Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
エレベータ用巻上ロープ
説明

エレベータ用巻上ロープ

【課題】硬度と密度、更には潤滑油の保持性能を兼ね備えた芯綱を用いることにより、型崩れせず、長寿命のエレベータ用巻上ロープを得る。
【解決手段】駆動用電動機に連結された駆動綱車2に巻き掛けられ、一端に乗客が乗るエレベータかご3が吊下げられ、かつ他端につり合いおもり4吊下げられたロープ1であって、繊維束からなる芯綱11と、この芯綱の外周に配置された鋼製ワイヤ121を撚り合わせた鋼製子縄12とから構成されたものにおいて、芯綱を構成する複数の芯綱子縄114を二層の繊維で構成し、各芯綱子縄の内部には潤滑油を保持できる繊維又はシート状の合成樹脂を繊維化したものを内層系子縄1141として配置し、各芯綱子縄の外周には内層よりも太い繊維又はシート状の合成樹脂を糸状化したものを外層系子縄1142として配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、耐疲労性が高くかつ経年的にも形状の安定化を図ることができるエレベータ用巻上ロープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータ用巻上ロープ1は、図1に示すように、駆動用電動機に連結された駆動綱車2に巻き掛けられ、巻上ロープ1の一端には乗客が乗るエレベータかご3が吊り下げられ、巻上ロープ1の他端にはつり合いおもり4が吊り下げられている。そして、駆動綱車2の回転により巻上ロープ1の両端に吊り下げられたかご3及びつり合いおもり4が昇降路内を昇降する。また、エレベータ用巻上ロープ1は、中央の繊維束からなる芯綱11と、この芯綱11の外周に配置された鋼製ワイヤを撚り合わせた鋼製子縄12とから構成されている。
【0003】
従来のエレベータ用巻上ロープ1の構成は、通常、JIS G 3525で規定された8×S(19)構成品が使用されており、中央の心材として天然のサイザル麻繊維や合成のポリプロピレン繊維による芯綱11が用いられる。この芯綱11は、図9及び図10に示すように、天然のサイザル麻繊維や合成のポリプロピレン繊維を束ねた多数のヤーン111を撚り合わせた芯綱子縄112を3本撚り合わせた構成、すなわち、俗に言う「三打ち」構成であり、芯綱11の外周に配置される鋼製ワイヤ121で構成された8本の鋼製子縄12と撚り合わされるときに、外周から圧縮整形されて高密度の心材となる。芯綱11が高密度となることで、外周の鋼製ワイヤ121で構成された鋼製子縄12がロープとしての形状を維持でき、長寿命の巻上ロープとなる。また、この芯綱11の構成は、ロープの径が大きくなっても変わらず、ロープの径の増加に伴ってヤーンの本数や径を増すのみで、芯綱子縄112の本数は3本である。
【0004】
従来のエレベータ用巻上ロープの製造方法を説明する。先ず天然のサイザル麻繊維又は合成のポリプロピレン繊維を束ねて撚りをかけ、ヤーン111を製作する。次に、複数のヤーン111を撚り合わせ、芯綱子縄112を製作する。そして、芯綱子縄112を3本撚り合わせ、芯綱11を製作する(図9参照)。次に、芯綱11の外周に鋼製ワイヤ121を撚り合わせた8本の鋼製子縄12を撚り合わせ、巻上ロープ1を製作する(図10参照)。この時、鋼製子縄12を押し付けて芯綱11を図10に示すように圧縮整形する。3本の芯綱子縄112は、鋼製子縄12と接触する頂点部が最も強く押し付けられた状態となり、その圧縮整形(変形)とともに密度が増加し、硬く締まった芯綱11となる。
【0005】
また、従来技術として、中央の繊維束からなる芯綱と、この芯綱の外周に配置された鋼製ワイヤを撚り合わせた鋼製子縄とから構成されたものにおいて、繊維束からなる芯綱は、繊維束を撚り合わせて製作され、芯綱の中央に芯体として配置された1本の芯子縄と、この芯子縄の外周に配置され、芯綱の外周となる4本又は6の芯綱子縄とから構成されたエレベータ用巻上ロープが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−292630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のエレベータ用巻上ロープでは、芯綱11が3本の芯綱子縄112を撚り合わせた芯無し構成であるため、鋼製ワイヤ121で構成された8本の鋼製子縄12と撚り合わされる際に、変形し易い箇所から圧縮変形して行くので、芯綱11の出来上がり密度にバラツキが生じて、強い所と弱い所が出来てしまう。最も変形の大きな芯綱11の頂点部は、押し付け力が大きければ大きいほど変形して高い密度となるが、変形が大き過ぎると芯綱11の繊維が切断して密度が高くならなかったり、形状が不安定になったりし易いという問題がある。また、ロープの径が大きくなると、芯綱の径が大きくなるため密度を上げたいが、芯綱の密度には限界があり無闇に大きくできない。また密度を上げるために芯綱を無理に押え付け過ぎると、芯綱が早く擦り減って鋼製子縄同士が接触してロープ表面に傷が付いて強度や寿命を損なうことになる。また、巻上ロープに吊り荷重や駆動綱車による曲げが加わると、ロープの径が大きいほど外周に配置された鋼製子縄が芯綱を締め付ける力が大きくなり、接触部でへたりが起きたり、摩耗して芯綱が細くなってしまう。また、芯綱の密度はロープの径に関係なく最大密度で作られるが、径が大きくなった分だけばね定数が小さくなり(ロープ径に反比例)、負荷時の径変化が大きくなって鋼製子縄間の隙間が小さくなって、早期に鋼製子縄同士が接触して摩耗や断線を生じ易くなり短寿命となる。これらのことが近年問題視されるようになってきた。
以上のことから、従来のエレベータ用巻上ロープでは、芯綱子縄3本の芯綱は、ロープ径12mm以下が限界であり、これ以上の径では適用できなかった。
【0008】
また、発明者は上記問題点を解決するために、芯綱を構成する芯綱子縄を3本から7本に増やした特許文献1を提案したが、各種の試験による評価で、芯綱子縄を7本にすると、1本が細くなるために強度が低下し切断し易くなるばかりか、繰り返し曲げによる屈曲で繊維がちぎれて型崩れし、ロープの寿命が低下することが判った。特に天然の麻繊維は脆くて切れ易いので、細い芯綱子縄には適さない。また、高い含油率を期待して用いられる合成繊維のスパン繊維は、繊維が細いために僅かに摩耗しただけで切断・粉体化し、型崩れを起こし易いために適さないことが判った。
【0009】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、硬度と密度、更には潤滑油の保持性能を兼ね備えた芯綱を用いることにより、型崩れせず、長寿命のエレベータ用巻上ロープを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るエレベータ用巻上ロープは、駆動用電動機に連結された駆動綱車に巻き掛けられ、一端に乗客が乗るエレベータかごが吊下げられ、かつ他端につり合いおもりが吊下げられたロープであって、繊維束からなる芯綱と、この芯綱の外周に配置された鋼製ワイヤを撚り合わせた鋼製子縄とから構成されたものにおいて、芯綱を構成する複数の芯綱子縄を二層の繊維で構成し、各芯綱子縄の内部には潤滑油を保持できる繊維又はシート状の合成樹脂を繊維化したものを内層系子縄として配置し、各芯綱子縄の外周には内層よりも太い繊維又はシート状の合成樹脂を糸状化したものを外層系子縄として配置したものである。
【0011】
また、内層系子縄としてシート状の合成樹脂にスリット加工して繊維化したものを配置し、外層系子縄としてシート状の合成樹脂を紙縒り状に糸状化したものである。
【0012】
また、芯綱の外周全体に外層合成樹脂被覆を施したものである。
【0013】
また、芯綱を構成する複数の芯綱子縄の各外周に外層合成樹脂被覆をそれぞれ施したものである。
【0014】
また、外層合成樹脂被覆よりも融点が高い繊維又はシート状の合成樹脂材料で芯綱を構成したものである。
【0015】
また、外層合成樹脂被覆をポリエチレン樹脂とし、繊維又はシート状の芯綱構成材料をポリエステル材で構成したものである。
【0016】
また、外層合成樹脂被覆の溶融点よりも高い温度の滴点の軟固体状潤滑油を塗布したものである。
【0017】
また、芯綱を構成する合成繊維の溶融温度が塗布する軟固体状潤滑油の滴点よりも高いものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、芯綱を構成する複数の芯綱子縄を二層の繊維で構成し、各芯綱子縄の内部には潤滑油を保持できる繊維又はシート状の合成樹脂を繊維化したものを内層系子縄として配置し、各芯綱子縄の外周には内層よりも太い繊維又はシート状の合成樹脂を糸状化したものを外層系子縄として配置したので、経年的にも潤滑油を保持し、しかも型崩れし難い芯綱となり、ロープ自身の長寿命を実現できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】エレベータの全体構成を概念的に示す構成図である。
【図2】先に提案したエレベータ用巻上ロープの芯綱の構造を示す構成図である。
【図3】先に提案したエレベータ用巻上ロープの芯綱の外周に鋼製子縄を撚り合わせて完成した巻上ロープの断面図である。
【図4】この発明の実施例1におけるエレベータ用巻上ロープの芯綱の構造を示す断面図である。
【図5】この発明の実施例2におけるエレベータ用巻上ロープの芯綱の構造を示す断面図である。
【図6】この発明の実施例2におけるエレベータ用巻上ロープの芯綱の外周に鋼製子縄を撚り合わせて完成した巻上ロープの断面図である。
【図7】この発明の実施例3におけるエレベータ用巻上ロープの芯綱の構造を示す断面図である。
【図8】この発明の実施例3におけるエレベータ用巻上ロープの芯綱の外周に鋼製子縄を撚り合わせて完成した巻上ロープの断面図である。
【図9】従来のエレベータ用巻上ロープの芯綱の構造を示す断面図である。
【図10】従来のエレベータ用巻上ロープの芯綱の外周に鋼製子縄を撚り合わせて完成した巻上ロープの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明のエレベータ用巻上ロープを説明する前に、先に提案したエレベータ用巻上ロープについて説明する。図2は先に提案したエレベータ用巻上ロープの芯綱の構造を示す構成図、図3は先に提案したエレベータ用巻上ロープの芯綱の外周に鋼製子縄を撚り合わせて完成した巻上ロープの断面図である。
先に提案したエレベータ用巻上ロープ1の芯綱11の構造は、図2に示すように、天然のサイザル麻繊維や合成のポリプロピレン繊維を束ねた多数のヤーン111を撚り合わせた1本の芯子縄113を中央に配置し、この芯子縄113の外周に6本の芯綱子縄112を互いに接するようにかつ子縄相互間の隙間が少なくなるように配置したという構成である。すなわち、芯綱11は、中央に配置した1本の芯子縄113の外周に、従来と同様に天然のサイザル麻繊維や合成のポリプロピレン繊維を束ねた多数のヤーン111を撚り合わせた芯綱子縄112を6本撚り合わせた構成であり、芯綱11の中心に1本の芯子縄113を配置したことと、この芯子縄113を中心にその外周に6本の芯綱子縄112を互いに接するようにほぼ正六角形に配列して子縄相互間の隙間を少なくすることにより、図3に示すように、鋼製ワイヤ121で構成された8本の鋼製子縄12と撚り合わされるときに、6本の芯綱子縄112がほぼ均等に圧縮整形されて変形するものである。
【0021】
しかし、前述したように、先に提案したエレベータ用巻上ロープでは、各種の試験による評価によれば、芯綱子縄を7本にすることにより、1本が細くなるために強度が低下し切断し易くなるばかりか、繰り返し曲げによる屈曲で繊維がちぎれて型崩れし、ロープの寿命が低下する。特に天然の麻繊維は脆くて切れ易いので、細い芯綱子縄には適さない。また、高い含油率を期待して用いられる合成繊維のスパン繊維は、繊維が細いために僅かに摩耗しただけで切断・粉体化し、型崩れを起こし易いために適さないものであった。
【実施例1】
【0022】
図1はエレベータの全体構成を概念的に示す構成図、図4はこの発明の実施例1におけるエレベータ用巻上ロープの芯綱の構造を示す断面図である。
エレベータ用巻上ロープ1は、図1に示すように、駆動用電動機に連結された駆動綱車2に巻き掛けられ、巻上ロープ1の一端には乗客が乗るエレベータかご3が吊下げられ、巻上ロープ1の他端にはつり合いおもり4が吊下げられている。そして、駆動綱車2の回転により巻上ロープ1の両端に吊下げられたかご3及びつり合いおもり4が昇降路内を昇降する。また、エレベータ用巻上ロープ1は、中央の繊維束からなる芯綱11と、この芯綱11の外周に配置された鋼製ワイヤを撚り合わせた鋼製子縄12とから構成されている。
【0023】
高い含油率を期待して用いられるスパン繊維による芯綱は、非常に細い(1000デニール程度の綿糸)スパン繊維を撚った糸を複数本撚り合わせて構成するため、繊維間に潤滑油を保持する特性が優れるが、ロープの張力変動による伸び縮みや綱車による屈曲作用などで繊維間が擦れて摩耗する。この摩耗は、極端に多いものではないが、細いスパン繊維の場合は僅かな摩耗でも繊維の断線を起こすことで、芯綱自体の型崩れにつながる。
そこで、この発明の実施例1においては、1本1本の繊維の許容摩耗量を増やすため、エレベータ用巻上ロープの芯綱を太い繊維で構成した。しかし、ただ、単に太くすると潤滑油を保持する特性が損なわれるため、芯綱子縄を二層の繊維で構成したものである。この発明の実施例1によるエレベータ用巻上ロープの芯綱の構造を図4に示す。図4において、芯綱11を構成する複数(図示では7本)の芯綱子縄114を、内層系子縄1141と、外層系子縄1142とからなる複数の層として配置構成している。そして、各芯綱子縄114の内部には、天然の麻繊維と同等に潤滑油を保持できるシート状の合成樹脂にスリット加工した4000デニール程度の繊維化したものを内層系子縄1141として配置し、各芯綱子縄114の外周には、シート状の合成樹脂を8000デニール程度の紙縒り状に糸状化したものを外層系子縄1142として配置し、潤滑油の保持性能と、芯綱の形状を安定化させる硬質化を図った芯綱11としたものである。そして、図示しないが、図3の場合と同様に、芯綱11の外周に配置される鋼製ワイヤ121で構成された8本の鋼製子縄12と撚り合わされるときに、外周から圧縮整形されて高密度の心材となる。これにより、経年的にも潤滑油を保持し、しかも型崩れし難い芯綱となり、ロープ自身の長寿命を実現できる。
【実施例2】
【0024】
図5はこの発明の実施例2におけるエレベータ用巻上ロープの芯綱の構造を示す断面図、図6はこの発明の実施例2におけるエレベータ用巻上ロープの芯綱の外周に鋼製子縄を撚り合わせて完成した巻上ロープの断面図である。
【0025】
上記実施例1では、芯綱11の内層系子縄1141と外層系子縄1142を繊維だけで構成しているので、実現できる硬さには限界がある。そのため、この発明の実施例2においては、図5に示すように、潤滑油を含浸した繊維を撚り合わせて構成した芯綱11の外周全体に、外層合成樹脂被覆13を施したものである。この外層合成樹脂被覆13は、ロープの径や構成に応じて材質や硬度を自由に選定・設定できるが、特性や価格、加工性からポリエチレン樹脂が適している。そして、図6に示すように、外周全体に外層合成樹脂被覆13が施された芯綱11は、その外周に配置される鋼製ワイヤ121で構成された8本の鋼製子縄12と撚り合わされるときに、外周から圧縮整形されて高密度の心材となる。
このような構成では、芯綱の外周全体が外層合成樹脂被覆13で構成されたことなる。芯綱自体を棒状の樹脂で構成することも考えられるが、棒状の樹脂による芯綱では曲げ剛性が高くなり過ぎて、柔軟性が無いロープになってしまう問題があるので、繊維層と樹脂膜層の複数の構成が好ましい。
【実施例3】
【0026】
図7はこの発明の実施例3におけるエレベータ用巻上ロープの芯綱の構造を示す断面図、図8はこの発明の実施例3におけるエレベータ用巻上ロープの芯綱の外周に鋼製子縄を撚り合わせて完成した巻上ロープの断面図である。
【0027】
上記実施例2では、潤滑油を含浸した繊維を撚り合わせて構成した芯綱11の外周全体に外層合成樹脂被覆13を施したが、芯綱11の外周全体に外層合成樹脂被覆13を施すと、ロープ全体の曲げ剛性が高くなる。そのため、この実施例3においては、図7に示すように、芯綱11の7本の芯綱子縄114毎の外周全体に、個別に外層合成樹脂被覆13を施したものである。個別の外層合成樹脂被覆13は、ロープの径や構成に応じて材質や硬度を自由に選定・設定できるが、特性や価格、加工性からポリエチレン樹脂が適している。そして、図8に示すように、7本の芯綱子縄114毎の外周全体に、個別に外層合成樹脂被覆13を施した芯綱11は、その外周に配置される鋼製ワイヤ121で構成された8本の鋼製子縄12と撚り合わされるときに、外周から圧縮整形されて高密度の心材となる。
この構成により、綱車での屈曲を受けたときに各子縄間で滑ることにより、容易に曲がるので柔軟なロープを提供することができる。また、各子縄間に外層合成樹脂被覆13が介在して子縄同士が接触するため、芯綱全体の硬度・密度が高くなり、型崩れし難いロープを実現でき、ロープの長寿命化を期待できる。
【実施例4】
【0028】
外層合成樹脂被覆13は、耐磨耗性やコスト面からポリエチレン樹脂で被覆することが好適であるが、押出機を用いた成型では、樹脂温度が例えば200℃程度になる。この温度下で融点が140℃前後のポリプロピレン繊維芯に被覆すると、繊維が溶融して一体化し、芯綱11が棒状に硬くなる恐れがある。そこで、この実施例4においては、少なくとも外層合成樹脂被覆13の融点以上、好ましくは外層合成樹脂被覆13の成型温度(例えば200℃)以上の融点を有するが高い繊維又はシート状の材料で芯綱を構成したものである。
【実施例5】
【0029】
例えば、外層合成樹脂被覆13として融点130℃前後のポリエチレン樹脂を被覆する場合、芯綱繊維の材料としては融点が260℃前後のポリエステルの繊維又はシート状のものが好適である。
【実施例6】
【0030】
外層合成樹脂被覆13を施工するには、押出機で溶融した樹脂を成型するが、このとき樹脂温度が例えば150℃を超えることになるため、通常のロープ潤滑油では溶融・液状化して垂れたり、樹脂と混ざったりするという問題がある。そこで、この実施例6においては、少なくとも外層合成樹脂被覆13の融点以上、好ましくは外層合成樹脂被覆13の成型温度(例えば150℃)以上の融点を有する潤滑油を塗布した芯綱としたものである。軟固体状の潤滑油は、無滴点タイプもしくはウレア系やベンナイトなどの非石鹸基タイプの高温用グリースが望ましい。
【実施例7】
【0031】
芯綱11を糸又は子縄の段階で軟固体状の潤滑油を含浸・塗布させるが、軟固体状では含浸できないため、加温して液状としてから塗布する必要がある。この加温する温度は、軟固体状潤滑油の滴点(グリース等が液状になる温度)よりも10〜20℃高くするため、合成繊維の材質によっては繊維が溶融して一体化し柔軟性が失われるばかりか、固体化した芯綱に潤滑油を保持する性能がなくなり、経年的なロープ寿命を損なうことになるという問題がある。そこで、この実施例7においては、一般環境で使用される潤滑油の加温する温度が100℃以下ならポリプロピレン繊維でも良いが、設置された周囲の温度が高い環境で使用される潤滑油の加温する温度が100〜150℃ならナイロンやポリエステル繊維が好適である。これらの溶融・軟化温度が高い繊維で芯綱を構成すれば、芯綱の柔軟性を損なうことなく高い含油量を確保できるので、ロープの安定した特性を長期間維持できるものである。
【符号の説明】
【0032】
1 エレベータ用巻上ロープ
2 駆動綱車
3 エレベータかご
4 つり合いおもり
11 芯綱
111 ヤーン
112 芯綱子縄
113 芯子縄
12 鋼製子縄
121 鋼製ワイヤ
114 芯綱子縄
1141 内層系子縄
1142 外層系子縄
13 外層合成樹脂被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用電動機に連結された駆動綱車に巻き掛けられ、一端に乗客が乗るエレベータかごが吊下げられ、かつ他端につり合いおもりが吊下げられたロープであって、繊維束からなる芯綱と、この芯綱の外周に配置された鋼製ワイヤを撚り合わせた鋼製子縄とから構成されたエレベータ用巻上ロープにおいて、
前記芯綱を構成する複数の芯綱子縄を二層の繊維で構成し、各芯綱子縄の内部には潤滑油を保持できる繊維又はシート状の合成樹脂を繊維化したものを内層系子縄として配置し、各芯綱子縄の外周には内層よりも太い繊維又はシート状の合成樹脂を糸状化したものを外層系子縄として配置したことを特徴とするエレベータ用巻上ロープ。
【請求項2】
内層系子縄としてシート状の合成樹脂にスリット加工して繊維化したものを配置し、外層系子縄としてシート状の合成樹脂を紙縒り状に糸状化したものを配置したことを特徴とする請求項1記載のエレベータ用巻上ロープ。
【請求項3】
芯綱の外周全体に外層合成樹脂被覆を施したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のエレベータ用巻上ロープ。
【請求項4】
芯綱を構成する複数の芯綱子縄の各外周に外層合成樹脂被覆をそれぞれ施したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のエレベータ用巻上ロープ。
【請求項5】
外層合成樹脂被覆よりも融点が高い繊維又はシート状の合成樹脂材料で芯綱を構成したことを特徴とする請求項3又は請求項4記載のエレベータ用巻上ロープ。
【請求項6】
外層合成樹脂被覆をポリエチレン樹脂とし、繊維又はシート状の芯綱構成材料をポリエステル材で構成したことを特徴とする請求項5記載のエレベータ用巻上ロープ。
【請求項7】
外層合成樹脂被覆の溶融点よりも高い温度の滴点の軟固体状潤滑油を塗布したことを特徴とする請求項3又は請求項4記載のエレベータ用巻上ロープ。
【請求項8】
芯綱を構成する合成繊維の溶融温度が塗布する軟固体状潤滑油の滴点よりも高いことを特徴とする請求項1記載のエレベータ用巻上ロープ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−32190(P2013−32190A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168139(P2011−168139)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】