説明

エレベータのドア装置

【課題】本発明は、戸開動作時に異物が引き込まれるのを防止しつつ、部品の長寿命化を図り、また、引き込み防止のための手段が戸開閉の抵抗となるのを防止することを目的とするものである。
【解決手段】引き込み防止装置21は、ドア本体1の戸閉側端部に設けられた第1のローラ装置22と、ドア本体1の戸開側端部に設けられた第2のローラ装置23と、第1及び第2のローラ装置22,23間に巻かれた可撓性のエンドレスシート(保護シート)24とを有している。エンドレスシート24は、ドア本体1を真上から見てドア本体1の外周全体を覆うように設けられている。また、エンドレスシート24は、ドア本体1の外周に沿って循環移動可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、かご出入口又は乗場出入口を開閉するドア本体を有するエレベータのドア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータのドア装置では、引き戸の表面がドア覆い幕により覆われている。ドア覆い幕の一端部は、出入口枠に固定された幕固定部材に固定されている。ドア覆い幕の他端部は、引き戸の裏側に搭載された巻取装置に接続されている。引き戸の戸閉側端部には、回転自在な折り返しローラが設けられている。ドア覆い幕は、折り返しローラで引き戸の表面側から裏面側へ折り返されている。
【0003】
戸開動作時には、引き戸の移動に伴ってドア覆い幕が巻取装置により巻き取られる。また、戸閉動作時には、引き戸の移動に伴って巻取装置からドア覆い幕が引き出される。これにより、戸開動作時に引き戸と出入口柱との間に異物が引き込まれるのが防止される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−323156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来のエレベータのドア装置では、引き戸の開閉動作の度にドア覆い幕が巻取装置に巻き取られたり巻取装置から引き出されたりするため、ドア覆い幕の寿命が短くなり、ドア覆い幕を頻繁に交換する必要があった。また、戸閉動作時に巻取装置からドア覆い幕を引き出すための負荷がかかるため、引き戸を動作させるために必要な消費電力が大きくなる。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、戸開動作時に異物が引き込まれるのを防止しつつ、部品の長寿命化を図り、部品交換の頻度を低減することができ、また、引き込み防止のための手段が戸開閉の抵抗となるのを防止し、ドア本体の動作のための消費電力を抑えることができるエレベータのドア装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るエレベータのドア装置は、出入口を開閉するドア本体、及びドア本体を真上から見てドア本体の外周全体を覆うように設けられ、ドア本体の外周に沿って循環移動なエンドレスシートを備えている。
【発明の効果】
【0008】
この発明のエレベータのドア装置は、戸開動作時にドア本体の表面のエンドレスシートに異物が当接すると、ドア本体が戸開方向へ移動しているため、エンドレスシートには相対的にドア本体の移動方向とは反対方向への外力が作用し、エンドレスシートがドア本体に対して循環移動される。これにより、ドア本体とともに異物が引き込まれるのが防止される。また、エンドレスシートは、異物が当接しなければ、戸開閉時にも循環移動されないので、エンドレスシートの長寿命化を図り、部品交換の頻度を低減することができる。さらに、エンドレスシートは戸開閉の抵抗となることはなく、ドア本体の動作のための消費電力を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1によるエレベータのかごドア装置の要部を示す斜視図である。
【図2】図1のかごドア装置を示す正面図である。
【図3】図1の引き込み防止装置を示す平面図である。
【図4】図3の一方の引き込み防止装置を拡大して示す平面図である。
【図5】図4のエンドレスシートに戸開動作時に異物が当接した様子を示す平面図である。
【図6】この発明の実施の形態2によるエレベータのかごドア装置の引き込み防止装置を示す平面図である。
【図7】図6の一方の引き込み防止装置を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるエレベータのかごドア装置の要部を示す斜視図、図2は図1のかごドア装置を示す正面図であり、かごドア装置をかご室内から見た図である。図において、かご出入口は、スチール製の一対のドア本体(ドアパネル)1により開閉される。かご出入口の左右両側には、かご室内に面する一対の袖壁2と、互いに対向する一対の出入口枠面(出入口柱)3とが設けられている。一方の袖壁2には、かご内操作盤4が設けられている。
【0011】
かご床5には、ドア本体1の開閉動作時にドア本体1の下端部を案内するかご敷居6が固定されている。かご敷居6には、かご敷居溝6aが設けられている。かご敷居溝6aには、ドア本体1の下端部に取り付けられた複数の戸の脚(図示せず)が挿入される。
【0012】
各ドア本体1は、ドアパネル主部7と、ドアパネル主部7の上端部に固定されたドアパネル上部8と、ドアパネル主部7の下端部に固定されたドアパネル下部9とを有している。戸の脚は、ドアパネル下部9の下端部に取り付けられている。
【0013】
ドアパネル上部8の上端部には、ドアハンガ10が固定されている。ドアハンガ10は、複数の取付ボルト11によりドアパネル上部8の上面に固定されている。かご室のかご出入口上方には、ドア本体1の開閉動作を案内するドアレール12が固定されている。ドア本体1は、ドアハンガ10によりドアレール12から吊り下げられている。
【0014】
ドアハンガ10には、一対のハンガローラ13及び一対のアップスラストローラ14が設けられている。ドア本体1の開閉動作時にハンガローラ13は、ドアレール12上を転動される。アップスラストローラ14は、ハンガローラ13の真下に配置されている。ドアレール12は、ハンガローラ13とアップスラストローラ14との間に挟まれている。
【0015】
各ドア本体1の戸閉側端部(反戸袋側端部)には、接触検出棒15が取り付けられている。接触検出棒15は、上下一対の取付金具16を介してドアパネル上部8及びドアパネル下部9に取り付けられている。
【0016】
各ドア本体1には、戸開動作時にドア本体1と出入口枠面3との間の隙間に異物が引き込まれるのを防止する引き込み防止装置21が搭載されている。引き込み防止装置21は、ドア本体1の戸閉側端部に設けられた第1のローラ装置22と、ドア本体1の戸開側端部(戸袋側端部)に設けられた第2のローラ装置23と、第1及び第2のローラ装置22,23間に巻かれた可撓性のエンドレスシート(保護シート)24とを有している。
【0017】
図3は図1の引き込み防止装置21を示す平面図である。図1及び図3において、エンドレスシート24は、ドア本体1を真上から見てドア本体1の外周全体を覆うように設けられている。また、エンドレスシート24は、ドア本体1の外周に沿って循環移動可能となっている。
【0018】
さらに、エンドレスシート24は、ドア本体1の上下方向の一部、ここではドアパネル主部7の全体を覆っている。従って、ドア本体1の全閉時には、エンドレスシート24、ドアパネル上部8及びドアパネル下部9がかご室内に露出され、ドアパネル主部7はかご室内に露出されない。
【0019】
第1のローラ装置22は、上下方向に平行な回転軸25aを中心に回転可能な第1のローラ25と、第1のローラ25を回転可能に支持する上下一対の第1のローラ支持金具26とを有している。
【0020】
第1のローラ25は、ドアパネル主部7の上下方向の全長に渡って連続して設けられている。エンドレスシート24は、第1のローラ25の外周面に接しており、第1のローラ25は、エンドレスシート24の循環移動により回転される。第1のローラ支持金具26は、ドアパネル主部7の上下端部にねじ止めされている。
【0021】
第2のローラ装置23は、上下方向に平行な回転軸27aを中心に回転可能な第2のローラ27と、第2のローラ27を回転可能に支持する上下一対の第2のローラ支持金具28と、第2のローラ支持金具28とドアパネル主部7との間に設けられている上下一対のテンションばね29とを有している。
【0022】
第2のローラ27は、ドアパネル主部7の上下方向の全長に渡って連続して設けられている。エンドレスシート24は、第2のローラ27の外周面に接しており、第2のローラ27は、エンドレスシート24の循環移動により回転される。第2のローラ支持金具28は、ドアパネル主部7に対してドア本体1の開閉方向へ変位可能になっている(可動式ローラ支持金具)。
【0023】
図4は図3の一方の引き込み防止装置21を拡大して示す平面図である。ドアパネル主部7には、第2のローラ支持金具28の変位を案内するガイド溝7aが設けられている。第2のローラ支持金具28は、ガイド溝7a内に挿入されている。
【0024】
ガイド溝7a内には、ドアパネル主部7から突出する方向への第2のローラ支持金具28の変位を規制するストッパ面(段部)7bが設けられている。第2のローラ支持金具28の基端部(反第2のローラ27側端部)には、ストッパ面7bに当接する当接部28aが設けられている。
【0025】
第2のローラ支持金具28の中間部には、ばね受け部28bが設けられている。テンションばね29は、ばね受け部28bとドアパネル主部7の端面との間に設けられており、第2のローラ支持金具28をドアパネル主部7から突出する方向へ付勢する。即ち、テンションばね29は、第2のローラ支持金具28を介して第2のローラ27をドア本体1から離れる方向へ付勢する。これにより、エンドレスシート24には張力が与えられている。
【0026】
このようなかごドア装置では、例えば図5に示すように、戸開動作時にドア本体1の表面のエンドレスシート24に異物(例えば乗客の手、衣服、荷物等)が当接すると、ドア本体1が戸開方向(図5の左方向)へ移動しているため、エンドレスシート24には相対的にドア本体1の移動方向とは反対方向への外力が作用し、エンドレスシート24がドア本体1に対して循環移動される。これにより、異物がドア本体1とともに戸袋側へ引き込まれるのが防止される。即ち、戸開動作時に、万一異物がエンドレスシート24に触れていても、戸袋側への異物の移動は出入口枠面3により遮られ、また、異物が引き込まれる力がエンドレスシート24によって逃がされるので、異物が戸袋側へ引き込まれるのが防止される。
【0027】
また、エンドレスシート24は、異物が当接しなければ、戸開閉時にも循環移動されないので、エンドレスシート24の長寿命化を図り、部品交換の頻度を低減することができる。さらに、エンドレスシート24は戸開閉の抵抗となることはなく、ドア本体1の動作のための消費電力を抑えることができる。さらにまた、構成が簡素で安価な引き込み防止装置21を提供することができる。
【0028】
実施の形態2.
次に、図6はこの発明の実施の形態2によるエレベータのかごドア装置の引き込み防止装置を示す平面図、図7は図6の一方の引き込み防止装置を拡大して示す平面図である。実施の形態2の第1のローラ装置22においては、一対の第1のローラ25が、ドア本体1の厚さ方向に並べて配置されている。第1のローラ25は、ドア本体1の厚さの範囲内で、ドア本体1の厚さ方向に互いに間隔をおいて配置されている。このため、実施の形態2の各第1のローラ25の径は、実施の形態1の第1のローラ25の径よりも小さい。
【0029】
また、実施の形態2の第2のローラ装置23においては、一対の第2のローラ27が、ドア本体1の厚さ方向に並べて配置されている。第2のローラ27は、ドア本体1の厚さの範囲内で、ドア本体1の厚さ方向に互い間隔をおいて配置されている。このため、実施の形態2の各第2のローラ27の径は、実施の形態1の第2のローラ27の径よりも小さい。
【0030】
他の構成は、実施の形態1と同様であり、各第1のローラ25の支持構造や各第2のローラ27の支持構造も実施の形態1と同様である。
【0031】
このようなかごドア装置では、実施の形態1よりも小径のローラ25,27をドア本体1の厚さ方向に並べて配置したので、かごドアの幅方向の端面を、実施の形態1のような曲面ではなく、引き込み防止装置21を設けていないかごドアと同様の平面にすることができ、利用者に与える違和感を抑えることができる。
【0032】
なお、実施の形態1、2では、第2のローラ装置23のみにテンションばね29を設けたが、第1のローラ装置22のみにテンションばね29を設けたり、第1及び第2のローラ装置22,23の両方にテンションばね29を設けたりしてもよい。
また、実施の形態2では、4個のローラ25,27のうち、2個のローラ27にテンションばね29を設けたが、いずれか1個、いずれか3個又は全てにテンションばね29を設けてもよい。
さらに、テンションばね29の位置は実施の形態1、2で示した位置に限定されない。例えば、ガイド溝7a内にテンションばね29を設けてもよい。
【0033】
さらにまた、エンドレスシート24は、ドアパネル主部7を完全に覆うものでなくてもよく、例えばメッシュ状のエンドレスシート24を用い、エンドレスシート24を通してドア本体1が見えるようにしてもよい。
また、実施の形態1、2では、ドアパネル主部7のみを覆うようにエンドレスシート24を配置したが、エンドレスシート24を設ける範囲は適宜変更可能である。例えば、ドア本体1の全高にエンドレスシート24を設けたり、子供が利用しないエレベータでは手の届く高さのみにエンドレスシート24を設けたりしてもよい。
【0034】
さらに、実施の形態1、2では、ドアパネル主部7の上下方向の全長に渡って連続してローラ25,27を設けたが、ローラ25,27は上下方向に複数に分割されていてもよく、また部分的に設けてもよい。
さらにまた、ドア本体1の端部にローラ装置22,23の代わりに低摩擦材を配置し、低摩擦材の表面に沿ってエンドレスシート24を摺動させるようにしてもよい。また、ドア本体1の一方の端部にローラを配置し、他方の端部に低摩擦材を配置してもよい。
【0035】
また、実施の形態1、2ではかごドア装置を示したが、この発明は乗場ドア装置にも適用できる。
さらに、実施の形態1、2では、中央開き式のドア装置を示したが、この発明は片開き式のドア装置にも適用でき、ドア本体1の枚数も2枚に限定されない。
【符号の説明】
【0036】
1 ドア本体、22 第1のローラ装置、23 第2のローラ装置、24 エンドレスシート、25 第1のローラ、25a 回転軸、27 第2のローラ、27a 回転軸、29 テンションばね。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入口を開閉するドア本体、及び
前記ドア本体を真上から見て前記ドア本体の外周全体を覆うように設けられ、前記ドア本体の外周に沿って循環移動可能なエンドレスシート
を備えていることを特徴とするエレベータのドア装置。
【請求項2】
前記ドア本体の開閉方向の両端部には、上下方向に平行な回転軸を中心に回転可能なローラを有する一対のローラ装置がそれぞれ搭載されており、
前記エンドレスシートは前記ローラの外周面に接しており、前記エンドレスシートの循環移動により前記ローラが回転されることを特徴とする請求項1記載のエレベータのドア装置。
【請求項3】
前記一対のローラ装置の少なくともいずれか一方には、前記ローラを前記ドア本体から離れる方向へ付勢することにより前記エンドレスシートに張力を与えるテンションばねが設けられていることを特徴とする請求項2記載のエレベータのドア装置。
【請求項4】
各前記ローラ装置は、前記ドア本体の厚さ方向に並べて配置された一対の前記ローラを有していることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のエレベータのドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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