説明

エレベータ用自動保守運転装置

【課題】乗場釦を使用せず個別エレベータが具備している機器を使用して、複数台のエレベータの中から一台のエレベータを特定し、自動保守運転を実行できるエレベータ用自動保守運転装置を提供する。
【解決手段】このエレベータ用自動保守運転装置は、乗りかご2の停止階を検出して停止階検出信号を出力する停止階検出手段29と、乗場戸の所定時間内における所定回数の開放を検出して開放検出信号を出力する乗場戸操作検出手段21と、保守運転設定手段24で保守運転に設定されているとき、停止階検出手段29が検出した停止階検出信号に示される階床で乗りかご2の走行方向を決定し、乗場戸操作検出手段21からの開放検出信号により保守準備走行手段25を起動する保守準備走行指令手段26と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台のエレベータの中からエレベータを特定し保守運転させるエレベータ用自動保守運転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの保守作業において作業員が一人の場合、エレベータかご上に設置した機器の点検や、昇降路内の機器の点検では、保守作業者がかご上に乗り込む必要があり、保守作業者はかご内の保守運転スイッチを投入し、かごを保守運転にしてから階段等で上階へ移動してかご上に乗り込まなければならず、移動に時間を要していた。
【0003】
また、昇降路底部の点検でも同様に、かごを停止状態にして、階段等で最下階に移動して昇降路底部に入出しなければならず、移動に時間を要していた。
【0004】
この一連の作業員の移動時間を短縮するため、かご内に設けた点検位置選択手段により一定時間経過後にかごを自動で保守点検可能な位置に運転させ、さらに乗場呼び釦を一定時間押下することにより、かごを自動で元の位置に復帰する保守用運転装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、かご位置情報手段と運転履歴の記憶手段を具備したエレベータにおいて、かご内に設けたかご内保守スイッチにより保守運転モードに切り替え、乗場呼び釦に対して所定の操作を行なうことにより、作業者がかご上乗降または昇降路底部に入出可能な位置までかごを自動で運転させ、さらに乗場呼び釦に所定の操作を行なうことにより、かごを自動で元の位置に復帰する保守運転装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−2553号公報
【特許文献2】特開2009−107806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に係る技術は、乗場階に設置されている乗場釦の操作をトリガに設定して自動保守運転を行うものであり、巻上機の回転軸に取り付けられた距離計により回転軸の回転数に基づいて走行距離を演算し、乗りかごの走行距離をカウントすることにより、乗りかごを所定の位置まで走行させるようにしたものであるが、基本的に1台(1系統)のエレベータにおける乗りかごが昇降運転される昇降路で保守点検を行うのに適したものであるため、複数台のエレベータで適用させることが困難である。
【0008】
その理由は、複数台のエレベータにおいて、一般に乗場釦の操作は群管理制御により共通するもの、コスト低減により乗場階の乗場釦の数はエレベータ台数より少ないため、特許文献1に係る技術をそのまま適用すると、乗場釦操作で自動保守運転を行うエレベータを特定することは不可能である。
【0009】
また、乗場釦を使用して自動保守運転を実施する際、乗場呼びが登録されてしまい、利用客が乗っている保守対象外の他のエレベータが乗場呼びに応答する無駄呼びを発生させることがあった。
【0010】
本発明の目的は、このような問題点を解決すべくなされたもので、乗場釦を使用せず個別エレベータが具備している機器を使用して、複数台のエレベータの中から一台のエレベータを特定し、自動保守運転を実行できるエレベータ用自動保守運転装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、建物に設けられる昇降路の多階床間を昇降するエレベータの乗りかごと、乗りかご内に設けられるかご内保守運転スイッチと当該乗りかごの上部に設けられるかご上保守運転スイッチとの少なくとも一方の投入により、エレベータを通常走行よりも遅い保守運転に切換える保守運転設定手段と、エレベータの保守作業のため、多階床に設けられた乗場戸を開放し、乗りかごの上部及び昇降路底部への移動がし易い所定の位置に当該乗りかごを走行させた後に停止させる保守準備走行手段と、を備えたエレベータ用自動保守運転装置において、乗りかごの停止階を検出して停止階検出信号を出力する停止階検出手段と、乗場戸の所定時間内における所定回数の開放を検出して開放検出信号を出力する乗場戸操作検出手段と、保守運転設定手段で保守運転に設定されているとき、停止階検出手段が検出した停止階検出信号に示される階床で乗りかごの走行方向を決定し、乗場戸操作検出手段からの開放検出信号により保守準備走行手段を起動する保守準備走行指令手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
このような構成では、複数台のエレベータが共用している乗場釦を使用せず、エレベータ一台毎に具備されている乗場戸操作検出手段からの開放検出信号により守準備走行手段を起動する保守準備走行指令手段を備えるため、群管理されている複数のエレベータの中から保守準備走行させるエレベータの特定を容易に行うことができる。
【0013】
また、請求項2の発明は、請求項1記載のエレベータ用自動保守運転装置において、保守準備走行指令手段は、停止階検出手段による停止階検出信号が最下階を示すときに上昇運転を設定し、最下階以外を示すときに下降運転を設定することを特徴とする。
【0014】
このような構成では、停止階検出手段で検出される停止階に応じて、保守準備走行指令手段により容易に走行方向を決定することができる。その理由は、通常、昇降路底部で作業する場合には、作業者が乗りかごで最下階まで行ってから乗りかごを上昇させ、最下階の乗場から昇降路底部に進入し、乗りかご上部で作業する場合には、作業者が乗りかごで最下階以外の最寄り階乗場へ行ってから乗りかごを下降させ、乗りかご上部に最寄り階乗場から乗り込むからである。
【0015】
更に、請求項3の発明は、請求項1又は2記載のエレベータ用自動保守運転装置において、昇降路底部に設けた任意のスイッチの操作を検出して第1の操作検出信号を出力する昇降路底部スイッチ検出手段を備え、昇降路底部スイッチ検出手段からの第1の操作検出信号と乗場戸操作検出手段からの開放検出信号とにより、乗りかごを最下階床に下降運転させることを特徴とする。
【0016】
このような構成では、作業者が昇降路底部で作業を終了して昇降路底部から脱出する際に、昇降路底部のスイッチを操作して乗りかごが稼働しないようにして昇降路底部から脱出し、最下階乗場から乗りかご内に乗り込むので、昇降路底部スイッチ検出手段からの第1の操作検出信号と乗場戸操作検出手段からの開放検出信号出力とにより乗りかごを作業者がいる最下階床に適確に下降運転させることができる。
【0017】
加えて、請求項4の発明は、請求項1〜3の何れか1項記載のエレベータ用自動保守運転装置において、乗りかごの上部に設けた任意のスイッチの操作を検出して第2の操作検出信号を出力する乗りかご上スイッチ検出手段を備え、乗りかご上スイッチ検出手段からの第2の操作検出信号と乗場戸操作検出手段からの開放検出信号とにより、乗りかごを直上階床に上昇運転させることを特徴とする。
【0018】
このような構成では、作業者が乗りかご上部で作業を終了して乗りかご上部から最寄り階へ脱出する際に、かご上部のスイッチを操作して乗りかごが稼働しないようにして乗りかご上部から脱出し、最寄り階乗場から乗りかご内に乗り込むので、乗りかご上スイッチ検出手段からの第2の操作検出信号と乗場戸操作検出手段からの開放検出信号とにより乗りかごを作業者がいる直上の最寄り階床に適確に上昇運転させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のエレベータ用自動保守運転装置によれば、複数台並列に稼働する群管理エレベータの中から、保守準備走行させるエレベータを乗場釦を使用せずに特定できるので、無駄呼びを作成することなく利用客へのサービスに支障を来さずに、簡易に自動保守運転を実行できるため、作業者が一人でも保守作業が可能となり、産業上有益である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1に係るエレベータ用自動保守運転装置を含むエレベータ設備の概略構成を示した図である。
【図2】図1に示すエレベータ用自動保守運転装置に係る動作処理を説明するために示したフローチャートである。
【図3】本発明の実施例2に係るエレベータ用自動保守運転装置に係る動作処理を説明するために示したフローチャートである。
【図4】本発明の実施例3に係るエレベータ用自動保守運転装置に係る動作処理を説明するために示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のエレベータ用自動保守運転装置について、幾つかの実施例を挙げ、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の実施例1に係るエレベータ用自動保守運転装置を含むエレベータ設備の概略構成を示した図である。このエレベータ設備は、1号機と2号機とに係るエレベータ2台が設置されている例を示し、1号機と2号機との機器構成で同一のものは、1号機の符号の数値に100を加えた数値で2号機の機器構成を示している。2台に関連しない構成部分については、1号機の構成部分と符号とを使用して説明する。また、特に断らない限り、主として1号機の機器構成を説明する。
【0023】
エレベータ1号機は昇降路1を有し、乗りかご2と釣り合い錘4とはメインロープ3を介して接続され、メインロープ3はトラクションマシン5により昇降する。トラクションマシン5にはエレベータの位置情報を検出するためのパルスエンコーダ6が具備されている。パルスエンコーダ6はエレベータの位置情報をエレベータ制御装置20の位置検出手段28と停止階検出手段29とに出力する。
【0024】
本実施例1では、エレベータ2台に対して各階の乗場には乗場呼び釦14a〜14cが1セットずつ設けられており、乗場呼び釦14a〜14cは1号機のエレベータ制御装置20の乗場呼び登録手段31に接続されている。1号機のエレベータ制御装置20の乗場呼び登録手段31は、乗場呼び登録信号を1号機のエレベータ制御装置20の走行制御手段30又は2号機のエレベータ制御装置120の走行制御手段130の乗場呼びに素早く対応できる適切な号機に供給し、各階乗場の乗場呼び釦14a〜14cの押下状態からエレベータの呼びを登録してエレベータを運行させる。
【0025】
また、各乗場には乗場戸12a〜12c、112a〜112cが設置されており、各乗場戸には乗場戸12a〜12c、112a〜112cの閉鎖状態を検出して信号を出力する乗場戸スイッチ13a〜13c、113a〜113cが具備されている。1号機エレベータの乗場戸スイッチ13a〜13cは直列に接続されているため、乗場戸12a〜12cの一つでも開扉されると、1号機の乗場戸スイッチ信号は開放となり、全扉が閉扉されていると乗場戸スイッチ信号は閉鎖状態となる。
【0026】
乗場戸スイッチ13a〜13cからの乗場戸スイッチ信号はエレベータ制御装置20の乗場戸操作検出手段21に供給され、乗場戸操作検出手段21は所定時間内に所定回数の乗場戸スイッチ13a〜13cの開放を検出すると、エレベータ制御装置20の保守準備走行手段25へ開放検出信号を出力し、これにより保守準備走行手段25が起動する。係る機能構成については、2号機の場合も全く同様に構成される。
【0027】
エレベータの乗場戸には乗場から図示しない外部開放金具を使用して、図示しない挿入穴に差し込み図示しない乗場戸のロックを外す機構が具備されている。これは、例えば利用客が乗りかご2の床と乗場床との隙間から昇降路底部に落し物をしたとき拾うため、昇降路底部に進入するときに最下階乗場戸を開ける際に用いたり、作業員が保守作業を行うため、昇降路底部に進入するときに最下階乗場戸を開ける際に用いたり、或いは乗りかご上部で作業するため、かご上に乗り込むときに最寄り階の乗場戸を開ける際に用いるものである。外部開放金具を用いて乗場戸のロックを外すと、係る乗場の乗場戸スイッチは開放となる仕組みとなっている。
【0028】
乗りかご2には、保守運転設定手段24にかご内で保守運転モードの設定を行わせるためのかご内保守運転スイッチ8と、かご上で保守運転モードの設定を行わせるためのかご上保守運転スイッチ9とが接続されている。また、かご上で保守作業を実施するときエレベータを停止させるかご上停止スイッチ10と、昇降路底部には昇降路底部で保守作業を実施するときエレベータを停止させる昇降路底部停止スイッチ7とが具備されている。更に、かご上保守運転スイッチ9及びかご上停止スイッチ10はエレベータ制御装置20の乗りかご上スイッチ検出手段22に接続され、昇降路底部停止スイッチ7はエレベータ制御装置20の昇降路底部スイッチ検出手段23に接続されている。かご上停止スイッチ10及び昇降路底部停止スイッチ7はエレベータ制御装置20の走行制御手段30にも接続されており、緊急時にはエレベータを緊急停止させるようになっている。
【0029】
その他、エレベータ制御装置20の保守運転設定手段24は、かご内保守運転スイッチ8とかご上保守運転スイッチ9との少なくとも一方の投入により、エレベータを通常走行よりも遅い保守運転に切換える設定を行うものである。また、エレベータ制御装置20の保守準備走行手段25に備えられる保守準備走行指令手段26は、保守運転設定手段24で保守運転に設定されているとき、停止階検出手段29が検出した停止階検出信号に示される階床で乗りかごの走行方向を決定し、乗場戸操作検出手段21からの開放検出信号により保守準備走行手段25を起動するためのものである。更に、エレベータ制御装置20の保守準備走行手段25に備えられる停止手段27は、保守準備走行指令手段26により起動した保守準備走行手段25を停止するためのものである。
【0030】
図2は、実施例1に係るエレベータ用自動保守運転装置に係る動作処理を説明するために示したフローチャートである。ここでは、エレベータ制御装置20におけるエレベータ用自動保守運転機能の動作処理の具体例を説明する。但し、前提条件として、最初に昇降路1の底部で作業するために作業員が乗りかご2から最下階へ降り、エレベータを上方へ保守準備走行させた後に最下階乗場から昇降路1の底部に入る第1の作業工程を説明し、次に乗りかご2上で上部作業するために作業員が乗りかご2から最下階以外の乗場階(例えば2階の乗場)で降り、降りた乗場から乗りかご2上に乗り込むためにエレベータを下方へ保守準備走行させる第2の作業工程を説明する。
【0031】
第1の作業工程では、まず昇降路1の底部で作業するために作業員が乗りかご2で最下階へ行き、最下階に到着した作業員は、乗りかご2内のかご内保守スイッチ8を投入(手順101)すると、保守運転設定手段24はエレベータをかご内保守運転に設定(手順102)する。
【0032】
次に、作業者はかご内保守運転にて略図するかご内保守運転上昇釦を操作し、略図するかご戸と乗場戸12aとの係合が外れるまで乗りかご2を上昇走行(手順103)させて停止させる。更に、作業者は、最下階乗場に降りるため、かご戸、乗場戸12aを開きかご中より最下階乗場に出る(手順104)ようにした後、かご戸、乗場戸12aを閉じる(手順105)。
【0033】
このとき、かご内保守スイッチ8の投入により保守運転設定手段24はエレベータをかご内保守運転に設定しているので、引き続いて停止階検出手段29により停止階検出信号に基づいてエレベータ停止階が最下階であるか否かの判定(手順106)を行う。この判定の結果、乗りかご2が最下階に停止しているのを検出すると、保守準備走行手段25の保守準備走行指令手段26は上方走行の保守準備走行指令(手順107)を行って上昇運転を設定するが、乗りかご2が最下階に停止していないのを検出すると、保守準備走行手段25の保守準備走行指令手段26は下方走行の保守準備走行指令(手順108)を行って下降運転を設定する。
【0034】
何れの場合も、その後は作業員が外部開放金具を用いて、現在居る乗場で所定時間に所定回数行う乗場戸12aのロックを外す開放操作を実施し、乗場戸スイッチ13aのオン/オフを乗場戸操作検出手段21が検出して得た開放検出信号により保守準備走行手段25を起動(手順109)する。そこで、保守準備走行手段25は走行制御手段30に保守準備走行指令手段26の定めた方向にエレベータを走行させる指示を発出し、走行制御手段30が係る指示に従ってエレベータを走行(手順110)させる。
【0035】
このとき、作業者が安全に昇降路1の底部に入れる高さとなる所定の距離まで走行したか否かをパルスエンコーダ6からの出力により位置検出手段28が走行距離をチェックすることにより、所定の距離を走行したか否かの判定(手順111)を行う。この判定の結果、所定距離走行していなければ、エレベータを走行(手順110)させる前にリターンして処理を繰り返すが、所定距離走行していれば、エレベータ停止(手順112)とする。そこで、作業者は、乗りかご2の停止を確認し、外部開放金具を用いて乗場戸12aを開け、昇降路底部停止スイッチ7を投入して、昇降路1の底部に進入して保守作業を実施する。
【0036】
これに対し、第2の作業工程では、前提として、乗りかご2上で上部作業するために作業員が乗りかご2で2階へ行き、2階へ到着した作業員は、乗りかご2内のかご内保守スイッチ8を投入(手順101)すると、保守運転設定手段24はエレベータをかご内保守運転に設定(手順102)する。
【0037】
次に、作業者は略図するかご内保守運転上昇釦を操作し、略図するかご戸と乗場戸12bとの係合が外れるまで乗りかご2を上昇走行(手順103)させて停止させる。更に、作業者は、2階乗場に降りるため、かご戸、乗場戸12bを開きかご中より2階乗場に出る(手順104)ようにした後、かご戸、乗場戸12bを閉じる(手順105)。
【0038】
このとき、かご内保守スイッチ8の投入により保守運転設定手段24はエレベータをかご内保守運転に設定しているため、引き続いて停止階検出手段29により停止階検出信号に基づいてエレベータ停止階が最下階であるか否かの判定(手順106)を行う。この判定の結果、乗りかご2が最下階以外の階に停止しているのを検出すると、保守準備走行手段25の保守準備走行指令手段26は下方走行の保守準備走行指令(手順108)を行って下降運転を設定するが、乗りかご2が最下階に停止しているのを検出すると、保守準備走行手段25の保守準備走行指令手段26は上方走行の保守準備走行指令(手順107)を行って上昇運転を設定する。
【0039】
何れの場合も、その後は作業員が外部開放金具を用いて、現在居る乗場で所定時間に所定回数行う乗場戸12bのロックを外す開放操作を実施し、乗場戸スイッチ13bのオン/オフを乗場戸操作検出手段21が検出して得た開放検出信号により保守準備走行手段25を起動(手順109)する。そこで、保守準備走行手段25は走行制御手段30に保守準備走行指令手段26の定めた方向にエレベータを走行させる指示を発出し、走行制御手段30が係る指示に従ってエレベータを走行(手順110)させる。
【0040】
このとき、作業者が安全に乗りかご2の上部に乗り込める高さとなる所定の距離まで走行したか否かをパルスエンコーダ6からの出力により位置検出手段28が走行距離をチェックすることにより、所定の距離を走行したか否かの判定(手順111)を行う。この判定の結果、所定距離走行していなければ、エレベータを走行(手順110)させる前にリターンして処理を繰り返すが、所定距離走行していれば、エレベータ停止(手順112)とする。そこで、作業者は、乗りかご2の停止を確認し、外部開放金具を用いて乗場戸12bを開け、かご上停止スイッチ10を投入して、乗りかご2の上部に乗り込んで保守作業を実施する。
【実施例2】
【0041】
図3は、本発明の実施例2に係るエレベータ用自動保守運転装置に係る動作処理を説明するために示したフローチャートである。ここでは、エレベータ制御装置20におけるエレベータ用自動保守運転機能の動作処理の具体例として、作業者が所要の作業を終了して昇降路1の底部から乗場に出て乗りかご2内に乗込む場合の第3の作業工程を説明する。但し、ここでは前提条件として、エレベータは図2に示したフローチャートで既にかご内保守運転スイッチ8が投入され、保守運転設定手段24によりかご内保守運転が設定されているものとする。
【0042】
第3の作業工程では、前提として、作業者が昇降路1の底部での作業を終了して昇降路1の底部から乗場に出る場合、昇降路底部停止スイッチ7を投入(手順201)してエレベータを停止させる。そこで、作業者は乗場ドア12aを開け、昇降路1の底部から最下階乗場に出る(手順202)ようにした後、昇降路底部停止スイッチ7を復帰(手順203)させてエレベータを走行可能にしてから乗場に立ち、最下階乗場戸12aを閉じる(手順204)。
【0043】
このとき、昇降路底部スイッチ検出手段23は昇降路底部停止スイッチ7の操作を検出した第1の操作検出信号のデータを記憶しているため、引き続いて昇降路底部停止スイッチ7が操作有りか否かの判定(手順205)を行う。この判定の結果、昇降路底部停止スイッチ7の操作が無ければ(操作を記憶していなければ)、エレベータを走行させず動作処理を終了するが、昇降路底部停止スイッチ7の操作が有れば(操作を記憶していれば)、保守準備走行指令手段26は下方走行の保守準備走行指令(手順206)を行って下降運転を設定する。
【0044】
更に、その後は作業員が外部開放金具を用いて、現在居る乗場最下階で所定時間に所定回数行う乗場戸12aのロックを外す開放操作を実施し、乗場戸スイッチ13aのオン/オフを乗場戸操作検出手段21が検出して得た開放検出信号により保守準備走行手段25を起動(手順207)する。保守準備走行手段25は走行制御手段30に保守準備走行指令手段26の定めた方向に、エレベータを走行させる指示を発出し、走行制御手段30が係る指示に従ってエレベータを走行(手順208)させる。
【0045】
このとき、作業者が安全に乗りかご2内に乗り込める最下階乗場の位置まで走行したか否かをパルスエンコーダ6からの出力により位置検出手段28が走行距離をチェックすることにより、所定の距離を走行したか否かの判定(手順209)を行う。この判定の結果、所定距離走行していなければ、エレベータを走行(手順208)させる前にリターンして処理を繰り返すが、所定距離走行していればエレベータ停止(手順210)とした後、作業員が乗りかご2内に乗り込むため、かご戸・乗場戸12aを開放する(手順211)。そこで、この後に作業者が乗りかご2に乗り込むことで動作処理が終了となる。
【0046】
要するに、第3の作業工程は、エレベータ制御装置20におけるエレベータ用自動保守運転機能として、昇降路底部スイッチ検出手段23からの第1の操作検出信号と乗場戸操作検出手段21からの開放検出信号とにより、乗りかご2を最下階床に下降運転させるものである。
【実施例3】
【0047】
図4は、本発明の実施例3に係るエレベータ用自動保守運転装置に係る動作処理を説明するために示したフローチャートである。ここでは、エレベータ制御装置20におけるエレベータ用自動保守運転機能の動作処理の具体例として、作業者が所要の作業を終了して乗りかご2の上部から乗場に降りて乗りかご2内に乗込む場合の第4の作業工程を説明する。但し、ここでは前提条件として、エレベータは図2に示したフローチャートで既にかご内保守運転スイッチ8が投入され、保守運転設定手段24によりかご内保守運転が設定されており、その後に乗りかご2上の上部作業で必要に応じてかご上保守運転スイッチ9を使用するものとする。
【0048】
第4の作業工程では、前提として、作業者が乗りかご2上での上部作業を終了して乗りかご2上部から最寄り階乗場(ここでは2階)に出る場合、かご上停止スイッチ10を投入(手順301)してエレベータを停止させる。そこで、作業者は乗場ドア12bを開け、乗りかご2上部から最寄りの2階乗場に出る(手順302)ようにした後、乗りかご2上での上部作業時に使用したかご上保守運転スイッチ9を復帰してかご内保守運転を有効にし、かご上停止スイッチ10を復帰(手順303)させてエレベータを走行可能にしてから最寄り階の2階乗場に立ち、乗場戸12bを閉じる(手順304)。
【0049】
このとき、乗りかご上スイッチ検出手段22はかご上停止スイッチ10の操作を検出した第2の操作検出信号のデータを記憶しているため、引き続いてかご上停止スイッチ10が操作有りか否かの判定(手順305)を行う。この判定の結果、かご上停止スイッチ10の操作が無ければ(操作を記憶していなければ)、エレベータを走行させず動作処理を終了するが、かご上停止スイッチ10の操作が有れば(操作を記憶していれば)、保守準備走行指令手段26は上方走行の保守準備走行指令(手順306)を行って上昇運転を設定する。
【0050】
更に、その後は作業員が外部開放金具を用いて、現在居る2階乗場で所定時間に所定回数行う乗場戸12bのロックを外す開放操作を実施し、乗場戸スイッチ13bのオン/オフを乗場戸検出手段21が検出して得た開放検出信号により保守準備走行手段25を起動(手順307)する。保守準備走行手段25は走行制御手段30に保守準備走行指令手段26の定めた方向に、エレベータを走行させる指示を発出し、走行制御手段30が係る指示に従ってエレベータを走行(手順308)させる。
【0051】
このとき、作業者が安全に乗りかご2内に乗り込める2階乗場の位置まで走行したか否かをパルスエンコーダ6からの出力により位置検出手段28が走行距離をチェックすることにより、所定の距離を走行したか否かの判定(手順309)を行う。この判定の結果、所定距離走行していなければ、エレベータを走行(手順308)させる前にリターンして処理を繰り返すが、所定距離走行していれば、エレベータ停止(手順310)とした後、作業員が乗りかご2内に乗り込むため、かご戸・乗場戸12bを開放する(手順311)。そこで、この後に作業者が乗りかご2に乗り込むことで動作処理が終了となる。
【0052】
要するに、第4の作業工程は、エレベータ制御装置20におけるエレベータ用自動保守運転機能として、乗りかご上スイッチ検出手段22からの第2の操作検出信号と乗場戸操作検出手段21からの開放検出信号とにより、乗りかご2を直上階床に上昇運転させるものである。
【0053】
尚、上述した各実施例では、2号機系統のエレベータ設備について説明したが、本発明のエレベータ用自動保守運転装置は、3号機系統以上のエレベータ設備についても適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1、101 昇降路
2、102 乗りかご
3、103 メインロープ
4、104 釣り合い重り
5、105 トラクションマシン
6、106 パルスエンコーダ
7、107 昇降路底部停止スイッチ
8、108 かご内保守運転スイッチ
9、109 かご上保守運転スイッチ
10、110 かご上停止スイッチ
12a、12b、12c、112a、112b、112c 乗場戸
13a、13b、13c、113a、113b、113c 乗場戸スイッチ
14a、14b、14c 乗場呼び釦
20、120 エレベータ制御装置
21、121 乗場戸操作検出手段
22、124 乗りかご上スイッチ検出手段
23、123 昇降路底部スイッチ検出手段
24、124 保守運転設定手段
25、125 保守準備走行手段
26、126 保守準備走行指令手段
27、127 停止手段
28、128 位置検出手段
29、129 停止階検出手段
30、130 走行制御手段
31 乗場呼び登録手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に設けられる昇降路の多階床間を昇降するエレベータの乗りかごと、前記乗りかご内に設けられるかご内保守運転スイッチと当該乗りかごの上部に設けられるかご上保守運転スイッチとの少なくとも一方の投入により、前記エレベータを通常走行よりも遅い保守運転に切換える保守運転設定手段と、前記エレベータの保守作業のため、多階床に設けられた乗場戸を開放し、前記乗りかごの上部及び昇降路底部への移動がし易い所定の位置に当該乗りかごを走行させた後に停止させる保守準備走行手段と、を備えたエレベータ用自動保守運転装置において、
前記乗りかごの停止階を検出して停止階検出信号を出力する停止階検出手段と、前記乗場戸の所定時間内における所定回数の開放を検出して開放検出信号を出力する乗場戸操作検出手段と、前記保守運転設定手段で前記保守運転に設定されているとき、前記停止階検出手段が検出した前記停止階検出信号に示される階床で前記乗りかごの走行方向を決定し、前記乗場戸操作検出手段からの前記開放検出信号により前記保守準備走行手段を起動する保守準備走行指令手段と、を備えたことを特徴とするエレベータ用自動保守運転装置。
【請求項2】
請求項1記載のエレベータ用自動保守運転装置において、前記保守準備走行指令手段は、前記停止階検出手段による前記停止階検出信号が最下階を示すときに上昇運転を設定し、最下階以外を示すときに下降運転を設定することを特徴とするエレベータ用自動保守運転装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のエレベータ用自動保守運転装置において、前記昇降路底部に設けた任意のスイッチの操作を検出して第1の操作検出信号を出力する昇降路底部スイッチ検出手段を備え、前記昇降路底部スイッチ検出手段からの前記第1の操作検出信号と前記乗場戸操作検出手段からの前記開放検出信号とにより、前記乗りかごを最下階床に下降運転させることを特徴とするエレベータ用自動保守運転装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載のエレベータ用自動保守運転装置において、前記乗りかごの上部に設けた任意のスイッチの操作を検出して第2の操作検出信号を出力する乗りかご上スイッチ検出手段を備え、前記乗りかご上スイッチ検出手段からの前記第2の操作検出信号と前記乗場戸操作検出手段からの前記開放検出信号とにより、前記乗りかごを直上階床に上昇運転させることを特徴とするエレベータ用自動保守運転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−107759(P2013−107759A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255227(P2011−255227)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】