説明

エレベーター装置

【課題】エレベーターの出入り口となるドア開閉部分におけて、紐等の異物や乗客の不正常な乗り込みを検出し、その検出結果に応じてドアの開閉制御を行うと共に、音声案内や液晶表示装置によって乗客への案内を行う。
【解決手段】乗りかごの出入り口附近の映像を撮影するカメラ3と、カメラの映像情報と初期設定映像情報とから乗りかごの出入り口附近の異物を検知する異物検知部8と、周辺機器へ指令を発する周辺機器制御部9と、ドアの開閉動作を制御するドア制御装置10と、を備え、ドア6が閉じ始めるときから全閉するまでの間に、異物検知部8が出入り口附近の現状の映像情報と初期設定の映像情報とを比較することによって異物を検知し、ドア制御装置10がドアを開動作するように制御する。異物検知によって、乗りかご内の音声放送装置4が異物検知の音声案内とともに、液晶表示装置5が異物検知のメッセージを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの出入り口となるドア開閉部分におけて、紐等の異物や乗客の不正常な乗り込みを検出し、その検出結果に応じてドアの開閉制御を行うと共に、音声案内や液晶表示装置によって乗客への案内を行うエレベーター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベーターの出入り口附近の電気掃除機のコード類といった異物を映像によって検出する手段としては、例えば特許文献1に示すように、映像による検出精度を向上するため、乗場附近にマークとなる黒い色のテープを設置して、映像上でマークとなる黒色部分の切断を検知する方法などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−89190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示すような従来技術によれば、エレベーターの出入り口附近に検出精度を向上するためにマークやテープを設置する必要があり、長期利用によってマーク部が剥がれたり、汚損によって検出精度が低下するおそれがある。
【0005】
また、電気掃除機のコード類を一例とする紐のような細い異物に関しては、検知後にドアを開いて挟み込みを防止しても、利用者が異物によるドア開の動作であることに気が付かないといったことが懸念された。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は主として次のような構成を採用する。
エレベーターの乗りかご内の出入り口上部に前記乗りかごの出入り口附近の映像を撮影するカメラと、前記カメラの映像情報と初期設定映像情報とから前記乗りかごの出入り口附近の異物を検知する異物検知部と、前記異物検知部の検知結果が入力され前記検知結果に対応して周辺機器へ指令を発する周辺機器制御部と、前記周辺機器制御部の指令によりドアの開閉動作を制御するドア制御装置と、を備えたエレベーター装置であって、
前記ドアが閉じ始めるときから全閉するまでの間に、前記異物検知部が前記出入り口附近の現状の映像情報と前記初期設定の映像情報とを比較することによって前記異物を検知し、前記異物の検知によって前記周辺機器制御部の指令をもとに前記ドア制御装置が前記ドアを開動作するように制御する構成とする。
【0007】
また、前記エレベーター装置において、前記乗りかご内に、音声を発する音声放送装置と、前記エレベーターの運行状況を表示する液晶表示装置と、を有し、前記異物検知部による異物検知によって前記周辺機器制御部の指令をもとに、前記音声放送装置が前記異物検知の音声案内を発報するとともに、前記液晶表示装置が前記異物検知のメッセージを表示する構成とする。さらに、エレベーター保守管理を行う監視センタに前記エレベーターの運行状況を伝達する遠隔監視装置を有し、前記異物検知部による異物検知によって前記周辺機器制御部の指令をもとに前記遠隔監視装置が前記異物の滞留を前記監視センタに通報する構成とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、乗場付近に異物の検出精度を上げるためのマークなどの設置が不要となり、デフォルトとして初期設定映像と検出映像の差異によって異物を検知するため、検知精度の低下を防ぐ出入り口付近の異物を検知するシステムを提供することができる。
【0009】
また、異物検知時には映像と音声による乗客への注意喚起を行うことで、異物除去の早期対処ができるようにし、さらに、乗客不在時においても異物の停滞を検出して保守会社(監視センタ)に自動発報することで、エレベーターを早期復旧できるシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るエレベーター装置とその周辺装置の全体構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係るエレベーター装置におけるカメラの設置状態を示す図であり、図1に示すA−A部の断面図である。
【図3】本実施形態に係るエレベーター装置における液晶表示装置の注意喚起メッセージを示す説明図である。
【図4】本実施形態に係るエレベーター装置におけるカメラによる乗りかご出入り口付近の異物が無いときの映像を示す図である。
【図5】本実施形態に係るエレベーター装置におけるカメラによる乗りかご出入り口付近の紐検出時の映像を示す図である。
【図6】本実施形態に係るエレベーター装置におけるカメラによる異物検知エリアの記録映像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係るエレベーター装置について、図1〜図6を参照しながら以下詳細に説明する。図面において、1はエレベーター乗りかご、2は出入り口上部枠、3はカメラ、4は音声放送装置、5は液晶表示装置、6はドア、7は異物検知エリア、7aは引き渡し前の戸開時の初期設定映像、7bは紐検知時の映像、8は異物検知部、9は周辺機器制御部、10はドア制御装置、11は遠隔監視装置、12は公衆回線、13は監視センタ、100は液晶表示装置の注意喚起メッセージ、200はエレベーターホールの上面観、201はエレベーターかご内の上面観、202はドア敷居(ドアシル)、203は紐、300は異物検知時の映像、をそれぞれ表す。
【0012】
図1と図2において、1はエレベーターの乗りかごを示しており、乗りかご1の出入り口には左右に対となって開閉動作を行う扉6が出入り口に設置されている。2はエレベーターの乗りかご内の上方の位置する出入り口上部枠を示しており、出入り口上部枠2の内部には、出入り口の床方向を撮影するように設置されたカメラ3を設置している。なお、本実施形態によるカメラは、C−MOSセンサなどの画像センサで実施することもできる。カメラ3から出力される映像信号は、映像情報より紐などの異物を検出する異物検知部8に接続されている。
【0013】
異物検知部8は検出した異物などの情報を周辺機器制御部9に提供しており、周辺機器制御部9はドアの開閉動作を制御するドア制御装置10にドア開閉動作の指令を行うと共に、エレベーターの状態を公衆回線12を経由してエレベーター保守会社の監視センタ13に伝送する遠隔監視装置11に接続されている。また、乗りかご1内には音声の放送を行う音声放送装置4とエレベーターの運行状態を表示する液晶表示装置5を備えており、音声放送装置4及び液晶表示装置5は、それぞれ周辺機器制御部9に接続され、周辺機器制御部9の指令で動作する。
【0014】
図4は出入り口上部枠2の内部に設置されたカメラ3より下方を撮影した映像を示しており、200はエレベーターホール、201は乗りかご内、202はエレベーターのドア敷居(ドアシル)を示している。なお、図4と図5において、7はカメラ3が検出する異物検知エリアであり、左右両側のドア6間のハッチング部分は、エレベーターホール側と乗りかご側のドア敷居(ドアシル)202の間に形成された隙間空間を模式的に表している。
【0015】
異物検知部8では、図4の撮影映像からコードなどの異物を検出する異物検知エリア7の映像を記憶しており、その一例として、設備引き渡し前のドアが開いた状態の初期設定映像をイニシャルデータ(デフォルトデータ)として記憶しており、その画像の例を図6の7aに示す。カメラ3は常時映像を撮影しており、異物検知部8では随時入力される映像データを記憶しつつ、前回映像との差異の有無によって検知エリア7内の異物の有無を検出する。
【0016】
異物検知の一構成例として、図5は異物検知エリア7内にコードのような紐を検出した場合の映像を示しており、紐203が異物検知エリア7に進入した場合の映像を図6の7bに示す。異物検知部8では図6の7a(初期設定映像)と7bの検知映像の差異を比較し、図6の300に示す異物検知時の映像を検出した場合は、異物検知部8より周囲機器制御部9に異物が検出された旨が伝達され、周囲機器制御部9はドア制御装置10にドア6の開動作を指令する。
【0017】
異物検知のタイミングについて具体例を述べると、ドア6を閉じ始めるときからドアを閉じ切るまでの間中において、すなわち、ドア制御装置10によるドア閉の制御信号が発生してからドア全閉の検知信号が検出されるまで、初期設定映像(デフォルトデータ)とエリア7での検知映像との比較を続行する。異物検知部8で上記した比較の結果、異物がエリア7内に検出された場合には、異物をドアで挟み込まないように、上述したようにドア6が開動作するように制御される。なお、ドア閉の制御信号は、乗客が乗りかご内の閉ボタンの操作によって発生し、また、ドア全開後に所定時間が経過した後に自動的に発生するように、生成されるものである。
【0018】
また、周囲機器制御部9は液晶表示装置5に図3に示すメッセージを表示して乗客に注意喚起を行うと共に、音声放送装置4より音声にて注意喚起を行うため、乗客は紐のような異物の検知によってドアが開いたものと理解し、早期に紐等の異物を異物検知エリア7から排除するなどの対処を行える。
【0019】
また、乗りかご内で最後の乗客が降りる際に、例えば、図5のように紐を出入り口に落として出て行った場合、注意喚起をしても乗客は去っており異物への対処ができず、自動的にドア開動作してその後の異物検知の継続によってドアの自動的な閉動作が出来なくなってしまう。その対応策として、異物検知エリア7内に任意の時間、紐などの異物が滞留していることを異物検知部8で検出した場合は(エリア7内に異物が所定時間継続して検知された場合は)、遠隔監視装置11から監視センタ13に異物が滞留している旨を報知し、エレベーター保守員による復旧を促すことができる。なお、以上の説明では、乗りかごの出入り口付近の紐などの異物を検知することを例示したが、これに止まらず、ドアの閉制御信号が発生してドアが閉じ始めたときから閉じ切る直前までに、乗客が強引に無理矢理出入りする場合にも、当該乗客の映像を検知してデフォルト映像と比較することでドア閉鎖寸前の強引な乗客の出入りが危険である旨を通報することもできる。
【0020】
以上説明したように、乗場の床にマークなどを設置する必要が無く、映像データの差異により異物を検知すれば、マークの汚れや剥がれのよる検知精度の低下を防止できると共に、異物の検知時は乗客への注意確認を行い、更には異物の停滞によるエレベーターが利用不能な状態も保守会社(監視センタ)に自動通報することで早期復旧が図れるシステムを提供することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 エレベーター乗りかご
2 出入り口上部枠
3 カメラ
4 音声放送装置
5 液晶表示装置
6 ドア
7 異物検知エリア
7a 引き渡し前の戸開時の初期設定映像
7b 紐検知時の映像
8 異物検知部
9 周辺機器制御部
10 ドア制御装置
11 遠隔監視装置
12 公衆回線
13 監視センタ
100 液晶表示装置の注意喚起メッセージ
200 エレベーターホールの上面観
201 エレベーターかご内の上面観
202 ドア敷居(ドアシル)
203 紐
300 異物検知時の映像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの乗りかご内の出入り口上部に前記乗りかごの出入り口附近の映像を撮影するカメラと、前記カメラの映像情報と初期設定映像情報とから前記乗りかごの出入り口附近の異物を検知する異物検知部と、前記異物検知部の検知結果が入力され前記検知結果に対応して周辺機器へ指令を発する周辺機器制御部と、前記周辺機器制御部の指令によりドアの開閉動作を制御するドア制御装置と、を備えたエレベーター装置であって、
前記ドアが閉じ始めるときから全閉するまでの間に、前記異物検知部が前記出入り口附近の現状の映像情報と前記初期設定の映像情報とを比較することによって前記異物を検知し、
前記異物の検知によって前記周辺機器制御部の指令をもとに前記ドア制御装置が前記ドアを開動作するように制御する
ことを特徴とするエレベーター装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記乗りかご内に、音声を発する音声放送装置と、前記エレベーターの運行状況を表示する液晶表示装置と、を有し、
前記異物検知部による異物検知によって前記周辺機器制御部の指令をもとに、前記音声放送装置が前記異物検知の音声案内を発報するとともに、前記液晶表示装置が前記異物検知のメッセージを表示する
ことを特徴とするエレベーター装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
エレベーター保守管理を行う監視センタに前記エレベーターの運行状況を伝達する遠隔監視装置を有し、
前記異物検知部による異物検知によって前記周辺機器制御部の指令をもとに前記遠隔監視装置が前記異物の滞留を前記監視センタに通報する
ことを特徴とするエレベーター装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記異物は、前記出入り口付近に残された電気コード、又は前記ドアの閉動作の始動後に乗り込んできた乗客であることを特徴とするエレベーター装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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