説明

エレベータの巻上機固定装置

【課題】 巻上機にかかる荷重の水平方向を直接レールブラケットに作用させることにより、ガイドレールを強度アップさせることなく、簡易な構成で巻上機にかかる荷重の水平方向を支持可能なエレベータの巻上機固定装置を得ること。
【解決手段】 壁2を有するエレベータ昇降路1内を昇降するかご3と、かご3及び一側の壁2によって形成された間隙の鉛直投影面内で昇降路1の一側に配置され、かご3と釣合って昇降路1内を昇降する釣合い重り5と、昇降路1内に立設され、釣合重り5のガイドレール6a,6bと、ガイドレール6a,6bが一側の壁2に連結固定されるレールブラケット8a,8bと、昇降路1内に設けられ、間隙の鉛直投影面内で昇降路1の他側に配置された巻上機7と、巻上機7が連結固定され、巻上機7を昇降路1の底面から所定の高さを隔てた位置に設けると共に、嵩上げ台9と、振れ止めビーム12と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの巻上機支持装置に係り、特に、昇降路内のスペースを利用して巻上機を設置した機械室レスエレベータの巻上機固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の利用効率を高めるため、昇降路内のスペースを利用して巻上機や制御盤などを設置するエレベータ、いわゆる機械室レスエレベータにおいて、巻上機の取付け作業が容易であると共に、調整も行うことのできるエレベータとして、昇降路内を昇降するかごおよび釣合い重りと、前記かごおよび前記釣合い重りのガイドレールと、前記かごと前記釣合い重りを懸架するロープと、前記昇降路内にあって昇降路最下端より一定距離だけ上方にあり、かつ前記昇降路の平断面内の一つの壁面に略平行に配置された薄形の巻上機と、前記巻上機を支持する取付枠とを有するエレベータにおいて、前記取付枠を、上枠と下枠及び側枠でロ字状に組み立てると共に、前記上枠と下枠のそれぞれの一端を前記ガイドレールに移動可能に固定したエレベータの巻上機支持装置(例えば、特許文献1参照)がある。
【0003】
【特許文献1】特開2006−52076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のものでは、巻上機に作用するロープの上向き荷重はロッドを介してピットベースのみで支持するので、通常時にはガイドレール及びレールブラケットに水平方向の荷重は作用しないが、例えば、地震発生時は横揺れ等によって釣り合いオモリだけでなく、巻上機にも荷重が発生する。すなわち、巻上機付近のガイドレールでは、釣り合いオモリに加えて巻上機にかかる荷重の水平方向が加算されるため、これら2つの荷重の合計が一定以上の大きさになると、ガイドレールが変形してしまうという問題があった。そこで、ガイドレールの強度を上げるか、あるいはガイドレールに作用するモーメントを減らすため、レールブラケットの取付け間隔を縮小して、巻上機付近のレールブラケットの個数を増やす必要があった。また、巻上機の位置が昇降路背面壁から離れる場合、荷重作用点の位置が離れるため、レールブラケットに作用するモーメントが増大するので、レールブラケットの強度を上げる必要があった。このように、レールブラケットの強度を上げたり、あるいは取り付ける個数を増やすことによってコストが高くなるという問題があった。また、柔構造など建物のフロアレベル以外にレールブラケットを施工できない場合、レールブラケットのスパンを縮小することができず、個数を増やすことで対応できないため、ガイドレールおよびレールブラケットの強度を上げる必要があり、コストが高くなるという問題があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、巻上機にかかる荷重の水平方向をガイドレールではなく直接レールブラケットに作用させることにより、ガイドレールやレールブラケットの強度アップあるいはレールブラケットの数を増加させることなく、大きなコストアップを抑えながら、簡易な構成で巻上機にかかる荷重の水平方向を支持可能なエレベータの巻上機固定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかるエレベータの巻上機固定装置は、壁を有するエレベータ昇降路内を昇降するかごと、
かご及び一側の昇降路壁によって形成された間隙の鉛直投影面内で昇降路の一側に配置され、かごと釣合って前記昇降路内を昇降する釣合い重りと、昇降路内に立設され、釣合重りを案内する釣合重りのガイドレールと、釣合い重りのガイドレールが一側の昇降路壁に連結固定される第一のレール固定手段と、昇降路内に設けられ、間隙の鉛直投影面内で昇降路の他側に配置された巻上機と、巻上機が連結固定され、巻上機を昇降路の底面から所定の高さを隔てた位置に設けると共に、巻上機が固定される固定手段と、巻上機が連結固定され、巻上機を昇降路の底面から所定の高さを隔てた位置に設けると共に、巻上機が固定される固定手段と、巻上機にかかる荷重の水平方向を支持する荷重支持手段と、を備え、荷重支持手段は、第一のレール固定手段に連結固定されると共に、固定手段に取り付けられ、巻上機に荷重が作用したとき、荷重を第一のレール固定手段に伝えて、荷重の水平方向を支持するように構成したものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、巻上機が荷重を受けたとき、巻上機が固定される嵩上げ台に取り付けられた振れ止めビームにより、この荷重の水平方向をレールブラケットに伝達して支持するようにしたので、ガイドレールやレールブラケットの強度アップあるいはレールブラケットの数を増加させることなく、大きなコストアップを抑えながら、効果的にこの荷重を支持可能なエレベータの巻上機固定装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1はエレベータの巻上機固定装置の全体構成を示す斜視図である。図2は図1のエレベータの巻上機固定装置の要部を示す正面図であり、図3は図1の要部を示す平面図、図4は図1の要部を示す拡大正面図、図5は図1の要部を示す拡大側面図である。
【0009】
図において、昇降路1の側面は複数の壁2で形成されており、かご3はエレベータ昇降路1内を昇降するかごで、このかご3は一対のガイドレール4a,4bによって案内されるようになっている。釣合い重り5は、かご3と対向方向に移動し、この釣合い重り5は一対のガイドレール6a,6bによって案内される。巻上機7は昇降路1の平断面内の一つの壁2に略平行に配置された薄形の巻上機である。第一のレールブラケットであるレールブラケット8a,8bは、昇降路1の一つの壁2に固定されており、ガイドレール6a,6bは、このレールブラケット8a,8bにより昇降路1の一つの壁2に固定されている。
【0010】
嵩上げ台9は、巻上機7が固定される巻上機固定台(図示しない)と、この台を支持する脚部10とを備えている。脚部10の下部は、昇降路1の底部に設けられるピットベース11に取り付けられ、上部は巻上機7が取り付けられている。脚部10の長さを調整することで、巻上機7が固定される高さが調整される。そして、第一の振れ止めビームである振れ止めビーム12は、一側が脚部10に固定され、他側はレールブラケット8a,8bに連結固定されている。振れ止めビーム12は、略水平方向に設けられ、一側は脚部10に第一のボルトであるボルト13によって取り付けられ、他側はレールブラケット8a,8bに溶接などの手段によって固定されている。ボルト13は、巻上機7にかかる荷重の水平方向を振れ止めビーム12に伝えると共に所定の長さを有している。
【0011】
振れ止めビーム12の一側には、ボルト13を貫通させる第一の穴であるボルト穴14が設けられている。ボルト穴14は、ボルト13が貫通可能な程度の大きさを有する形状を有している。脚部10には、ボルト13を貫通させて振れ止めビーム12の一側を取り付けるために第二の穴であるボルト穴15が設けられている。ボルト穴15は、垂直方向はボルト13が摺動可能となるように所定の長さを有する形状で、かつ水平方向はボルト13が貫通可能な程度の幅を有する形状を有している。脚部10と振れ止めビーム12の一側とは、正面側に脚部10のボルト穴15を配置し、背面側に振れ止めビーム12のボルト穴14を配置して、ボルト穴15側からボルト13を水平方向に貫通させ、ボルト穴14側でナットにより取り付けられている。
【0012】
脚部10と振れ止めビーム12の一側との取り付け部において、ボルト13の頭とボルト穴15とは、若干の間隙が設けられている。脚部10に取り付けられている振れ止めビーム12のボルト穴14側は、ボルト13はナットにより振れ止めビーム12に固定されている。すなわち、ボルト13は、脚部10の正面側のボルト穴15上で締結されていない状態で取り付けられている。これにより、ボルト穴14とボルト穴15とに貫通させて配置したボルト13の水平方向の相対的変位は制限されるが、垂直方向の相対的変位は、ボルト13がボルト穴15の垂直方向に摺動可能とされているため、ボルト穴15の垂直方向の長さ分だけ制限されない。
【0013】
次に、この発明の動作について説明する。地震等により昇降路1に揺れが発生した場合、巻上機7には荷重が作用する。この荷重の水平方向は、巻上機7が固定された嵩上げ台9にそのまま伝わるため、脚部10にも同じ荷重が作用する。ここで、脚部10に伝えられた荷重は、ボルト穴15を水平方向に変位させるように作用する。ボルト穴15にこの荷重が作用すると、貫通させて配置したボルト13は、ボルト穴15によって水平方向の変位が制限されるため、ボルト13にこの荷重が伝えられる。ボルト13にこの荷重が作用すると、ボルト13を貫通させたボルト穴14から振れ止めビーム12の一側にも同じ荷重が伝えられる。伝えられた荷重は、振れ止めビーム12の他側からレールブラケット8a,8bに作用する。レールブラケット8a,8bは、壁2に強固に取り付けられているので、この荷重の水平方向を壁2の反力で効果的に支持することができる。
【0014】
このとき、振れ止めビーム12は、巻上機7から伝わった荷重の水平方向だけを支持可能な程度の強度を備えていれば良く、水平方向以外の荷重を支持するための強度は必要としない。すなわち、振れ止めビーム12は、例えば、L字状の板曲げ構造とすることで、板自体を厚くしなくても必要な強度を備えることができる。そのため、振れ止めビーム12は、構成する素材を特殊な材料にすることなく、一般的に入手可能な鉄などの安価な材料を用いて必要な強度を容易に確保でき、かつ加工も容易であることから、大きなコストアップとならずに、比較的安価に構成することができる。
【0015】
上記のように構成したので、壁2を有するエレベータ昇降路1内を昇降するかご3と、かご3及び一側の壁2によって形成された間隙の鉛直投影面内で昇降路1の一側に配置され、かご3と釣合って昇降路1内を昇降する釣合い重り5と、昇降路1内に立設され、釣合重り5を案内する釣合重り5のガイドレール6a,6bと、釣合い重り5のガイドレール6a,6bが一側の壁2に連結固定される第一のレール固定手段であるレールブラケット8a,8bと、昇降路1内に設けられ、間隙の鉛直投影面内で昇降路1の他側に配置された巻上機7と、巻上機7が連結固定され、巻上機7を昇降路1の底面から所定の高さを隔てた位置に設けると共に、巻上機7が固定される固定手段である嵩上げ台9と、巻上機7にかかる荷重の水平方向を支持する荷重支持手段である振れ止めビーム12と、を備え、振れ止めビーム12は、レールブラケット8a,8bに連結固定されると共に、嵩上げ台9に取り付けられ、巻上機7に荷重が作用したとき、荷重をレールブラケット8a,8bに伝えて、荷重の水平方向を支持するようにしたので、ガイドレール6a,6bやレールブラケット8a,8bの強度アップあるいはレールブラケット8a,8bの数を増加させることなく、大きなコストアップを抑えながら、効果的に水平荷重を支持可能なエレベータの巻上機固定装置を実現できる。
【0016】
なお、実施の形態1では、振れ止めビーム12は、レールブラケット8a,8bに連結固定されているが、振れ止めビーム12に作用する荷重を支持可能であれば、レールブラケット8a,8bのいずれか一方に固定しても良い。
【0017】
一方で、地震等により昇降路1に揺れが発生した場合、巻上機7には水平方向だけでなく垂直方向の荷重が作用することがある。この荷重の垂直方向は、巻上機7が固定された嵩上げ台9にそのまま伝わるため、脚部10にも同じ荷重が作用する。この荷重は、脚部10のボルト穴15をボルト13に対して垂直方向に変位させるように作用する。すなわち、この荷重により脚部10が垂直方向に変位した場合、水平方向に貫通させて配置したボルト13とボルト穴15とは締結されておらず、かつ垂直方向の変位は、ボルト穴15の垂直方向の所定の長さ分だけ制限されないため、ボルト13に垂直方向の変位は伝わらない。
【0018】
従って、脚部10が垂直方向に変位したとき、ボルト13とボルト穴15とが相対的に摺動することにより、このときの脚部10の変位は、少なくともボルト穴15の垂直方向の所定の長さ分だけはボルト13に伝わらないので、振れ止めビーム12に支持されることはない。
【0019】
上記のように構成したので、巻上機7にかかる荷重の水平方向を振れ止めビーム12に伝えるボルト13と、嵩上げ台9または振れ止めビーム12のいずれか一方に設けられ、ボルト13を貫通させるボルト穴14と、嵩上げ台9または振れ止めビーム12のいずれか他方に設けられ、垂直方向はボルト13が摺動可能となるように所定の長さを有しており、かつ水平方向はボルト13が貫通可能なボルト穴15と、を備え、さらに、ボルト穴14と、ボルト穴15とを水平方向に貫通するようにボルト13が設けられ、巻上機7に荷重が作用したとき、荷重の水平方向は、ボルト13がボルト穴14に制限されて振れ止めビーム12に支持されると共に、荷重の垂直方向は、ボルト13がボルト穴15を垂直方向に摺動して振れ止めビーム12に支持されないように嵩上げ台9と振れ止めビーム12とが締結されずに取り付けられていることにより、地震等により巻上機7に荷重が作用したとき、荷重の垂直方向が振れ止めビーム12に伝わらないようにすることができる。これにより、振れ止めビーム12の強度を高くすることなく、振れ止めビーム12の破損を防止することができるので、大きなコストアップを抑えることができる。
【0020】
実施の形態2.
図6は、この発明の実施の形態2に係る巻上機7に振れ止めビームを配置して構成した巻上機固定装置を示す正面図である。図7は図6の要部を示す平面図、図8は、図6の要部を示す拡大正面図である。この発明の実施の形態2に係る巻上機固定装置は、一側が巻上機7に取り付けられ、他側が第一のレール固定手段であるレールブラケット17a,17bに連結固定されて、巻上機7にかかる荷重の水平方向を支持する荷重支持手段である振れ止めビーム16を備えていることが異なり、それ以外の同様な部分に同じ記号を付記し説明を省略する。
【0021】
図において、振れ止めビーム16は、一側が巻上機7に、他側はレールブラケット17a,17bにそれぞれ取り付けられている。巻上機7の上部には第一のボルトであるボルト18が取り付けられている。振れ止めビーム16は、略水平方向に設けられ、一側は巻上機7の上部にボルト18によって取り付けられ、他側はレールブラケット17a,17bに溶接などの手段によって固定されている。
【0022】
振れ止めビーム16の一側には、ボルト18を貫通させる第三の穴であるボルト穴19が設けられている。ボルト穴19は、ボルト18が貫通可能な程度の大きさを有する形状を有している。巻上機7の上部には、ボルト穴19を貫通させて振れ止めビーム16の一側を取り付けるためのボルト18が取り付けられている。巻上機7の上部と振れ止めビーム16の一側とは、上面側に振れ止めビーム16のボルト穴19を配置し、下面側に巻上機7の上部を配置して、ボルト穴19側からボルト18を略垂直方向に貫通させ、巻上機7の上部側に取り付けられている。
【0023】
巻上機7と振れ止めビーム16の一側との取り付け部において、ボルト18の頭とボルト穴19とは、所定の間隙が設けられている。すなわち、ボルト18は所定の長さを有し、ボルト穴19に締結されていない状態で取り付けられている。ここで、ボルト18の所定の長さとは、例えば、実施の形態1.のボルト穴15の垂直方向の長さと同程度であれば良い。これにより、ボルト18がボルト穴19を水平方向に変位したとき、ボルト18はボルト穴19に制限されるので、ボルト18の変位は振れ止めビーム16に伝わる。
【0024】
一方、ボルト18が垂直方向に変位したとき、ボルト18はボルト穴19を垂直方向に相対的に摺動するので、少なくともボルト18の所定の長さ分だけは、この変位が制限されないため、ボルト18の変位はボルト穴19に伝わらない。
【0025】
従って、巻上機7が垂直方向に変位したとき、ボルト18とボルト穴19とが相対的に摺動することにより、このときのボルト18の変位は、少なくともボルト18の所定の長さ分だけはボルト穴19に伝わらないので、振れ止めビーム16に支持されることはない。
【0026】
次に、この発明の動作について説明する。地震等により昇降路1に揺れが発生した場合、巻上機7には荷重が作用する。この荷重の水平方向は、巻上機7が固定された嵩上げ台9にそのまま伝わるため、ボルト18を水平方向に変位させるように作用する。ボルト18にこの荷重が作用すると、貫通させて配置したボルト18はボルト穴19によって水平方向の変位が制限されるため、ボルト穴19にこの荷重が伝えられる。ボルト穴19にこの荷重が作用すると、ボルト穴19から振れ止めビーム16の一側にも同じ荷重が伝えられる。伝えられたこの荷重は、振れ止めビーム16の他側からレールブラケット17a,17bに作用する。レールブラケット17a,17bは、昇降路1の壁に強固に取り付けられているので、この荷重の水平方向を壁の反力で効果的に支持することができる。
【0027】
このとき、振れ止めビーム16は、巻上機7から伝わった荷重の水平方向だけを支持可能な程度の強度を備えていれば良い。そのため、振れ止めビーム16は、例えば、実施の形態1.の振れ止めビーム12と同じように構成可能であるから、大きなコストアップとならずに、比較的安価に構成可能である。
【0028】
なお、図6において、振れ止めビーム16に加えて実施の形態1にかかる振れ止めビーム12を配置しても良い。この場合、実施の形態2に加えて実施の形態1の効果も得ることができるので、巻上機7に係る荷重の水平方向をより強力に支持できる。
【0029】
一方で、地震等により昇降路1に揺れが発生した場合、巻上機7には垂直方向の荷重が作用することがある。この荷重は、巻上機7の上部に取り付けられたボルト18にも同じように作用する。すなわち、この荷重により巻上機7が垂直方向に変位した場合、ボルト18も同じように垂直方向に変位する。ここで、貫通させて配置したボルト18はボルト穴19に締結されておらず、かつ垂直方向の変位は所定の長さ分だけ制限されないため、この荷重の垂直方向は、少なくともボルト18がボルト穴19を摺動する分だけ振れ止めビーム16に伝わらない。
【0030】
上記のように構成したので、ボルト穴14及びボルト穴15の代わりに、ボルト18を貫通させるボルト穴19が振れ止めビーム16に設けられ、ボルト18は、所定の長さを有すると共に、ボルト穴19を垂直方向に貫通するように巻上機7に設けられ、巻上機7に荷重が作用したとき、荷重の水平方向は、ボルト18がボルト穴19に制限されて振れ止めビーム16に支持されると共に、荷重の垂直方向は、ボルト18がボルト穴19を垂直方向に摺動して振れ止めビーム16に支持されないように巻上機7と振れ止めビーム16とが締結されずに取り付けられていることにより、地震等により巻上機7に荷重が作用したとき、ガイドレール6a,6bやレールブラケット17a,17bの強度アップあるいはレールブラケット17a,17bの数を増加させることなく、大きなコストアップを抑えながら、効果的に水平荷重を支持可能であって、かつ、振れ止めビーム16の強度を高くすることなく、振れ止めビーム16の破損を防止することができる。
【0031】
実施の形態3.
図9は、この発明の実施の形態3に係る振れ止めビーム21を配置して構成した巻上機固定装置を示す平面図である。この発明の実施の形態3に係る巻上機固定装置は、実施の形態1に係る振れ止めビーム12の代わりに、振れ止めビーム21と、壁側固定手段である壁側ブラケット20とを設けていることが異なり、それ以外の同様な部分に同じ記号を付記し説明を省略する。
【0032】
図において、振れ止めビーム21は、実施の形態1に係る振れ止めビーム12の脚部10側を水平方向に壁2側へ延伸させ、レールブラケット8a,8b側はカットした形状であり、延伸させた一側は昇降路1内の壁2に設けた壁側ブラケット20に連結固定され、他側は脚部10に取り付けられている。壁側ブラケット20は、レールブラケット8a,8bが固定される昇降路1内の壁2に垂直な壁面に取り付けられており、振れ止めビーム21は壁側ブラケット20に溶接などの手段によって固定されている。
【0033】
次に、この発明の動作について説明する。地震等により昇降路1に揺れが発生した場合、巻上機7には荷重が作用する。この荷重の水平方向は、巻上機7が固定された嵩上げ台9にそのまま伝わるため、脚部10にも同じ水平方向の荷重が作用する。ここで、脚部10に伝えられたこの荷重は、振れ止めビーム21の一側から壁側ブラケット20に作用する。壁側ブラケット20は、昇降路1の壁2に強固に取り付けられているので、この荷重の水平方向は、壁2の反力で効果的に支持することができる。
【0034】
上記のように構成したので、レールブラケット8a,8bの代わりに、壁2に設けられ、振れ止めビーム21の一側を固定する壁側ブラケット20を備え、振れ止めビーム21は、一側が壁側ブラケット20に連結固定され、他側が嵩上げ台9に取り付けられることで、ガイドレール6a,6bやレールブラケット8a,8bの強度アップあるいはレールブラケット8a,8bの数を増加させることなく、大きなコストアップを抑えながら、効果的に水平荷重を支持可能なエレベータの巻上機固定装置を実現できる。
【0035】
なお、振れ止めビーム21の代わりに、実施の形態2における振れ止めビーム16のレールブラケット8a,8b側はカットして、巻上機7側を水平方向に壁2側に延伸させて、延伸させた一側を昇降路1内の壁2に設けた壁側ブラケット20に連結固定して、他側は巻上機7に取り付けて構成される振れ止めビーム16’(図示しない)を設ける。これにより、振れ止めビーム21と同等の作用と効果を奏することができる。
【0036】
すなわち、実施の形態3における振れ止めビーム21と振れ止めビーム16’とは、略中間部が脚部10または巻上機7のいずれかに取り付けられていることが異なるが、それ以外は同様であるため、いずれも巻上機7に作用する荷重の水平方向を伝える作用に相違は無い。
【0037】
上記のように構成したので、振れ止めビーム16’は、一側が壁側ブラケット20に連結固定され、他側が嵩上げ台9の代わりに、巻上機7に取り付けられることで、ガイドレール6a,6bやレールブラケット17a,17bの強度アップあるいはレールブラケット17a,17bの数を増加させることなく、大きなコストアップを抑えながら、効果的に水平荷重を支持可能なエレベータの巻上機固定装置を実現できる。
【0038】
なお、図9において、振れ止めビーム21または振れ止めビーム16’に加えて振れ止めビーム12または振れ止めビーム16を組み合わせて配置しても良い。この場合、実施の形態3に加えて実施の形態1または実施の形態2の効果も得ることができるので、巻上機7に係る荷重の水平方向をより強力に支持できる。
【0039】
実施の形態4.
図10は、この発明の実施の形態4に係る振れ止めビーム22と振れ止めビーム23とを配置して構成した巻上機固定装置を示す平面図である。この発明の実施の形態4に係る巻上機固定装置は、実施の形態1に係る振れ止めビーム12の代わりに振れ止めビーム22と、振れ止めビーム23とを配置して設けていることが異なり、それ以外の同様な部分に同じ記号を付記し説明を省略する。
【0040】
図において、振れ止めビーム22は、実施の形態1に係る第一の振れ止めビーム12の脚部10側を水平方向に延伸させ、レールブラケット8a,8b側はカットした形状であり、延伸させた側は振れ止めビーム23の一側に取り付けられ、他側は脚部10に取り付けられている。振れ止めビーム23の他側は、かご3用ガイドレール4aを壁2に固定するための第二のレールブラケットであるレールブラケット24に連結固定されている。振れ止めビーム22の脚部10側と振れ止めビーム23の一側、及び振れ止めビーム23の他側とレールブラケット24とは溶接などの手段によって固定されている。
【0041】
次に、この発明の動作について説明する。地震等により昇降路1に揺れが発生した場合、巻上機7には荷重が作用する。この荷重の水平方向は、巻上機7が固定された嵩上げ台9にそのまま伝わるため、脚部10にも同じ水平方向の荷重が作用する。ここで、脚部10に伝えられたこの荷重は、振れ止めビーム22の一側から他側に伝わり、この他側に固定された振れ止めビーム23の一側にも作用する。振れ止めビーム23の一側に作用したこの荷重は、他側からレールブラケット24に作用する。レールブラケット24は、壁2に強固に取り付けられているので、この荷重の水平方向は、壁2の反力で効果的に支持することができる。
【0042】
なお、振れ止めビーム22の代わりに、実施の形態2における振れ止めビーム16のレールブラケット8a,8b側はカットして、巻上機7側を水平方向に延伸させ、延伸させた側を振れ止めビーム23の一側に取り付けて、他側は巻上機7に取り付けて構成される第二の振れ止めビーム16”(図示しない)を設ける。これにより、振れ止めビーム22と同等の作用と効果を奏することができる。
【0043】
すなわち、実施の形態4における振れ止めビーム22と振れ止めビーム16”とは、略中間部が脚部10または巻上機7のいずれかに取り付けられていることが異なるが、それ以外は同様であるため、いずれも巻上機に作用する荷重の水平方向を伝える作用に相違は無い。
【0044】
上記のように構成したので、振れ止めビーム16”は、一側がレールブラケット24に連結固定され、他側が嵩上げ台9の代わりに、巻上機7に取り付けられることで、ガイドレール6a,6bやレールブラケット8a,8b,17a,17bの強度アップあるいはレールブラケット8a,8b,17a,17bの数を増加させることなく、大きなコストアップを抑えながら、効果的に水平荷重を支持可能なエレベータの巻上機固定装置を実現できる。
【0045】
なお、図10において、振れ止めビーム22または振れ止めビーム16”に加えて振れ止めビーム12または振れ止めビーム16または振れ止めビーム21を組み合わせて配置しても良い。この場合、実施の形態4に加えて実施の形態1から実施の形態3の効果も得ることができるので、巻上機7に係る荷重の水平方向をより強力に支持できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施の形態1におけるエレベータの巻上機固定装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1における図1のエレベータの巻上機固定装置の要部を示す正面図である。
【図3】この発明の実施の形態1における図1のエレベータの巻上機固定装置の要部を示す平面図である。
【図4】この発明の実施の形態1における図1のエレベータの巻上機固定装置の要部を示す拡大正面図である。
【図5】この発明の実施の形態1におけるエレベータの巻上機固定装置の要部を示す拡大側面図である。
【図6】この発明の実施の形態2におけるエレベータの巻上機固定装置の要部を示す正面図である。
【図7】この発明の実施の形態2における図6のエレベータの巻上機固定装置の要部を示す平面図である。
【図8】この発明の実施の形態2におけるエレベータの巻上機固定装置の要部を示す拡大図である。
【図9】この発明の実施の形態3におけるエレベータの巻上機固定装置の要部を示す平面図である。
【図10】この発明の実施の形態4におけるエレベータの巻上機固定装置の要部を示す平面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 昇降路、 2 壁、3 かご、4a,4b かご用ガイドレール、5 釣合い重り、6a,6b 釣合い重り用ガイドレール、7 巻上機、8a,8b レールブラケット、9 嵩上げ台、10 脚部、11 ピットベース、12 振れ止めビーム、13 ボルト、14,15 ボルト穴、16 振れ止めビーム、17a,17b レールブラケット、18 ボルト、19 ボルト穴、20 壁側ブラケット、21〜23 振れ止めビーム、24 レールブラケット
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、エレベータの巻上機を固定するための巻上機固定装置に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁を有するエレベータ昇降路内を昇降するかごと、
前記かご及び一側の前記昇降路壁によって形成された間隙の鉛直投影面内で前記昇降路の一側に配置され、前記かごと釣合って前記昇降路内を昇降する釣合い重りと、
前記昇降路内に立設され、前記釣合重りを案内する前記釣合重りのガイドレールと、
前記釣合い重りのガイドレールが前記一側の前記昇降路壁に連結固定される第一のレール固定手段と、
前記昇降路内に設けられ、前記間隙の鉛直投影面内で前記昇降路の他側に配置された巻上機と、
前記巻上機が連結固定され、前記巻上機を前記昇降路の底面から所定の高さを隔てた位置に設けると共に、前記巻上機が固定される固定手段と、
前記巻上機にかかる荷重の水平方向を支持する荷重支持手段と、を備え、
前記荷重支持手段は、前記第一のレール固定手段に連結固定されると共に、前記固定手段に取り付けられ、前記巻上機に荷重が作用したとき、前記荷重を前記第一のレール固定手段に伝えて、前記荷重の水平方向を支持することを特徴とするエレベータの巻上機固定装置。
【請求項2】
前記荷重支持手段は、水平方向に所定の長さを有する形状であることを特徴とする請求項1に記載のエレベータの巻上機固定装置。
【請求項3】
前記昇降路内に立設され、前記かごの両側に配置されて前記かごを案内する前記かごのガイドレールと、
前記第一のレール固定手段の代わりに、前記かごのガイドレールが前記昇降路壁に連結固定される第二のレール固定手段と、を備え、
前記荷重支持手段は、一側が前記第二のレール固定手段に連結固定され、他側が前記固定手段に取り付けられたことを特徴とする請求項2に記載のエレベータの巻上機固定装置。
【請求項4】
前記第一のレール固定手段の代わりに、前記昇降路壁に設けられ、前記荷重支持手段の一側を固定する壁側固定手段を備え、
前記荷重支持手段は、一側が前記壁側固定手段に連結固定され、他側が前記固定手段に取り付けられたことを特徴とする請求項2に記載のエレベータの固定装置。
【請求項5】
前記巻上機にかかる荷重の水平方向を前記荷重支持手段に伝えると共に所定の長さを有する第一のボルトと、
前記固定手段または前記荷重支持手段のいずれか一方に設けられ、前記第一のボルトを貫通させる第一の穴と、
前記固定手段または前記荷重支持手段のいずれか他方に設けられ、垂直方向は前記第一のボルトが摺動可能となるように所定の長さを有しており、かつ水平方向は前記第一のボルトが貫通可能な第二の穴と、
を備えたことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載のエレベータの巻上機固定装置。
【請求項6】
前記第一の穴と、前記第二の穴とを水平方向に貫通するように前記第一のボルトが設けられ、
前記巻上機に荷重が作用したとき、前記荷重の水平方向は、前記第一のボルトが前記第一の穴に制限されて前記荷重支持手段に支持されると共に、前記荷重の垂直方向は、前記第一のボルトが前記第二の穴を垂直方向に摺動して前記荷重支持手段に支持されないように前記固定手段と前記荷重支持手段とが締結されずに取り付けられたことを特徴とする請求項5に記載のエレベータの巻上機固定装置。
【請求項7】
前記荷重支持手段は、一側が前記第一のレール固定手段に連結固定され、他側が前記固定手段の代わりに、前記巻上機に取り付けられたことを特徴とする請求項2または請求項5または請求項6のいずれかに記載のエレベータの巻上機固定装置。
【請求項8】
前記荷重支持手段は、一側が前記第二のレール固定手段に連結固定され、他側が前記固定手段の代わりに、前記巻上機に取り付けられたことを特徴とする請求項3または請求項5または請求項6のいずれかに記載のエレベータの巻上機固定装置。
【請求項9】
前記荷重支持手段は、一側が前記壁側固定手段に連結固定され、他側が前記固定手段の代わりに、前記巻上機に取り付けられたことを特徴とする請求項4から請求項6のいずれかに記載のエレベータの巻上機固定装置。
【請求項10】
前記第一の穴及び前記第二の穴の代わりに、前記第一のボルトを貫通させる第三の穴が前記荷重支持手段に設けられ、
前記第一のボルトは、所定の長さを有すると共に、前記第三の穴を垂直方向に貫通するように前記巻上機に設けられ、
前記巻上機に荷重が作用したとき、前記荷重の水平方向は、前記第一のボルトが前記第三の穴に制限されて前記荷重支持手段に支持されると共に、前記荷重の垂直方向は、前記第一のボルトが前記第三の穴を垂直方向に摺動して前記荷重支持手段に支持されないように前記巻上機と前記荷重支持手段とが締結されずに取り付けられたことを特徴とする請求項7から請求項9のいずれかに記載のエレベータの巻上機固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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