説明

エレクトロルミネッセンス装置、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法、面状照明装置及び液晶表示装置

【課題】 発光される光の特定方向への指向性を向上させたエレクトロルミネッセンス装置、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法、面状照明装置及び液晶表示装置を提供することにある。
【解決手段】 有機EL棒11は、透明の支持棒12と、支持棒12の外側面12a全体にわたって形成された光透過性を有する陽極層13と、陽極層13の外側面13a全体にわたって形成された正孔輸送層14及び発光層15とを備えている。また、有機EL棒11は、発光層15の外側面15aの一部に光反射性を有する略半円状の陰極層16を備えている。そして、液晶表示装置1のバックライト3として、この有機EL棒11を照明部LUにX方向に沿って等間隔にm本並設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス装置、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法、面状照明装置及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、棒状の発光装置には、ガラス管内に封入された希ガス等の放電現象を利用する蛍光灯やネオン管等が知られている。しかし、これら放電現象を利用した発光装置は、その小型化や低消費電力化が困難であるといった問題を有していた。そこで、近年では、小型化と低消費電力化の双方を解決可能にする棒状の発光装置として、棒状部材の外側面にエレクトロルミネッセンス(以下単に、「EL」という。)素子を有した棒状のEL装置が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−108643
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、この種の棒状のEL装置は、EL層から発光された光が等方的に外部へ出射され、拡散性が強かった。そのため、例えば、液晶ディスプレイのバックライトのように特定の方向に光を出射する照明装置に使用するのには不向きであった。そこで、発光される光の特定方向への指向性を向上させたEL装置が求められていた。
【0004】
本発明は、前述した上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、発光される光の特定方向への指向性を向上させたエレクトロルミネッセンス装置、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法、面状照明装置及び液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のエレクトロルミネッセンス装置(以下単に、「EL装置」という。)は、支持棒と、前記支持棒の外側面に形成された第1電極層と、前記第1電極層の外側面に形成されたエレクトロルミネッセンス層(以下単に、「EL層」という。)と、前記EL層の外側面の一部に形成された光反射性を有する第2電極層とを備えた。
【0006】
本発明のEL装置によれば、第1電極層の外側面に形成されたEL層の外側面の一部に、光反射性を有する第2電極層を形成したため、第2電極層に覆われたEL層から発光される光は、第2電極層で反射されて第2電極層に覆われていない領域から出射される。従って、発光される光の特定方向への指向性を向上させることができる。
【0007】
本発明のEL装置は、支持棒と、前記支持棒の外側面に形成された第1電極層と、前記第1電極層の外側面に形成されたEL層と、前記EL層の外側面に形成された光透過性を有する第2電極層と、前記第2電極層の外側面の一部に形成された光反射性を有する反射層とを備えた。
【0008】
本発明のEL装置によれば、第1電極層の外側面に形成されたEL層の外側面に第2電極層を形成し、その第2電極層の外側面の一部に光反射性を有する反射層を形成した。そのため、EL層で発光された光のうち反射層に向かって発光される光は、同反射層で反射されて反射層に覆われていない領域から出射される。従って、発光される光の特定方向への指向性を向上させることができる。
【0009】
このEL装置において、前記支持棒は、透明であってもよい。
このEL装置によれば、支持棒を透明にしたため、EL層から発光される光に対する開口率を向上させることができる。従って、EL層から発光される光を効率良く外部に出射することができる。
【0010】
このEL装置において、前記第1電極層は、光透過性を有する透明電極であってもよい。
このEL装置によれば、第1電極層を透明電極とし、光透過性を有するようにしたため、EL層から発光される光に対する開口率を向上させることができる。従って、EL層から発光される光を効率良く外部に出射することができる。
【0011】
このEL装置において、前記支持棒が、前記第1電極層を兼用してもよい。
このEL装置によれば、支持棒と第1電極層を一つの部材で構成することができるため、部品点数及び製造工程を減らすことができる。
【0012】
本発明のEL装置の製造方法は、支持棒の外側面に第1電極層を形成し、前記第1電極層の外側面にEL層を形成するようにしたEL装置の製造方法において、前記EL層の外側面の一部をマスクし、前記EL層の外側面の非マスク領域に、光反射性を有する第2電極層を蒸着及びスパッタのいずれか一方によって形成するようにした。
【0013】
本発明のEL装置の製造方法によれば、第2電極層を形成したい領域以外をマスクして蒸着及びスパッタのいずか一方を行うことによって、所望の形状の第2電極層をEL層の特定の領域に容易に形成することができる。
【0014】
本発明のEL装置の製造方法は、支持棒の外側面に第1電極層を形成し、前記第1電極層の外側面にEL層を形成し、前記EL層の外側面に光透過性の第2電極層を形成し、前記第2電極層の外側面の一部をマスクし、前記第2電極層の外側面の非マスク領域に、光反射性を有する反射層を蒸着及びスパッタのいずれか一方によって形成するようにした。
【0015】
本発明のEL装置の製造方法によれば、反射層を形成したい領域以外をマスクして蒸着及びスパッタのいずか一方を行うことによって、所望の形状の反射層を第2電極層の特定の領域に容易に形成することができる。
【0016】
本発明のEL装置の製造方法は、支持棒の外側面に第1電極層を形成し、前記第1電極層の外側面にEL層を形成するようにしたEL装置の製造方法において、前記EL層の形成された前記支持棒が嵌合する基台の凹部に第2電極層を形成し、前記EL層の形成された前記支持棒を前記基台の凹部に嵌合することによって、前記EL層の外側面の一部に前記第2電極層を形成するようにした。
【0017】
本発明のEL装置の製造方法によれば、第2電極層の形成された基台の凹部にEL層の形成された支持棒を嵌合するだけで、EL層の外側面に第2電極層を形成することができるため、簡単な設備で簡便にEL装置を製造することができる。また、基台の凹部の形状を変更することによって第2電極層の形状を変更することができ、容易に第2電極層を所望の形状に形成することができる。
【0018】
本発明のEL装置の製造方法は、支持棒の外側面に第1電極層を形成し、前記第1電極層の外側面にEL層を形成し、前記EL層の外側面に光透過性の第2電極層を形成し、前記第2電極層の形成された前記支持棒が嵌合する基台の凹部に反射層を形成し、前記第2電極層の形成された前記支持棒を前記基台の凹部に嵌合することによって、前記第2電極
層の外側面の一部に前記反射層を形成するようにした。
【0019】
本発明のEL装置の製造方法によれば、反射層の形成された基台の凹部に、第2電極層の形成された支持棒を嵌合するだけで、第2電極層の外側面に反射層を形成することができるため、簡単な設備で簡便にEL装置を製造することができる。また、基台の凹部の形状を変更することによって反射層の形状を変更することができ、容易に反射層を所望の形状に形成することができる。
【0020】
本発明の面状照明装置は、上記記載のEL装置を向きを揃えて配列して第1方向に延設し、さらに前記EL装置を第2方向に並設した。
本発明の面状照明装置によれば、EL層から発光される光を特定方向に効率よく出射させることができる。
【0021】
本発明の液晶表示装置は、液晶パネルと、上記記載の面状照明装置とを備えた。
本発明の液晶表示装置によれば、EL層から発光される光を液晶パネルに効率よく照射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図6に従って説明する。まず、液晶表示装置1について説明する。図1は、液晶表示装置1の概略斜視図であり、図2は、図1のA−A線断面図である。
【0023】
図1において、液晶表示装置1には、液晶パネル2と、液晶パネル2に照明光Lを照射する面状照明装置としてのバックライト3が備えられている。
液晶パネル2は、バックライト3側に備えられた四角板状の対向基板4と、対向基板4と相対向する素子基板5とが、シール部材6(図2参照)を介して貼り合わされることによって形成されている。図2に示すように、これら対向基板4と素子基板5の間の間隙には、図示しない制御回路からの表示データに基づいて配向状態を変更可能にした液晶7が封入されて、素子基板5の上面5a(対向基板4と反対側の側面)には、この液晶7と相対する表示領域SDが形成されている。
【0024】
そして、バックライト3からの照明光Lが、液晶7の配向状態によって変調されて、変調された照明光Lが、図示しない偏向板を通過するか否かによって、液晶パネル2の表示領域SDに、所望する画像が表示されるようになっている。
【0025】
本実施形態では、素子基板5の上面5aであって、表示領域SDの外側の領域を非表示領域SFという。なお、本実施形態の液晶表示装置1は、素子基板5の対向基板4側の側面に、マトリックス状に配列された制御素子や画素電極等を備えるアクティブマトリックス方式の液晶表示装置としたが、これに限らず、例えばパッシブ方式の液晶表示装置であってもよい。また、本実施形態の液晶表示装置1は、バックライト3側に対向基板4を配設する構成にしたが、これに限らず、例えばバックライト3側に素子基板5を配設する構成であってもよい。
【0026】
バックライト3は、四角形状の透明基板10と、透明基板10と相対向する照明部LUを有している。その照明部LUは、複数の有機エレクトロルミネッセンス棒(以下単に、「有機EL棒」という。)11を備えている。エレクトロルミネッセンス装置としての有機EL棒11は、略円柱状に形成されており、第1方向としてのY方向(図1参照)に向かって延設され、第2方向としてのX方向に等間隔にm本並設されている。また、有機EL棒11は、その中央に略円柱状に形成された絶縁材料からなる透明な支持棒12を有している。支持棒12は、例えば、各種ガラス材料等の無機材料、あるいはポリエチレンテ
レフタレート等の可撓性樹脂で形成されている。
【0027】
支持棒12の外側面12aには、第1電極としての陽極層13が形成されている。陽極層13は、支持棒12の外側面12aの全体にわたって均一な膜厚で形成される陽極である。陽極層13は、仕事関数の大きい導電性材料(陽極層形成材料:例えば、ITO(Indium−Tin−Oxide)、SnO2、Sb含有SnO2、A1含有ZnO等の無機酸化物、あるいはポリチオフェンやポリピロール等の透明導電樹脂等)によって形成される透明電極である。
【0028】
陽極層13の外側面13aには、エレクトロルミネッセンス層(以下単に、「EL層」という。)を構成する正孔輸送層14が形成されている。正孔輸送層14は、陽極層13の外側面13aの全体にわたって均一な膜厚で形成される有機層である。なお、前記陽極層13には、バックライト3を駆動するための駆動電源を供給する電源装置(図示しない)の一端が電気的に接続されており、陽極層13は、正孔輸送層14に正孔を注入するようになっている。また、正孔輸送層14を構成する正孔輸送層材料は、陽極層13から注入された正孔を隣接する発光層15まで輸送する機能を有する。
【0029】
本実施形態の正孔輸送層材料は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(以下単に、「PEDOT」という。)であるが、これに限らず、以下に示すような、各種低分子の正孔輸送層材料や各種高分子の正孔輸送層材料を利用することができ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて利用することもできる。
【0030】
低分子の正孔輸送層材料としては、例えば、ベンジジン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチリルアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体、ピラゾリン誘導体、カルバゾール誘導体、ポリフィリン化合物等を利用することができる。
【0031】
高分子の正孔輸送層材料としては、上記した低分子構造を一部に含む(主鎖あるいは側鎖にする)高分子化合物、あるいはポリアニリン、ポリチオフェンビニレン、ポリチオフェン、α−ナフチルフェニルジアミン、トリフェニルアミンやエチレンジアミン等を分子核とした各種デンドリマー等を利用することができる。
【0032】
上記した低分子の正孔輸送層材料を用いる場合、正孔輸送層材料の中には、必要に応じて、バインダー(高分子バインダー)を添加するようにしてもよい。バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害せず、かつ、可視光の吸収率が低いものを用いるのが好ましく、具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリビニリデンフロライド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等のうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、このバインダーには、上記した高分子系の正孔輸送層材料を用いてもよい。
【0033】
正孔輸送層14の外側面14aには、EL層を構成する発光層15が形成されている。発光層15は、正孔輸送層14の外側面14aの全体にわたって均一な膜厚で形成される有機層である。また、発光層15には、正孔輸送層14から正孔が輸送される。
【0034】
本実施形態の発光層材料は、フルオレン−ジチオフェンコポリマー(以下単に、「F8T2」という。)であるが、これに限らず、以下に示すような、公知の各種低分子の発光層材料や、各種高分子の発光層材料を利用することができ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0035】
低分子の発光層材料としては、例えば、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブ
タジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、クマリン誘導体物、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等の金属錯体等を利用することができる。
【0036】
高分子の発光層材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、ポリビニレンスチレン誘導体、及びそれらの共重合体、トリフェニルアミンやエチレンジアミン等を分子核とした各種デンドリマー等を利用することができる。
【0037】
発光層15の外側面15aの下部には、略半円状の陰極層16が形成されている。陰極層16は、発光層15の外側面15aの下部に、均一な膜厚で略半円状に形成される陰極である。陰極層16は、仕事関数の低い導電性材料(陰極層材料:例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbの金属元素単体等)によって形成される光反射性を有する電極である。そして、陰極層16は、バックライト3を駆動するための駆動電源を供給する電源装置(図示しない)の一端に電気的に接続されており、発光層15に電子を注入するようになっている。なお、照明部LUにおいて、有機EL棒11は、略半円状の陰極層16が下部に配置されるように向きを揃えて配設されている。
【0038】
また、陰極層16の外側面16a及び発光層15の外側面15aには、有機EL棒11を覆うように、封止層17が形成されている。封止層17は、ガスバリヤ性を有した光透過性の無機又は有機高分子膜であって、透明基板10と有機EL棒11との空間を封止して、水分や酸素等の侵入を遮断するようになっている。なお、照明部LUは、有機EL棒11と封止層17とから構成されている。
【0039】
そして、図示しない電源装置を駆動して陽極層13と陰極層16との間に電圧を印加すると、陽極層13からの正孔が正孔輸送層14を介して発光層15に移動し、陰極層16からの電子が発光層15に移動し、発光層15において、正孔と電子とが再結合する。正孔と電子とが再結合すると、発光層15は、再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)を生成し、生成したエキシトンの基底状態への遷移によって発光する。すなわち、陰極層16が積層されて、正孔と電子とが再結合する発光層15の領域でのみ発光されて光を放出する。この際、発光層15から陰極層16側(図2における下側)に向かって発光された光は、同陰極層16によって反射される。そのため、発光層15から発光された光は、その殆どが、正孔輸送層14、陽極層13、支持棒12、封止層17、透明基板10を通過して、透明基板10の液晶パネル2と対向する側面(図2における上面)から出射される。
【0040】
従って、光反射性を有する陰極層16を有機EL棒11の一部に形成する(本実施形態では、発光層15の下部に半円状に形成した。)ことにより、発光層15から発光される光を特定の方向(例えば、Z矢印方向)へ効率的に出射させることができる。
【0041】
次に、有機EL棒11を製造する製造方法について、以下に説明する。
まず、支持棒12の外側面12aに陽極層13を形成する陽極層形成工程を行う。すなわち、図3に示すように、支持棒12をITOのナノ微粒子を有機系分散媒に分散させた液状体(陽極層形成液22L)に浸漬して引き出す。そして、支持棒12の外側面12aに堆積した陽極層形成液22Lの液状膜22Fを乾燥することによって陽極層13が形成される。
【0042】
陽極層13を形成すると、陽極層13の外側面13aに正孔輸送層14を形成する正孔輸送層形成工程を行う。すなわち、図4に示すように、陽極層13が形成された支持棒12を、「PEDOT」を含む液状体(正孔輸送層形成液23L)に浸漬して引き出す。そして、陽極層13の外側面13aに堆積した正孔輸送層形成液23Lの液状膜23Fを乾燥することによって正孔輸送層14が形成される。
【0043】
正孔輸送層14を形成すると、正孔輸送層14の外側面14aに発光層15を形成する発光層形成工程を行う。すなわち、図5に示すように、正孔輸送層14が形成された支持棒12を、「F8T2」を含む液状体(発光層形成液24L)に浸漬して引き出す。そして、正孔輸送層14の外側面14aに堆積した発光層形成液24Lの液状膜24Fを乾燥することによって発光層15が形成される。
【0044】
発光層15を形成すると、発光層15の外側面15aの一部に陰極層16を形成する陰極層形成工程を行う。すなわち、図6に示すように、発光層15を形成した支持棒12の所定箇所に、蒸着装置30を用いて陰極層形成材料を蒸着する。詳しくは、発光層15を形成した支持棒12を、蒸着装置30の上方において、蒸着装置30と相対向するように配置する。また、支持棒12には図示しない回転装置が取り付けられ、その回転装置は支持棒12を、回転軸線LAを回転中心に回転させる。そして、支持棒12を、回転軸線LAを回転中心に回転させながら、発光層15の外側面15aに対して、蒸着装置30から放出される陰極層形成材料を蒸着する。このとき、発光層15の外側面15aに略半円状の陰極層16を形成するように、非マスク領域としての所定箇所(陰極層16を形成すべき領域)以外は、略半円状のシャドウマスク31によって覆われて、陰極層16が形成されないようにしている。
【0045】
これによって、支持棒12の外側面12a全体に均一な膜厚の陽極層13、正孔輸送層14及び発光層15と、発光層15の外側面15aに均一な膜厚の略半円状の陰極層16を形成することができる。
【0046】
次に、本実施形態の効果を以下に記載する。
(1)本実施形態によれば、液晶表示装置1のバックライト3に備えた有機EL棒11を、支持棒12に陽極層13、正孔輸送層14、発光層15を順に積層して形成するようにした。さらに、発光層15に略半円状の陰極層16を積層するようにした。このとき、陽極層13と陰極層16との間に電圧を印加して発光層15において発光させると、発光層15から陰極層16側(図2における下側)に向かって発光される光は、同陰極層16によって反射される。そのため、発光層15から発光される光は、その殆どが、正孔輸送層14、陽極層13、支持棒12、封止層17、透明基板10を通過して、透明基板10の液晶パネル2と対向する側面(図2における上面)から出射される。従って、発光層15から発光される光を特定の方向(例えば、Z矢印方向)へ効率的に出射させることができ、発光層15から発光される光の特定方向への指向性を向上させることができる。
【0047】
(2)本実施形態によれば、支持棒12を透明材料で構成し、陽極層13を透明電極とした。従って、支持棒12及び陽極層13が光透過性を有し、発光層15から発光される光に対する開口率が上昇するため、その光を効率的に外部に出射することができる。その結果、発光層15から発光される光の利用効率を向上させることができ、消費電力を抑制することができる。
【0048】
(3)本実施形態によれば、バックライト3の照明部LUにおいて、有機EL棒11を、略半円状の陰極層16が下部に配置されるように向きを揃えて配設するようにした。従って、全ての有機EL棒11において、陰極層16(図2において下側)に向かって発光
される光は、同陰極層16によって反射されるため、発光層15から発光される光の殆どが、液晶パネル2に向かって出射される。そのため、液晶パネル2に効率よく照明光Lを照射することができる。
【0049】
(4)本実施形態によれば、所定箇所(陰極層16を形成したい領域)以外の領域をシャドウマスク31で覆い、発光層15を形成した支持棒12の所定箇所に、蒸着装置30を用いて陰極層形成材料を蒸着し、発光層15の外側面15aに略半円状の陰極層16を形成するようにした。このように、所定箇所以外をシャドウマスク31で覆うことによって、発光層15の外側面15aの所定箇所に所望の形状の陰極層16を容易に形成することができる。
【0050】
なお、上記実施形態は、以下の態様に変更してもよい。
・上記実施形態では、発光層15の外側面15aに、蒸着法によって陰極層形成材料を蒸着して陰極層16を形成した。これを、スパッタ法によって陰極層形成材料を、発光層15の外側面15aにスパッタして陰極層16を形成するように変更して実施してもよい。また、図7に示すように、基台としてのバンク40の半円状の凹部41に陰極層16を形成し、その陰極層16が形成されたバンク40の凹部41に、発光層15を形成した支持棒12を嵌合して、発光層15の外側面15aに陰極層16を貼り合わせて有機EL棒11を形成するように変更して実施してもよい。また、発光層15の外側面15aの一部を陰極層形成液に浸漬して引き出し、発光層15の外側面15aの一部に堆積した陰極層形成液の液状膜を乾燥させて陰極層16を形成するように変更して実施してもよい。
【0051】
・上記実施形態では、発光層15の外側面15aに略半円状の陰極層16を形成した。これに限らず、例えば図8に示すように、発光層15の外側面15a全体にわたって光透過性の陰極層50を均一な膜厚で形成し、その陰極層50の外側面50aの一部に反射層51を形成するようにしてもよい。反射層51は、アルミニウム等の光反射性を有する金属元素単体等によって構成される。この場合、陰極層50の形成方法は、気相プロセスに限らず液相プロセスによって形成してもよい。また、反射層51は、蒸着法、スパッタ法及び貼り合わせ法によって形成することが好ましい。なお、陰極層50は、ITO等からなる透明電極であることが好ましい。
【0052】
これによって、有機EL棒11の発光層15全体で発光され、そのうち反射層51に向かって発光される光は、同反射層51で反射されて正孔輸送層14、陽極層13及び支持棒12を通過して、反射層の形成されていない領域から外部に出射される。従って、発光層15から発光される光を特定の方向(反射層の形成されていない領域)に光を集中させて出射することができ、発光される光の利用効率を向上させることができるため、消費電力を抑制することができる。
【0053】
・上記実施形態では、発光層15の外側面15aに形成した陰極層16を略半円状の形状に具体化したが、この形状に制限されるものではない。発光層15の外側面15aの一部に陰極層16が形成されていればよい。従って、半円よりも小さくてもよく、半円よりも大きくてもよい。また、図9に示すように、光反射性を有する陰極層16を、発光層15の外側面15a全体にわたって形成し、その有機EL棒11を切断線Bに沿って長手方向に分断してもよい。これによって、発光層15の外側面15aの一部に陰極層16を形成した断面半円状の有機EL棒11が2つ形成される。
【0054】
・上記実施形態では、支持棒12の外側面12a全体にわたって軸心から順に、陽極層13、正孔輸送層14及び発光層15を形成した。これに限らず、支持棒12の外側面12aの一部に軸心から順に、陽極層13、正孔輸送層14及び発光層15を形成するようにしてもよい。
【0055】
・上記実施形態では、有機EL棒11を円柱状に具体化したが、これに限らず、例えば断面が多角形状や楕円形状であってもよい。また、中心に空洞部を有した円状の形状であってもよい。
【0056】
・上記実施形態では、陽極層13、正孔輸送層14及び発光層15を液相プロセスによって形成したが、これに限らず、蒸着等の気相プロセスによって形成するように変更して実施してもよい。
【0057】
・上記実施形態では、発光層材料を有機系高分子あるいは有機系低分子によって構成した。これに限らず、例えば発光層材料を、ZnS/CuCl、ZnS/CuBr、ZnCdS/CuBr等の無機分子で構成してもよい。この際、当該発光層材料を有機バインダーに分散させて発光層形成液24Lを形成する構成が好ましい。なお、有機バインダーには、シアノエチルセルロース、シアノエチルスターチ、シアノエチルプルラン等の多糖類のシアノエチル化物、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルグリセロールプルラン等の多糖類誘導体のシアノエチル化物、シアノエチルポリビニルアルコール等のポリオール類のシアノエチル化物等が挙げられる。
【0058】
・上記実施形態では、支持棒12を透明な無機材料等によって構成したが、透明でない材料によって構成するように変更して実施してもよい。
・上記実施形態では、陽極層13を透明電極になるように透明性を有する導電性材料によって構成したが、透明でない導電性材料によって構成するように変更してもよい。
【0059】
・上記実施形態では、支持棒12を絶縁材料によって構成したが、これに限らず、支持棒12を、導電材料、すなわち陽極層形成材料によって構成してもよい。これによって、支持棒12を陽極層13として兼用することができるため、支持棒12の外側面12aに、別途陽極層13を形成する必要がなく、陽極層形成工程を省略することができ、有機EL棒11の生産性を向上することができる。また、部品点数も減らすことができることから、有機EL棒11を小型化することができる。
【0060】
・上記実施形態では、支持棒12の外側面12aから順に、陽極層13、正孔輸送層14、発光層15及び陰極層16を形成する構成にした。これに限らず、支持棒12の外側面12aから順に、陰極層16、発光層15、正孔輸送層14及び陽極層13を形成する構成にしてもよい。なお、この場合、陰極層16は支持棒12の外側面12a全体にわたって形成され、望ましくは透明性を有する導電性材料によって構成され、陽極層13は正孔輸送層14の外側面14aの一部に形成され、光反射性を有する導電性材料によって構成される。
【0061】
・上記実施形態では、陽極層13と陰極層16との間に、一層の発光層15を形成する構成にした。これに限らず、例えば陽極層13と陰極層16との間に、発光層15と電荷発生層からなるユニットを複数積層した、いわゆるマルチフォトン構造であってもよい。
【0062】
・上記実施形態では、陽極層13の外側面13aに正孔輸送層14を形成する構成にした。これに限らず、例えば正孔輸送層14を省略する構成にしてもよく、あるいは陽極層13と正孔輸送層14との間に、発光層15への正孔の注入効率を高めるための正孔注入層を形成する構成にしてもよい。
【0063】
・上記実施形態では、正孔輸送層14の外側面14aに発光層15を形成する構成にした。これに限らず、例えば正孔輸送層14と発光層15との間に、電子の移動を抑制する電子障壁層を形成する構成にしてもよい。
【0064】
・上記実施形態では、発光層15の外側面15aの一部に陰極層16を形成するようにした。これに限らず、例えば発光層15の外側面15a全体にわたって、陰極層16から注入された注入された電子を発光層15まで輸送する電子輸送層を形成する構成にしてもよい。あるいは、発光層15と電子輸送層との間に、正孔の移動を抑制する正孔障壁層を形成する構成にしてもよい。
【0065】
・上記実施形態では、有機EL棒11を液晶表示装置1のバックライト3として使用した。これに限らず、例えば蛍光灯の代替としての発光装置等として使用してもよい。この場合、用途に適した大きさに有機EL棒11を形成するようにする。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施形態における液晶表示装置を説明するための概略斜視図。
【図2】同じく、液晶表示装置を説明するための概略断面図。
【図3】同じく、有機EL棒の製造方法を説明するための断面図。
【図4】同じく、有機EL棒の製造方法を説明するための断面図。
【図5】同じく、有機EL棒の製造方法を説明するための断面図。
【図6】同じく、有機EL棒の製造方法を説明するための斜視図。
【図7】別例における有機EL棒の製造方法を説明するための断面図。
【図8】別例における有機EL棒を説明するための断面図。
【図9】別例における有機EL棒を説明するための断面図。
【符号の説明】
【0067】
1…液晶表示装置、2…液晶パネル、3…面状発光装置としてのバックライト、11…エレクトロルミネッセンス装置としての有機エレクトロルミネッセンス棒、12…支持棒、13…第1電極層としての陽極層、14…エレクトロルミネッセンス層を構成する正孔輸送層、15…エレクトロルミネッセンス層を構成する発光層、16,50…第2電極層としての陰極層、40…基台としてのバンク、41…凹部、51…反射層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持棒と、
前記支持棒の外側面に形成された第1電極層と、
前記第1電極層の外側面に形成されたエレクトロルミネッセンス層と、
前記エレクトロルミネッセンス層の外側面の一部に形成された光反射性を有する第2電極層と
を備えたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項2】
支持棒と、
前記支持棒の外側面に形成された第1電極層と、
前記第1電極層の外側面に形成されたエレクトロルミネッセンス層と、
前記エレクトロルミネッセンス層の外側面に形成された光透過性を有する第2電極層と、
前記第2電極層の外側面の一部に形成された光反射性を有する反射層と
を備えたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエレクトロルミネッセンス装置において、
前記支持棒は透明であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のエレクトロルミネッセンス装置において、
前記第1電極層は、光透過性を有する透明電極であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のエレクトロルミネッセンス装置において、
前記支持棒が、前記第1電極層を兼用することを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項6】
支持棒の外側面に第1電極層を形成し、前記第1電極層の外側面にエレクトロルミネッセンス層を形成するようにしたエレクトロルミネッセンス装置の製造方法において、
前記エレクトロルミネッセンス層の外側面の一部をマスクし、前記エレクトロルミネッセンス層の外側面の非マスク領域に、光反射性を有する第2電極層を蒸着及びスパッタのいずれか一方によって形成するようにしたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項7】
支持棒の外側面に第1電極層を形成し、前記第1電極層の外側面にエレクトロルミネッセンス層を形成し、前記エレクトロルミネッセンス層の外側面に光透過性の第2電極層を形成し、前記第2電極層の外側面の一部をマスクし、前記第2電極層の外側面の非マスク領域に、光反射性を有する反射層を蒸着及びスパッタのいずれか一方によって形成するようにしたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項8】
支持棒の外側面に第1電極層を形成し、前記第1電極層の外側面にエレクトロルミネッセンス層を形成するようにしたエレクトロルミネッセンス装置の製造方法において、
前記エレクトロルミネッセンス層の形成された前記支持棒が嵌合する基台の凹部に第2電極層を形成し、前記エレクトロルミネッセンス層の形成された前記支持棒を前記基台の凹部に嵌合することによって、前記エレクトロルミネッセンス層の外側面の一部に前記第2電極層を形成するようにしたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項9】
支持棒の外側面に第1電極層を形成し、前記第1電極層の外側面にエレクトロルミネッセ
ンス層を形成し、前記エレクトロルミネッセンス層の外側面に光透過性の第2電極層を形成し、前記第2電極層の形成された前記支持棒が嵌合する基台の凹部に反射層を形成し、前記第2電極層の形成された前記支持棒を前記基台の凹部に嵌合することによって、前記第2電極層の外側面の一部に前記反射層を形成するようにしたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のエレクトロルミネッセンス装置を向きを揃えて配列して第1方向に延設し、さらに前記エレクトロルミネッセンス装置を第2方向に並設したことを特徴とする面状照明装置。
【請求項11】
液晶パネルと、
請求項10に記載の面状照明装置と
を備えたことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−66857(P2007−66857A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255258(P2005−255258)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】