説明

エレベータ制御装置

【課題】ホールドアスイッチ及びかごドアスイッチのいずれかに短絡異常が生じた場合に、その異常発生を迅速且つ容易に検出する。
【解決手段】運転許可判別回路8は、ホールドア全閉確認回路6及びかごドア全閉確認回路7の双方から全閉確認信号(オン信号)を入力している場合のみ運転制御回路5に対して運転許可指令を出力する。また、運転許可判別回路8は、かごドア開閉時に、ホールドア全閉確認回路6からの入力信号とかごドア全閉確認回路7からの入力信号とが一致しない状態が生じた場合には、ホールドアスイッチ2A,2B,…,2N及びかごドアスイッチ3のうちのいずれかが異常であるとみなして運転禁止指令を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全てのホールドア及びかごドアが全閉状態となっている場合のみエレベータの運転を許可する機能を有するエレベータ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータの運転中は、全てのホールドア及びかごドアが全閉状態となっていなければならず、これらのドアが開放されるのはかごが或る階床に到着して停止し、利用者が乗降する場合のみである。これらのドアの全閉状態は、これらのドアに付設されているホールドアスイッチ及びかごドアスイッチにより検出されるようになっており、これらの検出信号に基づいてエレベータの異常を監視するシステムが構築されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、一般的なホールドアスイッチとかごドアスイッチとの接続状態を示す従来のエレベータ制御装置の構成図である。複数の安全回路スイッチ1A,1B,…,1Nの直列接続体と、複数のホールドアスイッチ2A,2B,…,2Nの直列接続体と、かごドアスイッチ3とが直列接続されている。
【0004】
安全回路スイッチとは、例えば、乗りかごの下降速度がオーバーしたことを検出するガバナスイッチ、あるいはそのときにエレベータを強制的に停止させるためのセーフティリンクスイッチ、乗りかごが昇降路内での終端位置に達したことを検出するリミットスイッチなど、エレベータの危険な状態を検出し安全を確保するためのスイッチのことである。
【0005】
ホールドアスイッチ2A,2B,…,2Nは、各階床の乗場ホールに設置されているホールドアの開閉状態を検出するためのスイッチであり、かごドアスイッチ3はかごドアの開閉状態を検出するためのスイッチである。
【0006】
そして、かごドアスイッチ3の一端側にドア全閉確認回路4が接続されている。ドア全閉確認回路4は、上記の安全回路スイッチ1A,1B,…,1N、ホールドアスイッチ2A,2B,…,2N、及びかごドアスイッチ3の全てがオン状態になっていることを検出した場合に、全ての安全回路スイッチが安全を検出した状態であり、且つ各階床のホールドア及びかごドアの全てが全閉状態になっていることを示すドア全閉確認信号を出力するようになっている。
【0007】
運転制御回路5は、ドア全閉確認回路4からドア全閉確認信号を入力している場合のみエレベータ運転についての制御を行い、入力していない場合はエレベータ運転を中止するようになっている。
【特許文献1】特開平10−236744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図5の構成によれば、運転制御回路5が全てのドアに対して全閉動作を指令しているにもかかわらず、全閉状態となっていないドアが一つでも検出された場合、つまり安全回路スイッチ1A,1B,…,1N及びかごドアスイッチ3のうちオフとなっているスイッチが1つでも有る場合には、利用者の安全確保のためにエレベータの運転は禁止され、また、エレベータ運転中であれば直ちに運転が停止されることになる。そして、保守作業員が異常個所を見つけ出し、その異常個所に対する復旧作業を終了させた後にエレベータの運転が再開される。
【0009】
しかし、図5の構成の場合、ドア全閉確認回路4がオフ信号を入力した場合に運転制御回路5が運転を中止する構成となっており、ドア全閉確認回路4がオン信号を入力している限りは運転制御回路5は運転を継続することになる。つまり、図5の構成では、配線回路内の短絡異常を検出するのが困難であるという問題がある。
【0010】
短絡異常の一般的なものとしてはドアスイッチの溶着があるが、ドアスイッチが溶着している状態でドアが故障すると重大事故が発生する虞がある。例えば、ある階床のホールドアスイッチに溶着が生じると、実際にはその階床のホールドアが開放している状態にもかかわらずドア全閉確認回路4は全てのドアが閉じられている旨の全閉確認信号を運転制御回路5に出力し、これに基づき運転制御回路5がエレベータ運転の制御を行うことになる。通常であれば、ホールドアとかごドアとは互いに係合して同時に開閉動作を行うが、このような状態ではホールドアが開放した状態でかごドアのみが開閉動作を行った後に、乗りかごが走行動作を開始してしまう虞があるために非常に危険な状態となる。したがって、このようなドアスイッチの溶着はできるだけ早急に発見して新しいスイッチに交換するなどの適切な措置を講じる必要がある。
【0011】
また、短絡異常にはドアスイッチの溶着の他に、配線材の損傷等によりドアスイッチを挟む個所が短絡してしまう場合や、乗場ホールの清掃作業の際に水滴が上側ホールから下側ホールに落下し、この水滴によってドアスイッチが短絡されてしまう場合もある。そして、図5の構成では、配線材の長さが非常に長くなるため、このような短絡異常を生じている個所を見つけ出すのが非常に困難になっている。つまり、ホールドアスイッチ2N(例えば最下階とする)とかごドアスイッチ3とをつなぐケーブルは、実際には制御盤(通常は最上階の上方位置)を経由して接続されており、昇降路長さの何倍かの非常に長いものになるため、短絡個所を特定するのに多くの労力及び時間を費やす結果となっている。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ホールドアスイッチ及びかごドアスイッチのいずれかに短絡異常が生じた場合に、その異常発生を迅速且つ容易に検出することが可能なエレベータ制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための手段として、請求項1記載の発明は、各階床のホールドアスイッチの直列接続体からの全閉検出信号の入力に基づき、全てのホールドアが全閉状態であることを確認するホールドア全閉確認回路と、かごドアスイッチからの全閉検出信号の入力に基づきかごドアが全閉状態であることを確認するかごドア全閉確認回路と、前記ホールドア全閉確認回路及び前記かごドア全閉確認回路の双方から全閉確認信号を入力している場合のみ運転許可指令を出力し、しかもかごドア開閉時に、前記ホールドア全閉確認回路からの入力信号と前記かごドア全閉確認回路からの入力信号とが一致しない状態が生じた場合には、いずれかのスイッチが異常であるとみなして運転禁止指令を出力する運転許可判別回路と、前記運転許可判別回路からの指令に基づきエレベータ運転についての制御を行う運転制御回路と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、全開検出スイッチからの全開検出信号の入力に基づきかごドアが全開状態であることを確認するかごドア全開確認回路を備え、前記運転許可判別回路は、前記全閉確認信号を入力すると共に、前記かごドア全開確認回路から全開確認信号が入力されていない場合のみ前記運転許可指令を出力し、更に、前記ホールドア全閉確認回路からの入力信号又は前記かごドア全閉確認回路からの入力信号と、前記かごドア全開確認回路からの入力とが一致する状態が生じた場合には、いずれかのスイッチが異常であるとみなして前記運転禁止指令を出力する、ことを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、制御盤内に配設され、前記全てのホールドアスイッチの直列接続体を挟む回路位置に接続された一対のホール側点検用端子と、前記制御盤内に配設され、前記かごドアスイッチを挟む回路位置に接続された一対のかご側点検用端子と、前記一対のホール側点検用端子間を短絡する第1の接点、及びこの第1の接点と連動し、前記一対のかご側点検用端子間を短絡する第2の接点を有する点検運転用スイッチと、を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記点検運転用スイッチは、前記一対のホール側点検用端子の一方と前記第1の接点との間に介挿される第3の接点、及び前記一対のかご側点検用端子の一方と前記第2の接点との間に介挿される第4の接点を有するものである、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、運転許可判別回路は、ホールドア全閉確認回路及びかごドア全閉確認回路の双方から全閉確認信号を入力している場合のみ運転許可指令を出力し、しかもかごドア開閉時に、ホールドア全閉確認回路からの入力信号とかごドア全閉確認回路からの入力信号とが一致しない状態が生じた場合には、ホールドアスイッチ及びかごドアスイッチのいずれかが異常であるとみなして運転禁止指令を出力する構成としているので、スイッチの短絡異常発生を迅速且つ容易に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るエレベータ制御装置の構成図である。但し、図5と同様の構成要素には同一符号を付して重複した説明を省略する。
【0019】
この実施形態では、共通接続点P1からホールドアスイッチ2A,2B,…,2Nの直列接続体、及びかごドアスイッチ3が分岐しており、ホールドアスイッチ2A,2B,…,2Nの直列接続体にはホールドア全閉確認回路6が接続され、かごドアスイッチ3にはかごドア全閉確認回路7が接続されている。
【0020】
ホールドア全閉確認回路6は、全閉検出信号(オン信号)を入力した場合、つまりホールドアスイッチ2A,2B,…,2Nの全てがオン状態である場合に、全てのホールドアが全閉状態であることを示すホールドア全閉確認信号(オン信号)を出力するようになっている。また、かごドア全閉確認回路7は、全閉検出信号(オン信号)を入力した場合に、かごドアが全閉状態であることを示すかごドア全閉確認信号(オン信号)を出力するようになっている。
【0021】
運転許可判別回路8は、ホールドア全閉確認回路6及びかごドア全閉確認回路7からの信号を入力し、双方から全閉確認信号(オン信号)を入力している場合のみ運転許可指令を出力するようになっている。
【0022】
運転許可判別回路8は、更に、かごドア開閉時にホールドア全閉確認回路6からの入力信号とかごドア全閉確認回路7からの入力信号とを比較し、両者が不一致の状態が生じた場合には、ホールドアスイッチ2A,2B,…,2N及びかごドアスイッチ3のうちのいずれかのスイッチに短絡異常が発生しているものとみなして運転禁止指令を出力するようになっている。これは、かごドア及びホールドアの2つのドアは、互いに係合した状態で同時に開閉動作を行うようになっているため、正常である限りは両回路からの入力信号は一致する筈だからである。
【0023】
運転制御回路5は運転許可判別回路8からの上記の運転許可指令及び運転禁止指令に基づき、エレベータ運転の制御を行うようになっている。
【0024】
次に、図1の動作につき説明する。但し、エレベータ運転中に安全回路スイッチ1A,1B,…,1Nの全ては常にオン状態であるものとする。また、ホールドアスイッチ2Aは最上階、ホールドアスイッチ2Nは最下階にそれぞれ設けられたスイッチであるとする。
【0025】
いま、乗りかごが最下階に停止して戸開待機中であるとすると、ホールドアスイッチ2N及びかごドアスイッチ3がオフとなるのでホールドア全閉確認回路6及びかごドア全閉確認回路7の双方はオフ信号を運転許可判別回路8に出力している。運転許可判別回路8は、このときの両回路からの入力信号を比較するが、両回路からの入力信号がいずれもオン信号となっている場合ではないので、この状態では運転禁止指令を運転制御回路5に出力している。但し、両回路からの入力信号は一致しているので、この場合の運転禁止指令は短絡異常に基づくものではない。
【0026】
次いで、乗客が乗りかごに乗り込み、かご内操作盤の目的階釦を押すと、運転制御回路5が戸閉指令を出力し、ホールドア及びかごドアに全閉動作を行わせる。すると、それまでオフになっていたホールドアスイッチ2N及びかごドアスイッチ3がいずれもオンとなり、全てのスイッチがオンとなるので、ホールドア全閉確認回路6及びかごドア全閉確認回路7はいずれも全閉確認信号を出力する。したがって、運転許可判別回路8はそれまで出力していた運転禁止指令を解除し、運転許可指令を運転制御回路5に出力する。これにより、運転制御回路5は乗りかごを最下階から目的階(例えば、最上階)に向けて移動させる。
【0027】
乗りかごが最上階に到着すると、運転制御回路5は戸開指令を出力し、ホールドア及びかごドアに全開動作を行わせる。すると、それまでオンになっていたホールドアスイッチ2A及びかごドアスイッチ3がいずれもオフとなるので、ホールドア全閉確認回路6及びかごドア全閉確認回路7はそれまで出力していた全閉状態確認信号を停止する。したがって、運転許可判別回路8はそれまで運転制御回路5に出力していた運転許可指令を停止し、代わりに運転禁止指令を出力する。これにより、ホールドア及びかごドアの開放中における乗りかごの走行は拘束され、乗客は安全に乗りかごから最上階ホールへ降りることができる。
【0028】
ここで、ホールドアスイッチ2Aが溶着している場合につき考えてみる。この場合は、乗りかごが最上階に到着して、ホールドア及びかごドアが全開動作を行っても、かごドアスイッチ3はオフとなるがホールドアスイッチ2Aはオンのままである。したがって、ホールドア全閉確認回路6はオン信号(全閉確認信号)を出力し、かごドア全閉確認回路7はオフ信号を出力する。この状態は、両回路からの入力信号がいずれも全閉確認信号である場合に該当しないばかりでなく、両回路からの入力信号が不一致であるために、運転許可判別回路8はスイッチに短絡異常が発生している可能性が高いと判別する。
【0029】
運転制御回路5はこの判別結果を受けて、一旦、ホールドア及びかごドアに全閉動作を行わせた後、再度全開動作を行わせて見る。それでも、依然としてかごドアスイッチ3はオフとなるがホールドアスイッチ2Aはオンのままである状態が再現された場合、運転許可判別回路8は、信号変化が生じない側のスイッチつまりホールドアスイッチ2Aに短絡異常が発生しているものとみなして運転禁止指令を出力する。なお、この場合の運転禁止指令は、短絡異常発生に基づくものであるため、かごドアが全閉されてかごドアスイッチ3がオンとなっても解除されることはない。
【0030】
運転許可判別回路8は、更に、ホールドアスイッチ2Aに短絡異常が発生していることを制御盤内の表示部に表示すると共に、管理室の端末装置、又はエレベータ監視センターに報知する。これにより、管理人又は保守係員は、直ちに現場に駆けつけ、異常内容を確認した後、ホールドアスイッチ2Aを新規なものに交換するなど適切な措置を講ずる。
【0031】
上述した図1の構成による配線系統では、ドアスイッチがホールドアスイッチ2A,2B,…,2N側とかごドアスイッチ3側との2系統に分けられており、運転許可判別回路8は、ホールドア全閉確認回路6及びかごドア全閉確認回路7を介して、ドア開閉の際のスイッチのオン・オフ信号の一致・不一致の状態に基づき短絡異常の有無を判別している。したがって、いずれかのスイッチに短絡異常が発生した場合に、その短絡異常発生を迅速且つ容易に検出することが可能となる。
【0032】
また、スイッチの溶着以外の短絡異常についても、配線系統がホールドアスイッチ側及びかごドアスイッチ側の2系統に分けられていることから、短絡異常を生じている個所を特定するのに費やす労力及び時間を従来に比べて大きく軽減することができる。
【0033】
なお、上記の動作例は、ホールドアスイッチ2Aに短絡異常が発生した場合につき説明しているが、もちろん開放異常についても迅速且つ容易に検出することが可能である(ドア開閉時にかごドアスイッチ3はオンオフ変化するのに対し、ホールドアスイッチ2Aはオフのままである。)。但し、開放異常の場合は、もともとスイッチの開放状態においては運転停止が前提となっているので危険性が低いものと言える。
【0034】
図2は、本発明の第2の実施形態に係るエレベータ制御装置の構成図である。この実施形態は、図1の構成に、共通接続点P2から分岐する全開検出スイッチ9と、この全開検出スイッチ9からの入力信号に基づきかごドアが全開であることを確認するかごドア全開確認回路10とを付加したものである。本実施形態によれば、短絡異常発生の判別についての信頼性をより向上させることができる。
【0035】
かごドアスイッチ3はかごドアが全閉状態のときにオンとなるのに対し、全開検出スイッチ9はかごドアが全開状態のときにオンとなるスイッチである。したがって、正常時には、ホールドアスイッチ2A,2B,…,2N及びかごドアスイッチ3がオンの状態(ドア全閉状態)であれば全開検出スイッチ9はオフとなり、一方、全開検出スイッチ9がオンの状態(ドア全開状態)であればホールドアスイッチ2A,2B,…,2N及びかごドアスイッチ3はオフとなるはずである。それ故、ドアを開閉動作させた際のこれらの各スイッチ同士のオン・オフの対応関係から短絡異常を発生しているスイッチの有無を判別することができる。
【0036】
すなわち、運転許可判別回路8は、ホールドア全閉確認回路6、かごドア全閉確認回路7、及びかごドア全開確認回路10からの各信号を入力しているが、ホールドア全閉確認回路6及びかごドア全閉確認回路7から全閉確認信号(オン信号)を入力すると共に、かごドア全開確認回路10から全開確認信号(オン信号)を入力していない場合つまりオフ信号を入力している場合のみ運転許可指令を運転制御回路5に対して出力する。
【0037】
図1の構成では、ホールドア全閉確認回路6及びかごドア全閉確認回路7の双方がオン信号(全閉確認信号)を出力していることが運転許可の条件であったが、この図2の構成では更にかごドア全開確認回路10がオフ信号を出力していることが運転許可の条件に加えられている。したがって、この図2の構成は一層安全性が高いものとなっている。
【0038】
そして、運転許可判別回路8は、ドア開閉時に、かごドア全開確認回路10がオン信号を出力しているにもかかわらず、ホールドア全閉確認回路6又はかごドア全閉確認回路7もオン信号を出力している場合に、乗りかごの現在位置に係る階床のホールドアスイッチ又はかごドアスイッチ3に短絡異常が発生しているものとみなして、運転制御回路5に対して運転禁止指令を出力する。
【0039】
図1の構成では、ホールドア全閉確認回路6及びかごドア全閉確認回路7からの2つの入力信号に基づき短絡異常の発生の有無を判別していたが、この図2の構成では、かごドア全開確認回路10からの信号を加えた3つの入力信号に基づき判別しているので、判別の信頼性がより高いものとなっている。
【0040】
図3は、本発明の第3の実施形態に係るエレベータ制御装置の構成図である。この実施形態は、エレベータの点検作業を容易に行うことができる構成を有するものである。上述したように、エレベータを運転するためには、ホールドアスイッチ2A,2B,…,2N及びかごドアスイッチ3の全てがオン状態になっていなければならないのが原則であるが、保守作業員が点検作業を行う際には、これらのスイッチのオンオフ状態にかかわらずエレベータを運転できれば便利なことが多い。そこで、本実施形態では、制御盤付近で操作することができる点検運転用スイッチを備えた構成としたものである。
【0041】
すなわち、図3において、ホールドアスイッチ2A,2B,…,2Nの直列接続体を挟む回路上の位置に一対のホール側点検用端子T1,T2が接続されると共に、かごドアスイッチ3を挟む回路上の位置に一対のかご側点検用端子T3,T4が接続されている。これらの点検用端子T1〜T4は、エレベータ機械室又は昇降路内の所定個所に設置された制御盤内に配設されている。
【0042】
そして、点検運転用スイッチ11は、これらの点検用端子T1〜T4に対して接続又は取り外しが可能なものであり、一対のホール側点検用端子T1,T2間を短絡する第1の接点S1と、第1の接点S1と連動し、一対のかご側点検用端子T3,T4間を短絡する第2の接点S2とを有している。
【0043】
保守作業員は、これら第1の接点S1及び第2の接点S2をオン状態に投入することにより、ホールドア及びかごドアを開放させた状態でエレベータを運転させることができ、種々の点検作業又は調整作業等を行うことができる。
【0044】
ここで、第1の接点S1と第2の接点S2とを連動させる構成としたのは、第1の接点S1と第2の接点S2とを連動させず単独でオンオフ操作が可能な構成とするよりも、作業上の安全性の観点からは好ましいからである。
【0045】
例えば、後者の構成を採用した場合、作業員は第1の接点S1を常時オンにし、第2の接点S2をオンオフすることによりエレベータの運転・停止を切り換えることや、第1の接点S1が実際にはオンになっているにもかかわらずオフになっていると勘違いして第2の接点S2をオンオフすることなどが考えられる。
【0046】
しかし、もし第三者が手動でかごドアを閉めたり、あるいはかごドアスイッチ3に溶着が発生した場合等は、作業員が第2の接点S2をオフにしてもそのまま運転が継続されてしまい、思わぬ事故を招く虞がある。これに対し、前者の構成であれば、たとえかごドアスイッチ3に溶着が発生したとしても、第2の接点S2と共に第1の接点S1がオフになっており、この第1の接点S1のオフが有効に機能してエレベータの運転を停止させることができる。
【0047】
つまり、点検運転用スイッチ11に対して作業員がオンオフ操作を行った場合、ホールドアスイッチ2A,2B,…,2N又はかごドアスイッチ3の溶着の有無に関係なく、エレベータの運転・停止は確実に行われる。したがって、点検運転用スイッチ11は、作業員の操作の意図を明確に反映させることが可能なスイッチといえる。
【0048】
図4は、本発明の第4の実施形態に係るエレベータ制御装置の構成図である。この実施形態の点検運転用スイッチ12が図3における点検運転用スイッチ11と異なる点は、ホール側点検用端子T2と第1の接点S1との間に第3の接点S3が介挿されている点、及びかご側点検用端子T4と第2の接点S2との間に第4の接点S4が介挿されている点である。
【0049】
図3における点検運転用スイッチ11では、作業上の安全性の観点から第1の接点S1と第2の接点S2とを連動させる構成としていたが、この図4の点検運転用スイッチ12では、作業の際の利便性をある程度考慮した構成としている。
【0050】
つまり、実際の点検作業では、ホールドアスイッチ2A,2B,…,2N側とかごドアスイッチ3側とを別々に短絡させて作業を行いたい場合が生じる。例えば、ホールドア側を調整する場合、通常、作業員はかごドアスイッチ3側を短絡させておいた状態で作業を行うことが多い。この場合、作業員は第1の接点S1及び第2の接点S2をオンにすると共に第4の接点S4をオンにし、第3の接点S3をオンオフ操作することにより適宜エレベータの運転・停止を切り換えることができる。
【0051】
しかし、作業員が第3の接点S3をオフにしている状態であるにもかかわらず、第三者がある階床のホールドアを手動で全閉させてしまったような場合は、ホールドアスイッチ2A,2B,…,2Nの全てがオンとなってエレベータの運転が開始され乗りかごが動き出すことになる。このような場合、作業員は直ちに第1の接点S1及び第2の接点S2をオフさせることによりエレベータをいち早く確実に停止させることができ、事故を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るエレベータ制御装置の構成図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るエレベータ制御装置の構成図。
【図3】本発明の第3の実施形態に係るエレベータ制御装置の構成図。
【図4】本発明の第4の実施形態に係るエレベータ制御装置の構成図。
【図5】従来のエレベータ制御装置の構成図。
【符号の説明】
【0053】
1A,1B,…,1N 安全回路スイッチ
2A,2B,…,2N ホールドアスイッチ
3 かごドアスイッチ
4 ドア全閉確認回路
5 運転制御回路
6 ホールドア全閉確認回路
7 かごドア全閉確認回路
8 運転許可判別回路
9 全開検出スイッチ
10 かごドア全開確認回路
11 点検運転用スイッチ
12 点検運転用スイッチ
P1,P2 共通接続点
S1〜S4 第1乃至第4の接点
T1,T2 ホール側点検用端子
T3,T4 かご側点検用端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各階床のホールドアスイッチの直列接続体からの全閉検出信号の入力に基づき、全てのホールドアが全閉状態であることを確認するホールドア全閉確認回路と、
かごドアスイッチからの全閉検出信号の入力に基づきかごドアが全閉状態であることを確認するかごドア全閉確認回路と、
前記ホールドア全閉確認回路及び前記かごドア全閉確認回路の双方から全閉確認信号を入力している場合のみ運転許可指令を出力し、しかもかごドア開閉時に、前記ホールドア全閉確認回路からの入力信号と前記かごドア全閉確認回路からの入力信号とが一致しない状態が生じた場合には、いずれかのスイッチが異常であるとみなして運転禁止指令を出力する運転許可判別回路と、
前記運転許可判別回路からの指令に基づきエレベータ運転についての制御を行う運転制御回路と、
を備えたことを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項2】
全開検出スイッチからの全開検出信号の入力に基づきかごドアが全開状態であることを確認するかごドア全開確認回路を備え、
前記運転許可判別回路は、前記全閉確認信号を入力すると共に、前記かごドア全開確認回路から全開確認信号が入力されていない場合のみ前記運転許可指令を出力し、更に、前記ホールドア全閉確認回路からの入力信号又は前記かごドア全閉確認回路からの入力信号と、前記かごドア全開確認回路からの入力とが一致する状態が生じた場合には、いずれかのスイッチが異常であるとみなして前記運転禁止指令を出力する、
ことを特徴とする請求項1記載のエレベータ制御装置。
【請求項3】
制御盤内に配設され、前記全てのホールドアスイッチの直列接続体を挟む回路位置に接続された一対のホール側点検用端子と、
前記制御盤内に配設され、前記かごドアスイッチを挟む回路位置に接続された一対のかご側点検用端子と、
前記一対のホール側点検用端子間を短絡する第1の接点、及びこの第1の接点と連動し、前記一対のかご側点検用端子間を短絡する第2の接点を有する点検運転用スイッチと、
を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のエレベータ制御装置。
【請求項4】
前記点検運転用スイッチは、前記一対のホール側点検用端子の一方と前記第1の接点との間に介挿される第3の接点、及び前記一対のかご側点検用端子の一方と前記第2の接点との間に介挿される第4の接点を有するものである、
ことを特徴とする請求項3記載のエレベータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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