説明

エレベータシステム

【課題】エレベータシステムにおいて、乗りかごの床面と乗場床面との間に段差がある状態で乗りかごが停止した場合に、エレベータシステムの主制御部に不具合があっても、乗りかご自体でそのことに対応できるようにすることである。
【解決手段】各乗場床面に関する基準位置を与える部材として、着床用プレート82,84,86,88が昇降路40の内壁面に沿って配置される。乗りかご60には、着床用プレート82,84,86,88に対応する4つの検出器を含むかご位置検出装置70が設けられる。乗りかご60に搭載されるかご制御装置90は、乗りかご60の床面と乗場床面に段差がある状態で乗りかご60が停止したときに、かご位置検出装置70の検出結果に基づいて、その段差の状態を判断し、その段差が乗りかごの乗客にとって退避可能な段差であると判断したときに特別信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータシステムに係り、特に事故等で、乗りかごの床面と乗場床面との間に段差がある状態で、乗りかごが停止したときの処理を行うエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、建物の中を上下に貫通する昇降路内に乗りかごを昇降させ、所望の乗場階において乗客を乗り降りさせる昇降装置である。乗りかごの昇降制御は、複数の位置センサ等を用い、位置制御と速度制御を行ない、所望の乗場階の床面と乗りかごの床面とが予め定めた所定範囲に入るようにする着床制御が行われる。事故等によっては、このような着床制御が十分に行えない状況が生じ、乗りかごの床面と乗場床面との間に段差がある状態で、乗りかごが停止することがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、エレベータの着床表示装置として、故障等によって乗りかごの床面と乗り場床面との間の段差が所定範囲を越えたときに、「段差あり」の信号を表示することが述べられている。ここでは、表示方法として、音声、表示灯、照明照射、昇降路内蛍光注意板等の他に、ドアを半開きとしてあとは手動で開けるようにすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−194641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エレベータにおける乗りかごの昇降制御は、行先階に対する位置制御と速度制御が行われ、例えば、乗場床面に対し乗りかごの床面を±15mm程度に入るように時々刻々の速度が変化する。このような制御の下で乗りかごは行先階に向かって移動するが、行先階におけるドア開閉処理を開始するタイミングは、標準的な移動プロファイルを参考にして、目標階に到達する手前に設定される。例えば、行先階の乗場床面に対し乗りかごの床面がある範囲に入ったときに設定される。このように、乗りかごが昇降中で、目的乗場の手前でドア開閉が可能になる範囲は、ドアゾーンと呼ばれる。一例をあげると、乗場床面に対し乗りかごの床面が±200mmの範囲をドアゾーンとされる。
【0006】
このように、位置制御と速度制御が正常に行われることを前提としてドアゾーンが設定されている。ここで、仮に、故障等でエレベータシステムが停止し、乗りかごがあるところに停止したとすると、乗りかごが乗場床面に対し、どの状態にあるかが不明となる。その場合に、乗りかごがドアゾーンの範囲にあれば、ドアの開閉ができる。そこで、ドアを開くと、乗場床面と乗りかご床面との間に予期せぬ段差があることが生じ得る。
【0007】
故障等でエレベータシステムが停止すると、通常は、エレベータシステム全体の動作を制御する主制御部から、異常信号が乗りかご等に伝送され、乗りかごのドア開閉を制限すること等の処理が行われる。ところで、故障が主制御部の関連で生じると、主制御部からの異常信号伝送が行われず、乗りかごにおいては、故障で停止したのか、行先階に到達して停止したのか分からない状態に置かれる。ここでドア開ボタンを操作してドアを開くと、予期せぬ段差に遭遇することが生じ得ることになる。
【0008】
本発明の目的は、乗りかごの床面と乗場床面との間に段差がある状態で乗りかごが停止した場合に、エレベータシステムの主制御部に不具合があっても、乗りかご自体でそのことに対応することを可能とするエレベータシステムを適用することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るエレベータシステムは、エレベータの昇降路内に各階乗場の床面に対応付けて設けられる複数の位置基準に対して、エレベータの乗りかごに設けられる複数の検出器を含むかご位置検出装置と、乗りかごに搭載されるかご制御装置を備え、かご制御装置は、乗りかごの床面と乗場床面に段差がある状態で乗りかごが停止したときに、かご位置検出装置の検出結果に基づいて、その段差の状態を判断し、その段差が乗りかごの乗客にとって退避可能な段差であると判断したときに特別信号を出力する特別信号出力部を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、かご位置検出装置は、乗場床面との位置関係で、乗りかごの床面がドア開閉可能な範囲であるドアゾーン内にあるときにドアゾーン検出信号を出力するドアゾーン検出器と、乗りかごが停止したときに、乗場床面との位置関係で、乗りかごの床面が予め定めた停止位置範囲内にあるときに着床検出信号を出力する着床検出器と、乗りかごが停止したときに、乗場床面との位置関係で、乗りかごの床面が、停止位置範囲を超えているが、乗りかごの停止位置を調整するリレベル処理を行うリレベル範囲内にあるときに、リレベル範囲検出信号を出力するリレベル検出器と、を含み、特別信号出力部は、ドアゾーン検出器の検出信号と、着床検出器の検出信号と、リレベル検出器の検出信号とに基づいて、乗場床面との位置関係で、乗りかごの床面がドアゾーン内にあり、リレベル範囲を超えているときに、特別信号を出力することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、かご制御装置は、特別信号を取得し、乗りかご内の乗客に対する特別処理を実行する特別処理部を含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、特別処理部は、乗りかご内の乗客に対し、ドア開ボタンを押すことを促す表示を行う誘導表示処理モジュールと、誘導表示の下でドア開ボタンが押されたことを検出して、ドアを半開きとするドア半開処理モジュールと、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記構成により、エレベータシステムは、エレベータの乗りかごに設けられるかご位置検出装置と、乗りかごに搭載されるかご制御装置を備え、かご制御装置は、乗りかごの床面と乗場床面に段差がある状態で乗りかごが停止したときに、かご位置検出装置の検出結果に基づいて、その段差の状態を判断し、その段差が乗りかごの乗客にとって退避可能な段差であると判断したときに特別信号を出力する特別信号出力部を有する。このように、乗りかごにかご位置検出装置とかご制御装置が備えられるので、乗りかごの床面と乗場床面との間に段差がある状態で乗りかごが停止した場合に、エレベータシステムの主制御部に不具合があっても、乗りかご自体でそのことに対応できる。
【0014】
また、エレベータシステムにおいて、かご位置検出装置は、ドアゾーン検出信号を出力するドアゾーン検出器と、着床検出信号を出力する着床検出器と、リレベル範囲検出信号を出力するリレベル検出器とを含み、乗場床面との関係で、乗りかご床面がドアゾーン内にあり、リレベル範囲を超えているときに、特別信号が出力される。このように、特別信号が出力されるときは、乗りかご床面がドアゾーン内にあり、リレベル範囲を超えているときであるので、リレベル処理が行われない程度の段差があることになる。乗りかごの乗客にとって、この程度の段差は、注意すれば乗場床面に降りて退避可能である。そこで、特別信号が出力されたときは、乗客を退避させるような処理を行うことができる。
【0015】
また、エレベータシステムにおいて、特別信号を取得したときは、乗りかご内の乗客に対する特別処理を実行する。特別処理としては、乗りかご内の乗客を退避させる処理が含まれる。
【0016】
また、エレベータシステムにおいて、乗りかご内の乗客に対し、ドア開ボタンを押すことを促す表示を行い、誘導表示の下でドア開ボタンが押されたことを検出して、ドアを半開きとする。これによって、乗りかご内の乗客に対し、段差に注意を払いながら乗場床面に退避させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る実施の形態のエレベータシステムの構成を説明する図である。
【図2】本発明に係る実施の形態のエレベータシステムにおいて、かご位置検出装置とかご制御装置の様子を説明する図である。
【図3】本発明に係る実施の形態のエレベータシステムにおいて、昇降路内に設けられる複数の位置基準と、乗りかごに設けられる複数の検出器の位置関係を説明する図である。
【図4】本発明に係る実施の形態のエレベータシステムにおいて、乗りかごの移動に応じて複数の検出器のそれぞれの検出信号の様子を説明する図である。
【図5】本発明に係る実施の形態のエレベータシステムにおいて、乗りかご床面と乗場床面に段差があるときの処理手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下で述べる建物の階数、位置関係、タイミングの時間等は、説明のための一例であって、エレベータシステムの仕様等に応じ、適宜変更が可能である。
【0019】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0020】
図1は、エレベータシステム10の構成を説明する図である。エレベータシステム10は、建物12の中を上下に貫通する昇降路40内に乗りかご60を昇降させ、建物12の所望の乗場階21,22,23,24において乗客を乗り降りさせる昇降装置である。各乗場階21,22,23,24には、乗場扉31,32,33,34と、図示されていないが、乗りかご60を呼ぶ呼びボタンがそれぞれ設けられる。
【0021】
昇降路40の上部に設けられる機械室42は、乗りかご60と釣合い重り52とを接続する主ロープを巻き上げる主巻上機44と、エレベータシステム10の全体の運行制御等を行う主制御装置46が設けられる区域である。昇降路40の最下部のピット48は、乗りかご60が最下部に降下してきたときの衝撃を受け止めるダンパ等が設けられる区域である。
【0022】
乗りかご60は、乗客を運搬するための箱状のかごである。乗りかご60には、開閉扉62と、図示されていないが、行先階を登録する行先階ボタンと、開閉扉62を開閉するドア開閉ボタンが設けられる。
【0023】
乗りかご60に設けられるかご位置検出装置70は、各乗場階21,22,23,24の乗場床面に対する乗りかご60の床面の間の位置関係を検出するための装置である。後述するように、乗場床面と乗りかご60の床面の間の位置関係は、複数の範囲に区分して検出が行われるので、昇降路40の各乗場階21,22,23,24に対応する位置には複数の位置基準部材が設けられ、かご位置検出装置70も複数の検出器で構成される。
【0024】
かご制御装置90は、乗りかご60に搭載される制御装置で、主制御装置46と信号ケーブルで接続される。また、かご制御装置90は、かご位置検出装置70と信号線で接続される。かご制御装置90は、乗りかご60の乗客スペースに設けられる行先階ボタンとドア開閉ボタンに接続され、また、かご上に設けられる開閉扉駆動装置に接続される。
【0025】
かご制御装置90は、通常の昇降運行状態においては、主制御装置46の制御の下で、かご位置検出装置70が出力する検出信号と、ユーザによって操作される行先階ボタンとドア開閉ボタンとの状態に基づいて、開閉扉駆動装置を制御し、開閉扉62を開閉する機能を有する。ここでは、特に、乗場階床面と乗りかご床面との間に段差ΔHを有して乗りかご60が停止したときに、主制御装置46が故障したときでも、乗りかご60の中の乗客を最寄りの乗場階22に退避させるための制御を行なう機能を有する。
【0026】
図1では、事故によって、電源は乗りかご60に供給されているが、主制御装置46との間の交信が途絶え、乗りかご60の床面が乗場階22の床面からΔH上方にある状態で、乗りかご60が停止している様子が示されている。このような場合、乗りかご60の中の乗客は、主制御装置46から事故であることの情報が来ないので、乗りかご60が停止したのは、行先階に着床したためであって、事故のためと思っていない可能性がある。そこで、開閉扉62が開かないと、開閉ドアボタンを操作して、開閉扉62を開けようとする。そのときに想定外の段差ΔHがあることになるので、乗客を安全に保護することが必要になる。これが、本発明によって解決しようとする課題である。
【0027】
図2は、そのような状態における昇降路40内の乗りかご60を中心とする様子を示す図である。ここでは、昇降路40内の釣合い重り52と、これを案内するために昇降路40内に設けられる重りガイドレール54,55が示されている。重りガイドレール54,55に対応して、釣り合い重り52には、ガイドシュー56,57が設けられる。また、昇降路40の乗場側に乗場扉32が示されている。乗場扉32は、乗場階に乗りかご60が来たときに、乗りかご60の開閉扉62とドア連動開閉機構63で連結される。これによって、乗りかご60の開閉扉62の開閉に連動して、乗場扉32が開閉する仕組みとなっている。
【0028】
かごガイドレール64,65は、昇降路40の内部に、乗りかご60の両側を挟むように設けられ、乗りかご60の昇降を案内するガイドレールである。これらに対応して、乗りかご60の両外側面には、ガイドシュー66,67がそれぞれ設けられる。
【0029】
着床用アーム80は、昇降路40の内壁面に平行に、水平方向に延びる板材で、各乗場階にそれぞれ対応して1つずつ、かごガイドレール64に取り付けて設けられる。
【0030】
着床用アーム80にそれぞれ取り付けられる着床用プレート82,84,86,88は、昇降路40の内壁面に平行に、鉛直方向、すなわち、乗りかご60の昇降方向に平行に延びる板材である。着床用プレート82,84,86,88は、各乗場床面に関する基準位置を与える部材である。
【0031】
着床用プレート82,84,86,88の配置状態を図3に示す。この図は、上下方向が昇降路40の上下方向である。そのことを図3では、上方から下方に向かう方向を−Zとして示されている。Z方向の位置関係について、乗場床面の位置をゼロとして、乗場床面からの偏差をΔHとすると、このΔHは図1で述べた段差ΔHと同じである。ここで、着床用プレート82は、ΔH=−200mmからΔH=+15mmまで延びる板材である。着床用プレート84は、ΔH=−15mmからΔH=+200mmまで延びる板材である。着床用プレート86は、ΔH=−75mmから+Z方向に適当に延びる板材である。図3の例では、約+20mmまで延びる。着床用プレート88は、ΔH=+75mmから−Z方向に適当に延びる板材である。図3の例では、約−20mmまで延びる。
【0032】
ここで、ΔHが±200mmの範囲は、ドアゾーンと呼ばれる範囲である。ドアゾーンとは、乗場床面位置であるΔH=0mmとの位置関係で、乗りかご60の床面がドア開閉可能とされる範囲である。したがって、着床用プレート82の−Z側の端面位置と、着床用プレート84の+Z側の端面位置との間の範囲がドアゾーンである。
【0033】
ΔHが±15mmの範囲は、停止位置範囲と呼ばれる範囲である。停止位置範囲とは、乗場床面位置であるΔH=0mmとの位置関係で、乗りかご60の床面が予め定めた停止位置とされる範囲である。乗りかご60の昇降制御は、乗りかご60が行先階に停止するとき、乗りかご60の床面がこの停止位置範囲になるように行われる。乗りかご60の昇降制御の位置制御における指令位置はΔH=0mmであるが、実際の制御は、このΔH=±15mmの停止位置範囲に入るように行なわれる。その意味で、停止位置範囲は、乗りかご60の昇降制御の目標位置範囲である。着床用プレート82の+Z側の端面位置と、着床用プレート84の−Z側の端面位置との間の範囲が停止位置範囲である。
【0034】
このように、着床用プレート82,84の2つは、ドアゾーンと停止位置範囲の2つについて位置基準を与える部材である。
【0035】
ΔHが±75mmの範囲は、リレベル範囲と呼ばれる範囲である。リレベル範囲とは、乗りかご60が停止したときに、乗場床面位置であるΔH=0mmとの位置関係で、乗りかご60の床面が、停止位置範囲である±15mmを超えているが、乗りかご60の停止位置を調整するリレベル処理を行うものとされる範囲である。つまり、乗りかご60の昇降制御は、乗りかご60が行先階に停止するとき、乗りかご60の床面が停止位置範囲になるように行われるが、実際にはこの±15mmを超えることがある。例えば、乗りかご60内の乗客数が多くて、−15mmを超えて停止した場合や、温度変化等で主ロープ50が伸縮して±15mmを超えて停止する場合がある。このようなとき、乗りかご60の停止位置を微調整することがリレベル処理と呼ばれる。リレベル範囲は、この停止位置微調整が行われる範囲である。着床用プレート86の−Z側の端面位置と、着床用プレート88の+Z側の端面位置との間の範囲がリレベル範囲である。
【0036】
乗りかご60には、昇降路40の内側壁に向かい合う側壁に、かご位置検出装置70が設けられる。かご位置検出装置70は、4つの検出器から構成される。その内の2つは、着床用プレート82,84の端面位置を検出する検出器で、着床用プレート82,88がドアゾーンの位置基準部材と停止位置範囲の位置基準部材を兼ねることに対応して、ドアゾーンを検出するドアゾーン検出器としての機能と、停止位置範囲を検出する着床位置検出器としての機能を兼ねる兼用検出器72,74である。他の2つは、着床用プレート86,88の端面位置を検出する検出器で、着床用プレート86,88がリレベル範囲の位置基準部材であることに対応して、リレベル範囲を検出するリレベル検出器76,78である。かかる4つの検出器としては、発光素子と受光素子とを組み合わせた光センサを用いることができる。
【0037】
図4は、乗りかご60の移動に応じて、兼用検出器72,74、リレベル検出器76,78のそれぞれが検出する検出信号の様子を説明する図である。横軸がΔHであり、縦軸は最上段から最下段に向かって、兼用検出器72、兼用検出器74、リレベル検出器76、リレベル検出器78の順に検出信号が示されている。検出信号のHレベルは、検出器である光センサが対応する着床用プレートがないために発光素子の光をそのまま受光素子が受け取っている状態で、Lレベルは、着床用プレートで発光素子からの光が遮断され受光素子が光を検出しない状態を示す。
【0038】
兼用検出器72は、乗りかご60がΔH=0mmに対し十分+Z方向にあるとき、Hレベルである。乗りかご60が−Z方向に移動してΔH=+15mmに達すると、着床用プレート82の+Z側の端面位置に来ることになるので、HレベルからLレベルに変化する。したがって、このHレベルからLレベルに変化したことを検出することで、停止位置の+15mm側を検出できる。さらに−Z方向に移動してΔH=−200mmに達すると、着床用プレート82の−Z側の端面位置に来ることになるので、LレベルからHレベルに変化する。したがって、このLレベルからHレベルに変化したことを検出することで、ドアゾーンの+200mm側を検出できる。
【0039】
同様に、兼用検出器74は、乗りかご60がΔH=0mmに対し十分+Z方向にあるとき、Hレベルである。乗りかご60が−Z方向に移動してΔH=+200mmに達すると、着床用プレート84の+Z側の端面位置に来ることになるので、HレベルからLレベルに変化する。したがって、このHレベルからLレベルに変化したことを検出することで、ドアゾーンの+200mm側を検出できる。さらに−Z方向に移動してΔH=−15mmに達すると、着床用プレート84の−Z側の端面位置に来ることになるので、LレベルからHレベルに変化する。したがって、このLレベルからHレベルに変化したことを検出することで、ドアゾーンの+200mm側を検出できる。
【0040】
リレベル検出器76は、乗りかご60がΔH=0mmに対し十分+Z方向にあるとき、Hレベルである。乗りかご60が−Z方向に移動して着床用プレート86の+Z側の端面位置を検出するとHレベルからLレベルに変化する。さらに−Z方向に移動してΔH=−75mmに達すると、着床用プレート82の−Z側の端面位置に来ることになるので、LレベルからHレベルに変化する。したがって、このLレベルからHレベルに変化したことを検出することで、リレベル範囲の−75mm側を検出できる。
【0041】
同様に、リレベル検出器78は、乗りかご60がΔH=0mmに対し十分+Z方向にあるとき、Hレベルである。乗りかご60が−Z方向に移動してΔH=+75mmに達すると、着床用プレート82の+Z側の端面位置に来ることになるので、HレベルからLレベルに変化する。したがって、このHレベルからLレベルに変化したことを検出することで、リレベル範囲の+75mm側を検出できる。
【0042】
上記では、乗りかご60が+Z側から−Z方向に移動する場合を説明したが、乗りかご60が−Z側から+Z方向に移動するときも同じである。このようにして、着床用プレート82,84,86,88と兼用検出器72,74、リレベル検出器76,78を用いて、ドアゾーン、停止位置範囲、リレベル範囲を検出することができる。
【0043】
再び図2に戻り、かご制御装置90は、かご位置検出装置70の各検出器が検出する信号を取得する検出信号取得部92と、乗りかご60の床面と乗場床面に段差がある状態で乗りかご60が停止したときに、かご位置検出装置70の検出結果に基づいて、その段差の状態を判断し、その段差が乗りかごの乗客にとって退避可能な段差であると判断したときに特別信号を出力する特別信号出力部94と、特別信号を取得し、乗りかご60内の乗客に対する特別処理を実行する特別処理部96を含んで構成される。特別処理部96は、乗りかご60内の乗客に対し、ドア開閉ボタンを押すことを促す表示を行う誘導表示処理モジュール98と、誘導表示の下でドア開閉ボタンが押されたことを検出して、開閉扉62を半開きとするドア半開処理モジュール100を含む。
【0044】
かご制御装置90は、乗りかご60の搭載に適したコンピュータで構成することができる。かご制御装置90の各機能は、ソフトウェアを実行することで実現でき、具体的には、エレベータ制御プログラムを実行することで実現できる。
【0045】
上記構成の作用、特にかご制御装置90の各機能について、図5を用いて詳細に説明する。図5は、エレベータシステム10において、乗りかご60の床面と乗場床面に段差があるときの処理手順を説明するフローチャートである。各手順は、ユーザによるS32の手順を除き、エレベータ制御プログラムの処理手順にそれぞれ対応する。
【0046】
エレベータシステム10が運転モードにあるとき(S10)、速度制御と位置制御が行われる(S12)。そして、乗りかご60が停止したか否かが判断される(S14)。この判断は、主制御装置46が速度制御と位置制御の状態に基づいて行うことができ、また、乗りかご60に加速度センサ等を設けて、加速度がゼロとなることを検出すること等で行うこともできる。
【0047】
また、エレベータシステム10が運転モードにあるとき、かご位置検出装置70を構成する兼用検出器72,74、リレベル検出器76,78の検出データが取得され、その状態が監視される。かご位置検出装置70の検出データの取得は、かご制御装置90の検出信号取得部92の機能によって実行される。
【0048】
S14が肯定されると、次に、乗りかご60の床面がドアゾーン内か否かが判断される(S16)。図3の例では、兼用検出器72,74の検出データに基づいて、行先階の乗場床面を基準として、乗りかご60の床面と乗場床面との間の距離である段差ΔHが±200mm以内か否かが判断される。
【0049】
S16において判断が否定されると、乗りかご60が速度制御と位置制御の期待される範囲を超えて停止している異常状態として、異常信号が出力される(S18)。具体的には、兼用検出器72,74の検出データが主制御装置46に伝送されて、主制御装置46によってエレベータ運行監視センタ等に異常信号が出力される。
【0050】
S16において判断が肯定されると、次に、乗りかご60の床面がリレベル範囲内か否かが判断される(S20)。図3の例では、リレベル検出器76,78の検出データに基づいて、乗りかご60の床面と乗場床面との間の段差ΔHが±75mm以内か否かが判断される。
【0051】
S20において判断が肯定されると、次に、乗りかご60の床面が停止位置範囲内か否かが判断される(S22)。図3の例では、兼用検出器72,74の検出データに基づいて、行先階の乗場床面を基準として、乗りかご60の床面と乗場床面との間の段差ΔHが±15mm以内か否かが判断される。
【0052】
S22において判断が否定されると、ΔHが±15mmを超えているがリレベル範囲である±75mm以内であるので、リレベル処理が行われる(S24)。リレベル処理は、ΔHが±15mmを超えているときに、乗りかご60の停止位置を微調整して、ΔHを±15mm以内にする処理で、主制御装置46が主巻上機44の回転位置を調整することで行われる。リレベル処理が行われると再びS22に戻り、S22の判断が肯定されるまで繰り返される。
【0053】
S22において判断が肯定されると、ドア開処理が行われる(S26)。すなわち、開閉扉62が開方向に移動され、ドア連動開閉機構63の作用によって乗場扉32も開方向に移動される。これによって、乗りかご60と乗場との間で乗客の乗降が可能になる。
【0054】
S20で判断が否定されると、特別信号が出力される(S28)。この処理は、かご制御装置90の特別信号出力部94の機能によって実行される。特別信号は、図3の例で、ΔHが±75mmを超えているがドアゾーンである±200mm以内のときに出力される。このときの状況は、開閉扉62の開閉が可能で、ΔHによる段差も注意すれば乗降できる程度である。このように、特別信号は、段差が乗りかご60の乗客にとって退避可能な段差であると判断したときに、出力される。
【0055】
特別信号が出力されると、乗りかご60の乗客の退避についての特別処理が行われる。特別処理の1つとして、まず、乗りかご60内の乗客に対し、ドア開閉ボタンを操作することを促す誘導表示が行われる(S30)。この処理は、かご制御装置90の特別処理部96に含まれる誘導表示処理モジュール98の機能によって実行される。ドア開閉ボタンは、ドア開ボタンとドア閉ボタンとあるが、そのドア開ボタンを押すことを促す表示が行われる。
【0056】
具体的には、音声またはディスプレイ表示で、「ドアを開くボタンを押して下さい」旨が表示される。ドア開ボタンの背後とドア閉ボタンの背後のそれぞれに点灯ランプが組み込まれている場合には、ドア開ボタンの点灯ランプを点灯または点滅させて、そのボタンを押すことを促すものとしてもよい。また、開閉扉62を開けた後についての注意事項も表示することがこのましい。例えば、「ドアが開きましたら、乗場との間に段差がありますから、注意して降りてください」旨の表示をする。
【0057】
そして、この誘導表示に従って乗客がドア開閉ボタンを操作する(S32)と、その操作を検出して、開閉扉62が半開きとされる(S34)。この処理は、かご制御装置90の特別処理部96に含まれるドア半開処理モジュール100の機能によって実行される。開閉扉62の半開きとは、大人がやや横向きになって開閉扉62をすり抜けられる程度の開きとすることがよい。例えば、開き幅で約50cm程度を半開きとすることができる。ドア半開きは、かご制御装置90が乗りかご60のドア開閉駆動機構の動作を制御することで行われる。開閉扉62を半開きとするのは、これによって乗客の注意力が高まるからである。
【0058】
このようにして、乗りかご60の床面と乗場床面に段差ΔHがある状態で乗りかご60が停止したときに、かご位置検出装置70の検出結果に基づいて、その段差ΔHの状態を判断し、その段差ΔHが乗りかご60の乗客にとって退避可能な段差であると判断したときに特別信号を出力する。そして特別信号が出力されると、開閉扉62を開く操作を乗客に促し、それに応えて乗客が操作を行うと、開閉扉62が半開きとなる。これらの処理は、かご制御装置90によって行われるので、仮に主制御装置46とかご制御装置90との間の交信が不可能になる事故の場合でも、乗りかご60の乗客を安全に退避させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のエレベータシステムは、エレベータの運行制御に利用できる。
【符号の説明】
【0060】
10 エレベータシステム、12 建物、21,22,23,24 乗場階、31,32,33,34 乗場扉、40 昇降路、42 機械室、44 主巻上機、46 主制御装置、48 ピット、50 主ロープ、52 釣り合い重り、54,55 重りガイドレール、56,57,66,67 ガイドシュー、62 開閉扉、63 ドア連動開閉機構、64,65 かごガイドレール、70 かご位置検出装置、72,74 兼用検出器、76,78 リレベル検出器、80 着床用アーム、82,84,86,88 着床用プレート、90 かご制御装置、92 検出信号取得部、94 特別信号出力部、96 特別処理部、98 誘導表示処理モジュール、100 ドア半開処理モジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの昇降路内に各階乗場の床面に対応付けて設けられる複数の位置基準に対して、エレベータの乗りかごに設けられる複数の検出器を含むかご位置検出装置と、
乗りかごに搭載されるかご制御装置を備え、
かご制御装置は、
乗りかごの床面と乗場床面に段差がある状態で乗りかごが停止したときに、かご位置検出装置の検出結果に基づいて、その段差の状態を判断し、その段差が乗りかごの乗客にとって退避可能な段差であると判断したときに特別信号を出力する特別信号出力部を有することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータシステムにおいて、
かご位置検出装置は、
乗場床面との位置関係で、乗りかごの床面がドア開閉可能な範囲であるドアゾーン内にあるときにドアゾーン検出信号を出力するドアゾーン検出器と、
乗りかごが停止したときに、乗場床面との位置関係で、乗りかごの床面が予め定めた停止位置範囲内にあるときに着床検出信号を出力する着床検出器と、
乗りかごが停止したときに、乗場床面との位置関係で、乗りかごの床面が、停止位置範囲を超えているが、乗りかごの停止位置を調整するリレベル処理を行うリレベル範囲内にあるときに、リレベル範囲検出信号を出力するリレベル検出器と、を含み、
特別信号出力部は、
ドアゾーン検出器の検出信号と、着床検出器の検出信号と、リレベル検出器の検出信号とに基づいて、乗場床面との位置関係で、乗りかごの床面がドアゾーン内にあり、リレベル範囲を超えているときに、特別信号を出力することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のエレベータシステムにおいて、
かご制御装置は、
特別信号を取得し、乗りかご内の乗客に対する特別処理を実行する特別処理部を含むことを特徴とするエレベータシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のエレベータシステムにおいて、
特別処理部は、
乗りかご内の乗客に対し、ドア開ボタンを押すことを促す表示を行う誘導表示処理モジュールと、
誘導表示の下でドア開ボタンが押されたことを検出して、ドアを半開きとするドア半開処理モジュールと、
を有することを特徴とするエレベータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−171758(P2012−171758A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36697(P2011−36697)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】