説明

エレベータのかご振動監視装置

【課題】従来に比べて機器の設置及び配線作業が簡易に行える、エレベータのかご振動監視装置を提供する。
【解決手段】かご枠と、かご室とを有するエレベータのかご振動監視装置101であって、かご枠に設けたかご枠加速度センサ1と、かご枠加速度センサから得られるかご枠加速度信号を、伝達関数を用いてかご室加速度信号に変換するかご室振動特性変換部3と、かご室加速度信号から振動特徴量を抽出する振動特徴量抽出部4と、振動特徴量が基準値を超えたことを検出して異常振動と判断する異常判定部5とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの運転時における動作異常や乗り心地等を診断するため、エレベータのかごの異常振動を監視するかご振動監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの運転時における動作異常を診断する装置として、従来、かご室に設置した加速度センサにてかごの振動を検出し、この検出値が規定値を超えたか否かを比較判定することでかごの異常振動の有無を監視してエレベータの動作異常を診断する装置が存在する。例えば特許文献1では、エレベータのかご室に、加速度センサ及びデータ収集記録装置を設置した動作異常診断装置が開示されている。ここでデータ収集記録装置は、加速度センサから供給された加速度データを、予め設定したしきい値と比較して、加速度データがしきい値を超えたときには動作異常状態であると自動的に判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−132619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1におけるエレベータの異常診断装置では、以下のような問題がある。
即ち、一般的なエレベータは、かご枠と、このかご枠に防振部材を介して支持されるかご室とから構成される。特許文献1の動作異常診断装置では、上述の加速度センサ及びデータ収集記録装置を、かご室のかご床裏面側に設置している。一方、かご床裏面側への加速度センサの設置作業は、エレベータの組立前に行う、かご室を一時的に解体して行う、あるいは、エレベータを最下階まで移動させた状態で昇降路の最下部から行う等の作業方法に限定され、いずれの設置作業も大きな労力を要する。
【0005】
また、加速度センサと、かご内の制御機器等との通信用配線についても、新規に設置する場合や、予め設置された配線を変更する場合には、かご室を一時的に解体する等の作業が必要であり、配線の設置、変更作業にも大きな労力を要する。
【0006】
このように特許文献1の発明では、加速度センサをかご室に設置するための作業及び配線作業が著しく煩雑であるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、従来に比べて機器の設置及び配線作業が簡易である、エレベータのかご振動監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の一態様におけるエレベータのかご振動監視装置は、かご枠と、かご枠に防振部材を介して支持されるかご室とを有するエレベータのかご振動監視装置であって、かご枠に設けられ、かご枠の鉛直方向加速度を測定するかご枠加速度センサと、かご枠加速度センサから得られるかご枠加速度信号を、伝達関数を用いてかご室加速度信号に変換するかご室振動特性変換部と、上記かご室加速度信号から振動特徴量を抽出する振動特徴量抽出部と、上記振動特徴量が予め設定した基準値を超えたことを検出して異常振動と判断する異常判定部と、を備えた。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様におけるエレベータのかご振動監視装置によれば、加速度センサをかご枠に設けたことにより、エレベータの保守点検作業等の際には、かご枠加速度センサへ容易にアクセス可能である。さらに、かご室振動特性変換部を備え、かご枠加速度センサから得られるかご枠加速度信号を、伝達関数を用いてかご室加速度信号に変換するように構成したことから、従来に比べて機器の設置及び配線作業を簡易に行うことが可能である。
【0010】
また、かご枠に加速度センサを設けたことで、乗客の邪魔になることなく、エレベータを乗客が利用している状態において、かご振動監視用のデータ収集が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1によるエレベータのかご振動監視装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すかご振動監視装置が適用されるエレベータの概略構成を示す図である。
【図3】図1に示すかご振動監視装置にて使用する伝達関数を求めるための機器構成例を示す図である。
【図4】図1に示すかご振動監視装置において、エレベータの通常走行時のかご枠加速度波形と、かご室加速度波形との関係を説明する図である。
【図5】図1に示すかご振動監視装置において、エレベータの急停止時のかご枠加速度波形と、かご室加速度波形とから伝達関数を算出することを説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態2による伝達関数算出時の機器構成例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態3による伝達関数算出時の機器構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態であるエレベータのかご振動監視装置について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。
また、当該エレベータのかご振動監視装置が監視するエレベータのかごの異常振動には、エレベータの運転時における動作異常時における振動のみならず、乗客にとって乗り心地が悪い振動状態をも含む振動を総括した振動が相当する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1におけるエレベータのかご振動監視装置101の構成を示している。また、図2には、かご振動監視装置101によって振動が監視されるエレベータ20の概略構成が示され、図示するように、エレベータ20は、かご枠21と、かご枠21に防振部材23を介して支持されるかご室22とを有し、鉛直方向24に昇降する。尚、かご室22は、乗客が乗る部分である。
【0014】
かご振動監視装置101は、基本的構成部分として、かご枠加速度センサ1と、かご室振動特性変換部3と、振動特徴量抽出部4と、異常判定部5とを備え、ここではさらに信号収集部2と、閾値データベース6とを有する。
かご枠加速度センサ1は、図2に示すように、かご室22ではなくかご枠21に設けられ、本例では鉛直方向24においてかご枠21の上部に設置されている。一方、かご枠加速度センサ1以外の構成部分である、かご室振動特性変換部3、振動特徴量抽出部4、異常判定部5、信号収集部2、及び閾値データベース6は、実際にはコンピュータを用いて実現され、それぞれの機能に対応するソフトウェアと、これを実行するためのCPU(中央演算処理装置)やメモリ等のハードウェアから構成されている。ここで、上記コンピュータは、かご枠21とは別の場所、例えばエレベータ20から離れた監視室等に設けられ、また、点検時等では、かご室22に設けることもできる。
以下に、かご振動監視装置101の各構成部分について順次説明を行う。
【0015】
上述のようにかご枠加速度センサ1はかご枠21に設置されるが、その設置方法としては、例えば結束バンドやネジ止めによってかご枠21に固定してもよいし、かご枠加速度センサ1の底面に磁石を取り付けることで鉄製のかご枠21と容易に着脱可能に設置しても良い。また、かご枠加速度センサ1は、かご枠21に設置するようにすれば良く、図2の図示する上部に限定されず、かご枠21の下部、あるいは側面のいずれであっても良い。特にエレベータ20の保守点検等の作業においては、かご枠21の上部にアクセスする機会が多いため、かご枠21の上部に設置することで設置作業を大変容易にすることができる。また、かご枠21の上部では、機器間、及び機器と外部との通信線や制御線が通され、また制御機器が設置されるよう構成されていることが多く、新規に配線を追加する作業や、一度設置した配線を変更する作業を容易に行うことができる。また、かご枠加速度センサ1は、かご枠21の移動に平行である上下(鉛直)方向、及びかご枠21の移動に直交する左右方向及び奥行き方向のうち、一つを検出するよう構成にしてもよいし、これらの複数を同時に検出するよう構成してもよい。
【0016】
このようにかご枠21に設置されたかご枠加速度センサ1は、かご枠加速度波形11を信号収集部2へ出力する。信号収集部2は、かご枠加速度波形11からかご枠21の通常走行を検知して、かご枠21の上昇時及び下降時にかご枠加速度波形11を収集し、かご枠加速度信号12として記憶する。
【0017】
かご室振動特性変換部3は、かご枠加速度信号12を、予め算出して求められている伝達関数17を用いて、かご室加速度信号13に変換する。即ち、かご室加速度信号y1(t)は、伝達関数h(t)と、収集したかご枠加速度信号x1(t)とを用いて、以下のたたみ込みの式で算出される。
【0018】
【数1】

【0019】
もしくは、伝達関数h(t)のラプラス変換H(s)と、かご枠加速度信号x1(t)のラプラス変換X1(s)とを用いて、かご室加速度信号y1(t)のラプラス変換Y1(s)は、以下の式で算出される。
【0020】
【数2】

【0021】
ラプラス変換Y1(s)をラプラス逆変換することで、かご室加速度信号y1(t)が算出される。
その他、かご枠加速度信号12と伝達関数17とから、かご室加速度信号13を算出する手法は、既知の多くの手法のいずれを用いてもよいことは言うまでもない。
【0022】
次に、特徴量抽出部4は、かご室振動特性変換部3で得られたかご室加速度信号13から、振動特徴量14を抽出する。振動特徴量14として、かご室加速度信号13の、例えば絶対平均値、実効値、ピーク値などを用いることができる。また、ピーク値のうち外れ値を一定割合だけ除いたものを振動特徴量14として使用してもよいし、機器異常診断の統計特徴量として一般的に用いられている、尖度や歪度といった指標を振動特徴量14として使用してもよい。また、振動特徴量14を得るための信号への前処理として、特定周波数のみを通過させるフィルタを適用してもよいし、高速フーリエ変換もしくはバンドパスフィルタを適用して、かごとロープとおもりからなる系の固有振動周波数や、巻上機の回転周波数など特定周波数のピークを算出して振動特徴量14としてもよい。また、振動特徴量14は、複数種類算出するようにしてもよい。さらに、かご枠加速度信号12は、防振部材23を伝搬せずに収集した振動であるので、かご枠加速度信号12から振動特徴量14を抽出するようにして、例えばロープとかごとが接触した状態で走行した際にストランドの凹凸が接触する高い周波数で発生する振動を検出するようにしてもよく、かご室加速度信号13から抽出した振動特徴量14と共に用いてもよいことは言うまでもない。
【0023】
異常判定部5は、特徴量抽出部4にて抽出された振動特徴量14が閾値データベース6に予め記憶されている閾値15未満ならば走行時の振動は正常であり、閾値15以上ならば異常であるとして判定結果16を出力する。振動特徴量14を複数種類算出した場合には、いずれかの振動特徴量14が閾値15以上となった場合に異常と判定するようにしてもよいし、複数の振動特徴量14が閾値15以上となった場合に異常と判定するようにしてもよい。
【0024】
また、かご室22の振動特徴量を算出して、データベース6に記憶している閾値15との比較を行い異常振動の有無を判定するように構成したことで、エレベータ20が複数種類存在してかご室22とかご枠21との間の伝達関数が異なる場合においても、振動特徴量14と比較する閾値15は、各エレベータで共通の値を用いればよいことになる。
【0025】
また異常判定部5は、日時データを出力する時計機能を有してもよく、エレベータ20が例えば異常と判断されたときの日時データを含めて判定結果16を出力してもよい。
【0026】
以上のように構成されたかご振動監視装置101における動作について説明する。
エレベータ20のかご枠21の通常の昇、降動作時において、かご枠加速度センサ1から信号収集部2を介して得られるかご枠加速度信号12と、予め設定した伝達関数17とによって、かご室振動特性変換部3は、上述の算出方法に従い、かご室加速度信号13を求める。そして、振動特徴量抽出部4は、かご室加速度信号13から振動特徴量14を求め、異常判定部5は、抽出した振動特徴量14が閾値15以上である場合に、かご枠21の振動が異常と判断し、その旨の判定結果16を送出する。
【0027】
このように、本実施形態1のかご振動監視装置101では、加速度センサをかご枠21に設けたことより、エレベータの保守点検作業等の際には、かご枠加速度センサへ容易にアクセス可能である。さらに、かご室振動特性変換部3を備え、かご枠加速度センサ1から得られるかご枠加速度信号12を、伝達関数17を用いてかご室加速度信号13に変換するように構成したことから、従来に比べて機器の設置及び配線作業を簡易に行うことが可能である。
【0028】
上述のように伝達関数17は、予め設定されたものであることから、例えば以下のような構成を用いて予め求めることができる。図3には、伝達関数17を得る機器構成例が示されている。この構成例では、伝達関数算出用かご枠加速度センサ51、伝達関数算出用かご室加速度センサ52、及び伝達関数算出部53が備わる。
このような構成部分を有する伝達関数算出用の構成は、かご振動監視装置101の一部としてかご振動監視装置101に備えられても良いし、かご振動監視装置101とは別構成として設けられても良い。
【0029】
伝達関数算出用かご室加速度センサ52は、伝達関数17を求めるためにかご室22に配置される加速度センサである。この伝達関数算出用かご室加速度センサ52は、例えば、単体で加速度データを収集することが可能なように、電池もしくは内蔵バッテリーと、取り外し可能な記録媒体とを備えるように構成され、かご室22の例えば床中央部分に設置され、通常走行時のかご室22における加速度を記録した後に、記録媒体から伝達関数算出用加速度信号19を読み出すことができるものとする。
【0030】
伝達関数算出用かご枠加速度センサ51は、伝達関数算出用かご室加速度センサ52と同様の構成により、伝達関数算出用かご枠加速度信号18を採取するようにしてもよいし、上述したかご枠加速度センサ1及び信号収集部2を用いて、伝達関数算出用のかご枠加速度信号18を採取するようにしてもよい。新たに別途、伝達関数算出用かご枠加速度センサ51を設けるよりも、既設のかご枠加速度センサ1及び信号収集部2を用いるのが便利である。その他、かご室22及びかご枠21にて同時に加速度信号を収集することができる構成であれば、伝達関数算出用かご室加速度センサ52及び伝達関数算出用かご枠加速度センサ51は、どのような構成でもよい。
【0031】
伝達関数算出部53は、以下のような動作によって伝達関数を求める。
図4は、かご枠21の上昇運転時に採取された、伝達関数算出用かご枠加速度信号18と、伝達関数算出用かご室加速度信号19との関係を示した図である。例えば、かご枠21の伝達関数算出用かご枠加速度センサ51から得た伝達関数算出用かご枠加速度信号18の時間波形がx0(t)であり、かご室22の伝達関数算出用かご室加速度センサ52から得た伝達関数算出用かご室加速度信号19の時間波形がy0(t)であり、エレベータ20を通常走行させて信号18,19を同時に観測したとき、時間領域における伝達関数h(t)との関係は、以下のたたみこみの式で表される。
【0032】
【数3】

【0033】
x0(t)のラプラス変換であるX0(s)、y0(t)のラプラス変換であるY0(s)、h(t)のラプラス変換であるH(s)を用いれば、以下の式で関係が表される。
【0034】
【数4】

【0035】
以上から、伝達関数H(s)は、以下の式で算出される。
【0036】
【数5】

【0037】
伝達関数H(s)をラプラス逆変換することによって、時間領域における伝達関数h(t)が得られる。
【0038】
また、上述の例ではエレベータ20を通常走行させて得られた加速度信号を用いて伝達関数17を求める例であるが、通常走行ではなく、エレベータ20に意図的に急停止信号を発生させてエレベータ20を急停止させ、図5に示す急停止区間71の伝達関数算出用かご枠加速度信号18と伝達関数算出用かご室加速度信号19を取得して伝達関数17を算出するようにしてもよい。
【0039】
急停止時には例えば図5に示すような振動が得られる。急停止時のかご枠21への加振はインパルス加振であり、また大きな振動であることから、広い周波数帯域の伝達関数を精度よく得ることができるという効果がある。
【0040】
実施の形態2.
伝達関数17を求めるための構造として、上述の実施の形態1では図3に示すような構成例を採った。本実施の形態2では、伝達関数17を求めるための別の構成例として図6に示す構成例について説明する。即ち、かご枠21に振動を与える手段として、本実施の形態2では、かご室22に伝達関数算出用加振手段54を設ける。その他の構成部分は、図3を参照して説明した構成に同じである。よって、以下では主に伝達関数算出用加振手段54について説明を行い、同一構成部分については説明を省略する。
【0041】
上述のように実施の形態1では、エレベータ走行時の加速度を採取し、伝達関数17を算出した。これに対し、本実施の形態では、かご室22に設けた伝達関数算出用加振手段54によって発生させた振動を伝達関数算出用かご室加速度センサ52と、伝達関数算出用かご枠加速度センサ51にて収集し、伝達関数算出部53によって伝達関数17を得る。尚、実施の形態1の場合と同様に、伝達関数算出用かご枠加速度センサ51に代えて、かご枠加速度センサ1を用いても良い。
【0042】
伝達関数算出用加振手段54によって発生させる振動は、伝達関数算出用かご枠加速度センサ51にて検知できる程度の大きさであり、周波数を掃引しながら振動を発生させるようにする。また、インパルス性の振動を発生させるようにしてもよい。その他、かご枠21を揺らすことができる構成であれば何でもよく、かご室22において乗客がジャンプするなどしてもよい。
【0043】
本実施の形態によれば、実施の形態1と同様に伝達関数17を得ることができる他、伝達関数算出用加振手段54によって種々の振動を発生させることができることから、広い周波数帯域の伝達関数を精度よく得ることができる。
【0044】
実施の形態3.
本実施の形態3でも、伝達関数17を求めるためのさらに別の構造例について、図7を参照して説明する。即ち、実施の形態2では、伝達関数算出用加振手段54は、任意の周波数及び加振力の振動を発生可能なものであることから、かご室22におけるその振動を検出するために、かご室22に伝達関数算出用かご室加速度センサ52を配置している。これに対して本実施の形態3では、かご室22に配置される伝達関数算出用振動発生装置55は、所定の周波数及び加振力の振動を発生可能なものである。伝達関数算出用振動発生装置55によって発生させる振動は、自身の振動をフィードバックして加振力を制御する機構を備え、周波数を掃引しながら一定の大きさの振動となるようにするのがよい。その他、既知の周波数かつ既知の大きさを発生させることができる構成であれば何でもよく、例えば一定の高さから一定の重量の物体を落下させた時に発生する振動の周波数と大きさを予め測定しておき、同様にかご室22にて落下させるようにしても良い。
よって、発生させる振動の周波数及び加振力は、既知であることから、かご室22には、伝達関数算出用かご室加速度センサ52を設けていない。その他の構成部分は、図3を参照して説明した構成に同じである。
【0045】
このように構成される伝達関数算出用の構成における動作について説明する。
かご室22に設けた伝達関数算出用振動発生装置55によって発生させた既知の振動を伝達関数算出用かご枠加速度センサ51あるいはかご枠加速度センサ1にて収集し、伝達関数算出部53によって伝達関数17を得る。
【0046】
このように本実施の形態3によっても、実施の形態1と同様に伝達関数17を得ることができる他、実施の形態2と同様に広い周波数帯域の伝達関数を精度よく得ることができる。さらに、本実施の形態3では、実施の形態2の構成と比較して部品点数の削減を図ることができ、コストダウンを図ることも可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 かご枠加速度センサ、3 かご室振動特性変換部、4 振動特徴量抽出部、
5 異常判定部、
21 かご枠、22 かご室、
52 伝達関数算出用かご室加速度センサ、53 伝達関数算出部、
54 伝達関数算出用加振手段、55 伝達関数算出用振動発生装置、
101 エレベータのかご振動監視装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご枠と、かご枠に防振部材を介して支持されるかご室とを有するエレベータのかご振動監視装置であって、
かご枠に設けられ、かご枠の鉛直方向加速度を測定するかご枠加速度センサと、
かご枠加速度センサから得られるかご枠加速度信号を、伝達関数を用いてかご室加速度信号に変換するかご室振動特性変換部と、
上記かご室加速度信号から振動特徴量を抽出する振動特徴量抽出部と、
上記振動特徴量が予め設定した基準値を超えたことを検出して異常振動と判断する異常判定部と、
を備えたことを特徴とするエレベータのかご振動監視装置。
【請求項2】
上記伝達関数は、かご枠の昇降時において予め実測した、上記かご枠加速度信号と、かご室加速度信号との比を算出して得た関数であり、上記かご室加速度信号は、伝達関数算出用としてかご室に設けられてかご室における鉛直方向加速度を測定する伝達関数算出用かご室加速度センサから得られた信号である、請求項1記載のエレベータのかご振動監視装置。
【請求項3】
上記伝達関数は、かご枠を急停止させて予め実測した、上記かご枠加速度信号と、かご室加速度信号との比を算出して得た関数であり、上記かご室加速度信号は、伝達関数算出用としてかご室に設けられてかご室における鉛直方向加速度を測定する伝達関数算出用かご室加速度センサから得られた信号である、請求項1記載のエレベータのかご振動監視装置。
【請求項4】
上記伝達関数は、伝達関数算出用としてかご室を振動させて予め実測した、上記かご枠加速度信号と、かご室加速度信号との比を算出して得た関数であり、伝達関数算出用のかご室の上記振動は、かご室に設けられてかご室を振動させる伝達関数算出用加振手段によって発生させた振動であり、上記かご室加速度信号は、伝達関数算出用としてかご室に設けられてかご室における鉛直方向加速度を測定する伝達関数算出用かご室加速度センサから得られた信号である、請求項1記載のエレベータのかご振動監視装置。
【請求項5】
上記伝達関数は、伝達関数算出用として既知の周波数及び加振力でかご室を振動させて予め実測した上記かご枠加速度信号と、上記既知の振動によるかご室加速度信号との比を算出して得た関数である、請求項1記載のエレベータのかご振動監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−95554(P2013−95554A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240050(P2011−240050)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】