説明

エレベータの制御装置及び既設エレベータの改修方法

【課題】携帯電話会社による緊急地震速報の一斉同報配信サービスを利用することにより、地震発生時により早く地震時管制運転に移行させることができる地震時管制システムを、簡単な構成で安価に構築できるようにする。
【解決手段】携帯電話会社4から配信される緊急地震速報6の受信を所定の動作によって外部に報知する携帯電話端末14を、エレベータの設置現場ビル7に設ける。また、上記携帯電話端末14による所定の動作を携帯電話端末14の外部から検出する受信検出手段15を、その検出位置に合わせて、設置現場ビル7に設置する。そして、受信検出手段15の検出結果に基づいて携帯電話端末14による緊急地震速報6の受信を判定し、地震時管制運転に移行させるための信号を制御盤8に対して出力する制御端末16を設置現場ビル7に設置し、この制御端末16を、受信検出手段15及び制御盤8間に適切に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯電話会社による緊急地震速報の一斉同報配信サービスを利用してエレベータを制御する制御装置、及び、上記一斉同報配信サービスを利用してエレベータの制御が行えるように既設エレベータを改修する改修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震感知器を備えたエレベータでは、地震の揺れ(主要動・S波)を感知すると、その地震の規模に応じて最寄り階停止といった乗客を救出するための地震時管制運転が行われる。しかし、このようなエレベータでは、地震の揺れが実際に発生した後に地震時管制運転が開始されるため、地震の揺れによってロープ類の引っ掛かり等が生じると、機器類の破損や閉じ込めが発生する恐れがあった。
【0003】
これに対し、地震の初期微動(P波)を感知するP波センサをエレベータに設置することにより、S波が到達するよりも早く地震時管制運転に移行するように構成したエレベータも実現されている。しかし、P波センサが非常に高価であるため、上記動作を行わせる装置の装備率は、未だ低い状態にあるというのが現実である。また、急行ゾーンが設定されている(中間階に非停止階がある)エレベータでは、P波が感知されるよりも早く地震発生の情報を取得して、地震時管制運転に移行したいという要望も多い。
【0004】
一方、最近では、日本全国に張り巡らされた地震観測網によって得られた緊急地震速報を、地震発生直後にインターネットや衛星通信等を利用して各地に配信することにより、地震のS波到達前に当該地震への有効な対策を講じるといった様々な取り組みや提案が行われている。この緊急地震速報は地震発生直後に配信されるため、直下型地震が発生した場合には有効利用することはできないが、緊急地震速報を受信してからS波が到達するまでに比較的時間が掛かる場合、即ち、遠隔地で比較的大きな地震が発生した場合には、受信した緊急地震速報を有効利用することにより、地震災害を未然に防止することが可能となる。
【0005】
このような緊急地震速報を利用したエレベータの従来技術として、緊急地震速報を受信した場合に、この緊急地震速報に含まれる震源地及び地震発生時刻の情報から現在地における地震のS波の到達時刻を予想し、その予想結果に基づいて、エレベータの地震時管制運転を制御するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
なお、エレベータに関する従来技術ではないが、携帯電話等の端末を利用して上記緊急地震速報を受信するためのシステムや、その際に利用可能な課金システムも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2004−224469号公報
【特許文献2】特開2006−145234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1記載のものでは、震源地がエレベータ設置ビルから比較的離れた場所であれば、P波が到達するよりも早く地震時管制運転に移行することが可能となり、急行ゾーンが設定されているエレベータ等に対しては、有効な手段となり得る。しかし、特許文献1記載のシステムでは、緊急地震速報を受信するための専用の受信手段をエレベータに設置する必要があるとともに、この受信手段及びエレベータ周辺に、インターネット回線や衛星通信回線といった専用回線のための配線を行わなければならず、その工事に多大な時間と労力を要するという問題があった。また、緊急地震速報を受信するために、衛星通信回線等の専用回線の高価な使用料が発生し、ランニングコストが嵩むといった問題もあった。
【0009】
なお、特許文献2記載のものは、携帯電話等の利便性の高い端末を利用して上記緊急地震速報を受信するためのシステムや、その際に利用される課金システム等が記載されているのみであり、受信した緊急地震速報をエレベータ制御に利用するための具体的手段に関しては、何ら開示されていない。
【0010】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、携帯電話会社による緊急地震速報の一斉同報配信サービスを利用することにより、地震発生時により早く地震時管制運転に移行させることができる地震時管制システムを、簡単な構成で安価に構築できるエレベータの制御装置、及び、上記地震時管制システムが簡単な構成で安価に構築することができるように既設エレベータを改修する改修方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係るエレベータの制御装置は、エレベータの設置現場ビルに設けられ、携帯電話会社から配信される緊急地震速報を受信する携帯電話端末と、携帯電話端末に設けられ、携帯電話端末が緊急地震速報を受信した旨を所定の動作によって携帯電話端末の外部に報知する報知部と、設置現場ビルに設けられ、報知部による所定の動作を携帯電話端末の外部から検出する受信検出手段と、設置現場ビルに設けられ、受信検出手段及びエレベータの制御盤間に接続されるとともに、受信検出手段の検出結果に基づいて携帯電話端末による緊急地震速報の受信を判定し、エレベータを地震時管制運転に移行させるための信号を制御盤に対して出力する制御端末と、を備えたものである。
【0012】
この発明に係る既設エレベータの改修方法は、携帯電話会社から配信される緊急地震速報を受信でき、且つ緊急地震速報を受信した旨を所定の動作によって外部に報知する携帯電話端末を、既設エレベータの設置現場ビルに設置するステップと、携帯電話端末による所定の動作を携帯電話端末の外部から検出する受信検出手段を、その検出位置に合わせて、設置現場ビルに設置するステップと、受信検出手段の検出結果に基づいて携帯電話端末による緊急地震速報の受信を判定し、エレベータを地震時管制運転に移行させるための信号を出力する制御端末を、受信検出手段及び既設エレベータの制御盤間に接続するステップと、制御端末を、設置現場ビルに設置するステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、携帯電話会社による緊急地震速報の一斉同報配信サービスを利用することにより、地震発生時により早く地震時管制運転に移行させることができる地震時管制システムを、簡単な構成で安価に構築できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
緊急地震速報に関しては、2007年10月1日から一般向けのサービス提供が開始されると発表されている。これに伴い、各種携帯電話会社により、震度4以上の大きな揺れが予想される地域の携帯電話端末に対して、緊急地震速報を一斉同報配信するサービスが計画されている。本願の発明は、携帯電話会社による緊急地震速報の一斉同報配信サービスを利用してエレベータを制御することを特徴とする。
以下に、添付の図面に従って、本願の発明をより詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0015】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における地震時管制システムを示す全体構成図、図2はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置を示す構成図、図3はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置を示す要部詳細図、図4はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置の機能の一部を説明するための図である。
【0016】
図1及び図2において、1は気象庁2の緊急地震通報網であり、気象庁2は、各地に設置された地震計3からの地震情報に基づいて、緊急地震速報を発報する。4は携帯電話会社、5は携帯電話会社4の基地局である。携帯電話会社4は、気象庁2から緊急地震速報を受信すると、緊急地震速報の一斉同報サービスを行うため、例えば、震度4以上の大きな揺れが予想されている地域の基地局5から、自社の携帯電話端末に対して緊急地震速報6を一斉配信する。
【0017】
7は各ビル等からなるエレベータの設置現場を示している。このエレベータ設置現場7には、エレベータの各種制御を司るエレベータ制御盤8や、P波センサ9及び低感知地震計10からなる地震計11が設置されている。P波センサ9は、地震のP波を感知することにより、動作接点12を閉成して、制御盤8にP波信号を入力させる。また、低感知地震計10は、所定値以上の地震の揺れ(S波)を感知することにより、動作接点13を閉成して、制御盤8に低感知地震計信号を入力させる。なお、地震計11が動作した際の制御盤8の制御は従来と同様であり、例えば、P波信号が入力された場合には、最寄り階停止後、所定時間(例えば、1分)待機した後にエレベータを通常運転に復帰させる地震時管制運転が行われる。また、低感知地震計信号が入力された場合は、最寄り階停止後、エレベータを運転休止状態とする地震時管制運転が行われる。
【0018】
エレベータの設置現場7には、上記制御盤8及び地震計11の他にも、携帯電話端末14、受信検出手段15、制御端末16が設置されている。設置現場7に設けられた携帯電話端末14は、携帯電話会社4から配信される緊急地震速報6を受信することができる機能を有しており、例えば、エレベータの機械室や昇降路内、乗場、ピット等の電波状態が良い位置に配置及び固定される。具体的に、上記携帯電話端末14には、携帯電話用の電波を送受信するための無線送受信部17と、各種制御を行う制御部18と、緊急地震速報受信部19と、LED20(発光素子)及びバイブレータ21、スピーカ22等からなる報知部23とが備えられている。
【0019】
上記緊急地震速報受信部19は、無線送受信部17を介して携帯電話端末14が受信した各種情報の中から、携帯電話会社4から配信された緊急地震速報6を特定する機能を有している。なお、緊急地震速報受信部19が有する上記機能は、如何なる方法によるものであっても構わない。例えば、受信メールのアドレス検索等によって緊急地震速報6であるか否かを判定しても良いし、所定の付加情報の有無によって緊急地震速報6であるか否かを判定しても良い。
【0020】
そして、携帯電話端末14が緊急地震速報6を受信する、即ち、緊急地震速報受信部19によって緊急地震速報6の受信有りが判定されると、制御部18は、報知部23を制御して、緊急地震速報6の受信を携帯電話端末14の所有者に知らせる。即ち、報知部23は、携帯電話端末14が緊急地震速報6を受信した旨を、所定の動作によって携帯電話端末14の外部に報知する機能を有している。例えば、制御部18は、LED20を点滅、点灯させたり、バイブレータ21を振動させたり、スピーカ22から音声、音楽、パターン音を鳴動させたりすることにより、緊急地震速報6の受信を携帯電話端末14の外部(携帯電話端末14の所有者)に報知する。
【0021】
なお、緊急地震速報6は特に緊急性を有するため、制御部18は、緊急地震速報6の受信時に、他の情報の受信時とは異なる特定の動作を報知部23に対して行わせることができる。或いは、携帯電話端末14にそのような設定機能が備えられている。例えば、制御部18は、緊急地震速報6の受信時のみ、LED20の発光色や発光強度、点滅周期を特定のものにしたり、バイブレータ21の振動強度や振動周期を特定のものにしたり、スピーカ22からの音の周波数や大きさを特定のものにしたりする。また、緊急地震速報6の受信時のみ報知部23に所定の動作を行わせ、緊急地震速報6以外の情報を受信した場合には報知部23に何も動作を行わせないようにしても、上記機能は実現できる。
【0022】
受信検出手段15は、携帯電話端末14が緊急地震速報6を受信した際に報知部23によって行われる上記所定の動作を、携帯電話端末14の外部から検出する機能を有している。即ち、市販の携帯電話端末が上記構成を既に備えていれば、上記受信検出手段15により、その市販の携帯電話端末の内部に何ら手を加えることなく、報知部23による上記所定の動作を検出することができる。具体的に、上記受信検出手段15は、報知部23の各報知手段(20乃至22)に対応する検出部を備えており、例えば、LED20の発光状態を検出するLED検出部24(発光素子検出部)、バイブレータ21の振動状態を検出する振動検出部25、スピーカ22の音の出力状態を検出する着信音検出部26から構成される。
【0023】
受信検出手段15の上記各検出部24乃至26は、緊急地震速報6の受信時に行われる上記報知手段(20乃至22)の動作内容に合わせて、その検出範囲、検出精度等が設定されている。具体的には、報知部23が、携帯電話端末14による緊急地震速報6の受信時に、他の情報の受信時とは異なる特定の動作を行う場合には、受信検出手段15の各検出部24乃至26は、上記特定の動作のみを検出し、他の情報の受信時に行われる動作を検出することが無いように設定される。また、報知部23が、緊急地震速報6の受信時のみ動作する場合には、各検出部24乃至26は、その動作を検出することができるように設定される。
【0024】
図3は、上記携帯電話端末14及び受信検出手段15の具体的構成の一例を示したものである。携帯電話端末14は、エレベータ機械室等に設けられた収納ボックス27内に収納されている。また、停電等の影響を避けるために、停電時のバックアップがあるエレベータ電源28から電源供給されている。なお、収納ボックス27は携帯用電波を遮断しない材質からなり、防塵及び防滴の効果を有する。
【0025】
また、上記各検出部24乃至26の検出精度を向上させるための工夫もなされている。例えば、LED検出部24は、所定の受光状態を確保するためにLED20に対向して配置される。また、外光の影響を受けないように、LED検出部24とLED20との間が、所定の遮光性を有する遮光手段によって覆われている。図3に示すものでは、収納ボックス27を遮光性に優れた材質で構成して、この収納ボックス27で携帯電話端末14の全体を覆うことにより、上記状態を確保している。
【0026】
振動検出部25は、バイブレータ21による振動を確実に検出することができるように、その検出部分が、携帯電話端末14の外面に接触するよう配置される。また、ビル(外部)の振動の影響を受けないように、振動検出部25とバイブレータ21(携帯電話端末14)とは、共に、所定の減衰特性を有する免震手段を介して設置現場7に設置される。図3に示すものでは、携帯電話端末14を支持する収納ボックス27を免震ゴム29を介してエレベータ機械室等の床面に設置し、更に、振動検出部25もこの収納ボックス27内に収納することにより、上記状態を確保している。
【0027】
着信音検出部26は、外部で発生する音の影響を避けるために、携帯電話端末14に接続されたイヤホン端子30を介して、スピーカ22からの出力信号を取得する。なお、イヤホン端子30の入力部は、一般の携帯電話端末に既に備えられているものである。上記構成によれば、例えば、携帯電話端末14の設置場所の近傍でビルの改修工事等が行われている場合でも、その振動や騒音によって誤検出が発生する恐れはない。
【0028】
一方、制御端末16は、受信検出手段15とエレベータ制御盤8との間に接続されている。そして、この制御端末16には、受信検出手段15の検出結果に基づいて、携帯電話端末14が緊急地震速報6を受信したか否かを判定する受信判定機能と、要時、即ち携帯電話端末14が緊急地震速報6を受信したと判定した場合に、エレベータを地震時管制運転に移行させるための所定の信号を制御盤8に対して出力する管制運転移行機能と、受信検出手段15の検出結果や制御盤8への信号出力結果等を記憶する記憶機能とが備えられている。
【0029】
なお、図2に示す構成では、上記受信判定機能及び管制運転移行機能が、制御部31に備えられている。即ち、受信検出手段15の各検出部24乃至26の検出信号は制御部31に入力され、この制御部31により、各検出信号に基づいて携帯電話端末14による緊急地震速報6の受信の有無が判定される。そして、制御部31は、緊急地震速報6の受信有りを判定すると、動作接点32を閉成することにより、制御盤8にP波信号を入力させる。なお、33及び34は上記記憶機能を司るログ処理部及びログ記憶部であり、図4はそのログイメージを示している。35は地震時管制運転に移行させる信号が制御端末16から出力された際に、信号出力後の時間をカウントするタイマである。
【0030】
次に、上記構成を有するエレベータの制御装置の具体的な動作について説明する。
図5はこの発明の実施の形態1における制御端末の制御部の動作フローを示す図である。制御端末16の制御部31は、先ず、タイマ35のカウント値を所定値と比較することによって、タイムアウトの有無を判定する(S101)。なお、上述の通り、タイマ35は、制御端末16から所定の信号が出力されることによってカウントを開始するため、緊急地震速報が発報される前であれば、S102に進む。
【0031】
S102乃至S104では、受信検出手段15の各検出部24乃至26からの検出信号に基づいて、携帯電話端末14が緊急地震速報6を受信したか否かを判定する。即ち、LED検出部24によってLED20の所定の発光状態が検出されたか否か(S102)、振動検出部25によってバイブレータ21の所定の振動状態が検出されたか否か(S103)、着信音検出部26によってスピーカ22の所定の出力状態が検出されたか否か(S104)が判定される。
【0032】
そして、S102乃至S104において何れにも該当する(Yesの)場合には、携帯電話端末14が緊急地震速報6を受信したと判定してS105に進む。なお、図5は、上記検出部24乃至26の全てによって所定の動作が検出された場合に、緊急地震速報6の受信有りを判定する場合を示しているが、検出部24乃至26のうちの何れか1つでも所定の動作を検出した場合や、或いは、検出部24乃至26のうちの2つ(何れの組合せでも良い)によって所定の動作が検出された場合に、緊急地震速報6の受信有りを判定するように構成しても良い。
【0033】
S105では、動作接点32が閉成されることにより、エレベータを地震時管制運転に移行させるための信号が制御盤8に対して出力される。そして、携帯電話端末14による緊急地震速報6の受信が判定される、即ち、制御盤8に対して上記所定の信号が送信されることにより、タイマ35のカウントが開始され、ログが保存される(S106、S107)。上述の通り、動作接点32が閉成されると、制御盤8にはP波信号が入力される。このため、例えば、タイマ35のカウントが開始されてから所定時間(例えば、1分)経過した後(S101のNo)に動作接点32を開成する(S108)ことにより、P波センサ9が動作した場合と同様の動作をエレベータ(制御盤8)に行わせることができるようになる。
【0034】
この発明の実施の形態1によれば、携帯電話会社4による緊急地震速報6の一斉同報配信サービスをエレベータ制御用に利用することにより、地震発生時により早く地震時管制運転に移行させることができる地震時管制システムを、簡単な構成で、且つ安価に構築できるようになる。即ち、従来のように高価な受信手段や専用回線を準備する必要はなく、単に、携帯電話端末14、受信検出手段15、制御端末16を用意するだけで、上記地震時管制システムを構築できる。また、従来の専用回線を引くための工事も不要で、工期の短縮、コスト削減を実現できるとともに、設置後も携帯電話端末14の基本料金程度しか費用が掛からず、ランニングコストを大幅に抑えることが可能となる。
【0035】
更に、市販の携帯電話端末が上記構成(携帯電話端末14の構成)を既に備えている場合には、市販の携帯電話端末を改造したり、新たなソフトウェアを追加したりすることなく、受信検出手段15を、その検出位置に合わせて適切に配置するだけで、携帯電話端末14が緊急地震速報6を受信したとの情報を、携帯電話端末14の外部に取り出すことができるようになる。このため、上記地震時管制システムを構築するための手間及び費用を大幅に削減でき、新規エレベータへの適用は当然のこと、既設エレベータへの適用も容易になる。
【0036】
ここで、既設エレベータに適用して上記地震時管制システムを構築する場合には、先ず、上記構成を有する携帯電話端末14を既設エレベータの機械室等の電波状態の良い場所に所定の方法で設置する。また、受信検出手段15を、その検出位置に合わせて、携帯電話端末14に近接するように設置現場7に設置する。そして、上記構成の制御端末16を、受信検出手段15と既設エレベータの制御盤8との間に適切に接続し、その制御端末16を既設エレベータの設置現場7に固定する。かかる作業のみによって図1及び図2に示す地震時管制システムを構築でき、上記効果を奏することが可能となる。
【0037】
なお、上記実施の形態1においては、P波センサ9を備えたエレベータについて説明したが、P波センサ9を備えていないエレベータであれば、制御端末16を制御盤8のP波センサ用I/Fに直接接続しても良い。かかる構成により、P波センサ9が備えられていないエレベータ或いは既設エレベータに対して、P波センサ相当機能を低価格で提供することが可能となる。
【0038】
また、上記実施の形態1では、受信検出手段15として、3種類の検出部24乃至26を備えた場合について説明したが、それらは全て備える必要はなく、少なくとも1つの検出部を備えていれば、上記効果を奏することが可能である。また、20乃至22に示すもの以外の報知手段が報知部23に備えられている場合には、その報知手段の所定の動作を検出できる検出部を上記受信検出手段15に備えるようにすれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の実施の形態1における地震時管制システムを示す全体構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置を示す要部詳細図である。
【図4】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置の機能の一部を説明するための図である。
【図5】この発明の実施の形態1における制御端末の制御部の動作フローを示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 緊急地震通報網、 2 気象庁、 3 地震計、 4 携帯電話会社、
5 基地局、 6 緊急地震速報、 7 設置現場、 8 制御盤、
9 P波センサ、 10 低感知地震計、 11 地震計、 12 動作接点、
13 動作接点、 14 携帯電話端末、 15 受信検出手段、 16 制御端末、
17 無線送受信部、 18 制御部、 19 緊急地震速報受信部、
20 LED、 21 バイブレータ、 22 スピーカ、 23 報知部、
24 LED検出部、 25 振動検出部、 26 着信音検出部、
27 収納ボックス、 28 エレベータ電源、 29 免震ゴム、
30 イヤホン端子、 31 制御部、 32 動作接点、 33 ログ処理部、
34 ログ記憶部、 35 タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの設置現場ビルに設けられ、携帯電話会社から配信される緊急地震速報を受信する携帯電話端末と、
前記携帯電話端末に設けられ、前記携帯電話端末が緊急地震速報を受信した旨を所定の動作によって前記携帯電話端末の外部に報知する報知部と、
前記設置現場ビルに設けられ、前記報知部による前記所定の動作を前記携帯電話端末の外部から検出する受信検出手段と、
前記設置現場ビルに設けられ、前記受信検出手段及びエレベータの制御盤間に接続されるとともに、前記受信検出手段の検出結果に基づいて前記携帯電話端末による緊急地震速報の受信を判定し、エレベータを地震時管制運転に移行させるための信号を前記制御盤に対して出力する制御端末と、
を備えたことを特徴とするエレベータの制御装置。
【請求項2】
報知部は、携帯電話端末による緊急地震速報の受信時に、他の情報の受信時とは異なる所定の動作を行うことを特徴とする請求項1に記載のエレベータの制御装置。
【請求項3】
報知部は、携帯電話端末による緊急地震速報の受信時のみ所定の動作を行い、前記携帯電話端末が緊急地震速報以外の情報を受信した場合には動作しないことを特徴とする請求項1に記載のエレベータの制御装置。
【請求項4】
受信検出手段は、
発光素子からなる報知部の発光状態を検出する発光素子検出部と、
バイブレータからなる報知部の振動状態を検出する振動検出部と、
スピーカからなる報知部の音の出力状態を検出する着信音検出部と、
のうちの少なくとも何れか1つを備えたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のエレベータの制御装置。
【請求項5】
受信検出手段は、携帯電話端末の発光素子に対向して配置された発光素子検出部を備え、
前記発光素子検出部と前記発光素子との間が、所定の遮光性を有する遮光手段によって覆われたことを特徴とする請求項4に記載のエレベータの制御装置。
【請求項6】
受信検出手段は、携帯電話端末の外面に接触する振動検出部を備え、
前記振動検出部と携帯電話端末とは、共に、設置現場ビルの振動を減衰させる同一の免震手段を介して前記設置現場ビルに設けられたことを特徴とする請求項4に記載のエレベータの制御装置。
【請求項7】
受信検出手段は着信音検出部を備え、
前記着信音検出部は、携帯電話端末に接続されたイヤホン端子を介して、スピーカからの出力信号を取得することを特徴とする請求項4に記載のエレベータの制御装置。
【請求項8】
携帯電話会社から配信される緊急地震速報を受信でき、且つ緊急地震速報を受信した旨を所定の動作によって外部に報知する携帯電話端末を、既設エレベータの設置現場ビルに設置するステップと、
前記携帯電話端末による前記所定の動作を前記携帯電話端末の外部から検出する受信検出手段を、その検出位置に合わせて、前記設置現場ビルに設置するステップと、
前記受信検出手段の検出結果に基づいて前記携帯電話端末による緊急地震速報の受信を判定し、エレベータを地震時管制運転に移行させるための信号を出力する制御端末を、前記受信検出手段及び既設エレベータの制御盤間に接続するステップと、
前記制御端末を、前記設置現場ビルに設置するステップと、
を備えたことを特徴とする既設エレベータの改修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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