説明

エレベ−タの出入口安全装置

【発明の詳細な説明】
[発明の目的]
(産業上の利用分野)
本発明は、エレベータの出入口安全装置に関するものである。
(従来の技術)
一般に、エレベータは、乗降用のドアとして、通常、乗降場用ドアとかご室用ドアとに別れた横開き式のものが多く用いられており、利用客は、各階の乗降場側の出入口に設置された呼びボタンを押してかご室を呼び、乗降場及びかご室のドアが開いたら乗り込み、かご室の出入口側に設置された目的階の押しボタンを押し、ドアを閉じてかご室を目的階に昇降移動させた後、ドアを開いて乗場側へ降りるようになっている。
ところで、このようなエレベータにおいては、不特定多数の利用客が無意識のうちにかご室の呼び込み、ドアの開閉、乗降などといった動作を繰返しているため、乗降時の安全を確保する上で、ドアには各種の安全装置が設けられている。
そして、この種のドア閉め動作中の安全装置としては、通常、機械式セフティ、電磁気式セフティ、超音波センサー、光電スイッチなどが用いられいるのに対して、ドア開時の安全装置には、十分なものが提供されていないのが実情であり、このため、特にエレベータにあっては、防火上の規制によりドアを鋼板で作り窓を取付けていない場合が多いことから、自動ドアや、電車、バス等のドアと異なり、何時ドアが開くか判別できないことがある。
また、かご室を各階の乗場側で待つ時には、かご室の位置表示器を常に見つめていないと、かご室の到着が判りにくいし、かご室内に乗っている時は、目的階以外でも乗場側からの呼び出しによって、突然ドアが開くことがある。
このような時、例えば幼児等が乗場側で遊んでいて、乗場側のドアに寄りかかっていたり、あるいはかご室内が満員状態で、かご室側のドアに乗客が押しつけられていたりすると、ドア開動作時に手や指が出入口を形成する枠とドアとの間に引き込まれて怪我をする危険性があり、このような場合の十分な安全対策も必要である。
そこで、この種の安全装置としては、従来、第6図に示すように、例えばかご室1側の出入口2を形成する縦枠3とドア4との間の間隙aに手指Hが挾まれた時、ドア4の撓みを検知したり、縦枠3にテープスイッチを取り付けることにより、このテープスイッチが手指Hで押されたときにスイッチング動作させたり、また、縦枠3の一部を可動自在にして、手指Hで押されたときの縦枠3の動きに応じて、その裏面側に設置したスイッチを動作させるなどしたものが種々提案されている。
(発明が解決しようとする問題点)
しかしながら、上記した従来の安全装置では、いずれも手指Hが、ドア4と枠3との間に挾まれたことを直接検出するものであって、大きな怪我は防止できるものの、手指等が挾まれることには変わりがなく、場合によっては小さな怪我を生じさせる危険があるといった問題があった。
本発明は、上記の事情のもとになされたもので、その目的とするところは、従来の安全装置がもっていた本質的な問題点、すなわち、手指等が挾まれてから検出するのでなく、手指等が挾まれる前に手前等の異物を検出することができるようにしたより安全性の高いエレベータの出入口安全装置を提供することにある。
[発明の構成]
(問題点を解決するための手段)
上記した問題点を解決するために、本発明は、かご室または乗降場の出入口を形成する縦枠に対し一定の隙間を維持させて横開き式のドアを開閉自在に設置したエレベータの出入口において、前記縦枠のドアが対面する側の長手方向に凹部を設け、この凹部内の長手方向に沿って光を投受光させた光電センサからなる異物検知手段を設けてなる構成としたものである。
(作 用)
すなわち、本発明は、上記の構成とすることによって、エレベータの出入口を形成する縦枠のドアが対面する側の長手方向に設けた凹部内に光を投受光させた光電センサからなる異物検知手段を設けるようにしたことから、手指等がドアと対面する縦枠の近辺に近づいて凹部に挿入されると同時に光電センサで異物を検知することができるため、この光電センサによる異物の検知信号をドアの開閉機構に連動させてドアの開閉を即時に停止させるように制御させれば、手指等がドアと縦枠との間に挟まれる前にドアの開閉を停止させることができ、これによって、小さな怪我をも未然に防止することができ、危険を回避させることが可能になる。
(実 施 例)
以下、本発明の一実施例を第1図から第5図に示す断面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明に係る図示の実施例において、第6図に示す従来のエレベータの出入口と構成が重複する部分は同一符号を用いて説明する。
第1図及び第2図に示すように、かご室1の出入口2を形成する縦枠3には、ドア4と対向した面に、上端部と下端部とを100mm程度を残して長手方向に凹部31が設けられ、この凹部31の上下端の終端部に光電センサ5を構成する投光器5a及び受光器5bをそれぞれ対面させて内蔵し、光軸Lが前記凹部31の内部長手方向に沿って照射されるようになっている。
ところで、上記凹部31の大きさは、指先がドア4側に接することなく挿入し得る最小の大きさとし、約15mm〜20mm角程度の大きさとなっているもので、また、前記光電センサ5の出力信号はケーブルを介しドア制御回路に入力され、ドア開動作中に信号入力があれば、ドア開動作を一時停止、又は反転して閉動作をさせる等のドア駆動の変更を行なうような制御系を形成している。
さらに、上記かご室1は、出入口2を形成する縦枠3の左右方向が内装パネル6に固定され、その上部をインジケータ7を内蔵した幕板8に固定してなるとともに、この幕板8を天井9に固定することにより構成されている。
一方、上記かご室1の出入口2を横開き式に開閉する左右一対のかご室側ドア4は、開閉端側にクッションゴム10が固定される化粧目地11を装着してなるとともに、上部にドアハンガ12によって回転支持されたハンガローラ13を、前記かご室1側に固定されているドアレール14に吊り下げられ、またその下部は、前記かご室1の床に固定された敷居15の溝にドアシュー16が挿入されており、開方向にガイドされるようになっている。
すなわち、上記したドア安全装置は、第3図及び第4図に示すように、ドア開閉動作中にエレベータ乗客の手指Hが縦枠3とドア4の間隙aに近づいて凹部31に差し込まれると、光軸Lが遮断され投光器5aからの光が受光器5bに届かなくなり、これによって、ドア開動作を制限し、手指Hが縦枠3とドア4の間隙Aに挟まれるのを防止し得るようになっているものである。そして、このように、縦枠3の近辺に近づいた手指Hは、凹部31に挿入された時、光電センサ5により検出され、検出信号によりドア開制御を変更させ、ドア4と縦枠3に挾まれる前にドアを止めるなどして危険を回避することを可能にしている。
また、第5図に示すように、かご室1内が満員状態などで乗客Mが出入口2の縦枠3の近くに立っている時にドア4が開いても、光軸Lが縦枠3の凹部31を通っていることから、乗客の体や腕等は縦枠3の側面に阻止されて凹部31の中にまで入り込まないため、光軸Lを遮ることがなく、ドア開動作に支障がない。さらに、ドアが開き始めて出入口近傍を乗客が乗り降りする時も、同様であり、ドア開動作に問題はない。この場合、乗客の体の一部で凹部31より小さい大きさのものが縦枠3とドア4の間隙aに接近した時のみ凹部31の中に入るので、このときには、光軸Lを遮って、間隙aに挟まれる前に確実に検知することが可能となる。そして、これによって、縦枠3とドア4の隙に挟まれることのない大きさのものが、そばに来ても検知せず、挟まれる可能性のある一定の大きさ以下のものが近づいた時のみ選択的に動作し得るようになっているものである。
なお、本発明は、上記の実施例に限定されないものであり、かご側のみではなく、乗場側のドアにも使用可能である。
また、出入口を形成する縦枠の長手方向の一部のみを凹部としたが、製造上の作り易さの点で、枠全長にわたり凹部を設け、光電センサは幕板部と床面に設置しても本発明と同様な作用・効果を発揮させることができる。
さらに、上記光電センサの種別についても、具体例では投、受光器をそれぞれ一つずつ有する透過形のものを用いて説明したが、投受光器を一体とし、対向面に反射板を設置してなる反射形の光電センサを用いてもよい。
さらにまた、枠に形成した凹部の機能は、ドアとの間隙に挟まれ得る大きさのものを識別することにあり、通常の乗降での誤動作を防いでいるが、特に枠を凹形状とせずに、枠の外側で、ドアとの際の近傍に光軸を設け、別部品として光軸をガードする板状、又は棒状のものを枠や、床、幕板等に固定して設置してもよいし、あるいは集光レンズ等で光軸を絞り枠とドアの隙の直前前方に光軸を設置し戸開動作前に障害物の接近を検出し警告を与える等の応用も考えられる。
その他、本発明は、本発明の要旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
[発明の効果]
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、エレベータの出入口を形成する縦枠のドアが対面する側の長手方向に設けた凹部内に光を投受光させた光電センサからなる異物検知手段を設けてなることから、手指等がドアと対面する縦枠の近辺に近づいて凹部に挿入されると同時に光電センサで異物を検知することができるため、この光電センサによる異物の検知信号をドアの開閉機構に連動させてドアの開閉を即時に停止させるように制御させれば、手指等がドアと縦枠との間に挟まれる前にドアの開閉を停止させることができ、これによって、小さな怪我をも未然に防止することができ、危険を回避させることができるというすぐれた効果を有するエレベータの出入口安全装置を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係るエレベータ出入口安全装置を備えた出入口の一実施例を示す平面図、第2図は同じく出入口の縦断面図、第3図は同じく要部概略斜視図、第4図は同じく動作状態を示す説明図、第5図は満員状態に於ける安全装置の説明図、第6図は従来構造のエレベータ出入口における動作状態を示す説明図である。
1……かご室、2……出入口、3……縦枠、31……凹部、4……ドア、5……光電センサ、L……光軸、H……手指。

【特許請求の範囲】
【請求項1】かご室または乗降場の出入口を形成する縦枠に対し一定の隙間を維持させて横開き式のドアを開閉自在に設置したエレベータの出入口において、前記縦枠のドアが対面する側の長手方向に凹部を設け、この凹部内の長手方向に沿って光を投受光させた光電センサからなる異物検知手段を設けたことを特徴とするエレベータの出入口安全装置。

【第1図】
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【第4図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第5図】
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【第6図】
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【公告番号】特公平7−106867
【公告日】平成7年(1995)11月15日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭61−208241
【出願日】昭和61年(1986)9月4日
【公開番号】特開昭63−66084
【公開日】昭和63年(1988)3月24日
【出願人】(999999999)株式会社東芝
【参考文献】
【文献】実開昭53−49868(JP,U)