説明

エレベータの制御装置及び制御方法、並びに、既設エレベータの改修方法

【課題】携帯電話会社による緊急地震速報の一斉同報配信サービスを利用することにより、地震発生時により早く地震時管制運転に移行させることができる地震時管制システムを、簡単な構成で安価に構築できるようにする。
【解決手段】携帯電話会社から配信される緊急地震速報を受信する携帯電話端末14をエレベータの設置現場ビルに設ける。上記携帯電話端末14に、緊急地震速報を抽出して外部に出力する緊急地震速報抽出部20、及び、この外部に出力された緊急地震速報に関する情報を記憶する記憶部21を付加する。また、携帯電話端末14から出力された緊急地震速報に関する情報に基づいて、地震時管制運転に移行させるための信号を制御盤8に対して出力する制御端末15を上記設置現場ビルに設置し、この制御端末15を、携帯電話端末14及び制御盤8間に適切に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯電話会社による緊急地震速報の一斉同報配信サービスを利用してエレベータを制御する制御装置及び制御方法、並びに、上記一斉同報配信サービスを利用してエレベータの制御が行えるように既設エレベータを改修する改修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震感知器を備えたエレベータでは、地震の揺れ(主要動・S波)を感知すると、その地震の規模に応じて最寄り階停止といった乗客を救出するための地震時管制運転が行われる。しかし、このようなエレベータでは、地震の揺れが実際に発生した後に地震時管制運転が開始されるため、地震の揺れによってロープ類の引っ掛かり等が生じると、機器類の破損や閉じ込めが発生する恐れがあった。
【0003】
これに対し、地震の初期微動(P波)を感知するP波センサをエレベータに設置することにより、S波が到達するよりも早く地震時管制運転に移行するように構成したエレベータも実現されている。しかし、P波センサが非常に高価であるため、上記動作を行わせる装置の装備率は、未だ低い状態にあるというのが現実である。また、急行ゾーンが設定されているエレベータ(中間階に非停止階があるエレベータ)では、P波が感知されるよりも早く地震発生の情報を取得して、地震時管制運転に移行したいという要望も多い。
【0004】
一方、最近では、日本全国に張り巡らされた地震観測網によって得られた緊急地震速報を、地震発生直後にインターネットや衛星通信等を利用して各地に配信することにより、地震のS波到達前に当該地震への有効な対策を講じるといった様々な取り組みや提案が行われている。この緊急地震速報は地震発生直後に配信されるため、直下型地震が発生した場合には有効利用することはできないが、緊急地震速報を受信してからS波が到達するまでに比較的時間が掛かる場合、即ち、遠隔地で比較的大きな地震が発生した場合には、受信した緊急地震速報を有効利用することにより、地震災害を未然に防止することが可能となる。
【0005】
このような緊急地震速報を利用したエレベータの従来技術として、緊急地震速報を受信した場合に、この緊急地震速報に含まれる震源地及び地震発生時刻の情報から現在地における地震のS波の到達時刻を予想し、その予想結果に基づいて、エレベータの地震時管制運転を制御するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
なお、エレベータに関する従来技術ではないが、携帯電話等の端末を利用して上記緊急地震速報を受信するためのシステムや、その際に利用可能な課金システムも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2004−224469号公報
【特許文献2】特開2006−145234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1記載のものでは、震源地がエレベータ設置ビルから比較的離れた場所であれば、P波が到達するよりも早く地震時管制運転に移行することが可能となり、急行ゾーンが設定されているエレベータ等に対しては、有効な手段となり得る。しかし、特許文献1記載のシステムでは、緊急地震速報を受信するための専用の受信手段をエレベータに設置する必要があるとともに、この受信手段及びエレベータ周辺に、インターネット回線や衛星通信回線といった専用回線のための配線を行わなければならず、その工事に多大な時間と労力を要するという問題があった。また、緊急地震速報を受信するために、衛星通信回線等の専用回線の高価な使用料が発生し、ランニングコストが嵩むといった問題もあった。
【0009】
なお、特許文献2記載のものは、携帯電話等の利便性の高い端末を利用して上記緊急地震速報を受信するためのシステムや、その際に利用される課金システム等が記載されているのみであり、受信した緊急地震速報をエレベータ制御に利用するための具体的手段に関しては、何ら開示されていない。
【0010】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、携帯電話会社による緊急地震速報の一斉同報配信サービスを利用することにより、地震発生時により早く地震時管制運転に移行させることができる地震時管制システムを、簡単な構成で安価に構築できるエレベータの制御装置及び制御方法、並びに、上記地震時管制システムを簡単な構成で安価に構築できる既設エレベータの改修方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係るエレベータの制御装置は、エレベータの設置現場ビルに設けられ、携帯電話会社から配信される緊急地震速報を受信する携帯電話端末と、携帯電話端末に設けられ、携帯電話端末が受信した緊急地震速報を抽出して携帯電話端末の外部に出力する緊急地震速報抽出部と、携帯電話端末に設けられ、緊急地震速報抽出部によって携帯電話端末の外部に出力された緊急地震速報に関する情報を記憶する記憶部と、設置現場ビルに設けられるとともに、携帯電話端末及びエレベータの制御盤間に接続され、携帯電話端末から出力された緊急地震速報に関する情報に基づいて、要時に、エレベータを地震時管制運転に移行させるための信号を制御盤に対して出力する制御端末と、を備えたものである。
【0012】
この発明に係るエレベータの制御方法は、携帯電話会社から配信される緊急地震速報を受信する携帯電話端末が、エレベータの設置現場ビルに設けられたエレベータの制御方法であって、携帯電話端末が受信した緊急地震速報を抽出して携帯電話端末の外部に出力するステップと、携帯電話端末の外部に出力された緊急地震速報に関する情報を、携帯電話端末内の記憶部に記憶させるステップと、携帯電話端末から出力された緊急地震速報に関する情報に基づいて、要時に、地震時管制運転に移行させるための信号をエレベータの制御盤に対して出力するステップと、を備えたものである。
【0013】
この発明に係るエレベータの改修方法は、携帯電話会社から配信される緊急地震速報を受信する携帯電話端末に、携帯電話端末が受信した緊急地震速報を抽出して携帯電話端末の外部に出力する緊急地震速報抽出部、及び、緊急地震速報抽出部によって携帯電話端末の外部に出力された緊急地震速報に関する情報を記憶する記憶部を、付加するステップと、携帯電話端末を、既設エレベータの設置現場ビルに設置するステップと、携帯電話端末から出力された緊急地震速報に関する情報に基づいて、要時に、エレベータを地震時管制運転に移行させるための信号を出力する制御端末を、携帯電話端末及び既設エレベータの制御盤間に接続するステップと、制御端末を、設置現場ビルに設置するステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、携帯電話会社による緊急地震速報の一斉同報配信サービスを利用することにより、地震発生時により早く地震時管制運転に移行させることができる地震時管制システムを、簡単な構成で安価に構築できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
緊急地震速報に関しては、2007年10月1日から一般向けのサービス提供が開始されると発表されている。これに伴い、各種携帯電話会社により、震度4以上の大きな揺れが予想される地域の携帯電話端末に対して、緊急地震速報を一斉同報配信するサービスが計画されている。本願の発明は、携帯電話会社による緊急地震速報の一斉同報配信サービスを利用してエレベータを制御することを特徴とする。
以下に、添付の図面に従って、本願の発明をより詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0016】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの地震時管制システムを示す全体構成図、図2はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置を示す構成図、図3この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置の機能の一部を説明するための図である。
【0017】
図1及び図2において、1は気象庁2の緊急地震通報網であり、気象庁2は、各地に設置された多数の地震計3からの地震情報に基づいて、緊急地震速報を発報する。4は携帯電話会社、5は携帯電話会社4の基地局である。携帯電話会社4は、気象庁2から緊急地震速報を受信すると、緊急地震速報の一斉同報サービスを行うため、例えば、震度4以上の大きな揺れが予想されている地域の基地局5から、自社の携帯電話端末に対して緊急地震速報6を一斉配信する。
【0018】
7は各ビル等からなるエレベータの設置現場を示している。このエレベータ設置現場7には、エレベータの各種制御を司るエレベータ制御盤8や、P波センサ9及び低感知地震計10からなる地震計11が設置されている。P波センサ9は、地震のP波を感知することにより、動作接点12を閉成して、制御盤8にP波信号を入力させる。また、低感知地震計10は、所定値以上の地震の揺れ(S波)を感知することにより、動作接点13を閉成して、制御盤8に低感知地震計信号を入力させる。なお、地震計11が動作した際の制御盤8の制御は従来と同様であり、例えば、P波信号が入力された場合には、最寄り階停止後、所定時間(例えば、1分)待機した後にエレベータを通常運転に復帰させる地震時管制運転が行われる。また、低感知地震計信号が入力された場合には、最寄り階停止後、エレベータを運転休止状態とする地震時管制運転が行われる。
【0019】
エレベータの設置現場7には、上記制御盤8及び地震計11の他にも、携帯電話端末14、制御端末15が設置されている。設置現場7に設けられたこの携帯電話端末14は、携帯電話会社4から配信される緊急地震速報6を受信することができる機能を有しており、例えば、エレベータの機械室や昇降路内、乗場、ピット等の電波状態が良い位置に配置及び固定される。制御端末15は、携帯電話端末14と制御盤8との間に接続されており、携帯電話端末14が緊急地震速報6を受信した場合に、要時に、エレベータ制御盤8に対して、地震時管制運転に移行させるための所定の信号を出力する機能を有する。なお、図2には、携帯電話端末14による緊急地震速報6の受信が検出されると、動作接点16が閉成されることにより、制御盤8にP波信号が入力される構成が示されている。
【0020】
次に、上記携帯電話端末14の具体的構成について説明する。
携帯電話端末14は、例えば、携帯電話用の電波を送受信するための無線送受信部17と、各種制御を行う制御部18と、緊急地震速報受信部19と、緊急地震速報抽出部20及びログ記憶部21、ログ要求抽出部22、ログ処理部23、メール送信部24を有する追加機能部25と、外部I/Fからなる送受信部26とを備えている。なお、上記無線送受信部17、制御部18、送受信部26は、従来からある機能であるため、その詳細な説明は省略する。
【0021】
緊急地震速報受信部19は、携帯電話会社4から配信される緊急地震速報6を受信するためのものである。なお、緊急地震速報6が例えばメール配信される場合、緊急地震速報6(メール)を単に受信する機能だけが携帯電話端末14に必要となるのであれば、従来からある携帯電話端末でも可能であり、特殊な機能を有する緊急地震速報受信部19が必要になることはない。しかし、緊急地震速報6は特に緊急性を有するため、例えば、特定のメールボックスに格納したり、受信時に特別な動作(音声案内、バイブレーション、LEDの点滅等)を行ったりする等の処理が携帯電話端末14内で必要になるものと考えられる。緊急地震速報受信部19は、上記処理を行うために備えられたものであり、上記例で言えば、受信したメールを選別して緊急地震速報6を特定する機能や、緊急地震速報6のみを記憶するメールボックス(記憶手段)の機能に相当する。
【0022】
追加機能部25は、携帯電話端末14をエレベータ制御用に利用するために、市販の携帯電話端末14に新たに追加されるものであり、例えば、その全てがソフトウェアによって構成される。緊急地震速報抽出部20は、携帯電話端末14が緊急地震速報6を受信した際に、例えば、緊急地震速報受信部19から、受信された緊急地震速報6を抽出し、制御端末15に対してその情報(緊急地震速報6に関する情報)を出力する機能を有する。なお、携帯電話端末14と制御端末15とは、各送受信部26及び27を介して専用線28で接続されており、上記緊急地震速報6に関する情報は、この専用線28を介して制御端末15に入力される。そして、制御端末15は、携帯電話端末14から出力された上記情報に基づいて、携帯電話端末14が受信した緊急地震速報6の内容を判定し、所定の動作を実施する。
【0023】
また、ログ記憶部21は、緊急地震速報抽出部20によって制御端末15に出力された上記緊急地震速報6に関する情報を、携帯電話端末14内に記憶させる機能を有する。即ち、上記情報が携帯電話端末14から送信されることによって、携帯電話端末14内にログを残すことができる。図3はこのログイメージを示したものであり、例えば、日付時刻、イベント内容、S波到達予想時刻、予想される震度、そのエリア情報等のそれぞれが関連付けて記憶されている。
【0024】
なお、ログ記憶部21に記憶される情報は、携帯電話端末14が受信した緊急地震速報6の内容と、その内容の緊急地震速報6を制御端末15に送信したという事実とが含まれる。したがって、例えば、図3に示すイベント内容の項目を確認すれば、その直後に行われたエレベータの動作を間接的に知ることができる。なお、緊急地震速報6には、図3に示すように、実際に地震が発生した際に配信される情報の他、例えば、誤報を取り消すためのキャンセル報や、動作確認をするためのテスト報等も含まれる。
【0025】
一方、ログ要求抽出部22、ログ処理部23、メール送信部24は、特定の者(例えば、エレベータ保守員)が、ログ記憶部21に記憶された各種情報を、携帯電話端末14から(自分の端末に)取得することができるように備えられたものである。具体的に、上記ログ要求抽出部22は、携帯電話端末14が受信したメールの中から、ログ記憶部21内の情報提供を要求するメール(以下、「ログ要求」ともいう)を抽出する機能を有する。このログ要求抽出部22は、例えば、予め設定されているアドレス及び件名と一致する受信メールを、保守員等からのログ要求として抽出する。
【0026】
そして、ログ要求抽出部22によってログ要求が抽出されると、ログ処理部23及びメール送信部24は、ログ記憶部21内の情報を付加したメールを、上記抽出されたメールに対して返信する。ここで、ログ処理部23は、例えば、所定の条件に基づいて、返信メールに添付するログを作成(或いは、ログをメールの本文に記載)する機能を、メール送信部24は、送信者にメールを返信するための機能を有している。
【0027】
次に、上記構成を有するエレベータの制御装置の具体的な動作について説明する。
図4はこの発明の実施の形態1における携帯電話端末の動作フローを示す図、図5はこの発明の実施の形態1における制御端末の動作フローを示す図である。
【0028】
携帯電話端末14では、先ず、緊急地震速報抽出部20により、緊急地震速報6の受信チェックが行われる(S101)。ここで、緊急地震速報6の受信が確認されると(S102)、次に、受信した緊急地震速報6がキャンセル報であるか否かが判断される(S103)。S103で緊急地震速報6がキャンセル報ではない場合、携帯電話端末14によって受信された緊急地震速報6が緊急地震速報抽出部20によって抽出され、制御端末15に対して送信される(S104)。また、制御端末15への送信が行われることによって、ログが保存される(S105)。即ち、緊急地震速報抽出部20によって制御端末15に出力された上記緊急地震速報6に関する情報が、ログ記憶部21に記憶される。なお、この時、タイマー(図示せず)のカウントが開始される(S106)。
【0029】
一方、S103において緊急地震速報6がキャンセル報であると判断されると、制御端末15に対してキャンセル報が送信される(S107)。また、制御端末15への送信が行われることによってログが保存され(S108)、タイマーのカウントが停止される(S109)。
【0030】
S102において緊急地震速報6の受信が確認できない場合には、次に、タイマーのカウントを所定値と比較することによって、タイムアウトの有無が判定される(S110)。ここで、タイムアウト有り、即ち緊急地震速報6の受信から所定時間経過したことが判定されると、制御端末15に対してキャンセル報が送信され、ログが保存される(S111)。
【0031】
また、S110においてタイムアウト無しが判定されると、次に、ログ要求の受信チェックが行われる(S112)。即ち、先ず、メールの受信状態が確認され(S113)、受信したメールがある場合には、そのメールがログ要求であるかが判定される。具体的には、上述したように、アドレス(送信者)及び件名が予め設定されているものと一致するか否かが判断される(S114)。そして、条件に該当するものをログ要求として抽出し、ログ記憶部21内の情報を付加したメールを、上記抽出されたメールに対して返信する(S115)。
【0032】
一方、制御端末15では、図5に示すように、携帯電話端末14から出力される上記緊急地震速報6に関する情報の受信チェックが行われる(S201)。ここで、上記情報の受信が確認されると(S202)、次に、その情報がキャンセル報であるか否かが判断される(S203)。S203においてキャンセル報ではないと判断されると、エレベータを地震時管制運転に移行させるための信号を制御盤8に対して出力するため、動作接点16が閉成される。一方、S203においてキャンセル報と判断された場合には、動作接点16が開成され、制御盤8へのP波信号の入力を遮断する。
【0033】
この発明の実施の形態1によれば、携帯電話会社4による緊急地震速報6の一斉同報配信サービスをエレベータ制御用に利用することにより、地震発生時により早く地震時管制運転に移行させることができる地震時管制システムを、簡単な構成で、且つ安価に構築できるようになる。即ち、従来のように高価な受信手段や専用回線を準備する必要はなく、単に、追加機能部25が付加された携帯電話端末14、及び制御端末15を用意するだけで、上記地震時管制システムを構築できる。また、従来の専用回線を引くための工事等も不要で、工期の短縮、コスト削減が実現できるとともに、設置後も携帯電話端末14の基本料金程度しか費用が掛からず、ランニングコストを大幅に抑えることが可能となる。
【0034】
更に、緊急地震速報抽出部20によって制御端末15に出力された緊急地震速報6に関する情報を、携帯電話端末14内に記憶させることができるため、地震後のエレベータ動作を確認したい場合や、ビルのオーナやエレベータ利用者からの問合せに対して対応する場合等に、エレベータ保守員がログ記憶部21内の記憶情報を活用でき、エレベータのサービス向上を図ることが可能となる。また、エレベータ保守員等の特定者は、遠隔地にいる場合であっても、自分の携帯電話端末等を使用して、ログ記憶部21内の各種情報を取得することができるため、例えば、緊急地震速報が発報された後に問合せが殺到した場合であっても、各エレベータに対する迅速な対応が可能となる。
【0035】
また、携帯電話端末14への追加機能部25の付加、携帯電話端末14及び制御端末15の設置、及び各配線といった簡単な作業のみによって、上記構成の地震時管制システムの構築が可能となる。したがって、新規エレベータへの適用は当然のこと、既設エレベータへの適用も、容易に且つ安価に実施することができる。
【0036】
即ち、既設エレベータに適用して上記地震時管制システムを構築する場合には、先ず、市販されている携帯電話端末であって、携帯電話会社4から配信される緊急地震速報6を受信可能なものに、追加機能部25の機能を付加し、その携帯電話端末14を、既設エレベータの機械室等の電波状態の良い場所に設置する。また、上記構成の制御端末15を、携帯電話端末14と既設エレベータの制御盤8との間に適切に接続し、その制御端末15を既設エレベータの設置現場7に設置する。かかる作業のみによって、上記効果を奏することができるようになる。
【0037】
なお、上記実施の形態1においては、P波センサ9を備えたエレベータについて説明したが、P波センサ9を備えていないエレベータであれば、制御端末15を制御盤8のP波センサ用I/Fに直接接続しても良い。かかる構成により、P波センサ9が備えられていないエレベータ或いは既設エレベータにも、P波センサ相当機能を低価格で提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベータの地震時管制システムを示す全体構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置の機能の一部を説明するための図である。
【図4】この発明の実施の形態1における携帯電話端末の動作フローを示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1における制御端末の動作フローを示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1 緊急地震通報網、 2 気象庁、 3 地震計、 4 携帯電話会社、
5 基地局、 6 緊急地震速報、 7 設置現場、 8 制御盤、
9 P波センサ、 10 低感知地震計、 11 地震計、 12 動作接点、
13 動作接点、 14 携帯電話端末、 15 制御端末、
16 動作接点、 17 無線送受信部、 18 制御部、
19 緊急地震速報受信部、 20 緊急地震速報抽出部、 21 ログ記憶部、
22 ログ要求抽出部、 23 ログ処理部、 24 メール送信部、
25 追加機能部、 26 送受信部、 27 送受信部、 28 専用線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの設置現場ビルに設けられ、携帯電話会社から配信される緊急地震速報を受信する携帯電話端末と、
前記携帯電話端末に設けられ、前記携帯電話端末が受信した緊急地震速報を抽出して前記携帯電話端末の外部に出力する緊急地震速報抽出部と、
前記携帯電話端末に設けられ、前記緊急地震速報抽出部によって前記携帯電話端末の外部に出力された緊急地震速報に関する情報を記憶する記憶部と、
前記設置現場ビルに設けられるとともに、前記携帯電話端末及びエレベータの制御盤間に接続され、前記携帯電話端末から出力された緊急地震速報に関する情報に基づいて、要時に、エレベータを地震時管制運転に移行させるための信号を前記制御盤に対して出力する制御端末と、
を備えたことを特徴とするエレベータの制御装置。
【請求項2】
携帯電話端末に設けられ、前記携帯電話端末が受信したメールの中から、記憶部内の情報提供を要求するメールを抽出する要求抽出部と、
前記要求抽出部によって抽出されたメールに対して、前記記憶部内の情報を付加して返信するメール送信部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータの制御装置。
【請求項3】
P波センサを備えていないエレベータにおいて、制御端末は、エレベータの制御盤のP波センサ用インターフェースに接続されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータの制御装置。
【請求項4】
携帯電話会社から配信される緊急地震速報を受信する携帯電話端末が、エレベータの設置現場ビルに設けられたエレベータの制御方法であって、
前記携帯電話端末が受信した緊急地震速報を抽出して前記携帯電話端末の外部に出力するステップと、
前記携帯電話端末の外部に出力された緊急地震速報に関する情報を、前記携帯電話端末内の記憶部に記憶させるステップと、
前記携帯電話端末から出力された緊急地震速報に関する情報に基づいて、要時に、地震時管制運転に移行させるための信号をエレベータの制御盤に対して出力するステップと、
を備えたことを特徴とするエレベータの制御方法。
【請求項5】
携帯電話端末が受信したメールの中から、記憶部内の情報提供を要求するメールを抽出するステップと、
情報提供を要求するメールとして抽出されたメールに対して、前記記憶部内の情報を付加して返信するステップと、
を備えたことを特徴とする請求項4に記載のエレベータの制御方法。
【請求項6】
携帯電話会社から配信される緊急地震速報を受信する携帯電話端末に、前記携帯電話端末が受信した緊急地震速報を抽出して前記携帯電話端末の外部に出力する緊急地震速報抽出部、及び、前記緊急地震速報抽出部によって前記携帯電話端末の外部に出力された緊急地震速報に関する情報を記憶する記憶部を、付加するステップと、
前記携帯電話端末を、既設エレベータの設置現場ビルに設置するステップと、
前記携帯電話端末から出力された緊急地震速報に関する情報に基づいて、要時に、エレベータを地震時管制運転に移行させるための信号を出力する制御端末を、前記携帯電話端末及び既設エレベータの制御盤間に接続するステップと、
前記制御端末を、前記設置現場ビルに設置するステップと、
を備えたことを特徴とする既設エレベータの改修方法。
【請求項7】
携帯電話端末が受信したメールの中から、記憶部内の情報提供を要求するメールを抽出する要求抽出部、及び、前記要求抽出部によって抽出されたメールに対して、前記記憶部内の情報を付加して返信するメール送信部を、前記携帯電話端末に付加するステップと、
を備えたことを特徴とする請求項6に記載の既設エレベータの改修方法。
【請求項8】
P波センサを備えていないエレベータにおいて、制御端末を、既設エレベータの制御盤のP波センサ用インターフェースに接続することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の既設エレベータの改修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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