説明

エレベータのドア装置

【課題】この発明は、部品点数の削減、および構成の簡素化を図り、下部遮煙体の取付や調整が簡易となるとともに低コスト化が図られるエレベータのドア装置を得る。
【解決手段】下部遮煙体20は、所定長さの基部21と、基部21の一面に固着された遮煙部材22を有し、基部21の一面を下方に向けて、一端をドア本体10の背面の開方向の下端部にドア本体10の幅方向と高さ方向とに直交する回動軸23を中心として回動可能に取り付けられている。そして、下部遮煙体20は、遮煙部材22が乗り場敷居7の上面に接してドア本体10の下端と敷居7との間の隙間を閉塞する閉塞位置と遮煙部材22が敷居7から離間する退避位置との間を回動する。さらに、ワイヤ33が乗り場ドア装置筐体5に固定されたワイヤ固定板30と基部21の他端側とを連結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータのドア装置に関し、特にドアと敷居との間の遮煙構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータのドア装置は、出入り口を開閉するドア本体と、ドア本体に搭載され、ドア本体の開閉動作に連動して揺動軸を中心に揺動する揺動部材と、出入り口に対して固定された固定部と揺動部材との間に接続されている接続ロープと、ドア本体の下端部に上下動可能に設けられ、かつ揺動部材に接続され、出入り口の床部に当接することによりドア本体と床部との間の隙間を遮蔽する可動遮蔽体と、を備え、戸閉状態でが、可動遮蔽体が床部に当接され、戸開動作中は、可動遮蔽体が床部から開離するように揺動部材が揺動されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように構成された従来のエレベータのドア装置では、可動遮蔽体が戸開動作中に床部を摺動しないので、可動遮蔽体の摩耗がなく、可動遮蔽体の長寿命化が図られるとともに、耳障りな摺動音がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2004/106213号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のエレベータのドア装置では、動力伝達経路に揺動部材を介装させているので、部品点数が多く、かつ構成が複雑となり、下部遮煙構造の取付および調整が煩雑となるとともに、低コスト化が図られないという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、下部遮蔽体を出入り口に対して固定された固定部とワイヤを介して接続し、ドア本体の開閉動作に連動して閉塞位置と退避位置との間を移動できるようにして、部品点数の削減、および構成の簡素化を図り、下部遮煙体の取付や調整が簡易となるとともに低コスト化が図られるエレベータのドア装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエレベータのドア装置は、出入り口を開閉するドア本体と、所定長さの基部、および該基部の一面に固着された遮煙部材を有し、該基部の一面を下方に向けて、一端を上記ドア本体の背面の幅方向の一側の下端部に該ドア本体の幅方向と高さ方向とに直交する回動軸を中心として回動可能に取り付けられ、該遮煙部材が上記出入り口の下部に設置された敷居の上面に接して該ドア本体の下端と該敷居との間の隙間を閉塞する閉塞位置と該遮煙部材が該敷居から離間する退避位置との間を回動する下部遮煙体と、一端が上記出入り口に対して固定された固定部に連結され、他端が上記基部の他端側に連結されたワイヤと、を備えている。そして、上記ドア本体の全閉状態では、上記下部遮煙体は上記遮蔽位置に位置し、上記ドア本体が開動作中は、上記下部遮煙体は上記遮蔽位置から上記退避位置に移行するように回動し、上記ドア本体が閉動作中は、上記下部遮煙体は上記退避位置から上記遮蔽位置に移行するように回動する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、下部遮煙体が、出入り口に対して固定された固定部とワイヤを介して接続され、ドア本体の開閉動作に連動して閉塞位置と退避位置との間を移動するので、下部遮煙構造が簡素な構成で構築でき、下部遮煙体の取付および調整が簡易となるとともに、部品点数が削減され、低コスト化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の一実施の形態に係るエレベータの乗り場ドア装置の戸閉状態を示す昇降路側から見た背面図である。
【図2】この発明の一実施の形態に係るエレベータの乗り場ドア装置の戸開状態を昇降路側から見た背面図である。
【図3】図1のIII−III矢視断面図である。
【図4】図2のIV−IV矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のエレベータのドア装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0011】
図1はこの発明の一実施の形態に係るエレベータの乗り場ドア装置の戸閉状態を示す昇降路側から見た背面図、図2はこの発明の一実施の形態に係るエレベータの乗り場ドア装置の戸開状態を昇降路側から見た背面図、図3は図1のIII−III矢視断面図、図4は図2のIV−IV矢視断面図である。なお、図1および図2において、ガイドシューが省略されている。
【0012】
図1乃至図4において、乗り場出入り口4が、かご(図示せず)が昇降する昇降路1と乗り場2とを連通するように、建物躯体であるコンクリート製の壁3に形成されている。乗り場ドア装置筐体5が、乗り場出入り口4の昇降路1側の上部に取り付けられている。ドアレール6が、乗り場出入り口4の間口方向に延在するように乗り場ドア装置筐体5に固定されている。乗り場敷居7が、乗り場2の床面2aの乗り場出入り口4の昇降路1側に、間口方向に延在するように取り付けられている。敷居溝8が溝方向を間口方向として乗り場敷居7の上面に凹設されている。
【0013】
乗り場ドア本体10は、表面を意匠面とする鋼板を断面コ字状に折り曲げて作製されたドアパネル11と、ドアパネル11の上端部に固定されたドアハンガ12と、から構成される。一対のガイドシュー13がドアパネル11の幅方向、即ち間口方向に離間して、下端から延出するようにドアパネル11の下端側に固定されている。
乗り場ドア本体10は、ドアハンガ12に取り付けられたハンガローラ14をドアレール6に掛けて吊設され、ドアパネル11の下端から延出するガイドシュー13が敷居溝8内に収納される。そして、ハンガローラ14がドアレール6上を転動し、ドアパネル11がドアレール6に案内されて間口方向に移動する。このとき、ガイドシュー13が敷居溝8内を摺動移動し、ドアパネル11の下部側の揺動が抑制される。
【0014】
下部遮煙体20は、ドアパネル11の幅に略等しい長さに作製された矩形棒状の基部21と、例えばゴムなどの弾性体からなり、基部21の一面にその長さ方向全域にわたって固着された遮煙部材22と、から構成されている。下部遮煙体20は、基部21の一面を下方に向けて、かつガイドシュー13のドアパネル11の背面側に位置して、ドアパネル11の背面の開方向の下端部に、その一端をドアパネル11の幅方向および高さ方向と直交する回動軸23を中心として回動可能に取り付けられている。
【0015】
ガイド部材24は、断面C字状の円弧形の筒体に作製され、回動軸23が円弧中心となるようにドアパネル11の背面に固定されている。連結具25は、基部21のドアパネル11背面側に固着されて、ガイド部材24の断面C字状の開口24aに挿通される軸部26と、軸部26より大径に形成され、軸部26の先端に固着されて、ガイド部材24の断面C字状のガイド穴24bに収納される連結部27と、から構成されている。これにより、下部遮煙体20は、連結部27がガイド部材24に案内されて、回動軸23を回動中心として回動可能となる。
【0016】
ワイヤ固定板30が、固定部としての乗り場ドア装置筐体5の間口方向の中央に、開閉動作するドアハンガ12との干渉を避けるように取り付けられている。第1のワイヤ案内ローラ31が、ドアパネル11の幅方向および高さ方向と直交する回転軸を中心として回転可能にドアハンガ12の昇降路1側の面に取り付けられ、第2のワイヤ案内ローラ32が、ドアパネル11の幅方向および高さ方向と直交する回転軸を中心として回転可能にドアパネル11の背面に取り付けられている。
【0017】
ワイヤ33が、一端をワイヤ固定板30に固定され、第1のワイヤ案内ローラ31に掛けられて方向を変え、第2のワイヤ案内ローラ32に掛けられて方向を変え、他端を基部21の他端に固定されて、付設されている。そして、ワイヤ33は、下部遮煙体20の自重により緊張状態に保たれ、乗り場ドア本体10が全閉状態の時に、下部遮煙体20の長さ方向が略間口方向となる長さに調整されている。このとき、遮煙部材22が乗り場敷居7の敷居溝8の乗り場21側、即ちドアパネル11の表面側の上面に接し、乗り場ドア本体10の下部と乗り場敷居7との間の隙間が閉塞され、乗り場ドア本体10の下部側遮煙構造が構築される。
【0018】
なお、乗り場ドア本体10の上部側および戸袋側における遮煙構造は、周知の構造を採用しており、ここではその説明は省略する。
【0019】
つぎに、このように構成された乗り場ドア装置の動作について説明する。
乗り場ドア本体10は、ドアレール6に吊り下げられ、ドアシュー13が敷居溝8内に収納されて、乗り場出入り口4を開閉可能に配設されている。そして、乗り場ドア本体10は、かご(図示せず)に搭載されたドアモータの駆動力が伝達され、かごドアの開閉動作に連動して乗り場出入り口4を開閉する。
【0020】
乗り場ドア本体10の全閉状態では、図1および図3に示されるように、下部遮煙体20はその長さ方向が間口方向に略一致する姿勢(閉塞位置)となり、遮煙部材22が乗り場敷居7の敷居溝8の乗り場2側の上面に接する。これにより、乗り場ドア本体10の下部と乗り場敷居7との間の隙間が閉塞され、下部遮煙構造が構築される。このとき、図示していないが、乗り場ドア本体10の上部側および戸袋側においても、遮煙構造が構築される。そこで、火災時に、煙が昇降路1から乗り場2に漏れ出すことが抑えられる。
【0021】
乗り場ドア本体10が全閉状態から開動作すると、乗り場ドア本体10は図1中左右方向に移動する。そこで、ワイヤ固定板30と第1のワイヤ案内ローラ31との間のワイヤ33の長さが長くなり、第1のワイヤ案内ローラ31と下部遮蔽体20の他端との間のワイヤ33の長さが短くなり、下部遮煙体20が回動軸23を中心として回動して起立状態に移行する。そして、乗り場ドア本体10が全開状態となると、下部遮煙体20は、閉塞位置から所定角度だけ回動した退避位置となり、乗り場ドア本体10の下部と乗り場敷居7との間の隙間が開放される。
【0022】
ついで、乗り場ドア本体10が全開状態から閉動作すると、乗り場ドア本体10は図2中、乗り場ドア本体10間を狭める方向に移動する。そこで、ワイヤ固定板30と第1のワイヤ案内ローラ31との間のワイヤ33の長さが短くなり、第1のワイヤ案内ローラ31と下部遮蔽体20の他端との間のワイヤ33の長さが長くなる。そして、下部遮煙体20が自重により回動軸23を中心として回動して退避位置から閉塞位置側に移行する。そして、乗り場ドア本体10が全閉状態となると、下部遮煙体20は、閉塞位置に戻り、乗り場ドア本体10の下部と乗り場敷居7との間の隙間が閉塞される。
【0023】
この発明によれば、下部遮煙体20は、基部21の一面を下方に向けて、ドアパネル11の背面の開方向の下端部に、その一端を回動軸23を中心として回動可能に取り付けられ、遮煙部材22が乗り場敷居7の上面に接して乗り場ドア本体10の下端と乗り場敷居7との間の隙間を閉塞する閉塞位置と遮煙部材22が乗り場敷居7から離間する退避位置との間を回動するように構成されている。そして、ワイヤ33が、乗り場ドア装置筐体5と基部21の他端側とを連結するように付設されている。
【0024】
そこで、乗り場ドア本体10の開閉移動力がワイヤ33を介して下部遮煙体20に直接伝達されて下部遮煙体20を回動させ、下部遮煙体20を乗り場敷居7に接離させているので、下部遮煙構造を簡素な構成で構築でき、下部遮煙体20の取付および調整が簡易となるとともに、部品点数が削減され、低コスト化が図られる。
また、下部遮煙体20の遮煙部材22が、乗り場ドア本体10の全閉状態のときのみ乗り場敷居7の上面に接するので、遮煙部材22の摩耗が著しく少なくなり、長寿命化が図られるとともに、耳障りな摺動音もなくなる。
【0025】
また、遮煙部材22が敷居溝8の乗り場側で乗り場敷居7の上面に接するので、煙が昇降路1から敷居溝8内を通って乗り場2側に漏れ出ることが阻止される。
また、下部遮煙体20の回動を案内するガイド部材24が設けられているので、下部遮煙体20の安定したスムーズな回動動作が得られる。
また、ワイヤ33の付設経路が第1および第2のワイヤ案内ローラ31,32により設定されているので、ワイヤ33と他の機器との干渉を容易に回避できる。
【0026】
なお、上記実施の形態では、2枚両引き戸のドア装置に適用しているが、片引き戸のドア装置に適用しても、同様の効果を奏する。
また、上記実施の形態では、乗り場ドア装置に適用しているが、かごドア装置に適用しても、同様の効果を奏する。
【0027】
また、上記実施の形態では、下部遮煙体の一端がドアパネルの背面の開方向の下端部に回動軸を中心として回動可能に取り付けられているが、下部遮煙体の一端がドアパネルの背面の閉方向の下端部に回動軸を中心として回動可能に取り付けられてもよい。
また、上記実施の形態では、ワイヤの一端が乗り場ドア装置筐体に取り付けられたワイヤ固定板に接続されているが、ワイヤ固定板が取り付けられる固定部は乗り場ドア装置筐体に限定されず、乗り場ドア本体に対して固定されていればよく、例えば乗り場出入り口周りの建物躯体である壁でもよい。
【符号の説明】
【0028】
4 乗り場出入り口、5 乗り場ドア装置筐体(固定部)、7 乗り場敷居、8 敷居溝、10 乗り場ドア本体、13 ガイドシュー、20 下部遮煙体、21 基部、22 遮煙部材、23 回動軸、30 ワイヤ固定板、33 ワイヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入り口を開閉するドア本体と、
所定長さの基部、および該基部の一面に固着された遮煙部材を有し、該基部の一面を下方に向けて、一端を上記ドア本体の背面の幅方向の一側の下端部に該ドア本体の幅方向と高さ方向とに直交する回動軸を中心として回動可能に取り付けられ、該遮煙部材が上記出入り口の下部に設置された敷居の上面に接して該ドア本体の下端と該敷居との間の隙間を閉塞する閉塞位置と該遮煙部材が該敷居から離間する退避位置との間を回動する下部遮煙体と、
一端が上記出入り口に対して固定された固定部に連結され、他端が上記基部の他端側に連結されたワイヤと、を備え、
上記ドア本体の全閉状態では、上記下部遮煙体は上記遮蔽位置に位置し、上記ドア本体が開動作中は、上記下部遮煙体は上記遮蔽位置から上記退避位置に移行するように回動し、上記ドア本体が閉動作中は、上記下部遮煙体は上記退避位置から上記遮蔽位置に移行するように回動することを特徴とするエレベータのドア装置。
【請求項2】
敷居溝が、溝方向を間口方向として上記敷居の表面に凹設され、
ドアシューが、上記ドア本体の下端から延出して上記敷居溝内に挿入されるように該ドア本体に固着され、
上記下部遮煙体が、上記敷居溝の上記ドア本体表面側の上記敷居の上面に接するように配設されていることを特徴とする請求項1記載のエレベータのドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−213473(P2011−213473A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85744(P2010−85744)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】