説明

エレベータの乗場装置

【課題】火災時に補強体によるヒートブリッジ効果を抑制するとともにエレベータのドアの変形を抑えることができ、断熱材の厚み及び重量の増加を抑えることができるエレベータの乗場装置。
【解決手段】この発明に係るエレベータの乗場装置においては、エレベータの乗場ドア表板3aと、乗場ドア表板3aに設けられ、該乗場ドア表板3aと空間を持って対向するエレベータの乗場ドア裏板3cと、乗場ドア表板3aから乗場ドア裏板3cへの熱伝達が低くなるように抑制する熱伝達抑制手段とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビル火災時等にエレベータ昇降路を伝って火災が延焼するのを防ぐエレベータの乗場装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータの乗場装置においては、乗場側で発生した火災を昇降路側に延焼するのを抑えるため乗場ドアに断熱性を持たせている。
乗場ドアの断熱性を向上させるために、乗場ドアに断熱材が挿入されたものがある。(例えば特許文献1)。
また乗場ドアの戸パネルに補強材を接着する接着剤と、戸パネルと補強材の間に配置された熱膨張材とを備え、火災等の発生により高熱が加えられると熱膨張材が膨張して戸パネルと補強材を引き離して分離し、戸パネルと補強体との熱膨張率との差により戸パネルが変形するのを防止したものがある(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002−514701号公報
【特許文献2】国際特許WO03/016193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエレベータの乗場装置においては、乗場ドアは剛性上必要な補強を配しているが、この補強によるヒートブリッジにより裏面の温度が上昇するという問題があった。また加熱時の乗場ドア表板と裏板の温度差により該乗場ドア表板と裏板の伸び量が異なり、お互いに拘束する形となって乗場ドアが変形してしまう問題があった。またこれにより乗場ドアと三方枠との間、もしくは乗場ドアと乗場ドアとの間の隙間が大きくなり、火炎が通過しやすくなって耐火性が低下するという問題につながった。またこれらの問題に対応して乗場ドアに断熱材を挿入すると、ドアの厚み及び重量が増すという問題があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、火災時にエレベータのドアの熱伝達を抑制するとともにエレベータのドアの変形を抑えることができ、断熱材の厚み及び重量の増加を抑えることができるエレベータの乗場装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータの乗場装置においては、エレベータの乗場ドア表板と、乗場ドア表板に設けられ、該乗場ドア表板と空間を持って対向するエレベータの乗場ドア裏板と、乗場ドア表板から乗場ドア裏板への熱伝達が低くなるように抑制する熱伝達抑制手段とを備え、熱伝達抑制手段は、乗場ドア表板と乗場ドア裏板の間の空間に積層された形で挿入された複数の断熱材と、該各相互の隙間に挟み込まれた熱輻射に対する反射率の高い反射シートとを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によりエレベータのドアの熱伝達を抑えることができ、またドアの厚み、及び重量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベータの乗場装置を示す昇降路縦断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるエレベータの乗場装置を示す横断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるエレベータの乗場装置の乗場ドアの詳細を示す断面図である。
【図4】この発明の実施の形態2における図1相当図である。
【図5】この発明の実施の形態3におけるエレベータの乗場装置の乗場ドアを示す背面図である。
【図6】この発明の実施の形態3における図1相当図である。
【図7】この発明の実施の形態4における図5相当図である。
【図8】この発明の実施の形態4における図6相当図である。
【図9】この発明の実施の形態5における図1相当図である。
【図10】この発明の実施の形態6における図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの乗場装置を示す昇降路縦断面図、図2はこの発明のエレベータの乗場装置を示す横断面図、図3はこの発明のエレベータの乗場装置の乗場の戸の詳細を示す横断面図である。
図において、1はエレベータ乗場、2はエレベータ昇降路、3はエレベータの乗場ドア、4は乗場の三方枠縦枠、5は乗場の三方枠上枠、6は乗場敷居である。3aは乗場ドア3の乗場1側正面及び側面を成す鋼板からなる乗場ドア表板で、昇降路2側に向かって折り曲げられた左右両端部が乗場ドア3の側面を成し、さらにこの左右両端部の先端が内側に折り曲げられてかえし3bが設けられ、これにより該乗場ドア表板3aは袋形状を成すものである。3cは乗場ドア3の昇降路2側裏面を成す鋼板からなる乗場ドア裏板であり、左右両端部が乗場ドア表板3aのかえし3bと当接し該乗場ドア表板3aの蓋を成すものである。
7は乗場ドア表板3aに設けられた乗場ドア3とかごドア(図示せず)の戸当り面の隙間を塞ぐ戸当りあいじゃくり、8は乗場ドア表板3aと乗場の三方枠縦枠4を塞ぐ戸袋あいじゃくり、9は乗場ドア表板3aと乗場の三方枠上枠5との隙間を塞ぐ上部あいじゃくりである。このあいじゃくり7、8、及び9により乗場1と昇降路2との隙間は塞がれ乗場1と昇降路2間の耐火性が向上されたものである。これらは従来と同様の構成である。
図3において、10は乗場ドア表板3a裏面の中央部に設けられ上下方向に亘って延在して乗場ドア3の強度を高めた補強材である。補強材10は一枚板が折り曲げられて構成されたもので、中央部の上下方向全域が乗場ドア裏板3cに向かって突出し、且つ左右両端部の上下方向全域が乗場ドア表板3aの裏面に当接したものである。
この発明の最も特徴とするところはこの補強材10に関する以下の構成である。
11は当接した補強材10の左右両端部と乗場ドア表板3aの裏面との間に設けられ、これら両者を接着させる熱可塑性の接着剤(もしくは両面テープ)である。12は補強材10の左右両端部の中央に上下方向全域に亘って凹設されたくぼみで乗場ドア3側に突出している。13はくぼみ12の内側スペースに設けられた熱膨張性の発泡剤である。ここで熱膨張性発泡剤13は接着剤(もしくは両面テープ)11の耐熱温度よりも高い発泡温度を持つものである。
【0010】
このように構成されたエレベータの乗場装置においては、乗場1側で生じた火災時に熱によって熱可塑性の接着剤(もしくは両面テープ)11の拘束が離れ、また熱膨張性発泡剤13の発泡により乗場ドア表板3aと補強材10との距離を上下方向全域に亘って確実に離すもので、補強材10のヒートブリッジ現象により生じる昇降路2側への熱伝達を抑制することができる。
【0011】
また熱伝達を抑制することができるため必要な断熱材を少なくすることができ、エレベータの乗場ドアの厚み、及び重量を抑えることができる。
【0012】
実施の形態2
図4はこの発明の実施の形態2における図3相当図である。図4においては実施の形態1と同一または相当部に同符号を符しているので説明を省略する。
図において14は乗場ドア表板3aの内部に、乗場ドア3の厚さ方向へ積層する形で内蔵された断熱材である。15はこの発明の特徴である、積層された断熱材14相互の隙間に設けられた熱輻射に対する反射率の高い反射シートである。反射シート15の材料は例えばアルミナシリケートと珪酸塩との混合物がある。
【0013】
このように構成されたエレベータの乗場装置においては、断熱材14の効果による直接的な熱伝達を抑えることができるとともに、反射シート15の効果により熱輻射による影響を抑制することができる。
【0014】
また熱伝達を抑制することができるため必要な断熱材14を少なくすることができ、エレベータの乗場ドアの厚み、及び重量を抑えることができる。
【0015】
ところで上述の構成においては反射シート15を断熱材14相互の隙間に設けたが、該反射シート15を乗場ドア裏板3cの乗場ドア表板3aに面した面に設けても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0016】
実施の形態3.
図5はこの発明の実施の形態3におけるエレベータの乗場装置の乗場ドアを示す背面図、図6はこの発明のエレベータの乗場装置の乗場ドアを示す横断面図である。図5及び図6においては実施の形態1と同一または相当部に同符号を符しているので説明を省略する。
図において3dは実施の形態1の乗場ドア裏板3c相当のもので、左右両端部の上下方向全域に渡り左右側に向かって突出した複数個のヒレ部3eを備え、このヒレ部3eが乗場ドア表板3aのかえし3bと当接した乗場ドア裏板である。
【0017】
このように構成されたエレベータの乗場装置においては、乗場1側の火災時には乗場ドア表板3aの左右両端部(乗場ドア3側面)からかえし3bを伝って乗場ドア裏板に熱伝導されるが、ヒレ部3eのみをかえし3bと当接したことによって、裏板3dへの熱伝達経路が少なくなり乗場ドア裏板3d側の温度上昇を抑え、乗場1側の火災が昇降路2側へ延焼することを抑えることができる。
【0018】
また熱伝達を抑制することができるため必要な断熱材14を少なくすることができ、エレベータの乗場ドアの厚み、及び重量を抑えることができる。
【0019】
実施の形態4.
図7はこの発明の実施の形態4における図5相当図、図8は図6相当図である。
図において、3fは実施の形態1の乗場ドア裏板3c相当のもので、エキスパンドメタル、もしくはパンチングメタルで構成された乗場ドア裏板である。
【0020】
このように構成されたエレベータの乗場装置においては、乗場1側の火災時に乗場ドア表板3aから乗場ドア裏板3cに伝達された熱により該乗場ドア3全体が熱くなることを抑制することができる。
【0021】
また乗場ドア3の熱変形を抑制することができるため必要な断熱材14を少なくすることができ、エレベータの乗場ドアの厚み、及び重量を抑えることができる。
【0022】
実施の形態5.
図9はこの発明の実施の形態5における実施の形態1の図1相当図である。
図において乗場ドア裏板3cは塗装16が施されたものである。鋼板は素地よりも塗装を行うことにより熱輻射率を高めることができる(輻射率は、鋼板素地0.38、黒ラッカー塗装付鋼板0.875である)。このため、乗場ドア裏板3cに対し塗装を施すことで、乗場1側の火災時に乗場ドア裏板3cの温度上昇を抑制することができる。また熱伝達を抑制することができるため必要な断熱材14を少なくすることができ、エレベータの乗場ドアの厚み、及び重量を抑えることができる。
【0023】
実施の形態6.
図10はこの発明の実施の形態6における実施の形態1の図1相当図である。図10において実施の形態1と同一または相当部に同符号を符しているので説明を省略する。
図において17は当接した乗場ドア表板3aのかえし3bと、ドア裏板3cとの間に設けられ両者を接着する熱可塑性の接着剤(若しくは両面テープ)である。
【0024】
このように構成されたエレベータの乗場装置においては、乗場1側の火災時に熱可塑性の接着剤17の拘束が外れて、乗場ドア表板3a及び裏板3cが離れるものである。これにより火災時、乗場ドア表板3a及び裏板3cとの温度差により乗場ドア3が変形して乗場ドア3に隙間が生じ、乗場1側から昇降路2側へと延焼してしまうことを抑えることができる。また熱伝達を抑制することができるため必要な断熱材14を少なくすることができ、エレベータの乗場ドアの厚み、及び重量を抑えることができる。
【0025】
ところで、上述の実施の形態1〜実施の形態6において、これらのエレベータ乗場装置の構成は乗場ドア3のみに利用する場合について述べたが、これらの構成をエレベータのかごドア側に設けても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0026】
1 エレベータ乗場、
2 エレベータ昇降路、
3 乗場ドア、
3a 乗場ドア表板、
3b ドア表板のかえし、
3c、3d、3f 乗場ドア裏板、
3e ヒレ部、
4 三方枠縦枠、
5 三方枠横枠、
6 乗場敷居、
7 戸当りあいじゃぐり、
8 戸袋あいじゃぐり、
9 上部あいじゃぐり、
10 補強材、
11、17 接着剤(若しくは両面テープ)、
12 くぼみ、
13 熱膨張性発泡剤、
14 断熱材、
15 反射シート、
16 塗装。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗場ドア表板と、
この乗場ドア表板に設けられ、該乗場ドア表板と空間を持って対向するエレベータの乗場ドア裏板と、
前記乗場ドア表板から前記乗場ドア裏板への熱伝達が低くなるように抑制する熱伝達抑制手段と、を備え、
前記熱伝達抑制手段は、前記乗場ドア表板と前記乗場ドア裏板の間の空間に積層された形で挿入された複数の断熱材と、該各相互の隙間に挟み込まれた熱輻射に対する反射率の高い反射シートとを備えたことを特徴とするエレベータの乗場装置。
【請求項2】
前記反射シートは、アルミナシリケートと珪酸塩との混合物により構成してなる請求項1に記載のエレベータの乗場装置。
【請求項3】
前記熱伝達抑制手段は、前記乗場ドア表板と前記乗場ドア裏板との当接箇所に形成されたヒレ構造を備えてなる請求項1に記載エレベータの乗場装置。
【請求項4】
前記乗場ドア裏板をエキスパンドメタルまたはパンチングメタルにより構成し、当該乗場ドア裏板により前記熱伝達抑制手段の一部を構成してなる請求項1に記載のエレベータ乗場装置。
【請求項5】
前記乗場ドア裏板には該乗場ドア裏板の熱輻射率を高める塗装を施し、前記塗装により前記熱伝達抑制手段の一部を構成してなる請求項1に記載のエレベータ乗場装置。
【請求項6】
前記熱伝達抑制手段は、前記乗場ドア表板の乗場ドア裏板当接部と前記乗場ドア裏板との間に設けられた熱可塑性の接着剤を備えてなる請求項1に記載のエレベータ乗場装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−230932(P2011−230932A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183520(P2011−183520)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【分割の表示】特願2005−348931(P2005−348931)の分割
【原出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】