説明

エレベータのドア装置、及びエレベータの敷居溝閉塞装置

【課題】敷居溝に異物が入ることを防止することができるとともに、長寿命化を図ることができるエレベータのドア装置、及びエレベータの敷居溝閉塞装置を得る。
【解決手段】可動閉塞体21は、敷居6に設けられた敷居溝7の上部で敷居溝7の開口部を塞ぐ閉塞位置と、閉塞位置よりも下方に位置し敷居溝7の開口部を開放する開放位置との間で変位可能になっている。可動閉塞体21は、敷居6に対する係合リンク32の回動に応じて変位される。係合リンク32は、敷居溝7に挿入される係合部35を有している。出入口4を開閉する引き戸11の下端部には、カム51が設けられている。カム51は、引き戸11が戸開位置あるときに係合部35を押して可動閉塞体21の位置を閉塞位置に保ち、引き戸11が戸開位置から戸閉方向へ移動されることにより係合部35から外れて可動閉塞体21の開放位置への変位を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、出入口を開閉するエレベータのドア装置、及び出入口が開いているときに出入口の敷居溝を閉塞するエレベータの敷居溝閉塞装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの出入口の下部に設けられた敷居の溝に異物が入ることを防止するために、表面に案内溝が螺旋状に形成された円柱状の回転体を敷居の溝内に回転可能に配置し、出入口を開閉するドアの下端部に設けられた戸の脚を回転体の案内溝に挿入して、出入口の開閉時に戸の脚を案内溝に案内させながらドアを移動させることにより、回転体を敷居の溝内で回転させるようにしたエレベータの敷居装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、従来、エレベータの出入口の敷居溝に異物が入ることを防止するために、敷居溝の上部を塞ぐ可撓性の閉塞帯を複数のばねで支持し、出入口を開閉する扉の下端部に設けられたガイドシューで閉塞帯を下に押しながら扉を移動させるようにしたエレベータ敷居溝閉塞装置も提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−170631号公報
【特許文献2】特開2002−120987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示されたエレベータの敷居装置では、ドアが出入口を開閉するときに、戸の脚が回転体の案内溝の内面に接触しながら移動することとなるので、出入口の開閉時にドアに対する摺動抵抗が大きくなってしまうとともに、戸の脚や回転体の摩耗が促進されて敷居装置の寿命が短くなってしまう。
【0006】
また、特許文献2に示されたエレベータ敷居溝閉塞装置でも、出入口の開閉時に扉のガイドシューが閉塞帯に接触しながら移動されるので、扉に対する摺動抵抗が大きくなってしまうとともに、ガイドシューや閉塞帯の摩耗が促進されて寿命が短くなってしまう。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、敷居溝に異物が入ることを防止することができるとともに、長寿命化を図ることができるエレベータのドア装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るエレベータのドア装置は、出入口の間口方向への移動により出入口を開閉する引き戸、引き戸の下端部が挿入される敷居溝が引き戸の移動方向に沿って設けられ、出入口の下部に設けられた敷居、敷居溝の上部で敷居溝の開口部を塞ぐ閉塞位置と、閉塞位置よりも下方に位置し敷居溝の開口部を開放する開放位置との間で変位可能な可動閉塞体、敷居溝内に挿入される係合部を含み敷居に対して回動可能な係合回動体を有し、係合回動体の回動に応じて可動閉塞体が変位される連動装置、及び引き戸の下端部に設けられ、出入口を開く戸開位置に引き戸があるときに係合部を押して可動閉塞体の位置を閉塞位置に保ち、引き戸が戸開位置から戸閉方向へ移動されることにより係合部から外れて可動閉塞体の開放位置への変位を可能とするカムを備えている。
【0009】
この発明に係るエレベータの敷居溝閉塞装置は、出入口の間口方向への移動により出入口を開閉する引き戸の下端部が挿入される敷居溝の上部で敷居溝の開口部を塞ぐ閉塞位置と、閉塞位置よりも下方に位置し敷居溝の開口部を開放する開放位置との間で変位可能な可動閉塞体、敷居溝内に挿入される係合部を含み敷居に対して回動可能な係合回動体を有し、係合回動体の回動に応じて可動閉塞体が変位される連動装置、及び引き戸の下端部に設けられ、出入口を開く戸開位置に引き戸があるときに係合部を押して可動閉塞体の位置を閉塞位置に保ち、引き戸が戸開位置から戸閉方向へ移動されることにより係合部から外れて可動閉塞体の開放位置への変位を可能とするカムを備えている。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係るエレベータのドア装置及び敷居溝閉塞装置では、引き戸の下端部にカムが設けられ、引き戸が戸開位置にあるときに係合回動体の係合部がカムに押されて可動閉塞体の位置が閉塞位置に保たれ、引き戸が戸開位置から戸閉方向へ移動されることによりカムが係合部から外れて可動閉塞体が開放位置へ変位可能となるので、出入口が開いているときに、可動閉塞体で敷居溝を塞ぐことができる。これにより、敷居溝に異物が入ることを防止することができる。また、カムが係合部から外れた状態では、可動閉塞体を引き戸の下方に変位させておくことができる。これにより、出入口を開閉するときに、可動閉塞体を引き戸に接触させずに引き戸を移動させることができ、ドア装置の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1によるエレベータのかごを示す一部破断正面図である。
【図2】図1のエレベータの出入口が開いている状態を示す一部破断正面図である。
【図3】図1の一方の閉塞体装置を示す断面図である。
【図4】図2の一方の閉塞体装置を示す断面図である。
【図5】図3のV-V線に沿った断面図である。
【図6】図3のVI-VI線に沿った断面図である。
【図7】図4のVII-VII線に沿った断面図である。
【図8】図4のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【図9】図3の第1の戸の脚を示す一部破断斜視図である。
【図10】図9のX-X線に沿った断面図である。
【図11】図3の第2の戸の脚を示す斜視図である。
【図12】図11のXII-XII線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるエレベータのかごを示す一部破断正面図である。また、図2は、図1のエレベータの出入口が開いている状態を示す一部破断正面図である。図において、昇降路内を昇降するかご1は、かご枠(図示せず)と、かご枠に支持されたかご床2と、かご床2上に支持されたかご室3とを有している。
【0013】
かご室3の正面壁には、かご室3内に対して乗客が乗降するためのエレベータの出入口(かご出入口)4が設けられている。かご室3の正面壁のうち、出入口4の左右いずれかの部分(即ち、袖壁)には、かご室3内の乗客により操作可能なかご操作盤5がかご室3内に露出して設けられている。
【0014】
かご床2には、出入口4の下部に配置された敷居(かご敷居)6が水平に固定されている。敷居6の長さ寸法は、かご室3の幅寸法よりも長くなっている。敷居6には、上方へ開放された敷居溝7が出入口4の間口方向(幅方向)に沿って設けられている。敷居溝7は、敷居6の中間部で敷居6を上下に貫通する貫通溝部7aと、敷居6の両端部で敷居6を貫通せず底部を持つ不貫通溝部7bとを有している。貫通溝部7aの長さ寸法は、出入口4の間口寸法よりも大きくされている。
【0015】
かご室3には、出入口4の上部に配置されたハンガケース9が水平に固定されている。ハンガケース9には、出入口4の間口方向に沿ったドアレール10が固定されている。ハンガケース9及びドアレール10の長さ寸法は、敷居6の長さ寸法とほぼ同じになっている。
【0016】
ドアレール10には、一対の引き戸(かごの戸)11が掛けられている。各引き戸11は、かご1に設けられた図示しないドア駆動装置の駆動力により、ドアレール10に案内されながら、出入口4の間口方向に沿って互いに逆方向へ移動可能になっている。また、各引き戸11は、出入口4を閉じる(全閉する)戸閉位置(図1)と、戸閉位置よりも出入口4の間口方向外側に位置し、出入口4を開く(全開する)戸開位置(図2)との間で移動可能になっている。即ち、各引き戸11は、ドア駆動装置の駆動力を受けて出入口4の間口方向に沿って互いに逆方向へ移動されることにより、出入口4を開閉する。
【0017】
各引き戸11は、出入口4を開閉する引き戸本体であるドアパネル12と、ドアパネル12の上端部に設けられたドアハンガ13と、ドアパネル12の下端部に設けられ、敷居溝7に挿入される第1の戸の脚14及び第2の戸の脚15とを有している。
【0018】
ドアハンガ13は、ドアパネル12の上端部に固定されたハンガ板(ハンガ本体)16と、ハンガ板16に設けられ、ドアレール10に載せられた複数のハンガローラ17とを有している。引き戸11は、各ハンガローラ17をドアレール10上で転動させながら出入口4の間口方向へ移動される。
【0019】
第1の戸の脚14及び第2の戸の脚15は、敷居溝7に沿った方向について互いに離して配置されている。第1の戸の脚14は、第2の戸の脚15よりも戸閉側に配置されている。各引き戸11が戸開位置と戸閉位置との間を移動されるときには、引き戸11の移動に応じて第1及び第2の戸の脚14,15が敷居溝7内を移動される。即ち、引き戸11は、その下端部を敷居溝7内に挿入した状態を保ったまま戸開位置と戸閉位置との間を移動される。
【0020】
敷居6には、出入口4の鉛直方向に沿った中心線に関して左右対称の位置に配置された一対の閉塞体装置20が設けられている。一方の閉塞体装置20及び他方の閉塞体装置20は、出入口4の中心線に関して左右対称の構成になっている。従って、以下、一方の閉塞体装置20の構成について説明し、他方の閉塞体装置20の構成についての説明を省略する。なお、かご1には、敷居6から下方へ延びる保護板であるエプロン18が設けられている。
【0021】
図3は図1の一方の閉塞体装置20を示す断面図、図4は図2の一方の閉塞体装置20を示す断面図である。また、図5は図3のV-V線に沿った断面図、図6は図3のVI-VI線に沿った断面図、図7は図4のVII-VII線に沿った断面図、図8は図4のVIII-VIII線に沿った断面図である。図において、閉塞体装置20は、貫通溝部7aに沿って配置される可動閉塞体21と、敷居6に対して可動閉塞体21を変位可能に支持する連動装置22と、可動閉塞体21に接続された引きばね(付勢体)23とを有している。
【0022】
可動閉塞体21は、貫通溝部7aの上部で貫通溝部7aの開口部を塞ぐ閉塞位置(図4)と、閉塞位置よりも下方に位置し、貫通溝部7aの開口部を開放する開放位置(図3)との間で変位可能になっている。また、可動閉塞体21は、敷居溝7の長さ方向へ水平に配置された水平板部21aと、水平板部21aの幅方向両端部から下方へ突出する一対の側板部21bとを有している。水平板部21aの長さ方向両端部には、傾斜部が設けられている。可動閉塞体21が閉塞位置にあるときには、水平板部21aの上面が敷居6の上面と同一平面上に配置される。可動閉塞体21が開放位置にあるときには、第1及び第2の戸の脚14,15が可動閉塞体21から離れた状態で可動閉塞体21の上方を敷居溝7内で移動可能になる。
【0023】
敷居6の下面には、連動装置22を支持する第1の軸受(第1の取付部材)24及び第2の軸受(第2の取付部材)25と、開放位置にあるときの可動閉塞体21を受けるストッパ(受け部材)26とが固定されている。
【0024】
第2の軸受25は、第1の軸受24よりも戸閉側に離れて配置されている。ストッパ26は、第1の軸受24と第2の軸受25との間に配置されている。ストッパ26には、可動閉塞体21に対する衝撃を緩和する緩衝材27が取り付けられている。ストッパ26は、可動閉塞体21を受けることにより、可動閉塞体21が開放位置を行き過ぎることを防止する。
【0025】
第1の軸受24には第1の敷居側回動軸28が取り付けられ、第2の軸受25には第2の敷居側回動軸29が取り付けられている。即ち、第1の敷居側回動軸28は第1の軸受24を介して敷居6に設けられ、第2の敷居側回動軸29は第2の軸受25を介して敷居6に設けられている。第1及び第2の敷居側回動軸28,29は、貫通溝部7aの下方に配置されているとともに、敷居6の幅方向(即ち、敷居6の長さ方向及び厚さ方向のいずれに対しても垂直な方向)に沿って配置されている。
【0026】
可動閉塞体21の一端部(戸開側端部)には第1の閉塞体側回動軸30が取り付けられ、可動閉塞体21の他端部(戸閉側端部)には第2の閉塞体側回動軸31が取り付けられている。第1及び第2の閉塞体側回動軸30,31は、図7に示すように、一対の側板部21b間に取り付けられている。また、第1及び第2の閉塞体側回動軸30,31は、第1及び第2の敷居側回動軸28,29と平行に配置される。
【0027】
連動装置22は、敷居6に対してそれぞれ回動可能な係合リンク(係合回動体)32及び従動リンク(従動回動体)33を有している。
【0028】
係合リンク32は、第1の敷居側回動軸28及び第1の閉塞体側回動軸30間に連結されたリンク部34と、リンク部34から突出し、貫通溝部7a内に挿入される係合部35とを有している。係合リンク32は、第1の敷居側回動軸28を中心に回動可能で、かつ第1の閉塞体側回動軸30を中心に回動可能になっている。係合リンク32は、第1の敷居側回動軸28を中心に回動されることにより敷居6に対して回動される。
【0029】
従動リンク33は、第2の敷居側回動軸29及び第2の閉塞体側回動軸31間に連結されている。また、従動リンク33は、第2の敷居側回動軸29を中心に回動可能で、かつ第2の閉塞体側回動軸31を中心に回動可能になっている。従動リンク33は、第2の敷居側回動軸29を中心に回動されることにより敷居6に対して回動される。第2の敷居側回動軸29と第2の閉塞体側回動軸31との間の寸法は、第1の敷居側回動軸28と第1の閉塞体側回動軸30との間の寸法と同一とされている。従動リンク33は、係合リンク32の回動に追従して敷居6に対して回動される。
【0030】
可動閉塞体21は、係合リンク32及び従動リンク33の敷居6に対する回動に応じて閉塞位置(図4)と開放位置(図3)との間を変位される。可動閉塞体21が閉塞位置にあるときには、図4に示すように、第1の敷居側回動軸28を通る鉛直線上に第1の閉塞体側回動軸30が配置され、第2の敷居側回動軸29を通る線直線上に第2の閉塞体側回動軸31が配置される。可動閉塞体21が開放位置にあるときには、図3に示すように、第1の敷居側回動軸28を通る水平線上に第1の閉塞体側回動軸30が配置され、第2の敷居側回動軸29を通る水平線上に第2の閉塞体側回動軸31が配置される。
【0031】
係合部35は、可動閉塞体21が開放位置にあるときにリンク部34よりも上方に位置し(図3)、可動閉塞体21が開放位置から閉塞位置へ変位される方向へ係合リンク32が回動されることによりリンク部34よりも戸開側の位置に変位される(図4)。また、係合部35の先端部は、可動閉塞体21が開放位置から閉塞位置へ変位される方向へ係合リンク32が回動されることにより下方へ変位され、可動閉塞体21が閉塞位置から開放位置へ変位される方向へ係合リンク32が回動されることにより上方へ変位される。可動閉塞体21が開放位置にあるときには、図3及び図5に示すように、係合部35が可動閉塞体21の上面よりも上方へ突出している。
【0032】
可動閉塞体21の一対の側板部21bのそれぞれには、開放位置へ変位されるときの可動閉塞体21が第2の敷居側回動軸29との干渉を避けるための凹部36が設けられている。可動閉塞体21の一方の側板部21bには、引きばね23の一端部が掛けられる閉塞体側ばね掛け部37が設けられている。ストッパ26の下端部には、引きばね23の他端部が掛けられる敷居側ばね掛け部38が設けられている。
【0033】
引きばね23は、閉塞体側ばね掛け部37及び敷居側ばね掛け部38間に伸びた状態で張られている。可動閉塞体21は、引きばね23の弾性復元力により開放位置へ付勢されている。
【0034】
第1及び第2の戸の脚14,15は、複数のボルト41によってドアパネル12の下端部にそれぞれ固定されている。また、第1及び第2の戸の脚14,15は、敷居溝7に挿入される戸の脚本体42と、戸の脚本体42の両側面に貼られた一対の摺動材43(図9〜図12)と、戸の脚本体42の上部に固定された板状の取付部44とをそれぞれ有している。
【0035】
ここで、図9は図3の第1の戸の脚14を示す一部破断斜視図、図10は図9のX-X線に沿った断面図である。また、図11は図3の第2の戸の脚15を示す斜視図、図12は図11のXII-XII線に沿った断面図である。図において、戸の脚本体42には、下方へ開放された逃がし溝45が設けられている。逃がし溝45は、敷居溝7の長さ方向に沿って設けられている。
【0036】
取付部44には、ボルト41が通される複数のボルト通し穴46が設けられている。第1及び第2の戸の脚14,15は、ボルト通し穴46に通されたボルト41がドアパネル12のボルト穴(図示せず)に螺合されて締め付けられることにより、ドアパネル12の下端部にそれぞれ固定されている。
【0037】
可動閉塞体21が開放位置(図3)にある状態で第1及び第2の戸の脚14,15が係合部35の位置を通るときには、係合部35が逃がし溝45内を移動されるようになっている。従って、第1及び第2の戸の脚14,15は、可動閉塞体21が開放位置にある状態で、係合部35を逃がし溝45内に通過させることにより、係合部35を避けて敷居溝7内を移動可能になっている。
【0038】
各引き戸11の第1の戸の脚14には、逃がし溝45内に配置されたカム51が固定されている。カム51は、第1及び第2の戸の脚14,15のうち、第1の戸の脚14にのみ固定されている。カム51は、引き戸11が戸開位置にあるときに引きばね23の付勢力に逆らって係合部35を押して可動閉塞体21の位置を閉塞位置に保ち、引き戸11が戸開位置から戸閉方向へ移動されることにより係合部35から外れて可動閉塞体21の開放位置への変位を可能とする。可動閉塞体21は、カム51が係合部35から外れると、引きばね23の付勢力によって閉塞位置から開放位置へ変位される。
【0039】
カム51の戸開側端部には、引き戸11の移動方向に対して傾斜する傾斜部51aが設けられている。カム51は、傾斜部51aを係合部35に接触させながら引き戸11とともに移動することにより係合リンク32を回動させる。可動閉塞体21は、係合部35がカム51に押されながら引き戸11が戸開方向へ移動されることにより開放位置から閉塞位置へ変位され、引き戸11が戸閉方向へ移動されてカム51が係合部35から外れることにより引きばね23の付勢力によって開放位置へ変位される。
【0040】
なお、敷居6には、出入口4の中心線上に位置し、貫通溝部7aの上部の開口部を塞ぐ固定閉塞体52が固定されている。固定閉塞体52は、可動閉塞体21との干渉を避けた位置に配置されている。また、エレベータの敷居溝閉塞装置は、閉塞体装置20及びカム51を有している。エレベータのドア装置は、敷居6、ハンガケース9、ドアレール10、引き戸11及び敷居溝閉塞装置(閉塞体装置20及びカム51)を有している。
【0041】
次に、動作について説明する。引き戸11が戸閉位置にあるときには、図3に示すように、カム51が係合部35から離れており、可動閉塞体21が引きばね23の付勢力により開放位置に変位されている。
【0042】
各引き戸11がドア駆動装置の駆動力により戸閉位置から戸開方向へ移動されると、第1及び第2の戸の脚14,15が敷居溝7内を戸開方向へ移動される。このとき、第1及び第2の戸の脚14,15は、可動閉塞体21の上方を移動される。また、第2の戸の脚15は、逃がし溝45内に係合部35を移動させることにより、係合部35との干渉を避けて係合部35の位置を通る。
【0043】
この後、各引き戸11が戸開位置に近づくと、カム51の傾斜部51aが係合部35に接触する。この後、係合部35をカム51で押しながら各引き戸11がさらに戸開方向へ移動されることにより、引きばね23の付勢力に逆らって係合リンク32及び従動リンク33が回動される。これにより、可動閉塞体21が開放位置から閉塞位置に近づく方向へ変位される。この後、各引き戸11が戸開位置に達すると、図4に示すように、可動閉塞体21が閉塞位置に達する。各引き戸11が戸開位置にあるときには、係合部35がカム51に押された状態で可動閉塞体21の位置が閉塞位置に保たれる。
【0044】
各引き戸11がドア駆動装置の駆動力により戸開位置から戸閉方向へ移動されると、引きばね23の付勢力に従って、係合部35をカム51の傾斜部51aに接触させながら係合リンク32が回動される。このとき、従動リンク33も係合リンク32の回動に応じて回動される。これにより、可動閉塞体21が閉塞位置から開放位置に近づく方向へ変位される。
【0045】
この後、各引き戸11が戸閉方向へさらに移動されてカム51が係合部35から外れると、可動閉塞体21が開放位置に達する。このとき、ストッパ26が緩衝材27を介して可動閉塞体21を受ける。これにより、可動閉塞体21の位置が開放位置に保たれる。
【0046】
この後、各引き戸11が戸閉方向へさらに移動される。このとき、第1及び第2の戸の脚14,15は、係合部35を避けながら敷居溝7内で可動閉塞体21の上方を移動される。この後、各引き戸11が戸閉位置に達することにより出入口4が閉じる。
【0047】
このようなエレベータのドア装置及び敷居溝閉塞装置では、引き戸11の下端部にカム51が設けられ、引き戸11が戸開位置にあるときに係合リンク32の係合部35がカム51に押されて可動閉塞体21の位置が閉塞位置に保たれ、引き戸11が戸開位置から戸閉方向へ移動されることによりカム51が係合部35から外れて可動閉塞体21が開放位置へ変位可能となるので、出入口4が開いているときに、可動閉塞体21で敷居溝7を塞ぐことができる。これにより、敷居溝7に異物が入ることを防止することができる。また、カム51が係合部35から外れた状態では、可動閉塞体21を引き戸11の下方に変位させておくことができる。これにより、出入口4を開閉するときに、可動閉塞体21を引き戸11に接触させずに引き戸11を移動させることができる。従って、引き戸11や可動閉塞体21の摩耗の促進を抑制することができ、ドア装置の長寿命化を図ることができる。
【0048】
また、引き戸11に設けられたカム51で係合部35を押した状態で可動閉塞体21を閉塞位置に保持するので、例えば乗客が可動閉塞体21に乗っても可動閉塞体21が下方に沈み込みにくくすることができる。これにより、例えば乗客が敷居溝7でつまずくこと等を防止することができる。
【0049】
また、可動閉塞体21は、引きばね23により開放位置へ付勢されているので、カム51が係合部35から外れたときに、可動閉塞体21をより確実に開放位置へ変位させることができる。
【0050】
また、第1及び第2の戸の脚14,15が係合部35を避けて敷居溝7内を移動可能になっており、第1及び第2の戸の脚14,15のうち、戸閉側に位置する第1の戸の脚14にカム51が設けられているので、係合部35との干渉を避けて第1及び第2の戸の脚14,15を敷居溝7内で移動させることができるとともに、カム51の設置スペースも小さくすることができる。
【0051】
また、第1の敷居側回動軸28及び第1の閉塞体側回動軸30間に係合リンク32が回動可能に連結され、第2の敷居側回動軸29及び第2の閉塞体側回動軸31間に従動リンク33が回動可能に連結されているので、簡単な構成で可動閉塞体21を水平に保ったまま変位させることができる。
【0052】
また、可動閉塞体21が閉塞位置にあるときに、第1の敷居側回動軸28を通る鉛直線上に第1の閉塞体側回動軸30が配置され、かつ第2の敷居側回動軸29を通る鉛直線上に第2の閉塞体側回動軸31が配置されるので、可動閉塞体21が上から押されても、係合リンク32及び従動リンク33を回動しにくくすることができる。これにより、閉塞位置にあるときの可動閉塞体21をさらに確実に沈み込みにくくすることができる。
【0053】
なお、上記の例では、可動閉塞体21が引きばね23により開放位置へ付勢されているが、引きばね23がなくても、引き戸11が戸閉方向へ移動されるときに可動閉塞体21が第1の戸の脚14で押されることにより可動閉塞体21が閉塞位置から開放位置へ変位されるので、引きばね23はなくてもよい。
【0054】
また、上記の例では、引きばね23が可動閉塞体21に接続されているが、係合リンク32及び従動リンク33の少なくともいずれか一方に引きばね23を接続して、可動閉塞体21を開放位置へ付勢するようにしてもよい。
【0055】
また、上記の例では、ストッパ26が可動閉塞体21を受けることにより可動閉塞体21の位置を開放位置に保つようになっているが、係合リンク32及び従動リンク33の少なくともいずれか一方をストッパ26が受けることにより、可動閉塞体21の位置を開放位置に保つようにしてもよい。
【0056】
また、上記の例では、下方へ開放された逃がし溝45を第1及び第2の戸の脚14,15に設けることにより、第1及び第2の戸の脚14,15と係合部35との干渉を避けるようにしているが、第1及び第2の戸の脚14,15が敷居溝7内で係合部35の上方を移動されるようにすれば、敷居溝7内で係合部35を避けて第1及び第2の戸の脚14,15を移動させることができるので、第1及び第2の戸の脚14,15に逃がし溝45を設けなくてよい。この場合、カム51は、第1の戸の脚14の下面から突出して設けられる。
【0057】
また、上記の例では、係合リンク32及び従動リンク33を有する連動装置22により可動閉塞体21が変位可能に支持されているが、係合リンク32の回動に応じて可動閉塞体21を閉塞位置と開放位置との間で変位させる構成であれば、連動装置22の構成はこれに限定されない。例えば、従動リンク33を設けずに可動閉塞体21を係合リンク32にのみ固定し、係合リンク32の回動により閉塞位置と開放位置との間で可動閉塞体21を変位させるようにしてもよい。この場合、閉塞位置にあるときの可動閉塞体21を水平にすると、開放位置にあるときの可動閉塞体21が傾斜することとなるが、可動閉塞体21が開放位置にあるときに第1及び第2の戸の脚14,15が可動閉塞体21の上方を移動可能であれば、敷居溝7に異物が入ることを防止することができ、ドア装置の長寿命化を図ることができるという上記と同様の効果を得ることができる。
【0058】
また、上記の例では、敷居6を上下に貫通する貫通溝部7aに閉塞体装置20が設けられているが、閉塞体装置20が設置可能な敷居溝7の深さがあれば、閉塞体装置20が設けられる部分は敷居6を上下に貫通していなくてもよい。
【0059】
また、上記の例では、この発明が、かご1の出入口4を開閉するかごドア装置に適用されているが、各階の乗場に設けられた出入口(乗場出入口)を開閉する乗場ドア装置にこの発明を適用してもよい。
【0060】
また、上記の例では、一対の引き戸11が互いに逆方向へ移動されることにより出入口4を開閉する中央開き式のドア装置にこの発明が適用されているが、複数枚の引き戸を同じ方向へ移動させることにより出入口4を開閉する片開き式のドア装置にこの発明を適用してもよい。この場合、敷居溝に配置される可動閉塞体の長さは、各引き戸の移動距離に応じて設定される。例えば、高速及び低速の2枚の引き戸を移動させて出入口4を開閉する片開き式のドア装置にこの発明を適用する場合、高速の引き戸の下端部が挿入される一方の敷居溝に配置される可動閉塞体の長さは、低速の引き戸の下端部が挿入される他方の敷居溝に配置される可動閉塞体の長さよりも長くされる。
【符号の説明】
【0061】
4 出入口、6 敷居、7 敷居溝、11 引き戸、21 可動閉塞体、22 連動装置、23 引きばね(付勢体)、28 第1の敷居側回動軸、29 第2の敷居側回動軸、30 第1の閉塞体側回動軸、31 第2の閉塞体側回動軸、32 係合リンク(係合回動体)、33 従動リンク(従動回動体)、35 係合部、51 カム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入口の間口方向への移動により上記出入口を開閉する引き戸、
上記引き戸の下端部が挿入される敷居溝が上記引き戸の移動方向に沿って設けられ、上記出入口の下部に設けられた敷居、
上記敷居溝の上部で上記敷居溝の開口部を塞ぐ閉塞位置と、上記閉塞位置よりも下方に位置し上記敷居溝の開口部を開放する開放位置との間で変位可能な可動閉塞体、
上記敷居溝内に挿入される係合部を含み上記敷居に対して回動可能な係合回動体を有し、上記係合回動体の回動に応じて上記可動閉塞体が変位される連動装置、及び
上記引き戸の下端部に設けられ、上記出入口を開く戸開位置に上記引き戸があるときに上記係合部を押して上記可動閉塞体の位置を上記閉塞位置に保ち、上記引き戸が上記戸開位置から戸閉方向へ移動されることにより上記係合部から外れて上記可動閉塞体の上記開放位置への変位を可能とするカム
を備えていることを特徴とするエレベータのドア装置。
【請求項2】
上記可動閉塞体を上記開放位置へ付勢する付勢体をさらに備え、
上記カムは、上記引き戸が上記戸開位置にあるときに上記付勢体の付勢力に逆らって上記係合部を押し、
上記可動閉塞体は、上記カムが上記係合部から外れることにより上記付勢体の付勢力によって上記開放位置へ変位されることを特徴とする請求項1に記載のエレベータのドア装置。
【請求項3】
上記引き戸は、引き戸本体と、上記引き戸本体の下端部に設けられ、上記敷居溝に沿った方向について互いに離して配置された一対の戸の脚とを有し、
上記一対の戸の脚は、上記係合部を避けて上記敷居溝内を移動可能になっており、
上記カムは、上記一対の戸の脚のうち、戸閉側に位置する上記戸の脚に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータのドア装置。
【請求項4】
上記連動装置は、上記係合回動体よりも戸閉側に配置され上記敷居に対して回動可能な従動回動体をさらに有し、
上記係合回動体は、上記敷居に設けられた第1の敷居側回動軸を中心に回動可能になっているとともに、上記可動閉塞体に設けられた第1の可動体側回動軸を中心に回動可能になっており、
上記従動回動体は、上記敷居に設けられた第2の敷居側回動軸を中心に回動可能になっているとともに、上記可動閉塞体に設けられた第2の可動体側回動軸を中心に回動可能になっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のエレベータのドア装置。
【請求項5】
出入口の間口方向への移動により上記出入口を開閉する引き戸の下端部が挿入される敷居溝の上部で上記敷居溝の開口部を塞ぐ閉塞位置と、上記閉塞位置よりも下方に位置し上記敷居溝の開口部を開放する開放位置との間で変位可能な可動閉塞体、
上記敷居溝内に挿入される係合部を含み上記敷居に対して回動可能な係合回動体を有し、上記係合回動体の回動に応じて上記可動閉塞体が変位される連動装置、及び
上記引き戸の下端部に設けられ、上記出入口を開く戸開位置に上記引き戸があるときに上記係合部を押して上記可動閉塞体の位置を上記閉塞位置に保ち、上記引き戸が上記戸開位置から戸閉方向へ移動されることにより上記係合部から外れて上記可動閉塞体の上記開放位置への変位を可能とするカム
を備えていることを特徴とするエレベータの敷居溝閉塞装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−1482(P2013−1482A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132365(P2011−132365)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】