説明

エレベータの出入口安全装置

【課題】簡単な構成で的確に乗客に十分な注意を喚起して安全性を高めることができるとともに、高い静粛性も確保することができるエレベータの出入口安全装置を提供する。
【解決手段】建屋のエレベータホール1に設けられた出入口4と、出入口4を開閉するホールドア装置8と、出入口4の側部に設けられた発光体25と、エレベータホールにおいて乗客によるかご呼びの操作が行なわれるときに、発光体25を点灯させ、かご呼びの操作に応じてエレベータホール1にかご14が到着してホールドア装置8が開くときに発光体25を連続の点灯状態から点滅の点灯状態に変化させる制御を行なう制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータを利用する乗客の安全性を高めるために、エレベータの出入口に設けられるエレベータの出入口安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建屋の各階のエレベータホールには、かごが昇降する昇降路に通じる出入口が設けられ、これら出入口にホールドア装置が設置されている。また、昇降路内で昇降するかごは前面に出入口を有し、この出入口にかごドア装置が設置されている。そしてかごが所定の階床に移動して着床した際に、かごドア装置及びホールドア装置が互いに連動して開き、これによりエレベータホールとかごとの間での乗客の乗り降りが可能となる。各ドア装置は、それぞれドアパネルを備え、これらドアパネルが左右に移動することでエレベータホール及びかごの出入口が開閉される。
【0003】
ところで、乗客がドア装置の近くで乗降を待機していると、そのドア装置が開閉するとき、特に開くときに、乗客の手などがそのドア装置のドアパネルと出入口の縁との間の隙間に引き込まれ、思わぬ怪我を負うような恐れがある。
【0004】
このため、出入口の周辺部に、手などの引き込まれに注意するよう表記したステッカーを貼り付けて乗客に注意を促すようなことが行なわれている。
【0005】
また、特開平9−165176号公報には、出入口に発光素子及び受光素子を備える光学式の検知機構を設け、乗客の手などがドア装置に近づいて触れようとしたときにそれを光学的に検知し、この検知時にはドア装置を開かないように制御し、かつ注意を促すメッセージをアナウンスして安全を図るようにした安全装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−165176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、出入口の周辺部に、単に注意を促すステッカーを貼り付けるだけでは、視覚的に目立たず、十分に注意を喚起することが難しい。
【0008】
また、特開平9−165176号公報のように、出入口に発光素子及び受光素子を備える光学式の検知機構を設ける手段では、構造が複雑で高価となり、また乗客の検知時には注意を促すメッセージをアナウンスするため、ホテルや病院病棟のように高い静粛性が求められる施設には設置が不向きとなる。
【0009】
この発明はこのような点に着目してなされたもので、その目的とするところは、簡単な構成で的確に乗客に十分な注意を喚起して安全性を高めることができるとともに、高い静粛性も確保することができるエレベータの出入口安全装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、請求項1の発明は、建屋のエレベータホールに設けられた出入口と、前記出入口を開閉するホールドア装置と、前記出入口の側部に設けられた発光体と、前記エレベータホールにおいて乗客によるかご呼びの操作が行なわれるときに、前記発光体を点灯させ、かご呼びの操作に応じて前記エレベータホールにかごが到着して前記ホールドア装置が開くときに前記発光体の点灯状態を変化させる制御を行なう制御手段とを具備することを特徴としている。
【0011】
請求項2の発明は、建屋の昇降路内を昇降移動するかごに設けられた出入口と、前記出入口を開閉するかごドア装置と、前記出入口の側部に設けられた発光体と、前記かご内に乗り込んだ乗客による行先階登録の操作が行なわれたときに、前記発光体を点灯させ、行先階登録の操作に応じてかごがその行先階に到着して前記かごドア装置が開くときに前記発光体の点灯状態を変化させる制御を行なう制御手段とを具備することを特徴としている。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1に記載の安全装置及び請求項2に記載の安全装置を共に備えることを特徴としている。
【0013】
請求項4の発明は、前記発光体の点灯状態の変化が、連続点灯状態から点滅点灯状態に変わる変化であることを特徴としている。
【0014】
請求項5の発明は、前記エレベータホールの出入口の側部に設けられた発光体が、前記ホールドア装置と隣接して配置されていることを特徴としている。
【0015】
請求項6の発明は、前記かごの出入口の側部に設けられた発光体が、前記かごドア装置と隣接して配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、簡単な構成で的確に乗客に十分な注意を喚起して安全性を高めることができるとともに、高い静粛性も確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の一実施形態を示す、エレベータホールの外観図。
【図2】エレベータホールの平断面図。
【図3】かごの内部からそのかごの出入口を見たときの外観図。
【図4】制御回路の構成を示すブロック図。
【図5】作用の流れの前半を示すフローチャート。
【図6】作用の流れの後半を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1にはエレベータホール1の外観図を、図2にはエレベータホール1の平断面図をそれぞれ示してある。
【0019】
建屋の各階のエレベータホール1における壁面2には、その内側の昇降路3に通じる出入口4が設けられている。出入口4は三方枠5を備えている。三方枠5は一対の側壁部6と、これら側壁部6の上部間に架設された天板部7とで門形に構成されている。
【0020】
出入口4の背面部には、この出入口4を開閉するホールドア装置8が設けられている。ホールドア装置8は、例えば一対のドアパネル8a,8bが左右に移動して出入口4を開閉する両開き式構造となっている。各ドアパネル8a,8bは、出入口4の背面下部に据付けられた敷居9の上に配置され、その敷居9に沿って移動する。
エレベータホール1の壁面2には、出入口4の側方部に位置してホール操作盤12が取り付けられ、このホール操作盤12に乗客が操作するかご呼びボタン13が設けられている。
【0021】
壁面2の内側の昇降路3内には、図2に示すように、かご14が吊り下げられ、このかご14が昇降路3内で昇降移動し、エレベータホール1のかご呼びボタン13の操作に応じてかご14がそのエレベータホール1に移動して着床停止する。
かご14には前面に出入口15が設けられている。図3には、かご14の内部から出入口15を見た外観図を示してある。かご14の出入口15は両側に出入口柱16を有し、これら出入口柱16と接近して出入口15の外側にかごドア装置17が設けられている。かごドア装置17は、ホールドア装置8と対応するように一対のドアパネル17a,17bを備え、これらドアパネル17a,17bが左右に移動して出入口15を開閉する両開き式構造となっている。出入口15の下部外側には敷居18が据え付けられ、この敷居18の上にドアパネル17a,17bが配置され、これらドアパネル17a,17bが敷居18に沿って左右に移動する。
かご14の内側の壁面にはかご操作盤20が設けられ、このかご操作盤20に行先階を登録するための複数の行先階ボタン21やドア開閉ボタン22などが配設されている。
【0022】
エレベータホール1の出入口4及びかご14の出入口15にはそれぞれ発光体25,26が設けられている。これら発光体25,26は、例えばシート状をなす有機EL(エレクトロルミネッセンス)やシート部材に光源としての多数の発光ダイオードを配設してなるもので、出入口4,15の両側部にホールドア装置8のドアパネル8a,8b及びかごドア装置17のドアパネル17a,17bと隣接するように取り付けられている。
【0023】
エレベータホール1の出入口4に設けられた発光体25は、三方枠5における両側の側壁部6に、出入口4の高さ方向に連続して延び、出入口4の中央側に向くように取り付けられ、かご14の出入口15に設けられた発光体26は、各出入口柱16の壁面に出入口15の高さ方向に連続して延び、出入口15の中央側に向くように取り付けられている。
【0024】
図4には制御回路を示してある。30はエレベータの運行を制御する制御手段としての制御盤で、この制御盤30にホール操作盤12のかご呼びボタン13、かご操作盤20の行先階ボタン21、ドア開閉ボタン22、ホールドア装置8、各発光体25,26が接続されている。
【0025】
次に、作用について図5及び図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0026】
エレベータを利用する乗客が例えば建屋のA階のエレベータホール1においてかご呼びボタン13を操作すると(S1)、その信号が制御盤30に送られ、この信号に基づいて制御盤30による制御でかご14がA階のエレベータホール1に向って移動するとともに、A階のエレベータホール1における出入口4の発光体25が点灯する(S2)。発光体25は例えば赤色に発光する。
【0027】
かご14がA階のエレベータホール1に到着すると(S3)、前記発光体25が制御盤30による制御で連続の点灯状態から点滅の点灯状態に変化する(S4)。そして、発光体25が点滅しているときに、制御盤30による制御でかごドア装置17及びこれに連動してホールドア装置8が開き(S5)、各出入口4,15が開放される。エレベータホール1の乗客は開放された出入口4,15を通ってかご14に乗り込み(S6)、行先階ボタン21を操作して行先階を登録する(S7)。行先階の登録があると、ホールドア装置8及びかごドア装置17が閉じ(S8)、出入口4,15が閉鎖される。
【0028】
ホールドア装置8及びかごドア装置17が閉じた後には、A階のエレベータホール1の発光体25が消灯し(S9)、また乗客が乗り込んだかご14内の発光体26が点灯する(S10)。さらにかご14が目的階に向って移動し(S11)、かご14が目的の行先階に到着すると(S12)、前記発光体26が制御盤30による制御で連続の点灯状態から点滅の点灯状態に変化する(S13)。そして、発光体26が点滅しているときに、制御盤30による制御でかごドア装置17及びこれに連動してホールドア装置8が開き(S14)、出入口4,15が開放される。
【0029】
そして、かご14内の乗客が出入口4,15を通って目的階のエレベータホール1に降りる(S15)。乗客が降りた後には、かごドア装置17及びホールドア装置8が閉じ(S16)、出入口4,15が閉鎖される。かごドア装置17及びホールドア装置8が閉じた後には、かご14の発光体26が消灯し(S17)、かご14が次のかご呼びに応じるエレベータホール1に向って移動する。
【0030】
このように、エレベータホール1において乗客がかご呼びボタン13を操作すると、そのエレベータホール1における出入口4の両側の発光体25がまず連続点灯してホールドア装置8に対する注意が喚起され、さらにかご14がそのエレベータホール1に到着してホールドア装置8が開きかけるときに、発光体25が連続点灯から点滅状態に変化してより強く注意が喚起され、このため乗客はホールドア装置8の開きの動作に十分に注意を払うようになり、したがって乗客の手などがホールドア装置8と出入口4との間の隙間に引き込まれるような危険を的確に防止して安全性を高めることができる。
【0031】
また、エレベータホール1からかご14に乗客が乗り、行先階ボタン21を操作すると、かご14の出入口15の両側の発光体26が連続点灯してかごドア装置17に対する注意が喚起され、さらにかご14が目的の行先階に到着してかごドア装置17が開きかけるときに、発光体26が連続点灯から点滅状態に変化してより強く注意が喚起され、このため乗客はかごドア装置17の開きの動作に十分に注意を払うようになり、したがって乗客の手などがかごドア装置17と出入口15との間の隙間に引き込まれるような危険を的確に防止して安全性を高めることができる。
【0032】
そして発光体25,26の点灯により注意を喚起する方式であるから、アナウンスの場合と異なり、エレベータホール1の周辺が騒がしくならず、静粛性を十分に保つことができ、したがってホテルや病院病棟などのような特に高い静粛性が求められる施設であっても問題なく適用することができる。
【0033】
なお、各発光体の点灯状態の変化は、連続点灯から点滅点灯に変える形態と併せて、さらに連続点灯時には青色に、点滅点灯時には赤色に点灯させるような異なる色を発光させる変化を組み合わせることも可能であり、これにより注意喚起精度をより高めることができる。また、エレベータホールのかご呼びボタンを車いす利用の乗客が操作したときに、それを検知して発光体を通常のかご呼びの場合と異なる形態で点灯させて差別化を図るようにすることも可能である。
【0034】
また、前記実施形態では、エレベータホール及びかごの各ドア装置がそれぞれ一対のドアパネルが左右に移動する両開き式構造となっているが、一つのドアパネルが左右に移動する片開き式のドア装置、あるいは複数のドアパネルが前後に段違い状に配置され、その複数のドアパネルが同じ方向に異なる速度で移動する多段速片開き式のドア装置などであってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…エレベータホール
3…昇降路
4…エレベータホールの出入口
5…三方枠
8…ホールドア装置
8a.8b…ドアパネル
12…ホール操作盤
13…かご呼びボタン
14…かご
15…かごの出入口
16…出入口柱
17…かごドア装置
17a.17b…ドアパネル
20…かご操作盤
21…行先階ボタン
22…ドア開閉ボタン
25…エレベータホールの発光体
26…かごの発光体
30…制御盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋のエレベータホールに設けられた出入口と、
前記出入口を開閉するホールドア装置と、
前記出入口の側部に設けられた発光体と、
前記エレベータホールにおいて乗客によるかご呼びの操作が行なわれるときに、前記発光体を点灯させ、かご呼びの操作に応じて前記エレベータホールにかごが到着して前記ホールドア装置が開くときに前記発光体の点灯状態を変化させる制御を行なう制御手段と、
を具備することを特徴とするエレベータの出入口安全装置。
【請求項2】
建屋の昇降路内を昇降移動するかごに設けられた出入口と、
前記出入口を開閉するかごドア装置と、
前記出入口の側部に設けられた発光体と、
前記かご内に乗り込んだ乗客による行先階登録の操作が行なわれたときに、前記発光体を点灯させ、行先階登録の操作に応じてかごがその行先階に到着して前記かごドア装置が開くときに前記発光体の点灯状態を変化させる制御を行なう制御手段と、
を具備することを特徴とするエレベータの出入口安全装置。
【請求項3】
請求項1に記載の安全装置及び請求項2に記載の安全装置を共に備えることを特徴とするエレベータの出入口安全装置。
【請求項4】
前記発光体の点灯状態の変化は、連続点灯状態から点滅点灯状態に変わる変化であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のエレベータの出入口安全装置。
【請求項5】
前記エレベータホールの出入口の側部に設けられた発光体は、前記ホールドア装置と隣接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータの出入口安全装置。
【請求項6】
前記かごの出入口の側部に設けられた発光体は、前記かごドア装置と隣接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータの出入口安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−46468(P2011−46468A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195590(P2009−195590)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】