説明

エレベーター装置及びエレベーター乗りかご

【課題】本発明の目的は、表面の材質が異なる複数種類の表面材料のかご敷居の構造を共通化でき、取り付け作業性を向上するエレベーター乗りかご及びエレベーター装置を提供することである。
【解決手段】前記目的を達成するために、本発明にかかるエレベーター装置及び乗りかごは、乗りかごが乗場に位置した際にかご敷居6及び乗場敷居が互いに対向する位置に、継ぎ足し敷居7をかご敷居6又は乗場敷居のいずれか一方に設け、継ぎ足し敷居7が設けられたかご敷居6又は乗場敷居は、廉価材料で形成された第1の継ぎ足し敷居13と、金属で形成されたカバー材によって廉価材料で形成された敷居支え24の少なくとも上面及び前面を覆った第2の継ぎ足し敷居23の少なくとも2つの継ぎ足し敷居を交換取り付け可能としており、第1の継ぎ足し敷居13と、第2の継ぎ足し敷居23は同一の外形形状となっているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの乗り場側の敷居とかご側のかご敷居の隙間を狭めるために、かご側若しくは、乗り場側の敷居に敷居を継ぎ足した敷居部分におけて、異なる材質の表面仕上げ仕様の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のかご敷居に継ぎ足した敷居部分においては、アルミ素材仕様のかご敷居とステンレス素材仕様のかご敷居では、構造が異なっていた。その材料の特性から、アルミ素材仕様では、押し出し材による成形が主であった。一方、ステンレス素材仕様のかご敷居では、ステンレス板金による成形が主であった。ステンレス素材の場合は、ステンレス母材からの削り出しという加工法もあるが、材料費および加工費が高いことと軽量化の観点から、板金構造が優れる。そのため、板金による成形が主であった。たとえば、特許文献1参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平5−67558号公報(第4項 第1図等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、アルミ素材仕様のかご敷居とステンレス素材仕様のかご敷居は、表面の材質が異なるだけで、外観形状は同一であるにも関わらず、その内部構造は大きく異なり、異なる構造設計を行っていた。また、構造が異なるため、その取り付け作業性も異なるものであった。
【0005】
本発明は、表面の材質が異なる複数種類の表面材料のかご敷居の構造を共通化でき、取り付け作業性を向上するエレベーター乗りかご及びエレベーター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明にかかるエレベーター装置及びエレベーター乗りかごは、乗りかごが乗場に位置した際にかご敷居及び乗場敷居が互いに対向する位置に、継ぎ足し敷居を前記かご敷居又は前記乗場敷居のいずれか一方に設け、前記継ぎ足し敷居が設けられた前記かご敷居又は前記乗場敷居は、廉価材料で形成された第1の継ぎ足し敷居と、金属で形成されたカバー材によって廉価材料で形成された敷居支えの少なくとも上面及び前面を覆った第2の継ぎ足し敷居の少なくとも2つの継ぎ足し敷居を交換取り付け可能としており、前記第1の継ぎ足し敷居と、前記第2の継ぎ足し敷居は同一の外形形状となっているものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、表面の材質が異なる複数種類の表面材料のかご敷居の構造を共通化でき、取り付け作業性を向上するエレベーター乗りかご及びエレベーター装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】エレベーターの乗りかご正面概略図である。
【図2】エレベーターの乗りかご側面概略図である。
【図3】アルミ素材仕様におけるかご敷居部の構造図である。
【図4】ステンレス素材仕様におけるかご敷居部の構造図である。
【図5】アルミ素材仕様におけるかご敷居部の断面構造図である。
【図6】ステンレス素材仕様におけるかご敷居部の断面構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態におけるエレベーター装置は、昇降路内を昇降する乗りかご及び釣合いおもり、乗りかご及び釣合いおもりを吊持するロープである主索,主索が駆動シーブに巻き掛けられた巻上機を備えている。そして乗りかご及び釣合いおもりは駆動シーブに巻き掛けられた主索が巻上機によって駆動されることで昇降路内を昇降するものである。
【0010】
以下、本発明に係るかご敷居の継ぎ足した敷居部分の実施例を図に基づいて説明する。
【0011】
通常エレベーターの乗りかごは、図1,図2に示すように、下枠4とかご縦枠2と上枠5とから構成された構造体に防振ゴム3を介してかご床枠1が取り付けられており、そのかご床枠1の前側、即ち乗りかごのドアが設けられた部分下側の乗場と対向する部分にかご敷居6がある。そしてかご敷居6の前方、かご敷居6の乗場と対向する部分に更に継ぎ足されたかご敷居7が取り付けられた構造となっている。
【0012】
アルミ素材仕様におけるかご敷居部の詳細は、図3,図5の如くである。かご床枠にアルミ素材のかご敷居支え12がボルトで固定される構造であり、アルミ素材のかご敷居支え12とアルミ素材のかご敷居11もボルトで固定される構造となっている。そして、アルミ素材のかご敷居に継ぎ足された敷居13は、アルミ素材のかご敷居支え12とボルトで固定される構造となっている。
【0013】
また、エプロン15は、エプロンブラケット31を介してアルミ素材のかご敷居支え12とボルトで固定されている。かご敷居に継ぎ足された敷居の保護カバー14は、アルミ素材のかご敷居に継ぎ足された敷居13とエプロン15にボルトで固定されており、かご敷居と人の足先の挟まれ防止の目的で取り付けられている。また、かご敷居に継ぎ足された敷居とその保護カバーの保護キャップ16は、アルミ素材のかご敷居に継ぎ足された敷居13とかご敷居に継ぎ足された敷居の保護カバー14にボルトで固定されており、これも、かご敷居と人の足先の挟まれ防止の目的で取り付けられている。
【0014】
一方、ステンレス素材仕様におけるかご敷居部の詳細は、図4,図6の如くである。かご床枠にステンレス素材のかご敷居支え22がボルトで固定される構造であり、ステンレス素材のかご敷居支え22とステンレス素材のかご敷居21もボルトで固定される構造となっている。そして、ステンレス素材のかご敷居に継ぎ足された敷居23は、ステンレス素材のかご敷居に継ぎ足された敷居支え24と接着固定されており、ステンレス素材のかご敷居支え22とボルトで固定される構造となっている。
【0015】
また、エプロン15は、エプロンブラケット31を介してステンレス素材のかご敷居支え22とボルトで固定されている。かご敷居に継ぎ足された敷居の保護カバー14は、ステンレス素材のかご敷居に継ぎ足された敷居支え24とエプロン15にボルトで固定されており、かご敷居と人の足先の挟まれ防止の目的で取り付けられている。また、かご敷居に継ぎ足された敷居とその保護カバーの保護キャップ16は、ステンレス素材のかご敷居に継ぎ足された敷居支え24とかご敷居に継ぎ足された敷居の保護カバー14にボルトで固定されており、これも、かご敷居と人の足先の挟まれ防止の目的で取り付けられている。
【0016】
ステンレス素材のかご敷居に継ぎ足された敷居23と接着固定されたステンレス素材のかご敷居に継ぎ足された敷居支え24の外形寸法は、アルミ素材のかご敷居支え12と同じ外形寸法となっている。
【0017】
このような構成とすることで、かご敷居に継ぎ足された敷居の保護カバー14,エプロン15,エプロンブラケット31,かご敷居に継ぎ足された敷居とその保護カバーの保護キャップ16は共通部品となり、同一の構造設計とすることができる。また、その取り付け作業性も同一のものとなり、これに関連する部品の設計及び取り付け作業を共通化したエレベーターのかご敷居を提供できるようになる。
【0018】
なお、本実施形態ではかご敷居6の乗場と対向する部分に更に継ぎ足されたかご敷居7が取り付けられた構造を例に挙げて説明したが、乗場のドアを開閉するための乗場敷居はそれぞれの乗場にも設けられている。そこで乗場敷居が乗りかごと対向する部分に更に敷居を継ぎ足した構造であってもよく、その場合、継ぎ足された敷居を本実施例で挙げたように構成することで、同様の効果を奏することができる。
【0019】
以上説明したように、アルミ素材仕様のかご敷居とステンレス素材仕様のかご敷居は、表面の材質が異なるだけで、外観形状は同一であるにも関わらず、従来はその内部構造は大きく異なり、異なる構造設計を行っていた。そして構造が異なることに起因して、その取り付け作業性も異なるものであった。この課題は、アルミ素材仕様のかご敷居とステンレス素材仕様のかご敷居の部品形状を同一にすることで解決できる。つまり、ステンレス素材仕様のかご敷居の外表面部だけをステンレス素材で覆い、その内部は、アルミ素材仕様のかご敷居と同等の構造とする構成のステンレス素材仕様のかご敷居とすることでこの課題を解決できる。
【0020】
よって、本実施形態で説明したように構成するで、アルミ素材仕様とステンレス素材仕様において、取り扱う各部品の外形形状が同一寸法となるため、これに付帯する関連部品も同一の構造設計とすることができる。また、その取り付け作業性も同一のものとなり、これに関連する部品の設計及び取り付け作業を共通化したエレベーターのかご敷居を提供できる。
【0021】
なお、上記実施形態では、廉価材料としてアルミニウムを金属のカバー材としてステンレスを使用している。しかし、廉価材料としては、継ぎ足し敷居として十分な強度を有する材料であればよく、例えばABSやプラスチックなどの樹脂素材や、鉄などを使用してもよい。同様に金属のカバー材としては、金や銅などの高価な金属などを使用することもできる。例えば、廉価材料として樹脂を金属カバー材としてアルミニウムを使用するような構成であってもよい。
【0022】
ここで、廉価材料とは金属のカバー材と材料単価で比較した時に材料単価が安い材料を言うものとする。このような構成とすることで、コストの高い材料の使用量を減らしながら、外表面部だけを異なる材質の表面仕上げとしているので、見た目にはコストの高い材料で敷居が形成されているように見えて、エレベーターの意匠性が向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0023】
1 かご床枠
2 かご縦枠
3 防振ゴム
4 下枠
5 上枠
6 かご敷居
7 かご敷居に継ぎ足された敷居
11 アルミ素材のかご敷居
12 アルミ素材のかご敷居支え
13 アルミ素材のかご敷居に継ぎ足された敷居
14 かご敷居に継ぎ足された敷居の保護カバー
15 エプロン
16 かご敷居に継ぎ足された敷居とその保護カバーの保護キャップ
21 ステンレス素材のかご敷居
22 ステンレス素材のかご敷居支え
23 ステンレス素材のかご敷居に継ぎ足された敷居
24 ステンレス素材のかご敷居に継ぎ足された敷居支え
31 エプロンブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を昇降する乗りかご及び釣合いおもりと、前記乗りかご及び前記釣合いおもりを吊持する主索と、前記主索が巻き掛けられた巻上機とを備えたエレベーター装置において、
前記乗りかごにはかご敷居が、前記昇降路に設けられた乗場には乗場敷居がそれぞれ設けられ、
前記乗りかごが前記乗場に位置した際に前記かご敷居及び前記乗場敷居が互いに対向する位置に、継ぎ足し敷居を前記かご敷居又は前記乗場敷居のいずれか一方に設け、
前記継ぎ足し敷居が設けられた前記かご敷居又は前記乗場敷居は、廉価材料で形成された第1の継ぎ足し敷居と、金属で形成されたカバー材によって廉価材料で形成された敷居支えの少なくとも上面及び前面を覆った第2の継ぎ足し敷居の少なくとも2つの継ぎ足し敷居を交換取り付け可能としており、
前記第1の継ぎ足し敷居と、前記第2の継ぎ足し敷居は同一の外形形状となっていることを特徴とするエレベーター装置。
【請求項2】
前記第1の継ぎ足し敷居と前記第2の継ぎ足し敷居は、保護カバー,エプロン,エプロンブラケット,前記保護カバーの保護キャップを共通部品として用いることが可能であることを特徴とする請求項1に記載のエレベーター装置。
【請求項3】
昇降路内を昇降する乗りかご及び釣合いおもりと、前記乗りかご及び前記釣合いおもりを吊持する主索と、前記主索が巻き掛けられた巻上機とを備えたエレベーター装置において、
エレベーターの乗場敷居と乗りかごのかご敷居の隙間に、異なる外観を呈する少なくとも2つの第1の継ぎ足し敷居及び第2の継ぎ足し敷居から、1つの継ぎ足し敷居を選択して取り付け可能であり、
前記第1の継ぎ足し敷居及び第2の継ぎ足し敷居の内部構造を同一構造として、第2の継ぎ足し敷居は外表面部だけを異なる材質の表面仕上げとしたことを特徴とするエレベーター装置。
【請求項4】
前記第1の継ぎ足し敷居は、アルミの押し出し加工で成形されており、
前記第2の継ぎ足し敷居は、外表面のみステンレス素材の板金で成形されており、その内部は、アルミの押し出し加工で成形された部品を母材として、ステンレス素材の前記板金が、接着若しくはボルトにより固定されていることを特徴とする請求項1乃至3に記載のエレベーター装置。
【請求項5】
昇降路内を昇降するエレベーター用の乗りかごにおいて、
前記乗りかごにはかご敷居が設けられ、
前記乗りかごが前記乗場に位置した際に前記かご敷居が乗場に対向する位置に、継ぎ足し敷居を設け、
前記継ぎ足し敷居が設けられた前記かご敷居は、廉価材料で形成された第1の継ぎ足し敷居と、金属で形成されたカバー材によって廉価材料で形成された敷居支えの少なくとも上面及び前面を覆った第2の継ぎ足し敷居の少なくとも2つの継ぎ足し敷居を交換取り付け可能としており、
前記第1の継ぎ足し敷居と、前記第2の継ぎ足し敷居は同一の外形形状となっていることを特徴とするエレベーター乗りかご。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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