は、それぞれ半導体層からなる、少なくともp型クラッド層、活性層、n型クラッド層からなることが望ましい。
【0018】
前記金属部材と前記発光領域との距離は、30nm以内であることが望ましい。
【0019】
前記金属部材は、前記複数の層の間に配置された金属薄膜であることが望ましい。金属薄膜としては、ベタ膜であってもよいし、粒状膜(発光光の波長よりも小さい凹凸構造を有する膜)であってもよいが、特には、粒径5nm以上の金属微粒子をランダムに、あるいは周期配列パターンに膜状に分散されてなるアイランド構造膜が特に望ましい。ここで、粒径は、微粒子の最大長をいうものとする。すなわち、微粒子が球状である場合にはその直径、ロッド状である場合には、その長径をいう。
【0020】
前記金属薄膜の材料としては、前記発光光によりプラズモン共鳴が生じる材料であればよく、Ag(銀)、Au(金)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、Pt(白金)などの金属、およびこれらの金属を主成分とする合金を用いることができる。なおここで、「主成分」は、含量80質量%以上の成分と定義する。
これらの材料のうち、AgまたはAuが、特に望ましい。
【0021】
また、前記金属薄膜の少なくとも一方の面に、該金属薄膜の仕事関数を、該金属薄膜に隣接する層の仕事関数に近づける極性を有する末端基を備えた表面修飾が施されていることが望ましい。金属薄膜の仕事関数が、該金属薄膜の両側の隣接層の仕事関数より小さいものである場合は(陰極側)、前記末端基は電子供与性基であり、該金属薄膜の両側の隣接層の仕事関数より大きいものである場合は(陽極側)、前記末端基は電子吸引性基となる。
【0022】
極性を有する末端基とは、電子供与性を有する電子供与基、あるいは電子吸引性を有する電子供与基をいい、電子供与基としては、メチル基等のアルキル基、アミノ基、ヒドロキシル基などが挙げられ、電子吸引基としては、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基などが挙げられる。
【0023】
また、前記金属部材は、少なくとも1つの金属微粒子コアと、該金属微粒子コアを覆う絶縁シェルとからなるコアシェル型微粒子であってもよく、コアシェル型微粒子は、発光領域近傍の層内に多数分散されていることが好ましい。ここで、コアシェル型微粒子は発光領域内に存在していてもよい。コアシェル型微粒子の金属微粒子コアの粒子径は、10nm以上1μm以下が好ましく、絶縁シェルの厚みは、30nm程度以下程度が好ましい。ここで、「粒子径」とは、微粒子の最大径の大きさとする。
【0024】
また、前記コアシェル型微粒子又は前記金属微粒子が、該微粒子の長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1より大きい細長い形状の微粒子である場合は、多数の該細長い形状の微粒子が、該微粒子の短径が前記電極面に対して略垂直方向に配向性を有して配置されていることが好ましい。
絶縁シェル内には複数の金属微粒子コアを備えていてもよい。
【0025】
前記金属微粒子コアは、Au、Ag,Al、Cu,Ptのいずれか、もしくはこれらを主成分とする合金からなることが好ましい。
前記絶縁シェルの材料としては、SiO、Al、MgO、ZrO、PbO,B、CaO、BaO等の絶縁体を好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のエレクトロルミネッセンス素子は、素子内にキャビティを形成し、キャビティ内に形成される発光光の定在波の腹の位置(電界強度が最大)に近いところに、発光領域を配置するとともに、金属部材を定在波の腹近傍に配置しているので、発光領域において、自然放出を増大させることができる。素子内に共振器を設けることで、発光の指向性を向上させることができ、発光領域に定在波の腹を略一致させることにより発光増強を図ることができ、この発光増強は励起寿命の短縮効果に繋がる。さらに、金属部材を上述のように配置したことにより、プラズモンによる発光遷移による、発光増強と上準位寿命(励起寿命)を短縮する効果を得ることができ、マイクロキャビティ効果とプラズモン増強による効果を相乗的に得ることがでる。これにより、発光の指向性、発光効率、励起寿命の短縮化による耐久性を飛躍的に向上させることができ、さらには取り出し効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるEL素子の構造を示す模式図
【図2】本発明の第2実施形態にかかるEL素子の構造を示す模式図
【図3】図2のEL素子の仕事関数調整膜を説明するための図
【図4】本発明の第3実施形態にかかるEL素子の構造を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0028】
図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0029】
<第1の実施形態のEL素子>
図1は、本発明の実施形態のエレクトロルミネッセンス素子1の構造を模式的に示す図である。本実施形態のEL素子は、各層が有機層から構成されてなる有機EL素子である。
【0030】
本実施形態の有機EL素子1は、基本的に陰極11、電子注入層12、電子輸送層13、発光層14、正孔輸送層15、正孔注入層16、陽極17という標準的なEL素子構造を有している。発光層14は、本例ではAlq3であり、陰極11、陽極17から注入された電子、正孔がこの領域で再結合することにより、発光する。さらに、陰極11および陽極17はいずれも金属からなり、発光光を反射する反射部に相当し、両端間に光共振器を構成する役割も担っている。ここでは、陰極11はAg(銀)、陽極17はCu(銅)から構成されており、この電極11、17間に定在波19を生じさせることにより、発光光の指向性の向上効果を生じさせることができる。さらに、発光層と定在波の腹19aを一致させることにより、発光層14において電界強度を最大とすることができ、発光効率を最大にできる。このようなマイクロキャビティ効果を奏するための共鳴条件は、下記式で与えられ、各層12〜16は下記式を満たす屈折率および厚みを有するものとなるように設計されている。なお、下記式において、λ0は発光光の波長、niは各層における屈折率、diは各層の厚み、φおよびφはそれぞれ、陰極11、陽極17での反射による位相差、mはキャビティ次数である。
【数1】

【0031】
さらに、本素子1には、発光領域(発光層14)の近傍に、発光光によりプラズモン共鳴を生じる金属部材としての金属薄膜20が配置されている。なお、金属薄膜20の厚みは10nm程度以下であれば、上記式にほとんど影響を与えない。金属薄膜20が反射材とならないためにも、厚みは薄い方が好ましい。また、金属薄膜20は、発光層14と接触あるいは、5nm未満の距離dで近接していると、発光層14から直接電荷移動が生じ、発光の減衰が生じてしまうため、発光層14とは5nm以上離間していることが望ましい。また、一方で、発光層14から距離が離れすぎると、発光光によるプラズモン共鳴が生じず、発光増強効果を得ることができないため、発光層14との距離dは30nm以下であることが望ましい。
【0032】
また金属薄膜20は、平坦な膜でもよいが、発光光の波長よりも小さい凹凸構造を有する膜、すなわち、表面が粒状の粒状膜、あるいは、粒径5nm以上の金属微粒子を膜状にランダムに、あるいは周期的な配列パターン状に分散させてなる、微粒子間に空隙が存在するアイランド(島状)構造膜が好適である。金属薄膜が平坦な膜である場合、発光光により金属薄膜表面に表面プラズモンが誘起されるが、放射モードへの再結合が生じにくく、非放射過程として、最終的には熱として消失してしまう割合が大きい。一方、金属薄膜がアイランド構造膜である場合、発光光により膜表面に誘起された表面プラズモンが、再度、放射モードに結合し、放射光を発する効率が高い。
【0033】
金属薄膜の材料としては、発光光によりプラズモン共鳴が生じるものであればよく、Ag(銀)、Au(金)、Cu(銅)、Al(アルミ)、およびこれらの金属のいずれかを主成分(80%以上)とする合金が適用可能である。なお、特に、発光光が可視域波長であれば、銀が望ましい。プラズマ周波数から、銀は可視域での表面プラズモン共鳴が起こせるためである。発光光が可視域以外の波長、たとえば赤外であれば、金が望ましい。
【0034】
図1のようなマイクロキャビティ型の有機EL素子において、電界強度が最大となる、定在波の腹(ピーク)から10%以内の位置に発光層14、該発光層14からおよそ20nm離間させた位置に、金属薄膜(ここでは、Agアイランド構造膜)20を配置する。このように、金属薄膜も、定在波の腹に近い位置、すなわち定在波による電界強度の大きい位置に配置することにより、プラズモン共鳴の効果をより、効率的に得ることができ、望ましい。このような配置構成により、発光には、マイクロキャビティ効果による光増強、指向性制御、耐久性向上に加え、プラズモン増強による、光増強、指向性制御、耐久性向上の効果が重畳される。この設計では、キャビティ次数m=1を採用している。
【0035】
マイクロキャビティ効果とプラズモン増強による効果が重畳されて、発光効率の向上、指向性の向上、さらいは耐久性向上の効果が、マイクロキャビティ効果、プラズモン増強による効果のいずれか一方のみである場合と比較して、効率で2-5%(動作条件による)、耐久性で1.2倍程度の向上を得ることができた。結果として、発光光の利用効率を従来と比較して格段に向上させることができる。
【0036】
上記実施形態においては、電極11、17を金属により構成し、電極間にキャビティを構成することにより素子1内部に定在波を形成させている。電極の発光光に対する反射率は定在波が形成されるに十分なものであればよい。なお、本実施形態においては、光を取り出す側の電極(ここではCu陽極17)の厚みを調整し、反射率が例えば30%程度となるようにしている。なお、銀側の反射率は90%以上の高反射率でよい。また、電極として透明電極を備えた場合には、電極の外側にさらに反射層を設けてもよい。反射層は、適切な反射率を有する金属、あるいは誘電体多層膜から構成することができる。
【0037】
上記実施形態においては、有機層から構成される有機EL素子の場合を示したが、本発明の構成は、広く有機以外の無機エレクトロルミネッセンス素子やLED(Light-emitting diode)、LDなどにおいても適用可能である。
【0038】
なお、上述のようなEL素子は、例えば、基板上に陰極側から順次積層されて、陽極側から光が取り出させるように構成される。金属薄膜以外の各層については、従来の有機EL素子の材料および積層方法により形成することができる。なお、金属薄膜(アイランド構造膜)は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法などを用いて形成することができる。
【0039】
<第2の実施形態のEL素子>
第2の実施形態のエレクトロルミネセンス素子2の構成を図2Aに模式的に示す。なお、図2Aには、各層のポテンシャルエネルギーを併せて示している。本実施形態のEL素子2は、図2Aに示すように、左側から、順に陽極31、正孔注入層32、正孔輸送層33、発光層34、電子輸送層35、陰極36を備え、電子輸送層35内に金属薄膜21が配されてなる。また、金属薄膜21の片面には仕事関数調整層40が設けられている。仕事関数調整層40は、金属薄膜21の仕事関数を、該金属薄膜21に隣接する層(ここでは、電子輸送層35)の仕事関数に近づける極性の末端基を備えた表面修飾層である。
【0040】
本実施形態の素子2も、電極31、36間をキャビティとして素子内に定在波が生じるよう構成されており、発光層34と定在波の腹を略一致させている。各層32〜35は、上述の共鳴条件を満たす屈折率および厚みを有するものとなるように設計されている。また、金属薄膜21は、発光層34からの発光光によりプラズモン共鳴を生じる領域に配置されている。これにより、第1の実施形態の素子と同様に、マイクロキャビティ効果とプラズモ増強による効果を重畳的に得ることができる。
【0041】
図2において、黒丸(●)は電子e、白丸(○)は正孔hを示している。図2に示すように、一般に、各層は、陽極31側および陰極36側から発光層34に向けて仕事関数が連続的に変化するように配置されるが、電子輸送層35に挿入されている金属薄膜21は、電子輸送層35に比べて仕事関数が大きく(ポテンシャルエネルギーが低く)、電界印加時に電子トラップとなってしまい、電子の流れを阻害して発光層34における再結合ができず、発光がうまく生じなくなる恐れがある。
【0042】
ここで、仕事関数調整層40は、金属薄膜21が電子トラップするのを抑制する機能を有する。仕事関数調整層40により、金属薄膜21の実効的な仕事関数を小さく(ポテンシャルエネルギーを高く)させて、すなわち図2において、金属薄膜21の本来のエネルギーレベルE0を、実効的にエネルギーレベルE1へと変化させて、電子eが金属薄膜20にトラップされず発光層側へと移動するようにさせる。
【0043】
図3は、仕事関数調整層の例を示すものである。ここで、金属薄膜21がAuからなるものとしている。仕事関数調整層40は、図3に示すように、極性を有する末端基を備えたチオールやジスルフィドがAu反応してAu膜表面に結合して形成されたSAM膜(自己組織化単分子膜)である。図3には、チオール基のパラ位にメチル基を有するベンゼンチオール(チオフェノール)のSAM膜の例が示してある。
メチル基のようなアルキル基は電子供与性基であり、かかる末端基を有する場合、その電子供与性によりAuのポテンシャルエネルギーは高められ、仕事関数を小さくすることができる。電子供与性基としては、メチル基等のアルキル基、アミノ基、ヒドロキシル基などが挙げられる。
仕事関数調整層40は、Au膜を形成後、一般的なSAM作製法により形成することができるが、特に、塗布法等の液相法や、蒸着法、スパッタ法を用いることができる。仕事関数調整層は、金属薄膜20の片面のみならず、両面に備えていてもよい。
【0044】
ここでは、金属薄膜20を電子輸送層35に挿入した例を挙げたが、陽極側の正孔輸送層33の間に金属薄膜20を挿入してもよい。その場合、金属薄膜20の仕事関数は、正孔輸送層33の仕事関数よりも小さい(ポテンシャルエネルギーが高い)ため、正孔輸送層33の仕事関数に近づけるようにポテンシャルエネルギーを低くするための仕事関数調整層を金属薄膜の少なくとも片面に備えればよい。この場合、仕事関数調整層は、その末端基として、図3に示す電子供与基に代えて、電子吸引基を備えることにより、実効的なポテンシャルエネルギーを低くすることができ、金属薄膜の仕事関数を正孔輸送層33のものに近づけることができる。電子吸引基としては、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基などが挙げられる。
【0045】
このように、金属薄膜の仕事関数を調整するための仕事関数調整層(極性分子膜)40を備えているため、電界印加時に電荷の移動に対する金属薄膜による弊害を抑制することができる。したがって、マイクロキャビティ効果およびプラズモン増強に伴う、発光効率の向上、耐久性の向上をより効果的に実現することができる。
【0046】
なお、有機LEDにおいて、金属電極とショットキーバリアを形成する有機ポリマーとの仕事関数を調整するために、電子供与性基を備えたSAMにより金属表面を修飾することが、“Tuning the Work Function of Gold with Self-Assembled Monolayers Derived from X-[C6H4-C≡C-]nC6H4-SH(n=0,1,2; X=H,F,CH3, CF3, and OCH3)”, Robert W. Zehner et al, Langmuir 1999, 15, p.1121-1127, に記載されている。また、「戸田徹他、日本写真学会誌、70、38(2007)」には、金や銀のエネルギーレベルを、金属表面を電子供与性基や電子吸引性基により修飾することにより調整して電子の流れを制御することが記載されている。
金属膜のエネルギーレベルを調整するだけであれば、上記文献に記載の技術を、金属膜に対して適用すればよいが、そのまま適用するだけでは、プラズモン共鳴による発光効率の向上効果を阻害する可能性がある。本発明者らは、プラズモン共鳴による発光効率の向上効果を充分に活かしたまま、金属膜のエネルギーレベルを調整する構成を見出し、耐久性を低下させることなく高発光効率を実現するエレクトロルミネッセンス素子を実現した。
【0047】
<第3の実施形態のEL素子>
本発明の第3の実施形態のエレクトロルミネセンス素子3の構成を図4に模式的に示す。本実施形態のEL素子3は、図4に示すように、ガラスなどの透光性基板50上に、陽極51、正孔輸送層53、発光層54、電子輸送層55、陰極56を備えている。ここでは、金属微粒子コア61と、該金属微粒子コア61を覆う絶縁シェル62とからなるコアシェル型微粒子60が、発光光によりプラズモン共鳴が生じせしめる金属部材として、正孔輸送層53内に多数分散されている。ここで、絶縁シェル62は発光光に対して透光性を有する材料からなる。ここで、透光性とは、発光光の透過率が70%以上であることとする。
【0048】
本実施形態の素子3も、電極51、56間をキャビティとして素子内に定在波が生じるよう構成されており、発光層54と定在波の腹を略一致させている。各層52〜55は、上述の共鳴条件を満たす屈折率および厚みを有するものとなるように設計されている。また、コアシェル型微粒子60は、その金属微粒子コア61が発光層54からの発光光によりプラズモン共鳴を生じる領域に配置されている。これにより、第1、第2の実施形態の素子と同様に、マイクロキャビティ効果とプラズモ増強による効果を重畳的に得ることができる。なお、コアシェル型微粒子60は、内包されている金属微粒子コア61が、発光光によるプラズモン共鳴が生じる発光領域近傍に存在していればよい。
【0049】
既述の通り、積層体内に金属部材が挿入された場合、その金属部材が電荷の移動を妨げる恐れがある。本実施形態においては、これを防止するため、金属部材として、コアシェル型微粒子60を用いたものである。コアシェル型微粒子60は、金属微粒子コア61として、たとえば、銀微粒子を、絶縁シェル62としてSiO2などの誘電体を用いて形成される。プラズモン共鳴に寄与する銀微粒子61は、絶縁シェル62で覆われているため、両電極間に電界を印加した場合にも、電荷(電子もしくは正孔)が導電体であるAgにトラップされない(乱されない)で、電荷の移動が正常に行われる。
【0050】
このように、本実施形態のEL素子3においては、金属部材として、コアシェル型微粒子60を用いることにより、電界印加時に電荷の移動に対する金属部材による弊害を抑制することができる。したがって、マイクロキャビティ効果およびプラズモン増強に伴う、発光効率の向上、耐久性の向上をより効果的に実現することができる。
【0051】
本実施形態のEL素子3の製造方法の例を簡単に説明する。
透明基板50上に蒸着により、Cuからなる陽極51を形成する。コアシェル型微粒子60としては、粒径50nmのAg微粒子61を厚み10nmのSiO262でコートしたものを用いる。次いで、正孔輸送材料であるトリフェルジアミン誘導体(TPD)を溶解させたジクロロメタン中に、コアシェル型微粒子60を分散させ、スピンコート法により陽極51上に塗布することにより、コアシェル型微粒子60が分散された正孔輸送層53を形成する。次いで、発光材料であるフェナントロリン誘導体(BCP)、電子輸送材料であるAlq3(tris-(8-hydroxyquinoline)aluminum)を順に蒸着させ、それぞれ発光層54、電子輸送層55を形成する。最後に、Agからなる陰極56を形成する。
【0052】
上記実施形態においては、コアシェル型微粒子60が、正孔輸送層53に分散されてなる素子としたが、コアシェル型微粒子60は、電極間の、発光光によるプラズモン共鳴を生じる領域であればどの層中に配置されてもよい。特には、発光領域内に存在させることにより、より効果的にプラズモン共鳴を生じさせることができ、好ましい。
図4においては、コアシェル型微粒子60が多数存在する場合について示したが、その数は1つであってもプラズモン共鳴による発光効率増強の効果は得ることができる。
【0053】
コアシェル型微粒子の金属微粒子コアの粒子径は、局在プラズモンを誘起可能な大きさであれば特に制限されないが、発光光の波長以下の大きさであることが好ましく、特に、10nm以上、1μm以下が好ましい。
【0054】
絶縁シェル62の厚みは、発光光による金属微粒子コア61における局在プラズモンの誘起を阻害しない膜厚であることが好ましい。発光層54における発光光による局在プラズモンの誘起を効果的に得るためには、発光層54と金属微粒子コア表面との距離が30nm以下であることが好ましいことから、コアシェル型微粒子60の配置される位置と層構成、そして絶縁体シェル62の厚みはより効果的なプラズモン共鳴が得られるように設計されることが望ましい。ここで絶縁体シェル62の厚みとは、金属微粒子61が絶縁体シェル62の内部に1つだけ含まれている構成では、絶縁体シェル21の表面と金属微粒子コア表面との平均距離とする。絶縁シェル内には複数の金属微粒子コアを備えている場合には、絶縁体シェルの表面と各金属微粒子コアの表面との最短距離の平均値を絶縁体シェルの厚みとする。
【0055】
金属微粒子コア61の材料としては、発光光によりプラズモン共鳴が生じるものであればよく、Ag(銀)に限らず、第1の実施形態の金属薄膜と同様に、Au(金)、Cu(銅)、Al(アルミ)、Pt(白金)およびこれらの金属のいずれかを主成分(80%以上)とする合金が適用可能である。
【0056】
一方、絶縁シェル62の材料としては、SiO、Al、MgO、ZrO、PbO,B、CaO、BaO等の絶縁体を好適に用いることができる。
【0057】
上記各実施形態において、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極などの各層は、それぞれの機能を有する層として周知の種々の材料のなかから、適宜選択可能である。さらに、正孔ブロック層、電子ブロック層、保護層などの層が備えられていてもよい。
【0058】
また、上記各実施形態では、発光層を含む複数の層が有機化合物層からなる有機EL素子について説明したが、本発明のEL素子は、発光層を含む複数の層が無機化合物層である無機EL素子のほか、複数の半導体層からなる発光ダイオードおよび半導体レーザにも好適に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のEL素子は、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1、2、3 エレクトロルミネッセンス素子
11、36、56 陰極
12 電子注入層
13、35、55 電子輸送層
14、34、54 発光層(発光領域)
15、33、53 正孔輸送層
16、32、 正孔注入層
17、31、51 陽極
19 定在波
19a 腹
20、21 金属薄膜(金属部材)
40 仕事関数調整層(表面修飾)
50 透明基板
60 コアシェル型微粒子
61 金属微粒子コア
62 絶縁シェル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極間に、複数の層が積層されてなり、該複数の層の間に、前記電極間への電界の印加により発光する発光領域を備えた、エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記複数の層が、該素子内に前記発光領域からの発光光による定在波の電界強度が最大となる領域が、前記発光領域と略一致するような共鳴条件を満たす層厚と屈折率とを有するものであり、
前記発光光によるプラズモン共鳴を表面に生じせしめる金属部材が前記発光領域の近傍に配置されたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記複数の層が、それぞれ有機層から形成された、少なくとも電子輸送層、発光層、正孔輸送層からなることを特徴とする請求項1記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記金属部材と前記発光領域との距離が、30nm以内であることを特徴とする請求項1または2記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記金属部材が、前記複数の層の間に配置された金属薄膜であることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記金属薄膜が、粒径5nm以上の多数の金属微粒子が膜状に分散されてなるアイランド構造膜であることを特徴とする請求項4記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記金属薄膜の少なくとも一方の面に、該金属薄膜の仕事関数を、該金属薄膜に隣接する層の仕事関数に近づける極性を有する末端基を備えた表面修飾が施されていることを特徴とする請求項4または5記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記金属部材が、金属微粒子コアと、該金属微粒子コアを覆う絶縁シェルとからなるコアシェル型微粒子であることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載のエレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−238406(P2010−238406A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82790(P2009−82790)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】