説明

エレベータ制御装置

【発明の詳細な説明】
[発明の目的]
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複数台のエレベータで共用する乗場行先階呼び登録装置によって行先階呼びが登録されたとき、呼び登録操作された乗場をサービスするエレベータを選択して応答させるエレベータの制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ビル建設上の理由等から、群管理エレベータのサービス階不揃いのものが増えている。図8はこの例を示し、サービス階床数が10階床の6台の群管理エレベータA号機〜F号機のうち、B号機〜C号機は8階と10階とが不停止階となっている。
【0003】ここで、5階から8階へ行きたい人が5階にて乗場ボタンを押しても、従来の群管理制御方法にあっては、必ずしもB号機〜C号機以外のエレベータを割当てて応答させるとは限らず、もし、B号機〜C号機を割当てたとすれば、8階には行けないから途中で乗換えるか、あるいは、A号機、D号機〜F号機が応答するまで待たなければならなかった。
【0004】しかし、乗場で行先階を登録する、いわゆる、乗場行先呼び登録装置を備えたものは、乗場で行き先呼びが発生した段階でどこの階に行きたいか検知できるので、不揃い階への行き先呼びボタンが押されても、その階へサービスが可能なエレベータを配車することができる。従って図8において、5階から8階へ行きたい人が5階にて8階の乗場行先階を登録すると、8階へサービスが可能なB号機〜C号機以外のエレベータを割当てることができる。ところで、もしその前に既に他の乗客が5階において8階以外の乗場行先階を登録し、B〜C号機のいずれか1台が割当てられていたとすると同一階に対して2台配車することになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、同一階に2台割り当てておいて、もし最初に到着したエレベータが不揃い階へ応答不可能なかごであった場合、不揃い階へ行きたかった乗客も間違って乗り込んでしまう可能性がある。
【0006】また、最初に到着したエレベータが不揃い階へ応答可能であったとしても、乗場にいる乗客にとって不揃い階へ応答可能なかごなのかどうかわかりにくくとまどってしまうことになる。
【0007】本発明は上記の問題点を解決するためになされたもので、サービス階不揃いのビルに設置された乗場行先階呼びの利用客に対して応答号機のサービス可能階を報知し、これによって運転サービスの向上を実現することのできるエレベータの制御装置を提供することを目的とする。
[発明の構成]
【0008】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するために、本発明においては、複数台のエレベータで共用する乗場行先呼び登録装置によって行先階呼びが登録されたとき、呼び登録操作された乗場をサービスするエレベータを選択して応答させるエレベータの割当て制御部と、前記エレベータのサービス階が不揃いであるとき、これらのエレベータに対応してそれぞれサービスの可否を示す行先階可否を記憶する手段と、呼び登録操作された乗場にエレベータが到着したとき、前記行先階可否記憶手段より判断して、サービスが可能な行先階呼びのみを到着したエレベータにかご呼びとして転送する手段と、各乗場に対して報知を行う報知手段と呼び登録操作された乗場に到着したエレベータが不揃い階に行けるかどうかを乗客へ報知する指令を乗場の報知手段に対して与える報知制御部とを有することを特徴とするエレベータ制御装置を提供する。
【0009】
【作用】この発明においては、エレベータのサービス階が不揃いであることに対応してそれぞれサービスの可否を示す行先階可否テーブルを設定し、呼び登録操作された乗場にエレベータを割り当てる際に前記行先階可否テーブルを参照する。
【0010】この時、もしある乗場に対して既に1台のエレベータが割り当てられていて、その後にサービス階が不揃いである階への行先呼びが発生し、既割り当てのエレベータがサービス不可能である場合には、不揃い階へ応答可能なエレベータをもう一台割り当てる。
【0011】登録操作された乗場にエレベータが到着したとき、この行先階可否テーブルを参照して行先階のサービスが可能な行先階呼びのみをかご呼びとして転送し、転送されない行先階呼びを残すと共に、報知制御部が不揃い階へサービスできない事を報知する指令をエレベータが応答した階の報知手段に与え、報知手段はこの報知指令を受けて、指令に該当する報知メッセージを出力し、乗場の利用客に報知することができる。また、不揃い階へサービス可能なエレベータが到着した時も同様に、乗車を促す報知を乗場の乗客に対して行うことができる。
【0012】
【実施例】以下、この発明の実施例を図に基づいて詳説する。
【0013】図1はこの発明の一実施例のブロック図であり、エレベータ制御装置1はエレベータの運行制御を司る部分であり、モータ制御装置2を制御してかご3の昇降動作、ドアの開閉動作を制御するようになっている。そして、このエレベータ制御装置1は、エレベータの運転制御をなす運転制御部4と、乗場呼びに対する予測到着時間を演算し割当てを行う割当制御部5と、報知制御部6とを備えている。
【0014】7a〜7nは各階に設置されている乗場行先階呼び登録装置であり、この乗場行先階呼び登録装置7a〜7nからの乗場呼び信号が乗場呼び入出力制御部8a〜8nを介してエレベータ制御装置1に入力され、またエレベータ制御装置1から乗場呼び登録信号が出力されるようになっている。9a〜9nは各階に応答して設けられている伝送制御部であり、報知制御部6からの信号を受けて各階の音声合成装置10a〜10nに報知信号を伝送する。
【0015】音声合成装置10a〜10nは、図2に示すように報知制御部6からの報知指令に対する報知内容番号を求める選択制御部21と、図3に示すように報知データテーブルADTBを内蔵し、選択制御部21からの番号選択信号に応じて、対応する番号のメッセージを再生する音声再生部22と、この音声再生部22からの音声信号を増幅する音声増幅部23とから構成され、音声増幅部23の出力が各階の乗場に設けられたスピーカ11a〜11nに出力されて、待ち時間をアナウンスするようになっている。
【0016】ここで、乗場行先階呼び登録装置7は、5階に設置されたものを例にすると、図4に示す登録操作部71を有している。この登録操作部71は降方向の1階から4階までの乗場呼びボタンおよび昇方向の5階から10階までの乗場呼びボタンでなる行先階登録ボタン(ランプ付き)72と、5階を示すだけで行先階呼びは登録しない表示灯73とを備えている。
【0017】割当て制御部5は乗場行先階呼び登録装置7の行先階ボタンのうち、その階床よりも昇方向の行先階ボタンが操作されたか、あるいは、降方向の行先階ボタンが操作されたかを記憶する。
【0018】また、図5に示すように、行先階を右詰で記憶させる行先階登録情報テーブル(以下KCTと略称する)12と、例えば5階の行先階呼び登録装置に対応すると、昇方向マスクテーブル52、昇方向のみの行先階を登録する昇方向行先階呼び登録テーブル53、図4にその詳細を示したように、A号機〜F号機がそれぞれどの階床をサービスすることができるかを示す行先階可否テーブル54、転送テーブル55、転送保留テーブル56を備えている。以上の様に構成された本実施例の作用を説明する。
【0019】先ず、図4に示す5階の乗場行先階呼び登録装置において、登録操作部71の8階の行先階登録ボタンが押され8階の行先階が登録されたことによりボタンランプが点灯する。乗場行先階登録ボタンの信号が乗場呼び入出力制御部8a〜8nを通じて割当て制御部5に取り込まれ、KCT57の5階乗場インデックスのビット<8>(8階に対応)がセットされる。
【0020】KCT51のホール情報のうち、昇方向の行先階呼びのみを参照するべくKCT51のデータと、5階からみた昇方向マスクテーブル52のデータとの論理積をとり、昇方向行先階呼び登録テーブル53に格納し、図6の行先階可否テーブルを参照して、発生した乗場行先階呼びに対して応答可能なエレベータの中から選択する。
【0021】一方割付け済みであれば、例えばB号機に割付け済みであれば今回新に発生した乗場行先階呼びと図6の行先階可否テーブルとを参照して、8階は既割付かごのB号機が応答可能でないのでさらにもう一台のエレベータを最適号機として決定する。次にエレベータが乗場に応答し到着した時の動作を図7のフローチャートを用いて説明する。まず、運転制御部4から乗場に到着したという情報を得ると到着号機と到着階をチェックする。(ステップS1,S2)続いて乗場行先階呼び情報をチェックするが、その時の動作例を図5を用いて説明する。
【0022】割当てを受けたA号機が5階に応答し、乗場行先呼びをかご呼びとして転送する条件が成立したとする。このとき、登録されている乗場階呼びに対応する行先階呼びがA号機のかご呼びとして転送テーブル55にセットされる。この場合、サービスが可能な行先階呼びのみを転送し、転送された行先階呼びが消去する一方、転送されない呼びを転送保留テーブル56に残すようにする。
【0023】続いて転送保留テーブル56の内容をチェックし、それにより、図3のテーブルADTBの該当するメッセージ番号をセットし、このメッセージ出力信号を図2の伝送制御部9iを介して音声合成部10iに出力する。(ステップS4〜S5)これを受けて、音声合成部10iでは、待ち時間報知制御部6からのメッセージ番号に対して、選択制御部21が該当するメッセージ、例えば番号「2」に対応するメッセージ「3階へは次に応答するエレベータを御利用下さい」を選択し、音声再生部22がこのメッセージを再生し、音声増幅部23で増幅してスピーカ11iに出力し、i階乗場の利用客に対してアナウンスを行う。
【0024】このようにして、任意の階からの乗場行先階呼びに対して応答したエレベータが不揃い階に行けるかどうかをアナウンスして利用客に報知することができ、利用客が誤ってサービスできないエレベータに乗り込んでしまうのを防ぐことができる。他の実施例として、報知する手段をホールの表示灯に変え、報知するタイミングを割り付け又は減速にて点灯する様に実現することも可能である。また、音声合成装置10a〜10nおよびスピーカ11a〜11nを1個にしスピーカはかご内に設け戸開後にアナウンスすることも可能である。
【0025】
【発明の効果】以上の説明によって明らかな様にこの発明によれば、サービス階不揃いのビルに設置された乗場行先階呼びの利用客に対して応答号機のサービス可能階を報知案内し、これによって運転サービスの向上を実現することのできるエレベータ制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であるエレベータの制御装置のブロック図である。
【図2】図1に示される音声合成装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図1の実施例で使用する報知データテーブルのデータ構造図である。
【図4】図1の乗場行先階呼び登録装置の概要図である。
【図5】実施例で用いられるデータテーブルの概要図である。
【図6】実施例で用いられるデータの構造図である。
【図7】図1のエレベータの制御装置の動作を示すフローチャート図である。
【図8】実施例で用いられるビルの概要図である。
【符号の説明】
1…エレベータ制御装置 2…モータ制御装置
3…かご 4…運転制御部
5…割当て制御部 6…報知制御部
7…乗場行先階呼び登録装置 10…音声合成装置
11…スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数台のエレベータで共用する乗場行先階呼び登録装置によって行先階呼びが登録されたとき、呼び登録操作された乗場をサービスするエレベータを選択して応答させる割当制御部と、前記エレベータのサービス階が不揃いであるとき、これらのエレベータに対応してそれぞれサービスの可否を示す行先階可否を記憶する手段と、呼び登録操作された乗場にエレベータが到着したとき、前記行先階可否記憶手段より判断してサービスが可能な行先階呼びのみを到着したエレベータにかご呼びとして転送する手段と、各乗場に対して報知を行う報知手段と、呼び登録操作された乗場に到着したエレベータが段違い階に行けるかどうかを乗客へ報知する指令を乗場の報知手段に対して与える報知制御部とを備えるエレベータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【特許番号】第2768843号
【登録日】平成10年(1998)4月10日
【発行日】平成10年(1998)6月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−33905
【出願日】平成3年(1991)2月28日
【公開番号】特開平4−277178
【公開日】平成4年(1992)10月2日
【審査請求日】平成9年(1997)2月26日
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【参考文献】
【文献】特開 昭58−167364(JP,A)
【文献】特開 平3−98961(JP,A)
【文献】特開 平4−191257(JP,A)