説明

エレベータの乗場出入口の安全装置

【課題】仕切り幕の長さを一対の側枠間の距離に対応させずとも、一対の側枠間に張った仕切り幕が緩むことを規制できるエレベータの乗場出入口の安全装置を得る。
【解決手段】エレベータの昇降路に開口する乗場出入口3の間口方向の両側縁部を構成する一対の側枠6と、一方の側枠6内に軸まわりに回転自在に設けられた回転体22に、一方の側枠6から上記操作口6dを介して他方の側枠6内に至る部位まで引き出し可能に巻きつけられる仕切り幕25と、回転体22から引き出された仕切り幕25の所定部位を、他方の側枠6側に保持して、一対の側枠6の間に仕切り幕25を張り渡す保持手段30と、回転体22の回転を規制する規制ピン35とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、エレベータの保守点検の際に、乗場出入口を遮るように設けられる仕切り幕を有するエレベータの乗場出入口の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータの乗場口の安全柵装置は、エレベータの昇降路に開口する乗場口に設けられ、左右に一対の側枠を有した三方枠と、一方の側枠内に設けられた回転可能な巻き軸と、巻き軸に巻き取られて一方の側枠の内側に収納され、その巻軸から巻き戻して一方の側枠内から引き出すことが可能な仕切り幕と、巻き軸から引き出した仕切り幕の端部を三方枠の他方の側枠に係止して仕切り幕を一方の側枠と他方の側枠との間に張り渡すことが可能な係止手段とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、仕切り幕の横長寸法は、一対の側枠間の距離に対応しており、仕切り幕が一対の側枠間に張り渡されたときには、仕切り幕がそれ以上延び出ることなく、安定した状態で張り渡されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−265968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のエレベータの乗場口の安全柵装置を、一対の側枠間の距離の異なる複数のエレベータ毎に用意する場合、用意する各従来のエレベータの乗場口の安全柵装置の仕切り幕は、その横長寸法を、設置対象のエレベータの一対の三方枠間の距離に合わせる必要がある。このため、仕切り幕は、設置対象のエレベータ毎に、専用のものをその都度製作しなければならい。即ち、従来のエレベータの乗場口の安全柵装置は、汎用性に欠ける。
【0006】
また、従来のエレベータの乗場口の安全柵装置に汎用性を持たせるために、エレベータ毎に用意する従来のエレベータの乗場口の安全柵装置の仕切り幕を共通の長さにする場合には、仕切り幕の横長寸法を長くする必要ある。これでは、仕切り幕を一対の側枠間に張り渡した後でも、仕切り幕の余剰分が、回転体に巻回されたままであるために巻き軸の回転が規制されない場合が発生する。この場合、仕切り幕を乗場側から昇降路側に押圧したときに、巻き軸が回転されて仕切り幕が大きく緩んでしまう。
例えば、作業者が、乗場出入口を開状態にして乗場の保守を行っている際に、床に置いていた部材を、思いがけず仕切り幕に押しつけてしまうと、仕切り幕が昇降路側に緩むので、部材が昇降路に落下する恐れがある。
【0007】
この発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、仕切り幕の長さを一対の側枠間の距離に対応させずとも、一対の側枠間に張った仕切り幕が緩むことを規制できるエレベータの乗場出入口の安全装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のエレベータの乗場出入口の安全装置は、エレベータの昇降路に開口する乗場出入口の間口方向の両側縁部を構成し、それぞれ操作口を有する一対の側枠と、一方の側枠内に固定された回転軸まわりに回転自在に設けられた回転体に、一方の側枠から操作口を介して他方の側枠内に至る部位まで引き出し可能に巻きつけられる仕切り幕と、回転体から引き出された仕切り幕の所定部位を、他方の側枠側に保持して、仕切り幕を一対の側枠の間に張り渡す保持手段と、回転体の回転を規制する回転規制手段とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係るエレベータの乗場出入口の安全装置によれば、仕切り幕を一対の側枠間に張り渡した後に、回転規制手段により、回転体の回転を規制できるので、仕切り幕の長さを一対の側枠間の長さに対応させなくても、一対の側枠間に張った仕切り幕が緩むことを規制できる。これにより、思いがけず乗場に載置した部材等を昇降路側に押してしまっても、部材等が昇降路に落下することを回避できると同時に以下の効果が得られる。
即ち、仕切り幕の長さを、一対の側枠間の距離に対応させた長さに設定することが不要となり、長さの長い仕切り幕を回転体に予め巻いておくことで、エレベータの乗場出入口の安全装置は、どのエレベータに対しても設置可能な汎用性を兼ね備えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の一実施の形態に係るエレベータの乗場出入口の安全装置が設けられる乗場の正面図であり、乗場出入口が開放された状態を示している。
【図2】図1のII−II矢視断面図である。
【図3】図2のA部拡大図である。
【図4】図3のIV−IV矢視断面図である。
【図5】この発明の一実施の形態に係るエレベータの乗場出入口の安全装置が設けられる乗場の正面図であり、三方枠を構成する一対の側枠間に仕切り幕を張った様子を示している。
【図6】図5のVI−VI矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1はこの発明の一実施の形態に係るエレベータの乗場出入口の安全装置が設けられる乗場の正面図であり、乗場出入口が開放された状態を示している。図2は図1のII−II矢視断面図、図3は図2のA部拡大図、図4は図3のIV−IV矢視断面図である。
【0013】
図1及び図2において、エレベータの乗場1には、昇降路2に開口する乗場出入口3が形成されている。また、乗場1には、乗場出入口3の両側縁及び上縁を構成する三方枠5が設けられている。
【0014】
三方枠5は、乗場出入口3の間口方向の両側縁部を構成し、それぞれ操作口6dを有する側枠6と、側枠6の上端間を連結し、乗場出入口3の上縁を構成する上枠7とを備えている。
【0015】
各側枠6は、長手方向に垂直な断面が、側壁部6a、及び側壁部6aの長手方向の両端から互いに相対するように延出される前面壁6bと背面壁6cを有するコ字状に形成されている。
操作口6dは、側壁部6aの下端部近傍から所定の高さ範囲に、所定の幅に形成されている。
一対の側枠6は、長手方向を高さ方向に一致させ、コ字状の開口部を互いに逆方向に向け、乗場出入口3の間口方向に側壁部6aが対向配置されるように設けられている。
【0016】
また、側壁部6aの裏面及び前面壁6bの裏面との間に、収納空間8を構成する仕切り壁9が、側枠6内に設けられている。なお、収納空間8は、操作口6dに対応する側枠6内の位置に形成されている。
【0017】
また、扉10が、ヒンジ11を介して、操作口6dの幅方向の一方の縁部に、鉛直軸まわりに回動自在に設けられ、操作口6dを開閉することが可能になっている。
【0018】
次いで、エレベータの乗場出入口の安全装置20について説明する。
図2〜図4において、エレベータの乗場出入口の安全装置20は、一方の側枠6内に固定される回転軸21と、回転軸21の軸まわりに回転自在に設けられる回転体22と、回転体22に巻きつけられる仕切り幕25と、回転体22から引き出された仕切り幕25を他方の側枠6内に係止する保持手段30と、回転体22の回転を規制する回転規制手段としての規制ピン35とを備えている。
【0019】
回転軸21は、円筒状に作製され、8つの第1挿入穴21aが周方向に等角ピッチで軸方向の一端近傍に形成されている。
【0020】
回転体22は、回転軸21の外径よりわずかに大きな内径を有し、8つの第2挿入穴23aが周方向に等角ピッチで軸方向の一端近傍に形成された円筒状の巻心部23と、巻心部23の軸方向の他端側の外周面の全域から径方向に突出するつば部24とを備えている。
【0021】
また、仕切り幕25は、所定の幅を有する長尺シートである。仕切り幕25の長さは、例えば、広く普及している一般的なエレベータのうち、乗場出入口の間口方向の幅が広い、言い換えれば、一対の側枠6間の距離が長いものを想定し、想定した一対の側枠6間の距離よりも、余裕をもって長く設定されている。
また、仕切り幕25の一面には、「保守作業中です。近づかないでください。」などの文字が仕切り幕25の長さ方向に所定の間隔で記載されている。
【0022】
そして、回転軸21は、一方の側枠6内に形成された収納空間8に、高さ方向に軸方向を一致させて固定されている。
【0023】
また、回転体22は、巻心部23の他端側を下方に向け、回転軸21と巻心部23とを嵌め合わせることで、回転軸21の軸まわりに回転自在に設けられている。なお、巻心部23は、図示しない軸受けを介して回転軸21に嵌め合わされていてもよい。
また、仕切り幕25は、長手方向の一端側を、巻心部23の外周面に固定されている。そして、仕切り幕25は、幅方向を巻心部23の軸方向に一致させ、つば部24の上面に支持されるように、巻心部23に巻かれている。
【0024】
また、上記特許文献1に記載されているように周知の技術であるので詳細には説明しないが、図示しないゼンマイ式のばね部材が、仕切り幕25を巻き取る方向に巻心部23を回転させるように設けられている。
【0025】
仕切り幕25は、その他端をばね部材の弾性力に抗して他方の側枠6に向かって引っ張って、他方の側枠6の内部まで引き出すことが可能である。また、仕切り幕25を引き出す力を解放することで、仕切り幕25が、ばね部材の弾性力により巻心部23に巻き取られるようになっている。なお、仕切り幕25を他方の側枠6まで引き出したときには、「作業中です。近づかないでください」の文字が記載された仕切り幕25の一面が、乗場出入口3に対応する位置で、昇降路2と逆側に向けられるように、仕切り幕25は、巻心部23に巻かれている。
【0026】
また、保持手段30は、他方の側枠6内に形成した収納空間8内に、高さ方向に長手方向を一致させて設けられる係止棒31と、係止棒31に掛け止め可能な形状を有し、仕切り幕25の他端に取り付けられたフック32とを備えている。
【0027】
また、乗場出入口3を開閉する一対のドアパネル41を有する乗場ドア40が設けられている。
【0028】
また、規制ピン35は、第1挿入穴21a及び第2挿入穴23aのそれぞれに挿入可能な断面形状を有する。
【0029】
次いで、エレベータの乗場出入口の安全装置20の利用方法について説明する。
図5はこの発明の一実施の形態に係るエレベータの乗場出入口の安全装置が設けられる乗場まわりの正面図であり、三方枠を構成する一対の側枠間に仕切り幕を張った様子を示している。図6は図5のVI−VI矢視断面図である。
【0030】
エレベータの通常運転時では、図1〜図4に示されるように、仕切り幕25を巻心部23に巻き取らせた状態で、一方の側枠6内に収納させておく。このとき、扉10は、閉められた状態にある。また、規制ピン35は、8つの第1挿入穴21a及び8つの第2挿入穴23aが相対するように、回転体22の回転軸21の軸まわりの位置を設定したのちに、一直線状に位置する2つの第1挿入穴21a及び2つの第2挿入穴23aを貫通させて設けられているものとする。
【0031】
エレベータの乗場出入口の安全装置20は、例えば、保守作業時に利用される。
作業者は、まず、一対の扉10を開け、第1挿入穴21a及び第2挿入穴23aから規制ピン35を抜く。
そして、図5及び図6に示されるように、仕切り幕25の他端側を、一方の側枠6の操作口6dを介して乗場出入口3に引っ張りだす。さらに、他方の側枠6の操作口6dを介して他方の側枠6内に配置されるまで、仕切り幕25を引っ張り出して、仕切り幕25の他端に取り付けられたフック32を、係止棒31に掛け止めする。図示しないばね部材により、仕切り幕25を巻心部23に巻き取る方向の力が回転体22に働いているので、仕切り幕25は、張られた状態に維持される。
【0032】
次いで、8つの第1挿入穴21a及び8つの第2挿入穴23aが、互いに相対するように、回転体22の回転軸21の軸周りの位置を微調整し、規制ピン35を一直線状に配置された一対の第1挿入穴21a及び一対の第2挿入穴23aを貫通させるように差し込む。以上により、回転体22が回転されることが規制される。
なお、上記微調整により、仕切り幕25が大きくたるまない程度に、第1挿入穴21aの形成ピッチ、及び第2挿入穴23aの形成ピッチを設定しておく。
【0033】
また、保守作業が終了したら、規制ピン35を抜いて仕切り幕25を巻心部23に巻き戻し、規制ピン35を再度第1挿入穴21a及び第2挿入穴23aに挿入して、扉10を閉めることで、一般の利用者がエレベータを利用可能な初期状態に戻る。
【0034】
この発明によれば、仕切り幕25を一対の側枠6間に張り渡した後に、規制ピン35を用いて、回転体22の回転を規制できるので、仕切り幕25の長さによらず、一対の側枠6間に張った仕切り幕25が緩むことを規制できる。仕切り幕25は、押圧されても緩むことなく張られた状態に維持され、思いがけず乗場1に載置した部材等を昇降路2側に押してしまっても、部材等が昇降路2に落下することを回避できる上、以下の効果が得られる。即ち、仕切り幕25の長さを、設置対象のエレベータの一対の側枠6間の距離に応じた長さに設定することが不要となり、エレベータの乗場出入口の安全装置30は、長さの長い仕切り幕25を回転体22に予め巻いておくことで、どのエレベータの乗場1に対しても設置可能な汎用性を兼ね備えることができる。
【0035】
なお、上記実施の形態では、保持手段30は、係止棒31とフック32とにより構成されるものとして説明したが、保持手段30は、このものに限定されず、例えば、仕切り幕25の他端に棒体を設け、棒体を、固定可能な手段を他方の側枠6内に設けておくなどしておいてもよい。
【0036】
また、扉10は、仕切り幕25を一対の側枠6間に張った後には、閉じないものとしているが、扉10は、閉じてもよい。この場合、扉10を閉じる前の仕切り幕25の回転体22からの引き出し量を、扉10を閉じた分の変動分を考慮しつつ、一対の側枠6間に仕切り幕25を張り渡す際の作業を行えばよい。
【0037】
また、仕切り幕25の他端にフック32を設けて、仕切り幕25の他端を他方の側枠6内に設けた係止棒31に係止して仕切り幕25を一対の側枠6の間に張り渡すものとして説明したが、仕切り幕25の他端を他方の側枠6側に保持するものに限定されず、一対の側枠6の間に張り渡されさえすれば、仕切り幕25の他端に限らず、仕切り幕25の所定の部位を他方の側枠6側に保持させるものでもよい。
【符号の説明】
【0038】
3 乗場出入口、5 三方枠、6 側枠、6d 操作口、21 回転軸、22 回転体、25 仕切り幕、30 保持手段、35 規制ピン(回転規制手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの昇降路に開口する乗場出入口の間口方向の両側縁部を構成し、それぞれ操作口を有する一対の側枠と、
一方の上記側枠内に固定された回転軸まわりに回転自在に設けられた回転体に、一方の上記側枠から上記操作口を介して他方の上記側枠内に至る部位まで引き出し可能に巻きつけられる仕切り幕と、
上記回転体から引き出された上記仕切り幕の所定部位を、他方の上記側枠側に保持して、上記仕切り幕を一対の上記側枠の間に張り渡す保持手段と、
上記回転体の回転を規制する回転規制手段と
を備えていることを特徴とするエレベータの乗場出入口の安全装置。
【請求項2】
上記回転規制手段は、上記回転体及び上記回転軸に挿通される規制ピンであることを特徴とする請求項1に記載のエレベータの乗場出入口の安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−206843(P2012−206843A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74970(P2011−74970)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】