説明

エレベータシステム

【課題】エレベータシステムにおいて、乗りかご内で炎が検出されたときに、乗りかご内の状況に応じて、的確な処理を行うことである。
【解決手段】エレベータシステム10において、かご戸14を備える乗りかご12には、人検出センサ30、炎検出センサ32、表示パネル22、スピーカ24、消火装置34が設けられる。制御装置40は、人検出センサ30、炎検出センサ32、かご戸14、表示パネル22、スピーカ24、消火装置34とそれぞれ接続される。そして、人検出センサ30からの検出信号を取得する人検出取得部42、炎検出センサ32からの検出信号を取得する炎検出取得部44、取得された検出信号に基づく危険程度に応じて、かご戸14、表示パネル22、スピーカ24、消火装置34に処理指令を与える炎事件処理部46を含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータシステムに係り、特に、乗りかごの内における炎検出を行うエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、建物を縦方向に縦貫する昇降路の中を、運行指示に従って乗りかごを昇降させる昇降装置である。このように、乗りかごは、建物の中でも周りから隔離された昇降路内を移動し、また乗りかご自体も周りから隔離された空間である。したがって、乗りかご内で、喫煙、タバコによるいたずら等があると、火災発生の危険等があるので、炎の的確な検出と、それに伴う処理が必要である。
【0003】
特許文献1には、エレベータ悪戯防止装置として、照明電球の光波長領域と太陽光の光波長領域とに重ならず、炎の光波長領域を含む波長領域の光を検出する紫外線検出装置を用いて、乗りかご内の炎を検出することが開示されている。
【0004】
特許文献2には、光によるタバコ感知器に関し、プランクの放射則から、人体の温度を最高40℃としたときの赤外線の波長が7〜9μmで、タバコの火の温度を750℃から900℃としたときの赤外線の波長が2.5μm〜3.5μmであることを述べている。そして、この波長の差に基づいて、適当なフィルタを用いることで、人を感知せず、タバコの火を感知することができると述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−178385号公報
【特許文献2】特開2000−48275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術を組み合わせれば、乗りかご内の喫煙、タバコの炎等を検出することができる。乗りかご内の喫煙、タバコの炎が検出されると、警報を出力することや、監視センタ等に通報すること等の処理を行うことが考えられる。その際に、エレベータシステムの安全確保の他に、乗りかご内の他の乗客の安全や、いたずらの場合にそれを止めさせること等、乗りかご内の状況に応じた処理を行うことが必要である。
【0007】
本発明の目的は、乗りかご内で炎が検出されたときに、乗りかご内の状況に応じて、的確な処理を行うことを可能にするエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエレベータシステムは、昇降路内を昇降する乗りかごと、乗りかご内の人の有無を検出する人検出手段と、乗りかご内の炎を検知し、炎の程度に応じた検出信号を出力する炎検出手段と、人検出手段が人を検出しているときに、炎検出手段の検出信号の大きさを含む検出状態の危険程度に応じて炎事件処理を行う処理手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、処理手段は、炎検出手段が炎を検出し、炎検出手段の検出状態の危険程度が予め定めた第1閾値条件以下のときに警報を出力し、炎検出手段の検出状態が第1閾値条件を超え、第1閾値条件よりも危険程度が大きいものとして予め定めた第2閾値条件以下のときに、乗りかごを最寄階に停止させ、かご戸を開いて乗りかごから退避する誘導報知を出力し、炎検出手段の検出状態が第2閾値条件を超えるときに、炎が外部に広がらないように、予め定めたかご戸閉じ状態にかご戸を閉じるかご戸閉じ処理を行うことが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、処理手段は、誘導報知を出力した後、予め定めた余裕時間を経過し、人検出手段が依然として人を検出するときは、重度警告を出力することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、処理手段は、誘導報知を出力した後、予め定めた余裕時間を経過し、人検出手段が依然として人を検出するときは、消火装置を作動させることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、乗りかごの天井部に粉末消火器を備え、処理手段は、処理手段は、粉末消化器から延び、先端に消火剤を放出するための操作部を有する消火ホースを、乗りかごの天井部から下降させることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、乗りかごの天井部に設けられる粉末消火器と、粉末消火器から延び、乗りかごの天井部の隅部に設けられる消火剤放出口に接続される消火剤導入路と、を備え、処理手段は、消火剤放出口から粉末消化剤を乗りかご内に放出させることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上記構成により、エレベータシステムは、乗りかご内に人がいることを検出しているときに、炎検出手段の検出信号の大きさを含む検出状態の危険程度に応じて炎事件処理を行う。これによって、炎が検出されたときに、乗りかご内の状況に応じた処理を的確に行うことができる。
【0015】
また、エレベータシステムにおいて、炎検出手段が炎を検出し、炎検出手段の検出状態の危険程度が予め定めた第1閾値条件以下のときに警報を出力し、炎検出手段の検出状態が第1閾値条件を超え、第1閾値条件よりも危険程度が大きいものとして予め定めた第2閾値条件以下のときに、乗りかごを最寄階に停止させ、かご戸を開いて乗りかごから退避する誘導報知を出力し、炎検出手段の検出状態が第2閾値条件を超えるときに、炎が外部に広がらないように、予め定めたかご戸閉じ状態にかご戸を閉じるかご戸閉じ処理を行う。このように、炎が検出されたときに、乗りかご内の状況に応じて、段階的な処理を行うことができる。
【0016】
また、エレベータシステムにおいて、誘導報知を出力した後、予め定めた余裕時間を経過し、人検出手段が依然として人を検出するときは、重度警告を出力する。炎の発生が乗りかご内の乗客によるいたずら等の場合は、単に音声やディスプレイで警告を出力しても、いたずらを止めないことが考えられる。このようなときは、重度警告によって、効果的にいたずらを止めさせることができる。重度警告としては、例えば、フラッシュを連続的に浴びせる、止めないときに公的機関に通報する旨を伝える等を行う。
【0017】
また、エレベータシステムにおいて、誘導報知を出力した後、予め定めた余裕時間を経過し、人検出手段が依然として人を検出するときは、消火装置を作動させる。まだ残留している人は、いたずら等を止めない可能性がある。そのような場合に消火装置を作動させることで、仮にその人がいて、その人に消火処理の影響が及ぶかもしれないが、火災になることを防止することができる。
【0018】
また、エレベータシステムにおいて、乗りかごの天井部に粉末消火器を備えて、乗りかごの天井部から消火ホースを下降させる。消火ホースには消火剤を放出するための操作部
が設けられているので、乗りかご内の人の判断で、消火活動を行うことができる。なお、粉末消火器とするのは、乗りかごが電気機器を備えているので、放水による消火が好ましくないからである。
【0019】
また、エレベータシステムにおいて、乗りかごの天井部に粉末消火器を備え、乗りかごの天井部の隅部に設けられる消火剤放出口から粉末消化剤を乗りかご内に放出させる。これにより、火災の発生等を抑制できる。なお、乗りかごの天井の隅部に消火剤放出口を設けるものとするのは、以下の理由による。すなわち、乗りかごの天井にはパネル等が設けられ、二重天井を構成する場合があるが、その場合でもパネルの周辺は隙間がある。また、天井の隅部には換気用の開口があることが多い。このように、消火剤を放出するために利用できる構成は、天井の隅部に多いためである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る実施の形態のエレベータシステムの構成を説明する図である。
【図2】本発明に係る実施の形態において、乗りかご内に炎が検出されるときの処理の手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0022】
図1は、エレベータシステム10において、乗りかご12の内部の様子を示す図である。ここでは、エレベータシステム10の構成要素ではないが、乗りかご12内の炎に関する状況を説明するため、タバコ6を吸っている乗客8が図示されている。
【0023】
エレベータシステム10は、建物の縦方向に縦貫する昇降路11において、制御装置40の運行制御部48からの運行指示に従って、乗りかご12の昇降制御を行う昇降システムである。乗りかご12は、乗客を収容する昇降かごである。
【0024】
乗りかご12に設けられるかご戸14は、乗りかご12に乗客が出入する出入口に設けられる開閉扉である。乗りかご12の天井に設けられる照明灯16は、乗りかご12内を照明する器具である。乗りかご12の天井から吊り下げられるパネル板18は、照明灯16による照明を分散均一化する機能と、天井に設けられるその他の要素を乗客から見えないようにする機能等を有する透光性の化粧板である。パネル板18は、乗りかご12の内壁との間に適当な隙間が設けられる大きさに設定される。
【0025】
乗りかご12の内壁に設けられる操作盤20は、乗りかご12の行き先階を登録するための行き先階ボタン、かご戸14を開閉する開閉ボタン等を含む操作パネルである。
【0026】
乗りかご12の内壁に取り付けられる表示パネル22は、画像、文字等を用いて、乗りかご12内の乗客に対するメッセージ等を表示するディスプレイである。表示パネル22はカラー液晶パネル等を用いることができる。
【0027】
乗りかご12の内壁に取り付けられるスピーカ24は、音声、音響を用いて、乗りかご12内の乗客に対するアナウンス等を出力する発音体装置である。
【0028】
乗りかご12の天井部、すなわち、乗りかご12の上部の外壁に設けられる換気部26は、昇降路11内の外気を乗りかご12の内部に供給する機能を有する。換気部26は、乗りかご12の天井部の隅部に設けられる開口部28の上に設置される。図1では、2つの換気部26が図示されているが、換気部26の数はこれ以外でもよい。例えば、1つでもよく、4つでもよい。換気部26は単なる換気用の筒部であってもよく、これに適当な換気ファンを設けるものとしてもよい。
【0029】
乗りかご12の内部に設けられる人検出センサ30は、乗りかご12内の人の有無を検出する人検出手段である。人検出センサ30としては、人から放射される赤外線を検出する赤外線センサを用いることができる。検出する赤外線の波長は、人の体温範囲に合わせた7〜9μmとすることがよい。この波長範囲を選択的に検出するための適当なフィルタを設けることが好ましい。
【0030】
乗りかご12の内部に設けられる炎検出センサ32は、乗りかご12内の炎を検知し、炎の程度に応じた検出信号を出力する炎検出手段である。具体的には、タバコの炎を検出する機能を有するセンサである。炎検出センサ32としては、炎から放射される赤外線または紫外線を検出する光センサを用いることができる。
【0031】
赤外線を用いる場合、検出する光の波長は、タバコの炎温度範囲に合わせた2.5μm〜3.5μmとすることがよい。紫外線を用いる場合は、照明灯16の光の波長、太陽光の波長を避けた200nm近辺とすることがよい。これらの波長範囲を選択的に検出するための適当なフィルタを設けることが好ましい。
【0032】
人検出センサ30と炎検出センサ32とは、図1に示されるように、一体化構造とすることができる。これにより、集光レンズ等を共通化することが可能となり、フィルタの配置も段階的なものとでき、全体としてコンパクトな構成とすることができる。
【0033】
乗りかご12の天井部、ここでは、乗りかご12の上部の外壁の外側に設けられる消火装置34は、粉末消火剤を用いた消火器である。乗りかご12内外には電気機器が多数設けられているので、放水による消火が好ましくないので、粉末消火剤を用いるものとしている。
【0034】
消火剤導入路36は、粉末消火器である消火装置34から乗りかご12の天井部に沿って延び、乗りかご12の天井部の隅部に設けられる消火剤放出口に接続される管路である。消火剤放出口としては、換気部26と乗りかご12の天井部との間に設けられる開口部28を用いることができる。
【0035】
制御装置40は、エレベータシステム10を構成する要素を全体として制御し、乗りかご12の運行を制御する機能を有する。ここでは、特に、乗りかご12の内部に炎を検出したときに、その危険程度に応じた処理を行う機能を有する。かかる制御装置40は、コンピュータあるいは専用の制御回路で構成することができる。制御装置40は、昇降路11の最上部等に設けられる機械室に設置される。その機能の一部を、乗りかご12に設置される乗りかご制御装置に行わせるものとしてもよい。
【0036】
制御装置40は、乗りかご12の運行制御を実行する運行制御部48を含む。また、制御装置40は、人検出センサ30、炎検出センサ32、かご戸14、表示パネル22、スピーカ24、消火装置34とそれぞれ接続される。そして、人検出センサ30からの検出信号を取得する人検出取得部42、炎検出センサ32からの検出信号を取得する炎検出取得部44、取得された検出信号に応じて、かご戸14、表示パネル22、スピーカ24、消火装置34に処理指令を与える炎事件処理部46を含んで構成される。
【0037】
かかる機能は、ソフトウェアを実行することで実現でき、具体的には、エレベータ運行制御プログラムを実行することで実現できる。
【0038】
上記構成の作用、特に、制御装置40の各機能のうち、運行制御部48を除く部分について、図2を用いて詳細に説明する。図2は、乗りかご12に炎が検出されるときに行われる処理の手順を示すフローチャートである。各手順は、エレベータ運行制御プログラムの中の炎事件処理に関する部分の処理手順にそれぞれ対応する。
【0039】
図2において、まず、乗りかご12内における人の有無が判断される(S10)。この手順は、制御装置40の人検出取得部42の機能によって実行される。具体的には、人検出センサ30の検出信号が取得され、その内容にしたがって、乗りかご12内の人の有無が判断される。人検出センサ30として赤外線センサを用いるときは、人から放射される赤外線が検出された内容の検出信号を取得したときに、乗りかご12内に人がいると判断することができる。
【0040】
S10で判断が肯定されると、次に、乗りかご12内における炎の有無が判断される(S12)。この手順は、制御装置40の炎検出取得部44の機能によって実行される。具体的には、炎検出センサ32の検出信号が取得され、その内容にしたがって、乗りかご12内の炎の有無が判断される。炎検出センサ32として赤外線センサを用いるときは、タバコ6の炎から放射される赤外線が検出された内容の検出信号を取得したときに、乗りかご12内に炎が検出されると判断することができる。
【0041】
S12で判断が肯定されると、次に、炎検出センサ32の検出信号の大きさを含む検出状態の危険程度に応じて炎事件に対する処理が行われる。この処理の詳細な内容は以下に述べるが、これらの処理は、制御装置40の炎事件処理部46の機能によって実行される。
【0042】
検出状態の危険程度は、いくつかの閾値条件によって分類される。最初に、炎が検出されるが、その危険程度が予め定めた第1閾値条件以下であるか否かが判断される(S14)。炎検出センサ32が赤外線センサの場合は、その検出信号は、予め定めた波長の光の強度が出力の大きさとなるので、炎が盛んなときは検出信号が大きく、小さい炎のときは検出信号が小さい。そこで、第1閾値条件としては、炎検出センサ32の検出信号の大きさが小さく、そのままにしておいても火災に至る恐れがほとんどない程度とすることができる。
【0043】
S14で判断が肯定されるときは、炎が検出されるが、火災の恐れがほとんどないときである。例えば、図1に示されるように、乗客8が乗りかご12に1人であるので、タバコ6をたまたま吸っている場合等が考えられる。そこで、そのような場合にタバコ6をすうことを止めさせるために、警告が出力される(S16)。具体的には、「火気が検出されます。タバコをお吸いの場合は直ちに消して下さい。」旨のメッセージを、表示パネル22、スピーカ24を介して出力する。S16の後は再びS14に戻る。S14において、炎検出が続く場合は、警報が繰り返し出力される。
【0044】
S14で判断が否定されると、検出状態の危険程度が第1閾値条件を超えていることになるので、次に誘導報知が行われる(S18)。誘導報知処理は、運行中の乗りかご12を最寄階に停止させ、かご戸14を開いて、乗りかご12内の乗客を、炎の検出される乗りかご12から退避させるために行われる。誘導報知自体は、例えば、「火気が検出されましたので、最寄階に停止します。かご戸を開きますので、順序よく、最寄階に避難して下さい。」旨のメッセージを、表示パネル22、スピーカ24を介して出力する。
【0045】
S18の後は、予め設定された余裕時間を待機する。余裕時間は、乗りかご12が最寄階に停止し、かご戸14を開いて、乗りかご12内の乗客が最寄階に降りて退避するために必要な時間として設定される。例えば、メッセージの出力の後の2分程度を、余裕時間として設定することができる。
【0046】
余裕時間が経過すると、人検出センサ30の検出信号と炎検出センサ32の検出信号を改めて参照する。そこで、なおも乗りかご12に人が検出され、炎も検出されるときは、重度警告を出力する。これは、検出されたその人がいたずらをして炎を発生させた可能性があるために、改めて強く警告して、炎を発生させることを止めさせるためである。重度警告としては、図1では図示されていないフラッシュ装置を作動させて、強いフラッシュを連続的に出力する。あるいは、スピーカ24から大きな警告音を出力する。あるいは、「炎をすぐに消して下さい。消さない場合には、公共機関に通告します。」旨の強いメッセージを、表示パネル22、スピーカ24を介して出力する。
【0047】
重度警告の後、あるいは重度警告と同時に、危険程度が第1閾値条件を超え、さらに予め定めた第2閾値条件以下であるか否かが判断される(S22)。第2閾値条件は、第1閾値条件よりも危険程度が大きい状態を示す条件である。第1閾値条件は、炎検出センサ32の検出信号の大きさが小さく、そのままにしておいても火災に至る恐れがほとんどない程度としたので、第2閾値条件としては、炎検出センサ32の検出信号の大きさがかなり大きく、乗りかご12内が炎に包まれた火災状態であることとできる。
【0048】
S22の判断が否定されるときは、乗りかご12内が炎に包まれてはいないが、そのままにすると火災の恐れがあるときである。したがって、消火処理が行われる(S24)。このときに、人が検出されていて、消火処理の影響がその人に及ぶ可能性がある場合であっても、消火処理を優先するため、この処理は実行される。具体的には、消火装置34に
消火剤導入路36を介して、消火剤放出口である開口部28から粉末消火剤を乗りかご12内に放出させる。
【0049】
他の消火処理として、消火装置34から消火ホースを延ばして、乗りかご12内に降下させてもよい。消火ホースの先端には消火剤を放出するための操作部を設ける。乗りかご12内に人がいる場合には、この消火処理が効果的である。例えば、重度警告で「炎をすぐに消して下さい。」とメッセージを出力し、その後に消火ホースを下降させ、「消火ホースの先端の操作部を開くと、粉末消火剤が出ます。消火ホースの先端を炎に向けて下さい。」等のメッセージを出力して、炎消火を誘導することができる。
【0050】
S24の後は、炎検出センサ32の検出信号を参照して、炎が消えたか否かが判断される(S26)。炎が消えていない場合は、S22に戻り、S22の判断が否定されると、消火処理が継続される。
【0051】
S22で判断が肯定されると、乗りかご12内が炎に包まれている状態であるので、かご戸14を閉じる処理が行われる(S28)。この処理を行う前に、誤判断を防ぐために、数分間の観察期間を置き、再度S22の判断を行い、そこで再度判断が肯定されることを確認することがよい。
S28の処理は、乗りかご12内の炎を建物内に広げないようにするために行われる。かご戸14は必ずしも密閉しなくても、炎が乗りかご12の外に漏れない程度に閉じるものとしてもよい。このようにかご戸14を少し開けておく方が、外部からの消火作業がやりやすくなる。S22で判断が肯定されるときは、乗りかご12の火災と考えられるので、火災報知機が作動され、異常事態信号が監視センタ等に急報される。
【0052】
このように、上記構成によれば、乗りかご12内の炎の状況に応じて、対応処理を段階的に適切に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明にかかるエレベータシステムは、人が乗降するエレベータの運行システムに利用できる。
【符号の説明】
【0054】
6 タバコ、8 乗客、10 エレベータシステム、11 昇降路、14 かご戸、16 照明灯、18 パネル板、20 操作盤、22 表示パネル、24 スピーカ、26 換気部、28 開口部、30 人検出センサ、32 炎検出センサ、34 消火装置、36 消火剤導入路、40 制御装置、42 人検出取得部、44 炎検出取得部、46 炎事件処理部、48 運行制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を昇降する乗りかごと、
乗りかご内の人の有無を検出する人検出手段と、
乗りかご内の炎を検知し、炎の程度に応じた検出信号を出力する炎検出手段と、
人検出手段が人を検出しているときに、炎検出手段の検出信号の大きさを含む検出状態の危険程度に応じて炎事件処理を行う処理手段と、
を備えることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータシステムにおいて、
処理手段は、
炎検出手段が炎を検出し、炎検出手段の検出状態の危険程度が予め定めた第1閾値条件以下のときに警報を出力し、
炎検出手段の検出状態が第1閾値条件を超え、第1閾値条件よりも危険程度が大きいものとして予め定めた第2閾値条件以下のときに、乗りかごを最寄階に停止させ、かご戸を開いて乗りかごから退避する誘導報知を出力し、
炎検出手段の検出状態が第2閾値条件を超えるときに、炎が外部に広がらないように、予め定めたかご戸閉じ状態にかご戸を閉じるかご戸閉じ処理を行うことを特徴とするエレベータシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のエレベータシステムにおいて、
処理手段は、
誘導報知を出力した後、予め定めた余裕時間を経過し、人検出手段が依然として人を検出するときは、重度警告を出力することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項4】
請求項2に記載のエレベータシステムにおいて、
処理手段は、
誘導報知を出力した後、予め定めた余裕時間を経過し、人検出手段が依然として人を検出するときは、消火装置を作動させることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のエレベータシステムにおいて、
乗りかごの天井部に粉末消火器を備え、
処理手段は、
粉末消化器から延び、先端に消火剤を放出するための操作部を有する消火ホースを、乗りかごの天井部から下降させることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項6】
請求項4に記載のエレベータシステムにおいて、
乗りかごの天井部に設けられる粉末消火器と、
粉末消火器から延び、乗りかごの天井部の隅部に設けられる消火剤放出口に接続される消火剤導入路と、
を備え、
処理手段は、
消火剤放出口から粉末消化剤を乗りかご内に放出させることを特徴とするエレベータシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−184096(P2012−184096A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49764(P2011−49764)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】