説明

エレクトロルミネッセンス装置及びその製造方法

【課題】 調光範囲を拡張したエレクトロルミネッセンス装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 透明電極である陰極層21と陽極層24との間に白色を発光するための発光層22を有した第1、第2及び第3EL素子12,13,14を、支持棒11の径方向外側に順次積層して、軸心Cから見て、各発光層22が断面円管状となるように構成した。そして、第1、第2及び第3EL素子12,13,14を、それぞれ異なる第1、第2、第3電源装置G1,G2,G3によって駆動するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、棒状の発光装置には、ガラス管内に封入された希ガス等の放電現象を利用する蛍光灯やネオン管等が知られている。しかし、これら放電現象を利用した発光装置は、その小型化や低消費電力化が困難であるといった問題を有していた。そこで、近年では、小型化と低消費電力化の双方を解決可能にする棒状の発光装置として、棒状部材の外周面にエレクトロルミネッセンス(以下単に、「EL」という。)素子を有した棒状のエレクトロルミネッセンス装置(以下単に、「EL装置」という。)が注目されている。
【0003】
こうした棒状EL装置の製造方法には、可撓性のシート基板上に、第1電極(陽極)、有機層、第2電極(陰極)を順次積層して、そのシート基板を支持棒に巻付ける巻付け法や、棒状の陰極に、順次有機層、陽極、封止層を蒸着する蒸着法が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【特許文献1】特開平11−265785号公報
【特許文献2】特開2005−108643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記する棒状のEL装置では、支持棒あるいは棒状陰極の外周面に、発光層を1層のみ形成するため、EL装置の調光範囲が、その一層の発光層分に限定されるようになり、棒状のEL装置の利用範囲を制約する問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、調光範囲を拡張したエレクトロルミネッセンス装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエレクトロルミネッセンス装置(以下単に、「EL装置」という。)は、光を透過する一対の電極層と前記一対の電極層の間に設けられた発光層とからなる発光体を備えたEL装置において、同一色に対応した波長領域の光を出射する複数の前記発光体を、前記発光体の中心軸線から見て径方向に積層した。
【0007】
本発明のEL装置によれば、同一色の光を発光する発光体を径方向に積層した分だけ、EL装置の輝度範囲を径方向で拡大することができ、同一色に関する調光範囲を拡張することができる。
【0008】
このEL装置において、前記発光体は、前記中心軸線から見て断面環状に積層された。
このEL装置によれば、各層の発光体が環状に積層されるため、同一色の調光範囲を、中心軸線から見て等方的に拡張することができる。
【0009】
このEL装置において、前記発光体は、前記中心軸線から見て断面渦巻状に積層された。
このEL装置によれば、径方向に積層された発光体を、渦巻状に曲折した1つあるいは複数の発光体によって構成することができ、EL装置を構成する発光体の部材点数を削減することができる。
【0010】
このEL装置において、前記一対の電極層の間に正孔輸送層を設けた。
このEL装置によれば、正孔輸送層を設ける分だけ、電極層からの正孔を発光層に輸送させることができ、発光層の輝度を向上することができ、EL装置の調光範囲を、さらに拡張することができる。
【0011】
このEL装置において、前記発光体に印加する電圧を層毎に制御する制御手段を備えた。
このEL装置によれば、発光体に印加する電圧を層毎に変更することができ、EL装置の調光範囲を、より確実に拡張することができる。
【0012】
本発明のEL装置の製造方法は、光を透過する一対の電極層と前記一対の電極層の間に設けられた発光層とからなる発光体を備えたEL装置の製造方法において、光を透過する複数のシート基板上に、同一色に対応した波長領域の光を出射する前記発光体を形成し、複数の前記シート基板を支持棒の外側面に巻き付けて、複数の前記発光体を前記支持棒の径方向に積層するようにした。
【0013】
本発明のEL装置の製造方法によれば、支持棒に巻き付けた発光体の巻き数分だけ、EL装置の調光範囲を拡張することができる。従って、支持棒に巻き付ける発光体の巻き数を調整するだけで、所望の調光範囲を有したEL装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図7に従って説明する。図1に示すように、エレクトロルミネッセンス装置(以下単に、「EL装置」という。)10は、円柱状に形成された絶縁材料からなる支持棒11を有している。支持棒11は、各種ガラス材料等の無機材料、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート等の樹脂材料によって形成された棒部材であって、その内径が約5mm、長さが約200mmで形成されているが、この値に限られるものではない。
【0015】
支持棒11の外側面(外周面11a)には、支持棒11の軸心Cを中心軸線とする断面管状の発光体としての第1エレクトロルミネッセンス素子(第1EL素子)12が形成されている。その第1EL素子の外側面には、支持棒11の軸心Cを中心軸線とする断面管状の発光体としての第2エレクトロルミネッセンス素子(第2EL素子)13及び第3エレクトロルミネッセンス素子(第3EL素子)14が、支持棒11の径方向外側に向かって積層されている。これら第1〜第3EL素子12,13,14には、それぞれ前記軸心C側から順に、陰極層21、発光層22、正孔輸送層23、陽極層24及びシート基板25が備えられている。
【0016】
各陰極層21は、それぞれ前記軸心Cを中心とした環状に形成される透明電極であって、軸心C方向に沿う支持棒11の全幅にわたり積層されている。各陰極層21は、それぞれ同じ陰極層形成材料であるIZO(Indium−Zinc−Oxide)によって形成されているが、これに限らず、対応する発光層22との間のエネルギー障壁を低くするように、その発光層22との接触面で仕事関数を小さくする光透過性の導電性材料であればよい。そのため、陰極層21は、例えば前記発光層22との接触面に、貴金属の超薄膜(膜厚が5〜15nm程度のAu、Ag、Pd等の貴金属膜)を有した2層構造の透明電極であってもよい。
【0017】
各陰極層21は、それぞれ制御手段を構成する第1電源装置G1、第2電源装置G2及び第3電源装置G3の一端に電気的に接続されて、EL装置10を駆動するための駆動信号が、各電源装置G1,G2,G3から供給されるようになっている。
【0018】
そして、各電源装置G1,G2,G3からの駆動信号が対応する陰極層21に供給されると、各駆動信号に対応した電子が、それぞれ対応する発光層22に注入される。尚、本実施形態における各電源装置G1,G2,G3は、それぞれ対応する前記陰極層21に対し、独立した駆動信号を供給するようになっている。
【0019】
各発光層22は、それぞれ前記軸心Cを中心とした環状に形成される有機層であって、対応する前記陰極層21の外周面21aの全体にわたり積層されている。各発光層22は、それぞれ同じ発光層材料であるフルオレン−ジチオフェンコポリマー(以下単に、「F8T2」という。)によって形成されて白色の光Lを発光するように構成されているが、これに限らず、以下に示すような、公知の各種高分子の発光層材料や各種低分子の発光層材料を利用することができ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて同色(本実施形態では白色)の光を発光するものであればよい。
【0020】
高分子の発光層材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、ポリビニレンスチレン誘導体、及びそれらの共重合体、トリフェニルアミンやエチレンジアミン等を分子核とした各種デンドリマー等を利用することができる。
【0021】
低分子の発光層材料としては、例えば、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、クマリン誘導体物、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等の金属錯体等を利用することができる。
【0022】
そして、3つの発光層22は、陰極層21からの電子と陽極層24(正孔輸送層23)からの正孔の再結合で放出するエネルギーによってエキシトン(励起子)を生成し、エキシトンが基底状態に戻るときのエネルギー放出によって、蛍光あるいは燐光を発する(発光する)ようになっている。
【0023】
各正孔輸送層23は、それぞれ前記軸心Cを中心とした環状に形成される有機層であって、対応する前記発光層22の外周面22aの全体にわたり積層されている。各正孔輸送層23は、それぞれ同じ正孔輸送層材料であるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(以下単に、「PEDOT」という。)によって形成されているが、これに限らず、以下に示すような、公知の各種高分子の正孔輸送層材料や各種低分子の正孔輸送層材料を利用することができ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて利用することもできる。
【0024】
高分子の正孔輸送層材料としては、上記低分子構造を一部に含む(主鎖あるいは側鎖にする)高分子化合物、あるいはポリアニリン、ポリチオフェンビニレン、ポリチオフェン、α−ナフチルフェニルジアミン、「PEDOT」とポリスチレンスルホン酸との混合物(Baytron P、バイエル社商標)、トリフェニルアミンやエチレンジアミン等を分子核とした各種デンドリマー等を利用することができる。
【0025】
低分子の正孔輸送層材料としては、例えば、ベンジジン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチリルアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体、ピラゾリン誘導体、カルバゾール誘導体、ポルフィリン化合物等を利用することができる。
【0026】
上記する低分子の正孔輸送材料を用いる場合、正孔輸送層材料の中には、必要に応じて、バインダー(高分子バインダー)を添加するようにしてもよい。バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害せず、かつ、可視光の吸収率が低いものを用いるのが好ましく、具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリビニリデンフロライド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、このバインダーには、上記する高分子系の正孔輸送材料を用いてもよい。
【0027】
そして、3つの正孔輸送層23は、それぞれ陽極層24から注入された正孔を対応する発光層22に輸送するようになっている。
各陽極層24は、それぞれ前記軸心Cを中心とした環状に形成される透明電極であって、対応する正孔輸送層23の外周面23aの全体にわたり積層されている。各陽極層24は、それぞれ同じ陽極層形成材料であるITO(Indium−Tin−Oxide)によって形成されているが、これに限らず、対応する正孔輸送層23との接触面で、その仕事関数を大きくする光透過性の導電性材料であればよい。
【0028】
各陽極層24は、対応する第1電源装置G1、第2電源装置G2及び第3電源装置G3の一端に電気的に接続されて、EL装置10を駆動するための駆動信号が、各電源装置G1,G2,G3から供給されるようになっている。
【0029】
そして、各電源装置G1,G2,G3からの駆動信号が対応する陽極層24に供給されると、駆動信号に対応した正孔が、それぞれ対応する正孔輸送層23(発光層22)に注入される。
【0030】
各シート基板25は、それぞれ対応する前記陽極層24の外周面24aの全体にわたって配設されたガスバリヤ性を有する光透過性の可撓性シートであって、対応する前記発光層22や前記正孔輸送層23等に対して、径方向外側からの水分や酸素等の侵入を遮断するようになっている。
【0031】
支持棒11の上下方向両端面11b,11cには、図1及び図2の2点鎖線で示すように、各EL素子12,13,14の上下方向両端面を覆う封止層26が形成されている。封止層26は、ガスバリヤ性を有した樹脂によって形成されて、各発光層22や正孔輸送層23に対して、両端面11b,11c側からの水分や酸素等の浸入を遮断するようになっている。
【0032】
そして、第1電源装置G1、第2電源装置G2及び第3電源装置G3を駆動して対応する陽極層24と陰極層21との間に電圧を印加する。すると、各陰極層21からの電子が対応する発光層22に移動し、各陽極層24からの正孔が正孔輸送層23を介して対応する発光層22に移動する。そして、各発光層22は、正孔と電子とを再結合して、再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)を生成し、生成したエキシトンの基底状態への遷移によって発光する。
【0033】
従って、EL装置10は、第1〜第3電源装置G1,G2,G3の駆動によって、各EL素子12,13,14からの合成された光Lを、軸心Cの径方向外側に向かって、等方的に出射することができ、積層した各EL素子12,13,14を独立して駆動することによって、EL装置10の調光範囲を拡張することができる。
【0034】
次に、上記するEL装置10の製造方法について、図3〜図7に従って説明する。
まず、図3に示すように、軸心Cを回転軸にして支持棒11を回転し、回転する前記支
持棒11に向かって前記陰極層材料(IZO)を蒸着あるいはスパッタする。そして、支持棒11の外周面11aの全体にわたる陰極層21を形成する。
【0035】
支持棒11に陰極層21を形成すると、図4に示すように、平面板状に配置したシート基板25の上下両側面(図1における内周面及び外周面)に、それぞれ陽極形成材料と陰極形成材料を蒸着成膜あるいはスパッタ成膜して、シート基板25の上下両側面に、それぞれ陽極層24と陰極層21を形成する。
【0036】
陰極層21及び陽極層24を形成すると、図5に示すように、陽極層24の上面24b(外周面24aと相対向する面)に、前記正孔輸送層材料の「PEDOT」を水系溶媒(例えば、水、メタノール等の低級アルコール、エトキシエタノール等のセロソルブ系溶媒等)に溶解させた液状体を塗布する。そして、塗布した液状体を乾燥して、陽極層24の上面24bの全体に、均一な膜厚の正孔輸送層23を形成する。
【0037】
正孔輸送層23を形成すると、正孔輸送層23の上面23b(外周面23aと相対向する面)に、前記発光層材料の「F8T2」を無極性有機溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロへキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等)に溶解させた液状体を塗布する。そして、塗布した液状体を乾燥して、正孔輸送層23の上面23bの全体に、均一な膜厚の発光層22を形成する。
【0038】
発光層22を形成すると、図6に示すように、支持棒11とシート基板25を窒素等の不活性ガスの雰囲気下に載置して、支持棒11(陰極層21の外周面21a)をシート基板25(発光層22の上面22b)に押圧しながら矢印方向に回転させる。
【0039】
そして、陰極層21の外周面21aの全体にわたり、シート基板25(発光層22)を巻き付けて、陰極層21の前記外周面21aを発光層22の上面22bに貼り合せる。これによって、支持棒11の外周面11aに、第1EL素子12を形成する。
【0040】
第1EL素子12を形成すると、以後同様に、陰極層21、発光層22、正孔輸送層23及び陽極層24を有したシート基板25を支持棒11に巻き付けて、第1EL素子12の外周に第2EL素子13を形成する。そして、図7に示すように陽極層24、正孔輸送層23及び発光層22を有したシート基板25を支持棒11に巻き付けて、第2EL素子13の外周に第3EL素子14を形成する。第1〜第3EL素子12,13,14を形成すると、シート基板25の貼り合わされた支持棒11の両端面11b,11cに、ガスバリヤ性を有した熱硬化性樹脂を塗布し、塗布した熱硬化性樹脂を所定の温度下で硬化して封止層26を形成する。これによって、調光範囲を拡張したEL装置10を製造することができる。
【0041】
次に、上記のように構成した本実施形態の効果を以下に記載する。
(1)上記実施形態によれば、透明電極である陰極層21と陽極層24との間に白色を発光するための発光層22を有した第1、第2及び第3EL素子12,13,14を、支持棒11の径方向外側に順次積層して、軸心Cから見て、各発光層22が断面円管状となるように構成した。従って、発光層22を径方向に積層した分だけ、EL装置10の輝度範囲を、支持棒11の径方向で等方的に拡大することができ、その調光範囲を拡張することができる。
【0042】
(2)上記実施形態によれば、第1、第2及び第3EL素子12,13,14を、それぞれ異なる第1、第2、第3電源装置G1,G2,G3によって駆動するようにした。従って、第1、第2及び第3EL素子12,13,14の発光輝度を層毎に変更することができ、EL装置10の調光範囲を、より確実に拡張することができる。
【0043】
(3)上記実施形態によれば、シート基板25に、陰極層21、発光層22、正孔輸送層23及び陽極層24を成膜し、そのシート基板25を支持棒11に巻き付けることによって、径方向に積層された第1、第2及び第3EL素子12,13,14を形成するようにした。従って、支持棒11に巻き付けるシート基板25の巻き数を調整することによって、発光層22の層数を容易に調整することができる。その結果、EL装置10の調光範囲の拡張を容易にすることができる。
【0044】
(4)上記実施形態によれば、発光させるEL素子を順次切り替えることによって、第1EL素子12、第2EL素子13、第3EL素子14の発光時間を平均化することができる。そのため、第1EL素子12、第2EL素子13、第3EL素子14の寿命を平均化することができ、EL装置10を長寿命化することができる。あるいは、予備的なEL素子を支持棒11に巻き付けるにことによって、巻き数の分だけ、EL装置10の長寿命化を図ることができる。
【0045】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、径方向に積層した発光体を、円環状に積層した第1EL素子12、第2EL素子13、第3EL素子14に具体化した。これに限らず、例えば図8に示すように、径方向に積層した発光体を、前記第1EL素子12を軸心Cから渦巻状に巻付けることによって構成するようにしてもよい。これによれば、1つのEL素子によって、径方向に積層された複数の発光体を構成することができ、EL装置10の部材点数を削減することができる。
・上記実施形態では、支持棒11を略円柱状に具体化したが、これに限らず、例えば支持棒11の断面が楕円形状や矩形状であってもよい。
・上記実施形態では、シート基板25に塗布成膜した発光層22及び正孔輸送層23を支持棒11に巻き付ける構成にした。これに限らず、例えば陰極層21を有した支持棒11を、発光層材料を含む液状体に浸漬して、陰極層21上に形成した液状膜を乾燥することにより発光層22を形成してもよい。さらには、発光層22を有した支持棒11を、正孔輸送層材料を含む液状体に浸漬して、発光層22上に形成した液状膜を乾燥することにより正孔輸送層23を形成してもよい。あるいは、蒸着等の気相プロセスによって発光層22や正孔輸送層23を形成する構成にしてもよい。これらの構成によれば、支持棒11の周方向に連続するEL素子(発光層22及び正孔輸送層23)を形成することができる。・上記実施形態では、発光体としてのEL素子を3層だけ積層する構成にしたが、これに限らず、2層であってもよく4層以上であってもよい。
・上記実施形態では、支持棒11の外周面11a側から順に、陰極層21、発光層22、正孔輸送層23、及び陽極層24の順序で構成するようにした。これに限らず、例えば支持棒11の外周面11a側から順に、陽極層24、正孔輸送層23、発光層22及び陰極層21の順序で構成するようにしてもよい。
・上記実施形態では、各EL素子に発光層22を一層のみ形成する構成にした。これに限らず、例えば少なくともいずれか1つのEL素子が、対応する発光層22と電荷発生層からなるユニットを複数積層した、いわゆるマルチフォトン構造であってもよい。
・上記実施形態では、シート基板25に形成した陽極層24に、対応する正孔輸送層23を積層する構成にした。これに限らず、例えば正孔輸送層23を省略する構成してもよく、あるいは陽極層24と正孔輸送層23との間に、対応する発光層22への正孔の注入効率を高めるための正孔注入層を形成する構成にしてもよい。
・上記実施形態では、シート基板25上に形成した正孔輸送層23に、対応する発光層22を積層する構成にした。これに限らず、例えば正孔輸送層23と発光層22との間に、電子の移動を抑制する電子障壁層を形成する構成にしてもよい。
・上記実施形態では、陰極層21に、対応する発光層22を積層する構成にした。これに限らず、例えば陰極層21と発光層22との間に、陰極層21から注入された電子を発光
層22まで輸送する電子輸送層を形成する構成にしてもよい。あるいは、発光層22と対応する前記電子輸送層との間に、正孔の移動を抑制する正孔障壁層を形成する構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明を具体化したエレクトロルミネッセンス装置を示す概略斜視図。
【図2】同じく、エレクトロルミネッセンス装置を示す概略断面図。
【図3】同じく、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を説明する説明図。
【図4】同じく、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を説明する説明図。
【図5】同じく、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を説明する説明図。
【図6】同じく、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を説明する説明図。
【図7】同じく、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を説明する説明図。
【図8】変更例におけるエレクトロルミネッセンス装置を示す概略斜視図。
【符号の説明】
【0047】
10…エレクトロルミネッセンス装置、11…支持棒、12…発光体としての第1エレクトロルミネッセンス素子、13…発光体としての第2エレクトロルミネッセンス素子、14…発光体としての第3エレクトロルミネッセンス素子、21…電極層を構成する陰極層、22…発光層、23…正孔輸送層、24…電極層を構成する陽極層、25…シート基板、G1…制御手段を構成する第1電源装置、G2…制御手段を構成する第2電源装置、G3…制御手段を構成する第3電源装置、L…光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過する一対の電極層と前記一対の電極層の間に設けられた発光層とからなる発光体を備えたエレクトロルミネッセンス装置において、
同一色に対応した波長領域の光を出射する複数の前記発光体を、前記発光体の中心軸線から見て径方向に積層したことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス装置において、
前記発光体は、前記中心軸線から見て断面環状に積層されたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項3】
請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス装置において、
前記発光体は、前記中心軸線から見て断面渦巻状に積層されたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のエレクトロルミネッセンス装置において、
前記一対の電極層の間に正孔輸送層を設けたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のエレクトロルミネッセンス装置において、
前記発光体に印加する電圧を層毎に制御する制御手段を備えたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項6】
光を透過する一対の電極層と前記一対の電極層の間に設けられた発光層とからなる発光体を備えたエレクトロルミネッセンス装置の製造方法において、
光を透過する複数のシート基板上に、同一色に対応した波長領域の光を出射する前記発光体を形成し、複数の前記シート基板を支持棒の外側面に巻き付けて、複数の前記発光体を前記支持棒の径方向に積層するようにしたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−59099(P2007−59099A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240325(P2005−240325)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】