説明

エレクトロルミネッセント蛍光体

【課題】従来技術の紫色発光蛍光体よりも高いy値を有するエレクトロルミネッセント蛍光体を提供することを課題とする。
【解決手段】銅及び沃素で活性化された硫化亜鉛からなり、0.145〜0.155のx色座標及び0.085〜0.095のy色座標の発光を有するエレクトロルミネッセント蛍光体を提供する。当該蛍光体は、約0.08〜約0.90重量%の銅を含有し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫化亜鉛をベースとするエレクトロルミネッセント蛍光体に関する。より具体的には、本発明は、紫色を有する光を放つZnS:Cu・Iエレクトロルミネッセント蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス(EL)は、電界励起下での発光である。この機構に基づき、ELランプ及びELディスプレイは、ポータブルコンピューター、通信機器及び家庭用電化製品への高まりつつある需要のため、フラットパネルディスプレイの分野において多数の用途が見出されている。また、ELランプは、視野角とは無関係に均一な発光をも与え、しかもこれらのものは、機械的衝撃及び振動の影響を受けない。
【0003】
この2つの主要なELランプ構造は、一般に、薄膜及び厚膜と呼ばれている。薄膜ELランプは、CVDのような蒸着技術を使用してガラス基板上に誘電材料、蛍光体及び導電性酸化物の薄い層を交互に付着させることによって作られる。対照的に、厚膜ランプは、粉末を樹脂材料に懸濁させ、次いでこれらのものを慣用のスクリーン印刷技術を使用してプラスチックフィルム上に層状に塗布することによって作られる。従って、厚膜ELランプは、薄く、可撓性があり、しかも丈夫であるため、様々な照明の用途に好適であり得る。
【0004】
最も一般的には、厚膜用途のためのエレクトロルミネッセント蛍光体は、青色、青緑色、緑色又は橙色を放つ。欧州特許第1006170B1には、それぞれ0.150及び0.080の平均CIE x及びy色座標を有する発光スペクトルのエレクトロルミネッセント蛍光体が記載されている。
【特許文献1】欧州特許第1006170号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エレクトロルミネッセント用途向けの市場は、様々な色を要求するように拡大しているため、本発明の目的は、従来技術の紫色発光蛍光体よりも青みの強いの発光色、即ち、より高いy値を有するエレクトロルミネッセント蛍光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的に従って、0.145〜0.155のx色座標及び0.085〜0.095のy色座標を有する発光を生じさせ得るエレクトロルミネッセント蛍光体を提供する。この蛍光体は、硫化亜鉛をベースとし且つ銅及び沃素で活性化されたもの(ZnS:Cu・I)である。好ましくは、CIE色座標(1931)は、x座標については0.150〜0.155及びy座標については0.090〜0.095の範囲にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
発明の詳細な説明
本発明を、その他の及びさらなる目的、その利点並びに能力と共にさらに理解するために、次の開示及び特許請求の範囲を参照されたい。
【0008】
本発明のエレクトロルミネッセント蛍光体は、銅及び沃素で活性化された硫化亜鉛からなり、そして0.145〜0.155のx色座標及び0.085〜0.095のy色座標を有する発光を生じさせ得る。この蛍光体は、好ましくは、約0.08〜約0.90重量%(wt%)の銅を含有する。好ましい方法では、ZnS粉末にCuSO4又はCuIのような水溶液状の銅化合物をドープし、そしてこれらのものをよく混合し、そして乾燥オーブン内で少なくとも48時間にわたって乾燥させる。次いで、この均質な混合物を好適な量のZnO、S及び沃素含有溶剤とブレンドする。この沃素含有溶剤は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の沃化物、例えば、MgI2及びNaIの混合物であることができる。好ましくは、このブレンドは、7重量%の沃化マグネシウム及び1重量%の沃化ナトリウムを含有するであろう。
【0009】
最初の焼成工程において、このブレンドされた混合物を空気中で約1020℃〜約1100℃の温度で約2〜約3時間にわたって焼成する。室温にまで急冷(好ましくは、るつぼ上に直接圧縮空気を吹き込むことによって達成される)した後に、粉末を水洗して溶剤を除去する。次いで、この材料を動かして欠陥を引き起こす(例えば、低強度摩砕、混和又は超音波処理)。
【0010】
次いで、この粉末を、順次、酸、NaOHとDTPA(ジエチレントリアミンペンタ酢酸)とH22との溶液で洗浄し、最後に水で洗浄して残留化学物質を除去する。乾燥後に、この第1工程材料を酸化亜鉛及び銅源、好ましくは硫酸銅とブレンドする。特に、この第1工程焼成材料を10〜20重量%の酸化亜鉛及び0.1〜1重量%の無水硫酸銅とブレンドする。この混合物をブレンドし、次いで第2工程焼成工程において空気中で約1.5〜約3.5時間にわたって約650℃〜約850℃の温度で焼成する。次いで、このケークを炉の外で室温にまで冷却し、水洗し、次いで再度HCl、NaOH−DTPA−H22溶液及び水で洗浄していかなる化学残留物も除去する。乾燥後に、粉末を適切な寸法にまで選別する。
【実施例】
【0011】
例1
1.17グラム量の無水CuSO4を、550.0グラムの非塩素化ZnSが添加された最小量の加温脱イオン(DI)水に溶解させてスラリーを形成させた。このスラリーを110℃で48時間にわたって乾燥させた。この乾燥混合物を7重量%のMgI2、1重量%のNaI、8重量%のS及び0.5重量%のZnOと互いにブレンドした。このブレンドを蓋付きるつぼ内に置き、そして炉内で2.5時間にわたって1150℃で焼成した。この炉から焼成されたケークを取り出し、圧縮空気で素早く冷却した。この焼成材料を加温DI水で洗浄し、そして乾燥させた。次いで、この乾燥材料の200グラム量をDI水と混合させ、30分間にわたって超音波処理して結晶構造内に欠陥を誘導させ、濾過し、そして乾燥させた。
【0012】
この処理された材料をHClで洗浄し、次いでDTPA−NaOH−H22溶液(4重量%のDTPA、3.8重量%のNaOH、3重量%のH22(30%溶液))で洗浄した。4回のDI水での洗浄後に、この材料を110℃で12時間にわたって乾燥させ、そして100メッシュの篩いを通して選別した。この選別材料に、0.53重量%の無水CuSO4及び10重量%のZnOを添加し、そしてこの混合材料を再ブレンドした。この再ブレンド材料を蓋付きるつぼ内に置き、そして730℃で2.25時間焼成した。この第2工程焼成材料を水で2回洗浄し、塩酸で2回洗浄し、次いで洗浄溶液が4以下のpHを有するまで加温DI水で数回洗浄した。次いで、このものをDTPA−NaOH−H22溶液で洗浄し、DI水でさらに洗浄して残留化学物質を除去し、次いで濾過し、乾燥させ、そして500メッシュのステンレス鋼製の篩いを通して選別して最終蛍光体を形成させた。
【0013】
例2
この蛍光体は例1と同様に作製したが、ただし、第1工程焼成の前に1.40グラムのCuIを使用してZnSスラリーを作製した。
例1及び2からの蛍光体を50%R.H、70°Fの環境で100V及び400Hzで動作される慣用型の厚膜エレクトロルミネッセントランプで試験した。この試験用ランプは、〜40μmの厚さの蛍光体層及びほぼ26μmの厚さのチタン酸バリウム誘電体層からなる。これらのランプは、蛍光体と、アセトン及びジメチルホルムアミドの混合物中に溶解されたシアノ樹脂結合剤(信越化学)とを混合することによって作製される。特に、この結合剤は、575gのアセトンと、575gのジメチルホルムアミドと、400gのシアノ樹脂とを混合させることによって作られる。液状結合剤中の蛍光体のパーセンテージは50重量%であり、結合剤−蛍光体混合物を乾燥させた後の蛍光体のパーセンテージは80重量%である。この蛍光体懸濁液を、インジウム−錫酸化物(ITO)の透明な導電体層を有する0.007〜0.0075インチの厚さのPETフィルム(CPFilms社製)にナイフ塗布する。乾燥後に、チタン酸バリウム層を、チタン酸バリウムをシアノ樹脂結合剤に分散させてなる懸濁液を使用して同一の方法で蛍光体層上に塗布する。特に、結合剤−チタン酸バリウム混合物は、375gのシアノ樹脂結合剤溶液と、375gのチタン酸バリウムと、82.5gのジメチルホルムアミドとを混合させることによって作られる。乾燥後の結合剤中のチタン酸バリウムのパーセンテージは80重量%である。50〜80μmの厚さのグラファイト層からなる背面電極を、グラファイト懸濁液(Acheson Colloids)を使用して乾燥チタン酸バリウム誘電体層に適用する。リード線を取付、そしてランプ全体に透明な可撓性フィルム(ハニーウェル社製Aclam TC200)を積層する(両面に適用する)。これらのランプを、これらのランプを安定化させ且つ代表的な測定値を得るために、それらの輝度を測定する前に24時間にわたって動作させた。これらの蛍光体の光度測定特性を表1に与える。ここで使用するときに、「輝度」とは、100V及び400Hzで24時間にわたって動作された慣用型の厚膜エレクトロルミネッセントランプにおける蛍光体の輝度を意味する。「半減期」とは、蛍光体の輝度がその初期の値の1/2に到達するのにかかる時間である。効果は、1ワット当たりのルーメン(LPW)で表す。
【0014】
【表1】

【0015】
現時点で本発明の好ましい具体例であると思われるものを示し且つ記載してきたが、当業者であれば、特許請求の範囲によって規定されるような本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更及び改変をなし得ることは明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.145〜0.155のx色座標及び0.085〜0.095のy色座標の発光を有するエレクトロルミネッセント蛍光体。
【請求項2】
蛍光体が銅及び沃素で活性化された硫化亜鉛からなる、請求項1に記載のエレクトロルミネッセント蛍光体。
【請求項3】
y色座標が0.090〜0.095である、請求項1に記載のエレクトロルミネッセント蛍光体。
【請求項4】
蛍光体が約0.08〜約0.9重量%の銅を含有する、請求項2に記載のエレクトロルミネッセント蛍光体。
【請求項5】
x色座標が0.150〜0.155である、請求項3に記載のエレクトロルミネッセント蛍光体。
【請求項6】
蛍光体が銅及び沃素で活性化された硫化亜鉛からなる、請求項5に記載のエレクトロルミネッセント蛍光体。
【請求項7】
蛍光体が約0.08〜約0.9重量%の銅を含有する、請求項6に記載のエレクトロルミネッセント蛍光体。

【公開番号】特開2006−188692(P2006−188692A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375124(P2005−375124)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(394001685)オスラム・シルバニア・インコーポレイテッド (68)
【Fターム(参考)】