エレベータ引戸の異物引き込み防止装置
【課題】この発明は、簡易な構成で引き込み防止ローラを隙間から出入り口に異物を送り出す方向のみに回転できるように制限し、引戸の閉動作による異物を隙間内に引き入れる作用を抑制するとともに、異物の隙間からの引き出し動作を助長して、隙間への異物の挟み込みを抑えることができる安価なエレベータ引戸の異物引き込み防止装置を得る。
【解決手段】引き込み防止ローラ１０が、回転軸１３を縦枠３の長さ方向と平行にして、乗り場側ドア５との間に第１の隙間ｄ１より狭い第２の隙間ｄ２を確保するように周面の一部を縦枠３の開口３ａから延出させている。そして、縦枠３に回転自在に配設され、ラック１５が回転軸１３の端部に固着され、爪１６がラック１５に係合可能に配設され、引き込み防止ローラ１０の回転方向が隙間ｄ２から異物を出入り口に送り出す方向に制限されている。
【解決手段】引き込み防止ローラ１０が、回転軸１３を縦枠３の長さ方向と平行にして、乗り場側ドア５との間に第１の隙間ｄ１より狭い第２の隙間ｄ２を確保するように周面の一部を縦枠３の開口３ａから延出させている。そして、縦枠３に回転自在に配設され、ラック１５が回転軸１３の端部に固着され、爪１６がラック１５に係合可能に配設され、引き込み防止ローラ１０の回転方向が隙間ｄ２から異物を出入り口に送り出す方向に制限されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
この発明は、エレベータの引戸と出入り口枠との間に異物が引き込まれることを防止するエレベータ引戸の異物引き込み防止装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来のエレベータの異物引き込み防止装置は、隙間の入口近傍に設けられて、スライド扉から離間しているが隙間をほぼ塞いだ閉塞位置に設けられた排出ローラと、排出ローラを閉塞位置および隙間の入口から後退した後退位置間で移動可能に支持する可動部材と、排出ローラを常時閉塞位置に偏倚するばね装置と、可動部材に軸支されて、排出ローラと外接し、排出ローラが後退位置にあるときだけスライド扉に接触する変換ローラと、を備え、排出ローラが異物に押されて後退位置に移動すると、スライド扉が変換ローラを回転し、変換ローラがその回転方向と反対方向に排出ローラを回転させ、異物を隙間の入口側に戻すように構成されていた（例えば、特許文献１参照）。
【０００３】
【特許文献１】特開２００４−７５３０７号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
このように、従来のエレベータの異物引き込み防止装置は、複雑な構造となり、高価なものとなるとともに、据え付け作業が煩雑となる。
また、排出ローラが可動部材に軸支された回転軸を中心とする円弧上を閉塞位置から後退位置に移動するように構成されているので、排出ローラとスライド扉との間の距離は、閉塞位置から後退位置に移動するに従い漸次狭くなる。また、変換ローラがスライド扉に接するまでは、排出ローラは双方向に回転自在となっている。そこで、排出ローラは、異物に押されると、閉塞位置から後退位置に向かって移動し始め、異物は排出ローラの後退位置への移動とともに、隙間内に入り込む。このとき、排出ローラは異物を隙間内に引き入れる方向に回転する。さらに、排出ローラの閉塞位置から後退位置までの移動は、異物を開動作中のスライド扉に押し付けることになり、スライド扉の開動作の移動力が異物を隙間内に引き入れる方向に強く作用する。このように、閉塞位置から後退位置に到達するまでの排出ローラの移動が、スライド扉の開動作による異物を隙間内に引き入れる作用を助長するように働いてしまう。
【０００５】
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、簡易な構成で引き込み防止ローラを隙間から出入り口に異物を送り出す方向のみに回転できるように制限し、引戸の閉動作による異物を隙間内に引き入れる作用を抑制するとともに、異物の隙間からの引き出し動作を助長して、隙間への異物の挟み込みを抑えることができる安価なエレベータ引戸の異物引き込み防止装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
この発明によるエレベータ引戸の異物引き込み防止装置は、出入り口の両縁部を構成する縦枠を有する出入り口枠と、上記出入り口枠の上記縦枠との間に第１の隙間を確保して上記出入り口の間口方向に移動可能に配設されて上記出入り口を開閉する引戸と、を備えるエレベータ引戸の異物引き込み防止装置であって、回転軸を上記縦枠の長さ方向と平行にして、上記引戸との間に上記第１の隙間より狭い第２の隙間を確保するように周面の一部を該縦枠の該引戸に相対する面から延出させて、該縦枠に回転自在に配設された引き込み防止ローラと、上記引き込み防止ローラの回転方向を、上記引戸に相対する周面が該引戸の閉動作時の移動方向と同じ方向に動く回転方向に制限する回転方向制限手段と、を備えている。
【発明の効果】
【０００７】
この発明によれば、引き込み防止ローラと引戸との間の第２の隙間が、縦枠と引戸との間の第１の隙間より狭く構成されているので、第１の隙間に入った荷物は引き込み防止ローラに当たり、荷物が第１の隙間に入ったことを利用者に感じさせる。そこで、荷物が第２の隙間に入り込む前に、利用者に荷物を引き出す動作をとらせ、第２の隙間への異物の挟み込みが抑えられる。
引き込み防止ローラが荷物を第２の隙間に引き入れる方向に回転しないので、引戸の開動作による異物を第２の隙間に引き入れる作用が抑制される。また、引き込み防止ローラが荷物を第２の隙間から引き出す方向に回転するので、利用者による第２の隙間からの荷物の引き出し動作が助長される。そこで、利用者が第２の隙間に挟まれた荷物を容易に引き出すことができ、第２の隙間への異物の挟み込みが抑えられる。
異物引き込み防止装置が、縦枠に回転自在に取り付けられた引き込み防止ローラと、引き込み防止ローラの回転方向を一方向に制限する回転方向制限手段と、から構成されているので、異物引き込み防止装置が簡素な構成となり、低コスト化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００８】
以下、本願の実施例を図面に基づいて説明する。
図１はこの発明に係るエレベータ引戸の異物引き込み防止装置が組み込まれたエレベータ装置の乗り場を示す正面図、図２はこの発明に係るエレベータ引戸の異物引き込み防止装置が組み込まれたエレベータ装置の乗り場の要部を示す一部破断斜視図、図３は図１のＩＩＩ−ＩＩＩ矢視断面図、図４はこの発明に係るエレベータ引戸の異物引き込み防止装置を示す上面図である。
【０００９】
図１乃至図４において、エレベータ乗り場には、出入り口枠としての乗り場側三方枠２が乗り場側出入り口１に立設され、乗り場側ドア５が乗り場側出入り口１を開閉自在に配設されている。
乗り場側三方枠２は、例えば、長さ方向を鉛直方向として立設され、乗り場側出入り口１の相対する両縁部を構成する一対の縦枠３と、縦枠３の上端面間を連結する上枠４と、から構成されている。縦枠３は、鋼板を折り曲げ成形して乗り場側ドア５に面する一面を開口３ａとする箱形に作製されている。
【００１０】
乗り場側ドア５は、鋼板を折り曲げて箱形に作製され、その上端面には、ドアハンガー６が強固にボルト止めされ、ローラ７がドアハンガー６に水平軸回りに回転自在に取り付けられている。そして、乗り場側ドア５は、ローラ７を乗り場側出入り口１の上部の昇降路内壁面に設置されたトラック（図示せず）に掛けて吊設され、トラックに案内されて図１中左右方向、すなわち乗り場側出入り口１の間口方向に移動して乗り場側出入り口１を開閉する両開き引戸の構造となっている。ここで、乗り場側三方枠２と乗り場側ドア５との間には、隙間ｄ１（一般的に５ｍｍ程度）が確保されている。
【００１１】
引き込み防止ローラ１０は、例えば、ウレタンゴムなどのゴムを用い、縦枠３と同等の長さを有する円柱状に作製されたローラ体１１と、ローラ体１１の外周壁面に被覆された外皮としてのフェルト１２と、ローラ体１１の軸心位置を挿通してローラ体１１に固着された回転軸１３と、から構成されている。この引き込み防止ローラ１０は、回転軸１３を縦枠３の長さ方向と平行にして、回転軸１３の両端を縦枠３の内壁面の上端側および下端側に相対するように固着された一対の軸受部材１４に回転自在に支持され、周面の一部が縦枠３の開口３ａから乗り場側ドア５側に延出するように取り付けられている。さらに、ラック１５が軸受部材１４から延出する回転軸１３の端部に固着され、爪１６がラック１５に係合可能に軸受部材１４に取り付けられている。ここで、乗り場側ドア５と引き込み防止ローラ１０との間には、隙間ｄ１より狭い隙間ｄ２（例えば、２ｍｍ程度）が縦枠３の長さ方向のほぼ全域に渡って確保されている。
【００１２】
なお、ラック１５と爪１６とが引き込み防止ローラ１０の回転方向を一方向に制限する回転方向制限手段を構成している。ここでは、引き込み防止ローラ１０は、図３および図４に矢印Ａで示されるように、ラック１５と爪１６とにより、引き込み防止ローラ１０と乗り場側ドア５との間の隙間ｄ２に挟まった異物を乗り場側出入り口１に送り出す方向にのみ回転できるように制限されている。この隙間ｄ２に挟まった異物を乗り場側出入り口１に送り出す方向の引き込み防止ローラ１０の回転方向とは、乗り場側ドア５に相対する引き込み防止ローラ１０の周面が、乗り場側ドア５の閉動作時の移動方向と同じ方向に動く回転方向である。
【００１３】
このように構成されたエレベータ引戸の異物引き込み防止装置の動作について図３を参照しつつ説明する。ここで、乗り場側ドア５は、図３中矢印Ｂで示される方向に移動、すなわち開動作しているとする。
【００１４】
まず、引き込み防止ローラ１０と乗り場側ドア５との間の隙間ｄ２が乗り場側三方枠２と乗り場側ドア５との間の隙間ｄ１より狭く構成されている。そこで、利用者の荷物が、乗り場側三方枠２と乗り場側ドア５との間の隙間ｄ１に入り込むと、引き込み防止ローラ１０に当たり、その衝撃が利用者に伝わる。これにより、利用者は、荷物が乗り場側三方枠２と乗り場側ドア５との間の隙間ｄ１に入り込んだことを認識し、荷物を引き抜くことになる。このとき、引き込み防止ローラ１０は、矢印Ａの方向と逆向きには回転しないので、乗り場側ドア５の開動作による荷物を引き込み防止ローラ１０と乗り場側ドア５との間の隙間ｄ２に引き込む動作を助長しない。そこで、利用者は、引き込み防止ローラ１０と乗り場側ドア５との間の隙間ｄ２に入り込む前に荷物を引く抜くことができる。
【００１５】
また、利用者が、荷物が引き込み防止ローラ１０と乗り場側ドアとの間の隙間ｄ２に引き込まれたことを認識し、荷物を引き抜こうとしたときには、引き込み防止ローラ１０は引き込み防止ローラ１０と乗り場側ドア５との間の隙間ｄ２に挟まった異物を乗り側出入り口１に送り出す方向に回転し、利用者による荷物の引き抜き動作を助長する。そこで、引き込み防止ローラ１０と乗り場側ドア５との間の隙間ｄ２に引き込まれた荷物を、速やかに引き抜くことができる。
【００１６】
また、フェルト１２がローラ体１１の外周壁面に被覆されているので、引き込み防止ローラ１０の周面の摩擦係数が乗り場側ドア５の縦枠３と相対する壁面より小さくなる。そこで、荷物が引き込み防止ローラ１０と乗り場側ドア５との間の隙間ｄ２に引き込まれた際の荷物の損傷が抑えられる。
また、ローラ体１１がウレタンゴムで作製されているので、荷物が引き込み防止ローラ１０と乗り場側ドアとの間の隙間ｄ２に引き込まれた際に、ローラ体１１が弾性変形し、荷物の損傷が抑えられる。
【００１７】
また、異物引き込み防止装置が、縦枠３に取り付けられた軸受部材１４に回転自在に支持された引き込み防止ローラ１０と、回転軸１３の端部に固着されたラック１５と、ラック１５に係合する爪１６と、から構成されているので、異物引き込み防止装置の構成が簡素化され、低コスト化が図られる。さらに、据え付けが容易となるので、引き込み防止ローラ１０を乗り場側ドア５との間の隙間を狭く、かつ高精度に据え付けることができる。
【００１８】
なお、上記実施の形態では、異物引き込み防止装置を乗り場側三方枠の縦枠に組み込むものとして説明しているが、異物引き込み防止装置をかご側三方枠の縦枠に組み込んでも、同様の効果が得られる。
また、上記実施の形態では、乗り場側ドアが両開き引戸であるものとしているが、乗り場側ドアは片開き引戸であってもよい。
また、上記実施の形態では、引き込み防止ローラが縦枠の長さ方向のほぼ全域にわって設置されているものとしているが、縦枠の長さ方向における引き込み防止ローラの設置領域は、これに限定されるものではなく、例えば、荷物の挟み込みが発生しにくい縦枠の上部側を避け、引き込み防止ローラを縦枠の長さ方向の下半分の領域に設置するようにしてもよい。
【００１９】
また、上記実施の形態では、ローラ体の外周壁面にフェルトを被覆するものとしているが、ローラ体の外周壁面に被覆する外皮は、フェルトに限定されるものではなく、乗り場側ドアより摩擦係数の小さなものであればよく、例えばポリテトラフルオロエチレンなどを用いることができる。
また、上記実施の形態では、回転方向制限手段をラックと爪とによるラチェットで構成するものとしているが、回転方向制限手段はこのようなラチェットに限定されるものではなく、引き込み防止ローラの回転方向を引き込み防止ローラと乗り場側ドアとの間の隙間から乗り場側出入り口に異物を送り出す方向に制限するものであればよく、例えばワンウェイクラッチを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【００２０】
【図１】この発明に係るエレベータ引戸の異物引き込み防止装置が組み込まれたエレベータ装置の乗り場を示す正面図である。
【図２】この発明に係るエレベータ引戸の異物引き込み防止装置が組み込まれたエレベータ装置の乗り場の要部を示す一部破断斜視図である。
【図３】図１のＩＩＩ−ＩＩＩ矢視断面図である。
【図４】この発明に係るエレベータ引戸の異物引き込み防止装置を示す上面図である。
【符号の説明】
【００２１】
１ 乗り場側出入り口、２ 乗り場側三方枠（出入り口枠）、３ 縦枠、３ａ 開口、５ 乗り場側ドア（引戸）、１０ 引き込み防止ローラ、１１ ローラ体、１２ フェルト（外皮）、１３ 回転軸、１５ ラック（回転方向制限手段）、１６ 爪（回転方向制限手段）。
【技術分野】
【０００１】
この発明は、エレベータの引戸と出入り口枠との間に異物が引き込まれることを防止するエレベータ引戸の異物引き込み防止装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来のエレベータの異物引き込み防止装置は、隙間の入口近傍に設けられて、スライド扉から離間しているが隙間をほぼ塞いだ閉塞位置に設けられた排出ローラと、排出ローラを閉塞位置および隙間の入口から後退した後退位置間で移動可能に支持する可動部材と、排出ローラを常時閉塞位置に偏倚するばね装置と、可動部材に軸支されて、排出ローラと外接し、排出ローラが後退位置にあるときだけスライド扉に接触する変換ローラと、を備え、排出ローラが異物に押されて後退位置に移動すると、スライド扉が変換ローラを回転し、変換ローラがその回転方向と反対方向に排出ローラを回転させ、異物を隙間の入口側に戻すように構成されていた（例えば、特許文献１参照）。
【０００３】
【特許文献１】特開２００４−７５３０７号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
このように、従来のエレベータの異物引き込み防止装置は、複雑な構造となり、高価なものとなるとともに、据え付け作業が煩雑となる。
また、排出ローラが可動部材に軸支された回転軸を中心とする円弧上を閉塞位置から後退位置に移動するように構成されているので、排出ローラとスライド扉との間の距離は、閉塞位置から後退位置に移動するに従い漸次狭くなる。また、変換ローラがスライド扉に接するまでは、排出ローラは双方向に回転自在となっている。そこで、排出ローラは、異物に押されると、閉塞位置から後退位置に向かって移動し始め、異物は排出ローラの後退位置への移動とともに、隙間内に入り込む。このとき、排出ローラは異物を隙間内に引き入れる方向に回転する。さらに、排出ローラの閉塞位置から後退位置までの移動は、異物を開動作中のスライド扉に押し付けることになり、スライド扉の開動作の移動力が異物を隙間内に引き入れる方向に強く作用する。このように、閉塞位置から後退位置に到達するまでの排出ローラの移動が、スライド扉の開動作による異物を隙間内に引き入れる作用を助長するように働いてしまう。
【０００５】
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、簡易な構成で引き込み防止ローラを隙間から出入り口に異物を送り出す方向のみに回転できるように制限し、引戸の閉動作による異物を隙間内に引き入れる作用を抑制するとともに、異物の隙間からの引き出し動作を助長して、隙間への異物の挟み込みを抑えることができる安価なエレベータ引戸の異物引き込み防止装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
この発明によるエレベータ引戸の異物引き込み防止装置は、出入り口の両縁部を構成する縦枠を有する出入り口枠と、上記出入り口枠の上記縦枠との間に第１の隙間を確保して上記出入り口の間口方向に移動可能に配設されて上記出入り口を開閉する引戸と、を備えるエレベータ引戸の異物引き込み防止装置であって、回転軸を上記縦枠の長さ方向と平行にして、上記引戸との間に上記第１の隙間より狭い第２の隙間を確保するように周面の一部を該縦枠の該引戸に相対する面から延出させて、該縦枠に回転自在に配設された引き込み防止ローラと、上記引き込み防止ローラの回転方向を、上記引戸に相対する周面が該引戸の閉動作時の移動方向と同じ方向に動く回転方向に制限する回転方向制限手段と、を備えている。
【発明の効果】
【０００７】
この発明によれば、引き込み防止ローラと引戸との間の第２の隙間が、縦枠と引戸との間の第１の隙間より狭く構成されているので、第１の隙間に入った荷物は引き込み防止ローラに当たり、荷物が第１の隙間に入ったことを利用者に感じさせる。そこで、荷物が第２の隙間に入り込む前に、利用者に荷物を引き出す動作をとらせ、第２の隙間への異物の挟み込みが抑えられる。
引き込み防止ローラが荷物を第２の隙間に引き入れる方向に回転しないので、引戸の開動作による異物を第２の隙間に引き入れる作用が抑制される。また、引き込み防止ローラが荷物を第２の隙間から引き出す方向に回転するので、利用者による第２の隙間からの荷物の引き出し動作が助長される。そこで、利用者が第２の隙間に挟まれた荷物を容易に引き出すことができ、第２の隙間への異物の挟み込みが抑えられる。
異物引き込み防止装置が、縦枠に回転自在に取り付けられた引き込み防止ローラと、引き込み防止ローラの回転方向を一方向に制限する回転方向制限手段と、から構成されているので、異物引き込み防止装置が簡素な構成となり、低コスト化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００８】
以下、本願の実施例を図面に基づいて説明する。
図１はこの発明に係るエレベータ引戸の異物引き込み防止装置が組み込まれたエレベータ装置の乗り場を示す正面図、図２はこの発明に係るエレベータ引戸の異物引き込み防止装置が組み込まれたエレベータ装置の乗り場の要部を示す一部破断斜視図、図３は図１のＩＩＩ−ＩＩＩ矢視断面図、図４はこの発明に係るエレベータ引戸の異物引き込み防止装置を示す上面図である。
【０００９】
図１乃至図４において、エレベータ乗り場には、出入り口枠としての乗り場側三方枠２が乗り場側出入り口１に立設され、乗り場側ドア５が乗り場側出入り口１を開閉自在に配設されている。
乗り場側三方枠２は、例えば、長さ方向を鉛直方向として立設され、乗り場側出入り口１の相対する両縁部を構成する一対の縦枠３と、縦枠３の上端面間を連結する上枠４と、から構成されている。縦枠３は、鋼板を折り曲げ成形して乗り場側ドア５に面する一面を開口３ａとする箱形に作製されている。
【００１０】
乗り場側ドア５は、鋼板を折り曲げて箱形に作製され、その上端面には、ドアハンガー６が強固にボルト止めされ、ローラ７がドアハンガー６に水平軸回りに回転自在に取り付けられている。そして、乗り場側ドア５は、ローラ７を乗り場側出入り口１の上部の昇降路内壁面に設置されたトラック（図示せず）に掛けて吊設され、トラックに案内されて図１中左右方向、すなわち乗り場側出入り口１の間口方向に移動して乗り場側出入り口１を開閉する両開き引戸の構造となっている。ここで、乗り場側三方枠２と乗り場側ドア５との間には、隙間ｄ１（一般的に５ｍｍ程度）が確保されている。
【００１１】
引き込み防止ローラ１０は、例えば、ウレタンゴムなどのゴムを用い、縦枠３と同等の長さを有する円柱状に作製されたローラ体１１と、ローラ体１１の外周壁面に被覆された外皮としてのフェルト１２と、ローラ体１１の軸心位置を挿通してローラ体１１に固着された回転軸１３と、から構成されている。この引き込み防止ローラ１０は、回転軸１３を縦枠３の長さ方向と平行にして、回転軸１３の両端を縦枠３の内壁面の上端側および下端側に相対するように固着された一対の軸受部材１４に回転自在に支持され、周面の一部が縦枠３の開口３ａから乗り場側ドア５側に延出するように取り付けられている。さらに、ラック１５が軸受部材１４から延出する回転軸１３の端部に固着され、爪１６がラック１５に係合可能に軸受部材１４に取り付けられている。ここで、乗り場側ドア５と引き込み防止ローラ１０との間には、隙間ｄ１より狭い隙間ｄ２（例えば、２ｍｍ程度）が縦枠３の長さ方向のほぼ全域に渡って確保されている。
【００１２】
なお、ラック１５と爪１６とが引き込み防止ローラ１０の回転方向を一方向に制限する回転方向制限手段を構成している。ここでは、引き込み防止ローラ１０は、図３および図４に矢印Ａで示されるように、ラック１５と爪１６とにより、引き込み防止ローラ１０と乗り場側ドア５との間の隙間ｄ２に挟まった異物を乗り場側出入り口１に送り出す方向にのみ回転できるように制限されている。この隙間ｄ２に挟まった異物を乗り場側出入り口１に送り出す方向の引き込み防止ローラ１０の回転方向とは、乗り場側ドア５に相対する引き込み防止ローラ１０の周面が、乗り場側ドア５の閉動作時の移動方向と同じ方向に動く回転方向である。
【００１３】
このように構成されたエレベータ引戸の異物引き込み防止装置の動作について図３を参照しつつ説明する。ここで、乗り場側ドア５は、図３中矢印Ｂで示される方向に移動、すなわち開動作しているとする。
【００１４】
まず、引き込み防止ローラ１０と乗り場側ドア５との間の隙間ｄ２が乗り場側三方枠２と乗り場側ドア５との間の隙間ｄ１より狭く構成されている。そこで、利用者の荷物が、乗り場側三方枠２と乗り場側ドア５との間の隙間ｄ１に入り込むと、引き込み防止ローラ１０に当たり、その衝撃が利用者に伝わる。これにより、利用者は、荷物が乗り場側三方枠２と乗り場側ドア５との間の隙間ｄ１に入り込んだことを認識し、荷物を引き抜くことになる。このとき、引き込み防止ローラ１０は、矢印Ａの方向と逆向きには回転しないので、乗り場側ドア５の開動作による荷物を引き込み防止ローラ１０と乗り場側ドア５との間の隙間ｄ２に引き込む動作を助長しない。そこで、利用者は、引き込み防止ローラ１０と乗り場側ドア５との間の隙間ｄ２に入り込む前に荷物を引く抜くことができる。
【００１５】
また、利用者が、荷物が引き込み防止ローラ１０と乗り場側ドアとの間の隙間ｄ２に引き込まれたことを認識し、荷物を引き抜こうとしたときには、引き込み防止ローラ１０は引き込み防止ローラ１０と乗り場側ドア５との間の隙間ｄ２に挟まった異物を乗り側出入り口１に送り出す方向に回転し、利用者による荷物の引き抜き動作を助長する。そこで、引き込み防止ローラ１０と乗り場側ドア５との間の隙間ｄ２に引き込まれた荷物を、速やかに引き抜くことができる。
【００１６】
また、フェルト１２がローラ体１１の外周壁面に被覆されているので、引き込み防止ローラ１０の周面の摩擦係数が乗り場側ドア５の縦枠３と相対する壁面より小さくなる。そこで、荷物が引き込み防止ローラ１０と乗り場側ドア５との間の隙間ｄ２に引き込まれた際の荷物の損傷が抑えられる。
また、ローラ体１１がウレタンゴムで作製されているので、荷物が引き込み防止ローラ１０と乗り場側ドアとの間の隙間ｄ２に引き込まれた際に、ローラ体１１が弾性変形し、荷物の損傷が抑えられる。
【００１７】
また、異物引き込み防止装置が、縦枠３に取り付けられた軸受部材１４に回転自在に支持された引き込み防止ローラ１０と、回転軸１３の端部に固着されたラック１５と、ラック１５に係合する爪１６と、から構成されているので、異物引き込み防止装置の構成が簡素化され、低コスト化が図られる。さらに、据え付けが容易となるので、引き込み防止ローラ１０を乗り場側ドア５との間の隙間を狭く、かつ高精度に据え付けることができる。
【００１８】
なお、上記実施の形態では、異物引き込み防止装置を乗り場側三方枠の縦枠に組み込むものとして説明しているが、異物引き込み防止装置をかご側三方枠の縦枠に組み込んでも、同様の効果が得られる。
また、上記実施の形態では、乗り場側ドアが両開き引戸であるものとしているが、乗り場側ドアは片開き引戸であってもよい。
また、上記実施の形態では、引き込み防止ローラが縦枠の長さ方向のほぼ全域にわって設置されているものとしているが、縦枠の長さ方向における引き込み防止ローラの設置領域は、これに限定されるものではなく、例えば、荷物の挟み込みが発生しにくい縦枠の上部側を避け、引き込み防止ローラを縦枠の長さ方向の下半分の領域に設置するようにしてもよい。
【００１９】
また、上記実施の形態では、ローラ体の外周壁面にフェルトを被覆するものとしているが、ローラ体の外周壁面に被覆する外皮は、フェルトに限定されるものではなく、乗り場側ドアより摩擦係数の小さなものであればよく、例えばポリテトラフルオロエチレンなどを用いることができる。
また、上記実施の形態では、回転方向制限手段をラックと爪とによるラチェットで構成するものとしているが、回転方向制限手段はこのようなラチェットに限定されるものではなく、引き込み防止ローラの回転方向を引き込み防止ローラと乗り場側ドアとの間の隙間から乗り場側出入り口に異物を送り出す方向に制限するものであればよく、例えばワンウェイクラッチを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【００２０】
【図１】この発明に係るエレベータ引戸の異物引き込み防止装置が組み込まれたエレベータ装置の乗り場を示す正面図である。
【図２】この発明に係るエレベータ引戸の異物引き込み防止装置が組み込まれたエレベータ装置の乗り場の要部を示す一部破断斜視図である。
【図３】図１のＩＩＩ−ＩＩＩ矢視断面図である。
【図４】この発明に係るエレベータ引戸の異物引き込み防止装置を示す上面図である。
【符号の説明】
【００２１】
１ 乗り場側出入り口、２ 乗り場側三方枠（出入り口枠）、３ 縦枠、３ａ 開口、５ 乗り場側ドア（引戸）、１０ 引き込み防止ローラ、１１ ローラ体、１２ フェルト（外皮）、１３ 回転軸、１５ ラック（回転方向制限手段）、１６ 爪（回転方向制限手段）。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
出入り口の両縁部を構成する縦枠を有する出入り口枠と、上記出入り口枠の上記縦枠との間に第１の隙間を確保して上記出入り口の間口方向に移動可能に配設されて上記出入り口を開閉する引戸と、を備えるエレベータ引戸の異物引き込み防止装置であって、
回転軸を上記縦枠の長さ方向と平行にして、上記引戸との間に上記第１の隙間より狭い第２の隙間を確保するように周面の一部を該縦枠の該引戸に相対する面から延出させて、該縦枠に回転自在に配設された引き込み防止ローラと、
上記引き込み防止ローラの回転方向を、上記引戸に相対する周面が該引戸の閉動作時の移動方向と同じ方向に動く回転方向に制限する回転方向制限手段と、
を備えていることを特徴とするエレベータ引戸の異物引き込み防止装置。
【請求項２】
上記引き込み防止ローラは、上記回転軸に同軸に固着されたローラ体と、上記ローラ体の外周壁面に被覆された、上記引戸より摩擦係数が小さい外皮と、を備えていることを特徴とする請求項１記載のエレベータ引戸の異物引き込み防止装置。
【請求項３】
上記ローラ体がゴムで作製されていることを特徴とする請求項２記載のエレベータ引戸の異物引き込み防止装置。
【請求項１】
出入り口の両縁部を構成する縦枠を有する出入り口枠と、上記出入り口枠の上記縦枠との間に第１の隙間を確保して上記出入り口の間口方向に移動可能に配設されて上記出入り口を開閉する引戸と、を備えるエレベータ引戸の異物引き込み防止装置であって、
回転軸を上記縦枠の長さ方向と平行にして、上記引戸との間に上記第１の隙間より狭い第２の隙間を確保するように周面の一部を該縦枠の該引戸に相対する面から延出させて、該縦枠に回転自在に配設された引き込み防止ローラと、
上記引き込み防止ローラの回転方向を、上記引戸に相対する周面が該引戸の閉動作時の移動方向と同じ方向に動く回転方向に制限する回転方向制限手段と、
を備えていることを特徴とするエレベータ引戸の異物引き込み防止装置。
【請求項２】
上記引き込み防止ローラは、上記回転軸に同軸に固着されたローラ体と、上記ローラ体の外周壁面に被覆された、上記引戸より摩擦係数が小さい外皮と、を備えていることを特徴とする請求項１記載のエレベータ引戸の異物引き込み防止装置。
【請求項３】
上記ローラ体がゴムで作製されていることを特徴とする請求項２記載のエレベータ引戸の異物引き込み防止装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２０１０−１３２４２６（Ｐ２０１０−１３２４２６Ａ）
【公開日】平成２２年６月１７日（２０１０．６．１７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−３１０９６７（Ｐ２００８−３１０９６７）
【出願日】平成２０年１２月５日（２００８．１２．５）
【出願人】（０００２３６０５６）三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年６月１７日（２０１０．６．１７）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年１２月５日（２００８．１２．５）
【出願人】（０００２３６０５６）三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Ｆターム（参考）】
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