説明

エレベータシステム

【課題】戸への挟まれや戸袋への引き込まれを未然に防ぎ、ビルの利用状況の大きな変化にも対応できるようにする。
【解決手段】複数の階床をサービスする乗りかご401と、エレベータ戸407,408の開閉を制御するエレベータシステムにおいて、エレベータ戸407,408の周辺に設置された複数の検出部102,103,104,105,106,107と、検出部による検出結果を記録する履歴記録部108と、履歴記録部による検出数を計数する検出数集計部110と、を備え、所定期間における検出数に基づいてエレベータ戸407,408の開閉を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベータドア(戸)の開閉制御を行うエレベータシステムに関し、特に、戸周辺に設置されたセンサより、戸開閉速度や戸開閉時の案内(表示・音声)を行うものに好適である。
【背景技術】
【0002】
エレベータの利用状況は、時間帯などにより利用者層が異なる事が多いため、時間帯毎のエレベータの利用状態を学習して、エレベータの運転制御、特に利用者層に合わせてドアの開時限,開閉速度,走行時の加速度,減速度を変更することが知られ、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−1733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、単に、利用者層に合わせてドアの開閉制御を行っているので、開く戸の戸袋への引込まれを防止することは困難であり、特に、小さな子供などが戸に触れるなどして、開く戸の戸袋へ引込まれることに対応することは難しい。
【0005】
また、駆け込み乗車などの、挟まれてはいないが挟まれるリスクが高い場合、長期的に見た利用状況の時間的変化,大きな利用状況(ビルの利用形態)の変化、などに対応して適切な戸開閉制御を行うことはできなかった。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、戸への挟まれや戸袋への引込まれを未然に防ぎ、ビルの利用状況の大きな変化にも対応できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、複数の階床をサービスする乗りかごと、エレベータ戸の開閉を制御するエレベータシステムにおいて、前記エレベータ戸の周辺に設置された複数の検出部と、前記検出部による検出結果を記録する履歴記録部と、前記履歴記録部による検出数を計数する検出数集計部と、を備え、所定期間における前記検出数に基づいて前記エレベータ戸の開閉を制御するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エレベータ戸の周辺に設置された複数の検出部による検出結果を記録し、所定期間における検出数に基づいてエレベータ戸の開閉を制御するので、閉じる戸への挟まれや開く戸の戸袋への引込まれを未然に防ぐことができる。また、乗りかご内での引込まれ、戸袋への乗客の接近及び子供の乗車に対して、戸開速度の低下や、戸開時における音声や画面表示での案内を行えば、より安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の全体構成を示すブロック図。
【図2】図1の一実施の形態における検出数集計の手順を示す図。
【図3】一実施の形態における乗客検出精度の向上策を説明するフローチャート。
【図4】一実施の形態における戸閉速度の変更を説明するグラフ。
【図5】一実施の形態における戸開速度の変更を説明するグラフ。
【図6】一実施の形態における戸開閉速度の時間変化を示すグラフ。
【図7】一実施の形態におけるかご側戸袋への引込まれを防ぐ手段を説明するブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、エレベータシステムの全体構成を示すブロック図であり、閉じる戸への挟まれ及び開く戸の戸袋への引込まれを未然に防ぎ安全性を高めるため、戸への挟まれ,開く戸の戸袋への引込まれ,駆け込み乗車の有無,戸の戸袋の近傍での乗客、を検出し、挟まれや引込まれが多い時間帯・階床で、戸開閉速度を変更したり、戸開閉時に表示やスピーカーで音声による案内を標準の戸開閉案内とは異なるものとしたり、する。
【0011】
4はエレベータの乗りかご及びサービス階床の例を示し、エレベータの乗りかご401は、主ロープ402を介して複数の階床間を上下方向にサービスする。乗りかご401には、かご側の戸408,戸の開閉を制御する戸開閉制御部403,画像認識によりかご内の乗客数を検出するカメラ410,乗客が行先階を登録するためのかご内操作盤406,乗客の合計重量を計測するための荷重センサ409がある。乗り場に行先階ホール端末を設置しているエレベータシステムでは、かご内で行先階を登録するためのかご内操作盤406が設置されていないものもある。
【0012】
乗り場には、ホール釦として、行先階ホール端末405(テンキー操作またはホール認証により行先階を登録する装置)と、上下方向の呼びを登録するホール釦404が設置されている。407は乗り場側の戸であり、かご側の戸408と連動して開閉する。
【0013】
また、2はエレベータの乗りかご内を示し、201は、かご側の戸袋近傍にいる乗客を検出するセンサであり、図のように、乗客202が戸袋近傍にいることを検出し、赤外線センサを用いることが良い。203は、かご内の戸の戸袋部分を指しており、図示はしていないが、戸袋に加わる外力が一定値以上になると信号を発生する過負荷センサが設置されている。過負荷センサにより、乗客がかご内の戸の戸袋に引込まれたことを検出する。
【0014】
3は乗り場を示し、301はセーフティシューであり、セーフティシューが押し込まれることにより、閉じる戸への乗客の挟まれを検出する。乗客の挟まれは、閉じる戸に乗客の体が当たることも含めている。302はドアシグナルであり、戸閉時にLEDを点滅させることで戸閉することを利用者に知らせる。ドアシグナルは戸のセーフティシューに取り付けられているが、戸でなく、かご幕板にLEDを取り付けるなどでも良い。303はホールセンサであり、エレベータ号機の戸前にいる乗客305を検出する。ホールセンサ303は、例えば赤外線センサを用いる。戸閉時のホールセンサによる乗客の検出は、駆け込み乗車である。304は、乗り場の戸の戸袋を指しており、図示はしていないが、過負荷センサが設置されている。過負荷センサにより、乗客が乗り場の戸の戸袋に引込まれたことを検出する。
【0015】
エレベータシステムは、閉じる戸への挟まれや、開く戸の戸袋への引込まれなどを未然に防ぐような戸開閉制御を行う。エレベータ制御部1は、戸開閉速度及び戸開閉時の案内を設定し、戸開閉指令(開閉速度,ドアシグナルの点滅速度,点滅する光の色または点滅する光の強度に対する指令)を戸開閉指令部116に出力する。その他、エレベータ制御部1にはエレベータの戸開閉制御以外にも乗りかごの運行制御,呼び応答の制御などがある(図示せず)。
【0016】
以下、エレベータ制御部1の詳細構成について説明する。
エレベータ制御部は、乗りかご及び各ホール情報収集部101,挟まれ及び駆け込み乗車検出部1a,乗り場戸袋引込まれ及び乗り場戸袋近傍乗客検出部1b,かご側戸袋引込まれ及びかご側戸袋近傍乗客検出部1c,戸開閉情報学習部1d及び戸開閉指令部116で構成されている。乗りかご及び各ホール情報収集部101では、乗りかごの各種情報と各階ホールの情報が収集される。乗りかごの各種情報には、荷重情報(荷重センサ409で検出),乗り人数情報(荷重センサ409またはかご内カメラ410により検出),戸の開閉状態(戸開閉制御部403で検出)があり、各階ホール情報には、ホール呼び登録情報(ホール釦404より収集)、ホール側行先階端末による行先階や呼び登録回数などの情報(行先階登録端末405より収集)がある。
【0017】
戸に関して、(1)閉じる戸への挟まれ,(2)乗り場側戸の戸袋への引込まれ,(3)かご側戸の戸袋への引込まれを起こした乗客の降車時の再引込まれ、を未然に防ぐことが必要とされる。
【0018】
閉じる戸への挟まれを未然に防ぐ手段について説明する。
1aは、閉じる戸への挟まれを未然に防ぐために必要な検出手段であり、挟まれ検出部102は、セーフティシューにより、乗客の閉じる戸への挟まれ、及び戸への衝突を検出する。戸閉中乗込み客検出部103は、戸開閉制御部403における戸開閉情報と、ホールセンサ303により、戸閉動作中の乗客の乗込み動作、すなわち、駆け込み乗車を検出する。挟まれ・引込まれ履歴記録部108は、乗りかご及び各ホール情報収集部,挟まれ検出部102及び戸閉中乗込み客検出部103より、閉じる戸への挟まれ,駆け込み乗車を検出した日付,曜日,時刻,階床を所定期間と1日分記録する。所定期間は、マンションなら1ヶ月、デパートならば3ヶ月などと、建物の用途に合わせ設定する。マンションでは、子供のいる家庭の引越しなどを考慮し、1ヶ月に設定するのがよい。また、デパートでは、おもちゃ売り場の変更などを考慮し、3ヶ月に設定するのがよい。
【0019】
所定期間の検出数集計部110は、挟まれ・引込まれ履歴記録部108にて記録された、閉じる戸への挟まれ及び駆け込み乗車の検出回数を計数する。記録方法及び係数方法の詳細は、後ほど説明する。期間内検出数比較演算部111では、所定期間の検出数集計部110にて計数された所定期間中の検出数と、あらかじめ設定された閾値との比較演算を行う。戸開閉速度設定部112では、期間内検出数比較演算部111にて、検出数が閾値以上であれば、戸閉速度Vcloseを下記のように変更する。
【0020】
close =Vclose_std+ΔV1 …(1)
【0021】
ここで、Vclose_stdは戸閉速度の標準値、ΔV1は戸閉速度の増分である。戸開閉速度の変更方法の詳細は、後ほど説明する。
【0022】
戸開閉時案内設定部113では、期間内検出数比較演算部111にて、検出数が閾値以上であれば、戸閉時のドアシグナル302のLED点滅速度を速める。ここで、点滅速度とは、単位時間あたりの点滅の回数を表す。戸開閉指令部116は、戸開閉速度設定部112及び戸開閉時案内設定部113にて設定された戸閉速度、およびドアシグナルのLEDの点滅速度にて、戸開閉制御を行う。つまり、ドアシグナル302の点滅速度を速めて、標準の戸閉速度よりも速く戸が閉まることを利用者に知らせることにより、閉じる戸への挟まれ及び駆け込み乗車をさせない。また、ドアシグナルの点滅ではなく、標準の戸閉時は赤色で点滅、戸閉速度を速める時は青色で点滅させるなど、点滅する光の色を変更することや、点滅する光の強度を上げることでも、利用者へ知らせることが可能である。
【0023】
次に、乗り場側戸の戸袋への引込まれを未然に防ぐ手段を説明する。
1bは、乗り場側戸の戸袋への引込まれを未然に防ぐために必要な検出手段である。乗り場戸袋引込まれ検出部104は、乗り場の戸の戸袋304に設置された過負荷センサにより、乗り場戸袋への乗客の引込まれを検出する。乗り場戸袋近傍乗客検出部105は、乗り場の戸上方に、2のかご側の戸袋近傍にいる乗客を検出するセンサ201と同様にして設置されたセンサにより、乗り場側の戸袋近傍にいる乗客を検出する。挟まれ・引込まれ履歴記録部108は、乗りかご及び各ホール情報収集部101,乗り場戸袋引込まれ検出部104及び乗り場戸袋近傍乗客検出部105より、乗り場の戸の戸袋への引込まれ及び乗り場の戸の戸袋で乗客を検出した日付,曜日,時刻,階床を所定期間と1日分記録する。所定期間の検出数集計部110は、挟まれ・引込まれ履歴記録部108に記録された、閉じる戸への挟まれ及び駆け込み乗車の検出回数を計数する。期間内検出数比較演算部111では、所定期間の検出数集計部110にて計数された所定期間中の検出数と、あらかじめ設定された閾値との比較演算を行う。戸開閉速度設定部112では、期間内検出数比較演算部111にて、検出数が閾値以上になった時点で、戸開速度Vopenを下記のように変更する。
【0024】
open=Vopen_std−ΔV2 …(2)
【0025】
ここで、Vopen_stdは戸開速度の標準値、ΔV2は戸開速度の減分である。戸開閉時案内設定部113では、期間内検出数比較演算部111にて、検出数が閾値以上であれば、戸開時にスピーカー306より音声を流し、戸袋近傍の乗客の注意を促す。戸開閉指令部116は、戸開閉速度設定部112及び戸開閉時案内設定部113にて設定された戸閉速度、およびスピーカーの設定にて、戸開閉制御を行う。
【0026】
かご側戸の戸袋への引込まれを起こした乗客が、降車時に再び戸袋に引込まれることを未然に防ぐ手段を説明する。
1cは、かご側戸の戸袋への引込まれ及びかご側戸の戸袋近傍にいる乗客を検出する手段である。戸袋への引込まれは、戸開時に不用意にエレベータの戸に近づいたり、戸に触れたりすることにより引き起こる。したがって、引込まれの多くは、小さな子供が引き起こすことが推測される。かご側の戸袋で引込まれた乗客は、降車時にも戸袋へ引込まれる恐れがある。従って、かご側の戸袋への引込まれを検出した場合、かご側の戸袋近傍で乗客を検出した場合、及び子供が乗車していると判定した場合は、安全性を高めるため、戸開時はゆっくりと戸開し、利用客に戸開を知らせ、注意を促す。
【0027】
かご内戸袋引込まれ検出部106は、かご側戸の戸袋203に設置された過負荷センサにより、かご側戸袋への乗客の引込まれを検出する。かご側戸袋近傍乗客検出部107は、戸袋近傍検出センサ201により、かご内の戸袋近傍にいる乗客202を検出する。平均体重算出部114は、かご内に設置されたカメラ410により検出した乗客数と、荷重センサ409より検出した乗客の合計重量より、乗客の平均体重を算出する。乗客の平均体重WaVerageは、以下の式で算出される。
【0028】
aVerage=Wcensor/Passenger …(3)
【0029】
ここで、Wcensorは荷重センサ409により検出される乗客全体の重量、Passengerはかご内のカメラ410により検出された乗客数である。子供の乗車判定部115は、平均体重算出部114にて算出された乗客の平均体重と、あらかじめ設定した閾値との比較により、子供が乗車しているかどうかを判定する。閾値は、子供であると判断できる値を選ぶ。例えば、閾値として30kgを選ぶとき、乗客の平均体重が、閾値の30kg以下ならば、乗客の中に子供がいるとする。
【0030】
降り階確率演算部109は、かご側戸袋引込まれ検出部106にて、かご側戸袋への引込まれを検出したとき、かご側戸袋近傍乗客検出部107にて、かご側戸袋近傍にいる乗客を検出したとき、及び子供の乗車判定部115にて、子供が乗車していると判定した場合に、挟まれ・引込まれ履歴記録部108における、乗り場戸袋の引込まれ及び乗り場戸袋近傍の乗客の検出記録より、乗客が何階へ降りるかを推定する。推定方法の詳細は、後で記載する図7にて説明する。戸開閉速度制御部112では、降り階確率演算部109にて、乗客が降りる可能性が高いと推定された階床の戸開の速度Vopenを下記のように変更する。
【0031】
open=Vopen_std−ΔV2 …(4)
【0032】
ここでΔV2は、速度の減分である。戸開閉時案内設定部113では、降り階確率演算部109にて、乗客が降りる可能性が高いと推定された階床で、戸開時にスピーカー306より音声を流し、戸袋近傍の乗客の注意を促すように設定する。戸開閉指令部116は、戸開閉速度設定部112及び戸開閉時案内設定部113にて設定された戸閉速度、およびスピーカーの設定にて、戸開閉制御を行う。
【0033】
図2は、図1の挟まれ・引込まれ履歴記録部108及び所定期間の検出数集計部110の流れを示す図である。図2では、乗り場側の戸の戸袋への引込まれ及び乗り場側の戸の戸袋近傍の乗客の検出を例に取ったが、閉じる戸への挟まれ及び戸閉中の乗込み客を検出した場合も、記録及び集計の手法は同様である。501及び502に示されるように、戸袋への引込まれ、または戸袋近傍の乗客を検出したら、503に示されるように、所定期間+1日分の検出履歴をデータテーブルに記録する。ここで、引込まれに関する検出と、挟まれに関する検出を別のデータテーブルに記録することを仮定しているが、検出履歴を記録したデータテーブルに、検出したセンサも書き込むことにより、同じデータテーブルに記録することでも良い。
【0034】
所定期間+1日は、記録を行う当日分と、前日までの所定期間分の合計である。503の検出履歴を記録したデータテーブルより、前日までの所定期間分の検出数を504のように、時間帯,階床,平日/休日毎に集計する。平日/休日で区別するのは、利用者の生活スタイルが、平日/休日で異なると推測されるためである。
【0035】
図3は乗り場戸袋近傍の乗客検出精度を向上させるための手段である。乗り場戸袋近傍乗客検出部105は、乗り場戸袋近傍の乗客を検出し、挟まれ・引込まれ履歴記録部108にて検出した時刻や階床を、データテーブルに書き込むが、子供がいたずらで何度も戸袋近傍に手などを近づけたり、マンションの廊下で子供が遊んで、不用意にエレベータに近づいたりなどで、エレベータが到着するまでに何度も戸袋近傍の乗客を検出する恐れがある。そこで、乗り場戸袋近傍乗客検出部105で検出後は、図3のフローチャートを用いて、いたずらなどによる無駄な検出記録回数の増加とを防ぐ。
【0036】
具体的には、検出時にロックモードと通常モードの二つのモードを設け、検出時にロックモードならば、エレベータが到着するまでの検出は記録しない(符号FC1〜符号FC2〜符号FC3〜符号FC7の流れ)。エレベータが到着した場合は、ロックモードを解除する(符号FC1〜符号FC2〜符号FC3〜符号FC4〜符号FC7の流れ)。通常モードで検出した場合は検出した日付,曜日,時刻,階床を挟まれ・引込まれ履歴記録部108にてデータテーブルに記録し、ロックモードに変更する(符号FC1〜符号FC2〜符号FC5〜符号FC6〜符号FC7の流れ)。
【0037】
図4は、挟まれ及び駆け込み乗車が多い時間帯,階床での戸開速度の変更方法を示す図である。本実施例では、マンションを想定し、所定期間を1ヶ月とした。横軸は一日単位での時間変化を示す。
【0038】
グラフは、上から順に、一日の検出数(601),過去1ヶ月の検出数の累計値(602),戸閉速度指令値(603)を示している。過去1ヶ月の検出数の累計値を示すグラフ602において、各点は前日までの所定期間分の検出数累計値を示す。従って、605に示される点での検出数累計値は、一日の検出数を示すグラフ601において、604で囲まれた領域、すなわち所定期間である1ヶ月間の検出数を合計したものである。過去1ヶ月の検出数累計値は、戸閉速度変更の閾値606と比較演算され、累計値が閾値に達したら戸閉速度を(1)とし、累計値が閾値を下回ったら、戸閉速度Vcloseを標準戸閉速度Vclose_stdとする。この閾値は、ビルの用途及び設定した所定期間に応じて設定する。
【0039】
図5は、乗り場戸袋への引込まれ及び乗り場戸袋近傍での乗客の検出が多い時間帯,階床での戸開速度の変更方法を示す図である。横軸は一日単位での時間変化を示す。グラフは、上から順に、一日の検出数(611),過去1ヶ月の検出数の累計値(612),戸開速度指令値(613)を示している。過去1ヶ月の検出数の累計値を示すグラフ612において、各点は前日までの所定期間分の検出数累計値を示す。従って、615に示される点での検出数累計値は、一日の検出数を示すグラフ611において、614で囲まれた領域、すなわち所定期間である1ヶ月間の検出数を合計したものである。過去1ヶ月の検出数累計値は、戸開速度変更の閾値616と比較演算され、累計値が閾値に達したら戸閉速度を(2)式とし、累計値が閾値を下回ったら、戸開速度Vopenを標準戸開速度Vopen_stdとする。この閾値は、ビルの用途及び設定した所定期間に応じて設定する。
【0040】
図6は、戸開閉速度の変更の様子を示す図である。横軸は時間である。701のグラフは標準時の戸開閉速度の時間変化を示すグラフであり、戸閉速度及び戸開速度の最大値をそれぞれVclose_std,Vopen_stdとしている。702のグラフは、(1)式にて戸閉速度を速めた場合の戸閉速度の時間変化を示している。戸閉速度を速めたため、戸閉完了が標準時より速くなっていることを確認できる。703のグラフは、(2)式にて戸開速度を遅らせた場合の戸開速度の時間変化を示している。戸開速度を遅らせたため、戸開完了が標準時より遅くなっている。
【0041】
図7は、かご内での戸袋引込まれ及びかご内戸袋近傍での乗客検出があった場合、または、低体重の乗客が乗車していると判定した場合における降車階予測手段の流れを示す図である。今、802に示すように、ある時刻にてかご側戸袋への引込まれ・戸袋近傍の乗客を検出するか、低体重の乗客を検出したとする。このとき、803に示すように、所定期間+1日分の乗り場戸袋への引込まれ及び乗り場戸袋近傍の乗客の検出を記録したデータテーブル503より、所定期間の検出数集計部110にて該当時刻が含まれる時間帯での各階床の検出数を集計し、各階床でかご呼びの有無や、かご呼びのある階床での検出数の割合などをチェックする。特定階床のみで一定値以上の割合で検出されているならば、他の階床よりも戸開速度を下げる。
【0042】
以上のような処理により、閉じる戸への挟まれ及び開く戸の戸袋への引込まれを未然に防ぎ安全性を高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1 エレベータ制御部
1a 挟まれ及び駆け込み乗車検出部
1b 乗り場戸袋引込まれ及び乗り場戸袋近傍乗客検出部
1c かご側戸袋引込まれ及びかご側戸袋近傍乗客検出部
1d 戸開閉情報学習部
101 乗りかご及び各ホール情報収集部
110 所定期間の検出数集計部
111 期間内検出数比較演算部
112 戸開閉速度設定部
113 戸開閉時案内設定部
114 平均体重算出部
115 子供の乗車判定部
116 戸開閉指令部
403 戸開閉制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の階床をサービスする乗りかごと、エレベータ戸の開閉を制御するエレベータシステムにおいて、
前記エレベータ戸の周辺に設置された複数の検出部と、
前記検出部による検出結果を記録する履歴記録部と、
前記履歴記録部による検出数を計数する検出数集計部と、
を備え、所定期間における前記検出数に基づいて前記エレベータ戸の開閉を制御することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、前記検出部は、前記エレベータ戸に設けられ、押圧力で検出信号を発生するセーフティシューによる挟まれ検出部と、前記サービス階床の乗り場付近に設けられ、エレベータ戸への駆け込み乗車を検出する戸閉中乗込み客検出部と、であり、
前記挟まれ検出部と前記戸閉中乗込み客検出部とにより、前記履歴記録部は乗客の閉じるエレベータ戸への挟まれ、駆け込み乗車を検出して記録することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のものにおいて、前記検出部は、乗り場戸袋に設置された過負荷センサにより、前記乗り場戸袋への乗客の引込まれを検出する乗り場戸袋引込まれ検出部と、乗り場の戸袋近傍にいる乗客を検出する乗り場戸袋近傍乗客検出部と、であり、
前記乗り場戸袋引込まれ検出部と乗り場戸袋近傍乗客検出部とにより、乗り場戸袋への乗客の引込まれを検出して記録することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のものにおいて、前記検出部は、かご戸袋に設置された過負荷センサにより、前記かご戸袋への乗客の引込まれを検出するかご側戸袋引込まれ検出部と、かご内で前記かご戸袋近傍にいる乗客を検出するかご側戸袋近傍乗客検出部と、かご内に設置されたカメラにより検出した乗客数と荷重センサより検出した乗客の合計重量より乗客の平均体重を算出し、子供が乗車しているかどうかを判定する子供の乗車判定部と、であり、 前記かご側戸袋引込まれ検出部とかご側戸袋近傍乗客検出部とにより、かご側戸袋への子供の引込まれを検出して記録し、所定期間における子供の引込まれの検出数が多い階床での前記エレベータ戸開速度を他の階床よりも小さくすることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のものにおいて、前記エレベータ戸近傍に、戸開閉時に点滅するLED装置を備え、所定期間における前記検出数に基づいて少なくとも点滅速度,点滅する光の色,点滅する光の強度のいずれかを決定することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のものにおいて、前記エレベータ戸近傍に、戸開閉時に音の発生するスピーカーを備え、所定期間における前記検出数が多い場合、標準の戸開閉案内とは異なることを特徴とするエレベータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−254391(P2010−254391A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103522(P2009−103522)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】