説明

エレベータのドア引き込まれ検出装置

【課題】戸開動作中に万が一戸袋内に異物が引き込まれた場合に、その異物への負荷を軽減しつつその引き込まれを検出することのできるエレベータのドア引き込まれ検出装置を提供する。
【解決手段】
低速スライドドア7と袖壁4との間の隙間G1に、戸開閉方向へ変位可能なコーナーガード15を配置するとともに、そのコーナーガード15の変位に応じて検出動作するマイクロスイッチ30を設ける。コーナーガード15は可撓性のゴム材料によって断面略中空矩形状に形成されたものであって、当該コーナーガード15のうち戸閉方向側の端壁部26aと、低速スライドドア7の表側壁面に対向する第1側壁部26bとのそれぞれを、第1側壁部26aの反低速スライドドア7側に対向する第2側壁部26cよりも薄肉に形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの出入口を開閉するスライドドアとこのスライドドアと重合関係にあって且つ戸開動作時に当該スライドドアと相対移動する壁体との間に異物が引き込まれたことを検出するエレベータのドア引き込まれ検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの戸開動作時に戸袋内に異物が引き込まれるのを防止すべく、例えば特許文献1に記載の技術が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の技術は、戸袋側の袖壁と出入口を開閉するスライドドアとの間の隙間を閉止するようにして鉛直軸心周りに揺動可能な揺動パネルを設置するとともに、その揺動パネルの揺動変位を検出する検出スイッチを設けたものである。そして、この特許文献1に記載の技術では、戸開動作中に万が一戸袋内へ異物が引き込まれたときに、上記揺動パネルがその異物とともに戸袋の奥部側へ引き込まれることになるから、これを検出スイッチによって検出して戸開動作を停止させることにより、戸袋内へのさらなる引き込まれを防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−77440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、戸開動作中に万が一戸袋内へ異物が引き込まれると、その異物が上記揺動パネルに当接または圧接することになるが、上記揺動パネルが硬質であるために上記異物への負荷が大きくなるという問題があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、戸開動作中に万が一戸袋内に異物が引き込まれた場合に、その異物への負荷を軽減しつつその引き込まれを検出することのできるエレベータのドア引き込まれ検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、ドア駆動装置により駆動されて出入口を左右方向に開閉するスライドドアと、このスライドドアと重合関係にあって且つ戸開動作時に上記スライドドアと相対移動する壁体との間の隙間に、上記壁体に対して戸開閉方向へ変位可能に案内・支持されたコーナーガードを上下方向に沿って配置するとともに、上記スライドドアと壁体との間に異物が引き込まれたことを上記コーナーガードの変位に応じて検出する検出手段を設けてなるエレベータのドア引き込まれ検出装置において、上記コーナーガードが可撓性材料をもって中空状に形成されていることを特徴としている。
【0008】
したがって、この請求項1に記載の発明では、戸開動作時に上記スライドドアと壁体との隙間に万が一異物が引き込まれた場合、その異物が上記コーナーガードに当接して当該コーナーガードが上記隙間の奥部側へ押し込まれることになるが、このときに上記コーナーガードが潰れ変形することで緩衝材として機能することになる。
【0009】
ここで、上記スライドドアと壁体との隙間に万が一異物が引き込まれたとき、上記コーナーガードの変位を円滑なものとする上では、請求項2に記載の発明のように、上記コーナーガードは、上記壁体に対して鉛直軸心周りで回動可能にヒンジ結合したコーナーガード保持部材に保持された取付基部と、その取付基部から戸閉方向側へ断面略コ字状に突設された中空状の緩衝部と、を備えていて、上記緩衝部のうち戸閉方向側の端壁部と、スライドドアの表側壁面に対向する第1側壁部とが、その第1側壁部の反スライドドア側に対向する第2側壁部よりもそれぞれ低剛性に形成されていることが望ましい。
【0010】
具体的には例えば請求項3に記載の発明のように、上記端壁部および第1側壁部をそれぞれ第2側壁部よりも肉薄に形成することにより、その端壁部および第1側壁部をそれぞれ第2側壁部よりも低剛性にするとよい。
【0011】
つまり、この請求項2,3に記載の発明では、上記スライドドアと壁体との隙間に万が一異物が引き込まれ、その異物によって上記緩衝部のうち端壁部と第1側壁部とのなすコーナー部の近傍が上記隙間の奥部側へ押圧されたときに、上記端壁部および第1側壁部が積極的に撓み変形することによって上記第2側壁部の撓み変形が抑制され、その第2側壁部が上記壁体のスライドドア側壁面と干渉することを防止できるようになる。
【0012】
その上で、望ましくは請求項4に記載の発明のように、上記緩衝部のうち端壁部と第1側壁部とのなすコーナー部に、上記スライドドア側に向けて突出する第1突条部が上下方向に沿って形成されていると、上記スライドドアと壁体との隙間に引き込まれた異物が上記第1突条部に当接することにより、上記第1側壁部がスライドドア側に向かって凹状となるように撓み変形するようになるため、その第1側壁部とスライドドアの表側壁面との干渉を防止して上記コーナーガードがより円滑に変位するようになる。
【0013】
より望ましくは請求項5に記載の発明のように、定常静止位置での上記緩衝部が、上記コーナーガード保持部材の回動中心よりも戸閉方向側に位置していると、上記スライドドアと壁体との隙間に万が一異物が引き込まれた場合に、その異物によって上記隙間の奥部側へ押圧された上記コーナーガードが、定常静止位置からスライドドア側に向かって斜めに変位するようになるため、上記第2側壁部と上記壁体のスライドドア側壁面との干渉をより効果的に防止して上記コーナーガードがより円滑に変位するようになる。
【0014】
さらに、請求項6に記載の発明のように、上記緩衝部のうち端壁部と第2側壁部とのなすコーナー部に、反スライドドア側に向けて突出する第2突条部が上下方向に沿って形成されていて、その第2突条部によって上記第2側壁部と上記壁体のスライドドア側壁面との間に所定の隙間を形成してあると、上記壁体のスライドドア側壁面に対する上記第2側壁部のいわゆる張り付きを防止して上記コーナーガードの変位をさらに円滑なものとすることができる。
【0015】
また、エレベータの見栄えを考慮すると、請求項7に記載の発明のように、上記緩衝部の端壁部がその定常静止位置で上記壁体の戸閉方向側端面に対して略面一になるように設定されていることが望ましい。
【0016】
一方、請求項8に記載の発明のように、上記検出手段としてより具体的には、上記コーナーガード保持部材が定常静止位置から戸開方向へ回動したときに、スイッチ操作用の操作体を介して押圧操作される接触式のスイッチを用いるとよい。
【発明の効果】
【0017】
したがって、本発明によれば、戸開動作時に上記スライドドアと壁体との隙間に万が一異物が引き込まれた場合、上記コーナーガードが潰れ変形することで異物に対する衝撃を緩和しつつ、そのコーナーガードが上記隙間の奥部側へ変位することで上記異物の引き込まれを検出できるようになる。
【0018】
特に、請求項2,3に記載の発明によれば、上記コーナーガードが円滑に変位するようになるため、上記異物への負荷をより有効に軽減しつつ上記異物の引き込まれをより確実に検出できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好適な実施の形態としてかご出入口の概略を示す斜視図。
【図2】図1に示すかご出入口の概略を示す平面図。
【図3】図1のA−A断面図。
【図4】図3の要部拡大図。
【図5】袖壁のうち図3に相当する部位をかご室内側から見た斜視図。
【図6】図1のB−B断面図。
【図7】袖壁のうち図6に相当する部位をかご室外側から見た斜視図。
【図8】袖壁のうち図6に相当する部位をかご室内側から見た斜視図。
【図9】マイクロスイッチの検出作動状態を示す断面図。
【図10】ドア制御装置の制御内容を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜10は本発明の好適な実施の形態として、本発明に係るドア引き込まれ検出装置を、戸開閉形式がいわゆる二枚片開き式のかご出入口1に適用した例を示すものであって、そのうち図1はかご出入口1の概略を示す斜視図、図2はかご出入口1の概略を示す平面図、図3は図1のA−A断面図、図4は図3の要部拡大図である。
【0021】
図1,2に示すように、エレベータのかごに開口形成されたかご出入口1は、ゲート状の出入口枠2により形成されている。出入口枠2は、戸当たり柱3と、その戸当たり柱3に対向配置された壁体としての袖壁4と、戸当たり柱3と袖壁4の上端部同士を連結する幕板5と、から構成されている。そして、かご側出入口1は、高速スライドドア6および低速スライドドア7によって開閉されることになる。
【0022】
周知のように、両スライドドア6,7は図示外の連動機構によって互いに連動するようになっていて、図1,2に示す出入口全閉状態においては高速スライドドア6の戸閉方向側端部が戸当たり柱3に突き当てられている。一方、戸開動作時には、かごの運行を司る主制御装置8からの指令に基づいてドア制御装置9がドア駆動装置10を作動させ、このドア駆動装置10が高速スライドドア6を低速スライドドア7とともに戸開方向、すなわち図1に示す矢印C方向に駆動することでかご側出入口1が開放されることになる。なお、当然のことながら、低速スライドドア7は戸開閉動作時に高速スライドドア6よりも低速で移動するようになっている。そして、出入口全開状態においては、袖壁4のかご室外側の空間に両スライドドア6,7が重合状態で収容されることになる。この開閉機構上、低速スライドドア7と、この低速スライドドア7と重合関係にあって且つ戸開動作時に低速スライドドア7と相対移動する袖壁4との間には所定の隙間G1が形成されている。
【0023】
図1,2のほか図3に示すように、袖壁4は、かご室内側に開口する断面略コ字状の袖壁パネル11と、その袖壁パネル11の開口部をかご室内側から閉塞するように設けられたかご操作盤12と、袖壁パネル11のうち戸閉方向側の側壁部をかご出入口1の全高にわたって覆うように設けられたエンドカバー13と、を備えており、全体として断面略中空台形状を呈している。つまり、袖壁4のかご室内側壁面4aが実質的にかご操作盤12により構成されている一方、袖壁4の戸閉方向側端面4bはエンドカバー13によって構成されている。なお、袖壁パネル11のうち戸閉方向側端部の内面には断面略コ字状の補強パネル14が取り付けられている。
【0024】
かご操作盤12は、例えばかごの運行状況等の情報を乗客に伝達するための表示器DおよびスピーカSを備えており、図示外の固定手段によって袖壁パネル11に対して着脱可能に取り付けられている。
【0025】
エンドカバー13は、当該エンドカバー13のうち戸閉方向側端面4bの裏面側に突設された取付脚部13aの先端が、袖壁パネル11のうち戸閉方向側の側壁部に着座しつつ固定されており、これにより、エンドカバー13の戸閉方向側端面4bを後述するヒンジ16の回転中心よりも戸閉方向側にオフセットさせている。
【0026】
エンドカバー13と低速スライドドア7との間の隙間G1には、その隙間G1に万が一異物が引き込まれたときにこれを検出すべく、図3に示す定常静止位置から戸開方向に変位可能な断面略中空矩形状のコーナーガード15が設けられている。このコーナーガード15は、かご側出入口1の略全高にわたって設けられた長尺状のものであって、当該コーナーガード15の戸開方向側にコーナーガード保持部材として設けられた長尺状のホルダ18によって保持されている。
【0027】
ホルダ18は断面略L字状のブラケット17およびヒンジ16を介して袖壁パネル11に結合されている。ヒンジ16は、その軸心が略鉛直となる姿勢にて袖壁4の内部に配置されており、当該ヒンジ16のうち一方のヒンジ片16aが袖壁パネル11の戸閉方向側の側壁部内面に補強パネル14を介して固定されている一方、ヒンジ16のうち他方のヒンジ片16bにブラケット17が固定されている。そして、そのブラケット17の先端部が、袖壁パネル11を挿通して隙間G1内に突出し、ホルダ18に固定されている。これにより、コーナーガード15が、ホルダ18およびブラケット17を介し、袖壁4に対して鉛直軸心周りで戸開閉方向に回動可能に案内・支持されている。なお、ヒンジ16およびブラケット17は上下方向に所定のピッチで複数設けられている。
【0028】
より具体的には、図3のほか図4に示すように、ホルダ18は、戸閉方向側に向かって開口する溝部20が凹設されたホルダ本体19と、そのホルダ本体19から戸開方向側に延出する壁体状のブラケット連結部21と、を備えている。溝部20は、その開口幅よりも奥部側の方が幅広となるいわゆる変形あり溝状に形成されており、その開口側には狭窄部20aが形成されている一方、その奥部側には断面略円形状の拡幅部20bが形成されている。
【0029】
他方、コーナーガード15は、ホルダ18に保持された取付基部22と、その取付基部22から戸閉方向側に向けて突出する中空状の緩衝部26と、を備えており、その全体が可撓性のゴム材料によって形成されている。
【0030】
取付基部22は、ホルダ本体19の戸閉方向側端面に重合する略平板状の取付壁部23と、その取付壁部23からホルダ18側へ突設され、ホルダ本体19の溝部20に嵌合する係合凸部24と、取付壁部23のうち低速スライドドア7側の端部から延出し、ホルダ本体19のうち低速スライドドア7側の側面を覆うカバーリップ25と、を備えている。また、係合凸部24は溝部20に合致する形状に形成されているものであって、溝部20側の狭窄部20aに対応する首部24aと、溝部20側の拡幅部20bに対応する断面略円形状の抜け止め部24bと、を備えている。そして、この係合凸部24とホルダ18側の溝部20との凹凸嵌合によってコーナーガード15がホルダ18に保持されている。
【0031】
緩衝部26は、取付壁部23から戸閉方向側に向けて断面略コ字状に突設されたものであって、図3,4に示す定常静止位置において、当該緩衝部25のうち戸閉方向側の端壁部26aがエンドカバー13の戸閉方向側端面4bと略面一になるように設定されている。そして、上述したようにエンドカバー13の戸閉方向側端面4bをヒンジ16の回転中心よりも戸閉方向側にオフセットさせることで、図3,4に示す定常静止位置において、緩衝部26がヒンジ16の回動中心よりも戸閉方向側に位置している。
【0032】
さらに、緩衝部26のうち端壁部26aおよび低速スライドドア7に対向する第1側壁部26bの肉厚T1を、第1側壁部26bの反低速スライドドア7側に対向する第2側壁部26cの肉厚T2よりも薄肉に設定してある。これにより、端壁部26aおよび第1側壁部26bを第2側壁部26cよりも剛性の低い変形容易部として設定している。なお、取付壁部23は第2側壁部26cと同様の肉厚T2をもって形成されている。
【0033】
ここで、本実施の形態では端壁部26aおよび第1側壁部26bを第2側壁部26cよりも薄肉に形成しているが、端壁部26aおよび第1側壁部26bを比較的軟質な材料によって構成する一方、第2側壁部26cを比較的硬質な材料によって構成してもよい。
【0034】
また、緩衝部26のうち端壁部26aと第1側壁部26bとのなすコーナー部に低速スライドドア7側に突出する第1突条部26dが上下方向に沿って形成されている。つまり、隙間G1に引き込まれた異物を第1突条部26dに当接させるようにすることで、端壁部26aおよび第1側壁部26bがより容易に撓み変形するように設定している。
【0035】
一方、緩衝部26のうち端壁部26aと第2側壁部26cとのなすコーナー部には反低速スライドドア7側に突出する第2突条部26eが上下方向に沿って形成されている。これにより、第2側壁部26cのエンドカバー13に対するいわゆる張り付きを防止すべく、両者の間に所定の隙間G2を形成している。
【0036】
図5は、袖壁4のうち図3に相当する部位をかご室内側から見た斜視図であって、便宜上かご操作盤12を取り外した状態を描いてある。
【0037】
図3のほか図5に示すように、袖壁パネル11のうち低速スライドドア7側の壁部の内面には、付勢手段としてのリターンスプリング27によって戸閉方向側に付勢されたロッド28を戸開閉方向に案内するリニアガイド29が設けられている。そして、そのロッド28の先端がブラケット17に当接していて、そのブラケット17とホルダ18およびコーナーガード15が、リターンスプリング27の付勢力により、ロッド28を介して戸閉方向に付勢されている。なお、図示は省略しているが、ヒンジ16は、リターンスプリング27の付勢力に抗してコーナーガード15を定常静止位置に保持するストッパー機能を有している。
【0038】
図6は図1のB−B断面図であって、図7は袖壁4のうち図6に相当する部位をかご室外側から見た斜視図である。また、図8は袖壁のうち図6に相当する部位をかご室内側から見た斜視図である。なお、この図6〜8では便宜上かご操作盤12を取り外した状態を描いてある。
【0039】
図6〜8に示すように、袖壁パネル11のうち低速スライドドア7側の壁部の内面にはマイクロスイッチ30が検出手段として設けられている。このマイクロスイッチ30は、ローラ30b付きのレバー30aをいわゆるアクチュエータとして備えている。
【0040】
また、袖壁パネル11のうち低速スライドドア7側の壁部には、低速スライドドア7の表側壁面に対して略面直角なシャフト31が貫通しており、そのシャフト31のうち袖壁パネル11の外側の端部にはホルダ18の戸閉方向側端面と接触する中間体32が、シャフト31のうち袖壁パネル11の内側の端部にはマイクロスイッチ30を押圧操作するための操作体たるドグ33がそれぞれ設けられている。そして、シャフト31と中間体32およびドグ33はそれぞれ一体的に結合されている。
【0041】
詳細には、中間体32およびドグ33は、ホルダ18またはローラ30bに対してそれぞれ曲面をもって線接触しており、ホルダ18が戸開方向側へ回動したときに、ドグ33が中間体32とともに揺動してローラ30bを戸開方向側へ押圧し、マイクロスイッチ30が検出動作するようになっている。つまり、ホルダ18の戸開方向側への回動を、中間体32およびドグ33によってシャフト31を中心とした回転方向に変換することにより、マイクロスイッチ30の動作を確実なものとしている。なお、本実施の形態では、マイクロスイッチ30を押圧操作するための操作体として揺動可能なドグ33を用いているが、この操作体としていわゆる直動式のものを用いることも可能である。
【0042】
図9はマイクロスイッチ30の検出作動状態を示す図である。
【0043】
したがって、以上のように構成したエレベータのドア引き込まれ検出装置では、図9に示すように、戸開動作する低速スライドドア7に異物が引き摺られ、その異物が万が一隙間G1に進入すると、その異物がコーナーガード15の第1突条部26dを図9に示す矢印P方向、すなわち戸開方向に押圧することになる。
【0044】
このようにコーナーガード15が異物によって押圧されると、当該コーナーガード15の緩衝部26が潰れ変形することで緩衝材として機能し、これによって異物への負荷を軽減しつつ、このコーナーガード15がホルダ18とともに定常静止位置から戸開方向へ回動変位し、この回動変位がマイクロスイッチ30によって検出されることになる。
【0045】
より詳細には、コーナーガード15の第1突条部26dが図9に示す矢印P方向に押圧されると、緩衝部26の端壁部26aが第2側壁部26cとのなすコーナー部を中心として戸開方向側へ倒れるように撓み変形するとともに、第1側壁部26bは緩衝部26の内部空間を狭めるように低速スライドドア7側へ向かって凹状に撓み変形することになる。これにより、コーナーガード15の緩衝部26がエンドカバー13の低速スライドドア7側壁面から離間しつつ戸開方向側へ向けて斜めに変位することになる。すなわち、緩衝部26のうち端壁部26aと第1側壁部26bとを積極的に撓み変形させて第2側壁部26cの撓み変形を抑制することにより、この第2側壁部26cとエンドカバー13との干渉によってコーナーガード15の変位が阻害されることが防止される。
【0046】
そして、コーナーガード15が定常静止位置から戸開方向へ変位することにより、マイクロスイッチ30がドグ33を介して押圧操作されて実質的にON作動し、ドア制御装置9に引き込まれ検出信号を出力することになる。また、コーナーガード15から異物が引き離され、リターンスプリング27の付勢力によってコーナーガード15が図9に示す検出作動位置から定常静止位置まで復帰動作すると、これに伴って中間体32とシャフト31およびドグ33も復帰動作してマイクロスイッチ30が実質的にOFF作動することになる。
【0047】
図10は戸開動作時におけるドア制御装置9の制御内容を示すフローチャートである。
【0048】
ドア制御装置9は、図10に示すように、戸開動作を開始すると(ステップS1)、まず、マイクロスイッチ30から引き込まれ検出信号を入力しているか否かを判断する(ステップS2)。その結果、引き込まれ検出信号を入力していない場合には戸開動作を継続し(ステップS3)、次いでかご出入口1が全開したか否かを判定する(ステップS4)。そして、ステップS4においてかご出入口1が全開している場合には戸開動作を終了する一方、ステップS4においてかご出入口1が全開していない場合にはステップS2に戻ることになる(ステップS5)。
【0049】
他方、ステップS2において引き込まれ検出信号を入力している場合、ドア制御装置9は、直ちに戸開動作を停止するとともに(ステップS6)、引き込まれを検出した履歴を主制御装置8に記憶させる(ステップS7)。その上で、ドア制御装置9は、スピーカSにより警告ブザーおよび警告アナウンスを再生するとともに、表示器Dによって警告画像を表示すことにより(ステップS8)、異物をコーナーガード15から引き離すように乗客に促し、ステップS2に戻る。
【0050】
したがって、本実施の形態によれば、戸開動作中に万が一異物が隙間G1へ引き込まれ、その異物がコーナーガード15に当接した場合に、緩衝部26が潰れ変形することで緩衝材として機能することになるから、異物への負荷を軽減できるようになるメリットがある。
【0051】
また、緩衝部26のうち端壁部26aと第1側壁部26bをそれぞれ変形容易部として第2側壁部26cよりも低剛性に設定することにより、戸開動作中に万が一異物が隙間G1へ引き込まれた場合に、コーナーガード15が確実且つ円滑に戸開方向側へ変位し、異物のさらなる引き込まれを確実に防止できるようになる。
【0052】
さらに、ホルダ本体19のうち低速スライドドア7側の側面をカバーリップ25で覆うことにより、隙間G1に引き込まれた異物が硬質なホルダ本体19に直接接触することを防止できるメリットがある。
【0053】
なお、本実施の形態では、本発明に係るエレベータのドア引き込まれ検出装置を、いわゆる二枚片開き式のかご出入口1のうち低速スライドドア7と袖壁4との間の隙間G1に適用した例を示したが、本発明に係るエレベータのドア引き込まれ検出装置は高速スライドドア6と低速スライドドア7との間の隙間にも適用可能であるほか、乗場側の出入口にも適用可能であり、さらに戸開閉形式を問わずに適用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0054】
4…袖壁(壁体)
7…低速スライドドア
10…ドア駆動装置
15…コーナーガード
18…ホルダ(コーナーガード保持部材)
22…取付基部
26…緩衝部
26a…端壁部
26b…第1側壁部
26c…第2側壁部
26d…第1突条部
26e…第2突条部
30…マイクロスイッチ(検出手段)
33…ドグ(操作体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア駆動装置により駆動されて出入口を左右方向に開閉するスライドドアと、このスライドドアと重合関係にあって且つ戸開動作時に上記スライドドアと相対移動する壁体との間の隙間に、上記壁体に対して戸開閉方向へ変位可能に案内・支持されたコーナーガードを上下方向に沿って配置するとともに、上記スライドドアと壁体との間に異物が引き込まれたことを上記コーナーガードの変位に応じて検出する検出手段を設けてなるエレベータのドア引き込まれ検出装置において、
上記コーナーガードが可撓性材料をもって中空状に形成されていることを特徴とするエレベータのドア引き込まれ検出装置。
【請求項2】
上記コーナーガードは、上記壁体に対して鉛直軸心周りで回動可能にヒンジ結合したコーナーガード保持部材に保持された取付基部と、その取付基部から戸閉方向側へ断面略コ字状に突設された中空状の緩衝部と、を備えていて、
上記緩衝部のうち戸閉方向側の端壁部と、スライドドアの表側壁面に対向する第1側壁部とのそれぞれが、その第1側壁部の反スライドドア側に対向する第2側壁部よりも低剛性に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータのドア引き込まれ検出装置。
【請求項3】
上記端壁部および第1側壁部をそれぞれ第2側壁部よりも肉薄に形成することにより、その端壁部および第1側壁部をそれぞれ第2側壁部よりも低剛性にしたことを特徴とする請求項2に記載のエレベータのドア引き込まれ検出装置。
【請求項4】
上記緩衝部のうち端壁部と第1側壁部とのなすコーナー部に、上記スライドドア側に向けて突出する第1突条部が上下方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載のエレベータのドア引き込まれ検出装置。
【請求項5】
定常静止位置での上記緩衝部が、上記コーナーガード保持部材の回動中心よりも戸閉方向側に位置していることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のエレベータのドア引き込まれ検出装置。
【請求項6】
上記緩衝部のうち端壁部と第2側壁部とのなすコーナー部に、反スライドドア側に向けて突出する第2突条部が上下方向に沿って形成されていて、その第2突条部によって上記第2側壁部と上記壁体のスライドドア側壁面との間に所定の隙間を形成してあることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のエレベータのドア引き込まれ検出装置。
【請求項7】
上記緩衝部の端壁部がその定常静止位置で上記壁体の戸閉方向側端面に対して略面一になるように設定されていることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載のエレベータのドア引き込まれ検出装置。
【請求項8】
上記検出手段は、上記コーナーガード保持部材が定常静止位置から戸開方向へ回動したときに、スイッチ操作用の操作体を介して押圧操作される接触式のスイッチであることを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載のエレベータのドア引き込まれ検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−275032(P2010−275032A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127151(P2009−127151)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000228246)日本オーチス・エレベータ株式会社 (61)
【Fターム(参考)】