エレベータのかご保持装置
【課題】エレベータの保守作業時に、かごの自走による上昇を速やかに停止させることのできるエレベータのかご保持装置を得ることを目的とする。
【解決手段】かごガイドレール13aとの間に楔状空間19を形成する基台側壁面17aを有する基台17と、かご移動許可位置と、かご上昇規制位置との間を移動可能に楔状空間19に配設された楔ブロック32と、楔ブロック32をかご移動許可位置に位置させる第1位置と楔ブロック32をかご上昇規制位置に位置させる第2位置との間を移動可能に配設された第1の可動鉄板25と、第1の可動鉄板25を第1の支持部材20に係合させて第1位置に保持する第1のコイルばね30aと、第1のコイルばね30aの付勢力に抗して第1の可動鉄板25を第2位置に移動させ、第1の可動鉄板25を第2位置に保持する第1の電磁石22と、かご4の上昇を検知して第1の電磁石22に通電させる通電手段61と、を備えている。
【解決手段】かごガイドレール13aとの間に楔状空間19を形成する基台側壁面17aを有する基台17と、かご移動許可位置と、かご上昇規制位置との間を移動可能に楔状空間19に配設された楔ブロック32と、楔ブロック32をかご移動許可位置に位置させる第1位置と楔ブロック32をかご上昇規制位置に位置させる第2位置との間を移動可能に配設された第1の可動鉄板25と、第1の可動鉄板25を第1の支持部材20に係合させて第1位置に保持する第1のコイルばね30aと、第1のコイルばね30aの付勢力に抗して第1の可動鉄板25を第2位置に移動させ、第1の可動鉄板25を第2位置に保持する第1の電磁石22と、かご4の上昇を検知して第1の電磁石22に通電させる通電手段61と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータの保守作業時、かごの自走による上昇を速やかに停止させるエレベータのかご保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータのかご保持装置は、保守員がかご上で保守作業を行う際に主ガイドレールと対向するかご上部の位置に設置された頂部ストッパーと、頂部ストッパーと主ガイドレールとの間に形成される隙間に上方からセットされるかごロックキーと、かごロックキーの上部と対向するように主ガイドレールの上端部に固定された作動アームと、を備えている(例えば、特許文献1参照)。
このとき、頂部ストッパーと主ガイドレールとの間には、テーパ状の隙間が上方に向かって幅広になるように形成され、楔状のかごロックキーがテーパ状の隙間に主ガイドレールから隙間をあけてセットされている。
【0003】
ここで、保守員が、かごを昇降路内の所定位置に停止させてかご上で保守作業を行う際、かごを昇降路内の所定位置に停止させておくためのブレーキが故障したりすると、かごは昇降路の最上部に向かって自走する。そして、かごロックキーが作動アームの位置までくると、かごロックキーの頂部が作動アームに当接して、頂部ストッパーと主ガイドレールとの間に食い込むようになっている。これにより、かごの自走による上昇が停止され、このとき、かごの上面と昇降路の頂部との間には保守時頂部安全スペースが確保されていた。即ち、かご上で保守作業を行っていた保守員のかご上での居場所が確保されていた。
【0004】
【特許文献1】特開2005−343579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のエレベータのかご保持装置では、かごロックキーの頂部が作動アームに当接されるまでの間かごの自走による上昇を停止させることができない。従って、かごの自走による上昇が停止するまでの間、かご上の保守員に計り知れない緊張感を与えるという問題があった。
【0006】
この発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、エレベータの保守作業時に、かごの自走による上昇を速やかに停止させることのできるエレベータのかご保持装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明によるエレベータのかご保持装置は、かごの上部に着脱自在に配設され、かごガイドレールとの間に上方から下方に向かって漸次狭くなる楔状空間を形成する傾斜壁面を有する基台と、かごガイドレールから離間するかご移動許可位置と、かごガイドレールと傾斜壁面とに密接するかご上昇規制位置との間を移動可能に楔状空間に配設された楔ブロックと、楔ブロックに連結され、楔ブロックをかご移動許可位置に位置させる第1位置と楔ブロックをかご上昇規制位置に位置させる第2位置との間を移動可能に配設された第1の可動部材と、第1の可動部材を第1位置に移動させる方向に付勢するように配設され、第1の可動部材を第1位置に保持する第1の弾性部材と、第1の弾性部材の付勢力に抗して第1の可動部材を第2位置に移動させる電磁力を発生し、第1の可動部材を第2位置に保持する第1の電磁石と、かごの上昇を検知して第1の電磁石に通電させる通電手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、万一、エレベータの保守作業時にかごが自走によって上昇しても、楔ブロックが楔状空間に食い込むので、かごの自走による上昇を速やかに停止させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るかご保持装置が配設されたエレベータの模式図、図2は図1のII−II矢視断面図であり、楔ブロックがかご移動許可位置にあるときを示している。図3は図2のIII−III矢視断面図、図4は図2のB方向からみた正面図であり、作動部材が自走監視位置にあるときを示している。図5は図4のC方向から見た第2の可動鉄板周辺の側面図、図6は図2のVI−VI矢視要部断面図であり、第1の可動鉄板、楔ブロック、及び回動軸部材のみを図示している。図7はこの発明の実施の形態1に係るかご保持装置のシステム構成図、図8はこの発明の実施の形態1に係るかご保持装置の断面図であり、楔ブロックがかご上昇規制位置にあるときを示している。図9はこの発明の実施の形態1に係るかご保持装置の正面図であり、作動部材が自走検出位置にあるときを示している。図10はこの発明の実施の形態1に係るかご保持装置の正面図であり、作動部材が自走監視解除位置にあるときを示している。
【0010】
図1において、エレベータ1は機械室レスタイプのものであり、昇降路壁2に囲まれた昇降路3内を昇降自在に配設されたかご4、駆動綱車6と電動機(図示せず)を有する巻上機5、一対のかごガイドレール13a,13b、メインロープ8、つり合いおもり9、及びエレベータ制御盤10などを備えている。
【0011】
巻上機5は、昇降路3のピット3aに配設されている。そして、駆動綱車6は電動機の回転に連動して軸まわりに回転するようになっている。
また、メインロープ8は、その一端が昇降路3の天井に固着されて天井から垂下され、かご4の下部に設けられている一対の転向プーリ11a,11bに掛け渡されて反転している。さらに、メインロープ8は、昇降路3の天井に設置されたプーリ12aに掛け渡されて再び反転し、駆動綱車6に巻きかけられて再び反転し、さらに、昇降路3の天井に設置されたプーリ12bに掛け渡されて再び反転し、つり合いおもり9に固着されたプーリ12cに掛け渡されて再び反転している。そして、メインロープ8の他端が昇降路3の天井に固定されている。
【0012】
また、一対のかごガイドレール13a,13bのそれぞれが、長手方向を鉛直方向に一致させ、かご側壁面4a,4bのそれぞれと所定の間隔をあけてピット3aの床から昇降路3の天井近傍に至るまで延設されている。なお、かご側壁面4a,4bに垂直な方向をかご幅方向とし、かご幅方向に垂直かつ水平な方向を奥行き方向とする。即ち、かご側壁面4a,4bの上縁の長さ方向は、奥行き方向に一致している。
【0013】
また、エレベータ制御盤10は、昇降路壁2に固定されている。そして、エレベータ制御盤10は、エレベータ1の運行を制御するためのプログラムが書き込まれたROM(図示せず)や当該プログラムの内容に従ってエレベータ1の運行を制御するためのCPU(図示せず)等を有し、プログラムに基づいたエレベータ1の運行制御を行っている。そして、エレベータ制御盤10は、電動機を介した駆動綱車6の回転を任意に制御することが可能になっている。そして、駆動綱車6とメインロープ8との間には摩擦力が働いているので、メインロープ8は駆動綱車6の回転に応じて移動される。これにより、かご4及びつり合いおもり9が昇降路3内を昇降するようになっている。また、図示しないが、ブレーキが駆動綱車6の回転を停止可能に配設されている。そして、エレベータ制御盤10は、任意にかご4の昇降移動とその停止を制御することができるようになっている。
【0014】
そして、かご保持装置15Aの主要部が、かご4の上部外壁面に配設されている。
また、かごガイドレール13aは、図3及び図4に示されるように、断面T字状に形成されている。そして、T字の突出側を形成するレール突出部14は、一方のかご側壁面4aと所定の間隔をあけて対面するレール突出端面14aと、レール突出端面14aに垂直かつ互いに平行なレール側壁面14b,14cと、を有している。
【0015】
図2において、かご保持装置15Aは、かご上昇規制機構16、自走検出機構40、及び保守運転制御盤70を有している。そして、かご上昇規制機構16及び自走検出機構40は、かご4の上部外壁面上で一方のかごガイドレール13aの位置に合わせて配設されている、また、保守運転制御盤70がかご4の上部外壁面の所定の位置に配設されている。
【0016】
次いで、かご上昇規制機構16の詳細について説明する。
図2〜図4において、かご上昇規制機構16は、基台17、第1の支持部材20、第1の電磁石22、第1の可動部材としての第1の可動鉄板25、第1の弾性部材としての第1のコイルばね30a、楔ブロック32、及び回動軸部材35を有している。
基台17は、直方体状に形成され、凹部18が直方体の一面に開口するように、かつ、当該一面を形成する4辺のうち、平行な2辺間を接続するように形成されている。そして、基台17は、凹部18の溝方向を鉛直方向(かごガイドレール13aの長さ方向)に一致させ、凹部18を形成する両基台側壁面17a,17bと底面17cとで、レール突出部14を囲むようにかご4の上部外壁面に着脱自在に固定されている。
【0017】
そして、傾斜壁面としての一方の基台側壁面17aは、かごガイドレール13aの上方から下方に向かうにつれて一方のレール側壁面14bとの間の距離が漸次短くなるように傾斜されている。つまり、楔状空間19が、かごガイドレール13aの上方から下方に向かって間隔が漸次狭くなるように、レール側壁面14bと基台側壁面17aとの間に形成されている。また、他方の基台側壁面17bと他方のレール側壁面14cとの隙間、及びレール突出端面14aと底面17cとの隙間は均一になっている。
【0018】
第1の支持部材20は、矩形平板状に形成され、楔状空間19から奥行き方向に所定距離だけ離間した位置でレール側壁面14bと相対するように、基台17に固定されている。また、上方に開口する第1の嵌合凹部21が、第1の支持部材20の突出端側を所定の深さに切り欠いて形成され、図3及び図4に示されるように、切り欠きの両側に第1の差込部20a,20bが形成されている。また、第1の嵌合凹部21の底面が、上方に向けて水平に配置されて第1の支持面20cを構成している。
【0019】
第1の電磁石22は第1の鉄心23及び第1のコイル24を有している。そして、第1の鉄心23は、第1の支持部材20よりレール側壁面14b側で、一端面を基台17の上面に合わせて固定されている。このとき、第1の鉄心23の他端面の高さは、第1の支持面20cの高さに一致している。また、第1のコイル24は、第1の鉄心23の外周面に巻回されている。
【0020】
また、第1の可動鉄板25は矩形平板状に形成されている。そして、第1の可動鉄板25は、長手方向を奥行き方向に合わせて一面を基台17の上面に向け、長手方向の一端側が楔状空間19の上方に位置するように配置されている。また、一対の第1の差込凹部26a,26bのそれぞれが、図3に示されるように、第1の可動鉄板25の両長辺に、当該長辺の中間より他端側で長手方向の位置を一致させて開口するように形成されている。そして、第1の差込部20a,20bのそれぞれが、第1の差込凹部26a,26bのそれぞれに遊嵌状態に差し込まれている。さらに、第1の可動鉄板25が、第1の嵌合凹部21に遊嵌されて、第1の支持面20cに係合可能となっている。
【0021】
そして、第1のコイルばね30aが、奥行き方向に関し、第1の電磁石22との間に第1の支持部材20が位置するように配置されている。そして、第1のコイルばね30aの両端は、第1の可動鉄板25の一面(下面)と基台17の上面にそれぞれ固定されている。このとき、第1のコイルばね30aの付勢力は、第1の可動鉄板25の長手方向の他端を引き下げるように働いている。
【0022】
楔ブロック32は、断面楔状に形成され、その主要部が楔状空間19内に配置されている。このとき、楔ブロック32は、基準面32a、及び基準面32aとの間隔が漸次広くなる摺接面32bを有し、基準面32aに対する摺接面32bの傾斜角度が、レール側壁面14bに対する基台側壁面17aの傾斜角度と同じになるように形成されている。そして、楔ブロック32は、基準面32aがレール側壁面14bと相対するように、かつ、摺接面32bが基台側壁面17a上に載置されるように楔状空間19に配置されている。
【0023】
また、第1の可動鉄板25は、図6に示されるように、回動軸部材35を介して楔ブロック32に連結されている。
即ち、貫通孔32cが、楔ブロック32の上端近傍を基準面32aに平行かつ水平方向に貫通するように形成されている。また、回動軸部材35は、軸部35a、及び軸部35aの両端をそれぞれ同方向に垂直に折り曲げて形成した取付部35b,35cを有している。そして、軸部35aが貫通孔32cに遊嵌状態に挿通され、取付部35b,35cの先端のそれぞれが、第1の可動鉄板25の長手方向の一端側の下面に固定されている。これにより、楔ブロック32は、回動軸部材35の軸部35a周りに回動可能となっている。
【0024】
次いで、自走検出機構40の詳細について説明する。
図2〜図5において、自走検出機構40は、支持本体41、第2の支持部材43、第3の支持部材45、監視切替用電磁石50、第2の可動部材としての第2の可動鉄板55、及び通電手段61を有している。
【0025】
支持本体41は、平板状に形成され、楔状空間19から奥行き方向に所定距離離れた位置で、レール突出端面14aと相対し、かつ基台17の上方に突出するように基台17に固定されている。
また、第2の支持部材43は矩形平板状に形成され、支持本体41の上端からかごガイドレール13aと反対側に水平に延出している。
【0026】
また、レール突出端面14aと反対側に向けて開口する第2の嵌合凹部44が、第2の支持部材43の突出端側を所定の深さに切り欠いて形成され、図3及び図5に示されるように、第2の差込部43a,43bが切り欠きの両側に形成されている。なお、第2の嵌合凹部44の底面を第2の支持面43cとする。また、第2の差込部43a,43bの先端側には、回動規制ストッパ47a,47bが、第2の差込部43a,43bの上面から延出するように当該面に固着されている。
【0027】
また、第3の支持部材45は矩形平板状に形成され、第2の支持部材43の下方に所定距離離間した位置で第2の支持部材43と相対するように支持本体41に固定されている。
また、レール突出端面14aと反対側に向けて開口する第3の嵌合凹部46が、第3の支持部材45の突出端側を所定の深さに切り欠いて形成され、図5に示されるように、第3の差込部45a,45bが切り欠きの両側に形成されている。なお、第3の嵌合凹部46の底面を第3の支持面45cとする。
【0028】
また、監視切替用電磁石50は第2の鉄心51及び第2のコイル52を有している。そして、監視切替用電磁石50は、鉛直方向に関し、即ち、第2の支持部材43と第3の支持部材45との離間方向に関して、第2の支持部材43と第3の支持部材45との間に配設されている。第2の鉄心51は、軸方向をかご幅方向に一致させて配置され、第2の鉄心51の一端面が支持本体41に固定されている。
【0029】
第2の可動鉄板55は、矩形平板状に形成されている。そして、第2の可動鉄板55は、レール突出端面14aと相対するように、長手方向の一端を下方に向け、第2の支持部材43及び第3の支持部材45の突出端側に配置されている。
【0030】
そして、監視切替用付勢部材としての監視切替用コイルばね60が、第3の支持部材45よりさらに下方に配置されている。そして、監視切替用コイルばね60の両端のそれぞれが、第2の可動鉄板55の長手方向の一端(下端)側と、支持本体41とに固定されている。このとき、監視切替用コイルばね60の付勢力は、第2の可動鉄板55の下端側をかごガイドレール13a側に引っ張る方向に働いている。
【0031】
また、一対の第2の差込凹部56a,56bのそれぞれが、図5に示されるように、第2の可動鉄板55の両長辺のそれぞれの上端から下方に所定の距離だけ離間した位置で開口するように形成されている。さらに、一対の第3の差込凹部57a,57bのそれぞれが、第2の差込凹部56a,56bのそれぞれから下方に所定の距離をあけ、両長辺のそれぞれに開口するように形成されている。
【0032】
そして、第2の差込部43a,43bのそれぞれ及び第3の差込部45a,45bのそれぞれが、第2の差込凹部56a,56bのそれぞれ及び第3の差込凹部57a,57bのそれぞれに遊嵌状態に差し込まれている。また、第2の可動鉄板55は、第2の嵌合凹部44及び第3の嵌合凹部46のそれぞれに遊嵌されている。
【0033】
このとき、第3の差込部45a,45bの上面に、第3の差込凹部57a,57bのそれぞれの上側の側壁が当接し、第3の差込部45a,45bの下面と第3の差込凹部57a,57bの下側の側壁との間には所定の隙間があいている。また、第2の差込部43a,43bの両面のそれぞれと、第2の差込凹部56a,56bの両側壁のそれぞれとの間には所定の隙間があいている。また、第2の可動鉄板55と監視切替用電磁石50の他端面とは所定の隙間があいている。
【0034】
通電手段61は、接点支持部材62、導通切替手段としての一対の自走検出用接点63a,63b、及び作動部材64Aを有している。
接点支持部材62は、図4に示されるようにT字状に形成され、T字状の頂部が第2の支持部材43の上方で概略かご幅方向に延在するように第2の支持部材43に固定されている。そして、一対の自走検出用接点63a,63bが、接点支持部材62の頂部の上部に、かご幅方向に所定の隙間をあけて固定されている。
【0035】
また、作動部材64Aは、接点接続部材64a及び滑り防止部材64bを有している。接点接続部材64aは導電性の部材により棒状に形成され、滑り防止部材64bは、絶縁性の部材により楕円球状に形成されている。そして、滑り防止部材64bは、接点接続部材64aの一端に取り付けられている。さらに、接点接続部材64aの他端側が第2の可動鉄板55に固定され、接点接続部材64aの一端側が第2の可動鉄板55からレール突出端面14aに向けて突出されている。このとき、接点接続部材64aの中間部は、一対の自走検出用接点63a,63bの上方に隙間をあけて配置されている。
【0036】
また、詳細は後述するが、滑り防止部材64bは、第2のコイル52(監視切替用電磁石50)に通電したときに、監視切替用電磁石50の電磁力による第2の可動鉄板55の回動によってレール突出端面14aに当接するようになっている。そして、滑り防止部材64bの材料には、滑り防止部材64bとレール突出端面14aとの間の摩擦係数が大きくなるものが用いられている。また、滑り防止部材64bは、監視切替用電磁石50の電磁力が消失したときに、監視切替用コイルばね60の付勢力による第2の可動鉄板55の回動によってレール突出端面14aから離反するようになっている。
【0037】
次いで、保守運転制御盤70の構成、及びかご保持装置15Aの各構成間の電気的な接続について図2及び図7を参照しつつ説明する。
保守運転制御盤70は、モード切替スイッチ71、上昇用スイッチ80、下降用スイッチ81、出力ポート83a〜83c、図示しない電源の高圧側端子86と低圧側端子87、ダイオード85a,85b、及びリレー90を有している。
そして、モード切替スイッチ71は、高圧側端子86に接続された可動接点72、及び固定接点73a,73bを有している。そして、可動接点72は、固定接点73aまたは固定接点73bとの接続を手動にて任意に切り替えることができるようになっている。そして、固定接点73aが出力ポート83aに接続されている。
【0038】
また、上昇用スイッチ80は、上昇用釦76、入力端子77a及び出力端子78aを有し、下降用スイッチ81は、下降用釦79、入力端子77b及び出力端子78bを有している。
そして、固定接点73bが、入力端子77a,77bのそれぞれに接続されている。さらに、出力端子78aが出力ポート83bに接続され、出力端子78bが出力ポート83cに接続されている。
【0039】
そして、上昇用釦76が押されると入力端子77aと出力端子78aが接続され、下降用釦79が押されると入力端子77bと出力端子78bが接続されるようになっている。
【0040】
また、出力ポート83a〜83cは、それぞれエレベータ制御盤10に設けられた別々の入力ポート(図示せず)に接続されている。これにより、前述したエレベータ制御盤10のCPUは、出力ポート83a〜83cに印加される電圧の状態を判断することが出来るようになっている。
【0041】
また、ダイオード85aのアノード側が、出力端子78aと出力ポート83bとの間に接続され、ダイオード85bのアノード側が出力端子78bと出力ポート83cとの間に接続されている。そして、ダイオード85a,85bのカソード側は短絡されている。
【0042】
また、リレー90は、リレーコイル91、及び常閉接点92を有している。そして、短絡されたダイオード85a,85bのカソード側が、リレーコイル91の一端に接続され、リレーコイル91の他端は低圧側端子87に接続されている。さらに、常閉接点92が、電源の高圧側端子86と第2のコイル52の一端との間に配設されている。常閉接点92は、リレーコイル91への通電が遮断されると、高圧側端子86と第2のコイル52との間を導通させ、リレーコイル91が通電されると、高圧側端子86と第2のコイル52間の導通を遮断するようになっている。
【0043】
出力接点78a,78bは、リレーコイル91の一端にダイオード85a,85bを介して接続されているので、リレーコイル91への通電のON/OFFは、上昇用スイッチ80の上昇用釦76及び下降用スイッチ81の下降用釦79が押されたか否かにより切替可能になっている。
【0044】
また、一対の自走検出用接点63a,63bの一方が高圧側端子86に接続され、自走検出用接点63a,63bの他方が、第1のコイル24の一端に接続されている。また、第1のコイル24の他端は低圧側端子87に接続されている。即ち、自走検出用接点63a,63bは、第1のコイル24への通電(第1の電磁石22への通電)のON/OFF制御用に配設されている。そして、詳細は後述するが、接点接続部材64aが自走検出用接点63a,63bに接触したときに、第1のコイル24が通電されるようになっている。
【0045】
上記のように構成されたかご保持装置15Aにおいて、まず、かご上昇規制機構16の動作について説明する。
図2〜図4において、第1のコイル24への通電が遮断されているときは、第1の可動鉄板25は、第1のコイルばね30aの付勢力により第1の支持面20cとの接点を支点として、長手方向の他端側が下方に向かうように回動する。これにより、第1の可動鉄板25は、その一端側が上方、かつ、レール側壁面14bと離反する方向に回動する。
【0046】
また、楔ブロック32も第1の可動鉄板25の回動に連動する。このとき、楔ブロック32は、回動軸部材35の軸部35a周りに回動自在となっているので、摺接面32bは基台側壁面17aに摺接しながら上昇し、かつ、基準面32aはレール側壁面14bから離反する方向に移動する。
【0047】
そして、第1の可動鉄板25が所定角度回動すると、第1の差込凹部26a,26bそれぞれの相対する側壁のそれぞれが、第1の支持部材20の表裏両面に当接し、第1の可動鉄板25の回動動作が停止する。このときの第1の可動鉄板25の位置を第1位置とする。即ち、第1のコイルばね30aは可動鉄板25を第1位置に移動させる方向に付勢し、第1の可動鉄板25を第1位置で保持するようになっている。
そして、第1の可動鉄板25が第1位置にあるとき、楔ブロック32は、図2に示されるように、基準面32aがレール側壁面14bから所定距離離間したかご移動許可位置で基台側壁面17a上に保持される。
【0048】
また、楔ブロック32がかご移動許可位置にあるときに、第1のコイル24に通電すると、第1の電磁石22は、第1の可動鉄板25を第1の鉄心23側に吸引し、第1のコイルばね30aの付勢力に抗して第1の可動鉄板25の長手方向の一端側を引き下げる方向に付勢する電磁力を即座に発生する。このとき、第1の可動鉄板25は、その一端側が下方、かつ、レール側壁面14bに接近する方向に回動する。そして、第1の可動鉄板25の回動動作は、第1の可動鉄板25の下面が第1の鉄心23の上端面に当接したところで規制される。これにより、第1の可動鉄板25は第1の鉄心23の上端面に当接した第2位置に保持される。即ち、第1の電磁石22が第1のコイルばね30aの付勢力に抗して第1の可動鉄板25を第2位置に移動させる方向に付勢し、第2の可動鉄板25を第2位置で保持するようになっている。
【0049】
このとき、楔ブロック32は第1の可動鉄板25の回動に連動して下方に移動する。そして、楔ブロック32の摺接面32bは、基台側壁面17aに摺接しながら下降し、かつ、基準面32aはレール側壁面14bに接近する方向に移動する。そして、第1の可動鉄板25が第2位置で保持されると同時に、楔ブロック32は、レール側壁面14bと基台側壁面17aとに密接したかご上昇規制位置に配置されるようになっている。
【0050】
また、楔ブロック32がかご上昇規制位置に配置されたときには、摩擦力が楔ブロック32の基準面32aとレール側壁面14bとの間に働くようになっている。従って、楔ブロック32がかご上昇規制位置にある状態で、かご4が上昇しようとしても、楔ブロック32はかご4の上昇に連動せずに楔状空間19に食い込むので、かご4の上昇が規制される。
【0051】
次いで、自走検出機構40の動作について説明する。
図2〜図5において、第3の支持部材45の第3の差込部45a,45bは、上述したように第2の可動鉄板55の第3の差込凹部57a,57bに嵌合されている。このとき、第3の差込凹部57a,57bの上側の側壁が第3の差込部45a,45bの上面に当接されているので、第2の可動鉄板55が落下することはない。
【0052】
そして、第2のコイル52に通電しているときには、監視切替用電磁石50は第2の可動鉄板55の中間部を第2の鉄心51に吸引する電磁力を発生するようになっている。
そして、監視切替用電磁石50の電磁力によって、第2の可動鉄板55は、第3の差込部45a,45bの上面と第3の差込凹部57a,57bの上側の側壁との当接部位を支点として回動し、第2の可動鉄板55の上端はレール突出端面14aに向けて変位するようになっている。
【0053】
そして、滑り防止部材64bの先端がレール突出端面14aに押圧状態に当接したところで、第2の可動鉄板55は、その回動が停止する。これにより、第2の可動鉄板55は、第2の差込凹部56a,56bの上側の側壁が第3の差込部45a,45bの上面に当接し、また、滑り防止部材64bの先端がレール突出端面14aに当接した状態で安定保持される。このときの第2の可動鉄板55の位置を第3位置とし、滑り防止部材64bの位置を自走監視位置とする。即ち、監視切替用電磁石50が、その電磁力によって第2の可動鉄板55を第3位置に向けて移動させて第2の可動鉄板55を第3位置で保持している。
【0054】
次いで、作動部材64Aが自走監視位置に保持されている場合にかご4が上方に自走し始めたときの第2の可動鉄板55の動作について図9を参照しつつ説明する。
かご4が上方に自走し始めると、滑り防止部材64bもかご4に連動して上方に移動しようとするが、摩擦力が滑り防止部材64bとレール突出端面14aとの間に働いているので、滑り防止部材64bはその上昇が阻止されて、同じ場所に留まるようになっている。一端に滑り防止部材64bが取り付けられた接点接続部材64aの他端は第2の可動鉄板55の上端に固定されているので、第2の可動鉄板55の上端側は、かご4が上昇するにつれてレール突出端面14a側に引っ張られる。
【0055】
そして、第2の可動鉄板55は、その下端が、第3の差込部45a,45bの上面と第3の差込凹部57a,57bの上側の側壁との当接部位を支点として、監視切替用コイルばね60の付勢力に抗してレール突出端面14a側かに向かうように回動し、第2の可動鉄板55の上端はレール突出端面14aに向けてさらに変位するようになっている。
また、かご4の上昇に連動して、接点接続部材64aの一端側が他端側に対して、相対的に下方に移動するので、接点接続部材64aの中間部が自走検出用接点63a,63bに近づく。
【0056】
そして、かご4が所定距離上昇したときに、接点接続部材64aの一端に取り付けた滑り防止部材64bが、かご4に対して相対的に所定距離下降すると、作動部材64Aは、接点接続部材64aが自走検出用接点63a,63bのそれぞれに接触した自走検出位置をとるようになっている。これにより、自走検出用接点63a,63b間が導通する。そして、図7からわかるように、自走検出用接点63a,63b間が導通すると、第1のコイル24が通電される。つまり、通電手段61は、かご4が所定距離上昇したことを検知して第1のコイル24に通電させるようになっている。なお、接点接続部材64aは有る程度の弾性を有しており、自走検出用接点63a,63bからある程度圧力を受けても折れるようなことはない。
【0057】
また、作動部材64Aが自走監視位置に保持されている場合に、第2のコイル52への通電が遮断されたときの第2の可動鉄板55の動作について図10を参照しつつ説明する。
第2のコイル52への通電が遮断されると、第2の可動鉄板55は、その下端側が、監視切替用コイルばね60の付勢力によりレール突出端面14a側に引き寄せられる。
【0058】
これにより、第2の可動鉄板55は、第3の差込部45a,45bの上面と第3の差込凹部57a,57bの上側の側壁との当接部位を支点として、その上端がレール突出端面14aから離反するように回動する。
【0059】
そして、第2の可動鉄板55が所定角度回動すると、その上端側が回動規制ストッパ47a,47bに当接し、第2の可動鉄板55の回動は停止する。即ち、監視切替用コイルばね60が、第2の可動鉄板55を第4位置に移動させる方向に付勢し、第2の可動鉄板55を第3の差込凹部57a,57bの上側の側壁が第3の差込部45a,45bの上面に当接し、かつ、上端が回動規制ストッパ47a,47bに当接した第4位置に保持している。また、第2の可動鉄板55が第4位置で保持されたときには、作動部材64Aを滑り防止部材64bがレール突出端面14aから離間した自走監視解除位置に配置させるようになっている。
【0060】
次いで、かご保持装置15Aの全体動作について説明する。
かご保持装置15Aのかご上昇規制機構16及び自走検出機構40は、保守員がかご4上で保守作業を行うときに設置すればよい。即ち、保守員がかご4上での保守作業を行うときに、基台17をその凹部18でかごガイドレールを囲むように、かご4の上部外壁面に強固に固定する。なお、基台17を除くかご上昇規制機構16の構成、及び自走検出機構40は、予め基台17に取り付けておいてもよいし、基台17をかご4の上部外壁面に設置した後に基台17やかご4の上部外壁面に取り付けてもよい。
【0061】
さらに、モード切替スイッチ71の可動接点72を、固定接点73bに接続するように切り替える。なお、可動接点72が固定接点73aに接続されている場合には、出力ポート83aに電圧が印加され、エレベータ制御盤10は、出力ポート83aに電圧が印加されたと判断すると、通常のかご4の昇降運転を行うようになっている。
【0062】
可動接点72が固定接点73bに接続されても、上昇用釦76及び下降用釦79が共に押されていないときにはリレーコイル91への通電は遮断されている。このとき、常閉接点92は、第2のコイル52の一端と高圧側端子86との間を導通させるので、第2のコイル52が通電されて、監視切替用電磁石50は、第2の鉄心51に第2の可動鉄板55を吸引する電磁力を発生する。これにより、第2の可動鉄板55が、図3及び図4に示されるように第3位置に配置される。即ち、作動部材64Aは、滑り防止部材64bが押圧状態にレール突出端面14aに当接し、かつ、接点接続部材64aが自走検出用接点63a,63bから離反した自走監視位置で保持される。
【0063】
接点接続部材64aが自走検出用接点63a,63bから離れているので、第1のコイル24への通電は遮断されている。このとき、上述したように、第1の可動鉄板25は、その一端側が、第1のコイルばね30aの付勢力によって上方、かつ、レール側壁面14bと離反する方向に回動する。従って、楔ブロック32も上方、かつ、レール側壁面14bから離間する方向に移動する。そして、楔ブロック32は、第1の可動鉄板25が第1位置で保持されると、かご移動許可位置に配置される。
【0064】
この状態で、前述のかご4を停止させるブレーキが故障したり、メインロープ8と駆動綱車6との間の摩擦力が低下したりするとかご4は自走し始める。
ここで、つり合いおもり9の質量は、かご4の質量及びかご4に配設された各種機器の質量を合わせたものに、かご4の定格積載量の半分の質量を加えた値に調整されることが一般的である。従って、保守作業時には、かご4内に乗客はいないので、かご4の質量、かご4に配設された各種機器の質量、及び保守作業を行う保守員の質量の総和は、つり合いおもり9の質量より小さい。従って、かご4が保守作業時に自走するときは、昇降路3の頂部に向けて上方に自走する。
【0065】
前述したように、作動部材64Aが自走監視位置に保持されているときに、かご4が上方に移動すると、接点接続部材64aが、自走検出用接点63a,63bに接触する。これにより、第1のコイル24が通電されるので、第1の電磁石22は、第1のコイルばね30aの付勢力に抗して、第1の可動鉄板25の長手方向の一端側を下方に付勢する電磁力を発生する。そして、第1の可動鉄板25は、その一端側が第1の支持面20cとの接点を支点として下方に向かうように回動する。また、楔ブロック32は、第1の可動鉄板25の回動に連動して、レール側壁面14bに接近するように、基台側壁面17aに摺接しながら移動する。
【0066】
そして、第1の可動鉄板25の回動動作は、第1の可動鉄板25が第1の鉄心23に当接した第2位置で停止する。このとき、楔ブロック32はレール側壁面14bと基台側壁面17aとに密接したかご上昇規制位置に配置されるようになっている。上述したように、大きな摩擦力が楔ブロック32の基準面32aとレール側壁面14bとの間に働いている。従って、楔ブロック32は、かご上昇規制位置に配置されるまでは、かご4の上昇に連動するが、かご上昇規制位置に配置されたときに、かご4がさらに上昇しようとしても、かご4の上昇に連動せずに楔状空間19に食い込むので、かご4の上昇が速やかに停止する。
【0067】
また、作動部材64Aが自走監視位置にあるときに、保守運転制御盤70の上昇用釦76及び下降用釦79のいずれか一方が押されると、リレーコイル91が通電される。リレーコイル91が通電されると、常閉接点92が、高圧側端子86と第2のコイル52間の導通を遮断するので、第2のコイル52への通電が遮断される。このとき、第2の可動鉄板55を第2の鉄心51側に吸引する電磁力が消失するので、第2の可動鉄板55は、その下端側が、監視切替用コイルばね60の付勢力によりレール突出端面14a側に向かうように、第2の鉄心51との接点を支点として回動する。
【0068】
これにより、第2の可動鉄板55の上端側は、レール突出端面14aから離反する方向に移動し、滑り防止部材64bがレール突出端面14aから離反する。
そして、第2の可動鉄板55の回動は、第2の可動鉄板55の上端側が回動規制ストッパ47a,47bに当接したところで停止し、第2の可動鉄板55は第4位置で保持される。
【0069】
このとき、上昇用釦76が押された場合には入力端子77aと出力端子78aが接続され、下降用釦79が押された場合には入力端子77bと出力端子78bが接続される。従って、上昇用釦76が押された場合には、出力ポート83bに電圧が印加される。即ち、上昇用スイッチ80は、上昇用釦76が押されることにより出力ポート83bに印加される電圧を上昇運転信号としてエレベータ制御盤10に送信するようになっている。また、下降用釦79が押された場合には出力ポート83cに電圧が印加される。即ち、下降用スイッチ81は、下降用釦79が押されたことにより出力ポート83cに印加される電圧を下降運転信号としてエレベータ制御盤10に送信するようになっている。
【0070】
そして、エレベータ制御盤10のCPUは、上昇運転信号を受信している間はかご4を上昇させ、下降運転信号を受信している間はかご4を下降させる。これにより、エレベータ制御盤10のCPUは、上昇用釦76及び下降用釦79が押されている間は、押された釦に応じてかご4を上昇または下降させるようになっている。
【0071】
このとき、滑り防止部材64bはレール突出端面14aから離反されているので、かご4が上昇しても、接点接続部材64aが自走検出用接点63a,63bに接触することはない。即ち、上昇用釦76及び下降用釦79のいずれか一方が押されたときには、第1のコイル24が通電されることはなく、楔ブロック32はかご移動許可位置に配置されたままとなる。従って、上昇用釦76及び下降用釦79が押されたことによるかご4の昇降移動は楔ブロック32によって規制されない。
【0072】
そして、保守員はかご4が所望の高さ位置に配置されたところで上昇用釦76または下降用釦79を離せばリレーコイル91への通電が遮断される。このとき、常閉接点92は、第2のコイル52の一端と高圧側端子86との間を導通させる。これにより、第2のコイル52が通電されて、監視切替用電磁石50は、第2の可動鉄板55を第2の鉄心51に吸引する電磁力を発生する。そして、第2の可動鉄板55が第3位置に再び配置されると同時に、作動部材64Aは自走監視位置に配置されるようになっている。
【0073】
この実施の形態1によれば、保守作業時に、基台17が、レール側壁面14bとの間に楔状空間19を形成するようにかご上昇規制機構16を設置するとともに自走検出機構40を設置している。このとき、楔ブロック32が、レール側壁面14bから離反したかご移動許可位置と、レール側壁面14bと基台側壁面17aとに密接したかご上昇規制位置との間を移動可能に配設されている。さらに、第1の可動鉄板25が、楔ブロック32をかご移動許可位置に位置させる第1位置と楔ブロック32をかご上昇規制位置に位置させる第2位置との間を移動可能に配設されている。
【0074】
また、第1のコイルばね30aが、第1の可動鉄板25を第1位置に向けて付勢し、第1の可動鉄板25を第1位置に保持するように配置されている。また、第1の電磁石22は、通電されると第1のコイルばね30aの付勢力に抗して第1の可動鉄板25を第2位置に移動させる電磁力を発生し、第1の可動鉄板25を第2位置に保持するようになっている。
【0075】
そして、保守員がかご4を停止して保守作業を行うときには、かご上昇規制機構16の楔ブロック32は、かご移動許可位置を取るように楔状空間19内に配置されている。そして、通電手段61がかご4の自走による上昇を検知すると、第1の電磁石22に通電するようになっている。これにより、楔ブロック32は、かご上昇規制位置に移動する。従って、万一、かご4が保守員による保守作業中に自走によって上昇しても、楔ブロック32が楔状空間19に食い込むので、かご4の自走による上昇を速やかに停止させることができる。
【0076】
また、保守員が上昇用釦76及び下降用釦79のいずれか一方を押したときには、第2の可動鉄板55を強制的に第3位置から第4位置に移動して、作動部材64Aを自走監視位置から自走監視解除位置に移動させている。これと同時に、エレベータ制御盤10は、押された上昇用釦76または下降用釦79に応じてかご4を昇降させるようになっている。従って、エレベータ1の保守作業時にかご4を任意の位置に移動させる際、第2の可動鉄板55を手動で第3位置から第4位置に移動して、作動部材64Aを自走監視位置から自走監視解除位置に配置させる手間が省けるので、保守作業にかかる労力を軽減することができる。
【0077】
なお、上記実施の形態1では、第1の電磁石22の電磁力による第1の可動鉄板25の回動動作は、第1の鉄心23に当接した第2位置で停止させ、第1の可動鉄板25を第2位置で保持するものとして説明した。しかし、第1の可動鉄板25の第1の電磁石22の電磁力による回動動作は、第1の鉄心23と当接する前に第1の可動鉄板25と係合するストッパ(図示せず)などを配設して停止させるものでもよい。この場合、ストッパに当接した状態に保持された第1の可動鉄板25の位置が第2位置となる。このとき、楔ブロック32がかご上昇規制位置に配置されるようになっていればよい。
【0078】
実施の形態2.
図11はこの発明の実施の形態2に係るかご保持装置の断面図であり、楔ブロックがかご移動許可位置にあるときを示している。図12はこの発明の実施の形態2に係るかご保持装置のシステム構成図、図13はこの発明の実施の形態2に係るかご保持装置の断面図であり、楔ブロックがかご上昇規制位置にあるときを示している。
【0079】
図11において、第1の付勢部材かつ弾性部材としての第2のコイルばね30bの両端が第1の可動鉄板25の長手方向の一端側の下面と基台17の上面のそれぞれに固定されている。このとき、第2のコイルばね30bの付勢力は、第1の可動鉄板25の長手方向の一端を引き下げるように働いている。また、第1の電磁石22が、奥行き方向に関し、第2のコイルばね30bとの間に第1の支持部材20が位置するように配置されている。また、第1の鉄心23の上端面の高さ位置は、第1の支持面20cの高さ位置より下方に配置されている。また、第1の可動鉄板25の長手方向の他端側は、第1の電磁石22の第1の鉄心23の上方に配置されている。
【0080】
図12において、インバータ94の入力端子(図示せず)が自走検出用接点63bに接続され、インバータ94の出力端子(図示せず)が第1のコイル24の一端に接続されている。インバータ94は、自走検出用接点63a,63bの間が接点接続部材64aによって接続されておらず、電源電圧が入力されないときに高圧側端子86の電圧と同電位の電圧を出力するようになっている。また、インバータ94は、自走検出用接点63a,63bの間が接点接続部材64aによって接続さて電源電圧が入力されたときには、低圧側端子87と同電位の電圧を出力するようになっている。
なお、他のかご保持装置15Bの構成は上記実施の形態1と同様である。
【0081】
次いで、かご保持装置15Bの全体動作について説明する。なお、自走検出機構40及び保守運転制御盤70の動作は上記実施の形態1と同様であるので、それらの動作の詳細な説明は省略し、かご上昇規制機構16の動作の詳細についてのみ説明する。
保守員がかご4上で保守作業を行うときには、実施の形態1と同様にかご上昇規制機構16及び自走検出機構40を設置したのち、モード切替スイッチ71の可動接点72を、固定接点73bに接続するように切り替える。
図11及び図12において、可動接点72が固定接点73bに接続されたされた場合、上記実施の形態1で説明したように、上昇用釦76及び下降用釦79が共に押されていないときには、第2の可動鉄板55は第3位置に配置される。即ち、作動部材64Aは自走監視位置で保持される。
作動部材64Aが自走監視位置に保持されているときには、接点接続部材64aは、自走検出用接点63a,63bと離間しており、自走検出用接点63a,63bの間が接続されていない。従って、インバータ94は高圧側端子86と同電位の電圧を出力するので、第1のコイル24が通電される。これにより、第1の電磁石22は、第2のコイルばね30bの付勢力に抗して第1の可動鉄板25の長手方向の他端側を下方に付勢する電磁力を発生する。そして、第1の可動鉄板25は、その他端側が第1の支持面20cとの接点を支点として下方に向かうように回動する。
【0082】
従って、第1の可動鉄板25の長手方向の一端側は、上方、かつ、レール側壁面14bから離間する方向に移動するので、楔ブロック32も上方、かつ、レール側壁面14bから離間する方向に移動する。
【0083】
そして、第1の可動鉄板25が所定角度回動すると、第1の差込凹部26a,26bそれぞれの相対する側壁のそれぞれが、第1の支持部材20の表裏両面に当接し、第1の可動鉄板25の回動動作が停止する。即ち、第1の電磁石22は、その付勢力によって第1の可動鉄板25を第1位置に移動させる方向に付勢し、第1の可動鉄板25を第1位置で保持するようになっている。このとき、楔ブロック32は、基準面32aがレール側壁面14bから所定距離離間したかご移動許可位置で基台側壁面17a上に保持される。
【0084】
次いで、作動部材64Aが自走監視位置に保持されているときに、かご4が上昇したときのかご保持装置15Bの動作を図12及び図13を参照しつつ説明する。
かご4が上昇すると接点接続部材64aが、自走検出用接点63a,63bに接触する。これにより、通電手段61が、かご4の上昇を検知することができるようになっている。このとき、自走検出用接点63a,63bの間が導通するのでインバータ94は低圧側端子87と同電位の電圧を出力する。これにより、第1のコイル24への通電が遮断されるので、第1の電磁石22の電磁力が消失する。このとき、第1の可動鉄板25は、その長手方向の一端側が第2のコイルばね30bの付勢力により、第1の支持面20cとの接点を支点として下方に向かうように回動する。そして、楔ブロック32は、第1の可動鉄板25の回動に連動して、レール側壁面14bに接近するように、基台側壁面17aに摺接しながら移動する。
【0085】
そして、第1の可動鉄板25の回動動作は、楔ブロック32がレール側壁面14bと基台側壁面17aとに密接したかご上昇規制位置に移動したところで停止する。このとき、第1の可動鉄板25は第2位置に保持される。また、摩擦力が楔ブロック32の基準面32aとレール側壁面14bとの間に働いている。従って、楔ブロック32がかご上昇規制位置に配置されているときにかご4が上昇しても楔ブロック32が楔状空間19に食い込むので、かご4の上昇が速やかに停止する。
なお、他のかご保持装置15Bの動作は上記実施の形態1と同様である。
【0086】
この実施の形態2によれば、第1の可動鉄板25が楔ブロック32をかご移動許可位置に位置させる第1位置と楔ブロック32をかご上昇規制位置に位置させる第2位置との間を移動可能に配設されている。そして、第1の電磁石22が通電されたときには、第1の電磁石22の電磁力によって第1の可動鉄板25が第1位置に保持されるようになっている。また、第1の電磁石22の電磁力が消失したときには、第2のコイルばね30bが、第1の可動鉄板25を第2位置に移動させる方向に付勢して、第1の可動鉄板25を第2位置に保持するようになっている。
【0087】
そして、通電手段61がかご4の自走による上昇を検知すると、第1の電磁石22への通電が遮断されて、楔ブロック32は、かご上昇規制位置に移動されるようになっている。従って、万一、かご4が保守員による保守作業中に自走によって上昇しても、楔ブロック32が楔状空間19に食い込むので、かご4の自走による上昇を速やかに停止させることができる。
【0088】
なお、上記実施の形態2では、第1の付勢部材として、弾性部材としての第2のコイルばね30bを用いるものとして説明したが、第1の付勢部材は第2のコイルばね30bを用いるものに限定されない。第1の付勢部材として、第1の電磁石22の電磁力が消失したときに通電されて第1の可動鉄板25を第2位置に移動させる方向に付勢する電磁力を発生する第1の電磁石と同様の構成を有する第2の電磁石を用いてもよい。
【0089】
また、上記各実施の形態では、第2の可動鉄板55を第3位置、及び第4位置のそれぞれに保持する手段は、監視切替用電磁石50、及び監視切替用付勢部材としての監視切替用コイルばね60のそれぞれであるものとして説明したが、第2の可動鉄板55を第3位置及び第4位置に保持するための手段はそれぞれ監視切替用電磁石50及び監視切替用コイルばね60に限定されない。第2の可動鉄板55を第4位置に保持させる手段は、上昇用釦76及び下降用釦79の一方が押されて通電したときに第2の可動鉄板25の下端側をレール突出端面14a側に付勢する電磁力を発生するように配設した監視切替用電磁石50と同様の構成を有する他の監視切替用電磁石であってもよい。この場合、他の監視切替用電磁石の電磁力が消失した時に、第2の可動鉄板55を第3位置に移動させる方向に付勢力を発する第2の付勢部材により、第2の可動鉄板55を第3位置に保持させればよい。このとき、第2の付勢部材は、第2の可動鉄板55を第3位置に向けて付勢する監視切替用コイルばね60と同様の他の監視切替用コイルばねであってもよいし、他の監視切替用電磁石の電磁力が消失したときに通電されて第2の可動鉄板55を第3位置に移動させる方向に付勢する電磁力を発生する電磁石であってもよい。
【0090】
また、上記各実施の形態では、かごガイドレール13a,13bは長手方向を鉛直方向に一致させて設置するものとして説明したが、かごガイドレール13a,13bの長手方向は鉛直方向に一致させるものに限定されず、鉛直方向から所定角度傾くように設置されたかごガイドレール13a,13bに対しても本発明を適用できる。
また、上記各実施の形態において、第1の弾性部材、第1の付勢部材、及び監視切替用付勢部材のそれぞれには、第1のコイルばね30a、第2のコイルばね30b、及び監視切替用コイルばね60のそれぞれを用いるものとして説明したが、第1の弾性部材、第1の付勢部材、及び監視切替用付勢部材には、板ばねなど、弾性を有する他の部材を用いてもよい。
【0091】
また、上記各実施の形態では、楔状空間19は、傾斜壁面としての基台側壁面17aとレール側壁面14bとの間に形成されるものとして説明したが、楔状空間19は、基台17の底面17cとレール突出端面14aとの間に形成されるものでもよい。つまり、楔状空間19は、かごガイドレール13a,13bのいずれかの壁面との間に形成されていればよく、かごガイドレール13a,13bとの間に楔状空間19を形成する基台17の壁面を傾斜壁面として定義する。
【0092】
また、上記各実施の形態では、第1の可動部材、及び第2の可動部材に、磁性材料の鉄により形成された第1の可動鉄板25、及び第2の可動鉄板55を用いるものとして説明したが、第1の可動部材、及び第2の可動部材は第1の可動鉄板25、及び第2の可動鉄板55を用いるものに限定されない。第1の可動部材、及び第2の可動部材には、ニッケルなどの他の磁性材料を用いて形成したものや、第1の可動鉄板25、及び第2の可動鉄板55と同様の形状を有する非磁性体に対し、第1の電磁石22や監視切替用電磁石50との間に電磁力が働くように永久磁石を固定したものなどを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】この発明の実施の形態1に係るかご保持装置が配設されたエレベータの模式図である。
【図2】図1のII−II矢視断面図である。
【図3】図2のIII−III矢視断面図である。
【図4】図2のB方向からみた正面図である。
【図5】図4のC方向から見た第2の可動鉄板周辺の側面図である。
【図6】図2のVI−VI矢視要部断面図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係るかご保持装置のシステム構成図である。
【図8】この発明の実施の形態1に係るかご保持装置の断面図である。
【図9】この発明の実施の形態1に係るかご保持装置の正面図である。
【図10】この発明の実施の形態1に係るかご保持装置の正面図である。
【図11】この発明の実施の形態2に係るかご保持装置の断面図である。
【図12】この発明の実施の形態2に係るかご保持装置のシステム構成図である。
【図13】この発明の実施の形態2に係るかご保持装置の断面図である。
【符号の説明】
【0094】
4 かご、10 エレベータ制御盤、13a,13b かごガイドレール、17a 基台側壁面(傾斜壁面)、20 第1の支持部材、22 第1の電磁石、25 第1の可動鉄板(第1の可動部材)、30a 第1のコイルばね(第1の弾性部材)、30b 第2のコイルばね(第1の付勢手段、弾性部材)、32 楔ブロック、50 監視切替用電磁石、55 第2の可動鉄板(第2の可動部材)、60 監視切替用コイルばね(監視切替用付勢部材)、61 通電手段、63a,63b 自走検出用接点(導通切替手段)、64A 作動部材、80 上昇用スイッチ、81 下降用スイッチ。
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータの保守作業時、かごの自走による上昇を速やかに停止させるエレベータのかご保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータのかご保持装置は、保守員がかご上で保守作業を行う際に主ガイドレールと対向するかご上部の位置に設置された頂部ストッパーと、頂部ストッパーと主ガイドレールとの間に形成される隙間に上方からセットされるかごロックキーと、かごロックキーの上部と対向するように主ガイドレールの上端部に固定された作動アームと、を備えている(例えば、特許文献1参照)。
このとき、頂部ストッパーと主ガイドレールとの間には、テーパ状の隙間が上方に向かって幅広になるように形成され、楔状のかごロックキーがテーパ状の隙間に主ガイドレールから隙間をあけてセットされている。
【0003】
ここで、保守員が、かごを昇降路内の所定位置に停止させてかご上で保守作業を行う際、かごを昇降路内の所定位置に停止させておくためのブレーキが故障したりすると、かごは昇降路の最上部に向かって自走する。そして、かごロックキーが作動アームの位置までくると、かごロックキーの頂部が作動アームに当接して、頂部ストッパーと主ガイドレールとの間に食い込むようになっている。これにより、かごの自走による上昇が停止され、このとき、かごの上面と昇降路の頂部との間には保守時頂部安全スペースが確保されていた。即ち、かご上で保守作業を行っていた保守員のかご上での居場所が確保されていた。
【0004】
【特許文献1】特開2005−343579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のエレベータのかご保持装置では、かごロックキーの頂部が作動アームに当接されるまでの間かごの自走による上昇を停止させることができない。従って、かごの自走による上昇が停止するまでの間、かご上の保守員に計り知れない緊張感を与えるという問題があった。
【0006】
この発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、エレベータの保守作業時に、かごの自走による上昇を速やかに停止させることのできるエレベータのかご保持装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明によるエレベータのかご保持装置は、かごの上部に着脱自在に配設され、かごガイドレールとの間に上方から下方に向かって漸次狭くなる楔状空間を形成する傾斜壁面を有する基台と、かごガイドレールから離間するかご移動許可位置と、かごガイドレールと傾斜壁面とに密接するかご上昇規制位置との間を移動可能に楔状空間に配設された楔ブロックと、楔ブロックに連結され、楔ブロックをかご移動許可位置に位置させる第1位置と楔ブロックをかご上昇規制位置に位置させる第2位置との間を移動可能に配設された第1の可動部材と、第1の可動部材を第1位置に移動させる方向に付勢するように配設され、第1の可動部材を第1位置に保持する第1の弾性部材と、第1の弾性部材の付勢力に抗して第1の可動部材を第2位置に移動させる電磁力を発生し、第1の可動部材を第2位置に保持する第1の電磁石と、かごの上昇を検知して第1の電磁石に通電させる通電手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、万一、エレベータの保守作業時にかごが自走によって上昇しても、楔ブロックが楔状空間に食い込むので、かごの自走による上昇を速やかに停止させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るかご保持装置が配設されたエレベータの模式図、図2は図1のII−II矢視断面図であり、楔ブロックがかご移動許可位置にあるときを示している。図3は図2のIII−III矢視断面図、図4は図2のB方向からみた正面図であり、作動部材が自走監視位置にあるときを示している。図5は図4のC方向から見た第2の可動鉄板周辺の側面図、図6は図2のVI−VI矢視要部断面図であり、第1の可動鉄板、楔ブロック、及び回動軸部材のみを図示している。図7はこの発明の実施の形態1に係るかご保持装置のシステム構成図、図8はこの発明の実施の形態1に係るかご保持装置の断面図であり、楔ブロックがかご上昇規制位置にあるときを示している。図9はこの発明の実施の形態1に係るかご保持装置の正面図であり、作動部材が自走検出位置にあるときを示している。図10はこの発明の実施の形態1に係るかご保持装置の正面図であり、作動部材が自走監視解除位置にあるときを示している。
【0010】
図1において、エレベータ1は機械室レスタイプのものであり、昇降路壁2に囲まれた昇降路3内を昇降自在に配設されたかご4、駆動綱車6と電動機(図示せず)を有する巻上機5、一対のかごガイドレール13a,13b、メインロープ8、つり合いおもり9、及びエレベータ制御盤10などを備えている。
【0011】
巻上機5は、昇降路3のピット3aに配設されている。そして、駆動綱車6は電動機の回転に連動して軸まわりに回転するようになっている。
また、メインロープ8は、その一端が昇降路3の天井に固着されて天井から垂下され、かご4の下部に設けられている一対の転向プーリ11a,11bに掛け渡されて反転している。さらに、メインロープ8は、昇降路3の天井に設置されたプーリ12aに掛け渡されて再び反転し、駆動綱車6に巻きかけられて再び反転し、さらに、昇降路3の天井に設置されたプーリ12bに掛け渡されて再び反転し、つり合いおもり9に固着されたプーリ12cに掛け渡されて再び反転している。そして、メインロープ8の他端が昇降路3の天井に固定されている。
【0012】
また、一対のかごガイドレール13a,13bのそれぞれが、長手方向を鉛直方向に一致させ、かご側壁面4a,4bのそれぞれと所定の間隔をあけてピット3aの床から昇降路3の天井近傍に至るまで延設されている。なお、かご側壁面4a,4bに垂直な方向をかご幅方向とし、かご幅方向に垂直かつ水平な方向を奥行き方向とする。即ち、かご側壁面4a,4bの上縁の長さ方向は、奥行き方向に一致している。
【0013】
また、エレベータ制御盤10は、昇降路壁2に固定されている。そして、エレベータ制御盤10は、エレベータ1の運行を制御するためのプログラムが書き込まれたROM(図示せず)や当該プログラムの内容に従ってエレベータ1の運行を制御するためのCPU(図示せず)等を有し、プログラムに基づいたエレベータ1の運行制御を行っている。そして、エレベータ制御盤10は、電動機を介した駆動綱車6の回転を任意に制御することが可能になっている。そして、駆動綱車6とメインロープ8との間には摩擦力が働いているので、メインロープ8は駆動綱車6の回転に応じて移動される。これにより、かご4及びつり合いおもり9が昇降路3内を昇降するようになっている。また、図示しないが、ブレーキが駆動綱車6の回転を停止可能に配設されている。そして、エレベータ制御盤10は、任意にかご4の昇降移動とその停止を制御することができるようになっている。
【0014】
そして、かご保持装置15Aの主要部が、かご4の上部外壁面に配設されている。
また、かごガイドレール13aは、図3及び図4に示されるように、断面T字状に形成されている。そして、T字の突出側を形成するレール突出部14は、一方のかご側壁面4aと所定の間隔をあけて対面するレール突出端面14aと、レール突出端面14aに垂直かつ互いに平行なレール側壁面14b,14cと、を有している。
【0015】
図2において、かご保持装置15Aは、かご上昇規制機構16、自走検出機構40、及び保守運転制御盤70を有している。そして、かご上昇規制機構16及び自走検出機構40は、かご4の上部外壁面上で一方のかごガイドレール13aの位置に合わせて配設されている、また、保守運転制御盤70がかご4の上部外壁面の所定の位置に配設されている。
【0016】
次いで、かご上昇規制機構16の詳細について説明する。
図2〜図4において、かご上昇規制機構16は、基台17、第1の支持部材20、第1の電磁石22、第1の可動部材としての第1の可動鉄板25、第1の弾性部材としての第1のコイルばね30a、楔ブロック32、及び回動軸部材35を有している。
基台17は、直方体状に形成され、凹部18が直方体の一面に開口するように、かつ、当該一面を形成する4辺のうち、平行な2辺間を接続するように形成されている。そして、基台17は、凹部18の溝方向を鉛直方向(かごガイドレール13aの長さ方向)に一致させ、凹部18を形成する両基台側壁面17a,17bと底面17cとで、レール突出部14を囲むようにかご4の上部外壁面に着脱自在に固定されている。
【0017】
そして、傾斜壁面としての一方の基台側壁面17aは、かごガイドレール13aの上方から下方に向かうにつれて一方のレール側壁面14bとの間の距離が漸次短くなるように傾斜されている。つまり、楔状空間19が、かごガイドレール13aの上方から下方に向かって間隔が漸次狭くなるように、レール側壁面14bと基台側壁面17aとの間に形成されている。また、他方の基台側壁面17bと他方のレール側壁面14cとの隙間、及びレール突出端面14aと底面17cとの隙間は均一になっている。
【0018】
第1の支持部材20は、矩形平板状に形成され、楔状空間19から奥行き方向に所定距離だけ離間した位置でレール側壁面14bと相対するように、基台17に固定されている。また、上方に開口する第1の嵌合凹部21が、第1の支持部材20の突出端側を所定の深さに切り欠いて形成され、図3及び図4に示されるように、切り欠きの両側に第1の差込部20a,20bが形成されている。また、第1の嵌合凹部21の底面が、上方に向けて水平に配置されて第1の支持面20cを構成している。
【0019】
第1の電磁石22は第1の鉄心23及び第1のコイル24を有している。そして、第1の鉄心23は、第1の支持部材20よりレール側壁面14b側で、一端面を基台17の上面に合わせて固定されている。このとき、第1の鉄心23の他端面の高さは、第1の支持面20cの高さに一致している。また、第1のコイル24は、第1の鉄心23の外周面に巻回されている。
【0020】
また、第1の可動鉄板25は矩形平板状に形成されている。そして、第1の可動鉄板25は、長手方向を奥行き方向に合わせて一面を基台17の上面に向け、長手方向の一端側が楔状空間19の上方に位置するように配置されている。また、一対の第1の差込凹部26a,26bのそれぞれが、図3に示されるように、第1の可動鉄板25の両長辺に、当該長辺の中間より他端側で長手方向の位置を一致させて開口するように形成されている。そして、第1の差込部20a,20bのそれぞれが、第1の差込凹部26a,26bのそれぞれに遊嵌状態に差し込まれている。さらに、第1の可動鉄板25が、第1の嵌合凹部21に遊嵌されて、第1の支持面20cに係合可能となっている。
【0021】
そして、第1のコイルばね30aが、奥行き方向に関し、第1の電磁石22との間に第1の支持部材20が位置するように配置されている。そして、第1のコイルばね30aの両端は、第1の可動鉄板25の一面(下面)と基台17の上面にそれぞれ固定されている。このとき、第1のコイルばね30aの付勢力は、第1の可動鉄板25の長手方向の他端を引き下げるように働いている。
【0022】
楔ブロック32は、断面楔状に形成され、その主要部が楔状空間19内に配置されている。このとき、楔ブロック32は、基準面32a、及び基準面32aとの間隔が漸次広くなる摺接面32bを有し、基準面32aに対する摺接面32bの傾斜角度が、レール側壁面14bに対する基台側壁面17aの傾斜角度と同じになるように形成されている。そして、楔ブロック32は、基準面32aがレール側壁面14bと相対するように、かつ、摺接面32bが基台側壁面17a上に載置されるように楔状空間19に配置されている。
【0023】
また、第1の可動鉄板25は、図6に示されるように、回動軸部材35を介して楔ブロック32に連結されている。
即ち、貫通孔32cが、楔ブロック32の上端近傍を基準面32aに平行かつ水平方向に貫通するように形成されている。また、回動軸部材35は、軸部35a、及び軸部35aの両端をそれぞれ同方向に垂直に折り曲げて形成した取付部35b,35cを有している。そして、軸部35aが貫通孔32cに遊嵌状態に挿通され、取付部35b,35cの先端のそれぞれが、第1の可動鉄板25の長手方向の一端側の下面に固定されている。これにより、楔ブロック32は、回動軸部材35の軸部35a周りに回動可能となっている。
【0024】
次いで、自走検出機構40の詳細について説明する。
図2〜図5において、自走検出機構40は、支持本体41、第2の支持部材43、第3の支持部材45、監視切替用電磁石50、第2の可動部材としての第2の可動鉄板55、及び通電手段61を有している。
【0025】
支持本体41は、平板状に形成され、楔状空間19から奥行き方向に所定距離離れた位置で、レール突出端面14aと相対し、かつ基台17の上方に突出するように基台17に固定されている。
また、第2の支持部材43は矩形平板状に形成され、支持本体41の上端からかごガイドレール13aと反対側に水平に延出している。
【0026】
また、レール突出端面14aと反対側に向けて開口する第2の嵌合凹部44が、第2の支持部材43の突出端側を所定の深さに切り欠いて形成され、図3及び図5に示されるように、第2の差込部43a,43bが切り欠きの両側に形成されている。なお、第2の嵌合凹部44の底面を第2の支持面43cとする。また、第2の差込部43a,43bの先端側には、回動規制ストッパ47a,47bが、第2の差込部43a,43bの上面から延出するように当該面に固着されている。
【0027】
また、第3の支持部材45は矩形平板状に形成され、第2の支持部材43の下方に所定距離離間した位置で第2の支持部材43と相対するように支持本体41に固定されている。
また、レール突出端面14aと反対側に向けて開口する第3の嵌合凹部46が、第3の支持部材45の突出端側を所定の深さに切り欠いて形成され、図5に示されるように、第3の差込部45a,45bが切り欠きの両側に形成されている。なお、第3の嵌合凹部46の底面を第3の支持面45cとする。
【0028】
また、監視切替用電磁石50は第2の鉄心51及び第2のコイル52を有している。そして、監視切替用電磁石50は、鉛直方向に関し、即ち、第2の支持部材43と第3の支持部材45との離間方向に関して、第2の支持部材43と第3の支持部材45との間に配設されている。第2の鉄心51は、軸方向をかご幅方向に一致させて配置され、第2の鉄心51の一端面が支持本体41に固定されている。
【0029】
第2の可動鉄板55は、矩形平板状に形成されている。そして、第2の可動鉄板55は、レール突出端面14aと相対するように、長手方向の一端を下方に向け、第2の支持部材43及び第3の支持部材45の突出端側に配置されている。
【0030】
そして、監視切替用付勢部材としての監視切替用コイルばね60が、第3の支持部材45よりさらに下方に配置されている。そして、監視切替用コイルばね60の両端のそれぞれが、第2の可動鉄板55の長手方向の一端(下端)側と、支持本体41とに固定されている。このとき、監視切替用コイルばね60の付勢力は、第2の可動鉄板55の下端側をかごガイドレール13a側に引っ張る方向に働いている。
【0031】
また、一対の第2の差込凹部56a,56bのそれぞれが、図5に示されるように、第2の可動鉄板55の両長辺のそれぞれの上端から下方に所定の距離だけ離間した位置で開口するように形成されている。さらに、一対の第3の差込凹部57a,57bのそれぞれが、第2の差込凹部56a,56bのそれぞれから下方に所定の距離をあけ、両長辺のそれぞれに開口するように形成されている。
【0032】
そして、第2の差込部43a,43bのそれぞれ及び第3の差込部45a,45bのそれぞれが、第2の差込凹部56a,56bのそれぞれ及び第3の差込凹部57a,57bのそれぞれに遊嵌状態に差し込まれている。また、第2の可動鉄板55は、第2の嵌合凹部44及び第3の嵌合凹部46のそれぞれに遊嵌されている。
【0033】
このとき、第3の差込部45a,45bの上面に、第3の差込凹部57a,57bのそれぞれの上側の側壁が当接し、第3の差込部45a,45bの下面と第3の差込凹部57a,57bの下側の側壁との間には所定の隙間があいている。また、第2の差込部43a,43bの両面のそれぞれと、第2の差込凹部56a,56bの両側壁のそれぞれとの間には所定の隙間があいている。また、第2の可動鉄板55と監視切替用電磁石50の他端面とは所定の隙間があいている。
【0034】
通電手段61は、接点支持部材62、導通切替手段としての一対の自走検出用接点63a,63b、及び作動部材64Aを有している。
接点支持部材62は、図4に示されるようにT字状に形成され、T字状の頂部が第2の支持部材43の上方で概略かご幅方向に延在するように第2の支持部材43に固定されている。そして、一対の自走検出用接点63a,63bが、接点支持部材62の頂部の上部に、かご幅方向に所定の隙間をあけて固定されている。
【0035】
また、作動部材64Aは、接点接続部材64a及び滑り防止部材64bを有している。接点接続部材64aは導電性の部材により棒状に形成され、滑り防止部材64bは、絶縁性の部材により楕円球状に形成されている。そして、滑り防止部材64bは、接点接続部材64aの一端に取り付けられている。さらに、接点接続部材64aの他端側が第2の可動鉄板55に固定され、接点接続部材64aの一端側が第2の可動鉄板55からレール突出端面14aに向けて突出されている。このとき、接点接続部材64aの中間部は、一対の自走検出用接点63a,63bの上方に隙間をあけて配置されている。
【0036】
また、詳細は後述するが、滑り防止部材64bは、第2のコイル52(監視切替用電磁石50)に通電したときに、監視切替用電磁石50の電磁力による第2の可動鉄板55の回動によってレール突出端面14aに当接するようになっている。そして、滑り防止部材64bの材料には、滑り防止部材64bとレール突出端面14aとの間の摩擦係数が大きくなるものが用いられている。また、滑り防止部材64bは、監視切替用電磁石50の電磁力が消失したときに、監視切替用コイルばね60の付勢力による第2の可動鉄板55の回動によってレール突出端面14aから離反するようになっている。
【0037】
次いで、保守運転制御盤70の構成、及びかご保持装置15Aの各構成間の電気的な接続について図2及び図7を参照しつつ説明する。
保守運転制御盤70は、モード切替スイッチ71、上昇用スイッチ80、下降用スイッチ81、出力ポート83a〜83c、図示しない電源の高圧側端子86と低圧側端子87、ダイオード85a,85b、及びリレー90を有している。
そして、モード切替スイッチ71は、高圧側端子86に接続された可動接点72、及び固定接点73a,73bを有している。そして、可動接点72は、固定接点73aまたは固定接点73bとの接続を手動にて任意に切り替えることができるようになっている。そして、固定接点73aが出力ポート83aに接続されている。
【0038】
また、上昇用スイッチ80は、上昇用釦76、入力端子77a及び出力端子78aを有し、下降用スイッチ81は、下降用釦79、入力端子77b及び出力端子78bを有している。
そして、固定接点73bが、入力端子77a,77bのそれぞれに接続されている。さらに、出力端子78aが出力ポート83bに接続され、出力端子78bが出力ポート83cに接続されている。
【0039】
そして、上昇用釦76が押されると入力端子77aと出力端子78aが接続され、下降用釦79が押されると入力端子77bと出力端子78bが接続されるようになっている。
【0040】
また、出力ポート83a〜83cは、それぞれエレベータ制御盤10に設けられた別々の入力ポート(図示せず)に接続されている。これにより、前述したエレベータ制御盤10のCPUは、出力ポート83a〜83cに印加される電圧の状態を判断することが出来るようになっている。
【0041】
また、ダイオード85aのアノード側が、出力端子78aと出力ポート83bとの間に接続され、ダイオード85bのアノード側が出力端子78bと出力ポート83cとの間に接続されている。そして、ダイオード85a,85bのカソード側は短絡されている。
【0042】
また、リレー90は、リレーコイル91、及び常閉接点92を有している。そして、短絡されたダイオード85a,85bのカソード側が、リレーコイル91の一端に接続され、リレーコイル91の他端は低圧側端子87に接続されている。さらに、常閉接点92が、電源の高圧側端子86と第2のコイル52の一端との間に配設されている。常閉接点92は、リレーコイル91への通電が遮断されると、高圧側端子86と第2のコイル52との間を導通させ、リレーコイル91が通電されると、高圧側端子86と第2のコイル52間の導通を遮断するようになっている。
【0043】
出力接点78a,78bは、リレーコイル91の一端にダイオード85a,85bを介して接続されているので、リレーコイル91への通電のON/OFFは、上昇用スイッチ80の上昇用釦76及び下降用スイッチ81の下降用釦79が押されたか否かにより切替可能になっている。
【0044】
また、一対の自走検出用接点63a,63bの一方が高圧側端子86に接続され、自走検出用接点63a,63bの他方が、第1のコイル24の一端に接続されている。また、第1のコイル24の他端は低圧側端子87に接続されている。即ち、自走検出用接点63a,63bは、第1のコイル24への通電(第1の電磁石22への通電)のON/OFF制御用に配設されている。そして、詳細は後述するが、接点接続部材64aが自走検出用接点63a,63bに接触したときに、第1のコイル24が通電されるようになっている。
【0045】
上記のように構成されたかご保持装置15Aにおいて、まず、かご上昇規制機構16の動作について説明する。
図2〜図4において、第1のコイル24への通電が遮断されているときは、第1の可動鉄板25は、第1のコイルばね30aの付勢力により第1の支持面20cとの接点を支点として、長手方向の他端側が下方に向かうように回動する。これにより、第1の可動鉄板25は、その一端側が上方、かつ、レール側壁面14bと離反する方向に回動する。
【0046】
また、楔ブロック32も第1の可動鉄板25の回動に連動する。このとき、楔ブロック32は、回動軸部材35の軸部35a周りに回動自在となっているので、摺接面32bは基台側壁面17aに摺接しながら上昇し、かつ、基準面32aはレール側壁面14bから離反する方向に移動する。
【0047】
そして、第1の可動鉄板25が所定角度回動すると、第1の差込凹部26a,26bそれぞれの相対する側壁のそれぞれが、第1の支持部材20の表裏両面に当接し、第1の可動鉄板25の回動動作が停止する。このときの第1の可動鉄板25の位置を第1位置とする。即ち、第1のコイルばね30aは可動鉄板25を第1位置に移動させる方向に付勢し、第1の可動鉄板25を第1位置で保持するようになっている。
そして、第1の可動鉄板25が第1位置にあるとき、楔ブロック32は、図2に示されるように、基準面32aがレール側壁面14bから所定距離離間したかご移動許可位置で基台側壁面17a上に保持される。
【0048】
また、楔ブロック32がかご移動許可位置にあるときに、第1のコイル24に通電すると、第1の電磁石22は、第1の可動鉄板25を第1の鉄心23側に吸引し、第1のコイルばね30aの付勢力に抗して第1の可動鉄板25の長手方向の一端側を引き下げる方向に付勢する電磁力を即座に発生する。このとき、第1の可動鉄板25は、その一端側が下方、かつ、レール側壁面14bに接近する方向に回動する。そして、第1の可動鉄板25の回動動作は、第1の可動鉄板25の下面が第1の鉄心23の上端面に当接したところで規制される。これにより、第1の可動鉄板25は第1の鉄心23の上端面に当接した第2位置に保持される。即ち、第1の電磁石22が第1のコイルばね30aの付勢力に抗して第1の可動鉄板25を第2位置に移動させる方向に付勢し、第2の可動鉄板25を第2位置で保持するようになっている。
【0049】
このとき、楔ブロック32は第1の可動鉄板25の回動に連動して下方に移動する。そして、楔ブロック32の摺接面32bは、基台側壁面17aに摺接しながら下降し、かつ、基準面32aはレール側壁面14bに接近する方向に移動する。そして、第1の可動鉄板25が第2位置で保持されると同時に、楔ブロック32は、レール側壁面14bと基台側壁面17aとに密接したかご上昇規制位置に配置されるようになっている。
【0050】
また、楔ブロック32がかご上昇規制位置に配置されたときには、摩擦力が楔ブロック32の基準面32aとレール側壁面14bとの間に働くようになっている。従って、楔ブロック32がかご上昇規制位置にある状態で、かご4が上昇しようとしても、楔ブロック32はかご4の上昇に連動せずに楔状空間19に食い込むので、かご4の上昇が規制される。
【0051】
次いで、自走検出機構40の動作について説明する。
図2〜図5において、第3の支持部材45の第3の差込部45a,45bは、上述したように第2の可動鉄板55の第3の差込凹部57a,57bに嵌合されている。このとき、第3の差込凹部57a,57bの上側の側壁が第3の差込部45a,45bの上面に当接されているので、第2の可動鉄板55が落下することはない。
【0052】
そして、第2のコイル52に通電しているときには、監視切替用電磁石50は第2の可動鉄板55の中間部を第2の鉄心51に吸引する電磁力を発生するようになっている。
そして、監視切替用電磁石50の電磁力によって、第2の可動鉄板55は、第3の差込部45a,45bの上面と第3の差込凹部57a,57bの上側の側壁との当接部位を支点として回動し、第2の可動鉄板55の上端はレール突出端面14aに向けて変位するようになっている。
【0053】
そして、滑り防止部材64bの先端がレール突出端面14aに押圧状態に当接したところで、第2の可動鉄板55は、その回動が停止する。これにより、第2の可動鉄板55は、第2の差込凹部56a,56bの上側の側壁が第3の差込部45a,45bの上面に当接し、また、滑り防止部材64bの先端がレール突出端面14aに当接した状態で安定保持される。このときの第2の可動鉄板55の位置を第3位置とし、滑り防止部材64bの位置を自走監視位置とする。即ち、監視切替用電磁石50が、その電磁力によって第2の可動鉄板55を第3位置に向けて移動させて第2の可動鉄板55を第3位置で保持している。
【0054】
次いで、作動部材64Aが自走監視位置に保持されている場合にかご4が上方に自走し始めたときの第2の可動鉄板55の動作について図9を参照しつつ説明する。
かご4が上方に自走し始めると、滑り防止部材64bもかご4に連動して上方に移動しようとするが、摩擦力が滑り防止部材64bとレール突出端面14aとの間に働いているので、滑り防止部材64bはその上昇が阻止されて、同じ場所に留まるようになっている。一端に滑り防止部材64bが取り付けられた接点接続部材64aの他端は第2の可動鉄板55の上端に固定されているので、第2の可動鉄板55の上端側は、かご4が上昇するにつれてレール突出端面14a側に引っ張られる。
【0055】
そして、第2の可動鉄板55は、その下端が、第3の差込部45a,45bの上面と第3の差込凹部57a,57bの上側の側壁との当接部位を支点として、監視切替用コイルばね60の付勢力に抗してレール突出端面14a側かに向かうように回動し、第2の可動鉄板55の上端はレール突出端面14aに向けてさらに変位するようになっている。
また、かご4の上昇に連動して、接点接続部材64aの一端側が他端側に対して、相対的に下方に移動するので、接点接続部材64aの中間部が自走検出用接点63a,63bに近づく。
【0056】
そして、かご4が所定距離上昇したときに、接点接続部材64aの一端に取り付けた滑り防止部材64bが、かご4に対して相対的に所定距離下降すると、作動部材64Aは、接点接続部材64aが自走検出用接点63a,63bのそれぞれに接触した自走検出位置をとるようになっている。これにより、自走検出用接点63a,63b間が導通する。そして、図7からわかるように、自走検出用接点63a,63b間が導通すると、第1のコイル24が通電される。つまり、通電手段61は、かご4が所定距離上昇したことを検知して第1のコイル24に通電させるようになっている。なお、接点接続部材64aは有る程度の弾性を有しており、自走検出用接点63a,63bからある程度圧力を受けても折れるようなことはない。
【0057】
また、作動部材64Aが自走監視位置に保持されている場合に、第2のコイル52への通電が遮断されたときの第2の可動鉄板55の動作について図10を参照しつつ説明する。
第2のコイル52への通電が遮断されると、第2の可動鉄板55は、その下端側が、監視切替用コイルばね60の付勢力によりレール突出端面14a側に引き寄せられる。
【0058】
これにより、第2の可動鉄板55は、第3の差込部45a,45bの上面と第3の差込凹部57a,57bの上側の側壁との当接部位を支点として、その上端がレール突出端面14aから離反するように回動する。
【0059】
そして、第2の可動鉄板55が所定角度回動すると、その上端側が回動規制ストッパ47a,47bに当接し、第2の可動鉄板55の回動は停止する。即ち、監視切替用コイルばね60が、第2の可動鉄板55を第4位置に移動させる方向に付勢し、第2の可動鉄板55を第3の差込凹部57a,57bの上側の側壁が第3の差込部45a,45bの上面に当接し、かつ、上端が回動規制ストッパ47a,47bに当接した第4位置に保持している。また、第2の可動鉄板55が第4位置で保持されたときには、作動部材64Aを滑り防止部材64bがレール突出端面14aから離間した自走監視解除位置に配置させるようになっている。
【0060】
次いで、かご保持装置15Aの全体動作について説明する。
かご保持装置15Aのかご上昇規制機構16及び自走検出機構40は、保守員がかご4上で保守作業を行うときに設置すればよい。即ち、保守員がかご4上での保守作業を行うときに、基台17をその凹部18でかごガイドレールを囲むように、かご4の上部外壁面に強固に固定する。なお、基台17を除くかご上昇規制機構16の構成、及び自走検出機構40は、予め基台17に取り付けておいてもよいし、基台17をかご4の上部外壁面に設置した後に基台17やかご4の上部外壁面に取り付けてもよい。
【0061】
さらに、モード切替スイッチ71の可動接点72を、固定接点73bに接続するように切り替える。なお、可動接点72が固定接点73aに接続されている場合には、出力ポート83aに電圧が印加され、エレベータ制御盤10は、出力ポート83aに電圧が印加されたと判断すると、通常のかご4の昇降運転を行うようになっている。
【0062】
可動接点72が固定接点73bに接続されても、上昇用釦76及び下降用釦79が共に押されていないときにはリレーコイル91への通電は遮断されている。このとき、常閉接点92は、第2のコイル52の一端と高圧側端子86との間を導通させるので、第2のコイル52が通電されて、監視切替用電磁石50は、第2の鉄心51に第2の可動鉄板55を吸引する電磁力を発生する。これにより、第2の可動鉄板55が、図3及び図4に示されるように第3位置に配置される。即ち、作動部材64Aは、滑り防止部材64bが押圧状態にレール突出端面14aに当接し、かつ、接点接続部材64aが自走検出用接点63a,63bから離反した自走監視位置で保持される。
【0063】
接点接続部材64aが自走検出用接点63a,63bから離れているので、第1のコイル24への通電は遮断されている。このとき、上述したように、第1の可動鉄板25は、その一端側が、第1のコイルばね30aの付勢力によって上方、かつ、レール側壁面14bと離反する方向に回動する。従って、楔ブロック32も上方、かつ、レール側壁面14bから離間する方向に移動する。そして、楔ブロック32は、第1の可動鉄板25が第1位置で保持されると、かご移動許可位置に配置される。
【0064】
この状態で、前述のかご4を停止させるブレーキが故障したり、メインロープ8と駆動綱車6との間の摩擦力が低下したりするとかご4は自走し始める。
ここで、つり合いおもり9の質量は、かご4の質量及びかご4に配設された各種機器の質量を合わせたものに、かご4の定格積載量の半分の質量を加えた値に調整されることが一般的である。従って、保守作業時には、かご4内に乗客はいないので、かご4の質量、かご4に配設された各種機器の質量、及び保守作業を行う保守員の質量の総和は、つり合いおもり9の質量より小さい。従って、かご4が保守作業時に自走するときは、昇降路3の頂部に向けて上方に自走する。
【0065】
前述したように、作動部材64Aが自走監視位置に保持されているときに、かご4が上方に移動すると、接点接続部材64aが、自走検出用接点63a,63bに接触する。これにより、第1のコイル24が通電されるので、第1の電磁石22は、第1のコイルばね30aの付勢力に抗して、第1の可動鉄板25の長手方向の一端側を下方に付勢する電磁力を発生する。そして、第1の可動鉄板25は、その一端側が第1の支持面20cとの接点を支点として下方に向かうように回動する。また、楔ブロック32は、第1の可動鉄板25の回動に連動して、レール側壁面14bに接近するように、基台側壁面17aに摺接しながら移動する。
【0066】
そして、第1の可動鉄板25の回動動作は、第1の可動鉄板25が第1の鉄心23に当接した第2位置で停止する。このとき、楔ブロック32はレール側壁面14bと基台側壁面17aとに密接したかご上昇規制位置に配置されるようになっている。上述したように、大きな摩擦力が楔ブロック32の基準面32aとレール側壁面14bとの間に働いている。従って、楔ブロック32は、かご上昇規制位置に配置されるまでは、かご4の上昇に連動するが、かご上昇規制位置に配置されたときに、かご4がさらに上昇しようとしても、かご4の上昇に連動せずに楔状空間19に食い込むので、かご4の上昇が速やかに停止する。
【0067】
また、作動部材64Aが自走監視位置にあるときに、保守運転制御盤70の上昇用釦76及び下降用釦79のいずれか一方が押されると、リレーコイル91が通電される。リレーコイル91が通電されると、常閉接点92が、高圧側端子86と第2のコイル52間の導通を遮断するので、第2のコイル52への通電が遮断される。このとき、第2の可動鉄板55を第2の鉄心51側に吸引する電磁力が消失するので、第2の可動鉄板55は、その下端側が、監視切替用コイルばね60の付勢力によりレール突出端面14a側に向かうように、第2の鉄心51との接点を支点として回動する。
【0068】
これにより、第2の可動鉄板55の上端側は、レール突出端面14aから離反する方向に移動し、滑り防止部材64bがレール突出端面14aから離反する。
そして、第2の可動鉄板55の回動は、第2の可動鉄板55の上端側が回動規制ストッパ47a,47bに当接したところで停止し、第2の可動鉄板55は第4位置で保持される。
【0069】
このとき、上昇用釦76が押された場合には入力端子77aと出力端子78aが接続され、下降用釦79が押された場合には入力端子77bと出力端子78bが接続される。従って、上昇用釦76が押された場合には、出力ポート83bに電圧が印加される。即ち、上昇用スイッチ80は、上昇用釦76が押されることにより出力ポート83bに印加される電圧を上昇運転信号としてエレベータ制御盤10に送信するようになっている。また、下降用釦79が押された場合には出力ポート83cに電圧が印加される。即ち、下降用スイッチ81は、下降用釦79が押されたことにより出力ポート83cに印加される電圧を下降運転信号としてエレベータ制御盤10に送信するようになっている。
【0070】
そして、エレベータ制御盤10のCPUは、上昇運転信号を受信している間はかご4を上昇させ、下降運転信号を受信している間はかご4を下降させる。これにより、エレベータ制御盤10のCPUは、上昇用釦76及び下降用釦79が押されている間は、押された釦に応じてかご4を上昇または下降させるようになっている。
【0071】
このとき、滑り防止部材64bはレール突出端面14aから離反されているので、かご4が上昇しても、接点接続部材64aが自走検出用接点63a,63bに接触することはない。即ち、上昇用釦76及び下降用釦79のいずれか一方が押されたときには、第1のコイル24が通電されることはなく、楔ブロック32はかご移動許可位置に配置されたままとなる。従って、上昇用釦76及び下降用釦79が押されたことによるかご4の昇降移動は楔ブロック32によって規制されない。
【0072】
そして、保守員はかご4が所望の高さ位置に配置されたところで上昇用釦76または下降用釦79を離せばリレーコイル91への通電が遮断される。このとき、常閉接点92は、第2のコイル52の一端と高圧側端子86との間を導通させる。これにより、第2のコイル52が通電されて、監視切替用電磁石50は、第2の可動鉄板55を第2の鉄心51に吸引する電磁力を発生する。そして、第2の可動鉄板55が第3位置に再び配置されると同時に、作動部材64Aは自走監視位置に配置されるようになっている。
【0073】
この実施の形態1によれば、保守作業時に、基台17が、レール側壁面14bとの間に楔状空間19を形成するようにかご上昇規制機構16を設置するとともに自走検出機構40を設置している。このとき、楔ブロック32が、レール側壁面14bから離反したかご移動許可位置と、レール側壁面14bと基台側壁面17aとに密接したかご上昇規制位置との間を移動可能に配設されている。さらに、第1の可動鉄板25が、楔ブロック32をかご移動許可位置に位置させる第1位置と楔ブロック32をかご上昇規制位置に位置させる第2位置との間を移動可能に配設されている。
【0074】
また、第1のコイルばね30aが、第1の可動鉄板25を第1位置に向けて付勢し、第1の可動鉄板25を第1位置に保持するように配置されている。また、第1の電磁石22は、通電されると第1のコイルばね30aの付勢力に抗して第1の可動鉄板25を第2位置に移動させる電磁力を発生し、第1の可動鉄板25を第2位置に保持するようになっている。
【0075】
そして、保守員がかご4を停止して保守作業を行うときには、かご上昇規制機構16の楔ブロック32は、かご移動許可位置を取るように楔状空間19内に配置されている。そして、通電手段61がかご4の自走による上昇を検知すると、第1の電磁石22に通電するようになっている。これにより、楔ブロック32は、かご上昇規制位置に移動する。従って、万一、かご4が保守員による保守作業中に自走によって上昇しても、楔ブロック32が楔状空間19に食い込むので、かご4の自走による上昇を速やかに停止させることができる。
【0076】
また、保守員が上昇用釦76及び下降用釦79のいずれか一方を押したときには、第2の可動鉄板55を強制的に第3位置から第4位置に移動して、作動部材64Aを自走監視位置から自走監視解除位置に移動させている。これと同時に、エレベータ制御盤10は、押された上昇用釦76または下降用釦79に応じてかご4を昇降させるようになっている。従って、エレベータ1の保守作業時にかご4を任意の位置に移動させる際、第2の可動鉄板55を手動で第3位置から第4位置に移動して、作動部材64Aを自走監視位置から自走監視解除位置に配置させる手間が省けるので、保守作業にかかる労力を軽減することができる。
【0077】
なお、上記実施の形態1では、第1の電磁石22の電磁力による第1の可動鉄板25の回動動作は、第1の鉄心23に当接した第2位置で停止させ、第1の可動鉄板25を第2位置で保持するものとして説明した。しかし、第1の可動鉄板25の第1の電磁石22の電磁力による回動動作は、第1の鉄心23と当接する前に第1の可動鉄板25と係合するストッパ(図示せず)などを配設して停止させるものでもよい。この場合、ストッパに当接した状態に保持された第1の可動鉄板25の位置が第2位置となる。このとき、楔ブロック32がかご上昇規制位置に配置されるようになっていればよい。
【0078】
実施の形態2.
図11はこの発明の実施の形態2に係るかご保持装置の断面図であり、楔ブロックがかご移動許可位置にあるときを示している。図12はこの発明の実施の形態2に係るかご保持装置のシステム構成図、図13はこの発明の実施の形態2に係るかご保持装置の断面図であり、楔ブロックがかご上昇規制位置にあるときを示している。
【0079】
図11において、第1の付勢部材かつ弾性部材としての第2のコイルばね30bの両端が第1の可動鉄板25の長手方向の一端側の下面と基台17の上面のそれぞれに固定されている。このとき、第2のコイルばね30bの付勢力は、第1の可動鉄板25の長手方向の一端を引き下げるように働いている。また、第1の電磁石22が、奥行き方向に関し、第2のコイルばね30bとの間に第1の支持部材20が位置するように配置されている。また、第1の鉄心23の上端面の高さ位置は、第1の支持面20cの高さ位置より下方に配置されている。また、第1の可動鉄板25の長手方向の他端側は、第1の電磁石22の第1の鉄心23の上方に配置されている。
【0080】
図12において、インバータ94の入力端子(図示せず)が自走検出用接点63bに接続され、インバータ94の出力端子(図示せず)が第1のコイル24の一端に接続されている。インバータ94は、自走検出用接点63a,63bの間が接点接続部材64aによって接続されておらず、電源電圧が入力されないときに高圧側端子86の電圧と同電位の電圧を出力するようになっている。また、インバータ94は、自走検出用接点63a,63bの間が接点接続部材64aによって接続さて電源電圧が入力されたときには、低圧側端子87と同電位の電圧を出力するようになっている。
なお、他のかご保持装置15Bの構成は上記実施の形態1と同様である。
【0081】
次いで、かご保持装置15Bの全体動作について説明する。なお、自走検出機構40及び保守運転制御盤70の動作は上記実施の形態1と同様であるので、それらの動作の詳細な説明は省略し、かご上昇規制機構16の動作の詳細についてのみ説明する。
保守員がかご4上で保守作業を行うときには、実施の形態1と同様にかご上昇規制機構16及び自走検出機構40を設置したのち、モード切替スイッチ71の可動接点72を、固定接点73bに接続するように切り替える。
図11及び図12において、可動接点72が固定接点73bに接続されたされた場合、上記実施の形態1で説明したように、上昇用釦76及び下降用釦79が共に押されていないときには、第2の可動鉄板55は第3位置に配置される。即ち、作動部材64Aは自走監視位置で保持される。
作動部材64Aが自走監視位置に保持されているときには、接点接続部材64aは、自走検出用接点63a,63bと離間しており、自走検出用接点63a,63bの間が接続されていない。従って、インバータ94は高圧側端子86と同電位の電圧を出力するので、第1のコイル24が通電される。これにより、第1の電磁石22は、第2のコイルばね30bの付勢力に抗して第1の可動鉄板25の長手方向の他端側を下方に付勢する電磁力を発生する。そして、第1の可動鉄板25は、その他端側が第1の支持面20cとの接点を支点として下方に向かうように回動する。
【0082】
従って、第1の可動鉄板25の長手方向の一端側は、上方、かつ、レール側壁面14bから離間する方向に移動するので、楔ブロック32も上方、かつ、レール側壁面14bから離間する方向に移動する。
【0083】
そして、第1の可動鉄板25が所定角度回動すると、第1の差込凹部26a,26bそれぞれの相対する側壁のそれぞれが、第1の支持部材20の表裏両面に当接し、第1の可動鉄板25の回動動作が停止する。即ち、第1の電磁石22は、その付勢力によって第1の可動鉄板25を第1位置に移動させる方向に付勢し、第1の可動鉄板25を第1位置で保持するようになっている。このとき、楔ブロック32は、基準面32aがレール側壁面14bから所定距離離間したかご移動許可位置で基台側壁面17a上に保持される。
【0084】
次いで、作動部材64Aが自走監視位置に保持されているときに、かご4が上昇したときのかご保持装置15Bの動作を図12及び図13を参照しつつ説明する。
かご4が上昇すると接点接続部材64aが、自走検出用接点63a,63bに接触する。これにより、通電手段61が、かご4の上昇を検知することができるようになっている。このとき、自走検出用接点63a,63bの間が導通するのでインバータ94は低圧側端子87と同電位の電圧を出力する。これにより、第1のコイル24への通電が遮断されるので、第1の電磁石22の電磁力が消失する。このとき、第1の可動鉄板25は、その長手方向の一端側が第2のコイルばね30bの付勢力により、第1の支持面20cとの接点を支点として下方に向かうように回動する。そして、楔ブロック32は、第1の可動鉄板25の回動に連動して、レール側壁面14bに接近するように、基台側壁面17aに摺接しながら移動する。
【0085】
そして、第1の可動鉄板25の回動動作は、楔ブロック32がレール側壁面14bと基台側壁面17aとに密接したかご上昇規制位置に移動したところで停止する。このとき、第1の可動鉄板25は第2位置に保持される。また、摩擦力が楔ブロック32の基準面32aとレール側壁面14bとの間に働いている。従って、楔ブロック32がかご上昇規制位置に配置されているときにかご4が上昇しても楔ブロック32が楔状空間19に食い込むので、かご4の上昇が速やかに停止する。
なお、他のかご保持装置15Bの動作は上記実施の形態1と同様である。
【0086】
この実施の形態2によれば、第1の可動鉄板25が楔ブロック32をかご移動許可位置に位置させる第1位置と楔ブロック32をかご上昇規制位置に位置させる第2位置との間を移動可能に配設されている。そして、第1の電磁石22が通電されたときには、第1の電磁石22の電磁力によって第1の可動鉄板25が第1位置に保持されるようになっている。また、第1の電磁石22の電磁力が消失したときには、第2のコイルばね30bが、第1の可動鉄板25を第2位置に移動させる方向に付勢して、第1の可動鉄板25を第2位置に保持するようになっている。
【0087】
そして、通電手段61がかご4の自走による上昇を検知すると、第1の電磁石22への通電が遮断されて、楔ブロック32は、かご上昇規制位置に移動されるようになっている。従って、万一、かご4が保守員による保守作業中に自走によって上昇しても、楔ブロック32が楔状空間19に食い込むので、かご4の自走による上昇を速やかに停止させることができる。
【0088】
なお、上記実施の形態2では、第1の付勢部材として、弾性部材としての第2のコイルばね30bを用いるものとして説明したが、第1の付勢部材は第2のコイルばね30bを用いるものに限定されない。第1の付勢部材として、第1の電磁石22の電磁力が消失したときに通電されて第1の可動鉄板25を第2位置に移動させる方向に付勢する電磁力を発生する第1の電磁石と同様の構成を有する第2の電磁石を用いてもよい。
【0089】
また、上記各実施の形態では、第2の可動鉄板55を第3位置、及び第4位置のそれぞれに保持する手段は、監視切替用電磁石50、及び監視切替用付勢部材としての監視切替用コイルばね60のそれぞれであるものとして説明したが、第2の可動鉄板55を第3位置及び第4位置に保持するための手段はそれぞれ監視切替用電磁石50及び監視切替用コイルばね60に限定されない。第2の可動鉄板55を第4位置に保持させる手段は、上昇用釦76及び下降用釦79の一方が押されて通電したときに第2の可動鉄板25の下端側をレール突出端面14a側に付勢する電磁力を発生するように配設した監視切替用電磁石50と同様の構成を有する他の監視切替用電磁石であってもよい。この場合、他の監視切替用電磁石の電磁力が消失した時に、第2の可動鉄板55を第3位置に移動させる方向に付勢力を発する第2の付勢部材により、第2の可動鉄板55を第3位置に保持させればよい。このとき、第2の付勢部材は、第2の可動鉄板55を第3位置に向けて付勢する監視切替用コイルばね60と同様の他の監視切替用コイルばねであってもよいし、他の監視切替用電磁石の電磁力が消失したときに通電されて第2の可動鉄板55を第3位置に移動させる方向に付勢する電磁力を発生する電磁石であってもよい。
【0090】
また、上記各実施の形態では、かごガイドレール13a,13bは長手方向を鉛直方向に一致させて設置するものとして説明したが、かごガイドレール13a,13bの長手方向は鉛直方向に一致させるものに限定されず、鉛直方向から所定角度傾くように設置されたかごガイドレール13a,13bに対しても本発明を適用できる。
また、上記各実施の形態において、第1の弾性部材、第1の付勢部材、及び監視切替用付勢部材のそれぞれには、第1のコイルばね30a、第2のコイルばね30b、及び監視切替用コイルばね60のそれぞれを用いるものとして説明したが、第1の弾性部材、第1の付勢部材、及び監視切替用付勢部材には、板ばねなど、弾性を有する他の部材を用いてもよい。
【0091】
また、上記各実施の形態では、楔状空間19は、傾斜壁面としての基台側壁面17aとレール側壁面14bとの間に形成されるものとして説明したが、楔状空間19は、基台17の底面17cとレール突出端面14aとの間に形成されるものでもよい。つまり、楔状空間19は、かごガイドレール13a,13bのいずれかの壁面との間に形成されていればよく、かごガイドレール13a,13bとの間に楔状空間19を形成する基台17の壁面を傾斜壁面として定義する。
【0092】
また、上記各実施の形態では、第1の可動部材、及び第2の可動部材に、磁性材料の鉄により形成された第1の可動鉄板25、及び第2の可動鉄板55を用いるものとして説明したが、第1の可動部材、及び第2の可動部材は第1の可動鉄板25、及び第2の可動鉄板55を用いるものに限定されない。第1の可動部材、及び第2の可動部材には、ニッケルなどの他の磁性材料を用いて形成したものや、第1の可動鉄板25、及び第2の可動鉄板55と同様の形状を有する非磁性体に対し、第1の電磁石22や監視切替用電磁石50との間に電磁力が働くように永久磁石を固定したものなどを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】この発明の実施の形態1に係るかご保持装置が配設されたエレベータの模式図である。
【図2】図1のII−II矢視断面図である。
【図3】図2のIII−III矢視断面図である。
【図4】図2のB方向からみた正面図である。
【図5】図4のC方向から見た第2の可動鉄板周辺の側面図である。
【図6】図2のVI−VI矢視要部断面図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係るかご保持装置のシステム構成図である。
【図8】この発明の実施の形態1に係るかご保持装置の断面図である。
【図9】この発明の実施の形態1に係るかご保持装置の正面図である。
【図10】この発明の実施の形態1に係るかご保持装置の正面図である。
【図11】この発明の実施の形態2に係るかご保持装置の断面図である。
【図12】この発明の実施の形態2に係るかご保持装置のシステム構成図である。
【図13】この発明の実施の形態2に係るかご保持装置の断面図である。
【符号の説明】
【0094】
4 かご、10 エレベータ制御盤、13a,13b かごガイドレール、17a 基台側壁面(傾斜壁面)、20 第1の支持部材、22 第1の電磁石、25 第1の可動鉄板(第1の可動部材)、30a 第1のコイルばね(第1の弾性部材)、30b 第2のコイルばね(第1の付勢手段、弾性部材)、32 楔ブロック、50 監視切替用電磁石、55 第2の可動鉄板(第2の可動部材)、60 監視切替用コイルばね(監視切替用付勢部材)、61 通電手段、63a,63b 自走検出用接点(導通切替手段)、64A 作動部材、80 上昇用スイッチ、81 下降用スイッチ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごの上部に着脱自在に配設され、かごガイドレールとの間に上方から下方に向かって漸次狭くなる楔状空間を形成する傾斜壁面を有する基台と、
上記かごガイドレールから離間するかご移動許可位置と、上記かごガイドレールと上記傾斜壁面とに密接するかご上昇規制位置との間を移動可能に上記楔状空間に配設された楔ブロックと、
上記楔ブロックに連結され、該楔ブロックを上記かご移動許可位置に位置させる第1位置と該楔ブロックを上記かご上昇規制位置に位置させる第2位置との間を移動可能に配設された第1の可動部材と、
上記第1の可動部材を上記第1位置に移動させる方向に付勢するように配設され、該第1の可動部材を上記第1位置に保持する第1の弾性部材と、
上記第1の弾性部材の付勢力に抗して上記第1の可動部材を上記第2位置に移動させる電磁力を発生し、該第1の可動部材を上記第2位置に保持する第1の電磁石と、
上記かごの上昇を検知して上記第1の電磁石に通電させる通電手段と、
を備えることを特徴とするエレベータのかご保持装置。
【請求項2】
かごの上部に着脱自在に配設され、かごガイドレールとの間に上方から下方に向かって漸次狭くなる楔状空間を形成する傾斜壁面を有する基台と、
上記かごガイドレールから離間するかご移動許可位置と、上記かごガイドレールと上記傾斜壁面とに密接するかご上昇規制位置との間を移動可能に上記楔状空間に配設された楔ブロックと、
上記楔ブロックに連結され、該楔ブロックを上記かご移動許可位置に位置させる第1位置と該楔ブロックを上記かご上昇規制位置に位置させる第2位置との間を移動可能に配設された第1の可動部材と、
電磁力を発生して上記第1の可動部材を上記第1位置に保持する第1の電磁石と、
上記電磁力の消失時、上記第1の可動部材を上記第2位置に移動させる方向に付勢して該第1の可動部材を上記第2位置に保持する第1の付勢部材と、
上記かごの上昇を検知して上記第1の電磁石に通電させる通電手段と、
を備えることを特徴とするエレベータのかご保持装置。
【請求項3】
上記第1の付勢部材は、弾性部材であることを特徴とする請求項2記載のエレベータのかご保持装置。
【請求項4】
上記第1の付勢部材は、上記第1の電磁石の電磁力が消失したときに通電されて上記第1の可動部材を上記第2位置に移動させる方向に付勢する電磁力を発生する第2の電磁石であることを特徴とする請求項2記載のエレベータのかご保持装置。
【請求項5】
上記通電手段は、一端が上記かごガイドレールとの間に摩擦力が働くように該かごガイドレールに当接した自走監視位置と、一端が上記かごガイドレールから離間した自走監視解除位置との間を移動可能に配設された作動部材と、
上記第1の電磁石への通電をON/OFFするための導通切替手段と、を備え、
上記自走監視位置に保持された上記作動部材は、上記かごが所定距離上昇したときに、上記かごガイドレールとの間の摩擦力によりその一端の上昇が阻止されて、上記かごに対して相対的に所定距離下降すると、上記第1の電磁石への通電のON/OFFを切り替えるように上記導通切替手段を作動させることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のエレベータのかご保持装置。
【請求項6】
上記作動部材が連結され、該作動部材を自走監視位置に位置させる第3位置と、該作動部材を自走監視解除位置に位置させる第4位置との間を移動可能に配設された第2の可動部材と、
電磁力を発生して上記第2の可動部材を上記第3位置に保持する監視切替用電磁石と、
上記監視切替用電磁石の電磁力の消失時、上記第2の可動部材を上記第4位置に移動させる方向に付勢して該第2の可動部材を上記第4位置に保持する監視切替用付勢部材と、
上記監視切替用電磁石への通電のON/OFFを切替可能に配設されて、上記監視切替用電磁石への通電がOFFに切り替えられて上記第2の可動部材が上記第4位置で保持されると、上記かごの昇降を制御するエレベータ制御盤に上昇運転信号を送信する上昇用スイッチと、
上記監視切替用電磁石への通電のON/OFFを切替可能に配設されて、上記監視切替用電磁石への通電がOFFに切り替えられて上記第2の可動部材が上記第4位置で保持されると、上記エレベータ制御盤に下降運転信号を送信する下降用スイッチと、
を備えることを特徴とする請求項5記載のエレベータのかご保持装置。
【請求項1】
かごの上部に着脱自在に配設され、かごガイドレールとの間に上方から下方に向かって漸次狭くなる楔状空間を形成する傾斜壁面を有する基台と、
上記かごガイドレールから離間するかご移動許可位置と、上記かごガイドレールと上記傾斜壁面とに密接するかご上昇規制位置との間を移動可能に上記楔状空間に配設された楔ブロックと、
上記楔ブロックに連結され、該楔ブロックを上記かご移動許可位置に位置させる第1位置と該楔ブロックを上記かご上昇規制位置に位置させる第2位置との間を移動可能に配設された第1の可動部材と、
上記第1の可動部材を上記第1位置に移動させる方向に付勢するように配設され、該第1の可動部材を上記第1位置に保持する第1の弾性部材と、
上記第1の弾性部材の付勢力に抗して上記第1の可動部材を上記第2位置に移動させる電磁力を発生し、該第1の可動部材を上記第2位置に保持する第1の電磁石と、
上記かごの上昇を検知して上記第1の電磁石に通電させる通電手段と、
を備えることを特徴とするエレベータのかご保持装置。
【請求項2】
かごの上部に着脱自在に配設され、かごガイドレールとの間に上方から下方に向かって漸次狭くなる楔状空間を形成する傾斜壁面を有する基台と、
上記かごガイドレールから離間するかご移動許可位置と、上記かごガイドレールと上記傾斜壁面とに密接するかご上昇規制位置との間を移動可能に上記楔状空間に配設された楔ブロックと、
上記楔ブロックに連結され、該楔ブロックを上記かご移動許可位置に位置させる第1位置と該楔ブロックを上記かご上昇規制位置に位置させる第2位置との間を移動可能に配設された第1の可動部材と、
電磁力を発生して上記第1の可動部材を上記第1位置に保持する第1の電磁石と、
上記電磁力の消失時、上記第1の可動部材を上記第2位置に移動させる方向に付勢して該第1の可動部材を上記第2位置に保持する第1の付勢部材と、
上記かごの上昇を検知して上記第1の電磁石に通電させる通電手段と、
を備えることを特徴とするエレベータのかご保持装置。
【請求項3】
上記第1の付勢部材は、弾性部材であることを特徴とする請求項2記載のエレベータのかご保持装置。
【請求項4】
上記第1の付勢部材は、上記第1の電磁石の電磁力が消失したときに通電されて上記第1の可動部材を上記第2位置に移動させる方向に付勢する電磁力を発生する第2の電磁石であることを特徴とする請求項2記載のエレベータのかご保持装置。
【請求項5】
上記通電手段は、一端が上記かごガイドレールとの間に摩擦力が働くように該かごガイドレールに当接した自走監視位置と、一端が上記かごガイドレールから離間した自走監視解除位置との間を移動可能に配設された作動部材と、
上記第1の電磁石への通電をON/OFFするための導通切替手段と、を備え、
上記自走監視位置に保持された上記作動部材は、上記かごが所定距離上昇したときに、上記かごガイドレールとの間の摩擦力によりその一端の上昇が阻止されて、上記かごに対して相対的に所定距離下降すると、上記第1の電磁石への通電のON/OFFを切り替えるように上記導通切替手段を作動させることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のエレベータのかご保持装置。
【請求項6】
上記作動部材が連結され、該作動部材を自走監視位置に位置させる第3位置と、該作動部材を自走監視解除位置に位置させる第4位置との間を移動可能に配設された第2の可動部材と、
電磁力を発生して上記第2の可動部材を上記第3位置に保持する監視切替用電磁石と、
上記監視切替用電磁石の電磁力の消失時、上記第2の可動部材を上記第4位置に移動させる方向に付勢して該第2の可動部材を上記第4位置に保持する監視切替用付勢部材と、
上記監視切替用電磁石への通電のON/OFFを切替可能に配設されて、上記監視切替用電磁石への通電がOFFに切り替えられて上記第2の可動部材が上記第4位置で保持されると、上記かごの昇降を制御するエレベータ制御盤に上昇運転信号を送信する上昇用スイッチと、
上記監視切替用電磁石への通電のON/OFFを切替可能に配設されて、上記監視切替用電磁石への通電がOFFに切り替えられて上記第2の可動部材が上記第4位置で保持されると、上記エレベータ制御盤に下降運転信号を送信する下降用スイッチと、
を備えることを特徴とする請求項5記載のエレベータのかご保持装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−67493(P2009−67493A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235148(P2007−235148)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】
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