説明

エレベータの巻上機支持構造

【課題】地震等によってマシンビームと防振具との間に、水平方向、上下方向、巻上機を倒す方向のいずれかの力が作用したときでも、マシンビームと防振具とを堅牢な締結状態に保持することができるエレベータの巻上機支持構造の提供。
【解決手段】本発明は、下面板3cとの間でマシンビーム2を狭圧する防振プレート11と、下面板3cと防振プレート11との間に設けられる介設プレート9とを備えるとともに、下面板3cの第1貫通穴3c2、防振プレート11の第3貫通穴11a、及び介設プレート9の第5貫通穴9aに挿入されるボルト10aを含み、下面板3cと介設プレート9と防振プレート11とを締結する第2締結具10と、マシンビーム2の第2貫通穴2aと防振プレート11の第4貫通穴11bに挿入されるボルト8aを含み、マシンビーム2と防振プレート11とを締結する第3締結具8とを備えた構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マシンビーム上に設置された防振具を介して、この防振具の上方に配置されるマシンベース上に巻上機を取り付けるようにしたエレベータの巻上機支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は従来の支持構造によって巻上機が機械室床面上に取り付けられた状態を示す図、図5は図4に示す従来のエレベータの巻上機支持構造の要部構成を示す平面図、図6は図5のB−B矢視に相応する断面図である。
【0003】
図4に示すように、エレベータにあっては、昇降路の上部に設けられた機械室床面1上にマシンビーム2が固定される。このマシンビーム2の上面フランジ上に設けた防振具3の上に、例えばマシンベース受け部7が配置され、このマシンベース受け部7によってマシンベース4が保持されている。このマシンベース4上に、乗りかごや釣り合いおもりの昇降に活用されワイヤロープを駆動する巻上機5が取り付けられている。
【0004】
図5,6に示すように、防振具3は、マシンビーム2の上面フランジ上に配置される下面板3cと、この下面板3cに対向するように配置される上面板3bと、これらの下面板3cと上面板3bとの間に配置され、防振ゴムから成る防振体3aとを含んでいる。また、マシンビーム2の上面フランジと防振具3の下面板3cとを固定する締結具6は、防振具3の下面板3cに形成された貫通穴に挿入されるボルト6bと、このボルト6bに螺合するナット6cと、これらのボルト6bとナット6cとの間に設けられ、マシンビーム2の上面フランジと防振具3の下面板3cとを締結するクリップ6aとを含んでいる。この締結具6は、マシンビーム2の上面フランジの一方の側端近傍部と、他方の側端近傍部の双方に設けられている。この種の従来技術が特許文献1に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭55−106981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した図4〜6に示す従来技術は、地震等によってマシンビーム2の上面フランジの延設方向に沿う水平方向に作用する力に対しては、防振具3の下面板3cの動きが、それぞれの締結具6に含まれるボルト6bの軸部によって阻止されるので、マシンビーム2に対して防振具3が位置ずれを生じることなく保たれる。しかし、マシンビーム2の上面フランジの延設方向に直交する上下方向に作用する力に対しては、上面フランジの両側端近傍部にそれぞれ配置された締結具6のクリップ6aに緩みを生じて、マシンビーム2に対する防振具3の位置ずれを生じ、これに伴って防止具3の上方に配置される巻上機5に位置ずれを生じる懸念がある。また、巻上機5の倒れ方向に作用するモーメント荷重に対しても、締結具6のクリップ6aに緩みを生じやすく、これに伴って巻上機5が傾いたり、移動したりする懸念がある。
【0007】
なお、前述した巻上機支持構造を有する既設のエレベータにあって、前述のようにマシンビーム2に対する防振具3の位置ずれを生じたときには、乗りかご及び釣り合いおもりを固定した状態で巻上機5を吊りあげて、防振具3の交換や、防振具3の位置調整作業を行わなければならず、大掛かりな作業となってしまう。
【0008】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、地震等によってマシンビームと防振具との間に、水平方向、上下方向、巻上機を倒す方向のいずれかの力が作用したときでも、マシンビームと防振具とを堅牢な締結状態に保持することができるエレベータの巻上機支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明に係るエレベータの巻上機支持構造は、エレベータの機械室床面上に固定されるマシンビームと、このマシンビームに締結され、前記マシンビームの上面フランジ上に設置され第1貫通穴を有する下面板、及びこの下面板上に設けられる防振体を含む防振具と、この防振具の上方に配置されるマシンベースと、前記防振具の前記下面板と前記マシンベースの前記上面フランジとを締結する締結手段とを備え、前記マシンベース上に巻上機を取り付けるようにしたエレベータの巻上機支持構造において、前記マシンビームの前記上面フランジに第2貫通穴を設け、前記防振具の前記下面板との間で、前記マシンビームの前記上面フランジを狭圧するように配置され、前記防振具の前記下面板の前記第1貫通穴と同芯の第3貫通穴と、前記マシンビームの前記上面フランジの前記第2貫通穴と同芯の第4貫通穴とを有する防振プレートと、前記防振プレートと前記防振具の前記下面板との間に配置され、前記防振具の前記下面板の前記第1貫通穴、及び前記防振プレートの前記第3貫通穴と同芯の第5貫通穴を有する介設プレートとを備えるとともに、前記締結手段は、前記防振具の前記下面板の前記第1貫通穴、前記防振プレートの前記第3貫通穴、及び前記介設プレートの前記第5貫通穴に挿入されるボルトと、このボルトに螺合するナットとを含み、前記防振具の前記下面板と前記介設プレートと前記防振プレートとを互いに締結する締結具と、前記マシンビームの前記上面フランジの前記第2貫通穴と前記防振プレートの前記第4貫通穴に挿入されるボルトと、このボルトに螺合するナットを含み、前記マシンビームの前記上面フランジと前記防振プレートとを互いに締結する締結具とを有することを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明は、防振具の下面板との間で、マシンビームの上面フランジを挟むように配置される防振プレートと、防振具の下面板と防振プレートとの間に形成される隙間を埋める介設プレートとを備えるとともに、防振具の下面板と介設プレートと防振プレートとを互いに締結するボルト、ナットを含む締結具を設けたことにより、防振具の下面板と介設プレートと防振プレートとを一体構造物に形成することができる。また、マシンビームの上面フランジと防振プレートとを互いに締結するボルト、ナットを含む締結具を設けたことにより、前述した防振具の下面板と介設プレートと防振プレートとを含む一体構造物と、マシンビームの上面フランジとを一体構造物とすることができる。
【0011】
このように構成したことにより、前述の2つの締結具のそれぞれに含まれるボルト、ナットの協働による大きな締結力を介して、防振具の下面板をマシンビームの上面フランジに締結することができる。これにより、地震等によってマシンビームと防振具との間に、水平方向、上下方向、巻上機を倒す方向のいずれかの力が作用したときでも、これらのマシンビーと防振具とを堅牢な締結状態に保持することができ、マシンビームと防振具との間の地震等に伴う位置ずれを防ぐことができる。
【0012】
なお、既設のエレベータに本発明を適用する際には、既設のエレベータに設けられる締結具のナットを緩めてボルトから外し、これらのボルトとナットとともにマシンビームの上面フランジと防振具の下面板とを締結していたクリップを取り外すようにする。ここで例えば、マシンビームの上面フランジに第2貫通穴を穿設する。
【0013】
この状態において、第5貫通穴を防振具の下面板の第1貫通穴に適合させるように介設プレートを配置し、さらに介設プレートの第5貫通穴に適合するように第3貫通穴を位置させ、また、マシンビームの上面フランジの第2貫通穴に適合するように第4貫通穴を位置させて防振プレートを配置する。そして、防振プレートの第3貫通穴、介設プレートの第5貫通穴、防振具の下面板の第1貫通穴に、締結具に含まれるボルトを挿入し、このボルトにナットを螺合させ、ナットを締め付ける。これによって、前述の一体構造物をマシンビームの上面フランジに締結することができる。すなわち、防振具の下面板と介設プレートと防振プレートとを含む一体構造物と、マシンビームの上面フランジとを一体構造部に形成することができる。このような防振プレート、介設プレートの配置作業、及び締結具による締結作業を巻上機の吊りあげ作業を要することなく、簡単に行うことができる。
【0014】
また本発明は、前記発明において、前記防振具の前記下面板の前記第1貫通穴は、前記下面板の一方の側端近傍部に設けられる第1貫通穴と、前記下面板の他方の側端近傍部に設けられる第1貫通穴とから成り、前記防振プレートは、前記防振具の前記下面板の前記他方の側端近傍部との間で、前記マシンビームの前記上面フランジの他方の側端近傍部を狭圧するように配置されるものから成り、前記介設プレートは、前記防振プレートと前記防振具の前記下面板の前記他方の側端近傍部との間に配置されるものから成り、前記締結手段は、前記下面板の前記一方の側端近傍部に設けた前記第1貫通穴に挿入されるボルトと、このボルトに螺合するナットと、これらのボルトとナットとの間に介設され、前記下面板の一方の側端近傍部付近に位置する前記マシンビームの前記上面フランジの一方の側端近傍部と、前記下面板の前記一方の側端近傍部とを締結するクリップとを含む締結具と、前記防振具の前記下面板の前記他方の側端近傍部に設けた第1貫通穴、前記防振プレートの前記第3貫通穴、及び前記介設プレートの前記第5貫通穴に挿入されるボルトと、このボルトに螺合するナットとを含み、前記防振具の前記下面板の前記他方の側端近傍部と前記介設プレートと前記防振プレートとを互いに締結する締結具と、前記マシンビームの前記上面フランジの前記他方の側端近傍部に設けた第2貫通穴と前記防振プレートの前記第4貫通穴に挿入されるボルトと、このボルトに螺合するナットとを含み、前記マシンビームの前記上面フランジの前記他方の側端近傍部と前記防振プレートとを締結する締結具とを有することを特徴としている。
【0015】
このように構成した本発明は、既設のエレベータに本発明を適用する場合には、既設の締結具の一方のみを本発明の締結具に交換すればよいので、作業を簡単に行うことができる。
【0016】
また本発明は、前記発明において、前記防振具の前記下面板の前記第1貫通穴は、前記下面板の一方の側端近傍部に設けられる第1貫通穴と、前記下面板の他方の側端近傍部に設けられる第1貫通穴とから成り、前記防振プレートは、前記防振具の前記下面板の前記一方の側端近傍部との間で、前記マシンビームの前記上面フランジの一方の側端近傍部を狭圧するように配置される第1防振プレートと、前記防振具の前記下面板の前記他方の側端近傍部との間で、前記マシンビームの前記上面フランジの他方の側端近傍部を狭圧するように配置される第2防振プレートとから成り、前記介設プレートは、前記第1防振プレートと前記防振具の前記下面板の前記一方の側端近傍部との間に配置される第1介設プレートと、前記第2防振プレートと前記防振具の前記下面板の前記他方の側端近傍部との間に配置される第2介設プレートとから成り、前記締結手段は、前記防振具の前記下面板の前記一方の側端近傍部に設けた第1貫通穴、前記第1防振プレートの前記第3貫通穴、及び前記第1介設プレートの前記第5貫通穴に挿入されるボルトと、このボルトに螺合するナットとを含み、前記防振具の前記下面板の前記一方の側端近傍部と前記第1介設プレートと前記第1防振プレートとを互いに締結する締結具と、前記防振具の前記下面板の前記他方の側端近傍部に設けた第1貫通穴、前記第2防振プレートの前記第3貫通穴、及び前記第2介設プレートの前記第5貫通穴に挿入されるボルトと、このボルトに螺合するナットとを含み、前記防振具の前記下面板の前記他方の側端近傍部と前記第2介設プレートと前記第2防振プレートとを互いに締結する締結具と、前記マシンビームの前記上面フランジの前記一方の側端近傍部に設けた前記第2貫通穴と前記第1防振プレートの前記第4貫通穴に挿入されるボルトと、このボルトに螺合するナットとを含み、前記マシンビームの前記上面フランジの前記一方の側端近傍部と前記第1防振プレートとを互いに締結する締結具と、前記マシンビームの前記上面フランジの前記他方の側端近傍部に設けた前記第2貫通穴と前記第2防振プレートの前記第4貫通穴に挿入されるボルトと、このボルトに螺合するナットとを含み、前記マシンビームの前記上面フランジの前記他方の側端近傍部と前記第2防振プレートとを互いに締結する締結具とを有することを特徴としている。
【0017】
このように構成した本発明は、締結具の数を増やすことにより、さらに堅牢な巻上機支持構造を実現させることができる。
【0018】
また本発明は、前記発明において、前記第1防振プレートと前記第2防振プレートは、一体構造物から成ることを特徴とするエレベータのことを特徴としている。
【0019】
このように構成した本発明は、部品数を低減できるとともに、防振プレートの設置作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、防振具の下面板と介設プレートと防振プレートとを締結する締結具と、防振プレートとマシンビームの上面フランジとを締結する締結具のそれぞれに含まれるボルトとナットの協働による大きな締結力を介して、防振具の下面板をマシンビームの上面フランジに締結することができる。これによって、地震等によってマシンビームと防振具との間に水平方向、上下方向、巻上機を倒す方向のいずれかの力が作用したときでも、これらのマシンビームと防振具とを堅牢な締結状態に保持することができる。したがって本発明は、マシンビームと防振具との間の地震等に伴う位置ずれを防ぐことができ、従来生じる懸念のあった巻上機の位置ずれや倒れを防止することができる。すなわち本発明は、地震等に伴って巻上機に作用する力に対して従来よりも強固な巻上機支持構造を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るエレベータの巻上機支持構造の一実施形態の要部構成を示す平面図である。
【図2】図1のA−A矢視に相応する断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】従来の支持構造によって巻上機が機械室床面上に取り付けられた状態を示す図である。
【図5】図4に示す従来のエレベータの巻上機支持構造の要部構成を示す平面図である。
【図6】図5のB−B矢視に相応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るエレベータの巻上機支持構造の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0023】
図1は本発明に係るエレベータの巻上機支持構造の一実施形態の要部構成を示す平面図、図2は図1のA−A矢視に相応する断面図、図3は図2の要部拡大図である。
【0024】
本実施形態に係る巻上機支持構造も、防振体3とマシンビーム2の上面フランジとの接続部分を除けば、例えば前述した図4に示すものと同様にして巻上機5を支持する構成となっている。すなわち、本実施形態も、エレベータの機械室床面1上に固定されるマシンビーム2と、このマシンビーム2に締結され、マシンビーム2の上面フランジ上に載置される後述の第1貫通穴3c1,3c2を有する下面板3c、及びこの下面板3c上に設けられる例えば防振ゴムから成る防振体3aを含む防振具3とを備えている。また本実施形態も、防振具3の上方に例えばマシンベース受け部7を介して配置されるマシンベース4と、防振具3の下面板3cをマシンビーム2の上面フランジに締結する締結手段とを備えており、マシンベース4上に巻上機5を取り付けた構成にしてある。
【0025】
上述した基本構成とともに、本実施形態では、マシンビーム2の上面フランジの他方の側端近傍部に、図3に示すように第2貫通穴2aを設けてある。
【0026】
また本実施形態は、同図3に示すように、防振具3の下面板3cの第1貫通穴は、下面板3cの一方の側端近傍部に設けた第1貫通穴3c1と,下面板3cの他方の側端近傍部に設けた第2貫通穴3c2とから成っている。
【0027】
また本実施形態は、例えばそれぞれ防振具3の下面板3cの他方の側端近傍部に配置される防振プレート11と、介設プレート9とを備えている。
【0028】
防振プレート11は、防振具3の下面板3cの他方の側端近傍部との間でマシンビーム2の上面フランジの他方の側端近傍部を狭圧するように配置され、防振具3の下面板3cの2つの第1貫通穴のうちの第1貫通穴3c2と同芯の第3貫通穴11aと、マシンビーム2の上面フランジの他方の側端近傍部の第2貫通穴2aと同芯の第4貫通穴11bを有する板状体から成っている。
【0029】
介設プレート9は、防振プレート11と防振具3の下面板3cの他方の側端近傍部との間に配置され、防振具3の下面板3cの第1貫通穴3c2、及び防振プレート11の第3貫通穴11aと同芯の第5貫通穴9aを有する板状体から成っている。
【0030】
防振具3の下面板3cとマシンビーム2の上面フランジとを締結する締結手段は、以下に述べるように3つの締結具を含んでいる。
【0031】
締結具6、すなわち第1締結具6は、前述した図4〜6に示した従来技術と同等のものであり、防振具3の下面板3cの一方の側端近傍部に設けた第1貫通穴3c1に挿入されるボルト6bと、このボルト6bに螺合するナット6cと、これらのボルト6bとナット6cとの間に介設され、下面板3cの一方の側端近傍部付近に位置するマシンビーム2の上面フランジの一方の側端近傍部と、下面板3cの一方の側端近傍部とを締結するクリップ6aとを含んでいる。
【0032】
第2締結具10は、防振具3の下面板3cの他方の側端近傍部に設けた第1貫通穴3c2、防振プレート11の第3貫通穴11a、及び介設プレート9の第5貫通穴9aに挿入されるボルト10aと、このボルト10aに螺合するナット10bとを含み、防振具3の下面板3cの他方の側端近傍部と介設プレート9と防振プレート11とを互いに締結する。
【0033】
第3締結具8は、マシンビーム2の上面フランジの他方の側端近傍部に設けた第2貫通穴2aと防振プレート11の第4貫通穴11bに挿入されるボルト8aと、このボルト8aに螺合するナット8bを含み、マシンビーム2の上面フランジの他方の側端近傍部と防振プレート11とを互いに締結する。
【0034】
このように構成した本実施形態は、防振具3の下面板3cの他方の側端近傍部との間で、マシンビーム2の上面フランジの他方の側端近傍部を挟むように配置される防振プレート11と、防振具3の下面板3cの他方の側端近傍部と防振プレート11との間に形成される隙間を埋める介設プレート9を備えるとともに、防振具3の下面板3cの他方の側端近傍部と介設プレート9と防振プレート11とを互いに締結するボルト10a、ナット10bを含む第2締結具10を設けたことにより、防振具3の下面板3cの他方の側端近傍部と介設プレート9と防振プレート11とを一体構造物に形成することができる。また、マシンビーム2の上面フランジの他方の側端近傍部と防振プレート11を互いに締結するボルト8a、ナット8bを含む第3締結具8を設けたことにより、前述した防振具3の下面板3cと介設プレート9と防振プレート11を含む一体構造物と、マシンビームの上面フランジの他方の側端近傍部とを一体構造物とすることができる。
【0035】
このように構成したことによって本実施形態は、防振具3の下面板3cの他方の側端近傍部側、及びマシンビーム2の上面フランジの他方の側端近傍部側においては、第2締結具10に含まれるボルト10a、ナット10b、第3締結具8に含まれるボルト8a、ナット8bのそれぞれの協働による大きな締結力を介して、防振具3の下面板3cをマシンビーム2の上面フランジに締結することができる。なお、防振具3の下面板3cの一方の側端近傍部側、及びマシンビーム2の上面フランジの一方の側端近傍部側においては、従来技術と同様に第1締結具6によって、防振具3の下面板3cをマシンビーム2の上面フランジに締結することができる。
【0036】
これにより本実施形態は、地震等によってマシンビーム2と防振具3との間に、水平方向、上下方向、巻上機5を倒す方向のいずれかの力が作用したときに、これらのマシンビーム2と防振具3とを堅牢な締結状態に保持することができ、マシンビーム2と防振具3との間の地震等に伴う位置ずれを防ぐことができる。したがって、巻上機5の位置ずれ、及び倒れを防止でき、地震等に伴って巻上機5に作用する力に対して強固な巻上機5の支持構造を実現させることができる。
【0037】
また本実施形態によれば、既設のエレベータに適用する場合には、既設の2つの第1締結具6のうちの一方のみを交換すればよいので、作業を簡単に行うことができる。
【0038】
また、既設のエレベータに本実施形態を適用する際には、既設のエレベータに設けられる2つの第1締結具6のうちの他方の第1締結具6のナット6cを緩めてボルト6bから外し、これらのボルト6b、ナット6cとともにマシンビーム6の上面フランジの他方の側端近傍部と防振具3の下面板3cの他方の側端近傍部とを締結していたクリップ6aを取り外す。ここで例えば、マシンビーム2の上面フランジの他方の側端近傍部に、防振プレート11の第4貫通穴11bに適合する第2貫通穴2aを穿設する。
【0039】
この状態において、第5貫通穴9aを防振具3の下面板3cの第1貫通穴3c2に適合させるように介設プレート9を配置し、さらに介設プレート9の第5貫通穴9aに適合するように第3貫通穴11aを位置させるとともに、マシンビーム2の上面フランジの第2貫通穴2aに適合するように第4貫通穴11bを位置させて防振プレート11を配置する。そして、防振プレート11の第3貫通穴11a、介設プレート9の第5貫通穴9a、防振具3の下面板3cの第1貫通穴3c2に第2締結具10に含まれるボルト10aを挿入し、このボルト10aにナット10bを螺合させ、ナット10bを締め付ける。これによって、防振具3の下面板3cと介設プレート9と防振プレート11を互いに締結し、これらの防振具3の下面板3cと介設プレート9と防振プレート11とを一体構造物に形成することができる。
【0040】
また、防振プレート11の第4貫通穴11bとマシンビーム2の上面フランジの第2貫通穴2aに、第3締結具8に含まれるボルト8aを挿入し、このボルト8aにナット8bを螺合させ、ナット8bを締め付ける。これによって前述の一体構造物をマシンビーム2の上面フランジに締結することができる。すなわち、防振具3の下面板3cと介設プレート9と防振プレート11を含む一体構造物と、マシンビーム2の上面フランジとを一体構造物に形成することができる。このような防振プレート11、介設プレート9の配置作業、及び第2締結具10、第3締結具8による締結作業を、巻上機5の吊り上げ作業を要することなく簡単に行うことができる。
【0041】
なお、前述した実施形態は、マシンビーム2の上面フランジの一方の側端近傍部側の締結を従来技術と同様の第1締結具6で行っているが、この部分においても防振プレート11及び介設プレート9を設け、第2締結具10及び第3締結具8で締結するように構成してもよい。
【0042】
すなわち、防振プレート11を、防振具3の下面板3cの一方の側端近傍部との間でマシンビーム2の上面フランジの一方の側端近傍部を狭圧するように配置される第1防振プレートと、防振具3の下面板3cの他方の側端近傍部との間でマシンビーム2の上面フランジの他方の側端近傍部を狭圧するように配置される第2防振プレートとによって構成する。
【0043】
また、介設プレート9を、第1防振プレートと防振具3の下面板3cの一方の側端近傍部との間に配置される第1介設プレートと、第2防振プレートと防振具3の下面板3cの他方の側端近傍部との間に配置される第2介設プレートとによって構成する。
【0044】
また、防振具3の下面板3cとマシンビーム2の上面フランジとを締結する締結手段を、以下のような4つの締結具によって構成する。
【0045】
1つ目の締結具は、防振具3の下面板3cの一方の側端近傍部に設けた第1貫通穴3c1、第1防振プレートの第3貫通穴11a、及び第1介設プレートの第5貫通穴9aにそれぞれ挿入されるボルト10aと、このボルト10aに螺合するナット10bを含み、防振具3の下面板3cの一方の側端近傍部と第1介設プレートと第1防振プレートとを互いに締結する第2締結具10とする。
【0046】
2つ目の締結具は、防振具3の下面板3cの他方の側端近傍部に設けた第1貫通穴3c2、第2防振プレートの第3貫通穴11a、及び第2介設プレートの第5貫通穴9aにそれぞれ挿入されるボルト10aと、このボルト10aに螺合するナット10bを含み、防振具3の下面板3cの他方の側端近傍部と第2介設プレートと第2防振プレートとを互いに締結する第2締結具10とする。
【0047】
3つ目の締結具は、マシンビーム2の上面フランジの一方の側端近傍部に設けた第2貫通穴2aと第1防振プレートの第4貫通穴11bにそれぞれ挿入されるボルト8aと、このボルト8aに螺合するナット8bとを含み、マシンビーム2の上面フランジの一方の側端近傍部と第1防振プレートとを互いに締結する第3締結具8とする。
【0048】
4つ目の締結具は、マシンビーム2の上面フランジの他方の側端近傍部に設けた第2貫通穴2aと第2防振プレートの第4貫通穴11bにそれぞれ挿入されるボルト8aと、このボルト8aに螺合するナット8bとを含み、マシンビーム2の上面フランジの他方の側端近傍部と第2防振プレートとを互いに締結する第3締結具8とする。
【0049】
このように構成したものでは、防振具3の下面板3cの一方の側端近傍部側にあっては、第1防振プレート及び第1介設プレートと、第2締結具10及び第3締結具8との組み合わせによって、また、防振具3の下面板3cの他方の側端近傍部側にあっては、第2防振プレート及び第2介設プレートと、第2締結具10及び第3締結具8との組み合わせによって、防振具3の下面板3cをマシンビーム2の上面フランジに締結することができ、さらに堅牢な巻上機5の支持構造を実現させることができる。
【0050】
なお、前述のように防振プレートとして第1防振プレートと第2防振プレートとを設ける場合、これらの第1防振プレートと第2防振プレートとを、同一の板材から成形加工した一体構造物によって構成してもよい。このように構成したものでは、部品数を低減できるとともに、防振プレートの設置作業を容易に行うことができる。
【0051】
また、前述した実施形態では、防振具3上に配置したマシンベース受け部7によってマシンベース4を保持する構成にしてあるが、マシンベース受け部7を設けずに、防振具3によって直接マシンベース4を保持する構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 機械室床面
2 マシンビーム
2a 第2貫通穴
3 防振具
3a 防振体
3b 上面板
3c 下面板
3c1 第1貫通穴
3c2 第1貫通穴
4 マシンベース
5 巻上機
6 第1締結具
6a クリップ
6b ボルト
6c ナット
7 マシンベース受け部
8 第3締結具
8a ボルト
8b ナット
9 介設プレート
9a 第5貫通穴
10 第2締結具
10a ボルト
10b ナット
11 防振プレート
11a 第3貫通穴
11b 第4貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの機械室床面上に固定されるマシンビームと、このマシンビームに締結され、前記マシンビームの上面フランジ上に設置され第1貫通穴を有する下面板、及びこの下面板上に設けられる防振体を含む防振具と、この防振具の上方に配置されるマシンベースと、前記防振具の前記下面板と前記マシンベースの前記上面フランジとを締結する締結手段とを備え、前記マシンベース上に巻上機を取り付けるようにしたエレベータの巻上機支持構造において、
前記マシンビームの前記上面フランジに第2貫通穴を設け、
前記防振具の前記下面板との間で、前記マシンビームの前記上面フランジを狭圧するように配置され、前記防振具の前記下面板の前記第1貫通穴と同芯の第3貫通穴と、前記マシンビームの前記上面フランジの前記第2貫通穴と同芯の第4貫通穴とを有する防振プレートと、
前記防振プレートと前記防振具の前記下面板との間に配置され、前記防振具の前記下面板の前記第1貫通穴、及び前記防振プレートの前記第3貫通穴と同芯の第5貫通穴を有する介設プレートとを備えるとともに、
前記締結手段は、
前記防振具の前記下面板の前記第1貫通穴、前記防振プレートの前記第3貫通穴、及び前記介設プレートの前記第5貫通穴に挿入されるボルトと、このボルトに螺合するナットとを含み、前記防振具の前記下面板と前記介設プレートと前記防振プレートとを互いに締結する締結具と、
前記マシンビームの前記上面フランジの前記第2貫通穴と前記防振プレートの前記第4貫通穴に挿入されるボルトと、このボルトに螺合するナットを含み、前記マシンビームの前記上面フランジと前記防振プレートとを互いに締結する締結具とを有することを特徴とするエレベータの巻上機支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータの巻上機支持構造において、
前記防振具の前記下面板の前記第1貫通穴は、前記下面板の一方の側端近傍部に設けられる第1貫通穴と、前記下面板の他方の側端近傍部に設けられる第1貫通穴とから成り、
前記防振プレートは、前記防振具の前記下面板の前記他方の側端近傍部との間で、前記マシンビームの前記上面フランジの他方の側端近傍部を狭圧するように配置されるものから成り、
前記介設プレートは、前記防振プレートと前記防振具の前記下面板の前記他方の側端近傍部との間に配置されるものから成り、
前記締結手段は、
前記下面板の前記一方の側端近傍部に設けた前記第1貫通穴に挿入されるボルトと、このボルトに螺合するナットと、これらのボルトとナットとの間に介設され、前記下面板の一方の側端近傍部付近に位置する前記マシンビームの前記上面フランジの一方の側端近傍部と、前記下面板の前記一方の側端近傍部とを締結するクリップとを含む締結具と、
前記防振具の前記下面板の前記他方の側端近傍部に設けた第1貫通穴、前記防振プレートの前記第3貫通穴、及び前記介設プレートの前記第5貫通穴に挿入されるボルトと、このボルトに螺合するナットとを含み、前記防振具の前記下面板の前記他方の側端近傍部と前記介設プレートと前記防振プレートとを互いに締結する締結具と、
前記マシンビームの前記上面フランジの前記他方の側端近傍部に設けた第2貫通穴と前記防振プレートの前記第4貫通穴に挿入されるボルトと、このボルトに螺合するナットとを含み、前記マシンビームの前記上面フランジの前記他方の側端近傍部と前記防振プレートとを締結する締結具とを有することを特徴とするエレベータの巻上機支持構造。
【請求項3】
請求項1に記載のエレベータの巻上機支持構造において、
前記防振具の前記下面板の前記第1貫通穴は、前記下面板の一方の側端近傍部に設けられる第1貫通穴と、前記下面板の他方の側端近傍部に設けられる第1貫通穴とから成り、
前記防振プレートは、前記防振具の前記下面板の前記一方の側端近傍部との間で、前記マシンビームの前記上面フランジの一方の側端近傍部を狭圧するように配置される第1防振プレートと、前記防振具の前記下面板の前記他方の側端近傍部との間で、前記マシンビームの前記上面フランジの他方の側端近傍部を狭圧するように配置される第2防振プレートとから成り、
前記介設プレートは、前記第1防振プレートと前記防振具の前記下面板の前記一方の側端近傍部との間に配置される第1介設プレートと、前記第2防振プレートと前記防振具の前記下面板の前記他方の側端近傍部との間に配置される第2介設プレートとから成り、
前記締結手段は、
前記防振具の前記下面板の前記一方の側端近傍部に設けた第1貫通穴、前記第1防振プレートの前記第3貫通穴、及び前記第1介設プレートの前記第5貫通穴に挿入されるボルトと、このボルトに螺合するナットとを含み、前記防振具の前記下面板の前記一方の側端近傍部と前記第1介設プレートと前記第1防振プレートとを互いに締結する締結具と、
前記防振具の前記下面板の前記他方の側端近傍部に設けた第1貫通穴、前記第2防振プレートの前記第3貫通穴、及び前記第2介設プレートの前記第5貫通穴に挿入されるボルトと、このボルトに螺合するナットとを含み、前記防振具の前記下面板の前記他方の側端近傍部と前記第2介設プレートと前記第2防振プレートとを互いに締結する締結具と、
前記マシンビームの前記上面フランジの前記一方の側端近傍部に設けた前記第2貫通穴と前記第1防振プレートの前記第4貫通穴に挿入されるボルトと、このボルトに螺合するナットとを含み、前記マシンビームの前記上面フランジの前記一方の側端近傍部と前記第1防振プレートとを互いに締結する締結具と、
前記マシンビームの前記上面フランジの前記他方の側端近傍部に設けた前記第2貫通穴と前記第2防振プレートの前記第4貫通穴に挿入されるボルトと、このボルトに螺合するナットとを含み、前記マシンビームの前記上面フランジの前記他方の側端近傍部と前記第2防振プレートとを互いに締結する締結具とを有することを特徴とするエレベータの巻上機支持構造。
【請求項4】
請求項3に記載のエレベータの巻上機支持構造において、
前記第1防振プレートと前記第2防振プレートは、一体構造物から成ることを特徴とするエレベータの巻上機支持構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−218926(P2012−218926A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89284(P2011−89284)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】