説明

エレベータドアの駆動装置

【課題】簡単な構成で、エレベータドアの移動速度を変化させることができるエレベータドアの駆動装置を提供する。
【解決手段】エレベータの出入口に設けられたエレベータドア3を移動させるためのモータ14と、モータ14の動力をエレベータドア3に伝達する際の変速比を変化させ、エレベータドア3の移動速度を変化させる無段変速装置17とで、エレベータドア3の駆動装置を構成した。かかる簡単な構成で、エレベータドア3の移動速度を変化させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータドアを移動させるエレベータドアの駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータの出入口には、エレベータドアが設けられる。このエレベータドアには、通常、プーリを介してモータの動力が伝達される。この動力により、エレベータドアが移動する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−155069号公報
【0004】
ここで、乗用エレベータの出入口よりも荷物用エレベータの出入口の方が大きい。このため、荷物用エレベータにおいては、エレベータドアが全開するまでに時間がかかる。特に、上開き式のエレベータドアの場合、荷扱者は、扉の全開を待たずに、フォークリフトを使って、エレベータの乗り降りを開始することがある。その結果、フォークリフトがエレベータドアにぶつかることが頻繁に起こる。
【0005】
これに対し、高速でエレベータドアを開けば、エレベータドアの全開を待つ荷扱者が増える。このため、フォークリフトがエレベータドアにぶつかる回数を減らすことができる。しかしながら、高速でエレベータドアを開く場合であっても、フォークリフトがエレベータドアにぶつかることもある。この場合の衝撃力は大きくなる。
【0006】
この状況を改善するには、可変速のモータを開発し、エレベータドアの移動速度を変化させればよい。これにより、エレベータドアに近付いた物体とエレベータドアとがぶつかった際の衝撃力が大きくなることを防止しつつ、エレベータドアの移動時間を短縮することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、エレベータの出入口においては、モータの配置スペースが限られる。この限られたスペースに収まる可変速のモータを開発することは難しい。
【0008】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、簡単な構成で、エレベータドアの移動速度を変化させることができるエレベータドアの駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るエレベータドアの駆動装置は、エレベータの出入口に設けられたエレベータドアを移動させるためのモータと、前記モータの動力を前記エレベータドアに伝達する際の変速比を変化させ、前記エレベータドアの移動速度を変化させる無段変速装置と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、簡単な構成で、エレベータドアの移動速度を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベータドアの駆動装置が利用されるエレベータの出入口の横断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるエレベータドアの駆動装置が利用されるエレベータの出入口の正面図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるエレベータドアの駆動装置の正面図である。
【図4】この発明の実施の形態1におけるエレベータドアの駆動装置の側面図である。
【図5】この発明の実施の形態1におけるエレベータドアの駆動装置の側面図である。
【図6】この発明の実施の形態2におけるエレベータドアの駆動装置が利用されるエレベータの出入口の横断面図である。
【図7】この発明の実施の形態2におけるエレベータドアの駆動装置が利用されるエレベータの出入口の正面図である。
【図8】この発明の実施の形態2におけるエレベータドアの駆動装置の正面図である。
【図9】この発明の実施の形態2におけるエレベータドアの駆動装置の側面図である。
【図10】この発明の実施の形態2におけるエレベータドアの駆動装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベータドアの駆動装置が利用されるエレベータの出入口の横断面図である。
【0014】
図1において、1はエレベータのかごである。このかご1は、エレベータの昇降路(図示せず)内に設けられる。2はエレベータの乗場である。この乗場2は、エレベータが設置された建物の各階に設けられる。
【0015】
エレベータの出入口(図示せず)には、エレベータドア3が設けられる。このエレベータドア3は、横開き式かつ片開き式のものである。このエレベータドア3は、かご扉4と乗場扉5とからなる。かご扉4は、かご1の出入口(図示せず)に設けられる。乗場扉5は、乗場2の出入口(図示せず)に設けられる。
【0016】
かご扉4よりもかご1内側には、検出器6が設けられる。具体的には、検出器6は、マルチビームセンサからなる。このマルチビームセンサは、投光器7と受光器8とからなる。投光器7は、かご1の出入口の一側に設けられる。受光器8は、かご1の出入口の他側に設けられる。
【0017】
乗場扉5よりも乗場2側には、検出器9が設けられる。具体的には、検出器9は、マルチビームセンサからなる。このマルチビームセンサは、投光器10と受光器11とからなる。投光器10は、乗場2の出入口の一側に設けられる。受光器11は、乗場2の出入口の他側に設けられる。
【0018】
図2はこの発明の実施の形態1におけるエレベータドアの駆動装置が利用されるエレベータの出入口の正面図である。
図2は乗場2の出入口を乗場2側から見た図である。図2に示すように、投光器10と受光器11とは、乗場2の床面から所定高さまで連続的に配置される。これにより、検出器9の検出領域は、乗場2の床面から所定高さまでの間となる。
【0019】
このため、検出器9は、乗場2の床面から所定高さまでの間で、乗場2側から乗場扉5に近付いた物体を検出することができる。具体的には、検出器9は、乗場2の床面から利用者12の身長よりもやや高い所までの間で、乗場2側から乗場扉5に近付いた物体を検出することができる。
【0020】
なお、図2には図示しないが、投光器7と受光器8とは、かご1の床面から所定高さまで連続的に配置される。これにより、検出器6の検出領域は、かご1の床面から所定高さまでの間となる。
【0021】
このため、検出器6は、かご1の床面から所定高さまでの間で、かご1内側からかご扉4に近付いた物体を検出することができる。具体的には、検出器6は、かご1の床面と利用者12の身長よりもやや高い所までの間で、かご1内側からかご扉4に近付いた物体を検出することができる。
【0022】
次に、図3を用いて、エレベータドア3の駆動装置を説明する。
図3はこの発明の実施の形態1におけるエレベータドアの駆動装置の正面図である。
図3はかご1の出入口上部をかご1外側から見た図である。図3に示すように、かご1の出入口の上縁部に沿って、ドアレール13が設けられる。このドアレール13上部には、モータ14が設けられる。このモータ14は、従来のものと同様である。すなわち、モータ14は、可変速制御機能を備えていないものである。
【0023】
このモータ14の斜め下方では、ドアレール13の一側に、プーリ(図示せず)が設けられる。このプーリには、無端状のロープ15が巻き掛けられる。このロープ15の一部に、ドアハンガー16を介して、かご扉4が連結される。
【0024】
本実施の形態においては、ロープ15の巻き掛けられたプーリの回転軸に、無段変速装置(CVT)17が設けられる。この無段変速装置17は、近年の自動車に利用されている変速装置と同様のものである。具体的には、無段変速装置17は、機械式のベルト式無段変速装置である。
【0025】
この無段変速装置17には、プーリ17aが設けられる。このプーリ17aには、ベルト18を介して、モータ14の動力が伝達される。このプーリ17aは、ベルト18の巻き掛けられた部分の外径を自由に変化させることができるようになっている。すなわち、無段変速装置17においては、モータ14に対するプーリ17aのプーリ比を変化させることができるようになっている。
【0026】
次に、図4と図5とを用いて、エレベータドア3の動作を説明する。
図4と図5とはこの発明の実施の形態1におけるエレベータドアの駆動装置の側面図である。
【0027】
通常は、検出器6、9は、利用者12の手等の物体を検出していない。この場合、図4に示すように、プーリ17aにおいては、ベルト18の巻き掛けられた部分の外径が比較的小さくなる。この状態で、モータ14が回転する。このため、モータ14の回転量に対し、プーリ17aの回転量は比較的多くなる。
【0028】
この回転量に応じて、ロープ15の移動量も決定する。このため、ロープ15は、高速で移動する。このロープ15に追従して、かご扉4も高速で移動する。このかご扉4に追従して、乗場扉5も高速で移動する。
【0029】
これに対し、利用者12の手等の物体がかご扉4や乗場扉5に近付くと、検出器6、9が物体を検出する。この場合、無段変速装置17は、モータ14の動力をエレベータドア3に伝達する際の変速比を瞬時に変化させる。
【0030】
具体的には、図5に示すように、プーリ17aにおいては、ベルト18の巻き掛けられた部分の外径が、検出器6、9による物体の非検出時よりも大きくなる。この状態で、モータ14が回転する。このため、モータ14の回転量に対し、プーリ17aの回転量は、検出器6、9による物体の非検出時よりも少なくなる。
【0031】
この回転量に応じて、ロープ15の移動量も決定する。このため、ロープ15は、検出器6、9による物体の非検出時よりも低速で移動する。このロープ15に追従して、かご扉4も、検出器6、9による物体の非検出時よりも低速で移動する。このかご扉4に追従して、乗場扉5も、検出器6、9による物体の非検出時よりも低速で移動する。
【0032】
以上で説明した実施の形態1によれば、無段変速装置17は、モータ14の動力をエレベータドア3に伝達する際の変速比を変化させる。これにより、エレベータドア3の移動速度が変化する。このため、簡単な構成で、エレベータドア3の移動速度を変化させることができる。
【0033】
また、エレベータドア3に物体が近付いた場合、エレベータドア3は瞬時に減速する。このため、物体とエレベータドア3とがぶつかったとしても、その際の衝撃力を小さくすることができる。すなわち、エレベータを安全に運転することができる。
【0034】
この際、エレベータドア3は停止しない。このため、エレベータドア3の開閉時間が大幅に延長されることはない。これにより、エレベータの運転効率を向上させることができる。
【0035】
さらに、エレベータドア3に物体が近付いていない場合、エレベータドア3が減速することはない。このため、エレベータドア3の開閉時間を大幅に短縮することができる。これにより、エレベータの運転効率を向上させることができる。
【0036】
なお、実施の形態1においては、エレベータドア3は片開き式のものであった。しかしながら、エレベータドア3を片開き式のものに限定する必要はない。すなわち、エレベータドア3が両開き式のものであっても、上記同様の効果を得ることができる。
【0037】
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2におけるエレベータドアの駆動装置が利用されるエレベータの出入口の横断面図である。図7はこの発明の実施の形態2におけるエレベータドアの駆動装置が利用されるエレベータの出入口の正面図である。なお、実施の形態1と同一又は相当部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0038】
実施の形態1においては、エレベータドア3は横開き式のものであった。一方、実施の形態2においては、エレベータドア3は上開き式のものである。以下、図8〜図10を用いて、実施の形態2のエレベータドア3の駆動装置を説明する。
【0039】
図8はこの発明の実施の形態2におけるエレベータドアの駆動装置の正面図である。
図8はかご1の出入口上部をかご1外側から見た図である。図8に示すように、かご1の出入口(図示せず)には、支持枠19が設けられる。この支持枠19の両側に、かご扉4が案内される。この支持枠19上部に、モータ14が設けられる。
【0040】
このモータ14の水平方向では、支持枠19の一側上部に、プーリ20が設けられる。このプーリ20には、ロープ21が巻き掛けられる。このロープ21の一端には、かご扉4が連結される。一方、ロープ21の他端には、カウンタウエイト22が連結される。
【0041】
本実施の形態においては、プーリ20の回転軸に、無段変速装置(CVT)23が設けられる。この無段変速装置23には、プーリ23aが設けられる。このプーリ23aは、実施の形態1のプーリ17aと同様に、ベルト18の巻き掛けられた部分の外径を自由に変化させることができるようになっている。すなわち、無段変速装置23においては、モータ14に対するプーリ23aのプーリ比を変化させることができるようになっている。
【0042】
次に、図9と図10とを用いて、エレベータドア3の動作を説明する。
図9と図10はこの発明の実施の形態2におけるエレベータドアの駆動装置の側面図である。
【0043】
本実施の形態の駆動装置には、所定高さとして、利用者12の手が届かない高さが設定される。かご扉4の下端と乗場扉5の下端とが所定高さよりも上方に位置する場合、利用者12の手がかご扉4や乗場扉5と接触することはない。この場合、エレベータドア3に近付いた物体が検出されても、エレベータドア3の減速は禁止される。
【0044】
すなわち、検出器6、9による物体の検出の有無によらず、図9に示すように、プーリ23aにおいては、ベルト18の巻き掛けられた部分の外径が比較的小さい状態を維持する。すなわち、エレベータドア3は、高速で移動する。
【0045】
これに対し、かご扉4の下端と乗場扉5の下端とが所定高さよりも下方に位置する場合、利用者12の手がかご扉4や乗場扉5と接触する可能性もある。そこで、かご扉4の下端と乗場扉5の下端とが所定高さよりも下方に位置する場合は、実施の形態1と同様に、検出器6、9が物体を検出しているか否かによって、エレベータドア3の移動速度を変化させる。
【0046】
すなわち、検出器6、9が物体を検出していない場合は、図9に示すように、プーリ23aにおいては、ベルト18の巻き掛けられた部分の外径が比較的小さくなる。すなわち、エレベータドア3は、高速で移動する。
【0047】
これに対し、検出器6、9のいずれかが物体を検出している場合、図10に示すように、プーリ23aにおいては、ベルト18の巻き掛けられた部分の外径が、検出器6、9による物体の非検出時よりも大きくなる。すなわち、エレベータドア3は、検出器6、9による物体の非検出時よりも低速で移動する。
【0048】
以上で説明した実施の形態2によれば、エレベータドア3の下端が所定の高さよりも上方に位置する場合は、エレベータドア3に近付いた物体が検出されても、エレベータドア3の減速は禁止される。このため、エレベータドア3との開閉時間を大幅に短縮することができる。これにより、エレベータの運転効率を向上させることができる。
【0049】
なお、実施の形態1及び2においては、無段変速装置17、23として、ベルト式無段変速装置が利用されていた。しかしながら、無段変速装置17、23の種類を限定する必要はない。例えば、無段変速装置17、23として、チェーン式無段変速装置を利用してもよい。すなわち、可変歯チェーンと溝付きプーリを用いて、無段変速装置17、23を構成してもよい。この場合でも、実施の形態1及び2と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 かご
2 乗場
3 エレベータドア
4 かご扉
5 乗場扉
6 検出器
7 投光器
8 受光器
9 検出器
10 投光器
11 受光器
12 利用者
13 ドアレール
14 モータ
15 ロープ
16 ドアハンガー
17 無段変速装置
17a プーリ
18 ベルト
19 支持枠
20 プーリ
21 ロープ
22 カウンタウエイト
23 無段変速装置
23a プーリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの出入口に設けられたエレベータドアを移動させるためのモータと、
前記モータの動力を前記エレベータドアに伝達する際の変速比を変化させ、前記エレベータドアの移動速度を変化させる無段変速装置と、
を備えたことを特徴とするエレベータドアの駆動装置。
【請求項2】
前記エレベータドアに近付いた物体を検出する検出器、
を備え、
前記無段変速装置は、前記エレベータドアに近付いた物体が検出された場合に、前記エレベータドアを減速させる
ことを特徴とする請求項1記載のエレベータドアの駆動装置。
【請求項3】
前記無段変速装置は、前記エレベータドアに近付いた物体が検出された場合に、前記エレベータドアを停止させることなく減速させる
ことを特徴とする請求項2記載のエレベータドアの駆動装置。
【請求項4】
前記モータは、上開き式のエレベータドアを移動させるために設けられ、
前記無段変速装置は、前記上開き式のエレベータドアの下端が所定の高さよりも上方に位置している場合は、前記エレベータドアに近付いた物体が検出されても、前記エレベータドアの減速を禁止する
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のエレベータドアの駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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