説明

エレベータの制御装置及び制御方法、並びに既設エレベータの改修方法

【課題】エレベータが地震時管制運転に移行されて、かごが最寄り階へ向けて走行している場合に、乗場ドアの開閉スイッチの機能を阻害することなく、余震によって生じるドア係合装置の衝突を防止することができるようにする。
【解決手段】地震時管制運転を制御する制御部26、かご18の現在位置及び速度を演算するかご位置速度演算部27、かご18の全昇降工程のうちの一部が、要時にかごドア1の戸閉押付力を増大させる戸閉力増大区間として記録された位置記録部28を備える。そして、地震時管制運転においてかご18が戸閉力増大区間を走行していると判定された場合に、かごドア1の戸閉押付力を通常戸閉力よりも増大させるように動作指令を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地震時管制運転を行うエレベータの制御装置及びその制御方法、並びに既設エレベータを改修する改修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4及び図5は、一般的なエレベータのドア装置を示す正面図及び平面図である。図4及び図5において、1はエレベータのかご出入口を開閉するかごドアであり、一例として、両開き方式のものを示している。2はかごドア1を開閉駆動するドア駆動装置、3はかごドア1の開閉方向を案内するドアレール、4はかごドア1下端部の移動方向を案内するかご敷居、5はかごドア1やドア駆動装置2、ドアレール3等を支持するドア桁である。
【0003】
具体的に、かごドア1は、その上部にドアハンガ6が設けられており、このドアハンガ6に回動自在に設けられたドアローラ7が上記ドアレール3上を転動することにより、かごドア1は、その開閉方向が案内される。
【0004】
また、ドア駆動装置2は、例えば、ドア桁5の上面に設けられたドアモータ8、ドア桁5の上部両側に回動自在に設けられた駆動ローラ9及び返し車10、ドアモータ8及び駆動ローラ9に巻き掛けられた無端状の第1駆動ベルト11、駆動ローラ9及び返し車10に巻き掛けられた無端状の第2駆動ベルト12から構成される。そして、図4に示すように、一方のかごドア1のドアハンガ6を第2駆動ベルト12の上側に、他方のかごドア1のドアハンガ6を第2ベルト12の下側にそれぞれ連結することにより、ドアモータ8の回転力及び回転方向の制御によってかごドア1を開閉動作させる。なお、図4からも分かるように、かごドア1の全開状態及び全閉状態は、ドアモータ8の電気的な制御によって保持できる。
【0005】
上記はかごドア1の開閉動作についてであるが、エレベータの乗場出入口を開閉する乗場ドア13も、かごに設置された上記ドア駆動装置2によって開閉駆動されている。即ち、かごドア1及び乗場ドア13には、平面視対向するようにドア係合装置が設けられており、かごの着床時に、このドア係合装置が互いに係合することにより、ドア駆動装置2の駆動力が上記ドア係合装置を介して乗場ドア13に伝達され、乗場ドア13が開閉される。上記ドア係合装置は、例えば、乗場ドア13に設けられた係合ローラ14と、乗場側に突出するようにかごドア1に設けられ、かごの着床時に係合ローラ14の両側に配置される一対の係合ベーン15とから構成される。
【0006】
図6は一般的なエレベータのドア係合装置を示す正面図である。ドア係合装置は、かごの走行中に互いに干渉することがないように、かごドア1及び乗場ドア13の全閉時に、係合ローラ14とその両側の各係合ベーン15との間に、平面視所定の間隙が形成されるように構成されている。また、エレベータの乗場には施錠装置16が設けられており、乗場ドア13が、かごの着床時(かごドア1の開閉時)以外に開放されることを防止している(図6(a)参照)。
【0007】
上記施錠装置16は、かごドア1を開放する際のドア係合装置の係合動作によって、かごドア1の開放と共に同時に解錠される。即ち、かごドア1の戸開動作が開始されると、図6(a)に示す状態から係合ベーン15が図の右側に移動し、上側の係合ローラ14を付勢する。係合ローラ14は、下側の係合ローラ14を中心に乗場ドア13に回動自在に設けられているため、上側の係合ローラ14が係合ベーン15によって付勢されることにより、上下の係合ローラ14及びこの係合ローラ14に固定された施錠装置16の鍵部が、係合ベーン15が下側の係合ローラ14に接触するまで下側の係合ローラ14を中心に回転する。即ち、図6(b)に示す状態となって、かごドア1及び乗場ドア13の開放動作が可能となる。
【0008】
17は乗場ドア13の開閉状態を検出する開閉スイッチである。この開閉スイッチ17は、例えば、図6に示すように、乗場ドア13が全閉状態であって、施錠装置16が施錠状態である場合にON状態となる。即ち、開閉スイッチ17は、乗場ドア13が開放されたり、施錠装置16が解錠されたりすると、接点が開放されてOFF状態になる。なお、エレベータの通常運転において乗客の乗降のために戸開する場合、上記開閉スイッチ17は常にOFF状態になるが、かかる場合には、エレベータで特別な制御は行われない。一方、かごの走行時等に開閉スイッチ17のOFF状態が検出されると、安全確保のため、エレベータを緊急停止させる等の制御が一般に実施される。
【0009】
エレベータの通常運転時には、乗場ドア13が悪戯等で開放されない限り、開閉スイッチ17によって異常状態が検出されることはなく、安全回路が動作することは殆ど無い。しかし、エレベータの地震時管制運転、即ち、地震情報に基づいてかごを最寄り階に向けて走行させている場合には、余震の発生によって上記開閉スイッチ17が瞬時OFF状態となり、エレベータが緊急停止してしまうことがあった。即ち、かごが最寄り階付近に達した際に余震が発生すると、その揺れによってかごドア1が僅かに開放され、係合ベーン15と係合ローラ14とが衝突してしまうことがあった。かかる場合には、閉じ込めが発生し、乗客の救出のために多大な時間と労力とを要することとなっていた。
【0010】
上記問題を解決するための従来技術として、例えば、エレベータが地震時管制運転に移行されて、かごが最寄り階へ向けて走行している場合には、上記開閉スイッチがOFF状態となっても、オフディレータイマーの働きによって、かごを緊急停止させずに走行を継続させるようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。
【0011】
【特許文献1】実開平2−105968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1記載のものでは、エレベータが地震時管制運転に移行されると、オフディレータイマーが常時有効に設定されるため、かごの位置と関係の無い乗場の開閉スイッチがOFF状態になった場合に、かごの停止が大幅に遅れてしまうといった問題があった。また、余震の揺れが大きく上記開閉スイッチがOFF状態となった場合も、同様に、かごの停止が遅れるといった問題があった。
【0013】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、エレベータが地震時管制運転に移行されて、かごが最寄り階へ向けて走行している場合に、乗場ドアの開閉スイッチの機能を阻害することなく、余震によって生じるドア係合装置の衝突を防止することができるエレベータの制御装置及び制御方法、並びに、上記目的を達成するために既設エレベータを改修する改修方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に係るエレベータの制御装置は、地震情報に基づいてエレベータのかごの走行を制御する地震時管制運転機能を備えたエレベータの制御装置であって、地震時管制運転を制御する制御部と、かごの現在位置及び速度を演算するかご位置速度演算部と、かごの全昇降工程のうちの一部が、要時にかごドアの戸閉押付力を増大させる戸閉力増大区間として記録された記録部と、制御部によるエレベータの状態情報、かご位置速度演算部によって演算されたかごの現在位置及び速度情報、記録部に記録された戸閉力増大区間に基づいて、地震時管制運転においてかごが戸閉力増大区間を走行していると判定された場合に、かごドアの戸閉押付力を通常戸閉力よりも増大させる判定部と、を備えたものである。
【0015】
この発明に係るエレベータの制御方法は、エレベータのかごの全昇降工程のうちの一部が、要時にかごドアの戸閉押付力を増大させる戸閉力増大区間として記録された記録部を有し、地震情報に基づいてかごの走行を制御する地震時管制運転機能を備えたエレベータの制御方法であって、地震時管制運転に移行したか否かを判定するステップと、かごが走行中であるかを判定するステップと、かごの現在位置が記録部に記録された戸閉力増大区間であるか否かを判定するステップと、地震時管制運転においてかごが戸閉力増大区間を走行していると判定された場合に、かごドアの戸閉押付力を通常戸閉力よりも増大させるステップと、を備えたものである。
【0016】
この発明に係るエレベータの改修方法は、地震情報に基づいてエレベータのかごの走行を制御する地震時管制運転機能を備えた既設エレベータを改修する改修方法であって、かごの全昇降工程のうちの一部を、要時にかごドアの戸閉押付力を増大させる戸閉力増大区間として、既設エレベータに記録するステップと、地震時管制運転においてかごが戸閉力増大区間を走行していると判定した場合にかごドアの戸閉押付力を通常戸閉力よりも増大させる判定機能を、既設エレベータに付加するステップと、を備えたものである。
【0017】
また、この発明に係るエレベータの改修方法は、地震情報に基づいてエレベータのかごの走行を制御する地震時管制運転機能を、既設エレベータに付加するステップと、かごの全昇降工程のうちの一部を、要時にかごドアの戸閉押付力を増大させる戸閉力増大区間として、既設エレベータに記録するステップと、地震時管制運転においてかごが戸閉力増大区間を走行していると判定した場合にかごドアの戸閉押付力を通常戸閉力よりも増大させる判定機能を、既設エレベータに付加するステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、エレベータが地震時管制運転に移行されて、かごが最寄り階へ向けて走行している場合に、乗場ドアの開閉スイッチの機能を阻害することなく、余震によって生じるドア係合装置の衝突を防止することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0020】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置を示す構成図である。図1において、18はエレベータ昇降路内を昇降するかご、19はかご18とは昇降路内を逆方向に昇降する釣合い重り、20はかご18及び釣合い重り19を釣瓶式に懸架する主ロープ、21は主ロープ20が巻き掛けられた駆動綱車、22は駆動綱車21を駆動してかご18を昇降させる巻上機、23は巻上機22の制御等、エレベータ全体の制御を司る制御装置、24はエレベータ乗場である。なお、図1に示すエレベータにも、図4乃至図6に示したものと同様のドア装置が、かご18及び各乗場24に備えられている。25は制御装置23からの指令に基づいてドア駆動装置2(ドアモータ8)を制御するドアモータ制御部である。
【0021】
次に、上記制御装置23の具体的な構成について説明する。
制御装置23には、例えば、制御部26、かご位置速度演算部27、位置記録部28、判定部29が備えられている。制御部26は、エレベータを適切に動作させるための制御を司り、例えば、巻上機22やドアモータ制御部25の制御機能を有している。また、制御部26は、地震感知器(図示せず)等からの地震情報に基づいて、上述の地震時管制運転の制御を行う機能も有している。
【0022】
かご位置速度演算部27は、パルス発生器22aで発生したパルスに基づいて、昇降路内のかご18の現在位置及び速度を演算する機能を有している。なお、上記パルス発生器22aは、例えば、巻上機22の出力軸に連結されており、この出力軸の回動、即ちかご18の走行に同期してパルスを発生させる。
【0023】
位置記録部28には、所定の戸閉力増大区間が記憶されている。この戸閉力増大区間は、要時に、かごドア1の戸閉押付力(全閉状態のかごドア1を戸閉方向に更に押し付けるためのドアモータ8のトルク)を増大させるために、かご18の全昇降工程のうちの一部に設定された区間であり、かごドア1が戸開閉方向に動いた際に、係合ベーン15が係合ローラ14に接触し得る高さを全て含むように設定されている。即ち、上記戸閉力増大区間は、係合ベーン15の一部が係合ローラ14と同じ高さになる区間を全て含むように、例えば、各乗場24のドアゾーンDzから上下に所定距離α延びた区間(以下及び図面において、「Dz±α」とも表現する)に設定される。
【0024】
ここで、上記ドアゾーンDzは、エレベータの通常運転時に戸開閉動作が可能と設定されている区間をいう。したがって、戸開閉動作が確実に行われるように、係合ベーン15は、各階床のドアゾーンDzよりも長くなるように設定されている。上記所定距離αは、係合ベーン15の長さとドアゾーンDzの長さの差を考慮して、ドアゾーンDzの上下に加算されたものである。
【0025】
判定部29は、かごドア1の戸閉押付力を増大させる要否を判定する機能を有する。この判定部29は、制御部26によるエレベータの状態情報、かご位置速度演算部27によって演算されたかご18の現在位置及び速度情報、位置記録部28に予め記録された戸閉力増大区間の各情報に基づいて、上記要否の判定を行う。具体的に、判定部29は、エレベータが地震時管制運転に移行されて、かご18が戸閉力増大区間を走行している場合に、戸閉押付力の増大要を判定する。即ち、判定部29は、エレベータが地震時管制運転ではない場合、地震時管制運転であってもかご18が戸閉力増大区間を走行していない場合、地震時管制運転であってもかご18が停止している場合は、戸閉押付力の増大不要を判定する。
【0026】
そして、判定部29によって戸閉押付力の増大要が判定されると、戸閉押付力の増大指令が、I/F30(及び、制御部26)を介してドアモータ制御部25に対して出力され、かごドア1の戸閉押付力が通常戸閉力よりも増大される。即ち、全閉状態のかごドア1が通常運転時よりも大きな力で戸閉方向に押し付けられるように、ドアモータ8の回転方向及びトルクが制御される。
【0027】
また、31はエレベータ保守員等がエレベータの保守時に使用するエレベータの保守端末装置、32はエレベータを監視する外部の監視センタである。この保守端末装置31及び監視センタ32は、要時或いは常時に、I/F33を介して制御装置23に接続され、位置記録部28に記録されている戸閉力増大区間を、エレベータの設置現場や機種に合わせて設定及び変更する機能を有している。
【0028】
次に、上記構成を有するエレベータの制御装置の動作を説明する。
図2はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置の動作を示すフローチャートである。なお、位置記録部28には、例えば上記条件の戸閉力増大区間が予め設定され、記憶されている。エレベータの通常運転時に地震情報が入力されると(S101)、制御装置23では、先ず、その地震情報に基づいて地震時管制運転に移行するか否かが判断される(S102)。例えば、地震の揺れが所定値よりも小さい場合には、地震時管制運転に移行することなく、エレベータは通常運転に復帰する。
【0029】
一方、地震の揺れが大きいためにエレベータが地震時管制運転に移行された場合は、次に、制御部26によるエレベータの状態情報と、かご位置速度演算部27によって演算されたかご18の現在位置及び速度情報と、位置記録部28に記録されている戸閉力増大区間とに基づいて、判定部29によって、かご18が走行中であるか否か(S103)、かご18の現在位置が戸閉力増大区間(例えば、Dz±α)であるか否かが判定される(S104)。そして、S102乃至S104において全てに該当する(Yesの)場合は、判定部29から戸閉押付力の増大指令が出力され、かごドア1の戸閉押付力が通常戸閉力よりも増大される、
【0030】
一方、S102乃至S104の何れかに該当しない(Noの)場合は、戸閉押付力の増大指令は出力されず、通常の戸閉力によってかごドア1の全閉状態が保持される(S106)。なお、かご18が最寄り階の乗場24に停止した場合には、S103においてかご18が走行中ではないと判定され、戸閉押付力の増大指令が出力されなくなる。
【0031】
この発明の実施の形態1によれば、エレベータが地震時管制運転に移行されて、かご18が最寄り階に向けて走行している場合に、乗場ドア13の開閉スイッチ17の機能を阻害することなく、余震によって生じる係合ベーン15と係合ローラ14との衝突を防止することができるようになる。
【0032】
即ち、地震時管制運転において、係合ベーン15と係合ローラ14とが接触し得る高さをかご18が走行している場合は、かごドア1が通常の戸閉力よりも大きな力で戸閉方向に押し付けられているため、余震が発生してもかごドア1が開放されることはなく、従来のように開閉スイッチ17が瞬時OFFとなることもない。また、この時、開閉スイッチ17の通常機能は阻害されていないため、要時にかご18の停止が遅れるといった従来の問題が発生する恐れも無い。
【0033】
なお、上記戸閉力増大区間を、戸閉押付力を増大させる必要がある、かご18の全昇降工程のうちの一部に限定しているため、ドアモータ8への負担(熱の発生等)も軽減され、ドア装置に不具合が生じることも無い。一方、上記戸閉力増大区間は、保守端末装置31や監視センタ32からの操作によって、後から修正、変更が可能であるため、かご18の昇降速度(定格速度)やその変更等に合わせて設置現場毎に設定でき、保守性が大幅に向上する。
【0034】
また、上記判定部29の機能が実現できれば上記効果を奏することが可能になるため、新規エレベータへの適用は当然のこと、既設エレベータへの適用も容易に且つ安価に実施することができる。即ち、地震時管制運転機能を備えた既設エレベータは、一般に、かご位置速度演算部27の機能と制御部26の機能とが予め備えられているため、上記位置記録部28の機能と判定部29の機能とを、既設エレベータに新たに付加すれば良い。また、既設エレベータが地震時管制運転機能を備えていない場合には、上記改修に加えて、地震時管制運転機能を既設エレベータに付加すれば良い。かかる作業のみによって、上記効果を奏することができるようになる。
【0035】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2におけるエレベータの制御装置を説明するための図である。なお、エレベータの制御装置の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
【0036】
図3において、34は昇降路内に立設された、かご18の昇降方向を案内するための一対のガイドレール、35はガイドレール34を昇降路内の固定体に固定するためのレールブラケット、36はかご18に設けられたガイドシューである。上記かご18は、その上下両側に設けられたガイドシュー36が各ガイドレール34の案内面を摺動することによって、水平方向の変位が拘束される。
【0037】
上記ガイドレール34は、エレベータ据付時に熟練の作業者によって据え付けられるが、かご18の全昇降範囲に渡ってその幅(距離L)を完全に一定にすることはできない。即ち、ガイドレール34の幅には、高さによって極僅かなばらつきが生じてしまう。そして、上記ガイドシュー36は、かご18の円滑な昇降を確保するために、ガイドレール34の幅が最も狭い(距離Lが最も短い)位置を基準にして位置決めされている。
【0038】
なお、エレベータの通常運転時に、ガイドレール34の幅の極僅かなばらつきが問題になることはない。しかし、地震時管制運転への移行後に余震が発生すると、かご18の左右への揺れは、このガイドレール34の幅にも依存するため、上記幅の広い高さではかご18が大きく揺れて、かごドア1が開放してしまう可能性が高くなる。
【0039】
そこで、上記戸閉力増大区間を、ガイドレール34の幅を考慮に入れて設定する。具体的には、ガイドレール34間距離Lを測定し、ガイドレール34の最大幅の高さを含むように、ガイドレール34間距離Lが所定値よりも大きい高さ(区間)を戸閉力増大区間として設定する。なお、上記戸閉力増大区間の設定は、実施の形態1に示したドア係合装置による設定方法と併用しても良い。かかる構成により、地震時管制運転における閉じ込めの発生を更に減少させることが可能となる。
【0040】
なお、既設エレベータのガイドレール34間距離Lは、ガイドシュー36を設定する際に予め測定されていることが多い。このため、上記構成は、既設エレベータに対しても容易に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態2におけるエレベータの制御装置を説明するための図である。
【図4】一般的なエレベータのドア装置を示す正面図である。
【図5】一般的なエレベータのドア装置を示す平面図である。
【図6】一般的なエレベータのドア係合装置を示す正面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 かごドア、 2 ドア駆動装置、 3 ドアレール、 4 かご敷居、
5 ドア桁、 6 ドアハンガ、 7 ドアローラ、 8 ドアモータ、
9 駆動ローラ、 10 返し車、 11 第1駆動ベルト、
12 第2駆動ベルト、 13 乗場ドア、 14 係合ローラ、 15 係合ベーン
16 施錠装置、 17 開閉スイッチ、 18 かご、 19 釣合い重り、
20 主ロープ、 21 駆動綱車、 22 巻上機、 22a パルス発生器、
23 制御装置、 24 乗場、 25 ドアモータ制御部、 26 制御部、
27 かご位置速度演算部、 28 位置記録部、 29 判定部、 30 I/F、
31 保守端末装置、 32 監視センタ、 33 I/F、 34 ガイドレール、
35 レールブラケット、 36 ガイドシュー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震情報に基づいてエレベータのかごの走行を制御する地震時管制運転機能を備えたエレベータの制御装置であって、
地震時管制運転を制御する制御部と、
前記かごの現在位置及び速度を演算するかご位置速度演算部と、
前記かごの全昇降工程のうちの一部が、要時にかごドアの戸閉押付力を増大させる戸閉力増大区間として記録された記録部と、
前記制御部によるエレベータの状態情報、前記かご位置速度演算部によって演算された前記かごの現在位置及び速度情報、前記記録部に記録された戸閉力増大区間に基づいて、地震時管制運転において前記かごが戸閉力増大区間を走行していると判定された場合に、前記かごドアの戸閉押付力を通常戸閉力よりも増大させる判定部と、
を備えたことを特徴とするエレベータの制御装置。
【請求項2】
戸閉力増大区間は、かごドア及び乗場ドアに設けられたドア係合装置が、前記かごドアが戸開閉方向に動いた際に接触し得る高さを全て含むように設定されたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータの制御装置。
【請求項3】
戸閉力増大区間は、かごの昇降方向を案内するガイドレールの最大幅の高さを含むように設定されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータの制御装置。
【請求項4】
エレベータのかごの全昇降工程のうちの一部が、要時にかごドアの戸閉押付力を増大させる戸閉力増大区間として記録された記録部を有し、
地震情報に基づいて前記かごの走行を制御する地震時管制運転機能を備えたエレベータの制御方法であって、
地震時管制運転に移行したか否かを判定するステップと、
前記かごが走行中であるかを判定するステップと、
前記かごの現在位置が前記記録部に記録された戸閉力増大区間であるか否かを判定するステップと、
地震時管制運転において前記かごが戸閉力増大区間を走行していると判定された場合に、前記かごドアの戸閉押付力を通常戸閉力よりも増大させるステップと、
を備えたことを特徴とするエレベータの制御方法。
【請求項5】
かごドア及び乗場ドアに設けられたドア係合装置が、前記かごドアが戸開閉方向に動いた際に接触し得る高さを全て含むように、戸閉力増大区間を設定して、記録部に記録するステップと、
を備えたことを特徴とする請求項4に記載のエレベータの制御方法。
【請求項6】
かごの昇降方向を案内するガイドレールの幅を測定し、前記ガイドレールの最大幅の高さを含むように戸閉力増大区間を設定して、記録部に記録するステップと、
を備えたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のエレベータの制御方法。
【請求項7】
地震情報に基づいてエレベータのかごの走行を制御する地震時管制運転機能を備えた既設エレベータを改修する改修方法であって、
前記かごの全昇降工程のうちの一部を、要時にかごドアの戸閉押付力を増大させる戸閉力増大区間として、既設エレベータに記録するステップと、
地震時管制運転において前記かごが戸閉力増大区間を走行していると判定した場合に前記かごドアの戸閉押付力を通常戸閉力よりも増大させる判定機能を、既設エレベータに付加するステップと、
を備えたことを特徴とする既設エレベータの改修方法。
【請求項8】
地震情報に基づいてエレベータのかごの走行を制御する地震時管制運転機能を、既設エレベータに付加するステップと、
前記かごの全昇降工程のうちの一部を、要時にかごドアの戸閉押付力を増大させる戸閉力増大区間として、既設エレベータに記録するステップと、
地震時管制運転において前記かごが戸閉力増大区間を走行していると判定した場合に前記かごドアの戸閉押付力を通常戸閉力よりも増大させる判定機能を、既設エレベータに付加するステップと、
を備えたことを特徴とする既設エレベータの改修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−29551(P2009−29551A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193821(P2007−193821)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】