説明

エレベータシステム

【課題】エレベータシステムにおいて、かご戸が閉まる際に異物が挟まれたことを的確に検出するである。
【解決手段】エレベータシステム10は、左側かご戸22の戸当り側に左側戸当り部材60、右側かご戸24の戸当り側に右側戸当り部材62が設けられる。左側戸当り部材60、右側戸当り部材62は、互いに合わさった際に左右で互い違いに組み合わされるように、先端部と根元部とを有する互い違い形状であって、戸開閉方向に沿った先端部の位置と根元部の位置との間の互い違い間隔L1が、戸閉検出部30における戸閉検出のための閾値間隔L0よりも大きい互い違い形状を有する。左側かご戸の戸当り側と右側かご戸の戸当り側にそれぞれ互い違い形状を設けるものとしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータシステムに係り、特に、乗りかごのかご戸に挟まれた異物の検出を行うエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、建物を縦方向に縦貫する昇降路の中を、運行指示に従って乗りかごを昇降させる昇降装置である。乗りかごには乗客が出入するためのかご戸が設けられる。このかご戸が閉まる際に、乗客の衣服の一部、持ち物が挟まれることがある。かご戸が開いたままで乗りかごを昇降させることが危険であるので、かご戸が閉まったことを検出する検出手段が設けられるが、挟まれた物が薄い場合には、かご戸が閉まったと判断されることがある。その場合には、かご戸に異物が挟まった状態のまま、乗りかごが昇降することになる。
【0003】
特許文献1には、エレベータの安全装置において、紐等の薄いものが扉に挟まれたことを検出できずに乗りかごが走行してしまうことを指摘している。ここでは、乗りかごの左右のかご戸の戸当り側に左右の接触板を設け、この左右の接触板の左右かご戸に対する上下方向の変位を検出する接触板変位検出手段を設ける構成が開示されている。これにより、紐等の薄いものが左右かご戸に挟持され、さらに紐等の他側が乗場戸に挟持された場合に、乗りかごが走行すると、左右の接触板が上下方向に変位するので、異物が挟まれていることが検出できると述べられている。なお、左右の接触板には、互いに合わさった際に左右で互い違いに組み合う形状の左右の波状凹凸部が設けられ、これによって、紐等が上下方向に滑ってしまって接触板が上下変位しないことを防止できると述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−29552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かご戸が閉まったことを検出する検出手段としては、かご戸の開閉状態を検出するリミットスイッチ、センサ等が用いられる。かご戸が閉まる際に小さい異物が挟まれて、リミットスイッチ等がそれを検出できずにかご戸が閉まったものと判断されると、乗りかごが昇降を始める。乗りかごが昇降を始めても、異物が小さい場合には、エレベータシステムの運行に支障がないことが多い。
【0006】
仮に、エレベータシステムの運行に支障のない程度の小さい異物が挟まっているとしても、乗客が、その挟まった異物をムリに取り外そうとすると、かご戸がその影響で動き、リミットスイッチが作動し、かご戸が開いたと判断されることが生じえる。乗りかごが昇降中にかご戸が開いたと判断されると、これは異常状態とされて、乗りかごの停止処理が取られる。この場合には、昇降路内で乗りかごが停止し、乗りかご内の乗客は閉じ込め状態に置かれることになる。
【0007】
本発明の目的は、かご戸が閉まる際に異物が挟まれたことを的確に検出することを可能にするエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエレベータシステムは、昇降路内を昇降する乗りかごと、乗りかごに設けられるかご戸と、かご戸の戸当り側とかご戸に対向する対向部材の戸当り側との間隔が予め定めた閾値間隔以下となることを検出するときに、かご戸と対向部材との間の状態を戸閉検出状態として、戸閉検出信号を出力する戸閉検出部と、を備え、かご戸の戸当り側と、対向部材の戸当り側は、互いに合わさった際に左右で互い違いに組み合わされるように、先端部と根元部とを有する互い違い形状であって、戸開閉方向に沿った先端部の位置と根元部の位置との間の互い違い間隔が、戸閉検出部における閾値間隔よりも大きい互い違い形状を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、かご戸に対向する対向部材は、もう一方のかご戸であって、乗りかごには、左側かご戸と右側かご戸が設けられることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、互い違い形状は、乗りかごの床面に平行な面内で、左側かご戸の先端部が右側かご戸の根元部に対応し、右側かご戸の先端部が左側かご戸の根元部に対応して、互いに合わさった際に互い違いに組み合わされることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、互い違い形状は、左側かご戸の戸当り側に設けられる左側戸当り部材と、右側かご戸の戸当り側に設けられる右側戸当り部材とに設けられることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、左側かご戸と右側かご戸に設けられる一対のセフティシューであって、左側かご戸と右側かご戸との間の状態が戸開状態のときは、それぞれの戸当り面から張り出し、戸閉状態のときにはそれぞれの戸当り面よりも引き込まれる一対のセフティシューを備え、左側戸当り部材と右側戸当り部材は、一対のセフティシューよりも左側かご戸と右側かご戸の側に寄ったところに配置されることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、互い違い形状は、乗りかごの床面から上方に向かって、予め定めた異物挟み込み領域の範囲に設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上記構成により、エレベータシステムは、かご戸の戸当り側と、対向部材の戸当り側は、互いに合わさった際に左右で互い違いに組み合わされるように、先端部と根元部とを有する互い違い形状であって、戸開閉方向に沿った先端部の位置と根元部の位置との間の互い違い間隔が、戸閉検出部における戸閉検出のための閾値間隔よりも大きい互い違い形状を有する。
【0015】
これにより、かご戸が閉じる際に異物が挟まれると、互い違い形状によって、かご戸は、少なくとも(戸閉検出のための閾値間隔+異物の厚さ)分だけかご戸が開く。したがって、異物の厚さがほとんどゼロであっても、戸閉検出部は、戸閉検出信号を出力しない。このように、かご戸が閉まる際に異物が挟まれたことを的確に検出できる。
【0016】
また、エレベータシステムの乗りかごには、左側かご戸と右側かご戸が設けられる。いわゆる両開きかご戸の場合は、乗客の両側からかご戸が動いてくるので、乗客の衣服や持ち物等が挟まれることが多い。そのような場合でも、かご戸が閉まる際に異物が挟まれたことを的確に検出できる。
【0017】
また、エレベータシステムにおいて、互い違い形状は、乗りかごの床面に平行な面内で、左側かご戸の先端部が右側かご戸の根元部に対応し、右側かご戸の先端部が左側かご戸の根元部に対応して、互いに合わさった際に互い違いに組み合わされる。この構造であれば、かご戸の正面から見ると、かご戸の戸当り側は上下にまっすぐであるので、乗客に互い違い形状についての違和感を与えることが少ない。
【0018】
また、エレベータシステムにおいて、互い違い形状は、左側かご戸の戸当り側に設けられる左側戸当り部材と、右側かご戸の戸当り側に設けられる右側戸当り部材とに設けられる。したがって、かご戸の構造はそのままにして、追加的に互い違い形状を有する別部材をかご戸に設けるものとできる。
【0019】
また、エレベータシステムにおいて、左側戸当り部材と右側戸当り部材は、一対のセフティシューよりも左側かご戸と右側かご戸の側に寄ったところに配置される。かご戸が開いているときは、セフティシューが張り出すので、戸当り部材が乗客の目に付きにくいようにできる。
【0020】
また、エレベータシステムにおいて、互い違い形状は、乗りかごの床面から上方に向かって、予め定めた異物挟み込み領域の範囲に設けられるので、一般的なかご戸からの変更が必要最小限にとどめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る実施の形態のエレベータシステムにおいて、乗りかごのかご戸に異物がはさまれた状態を説明する図である。
【図2】本発明に係る実施の形態のエレベータシステムにおいて、かご戸が全閉状態のときの様子を説明する図である。
【図3】本発明に係る実施の形態のエレベータシステムにおいて、戸閉検出部が戸閉状態として検出する閾値間隔のときの状態の様子を説明する図である。
【図4】本発明に係る実施の形態のエレベータシステムにおいて、かご戸が閉じる際に異物が挟まった状態の様子を説明する図である。
【図5】本発明に係る実施の形態のエレベータシステムにおいて、かご戸が十分に開いている状態の様子を説明する図である。
【図6】本発明に係る実施の形態のエレベータシステムにおいて、他の構成例を説明する図である。
【図7】本発明に係る実施の形態のエレベータシステムにおいて、別の構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、乗りかごに左側かご戸と右側かご戸が設けられる両開き戸として説明するが、かご戸が1つの片開き戸の乗りかごであってもよい。その場合には、かご戸が閉じるときに異物が挟まれる状況として、かご戸と、これに向かい合う乗りかごの対向部材との間に異物が挟まれるものと考えればよい。また、以下では、異物として雑誌を説明するが、これは、厚さの薄い異物の例示であって、勿論、雑誌以外の異物であってもよい。
【0023】
以下で述べる形状、寸法等は、説明のための例示であって、エレベータシステムの仕様に合わせ、適宜変更が可能である。
【0024】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0025】
図1は、エレベータシステム10において、乗りかご20を正面から見た図である。ここでは、乗場扉の図示を省略し、乗場扉がないときの乗場から見た乗りかご20の様子が示されている。図1には、エレベータシステム10の構成要素ではないが、乗りかご20のかご戸22,24が閉じるときにかご戸22,24の間に異物8が挟まった状況を説明するため、異物8としての雑誌が図示されている。
【0026】
エレベータシステム10は、建物の縦方向に縦貫する昇降路12において、図示されていない制御装置からの運行指示に従って、乗りかご20の昇降制御が行われる昇降システムである。乗りかご20は、乗客を収容する昇降かごである。
【0027】
乗りかご20に設けられる左側かご戸22と右側かご戸24は、乗りかご20に乗客が出入する出入口に設けられる開閉扉である。左側かご戸22の上部、右側かご戸24の上部にそれぞれ取り付けられるハンガーローラ44は、乗りかご20の上部に設けられるかご戸レール42に沿って、左側かご戸22、右側かご戸24を移動させるためのローラである。
【0028】
乗りかご20の上部に設けられるかご戸開閉装置40は、図示されていないかご戸開閉制御装置の制御の下で、左側かご戸22と右側かご戸24を連動して開閉する装置である。かご戸開閉装置40は、モータ、駆動ベルト、駆動プーリ、リンク機構を含んで構成される。ここで、モータが回転すると駆動ベルトを介して駆動プーリが回転し、左側かご戸22と右側かご戸24と駆動プーリとの間で構成されるリンク機構の作用によって、左側かご戸22と右側かご戸24はかご戸レール42に沿って互いに逆方向に移動する。
【0029】
これによって、左側かご戸22と右側かご戸24がかご戸レール42の左右外側に移動するときは、左側かご戸22と右側かご戸24の間が広がって、乗りかご20の出入口が開く。逆に、左側かご戸22と右側かご戸24がかご戸レール42の中央側に移動するときは、左側かご戸22と右側かご戸24の間が少なくなり、乗りかご20の出入口が閉じる。
【0030】
左側かご戸22の上部と、乗りかご20の上部との間に設けられる戸閉検出部30は、左側かご戸22と右側かご戸24が閉じることを検出する装置である。戸閉検出部30は、乗りかご20の側に設けられるゲートスイッチ32と、ゲートスイッチ32の検出子であるカムローラ34と、左側かご戸22の側に設けられるカム台36を含んで構成される。戸閉検出部30は、左側かご戸22がかご戸レール42に沿って移動するときに、左側かご戸22と一体的にカム台36も移動し、カム台36に取り付けられるカム37にカムローラ34が追従して、ゲートスイッチ32を作動させることで、左側かご戸22が予め定めた戸閉状態となったかどうかを検出する。
【0031】
予め定めた戸閉状態としては、左側かご戸22の戸当り側と、右側かご戸24の戸当り側との間隔が予め定めた閾値間隔L0以下となることを検出するときに、左側かご戸22と右側かご戸24の間の状態を戸閉検出状態とすることができる。閾値間隔L0としては、20mmに設定することができる。勿論、これ以外の値とすることもできる。閾値間隔を20mmとするときは、左側かご戸22の戸当り側と、右側かご戸24の戸当り側との間隔が20mm以下となったときに、ゲートスイッチ32がオフ状態からオン状態となるように、カム37とカムローラ34の位置関係が設定される。
【0032】
ゲートスイッチ32は、オフ状態からオン状態に変化するときに戸閉検出信号を出力する。もっとも、閾値間隔L0になったときにゲートスイッチ32をオン状態からオフ状態に変化するものとしてもよく、その場合には、ゲートスイッチ32は、オン状態からオフ状態に変化するときに戸閉検出信号を出力する。出力された戸閉信号は、図示されていない制御装置に伝送され、制御装置は、乗りかご20の昇降を開始する制御を行う。
【0033】
左側かご戸22と右側かご戸24に設けられる一対のセフティシュー50,52は、左側かご戸と右側かご戸との間の状態が戸開状態のときは、それぞれの戸当り面から張り出し、戸閉状態のときにはそれぞれの戸当り面よりも引き込まれる部材である。一対のセフティシュー50,52は、乗りかご20から見て、左側かご戸22、右側かご戸24の外側、つまり図示されていない乗場扉側に設けられる。
【0034】
左側かご戸22の戸当り側と、右側かご戸24の戸当り側にそれぞれ取り付けられる左側戸当り部材60と右側戸当り部材62は、左側かご戸22と右側かご戸24との間が閉じられるときに、左側かご戸22と右側かご戸24との間隔が閾値間隔L0以下であっても、異物8が挟まれたことを検出するための部材である。その意味で、左側戸当り部材60と右側戸当り部材62は、異物検出部材である。
【0035】
すなわち、戸閉検出部30は、左側かご戸22と右側かご戸24との間隔が閾値間隔L0以下となったときには、戸閉検出信号を出力し、これによって乗りかご20は昇降を始める。上記の例で、閾値間隔L0=20mmであるので、左側戸当り部材60と右側戸当り部材62が設けられない従来技術では、厚さが20mm未満の異物8が挟まっても、戸閉検出信号が出力され、乗りかご20が昇降を始めることになる。
【0036】
ここで、乗客が無理に異物8を引っ張る等すると、左かご戸22等が不自然に動き、ゲートスイッチ32が誤動作して、戸閉検出信号をリセットすることが生じる。戸閉検出信号がなくなることは、左かご戸22と右かご戸24との間が閾値間隔L0を超えると判断され、図示されていない制御装置は異常発生として、乗りかご20の運行を停止する。この場合、乗客は停止した乗りかご20に閉じ込められることになる。これが本発明の解決すべき課題であり、そのために左側戸当り部材60と右側戸当り部材62が設けられる。
【0037】
左側戸当り部材60と右側戸当り部材62は、互いに合わさった際に左右で互い違いに組み合わされるように、先端部と根元部とを有する互い違い形状を有する。具体的には、左側戸当り部材60は、乗りかご20の側の面が平坦面で、その反対側である乗場扉の側の面は、根元部の厚さよりも先端部の厚さが薄い段差面を有する。一方、右側戸当り部材62は、乗場扉の側の面が平坦面で、乗りかご20の側の面は、根元部の厚さよりも先端部の厚さが薄い段差面を有する。つまり、左側戸当り部材60と右側戸当り部材62は、厚さ方向に互い違い形状を有する。そして、この互い違い形状は、戸開閉方向に沿って、互いに合わさった際に左右で互い違いに組み合わされるような形状である。
【0038】
戸開閉方向に沿った先端部の位置と根元部の位置との間の寸法である互い違い間隔L1は、戸閉検出部30における閾値間隔L0よりもやや大きい値に設定される。具体的には、L1は、閾値間隔L0よりも余裕間隔ΔLだけ大きく設定される。上記の例で、閾値間隔L0=20mmのときは、L1=22mm程度に設定される。
【0039】
左側戸当り部材60と右側戸当り部材62は、その目的が挟まれた異物8の検出のためであるので、異物8が挟まれやすい領域に限って設けられる。図1では、乗りかご20の床面から上方に向かって、予め定めた異物挟み込み領域の範囲として、R0が図示されている。R0の高さ範囲としては、約1.5mとすることができる。もっとも、左側かご戸22、右側かご戸24の戸当り側の高さの全部に渡って設けるものとしてもよい。
【0040】
左側戸当り部材60と右側戸当り部材62は、一対のセフティシュー50,52よりも左側かご戸22と右側かご戸24の側に寄ったところに配置される。これにより、左側かご戸22と右側かご戸24との間が開いているときは、一対のセフティシュー50,52が張り出すので、左側戸当り部材60、右側戸当り部材62が乗客の目に付きにくいようにできる。なお、図1では、左側戸当り部材60、右側戸当り部材62の様子を示すために、領域R0の部分における一対のセフティシュー50,52の図示を省略してある。
【0041】
図2から図4は、左側戸当り部材60と右側戸当り部材62の作用を説明する図である。ここでは、左側の(a)において、戸閉検出部30の状態が示され、右側の(b)において、左側かご戸22と右側かご戸24の戸当り部分の平面断面図が示されている。
【0042】
図2は、左側かご戸22の戸当り側と右側かご戸24の戸当り側とが完全に接触している状態を示す図である。この状態は、いわゆるかご戸の全閉状態に相当し、一対のセフティシュー50,52は、左側かご戸22、右側かご戸24の戸当り面から引き込まれた状態となっている。
【0043】
全閉状態では、左側戸当り部材60と右側戸当り部材62が互いに合わさって、左右で互い違いに組み合わされている。すなわち、左側戸当り部材60の互い違い形状の先端部が、右側戸当り部材62の互い違い形状の根元部に突当り、右側戸当り部材62の互い違い形状の先端部が、左側戸当り部材60の互い違い形状の根元部に突当る。
【0044】
また、図2(a)に示されるように、ゲートスイッチ32のカムローラ34は、カム37に当接して十分押されている。これによりゲートスイッチ32はオン状態とされ、戸閉検出信号が出力される。なお、この全閉状態におけるゲートスイッチ32とカム台36の間の距離は、基準距離S0として示されている。
【0045】
図3は、左側かご戸22の戸当り側と右側かご戸24の戸当り側との間の間隔が、閾値間隔L0=20mmとなったときの状態を示す図である。左側戸当り部材60、右側戸当り部材62の互い違い形状の互い違い間隔L1は閾値間隔L0よりも大きく、上記の例でL1=20mmと設定されているので、左側戸当り部材60と右側戸当り部材62とは、(L1−L0)/2=1mmだけ先端部同士が重なっている状態である。
【0046】
また、図2(a)に示されるように、ゲートスイッチ32のカムローラ34は、カム37にちょうど当接して押され始めている。これによりゲートスイッチ32はオン状態となり、戸閉検出信号がここで始めて出力される。この閾値間隔の状態におけるゲートスイッチ32とカム台36の間の距離は、S0+L0である。
【0047】
図4は、左側かご戸22の戸当り側と右側かご戸24の戸当り側との間に異物8が挟まった状態の様子を示す図である。図3(b)の説明から分かるように、左側戸当り部材60の先端部と右側戸当り部材62の先端部が重ならず、互いの先端が一致するのは、左側かご戸22の戸当り側と右側かご戸24の戸当り側との間の間隔がL1のときである。したがって、異物8の厚さをΔとすると、図4の状態は、左側かご戸22の戸当り側と右側かご戸24の戸当り側との間の間隔は、L1+Δのときである。
【0048】
1はL0よりも大きな値に設定される。上記の例で、L1=22mm、L0=20mmである。したがって、(L1+Δ)は必ず閾値L0よりも大きい。これに対応し、図4(a)に示されるように、この異物挟み込み状態におけるゲートスイッチ32とカム台36の間の距離は、S0+L1+Δである。これにより、ゲートスイッチ32のカムローラ34は、カム37から離れ、ゲートスイッチ32はオフ状態となり、戸閉検出信号は出力されない。したがって、エレベータシステム10の制御装置は、乗りかご20の昇降指令を出さず、乗りかご20が昇降することはない。
【0049】
ここで、仮に乗客が無理に異物8を引っ張って、左側かご戸22の戸当り側と右側かご戸24の戸当り側との間隔がL0以下となると、ゲートスイッチ32がオン状態となり、戸閉検出信号が出力され、乗りかご20が昇降を始めることになる。
【0050】
図5は、左側かご戸22の戸当り側と右側かご戸24の戸当り側との間が十分に開いている状態を示す図である。ここでは、閾値間隔L0からさらにLFだけ開いた状態が示されている。このように、左側かご戸22の戸当り側と右側かご戸24の戸当り側との間が十分に開いているときは、一対のセフティシュー50,52が先端側に張り出し、左側戸当り部材60、右側戸当り部材62が乗場扉の側から目に付きにくいようになる。
【0051】
この状態では、図5(a)に示されるように、ゲートスイッチ32とカム台36の間の距離は、S0+L0+LFである。ゲートスイッチ32のカムローラ34は、カム37から十分離れている。したがってゲートスイッチ32はオフ状態であり、戸閉検出信号は出力されない。
【0052】
このように、閾値間隔L0よりも大きい互い違い間隔L1が設定された互い違い形状を有する左側戸当り部材60と右側戸当り部材62を設けることで、異物8を的確に、また確実に検出することができる。
【0053】
上記では、左側戸当り部材60、右側戸当り部材62を、左側かご戸22、右側かご戸24とは別部材であるとして説明した。これに代えて、互い違い形状をかご戸に設けるものとしてもよい。図6は、左側互い違い形状部61、右側互い違い形状部63がそれぞれ設けられる左側かご戸23、右側かご戸25の様子を示す図である。左側互い違い形状部61の互い違い形状は、図1で説明した左側戸当り部材60の互い違い形状と同じである。同様に、右側互い違い形状部63の互い違い形状は、図1で説明した右側戸当り部材62の互い違い形状と同じである。
【0054】
図6では、左側互い違い形状部61、右側互い違い形状部63を、左側かご戸23、右側かご戸25のそれぞれの戸当り側の高さ方向の全領域に設けられている。これを、図1の領域R0のように、予め定めた異物挟み込み領域の範囲に設けられるものとしてもよい。
【0055】
上記では、互い違い形状は、組み合わされる板部材の厚さ方向に互い違いになるような形状として説明した。これを、組み合わされる板部材の幅方向に互い違いになる形状としてもよい。図7は、左側戸当り部材64、右側戸当り部材66における幅方向の互い違い形状を、互いに合わさった際に左右で互い違いに組み合わされるように、先端部と根元部とを有する互い違い形状とした例を示す図である。具体的には、互い違い形状として、互いに組み合わされる2つの矩形波形形状が示されている。矩形波形形状以外の繰り返し形状であってもよい。
【0056】
ここでも、互い違い形状は、戸開閉方向に沿った先端部の位置と根元部の位置との間の互い違い間隔L1が、戸閉検出部30における閾値間隔L0よりも大きい値として設定される。これによって、異物8を的確に、また確実に検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係るエレベータシステムは、人が乗降するエレベータの運行システムに利用できる。
【符号の説明】
【0058】
8 異物、10 エレベータシステム、12 昇降路、20 乗りかご、22,23 (左側)かご戸、24,25 (右側)かご戸、30 戸閉検出部、32 ゲートスイッチ、34 カムローラ、36 カム台、37 カム、40 戸開閉装置、42 かご戸レール、44 ハンガーローラ、50,52 セフティシュー、60,64 (左側)戸当り部材、61 (左側)互い違い形状部、62,66 (右側)戸当り部材、63 (右側)互い違い形状部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を昇降する乗りかごと、
乗りかごに設けられるかご戸と、
かご戸の戸当り側とかご戸に対向する対向部材の戸当り側との間隔が予め定めた閾値間隔以下となることを検出するときに、かご戸と対向部材との間の状態を戸閉検出状態として、戸閉検出信号を出力する戸閉検出部と、
を備え、
かご戸の戸当り側と、対向部材の戸当り側は、互いに合わさった際に左右で互い違いに組み合わされるように、先端部と根元部とを有する互い違い形状であって、戸開閉方向に沿った先端部の位置と根元部の位置との間の互い違い間隔が、戸閉検出部における閾値間隔よりも大きい互い違い形状を有することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータシステムにおいて、
かご戸に対向する対向部材は、もう一方のかご戸であって、乗りかごには、左側かご戸と右側かご戸が設けられることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のエレベータシステムにおいて、
互い違い形状は、乗りかごの床面に平行な面内で、左側かご戸の先端部が右側かご戸の根元部に対応し、右側かご戸の先端部が左側かご戸の根元部に対応して、互いに合わさった際に互い違いに組み合わされることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のエレベータシステムにおいて、
互い違い形状は、左側かご戸の戸当り側に設けられる左側戸当り部材と、右側かご戸の戸当り側に設けられる右側戸当り部材とに設けられることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のエレベータシステムにおいて、
左側かご戸と右側かご戸に設けられる一対のセフティシューであって、左側かご戸と右側かご戸との間の状態が戸開状態のときは、それぞれの戸当り面から張り出し、戸閉状態のときにはそれぞれの戸当り面よりも引き込まれる一対のセフティシューを備え、
左側戸当り部材と右側戸当り部材は、一対のセフティシューよりも左側かご戸と右側かご戸の側に寄ったところに配置されることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のエレベータシステムにおいて、
互い違い形状は、乗りかごの床面から上方に向かって、予め定めた異物挟み込み領域の範囲に設けられることを特徴とするエレベータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−184071(P2012−184071A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47873(P2011−47873)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】