説明

エレベータ方式機械式駐車装置

【課題】大きさの異なる車両を収容することができ、かつ装置の設置幅の不足する敷地に設置することができるエレベータ方式機械式駐車装置を提供する。
【解決手段】相対的に車幅が広い広幅車1Aと車幅が狭い狭幅車1Bとを収容するエレベータ方式機械式駐車装置10。広幅車に適した大きさに設定された複数の広幅パレット12Aと、狭幅車に適した大きさに設定された複数の狭幅パレット12Bと、広幅パレットを鉛直方向に間隔LAを隔てて配置された複数の広幅格納棚13Aと、複数の狭幅パレットを鉛直方向に間隔LBを隔てて配置された複数の狭幅格納棚13Bと、広幅格納棚と狭幅格納棚の間に位置し上下方向に延びる昇降路15と、昇降路内を昇降し広幅パレット又は狭幅パレットを排他的に載せる昇降リフト14と、昇降リフトに搭載され広幅格納棚との間で広幅パレットを横行させかつ狭幅格納棚との間で狭幅パレットを横行させる横行装置16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大きさの異なる車両を収容するエレベータ方式機械式駐車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来のエレベータ方式機械式駐車装置の構成図であり、(A)は正面図、(B)は平面図である。
この図において、1は車両、2はパレット、3は格納棚、4は昇降リフト、5は昇降路である。車両1は、例えば普通乗用車であり、好ましくは、RV車、ハイルーフ車や大型車を除いた小型車、中型車に制限される。パレット2は、車両1に適した大きさに設定され、車両1を載せて移動するようになっている。格納棚3は車両1を載せたパレット2を格納する棚であり、昇降路5の両側(図で左右)に設けられる。
昇降リフト4は、ワイヤ又はチェーンで吊下げられ、昇降路5を昇降するエレベータ装置である。昇降リフト4には、パレット2を図で左右に横行させる横行装置(図示せず)が内蔵されている。
【0003】
上述したエレベータ方式機械式駐車装置は、入出庫口(図で地上段)において、空のパレット2の上に車両1が乗り込んで入庫し、運転者が退室した後、昇降リフト4を上昇させてパレットのない格納棚3の位置で停止し、車両1を載せたパレット2を横行させてその格納棚3にパレット2を格納するようになっている。
【0004】
上述したように、従来のエレベータ方式機械式駐車装置では、装置全体の大型化を回避するため、車両1の大きさを制限することが一般に行われている。その場合、例えばRV車、ハイルーフ車や大型車を除いた小型車、中型車に制限される。
【0005】
一方、RV車、ハイルーフ車や大型車を小型車、中型車等と同じ装置に格納する機械式駐車装置として、例えば、特許文献1,2が開示されている。
【0006】
特許文献1の「駐車装置」は、タワーパーキング方式のものであり、車両用の昇降リフトに二輪車等を格納するものである。
特許文献2の「エレベータ方式機械式駐車装置」は、格納棚の高さ方向の間隔を変えて、RV車、ハイルーフ車に対応させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−242278号公報、「駐車装置」
【特許文献2】特開2002−276185号公報、「エレベータ方式機械式駐車装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来のエレベータ方式機械式駐車装置では、大きさの異なる車両を収容する場合に、その最大寸法の車両(例えば中型車)により、装置の全幅(図1でB寸法)が決まる。
【0009】
すなわち、従来のエレベータ方式機械式駐車装置では、車両(例えば中型車)を載せるパレットの大きさが決まると、そのパレットを昇降路の両側に配置することで装置の設置面積(幅B×奥行き)が決まっていた。
そのため、特許文献2のように、格納棚の高さ方向の間隔を変えて、大きさの異なる車両を収容しても、装置の設置面積(幅B×奥行き)は同じであり、装置の設置面積を低減することはできなかった。
【0010】
しかし、機械式駐車装置の需要が高まるにつれて、設置幅の不足する敷地に設置できる機械式駐車装置が要望されている。
また、機械式駐車装置に格納する車両を大きさが近い車両(例えば小型車、普通車、中型車等)に限定せず、二輪車(オートバイや自転車)、軽自動車、小型電気自動車、等の大きさの異なる車両を収容することができる機械式駐車装置が要望されている。
【0011】
本発明は、このような要望に応えるために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、大きさの異なる車両を収容することができ、かつ装置の設置幅の不足する敷地に設置することができるエレベータ方式機械式駐車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、相対的に車幅が広い広幅車と該幅広車より車幅が狭い狭幅車とを収容するエレベータ方式機械式駐車装置であって、
前記広幅車に適した大きさに設定され該広幅車を載せて移動可能な複数の広幅パレットと、
前記狭幅車に適した大きさに設定され該狭幅車を載せて移動可能な複数の狭幅パレットと、
前記複数の広幅パレットを鉛直方向に間隔を隔てて支持可能な複数の広幅格納棚と、
前記複数の狭幅パレットを鉛直方向に間隔を隔てて支持可能な複数の狭幅格納棚と、
前記広幅格納棚と狭幅格納棚の間に位置し上下方向に延びる昇降路と、
該昇降路内を昇降し前記広幅パレット又は狭幅パレットを排他的に載せる昇降リフトと、
該昇降リフトに搭載され、広幅格納棚との間で広幅パレットを横行させかつ狭幅格納棚との間で狭幅パレットを横行させる横行装置とを備える、ことを特徴とするエレベータ方式機械式駐車装置が提供される。
【0013】
本発明の実施形態によれば、前記広幅格納棚は、前記広幅車に適した鉛直方向の間隔に設定され、前記狭幅格納棚は、前記狭幅車に適した鉛直方向の間隔に設定されている。
【0014】
また、前記昇降リフトは、狭幅パレットが載る位置の幅方向両側に、昇降路の隙間を塞ぐプラットホームを有する。
【発明の効果】
【0015】
上記本発明の構成によれば、昇降リフトの両側に広幅格納棚と狭幅格納棚をそれぞれ備えるので、大きさの異なる車両を相対的に車幅が広い複数の広幅車と、該幅広車より車幅が狭い狭幅車とに区分して収容することができる。
【0016】
この場合、広幅パレットは、広幅車に適した大きさに設定されるため、広幅格納棚は相対的に広幅であるが、狭幅パレットは、狭幅車に適した大きさに設定されるため、狭幅格納棚は相対的に狭幅となる。
従って、広幅車が例えば中型車、狭幅車が例えばオートバイであるとすると、広幅格納棚は従来と同じであるが、狭幅格納棚は例えば広幅格納棚の半分程度の狭幅にでき、その分、設置幅の不足する敷地に設置することができる。

【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来のエレベータ方式機械式駐車装置の構成図である。
【図2】本発明によるエレベータ方式機械式駐車装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0019】
図2は、本発明によるエレベータ方式機械式駐車装置の構成図であり、(A)は正面図、(B)は平面図である。
この例において、車が入出庫する入出庫口は、地上段(最下段)に設けられているが、中間段又は最上段に入出庫口を設けてもよい。
【0020】
この図において、本発明のエレベータ方式機械式駐車装置10は、相対的に車幅が広い複数の広幅車1Aと、幅広車1Aより車幅が狭い狭幅車1Bとを収容する。
広幅車1Aは、この例では中型車であるが、普通車、RV車、ハイルーフ車、又は大型車であってもよく、これらが混在してもよい。
狭幅車1Bは、この例では二輪車(オートバイや自転車)であるが、軽自動車、小型電気自動車、等であってもよく、これらが混在してもよい。
【0021】
本発明のエレベータ方式機械式駐車装置10は、複数の広幅パレット12A、複数の狭幅パレット12B、複数の広幅格納棚13A、複数の狭幅格納棚13B、昇降リフト14、昇降路15、及び横行装置16を備える。
【0022】
複数の広幅パレット12Aは、広幅車1A(この例では中型車)に適した大きさに設定され、広幅車1Aを載せて移動可能に構成されている。広幅パレット12Aの数量は、格納する広幅車1Aの最大数と同数であるのが好ましい。
【0023】
複数の狭幅パレット12Bは、狭幅車1B(この例では二輪車)に適した大きさに設定され、狭幅車1Bを載せて移動可能に構成されている。狭幅パレット12Bの数量は、格納する狭幅車1Bの最大数と同数であるのが好ましい。
【0024】
複数の広幅格納棚13Aは、複数の広幅パレット12Aを、鉛直方向に広幅車1Aに適した間隔LAを隔てて配置されている。広幅格納棚13Aの数量は、格納する広幅車1Aの最大数と同数であるのが好ましい。
このように、広幅車1Aに適した鉛直方向の間隔LBに設定することで、普通乗用車、中型車、RV車、ハイルーフ車、大型車、等であっても、無駄なく格納することができる。
【0025】
また、広幅格納棚13Aの鉛直方向の間隔LAは、好ましくは一定であるが、普通乗用車、中型車、RV車、ハイルーフ車、大型車、等が混在する場合に、それぞれに対応させて異なる間隔に設定してもよい。
この構成により、普通乗用車、中型車、RV車、ハイルーフ車、大型車、等が混在しても、広幅格納棚13Aに無駄なく格納することができる。
【0026】
複数の狭幅格納棚13Bは、複数の狭幅パレット12Bを、鉛直方向に狭幅車1Bに適した間隔LBを隔てて配置されている。狭幅格納棚13Bの数量は、格納する狭幅車1Bの最大数と同数であるのが好ましい。
このように、鉛直方向に狭幅車1Bに適した間隔LBに設定することで、狭幅車1Bに比較してより多数の広幅車1Aを狭幅格納棚13Bに無駄なく格納することができる。
【0027】
また、狭幅格納棚13Bの鉛直方向の間隔LBは、好ましくは一定であるが、二輪車(オートバイや自転車)、軽自動車、小型電気自動車、等が混在する場合に、それぞれに対応させて異なる間隔に設定してもよい。
この構成により、二輪車(オートバイや自転車)、軽自動車、小型電気自動車、等が混在しても、狭幅格納棚13Bに無駄なく格納することができる。
【0028】
昇降路15は、上述した広幅格納棚13Aと狭幅格納棚13Bの間に位置し、上下方向に延びるように設けられている。すなわち、昇降路15は、上下方向に延びる中空空間である。
昇降リフト14は、広幅パレット12A又は狭幅パレット12Bを排他的に(どちらか一方のみを)載せ、昇降路15内を昇降するようになっている。この昇降機構は、例えばワイヤ、プーリ、巻上げ装置、昇降レール等から構成される。
【0029】
横行装置16は、昇降リフト14に搭載され、広幅格納棚13Aとの間で広幅パレット12Aを横行させ、かつ狭幅格納棚13Bとの間で狭幅パレット12Bを横行させる横行機構を備える。
横行機構は、例えば周知のトンボ機構、或いはその他の機構(直動アクチュエータ、ラック&ピニオン、等)である。
【0030】
さらにこの例において、昇降リフト14は、狭幅パレット13Bが載る位置の幅方向両側に、昇降路15の隙間を塞ぐプラットホーム17を有する。プラットホーム17は、入出庫口(この例で地上段)において、昇降リフト14上の狭幅パレット13Bの上に狭幅車1Bを入庫し、或いはそこから出庫する際に、利用者が歩行する通路として機能する。
なお、プラットホーム17は、必要に応じて可変にしてもよく、あるいは昇降リフト14以外に設けてもよい。
【0031】
上述した本発明の装置は、敷地面積が小さく、平面積でも自動車が同じ寸法で3台並ばない時や、自動車以外にも適用したいときに、昇降リフト14の両側の格納棚13A,13Bの寸法を変えることによって、自由に敷地面積を設定できるようにしたものである。
例えば、片側を普通乗用車の駐車スペースとし、反対側はオートバイや自転車の駐車スペースとすると全幅寸法Bが最大1250mmも小さくできる。
また、片側を大型車用として反対側を軽自動車や小型電気自動車専用とするなどして、車の収容台数を変えずに、土地の使用面積を小さくすることができる。
【0032】
従って、左右の格納棚13A,13Bの幅寸法を変えることで、今まで設置が不可能であった敷地面積でも機械式立体駐車場が設置できるようになる。
また、片側をオートバイや自転車用とすることで幅寸法を大幅に短くできる。
【0033】
なお本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1A 広幅車、1B 狭幅車、
10 エレベータ方式機械式駐車装置、
12A 広幅パレット、12B 狭幅パレット、
13A 広幅格納棚、13B 狭幅格納棚、
14 昇降リフト、16 横行装置、
17 プラットホーム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に車幅が広い広幅車と該幅広車より車幅が狭い狭幅車とを収容するエレベータ方式機械式駐車装置であって、
前記広幅車に適した大きさに設定され該広幅車を載せて移動可能な複数の広幅パレットと、
前記狭幅車に適した大きさに設定され該狭幅車を載せて移動可能な複数の狭幅パレットと、
前記複数の広幅パレットを鉛直方向に間隔を隔てて支持可能な複数の広幅格納棚と、
前記複数の狭幅パレットを鉛直方向に間隔を隔てて支持可能な複数の狭幅格納棚と、
前記広幅格納棚と狭幅格納棚の間に位置し上下方向に延びる昇降路と、
該昇降路内を昇降し前記広幅パレット又は狭幅パレットを排他的に載せる昇降リフトと、
該昇降リフトに搭載され、広幅格納棚との間で広幅パレットを横行させかつ狭幅格納棚との間で狭幅パレットを横行させる横行装置とを備える、ことを特徴とするエレベータ方式機械式駐車装置。
【請求項2】
前記広幅格納棚は、前記広幅車に適した鉛直方向の間隔に設定され、
前記狭幅格納棚は、前記狭幅車に適した鉛直方向の間隔に設定されている、ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ方式機械式駐車装置。
【請求項3】
前記昇降リフトは、狭幅パレットが載る位置の幅方向両側に、昇降路の隙間を塞ぐプラットホームを有する、ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ方式機械式駐車装置。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−190611(P2011−190611A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57651(P2010−57651)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000198363)IHI運搬機械株式会社 (292)