説明

エレベータ扉画像記録装置

【課題】エレベータの乗場の扉に衝撃を加えた人に関わる画像を容易に確認できるエレベータ扉画像記録装置を提供する。
【解決手段】エレベータ扉画像記録装置は、乗場に向かう人を撮影した映像信号をデジタルの映像データに変換する映像信号A/D回路と、デジタルの映像データを圧縮する映像データ圧縮回路と、圧縮した映像データをフレーム毎に所定の期間記録するリングメモリ記録回路と、を備え、乗場の扉の加速度を計測して加速度信号を得る加速度センサと、加速度信号を解析して扉に衝撃が加えられたことを識別してトリガ信号を生成する衝撃識別部と、リングメモリ記録回路から読み出された映像データを可搬型半導体記憶媒体に記録するデジタル記録装置と、トリガ信号が入力されたとき扉に衝撃が加えられたことに関わる映像データをリングメモリ記録回路から読み出してデジタル記録装置に送出する記録制御回路と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータの扉が毀損する恐れのあるときの画像を記録するエレベータ扉画像記憶装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータ扉の安全装置において、扉に衝撃検出用センサを取り付け、エレベータが走行中にイタズラ等で扉に衝撃が加えられた場合、その検出信号を制御盤に取り込みエレベータを最寄り階に誘導、停止させることにより、閉じ込め故障を防止する(例えば、非特許文献1参照)。
一方、エレベータの動作状態変化があった時にエレベータのかご室内の映像データをこの時の動作状態と組み合わせて映像データ蓄積メモリに記録する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−3104号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】発明協会公開技報公技番号99−2865号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、扉に衝撃が加えられた場合、閉じ込め故障を防止することができますが、扉にだれが衝撃を加えたかについてはかご室内の映像データからでは分からないのと、衝撃が加えられた映像データがどれか分からないという問題がある。
【0006】
この発明の目的は、エレベータの乗場の扉に衝撃を加えた人に関わる画像を容易に確認できるエレベータ扉画像記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るエレベータ扉画像記録装置は、エレベータの乗場に向かう人を撮影した映像信号をデジタルの映像データに変換する映像信号A/D回路と、上記デジタルの映像データを圧縮する映像データ圧縮回路と、上記圧縮した映像データをフレーム毎に所定の期間記録するリングメモリ記録回路と、を備えるエレベータ扉画像記録装置において、上記乗場の扉の加速度を計測して加速度信号を得る加速度センサと、上記加速度信号を解析して上記扉に衝撃が加えられたことを識別してトリガ信号を生成する衝撃識別部と、上記リングメモリ記録回路から読み出された映像データを可搬型半導体記憶媒体に記録するデジタル記録装置と、上記トリガ信号が入力されたとき上記扉に衝撃が加えられたことに関わる映像データを上記リングメモリ記録回路から読み出して上記デジタル記録装置に送出する記録制御回路と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係るエレベータ扉画像記録装置の効果は、扉に衝撃が加わったときの前後に亘る扉に向かう人の映像データをメモリカードに記録されるので、扉に衝撃を与えた人を画像から容易に特定することができることである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明を実施するための最良の形態のエレベータ扉画像記録装置が配置されたある乗場の様子を示す図である。
【図2】この発明に係るエレベータ扉画像記録装置の構成を示す構成図である。
【図3】JPEG2000ファイルが記録されているリングメモリ記録回路のフォーマットである。
【図4】映像データが記録されているメモリカードのフォーマットである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、この発明を実施するための最良の形態のエレベータ扉画像記録装置を配置したエレベータの乗場を示す図である。
この発明に係るエレベータ扉画像記録装置1は、エレベータ2に乗車しようとする
人を撮影するカメラ3、乗場側の扉4の加速度を計測する加速度センサ5、カメラ3から映像信号を取り込むとともに加速度センサ5からの加速度を解析して乗場側の扉4に衝撃が加えられたとき前後の画像を記録するレコーダ6を備える。
【0011】
カメラ3は、全階床の乗場に設置され、撮影したNTSC方式の映像データは無線によりレコーダ6に送信する。
加速度センサ5は、乗場側の扉4に設置される3次元加速度センサであり、扉4が昇降路側に移動するまたは昇降方向に移動したときの加速度を計測して無線によりレコーダ6に送信する。
【0012】
レコーダ6は、エレベータのかごの上に搭載され、カメラ3からの映像データを受信する第1無線通信部11、受信した映像データをデジタルの映像データに変換する映像信号A/D回路12、デジタルの映像データを例えばJPEG2000という方式で圧縮する映像データ圧縮回路13、圧縮した映像データをフレーム毎に所定の期間記録する大容量のFIFO半導体メモリからなるリングメモリ記録回路14を備える。
【0013】
また、レコーダ6は、加速度センサ5からの加速度データを受信する第2無線通信部15、受信した加速度データに基づいて扉4に衝撃が加わったこと検知しトリガ信号を発する衝撃識別部16、衝撃識別部16が衝撃が加わったことを識別したとき生成するトリガ信号が入力されたとき映像データをリングメモリ記録回路14から読み出してデジタル記録装置17に送出する記録制御回路18、時刻を発生する時刻発生回路19、および、リングメモリ記録回路14から出力される例えば300フレーム分の映像データと時刻発生回路19から発生される時刻を書庫化して例えばコンパクトフラッシュ(登録商標)の規格のメモリカード20に記録するデジタル記録装置17を備える。
【0014】
なお、デジタルの映像データをJPEG2000という方式で圧縮しているが、必ずしもこの方式に限るものではなく、JPEG、GIFなどいずれの方式も適用できる。但し、JPEG2000という方式を用いると高い圧縮率にも関わらず比較的復元画像が良好である。
また、カメラ3がNTSC方式の映像信号を発生しているが、必ずしもこれに限るものではなく、PAL方式の映像信号などであっても良い。
【0015】
また、メモリカード20としてコンパクトフラッシュ(登録商標)の規格のメモリカード20に記録する例を説明したが、必ずしもこの規格のメモリカード20に限るものではなく、SDメモリカード、スマートメディア、メモリスティックなどいずれの規格のメモリカード20を適用しても良い。
【0016】
次に、具体的な例を用いて扉4に衝撃が加えられたときの記録をコンパクトフラッシュ(登録商標)の規格のメモリカード20に記録する手順を説明する。カメラ3からは例えば1秒に30フレームの映像データがレコーダ6に送られている。そして、映像信号A/D回路12では、フレーム毎の映像データをデジタルの映像データにアナログ/デジタル変換する。そして、映像データ圧縮回路13では、デジタルの映像データをJPEG2000という方式で圧縮し、フレーム毎のJPEG2000ファイル(****.jp2)に変換する。そして、JPEG2000ファイルはリングメモリ記録回路14に記録される。
【0017】
リングメモリ記録回路14は、例えば少なくともJPEG2000ファイルが600個記録することができる容量を有しており、新たなJPEG2000ファイルを記録するとき、過去に遡ること601個目のJPEG2000ファイルが記録されているフィールドに新たなJPEG2000ファイルを上書きするFIFOメモリである。
すなわち、リングメモリ記録回路14には図3に示すように、600個のJPEG2000ファイルが記録されている。
【0018】
衝撃が加えられたと衝撃識別部16がトリガ信号を発したとき、トリガ信号が入力された記録制御回路18は、トリガ信号が入力された時刻を衝撃が加えられた時刻とし、リングメモリ記録回路14に記録されたJPEG2000ファイル中衝撃が加えられた時刻を挟んで例えば前12秒後8秒ずつのJPEG2000ファイルを取り出す。1秒間に30個のJPEG2000ファイルが記録されるので、20秒間での600個のJPEG2000ファイルを取り出すことになる。
【0019】
デジタル記録装置17では、600個のJPEG2000ファイルを1つのファイル、すなわち1回衝撃が加えられた時の書庫にまとめてメモリカード20に記録する。このとき600個のJPEG2000ファイルをまとめて記録される1回衝撃が加えられた時の書庫をさらに例えば50個まとめて1つのファイル、すなわち期間単位の書庫にまとめてメモリカード20に記録することができる。すなわち、30000個のJPEG2000ファイルが書庫の中に記録される。
そして、図4に示すように、1回衝撃が加えられた時の書庫の先頭には時刻発生回路19が発生した時刻をメタデータとして記録するフィールドが設けられている。例えば、衝撃が加えられた時刻が2009年2月17日午前1時20分15秒であれば、この時刻情報がメタデータとして記録される。
【0020】
また、期間単位の書庫の先頭には、期間単位の書庫に一番先に記録された1回衝撃が加えられた時の書庫のメタデータと最後に記録された1回衝撃が加えられた時の書庫のメタデータを期間開始のメタデータと期間終了のメタデータとして記録するフィールドが設けられている。例えば、この期間単位の書庫に一番先に記録した1回衝撃が加えられた時の書庫のメタデータが、2009年2月17日午前1時20分15秒であれば、期間単位の書庫の期間開始のメタデータとして2009年2月17日として記録し、この期間単位の書庫に最後に記録された1回衝撃が加えられた時の書庫のメタデータが、2009年3月20日午後1時45分12秒であれば、期間終了のメタデータとして2009年3月20日として記録する。
【0021】
次に、このように扉に衝撃が加わったときの映像データが記録されたメモリカード20をレコーダ6から抜き取り、メモリカード20に記録された映像データを再生するアプリケーションが実装されたパソコン21で衝撃が加えられたことに関わる映像を確認する手順について説明する。
パソコン21に実装されているアプリケーションでは、図示しないPCカードスロットにメモリカード20を挿入すると、メモリカード20に記録されている期間単位の書庫の期間開始のメタデータおよび期間終了のメタデータ、1回衝撃が加えられた時の60個の書庫のメタデータを読み出し、図示しないモニタに表示する。図示しないマウスを操作してカーソルを所望の1回衝撃が加えられた時の書庫のメタデータに合わせてクリックすると、当該1回衝撃が加えられた時の書庫に記録されているJPEG2000ファイルに展開される。そして、展開された600個のJPEG2000ファイルをそれぞれ解凍して600個の映像データに復元する。そして、600個の映像データを用いてモニタに映像が再生される。
【0022】
この発明に係るエレベータ扉画像記録装置は、扉に衝撃が加わったときの前後に亘る扉に向かう人の映像データをメモリカードに記録されるので、扉に衝撃を与えた人を画像から容易に特定することができる。
【0023】
また、リングメモリ記録回路14としてFIFOの半導体メモリを用いるとともに、扉に衝撃が加えられたときにはその前後それぞれ5秒間の映像をメモリカード20に記録しているので、機械的駆動部が存在せず、故障が減少し、且つ信頼性が向上する。
また、映像データを1回衝撃が加えられた時毎の書庫に書庫化し、それから複数の1回衝撃が加えられた時の書庫をさらに新たな書庫に書庫化してメモリカード20に記録するので、メモリカード20に記録できる映像データの量が多くできる。
また、メモリカード20に記録されている書庫のメタデータから映像データが記録されている期間が分かり、次に1回衝撃が加えられた時毎の書庫のメタデータから1回衝撃が加えられた時の時刻が特定することができるので、所望の衝撃が加えられた時に関する映像データを速やかに検索することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 エレベータ扉画像記録装置、2 エレベータ、3 カメラ、4 扉、5 加速度センサ、6 レコーダ、11 第1無線通信部、12 映像信号A/D回路、13 映像データ圧縮回路、14 リングメモリ記録回路、15 第2無線通信部、16 衝撃識別部、17 デジタル記録装置、18 記録制御回路、19 時刻発生回路、20 メモリカード、21 パソコン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗場に向かう人を撮影した映像信号をデジタルの映像データに変換する映像信号A/D回路と、上記デジタルの映像データを圧縮する映像データ圧縮回路と、上記圧縮した映像データをフレーム毎に所定の期間記録するリングメモリ記録回路と、を備えるエレベータ扉画像記録装置において、
上記乗場の扉の加速度を計測して加速度信号を得る加速度センサと、
上記加速度信号を解析して上記扉に衝撃が加えられたことを識別してトリガ信号を生成する衝撃識別部と、
上記リングメモリ記録回路から読み出された映像データを可搬型半導体記憶媒体に記録するデジタル記録装置と、
上記トリガ信号が入力されたとき上記扉に衝撃が加えられたことに関わる映像データを上記リングメモリ記録回路から読み出して上記デジタル記録装置に送出する記録制御回路と、
を備えることを特徴とするエレベータ扉画像記録装置。
【請求項2】
時刻を発生する時刻発生回路を備え、
上記デジタル記録装置は、上記映像データを上記時刻発生回路から発生される時刻と書庫化して上記可搬型半導体記憶媒体に記録することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ扉画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−241581(P2010−241581A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94545(P2009−94545)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】