説明

エレベータの出入口装置

【課題】本発明は、細い紐状の異物がエレベータドアに挟まったままの状態でかごが走行を開始したことをより確実に検出することができるエレベータの出入口装置を得ることを目的とするものである。
【解決手段】上枠5,12には、開口5a,12aが設けられている。開口5a,12aは、全戸閉状態のエレベータドアの戸当たり側端部に対向する部分に設けられている。上枠5,12内には、エレベータドア間に挟まれた紐状の異物を検出する検出スイッチ21が設けられている。検出スイッチ21は、開口5a,12aに臨むように配置された接触棒22を有している。検出スイッチ21は、開口5a,12aから上枠5,12内に入った異物により接触棒22が変位されることによって操作される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、出入口の上部に設けられた上枠を有する出入口枠を備えたエレベータの出入口装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータの安全装置では、細長く軟らかい紐状の物体がドアに挟まれたことを検出するため、ドアに挟まれた物体が擦れ動くことで発せられる固有の振動音を検出するセンサが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−312510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のエレベータの安全装置では、細くて表面の摩擦が少ない物体がエレベータドアに挟まれた場合に、検出に必要な音が発生しない可能性がある。また、物体が挟まれる位置によっては、かごが動き出しても音がセンサで検出されない可能性がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、細い紐状の異物がエレベータドアに挟まったままの状態でかごが走行を開始したことをより確実に検出することができるエレベータの出入口装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータの出入口装置は、全戸閉状態のエレベータドアの戸当たり側端部に対向する部分に開口が設けられた上枠を有する出入口枠、及び開口に臨んで上枠内に設けられ、開口から上枠内に異物が入ることにより操作される検出スイッチを備えている。
【発明の効果】
【0007】
この発明のエレベータの出入口装置は、細い紐状の異物がエレベータドアに挟まったままでかごが移動されると、エレベータドアの戸当たり側端部に沿って異物が移動して開口に引き込まれ、検出スイッチが操作されるので、細い紐状の異物がエレベータドアに挟まったままの状態でかごが走行を開始したことをより確実に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるエレベータの乗場出入口装置を示す正面図である。図において、乗場出入口1は、エレベータドアである一対の乗場ドア2により開閉される。また、乗場出入口1の左右の側部及び上部には、出入口枠としての乗場三方枠3が設けられている。乗場三方枠3は、乗場出入口1の左右の側部に設けられた一対の乗場出入口縦枠4a,4bと、乗場出入口1の上部に設けられた水平な乗場出入口上枠5とを有している。
【0009】
乗場出入口上枠5の中央部には、乗場側開口(切欠)5aが設けられている。乗場側開口5aは、全戸閉状態の乗場ドア2の戸当たり側端部に対向する部分に設けられている。また、乗場壁には、乗場ボタン装置6が設置されている。
【0010】
図2は実施の形態1によるエレベータのかご出入口装置を示す正面図である。図において、かご7には、かご出入口8が設けられている。かご出入口8は、エレベータドアである一対のかごドア9により開閉される。また、かご出入口8の左右の側部及び上部には、かご出入口枠10が設けられている。かご出入口枠10は、かご出入口8の左右の側部に設けられた一対のかご出入口縦枠11a,11bと、かご出入口8の上部に設けられた水平なかご出入口上枠12とを有している。
【0011】
かご出入口上枠12の中央部には、かご側開口(切欠)12aが設けられている。かご側開口12aは、全戸閉状態のかごドア9の戸当たり側端部に対向する部分に設けられている。また、かご室壁には、かご操作盤13が設置されている。
【0012】
図3は図1及び図2の乗場出入口上枠5及びかご出入口上枠12の内側を示す斜視図である。上枠5,12内には、乗場ドア2及びかごドア9間に挟まれた紐状の異物を検出する検出スイッチ21が設けられている。検出スイッチ21は、開口5a,12aに臨むように配置された接触棒(操作部)22を有している。また、検出スイッチ21は、開口5a,12aから上枠5,12内に入った異物により接触棒22が変位されることによって操作される。
【0013】
検出スイッチ21は、電線23を介してエレベータ制御装置30に接続されている。エレベータ制御装置30は、検出スイッチ21により異物が検出されると、かご7を非常停止させ、異常の発生を監視盤(図示せず)に発報する。
【0014】
上枠5,12には、開口5a,12aを塞ぐようにカバー24が設けられている。カバー24は、異物により押圧されることにより上枠5,12内に異物が入ることを許容する。このようなカバー24としては、例えば異物が当たると割れるように切り込みが入れられたプラスチック製の板が挙げられる。また、開口5a,12aと同じ形状の鋼板を上枠5,12内から粘着テープ等で貼り付けたものなどでもよい。
【0015】
上枠5,12内には、開口5a,12aから上枠5,12内に入った異物を切断する切断手段としてのカッター25が、開口5a,12aに臨んで設けられている。接触棒22及びカッター25は、開口5a,12aから上枠5,12内に入った異物が先に接触棒22に当たるように配置されている。また、カッター25の刃は、水平な面に対して傾斜している。
【0016】
ここで、図4は図1の乗場ドア2間及び図2のかごドア9間に紐状の異物が挟まれたままかご7が上昇した状態を示す説明図である。紐状の異物として、例えばペット用の首紐26が乗場ドア2及びかごドア9に挟まれた状態でかご7が上昇されると、図4に示すように、乗場では首紐26が乗場ドア2間の隙間に沿って上方へ引き上げられ、首紐26の中間部が乗場側開口5aのカバー24に当接し乗場側開口5aから乗場出入口上枠5内に入り込む。この後、首紐26により接触棒22が操作され、カッター25により首紐26が切断される。
【0017】
一方、図5は図1の乗場ドア2間及び図2のかごドア9間に紐状の異物が挟まれたままかご7が下降した状態を示す説明図である。首紐26が乗場ドア2及びかごドア9に挟まれた状態でかご7が下降されると、図5に示すように、かご7では首紐26がかごドア9間の隙間に沿って上方へ引き上げられ、首紐26の中間部がかご側開口12aのカバー24に当接しかご側開口12aからかご出入口上枠12内に入り込む。この後、首紐26により接触棒22が操作され、カッター25により首紐26が切断される。
【0018】
図6は図3のエレベータ制御装置30の動作を示すフローチャートである。エレベータ制御装置30は、かご7及び複数の乗場に設けられた検出スイッチ21が1つでも作動したかどうかを監視している(ステップS1)。そして、検出スイッチ21が作動すると、ブレーキを作動させてかご7を非常停止させる(ステップS2)。そして、異常の発生を監視盤に発報する(ステップS3)。
【0019】
監視盤に異常が発報されると、保守員により安全確認及び機器の点検が行われ、機器の故障や破損があればその箇所の修理が行われる。そして、運転に支障がない状態になったことを確認した上で通常運転が再開される。
【0020】
このようなエレベータの乗場出入口装置では、細い紐状の異物が乗場ドア2及びかごドア9に挟まったままでかご7が移動されると、ドア2,9の戸当たり側端部に沿って異物が移動して開口5a,12aに引き込まれ、検出スイッチ21が操作されるので、細い紐状の異物がドア2,9に挟まったままの状態でかご7が走行を開始したことをより確実に検出することができる。
【0021】
また、開口5a,12aにはカバー24を設けたので、意匠性の低下を防止できるとともに、いたずらによる誤動作を防止することができる。
さらに、開口5a,12aの内側にカッター25を配置したので、紐状の異物を切断して機器の損傷を防止することができる。
【0022】
なお、切断手段はカッター25に限定されるものではなく、紐状の異物をより確実に切断するために種々の変更が可能である。
また、検出スイッチ21やカッター25は、必ずしも乗場出入口上枠5及びかご出入口上枠12の両方に設けなくてもよい。また、必ずしても全ての階の乗場出入口上枠5に設けなくてもよい。
さらに、上記の例では異物により機械的に操作される検出スイッチ21を示したが、これに限定されるものではなく、例えば光センサ等を用いた非接触式のスイッチであってもよい。
さらにまた、上記の例では、中央開き式のドア構造を示したが、この発明は、片開き式のドア構造に対しても適用できる。この場合、開口は、上枠下面の反戸袋側端部に設けられることになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施の形態1によるエレベータの乗場出入口装置を示す正面図である。
【図2】実施の形態1によるエレベータのかご出入口装置を示す正面図である。
【図3】図1及び図2の乗場出入口上枠及びかご出入口上枠の内側を示す斜視図である。
【図4】図1の乗場ドア間及び図2のかごドア間に紐状の異物が挟まれたままかごが上昇した状態を示す説明図である。
【図5】図1の乗場ドア間及び図2のかごドア間に紐状の異物が挟まれたままかごが下降した状態を示す説明図である。
【図6】図3のエレベータ制御装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0024】
2 乗場ドア、3 乗場三方枠(出入口枠)、5 乗場出入口上枠、5a 乗場側開口、7 かご、9 かごドア、10 かご出入口枠、12 かご出入口上枠、12a かご側開口、21 検出スイッチ、24 カバー、25 カッター(切断手段)、26 首紐(異物)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全戸閉状態のエレベータドアの戸当たり側端部に対向する部分に開口が設けられた上枠を有する出入口枠、及び
前記開口に臨んで前記上枠内に設けられ、前記開口から前記上枠内に異物が入ることにより操作される検出スイッチ
を備えていることを特徴とするエレベータの出入口装置。
【請求項2】
前記開口を塞ぐように前記上枠に設けられ、異物により押圧されることにより前記上枠内に異物が入ることを許容するカバー
をさらに備えていることを特徴とする請求項1記載のエレベータの出入口装置。
【請求項3】
前記開口に臨んで前記上枠内に設けられ、前記開口から前記上枠内に入った異物を切断する切断手段
をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータの出入口装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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