説明

エレベータのドア装置

【課題】簡素な構成で乗り場ドアに対して自閉力を発生させることができるエレベータのドア装置を提供すること。
【解決手段】実施形態のエレベータのドア装置は、乗り場側の乗降口を開閉するドアと、開閉方向に延在し、かつ鉛直方向において互いに対向する一対の案内面15e,15fと、一対の案内面の間に配置されたローラ対11および可撓性の板状部材8とを持つ。ローラ対の外周面同士が互いに対向している。板状部材は、開閉方向に延在し、一端側が一対の案内面の一方に、他端側が他方に接続されている。ローラ対は、板状部材を介して鉛直下側の案内面に支持されてドアを懸架する下側ローラ10aと、板状部材を介して鉛直上側の案内面に支持される上側ローラ9aとを有する。ローラ対は板状部材を間に挟んで配置される。板状部材は、ローラ対のそれぞれに互いに異なる面が接するように巻き掛けられ、ローラ対にドアの閉方向の力を加えてドアを自閉させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータのドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの乗り場ドアに自閉装置を設ける技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−163267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗り場ドアの自閉機構を簡素化できることが望まれている。本発明の目的は、簡素な構成で乗り場ドアに対して自閉力を発生させることができるエレベータのドア装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のエレベータのドア装置は、エレベータの乗り場側の乗降口を開閉するドアと、ドアの開閉方向に延在し、かつ鉛直方向において互いに対向する一対の案内面と、一対の案内面の間に配置されたローラ対と、一対の案内面の間に配置された可撓性を有する板状部材とを持つ。ローラ対は、案内面によって支持されてドアを懸架し、かつ外周面同士が互いに対向している。板状部材は、開閉方向に延在し、一端側が一対の案内面の一方に接続され、他端側が一対の案内面の他方に接続されている。
【0006】
ローラ対は、板状部材を介して鉛直方向下側の案内面によって支持されてドアを懸架する下側ローラと、板状部材を介して鉛直方向上側の案内面によって支持される上側ローラとを有する。上側ローラと下側ローラとが板状部材を間に挟んで配置されている。板状部材は、上側ローラおよび下側ローラのそれぞれに対して互いに異なる面が接するように巻き掛けられており、ローラ対に対してドアの閉方向の力を加えてドアを自閉させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、第1の実施形態のエレベータのドア装置の正面図である。
【図2】図2は、第1の実施形態のエレベータのドア装置の要部を示す断面図である。
【図3】図3は、第1の実施形態のエレベータのドア装置の要部を示す正面図である。
【図4】図4は、第1の実施形態のローラマイトにおける力とモーメントを示す図である。
【図5】図5は、第2の実施形態の板ばねの一例を示す図である。
【図6】図6は、第2の実施形態の板ばねの他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、実施形態に係るエレベータのドア装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0009】
[第1の実施形態]
図1から図4を参照して、第1の実施形態について説明する。本実施形態は、エレベータのドア装置に関する。図1は、第1の実施形態に係るエレベータのドア装置の正面図、図2は、第1の実施形態に係るエレベータのドア装置の要部を示す断面図、図3は、第1の実施形態に係るエレベータのドア装置の要部を示す正面図である。図1には、エレベータの昇降路内側から見た正面図が示されている。
【0010】
エレベータのドア装置1−1は、エレベータの乗り場側の乗降口20を開閉するドアパネル2a,2bに対して閉方向の力を作用させる自閉機構を有している。本実施形態のエレベータのドア装置1−1は、ヘッダーケースのベース1、ドアパネル2a,2b、ローラ対11,12,13,14、板ばね8、連動シーブ5a,5b、連動ロープ6を備える。
【0011】
ドアパネル2a,2bは、乗降口20を開閉する一対の矩形のドアである。乗降口20は、エレベータの昇降路と乗り場とを連通する開口部であり、昇降路を形成する壁部に設けられている。本実施形態のドアパネル2a,2bの開閉方向は、水平方向である。第一ドアパネル2aと第二ドアパネル2bとは、同一面上に配置されている。ドアパネル2a,2bは、それぞれ開閉方向に移動することができ、開方向に移動することによって乗降口20を開放し、閉方向に移動することによって乗降口20を閉塞することができる。第一ドアパネル2aの開方向と第二ドアパネル2bの開方向とは、逆方向となっている。第一ドアパネル2aおよび第二ドアパネル2bにおいて、開閉方向に互いに遠ざかる移動方向が開方向である。また、第一ドアパネル2aおよび第二ドアパネル2bにおいて、開閉方向に互いに近づく移動方向が閉方向である。
【0012】
図1には、第一ドアパネル2aおよび第二ドアパネル2bがそれぞれの可動範囲における最も閉方向側の位置である戸閉端にあって乗降口20の全面を閉塞している状態が示されている。本明細書では、ドアパネル2a,2bが戸閉端に位置して乗降口20の全面を閉塞している状態を「全閉状態」と記載する。全閉状態では、第一ドアパネル2aと第二ドアパネル2bとが乗降口20の開閉方向の中央Cにおいて当接する。また、ドアパネル2a,2bがそれぞれの可動範囲における最も開方向側の位置にあって乗降口20の全面を開放している状態を「全開状態」と記載する。
【0013】
ベース1は、乗り場ドアであるドアパネル2a,2bの駆動用品が取り付けられるヘッダーケースのべースである。ベース1は、ドアパネル2a,2bの鉛直方向上側に配置されている。ベース1は、ベース取付ブラケット11a,11bにより、エレベータの乗りかごの昇降路を構成するコンクリート製の壁や鋼製の柱や梁などに対してアンカーボルトや溶接によって固定されている。
【0014】
ドアパネル2a,2bには、それぞれハンガー3a,3bが接続されている。第一ハンガー3aは、第一ドアパネル2aの上部に固定されて第一ドアパネル2aを懸架しており、第一ドアパネル2aと一体に開閉方向に移動する。第二ハンガー3bは、第二ドアパネル2bの上部に固定されて第二ドアパネル2bを懸架しており、第二ドアパネル2bと一体に開閉方向に移動する。ハンガー3a,3bは、無端の連動ロープ6に連結されている。連動ロープ6は、連動シーブ5a,5bに掛け渡されて開閉方向に延在している。連動シーブ5a,5bは、それぞれドアパネル2a,2bに対して開方向の位置に配置されている。すなわち、連動シーブ5aは、ドアパネル2aに対してドアパネル2b側と反対側に配置され、連動シーブ5bは、ドアパネル2bに対してドアパネル2a側と反対側に配置されている。
【0015】
ハンガー3a,3bは、連動ロープ6の回転に従ってドアパネル2a,2bが開閉方向の同方向に連動して移動するように連動ロープ6を介して連結されている。第一ハンガー3aは、ロープ固定ブラケット7aによって連動ロープ6における連動シーブ5a,5bよりも下側の部分6aに連結されている。第二ハンガー3bは、ロープ固定ブラケット7bによって連動ロープ6における連動シーブ5a,5bよりも上側の部分6bに連結されている。これにより、連動ロープ6が図1で時計回りに回転する場合、ドアパネル2a,2bは共にそれぞれのドアパネルの閉方向に移動する。一方、連動ロープ6が図1で反時計回りに回転する場合、ドアパネル2a,2bは共に開方向に移動する。また、第一ドアパネル2aと第二ドアパネル2bとが連動ロープ6を介して接続されていることから、ドアパネル2a,2bの一方(例えば第一ドアパネル2a)に対して開閉方向の力が作用すると、連動ロープ6を介してその力がドアパネル2a,2bの他方(第二ドアパネル2b)に伝えられ、ドアパネル2a,2bが連動して開閉する。
【0016】
ハンガー3a,3bには、上側ローラ9(第一上側ローラ9a,第二上側ローラ9b,第三上側ローラ9c,第四上側ローラ9d)および下側ローラ10(第一下側ローラ10a,第二下側ローラ10b,第三下側ローラ10c,第四下側ローラ10d)が配置されている。上側ローラ9a,9bおよび下側ローラ10a,10bは、第一ハンガー3aに配置されている。上側ローラ9c,9dおよび下側ローラ10c,10dは、第二ハンガー3bに配置されている。
【0017】
第一上側ローラ9aと第一下側ローラ10aとは、第一ローラ対11として第一ハンガー3aの開方向の端部に配置されている。第二上側ローラ9bと第二下側ローラ10bとは、第二ローラ対12として第一ハンガー3aの閉方向の端部に配置されている。
【0018】
また、第三上側ローラ9cと第三下側ローラ10cとは、第三ローラ対13として第二ハンガー3bの閉方向の端部に配置されている。第四上側ローラ9dと第四下側ローラ10dとは、第四ローラ対14として第二ハンガー3bの開方向の端部に配置されている。
【0019】
各ローラ対11,12,13,14において、上側ローラ9の外周面と下側ローラ10の外周面とは所定の隙間をあけて互いに対向している。また、各ローラ対11,12,13,14において、上側ローラ9の中心軸は、下側ローラ10の中心軸よりも鉛直方向の上側でかつハンガー3の開閉方向中央側に配置されている。
【0020】
図2に示すように、ベース1は、上側ローラ9および下側ローラ10をガイドするガイド部15を有する。ベース1は、鋼板で形成されており、ガイド部15は、ベース1の一部を曲げ加工して形成された溝形状を有している。ガイド部15は、ハンガー3から離間する方向に突出する溝状に形成されており、開閉方向に延在している。ガイド部15の開閉方向と直交する断面形状は、四隅を丸めた矩形の一辺を開放した形状である。言い換えると、ガイド部15の断面形状は、昇降路側が開放した略C字形状である。ガイド部15は、天板部15a、底板部15b、側板部15cおよび規制部15dを有する。
【0021】
天板部15a、底板部15bおよび側板部15cは、板状であり、開閉方向に延在している。天板部15aの下面15eと底板部15bの上面15fとは、鉛直方向において互いに対向しており、かつ平行な一対の案内面である。天板部15aの下面15eは、上側ローラ9を案内する案内面としての機能を有し、底板部15bの上面15fは、下側ローラ10を案内する案内面としての機能を有する。各ローラ対11,12,13および14は、天板部15aと底板部15bとの間に配置されており、底板部15bの上面15fである案内面によって支持されてドアパネル2を懸架している。
【0022】
第一下側ローラ10aは、板ばね8を介して底板部15bの上面15fによって支持されて第一ドアパネル2aを懸架している。また、第一上側ローラ9aは、板ばね8を介して天板部15aの下面15eによって支持される。第二下側ローラ10b、第三下側ローラ10cおよび第四下側ローラ10dは、底板部15bの上面15fによって直接支持されてドアパネル2を懸架している。また、第二上側ローラ9b、第三上側ローラ9cおよび第四上側ローラ9dは、天板部15aの下面15eによって直接支持される。
【0023】
側板部15cは、天板部15aおよび底板部15bとそれぞれ直交している。側板部15cと天板部15aとの接続部、および側板部15cと底板部15bとの接続部は、それぞれ所定の曲率で曲げ加工されている。規制部15dは、上側ローラ9および下側ローラ10の軸方向の移動を規制し、上側ローラ9および下側ローラ10がガイド部15内から抜け出ることを規制する。また、側板部15cは、上側ローラ9および下側ローラ10の軸方向の移動を規制することができる。
【0024】
上側の規制部15dは、天板部15aの昇降路側の端部に形成されている。上側の規制部15dは、天板部15aに対して鉛直下側に突出し、次いで鉛直上側に向かうように折り曲げられている。上側の規制部15dは、軸方向において上側ローラ9の側面と互いに対向している。天板部15a、側板部15cおよび上側の規制部15dは、鉛直上側に向けて凸な溝形状をなしている。この溝形状によって、各上側ローラ9および板ばね8がガイドされる。
【0025】
下側の規制部15dは、底板部15bの昇降路側の端部に形成されている。下側の規制部15dは、底板部15bに対して鉛直上側に突出し、次いで鉛直下側に向かうように折り曲げられている。下側の規制部15dは、軸方向において下側ローラ10の側面と互いに対向している。底板部15b、側板部15cおよび下側の規制部15dは、鉛直下側に向けて凸な溝形状をなしている。この溝形状によって、各下側ローラ10および板ばね8がガイドされる。
【0026】
上側ローラ9は、ハンガー3に固定された軸部16によって回転自在に支持されている。下側ローラ10は、ハンガー3に固定された軸部17によって回転自在に支持されている。底板部15bは、下側ローラ10を鉛直下側から支持する。つまり、底板部15bは、下側ローラ10およびハンガー3を介してドアパネル2を支持している。ドアパネル2は、下側ローラ10が回転することによって開閉方向に移動することができる。
【0027】
図1から図3に示すように、ガイド部15内には、板ばね8が配置されている。板ばね8は、可撓性を有する板状部材であり、例えばばね鋼で形成されている。板ばね8は、張力を伝動する帯状の張力伝動体である。板ばね8は、天板部15aの下面15eと底板部15bの上面15fとの間に配置されて開閉方向に延在している。板ばね8の一端側は天板部15aの下面15eに、他端側は底板部15bの上面15fにそれぞれ固定されている。板ばね8は、張力がかかった状態で、ガイド部15に対して溶接やボルト止めで固定される。本実施形態では、板ばね8と、第一上側ローラ9aと、第一下側ローラ10aと、ガイド部15とを含むローラマイト30がドアパネル2に対して閉方向の力である戸閉力を発生させる。
【0028】
図3に示すように、第一上側ローラ9aと第一下側ローラ10aとは、板ばね8を間に挟んで配置されている。板ばね8は、第一上側ローラ9aの外周面と第一下側ローラ10aの外周面との間を通り、S字形状をなすように第一上側ローラ9aおよび第一下側ローラ10aにそれぞれ巻き掛けられている。言い換えると、板ばね8は、第一上側ローラ9aの中心Oと第一下側ローラ10aの中心Oとを結ぶ仮想線L上あるいはその近傍に変曲点が位置するように第一上側ローラ9aおよび第一下側ローラ10aに巻き掛けられている。板ばね8における変曲点よりも一端側(上側)は、第一上側ローラ9aに巻き掛けられている。第一上側ローラ9aに巻き掛けられた部分は、変曲点から鉛直上側に向かうに従い開方向に向かい、次いで閉方向に向かうように円弧状に湾曲しており、さらに先端側は天板部15aの下面15eに沿って閉方向に延在している。上記一端側の先端部は、第一上側ローラ9aよりも閉方向の位置で天板部15aに固定されている。
【0029】
板ばね8における変曲点よりも他端側(下側)は、第一下側ローラ10aに巻き掛けられている。第一下側ローラ10aに巻き掛けられた部分は、変曲点から鉛直下側に向かうに従い閉方向に向かい、次いで開方向に向かうように円弧状に湾曲しており、さらに先端側は底板部15bの上面15fに沿って開方向に延在している。上記他端側の先端部は、第一下側ローラ10aよりも開方向の位置で底板部15bに固定されている。つまり、板ばね8は、第一ローラ対11のそれぞれに対して互いに異なる面が接するように巻き掛けられている。
【0030】
第一下側ローラ10aは、板ばね8を介して底板部15bによって下方から支持されている。また、第一上側ローラ9aと天板部15aとの間には、板ばね8が介在している。本実施形態では、第一下側ローラ10aが底板部15bによってガイドされ、第一上側ローラ9aが天板部15aによってガイドされるように、天板部15aと底板部15bとの間隔が定められている。言い換えると、第一上側ローラ9aの上端と天板部15aとの隙間の大きさは、板ばね8の厚さと同様とされている。
【0031】
板ばね8は、第一ローラ対11に対して第一ドアパネル2aの閉方向の力を加えることでドアパネル2を自閉させる。本実施形態では、第一ローラ対11のそれぞれの径は、板ばね8が第一ローラ対11に対して第一ドアパネル2aの閉方向の力を加えるように互いに異なっている。具体的には、第一上側ローラ9aの半径rが第一下側ローラ10aの半径rよりも大きいことにより、板ばね8が第一ローラ対11に対して第一ドアパネル2aの閉方向の力を発生させる。言い換えると、板ばね8に対して閉方向側に配置された第一上側ローラ9aの半径rが、板ばね8に対して開方向側に配置された第一下側ローラ10aの半径rよりも大きいことで、板ばね8は第一ローラ対11に対して戸閉力を発生させる。
【0032】
図4は、ローラマイト30における力とモーメントを示す図である。第一下側ローラ10aに外力Fが開閉方向に加わった状態で、ローラマイト30が静止しているとすれば、この系に加わっている力とモーメントが釣り合う。従って、以下の式(1)から式(3)が成り立つ。なお、外力Fは、第一ドアパネル2aの閉方向を正とする。
−F−F=0 …(1)
+F−F=0 …(2)
+F−F=0 …(3)
【0033】
上記式(1)は開閉方向の力のつり合い式、上記式(2)は第一上側ローラ9aの中心Oまわりのモーメントのつり合い式、上記式(3)は第一下側ローラ10aの中心Oまわりのモーメントのつり合い式である。また、F,F,Fはそれぞれ板ばね8の張力であり、Fは第一上側ローラ9aの中心Oと第一下側ローラ10aの中心Oとを結ぶ仮想線上における張力、Fは第一上側ローラ9aの頂部に接する部分の張力、Fは第一下側ローラ10aの最下部に接する部分の張力である。また、Mは板ばね8のうち第一上側ローラ9aの頂部に接する部分の曲げモーメント、Mは板ばね8のうち第一下側ローラ10aの最下部に接する部分の曲げモーメントである。また、rは第一上側ローラ9aの半径、rは第一下側ローラ10aの半径をそれぞれ示す。
【0034】
上記式(1)から式(3)より、下記式(4)が導かれる。
F = M/r−M/r …(4)
【0035】
また、板ばね8にはりの理論を適用すると、M=EI/r、I=bh3/12の関係が成り立つので、下記[数1]および[数2]が得られる。なお、Eは、板ばねの縦弾性係数を示す。I、hおよびbは、板ばね8のうち第一上側ローラ9aの頂部に接する部分の断面2次モーメント、厚さおよび幅をそれぞれ示す。また、I、hおよびbは、板ばね8のうち第一下側ローラ10aの最下部に接する部分の断面2次モーメント、厚さおよび幅をそれぞれ示す。
【0036】
【数1】

【数2】

【0037】
上記[数1]および[数2]を上記式(4)に代入すると、下記[数3]となる。
【数3】

【0038】
ここで、上記[数3]において、板ばね8の厚さおよび幅を一様として、h=h=h、b=b=bと置くと、下記[数4]となる。
【数4】

【0039】
上記[数4]から、第一上側ローラ9aの半径rが第一下側ローラ10aの半径rよりも大であるときは、ローラマイト30を静止させる外力Fは、負の力、すなわち開方向の力である。つまり、ローラマイト30には、閉方向の戸閉力(自閉力)が発生する。このように、本実施形態のローラマイト30では、第一上側ローラ9aの半径rが第一下側ローラ10aの半径rよりも大であることにより、第一ローラ対11に常時閉方向の力が発生する。
【0040】
エレベータの乗りかごには、かごドア装置が設けられている。かごドア装置は、かごドアパネルおよびかごドアパネルを開閉方向に駆動する駆動源を有している。かごドアパネルは、ドアパネル2a,2bに対応する2枚のドアパネルを有している。ドアパネル2は、かごドアパネルの開方向の移動と連動して開方向に移動する。従って、かごドア装置の駆動源は、ローラマイト30が発生させる自閉力に抗してかごドアパネルとドアパネル2とを開方向に移動させて乗降口20を開放することができる。
【0041】
一方、かごドアパネルが閉方向に移動する場合、ドアパネル2の移動はかごドアパネルの移動とは連動しない。ドアパネル2は、ローラマイト30が発生させる自閉力によって閉方向に移動する。ドアパネル2が全閉状態となると、図1に示すロック装置4によってドアパネル2がロックされる。
【0042】
ここで、第一ドアパネル2aや第二ドアパネル2bの下側に物が挟まった場合など、自閉力によって閉方向に移動するドアパネル2に対して傾こうとする力が働く場合がある。これに対して、本実施形態のエレベータのドア装置1−1では、上側ローラ9が天板部15aによって支持されることにより、ドアパネル2の傾斜が抑制される。図3に示すように、第一上側ローラ9aは、天板部15aとの間に板ばね8を挟み込んでいる。これにより、ドアパネル2aに対して開閉方向に傾こうとする力が働いたとしても、第一上側ローラ9aが板ばね8を介して天板部15aによって支持されることで、ドアパネル2aの傾きが規制される。また、図1に示すように、第二ローラ対12は、第二下側ローラ10bが底板部15bによって支持されて第一ドアパネル2を懸架し、第二上側ローラ9bが天板部15aによって支持され、天板部15aに密着している。2つのローラ対11,12が開閉方向の異なる位置に配置されていることで、上側ローラ9a,9bによって第一ドアパネル2aの傾きを効果的に抑制することができる。
【0043】
また、第二ドアパネル2bでは、上側ローラ9c,9dは、それぞれ外周面が天板部15aに密着するように配置されている。これにより、第二ドアパネル2bに対して開閉方向に傾こうとする力が働いたとしても、各上側ローラ9c,9dが天板部15aによって支持されることで、第二ドアパネル2bの傾きが規制される。
【0044】
このため、例えば戸閉端で第一ドアパネル2aと第二ドアパネル2bとの間の下部に物が挟まった場合に、ドアパネル2が傾いて上部のみが閉じ、下部に隙間が生じるような状態が抑制される。
【0045】
本実施形態のエレベータのドア装置1−1によれば、ヘッダーケースのベース1およびドアパネル2を懸架するハンガーローラをローラマイト30による自閉機構の部品に共用することで、ヘッダーケースとローラマイト30とが一体化される。ハンガーローラをローラマイト30のローラとして共用することで、部品点数が削減され、自閉機構を簡素に構成できる。自閉機構のための追加部品としては板ばね8程度で済むため、簡素な構成で乗り場ドアに対して自閉力を発生させることができる。ヘッダーケースと自閉機構とが一体構造化されるため、従来は別々に行われていたヘッダーケースの取り付けと自閉機構の取り付けとを同時に行えるという利点がある。また、広い出入口幅の乗降口20に対しても、単純に板ばね8の長さを延長することで対応できるため、自閉機構の大型化が抑制可能である。
【0046】
なお、ローラマイト30によって戸閉力を発生させる方法は、第一上側ローラ9aの径を第一下側ローラ10aの径よりも大きくすること、すなわち第一上側ローラ9aの外径と第一下側ローラ10aの外径とを異ならせる方法には限定されない。例えば、板ばね8の幅を開閉方向の位置に応じて変化させることによって戸閉力を発生させるようにしてもよい。上記[数3]において、板ばね8の厚さを一定とし、h=h=hと置くと、下記[数5]となる。
【0047】
【数5】

【0048】
[数5]により、第一上側ローラ9aの半径rと第一下側ローラ10aの半径rとを等しくした場合、板ばね8において、第一上側ローラ9aの頂部に接する部分の幅bを第一下側ローラ10aの最下部に接する部分の幅bよりも小さくすれば、ローラマイト30に戸閉力を発生させることができる。この場合、例えば、閉方向に向かうに従い板ばね8の幅を減少させるようにしてもよい。
【0049】
また、板ばね8の厚さを開閉方向の位置に応じて変化させることによって戸閉力を発生させるようにしてもよい。板ばね8において、第一上側ローラ9aの頂部に接する部分の厚さhを第一下側ローラ10aの最下部に接する部分の厚さhよりも小さくすれば、ローラマイト30に戸閉力を発生させることができる。この場合、例えば、閉方向に向かうに従い板ばね8の厚さを減少させるようにしてもよい。
【0050】
ローラマイト30による自閉機構は、ドアパネル2の連動機構とは独立しているため、様々な乗り場ドアに対して適用可能である。本実施形態では、ドアパネル2が2枚である場合を例に説明したが、ドアパネル2の枚数はこれに限定されるものではない。乗り場ドアのドアパネル2は、単数であっても、3枚以上であってもよい。複数のドアパネル2のいずれかを本実施形態のローラマイト30による自閉機構で駆動することにより、全てのドアパネル2を閉方向に駆動して乗り場ドアを自閉させることが可能である。また、乗り場ドアは、片開きドアであってもよい。
【0051】
[第1の実施形態の変形例]
上記第1の実施形態では、上側ローラ9はハンガー3に対して上下方向に固定されていた。これに代えて、上側ローラ9が鉛直上方に向けて付勢されてもよい。例えば、上側ローラ9を支持する軸部16がハンガー3に対して鉛直上方に付勢されてもよい。上側ローラ9が鉛直上方に付勢されることにより、上側ローラ9が天板部15aの下面15eに向けて付勢され、天板部15aの下面15eに対して押圧される。これにより、ドアパネル2の開閉方向の傾斜が発生することをより確実に抑制することが可能となる。
【0052】
[第2の実施形態]
図5および図6を参照して、第2の実施形態について説明する。図5は、本実施形態に係る板ばねの一例を示す図、図6は、本実施形態に係る板ばねの他の一例を示す図である。第2の実施形態において、上記実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。第2の実施形態において、上記第1の実施形態と異なる点は、戸閉端においてローラマイト30の戸閉力が増大するように、板ばね8が構成されている点である。これにより、昇降路のドラフト現象によって戸閉しにくくなる問題を解消することができる。
【0053】
冬期には、ビル内の上下部での温度差により、昇降路が煙突のように働いて強い風が昇降路内を吹き抜けようとするドラフト現象が発生する。このドラフト現象により、ドアパネル2が閉じきりにくくなる問題が発生する虞がある。上記第1の実施形態で説明したように、ローラマイト30の戸閉力は、板ばね8の幅bに応じて変化させることができる。戸閉端での戸閉力を強くするように板ばね8の幅bを設定することで、ドラフト現象が生じた際にもドアをより確実に全閉させることが可能となる。
【0054】
例えば、図5に示す板ばね18では、戸閉端位置における板ばね18の幅bが、戸閉端位置よりも開方向側(以下、単に「戸開側」とも称する。)の位置における幅(例えばb)よりも小さい。ここで、板ばね18における「戸閉端位置」とは、ドアパネル2が戸閉端に位置しているときに第一上側ローラ9aに接する位置である。戸閉端位置は、例えば、ドアパネル2が戸閉端に位置しているときに第一上側ローラ9aの頂部に接する位置とすることができる。
【0055】
板ばね18は、開閉方向の開方向へ向かうに従い幅bが増加するテーパ部18aを有する。板ばね18において、テーパ部18aよりも開方向側の部分18bの幅b、および閉方向側の部分18cの幅bは、それぞれ一様である。戸閉端位置は、開閉方向におけるテーパ部18aの範囲内にある。従って、板ばね18のうち戸閉端位置よりも開方向側の位置の幅は、戸閉端位置の幅bよりも大きい。このように板ばね18の幅が開閉方向の位置に応じて変化することにより、ドアパネル2が開閉方向の戸閉端の位置から開方向の所定範囲内にある場合のローラマイト30による戸閉力が、上記所定範囲外にある場合の戸閉力よりも大きくなる。なお、上記所定範囲とは、例えば、第一上側ローラ9aがテーパ部18aに接するようなドアパネル2の開閉方向の位置の範囲である。
【0056】
板ばね18における戸閉端位置は、例えば、テーパ部18aにおける開閉方向の中央部とすることができる。戸閉端位置がテーパ部18aの範囲内に定められていることで、ドアパネル2の戸閉時にドアパネル2が戸閉端に近づくに従って戸閉力が増加する。つまり、板ばね18の幅は、ドアパネル2が戸閉端に近づくに従い戸閉力が増加するように開閉方向の位置に応じて変化している。
【0057】
テーパ部18aの設置範囲は、例えば、ドアパネル2が戸閉端にあるときに第一下側ローラ10aがテーパ部18aに接しないように定めることができる。また、テーパ部18aの設置範囲は、例えば、ドアパネル2が戸閉端および戸閉端から開方向側の所定範囲内にあるときにのみ戸閉力が増加し、ドアパネル2が所定範囲外にあるときの戸閉力が一定となるように定めることができる。
【0058】
なお、板ばねの幅の調整は、板ばね18のように全幅を変化させることには限定されない。例えば、図6に示すように、板ばね19に開口部を設けて幅を変化させることもできる。図6に示す板ばね19は、全幅bが一様である。板ばね19は、開口部21を有する。開口部21は、板ばね19の幅方向の中央部に配置されており、板ばね19を厚さ方向に貫通している。開口部21は、開方向に向かうに従い開口幅wが減少するテーパ形状である。開口部21が設けられた開閉方向の範囲では、板ばね19の実質幅、すなわち戸閉力に係る板ばね19の幅は、全幅bから開口部21の開口幅wを減じた幅となる。開口部21が設けられた範囲以外の開閉方向の範囲では、板ばね19の実質幅は、全幅bである。このように、板ばね19では、開口部21の開口幅wが開閉方向の位置に応じて変化することによって、板ばね19の幅が開閉方向の位置に応じて変化している。
【0059】
戸閉端位置は、開閉方向における開口部21が設けられた範囲内にある。従って、板ばね19のうち戸閉端位置よりも開方向側の位置の実質幅は、戸閉端位置の実質幅よりも大きい。このことから、ドアパネル2が開閉方向の戸閉端の位置から開方向の所定範囲内にある場合のローラマイト30による戸閉力が、上記所定範囲外にある場合の戸閉力よりも大きくなる。なお、上記所定範囲とは、例えば、第一上側ローラ9aが開口部21に接するようなドアパネル2の開閉方向の位置の範囲である。
【0060】
板ばね19における戸閉端位置は、例えば、開口部21における閉方向側の端部とすることができる。戸閉端位置が開口部21の範囲内に定められていることで、ドアパネル2の戸閉時にドアパネル2が戸閉端に近づくに従って戸閉力が増加する。つまり、板ばね19の幅は、ドアパネル2が戸閉端に近づくに従い戸閉力が増加するように開閉方向の位置に応じて変化している。
【0061】
開口部21の設置範囲は、例えば、ドアパネル2が戸閉端にあるときに第一下側ローラ10aが開口部21に接しないように定めることができる。また、開口部21の設置範囲は、例えば、ドアパネル2が戸閉端および戸閉端から開方向側の所定範囲内にあるときにのみ戸閉力が増加し、ドアパネル2が所定範囲外にあるときは戸閉力が一定となるように定めることができる。
【0062】
戸閉端や戸閉端の近傍において戸閉力を増加させる方法は、板ばね18,19の幅を変化させる方法には限定されない。例えば、戸閉端位置および戸閉端位置よりも開方向側の所定範囲内において開閉方向の他の部分よりも板ばね18,19の厚さを減少させることにより戸閉力を増加させるようにしてもよい。この場合、テーパ部18aや開口部21のテーパ形状と同様にして、戸閉端位置から開方向に向かうに従い板ばね18,19の厚さを増加させるようにしてもよい。
【0063】
上記の各実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実施することができる。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0065】
1−1 エレベータのドア装置
2a 第一ドアパネル(ドア)
2b 第二ドアパネル(ドア)
8,18,19 板ばね(板状部材)
9a 第一上側ローラ
10a 第一下側ローラ
11 第一ローラ対(ローラ対)
15 ガイド部
15a 天板部
15b 底板部
15e 下面(案内面)
15f 上面(案内面)
20 乗降口
30 ローラマイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗り場側の乗降口を開閉するドアと、
前記ドアの開閉方向に延在し、かつ鉛直方向において互いに対向する一対の案内面と、
前記一対の案内面の間に配置され、前記案内面によって支持されて前記ドアを懸架し、かつ外周面同士が互いに対向するローラ対と、
前記一対の案内面の間に配置されて前記開閉方向に延在し、一端側が前記一対の案内面の一方に接続され、他端側が前記一対の案内面の他方に接続されている可撓性を有する板状部材と
を備え、前記ローラ対は、前記板状部材を介して鉛直方向下側の前記案内面によって支持されて前記ドアを懸架する下側ローラと、前記板状部材を介して鉛直方向上側の前記案内面によって支持される上側ローラとを有し、前記上側ローラと前記下側ローラとが前記板状部材を間に挟んで配置され、
前記板状部材は、前記上側ローラおよび前記下側ローラのそれぞれに対して互いに異なる面が接するように巻き掛けられており、前記ローラ対に対して前記ドアの閉方向の力を加えて前記ドアを自閉させる
ことを特徴とするエレベータのドア装置。
【請求項2】
前記ローラ対の径は、前記板状部材が前記ローラ対に対して前記閉方向の力を加えるように互いに異なっている
請求項1に記載のエレベータのドア装置。
【請求項3】
前記板状部材の幅は、前記ドアが前記開閉方向の戸閉端の位置から開方向の所定範囲内にある場合の前記閉方向の力が、前記ドアが前記所定範囲外にある場合の前記閉方向の力よりも大きくなるように前記開閉方向の位置に応じて変化する
請求項1または2に記載のエレベータのドア装置。
【請求項4】
前記一対の案内面は、前記ドアの鉛直方向上側に配置されたベース部を形成する鋼板を折り曲げて形成されており、
前記案内面の幅方向の端部には、前記ローラ対の軸方向の移動を規制する規制部が設けられている
請求項1から3のいずれか1項に記載のエレベータのドア装置。
【請求項5】
前記上側ローラは、鉛直方向上側の前記案内面に向けて付勢される
請求項1から4のいずれか1項に記載のエレベータのドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−56719(P2013−56719A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194936(P2011−194936)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】