説明

エレベータ用調速機

【課題】エレベータ用調速機において、かごの昇降速度が過速度未満である場合におけるスイッチの誤作動を防止する。
【解決手段】調速機10は、軸12に固定され、かごに接続される調速用ロープ46が巻き掛けられた綱車14と、綱車14の側面に取り付けられ、綱車14の回転により径方向外側に変位する作動子26を有するフライウエイト18と、軸14を回転可能に支持する基台16と、基台16に取り付けられ、作動子26との接触により操作されるスイッチレバー30を有するスイッチ28とを備える。そして、スイッチレバー30は、綱車14の外周より径方向内側に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かごの過速度を検出した場合、かごを非常停止させるエレベータ用調速機に関し、特にかごを非常停止させるスイッチの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エレベータのかごの過速度を検出した場合、かごを非常停止させる装置としてエレベータ用調速機が知られている(例えば、下記特許文献1,2)。従来のエレベータ用調速機について、図4を用いて説明する。図4は、従来のエレベータ用調速機の構成を示す図である。
【0003】
エレベータ用調速機(以降、単に「調速機」と記す)110は、軸112に固定された綱車114と、軸112を回転可能に支持する基台116とを有する。
【0004】
綱車114は、これの側面に、軸112を介して互いに対峙して配置された一対のフライウエイト118を有する。フライウエイト118は、綱車114に回転自在に取り付けられ、綱車114の回転による遠心力により径方向外側に回動する。
【0005】
一対のフライウエイト118は、リンク120によって互いに連結されている。一方のフライウエイト118の一端には、作動爪122が固定されている。また、一方のフライウエイト118と綱車114との間には、遠心力に対抗する平衡ばね124が設けられている。さらに、一方のフライウエイト118の他端、すなわち作動爪122の反対側には、作動子126が設けられている。作動子126は、綱車114の回転により、フライウエイト118とともに綱車114の径方向外側へと変位する。
【0006】
調速機110は、かごを非常停止させるスイッチ128を有し、このスイッチ128は、基台116に取り付けられている。スイッチ128は、作動子126に対向して配置され、作動子126との接触により操作されるスイッチレバー130を有する。
【0007】
また、調速機110は、軸112に固定され、作動爪122に対向して配置された爪車132と、基台116の支持された制動腕134と、制動腕134に取り付けられた制動片136とを有する。
【0008】
また、調速機110は、一端が爪車132の縁部に回動可能に支持された制動棒138を有する。制動棒138の他端には、ねじ棒が設けられ、このねじ棒が制動腕134の上端部に対して移動可能に貫通している。そして、制動棒138の他端には、ばね受け140を保持するナット142が設けられている。ばね受け140と制動腕134間のねじ棒には圧縮コイルばね144が設けられている。
【0009】
そして、調速機110の綱車114には、調速用ロープ146が巻き掛けられている。調速用ロープ146の一側は、図示しないが、かごに接続されている。
【0010】
次に、調速機110の動作について説明する。かごの昇降に同期して調速用ロープ146が循環移動することで綱車114が回転する。このとき、フライウエイト118は、綱車114とともに公転しながら、綱車114の回転速度、すなわち、かごの速度に対応した遠心力を受ける。そして、かごの速度が所定値以上となると、フライウエイト118は、平衡ばね124に逆らって自転変位する。
【0011】
さらに、かごの昇降速度が第1過速度(通常は定格速度の1.3倍程度)に達すると、遠心力によるフライウエイト118の回動によって、作動子126がスイッチ128のスイッチレバー130に当接してスイッチレバー130を回動させる。このスイッチレバー130の回動によりスイッチ128が作動して、エレベータを駆動する駆動装置(図示せず)の電源が遮断されるので、かごを停止させることができる。
【0012】
しかし、エレベータ部品の破損などにより、駆動装置が停止しても、かごが停止することなく下降を続ける場合がある。この場合、かごの下降速度が第2過速度(通常は定格速度の1.4倍程度)に達すると、この速度に対応した綱車114の回転による遠心力でフライウエイト118がさらに回動する。この回動に伴い、作動爪122が爪車132の爪に係合する。この係合により、爪車132は綱車114と同じ方向に回動するので、制動棒138が変位して圧縮コイルばね144を介して制動腕134が綱車114方向に動作する。この動作により、制動片136が調速用ロープ146に押し付けられ、調速用ロープ146が制動される。そして、調速用ロープ146の制動により、かごの非常止め装置(図示せず)が動作して、かごを非常停止させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平6−1561号公報
【特許文献2】特開2008−94544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したような従来の調速機110においては、かごの昇降速度が第1過速度に達した場合、フライウエイト118の作動子126がスイッチレバー130に当接することにより、スイッチ128が作動する。しかしながら、かごの速度が第1過速度未満であっても、スイッチ128が誤作動してしまうという問題がある。
【0015】
このスイッチ128の誤作動について、図5を用いて説明する。図5は、図4のB方向から見た図である。昇降路内にある埃などの異物148が調速用ロープ146に付着する場合がある。そうすると、図に示されるように、この異物148が調速用ロープ146によって調速機110まで運ばれてスイッチレバー130に当接する可能性がある。その結果、かごの昇降速度が第1過速度に達していないにもかかわらず、スイッチ128が誤作動してしまう。この誤作動により、かごが非常停止するので、当然に乗客に迷惑がかかってしまう。
【0016】
本発明の目的は、かごの昇降速度が過速度未満である場合におけるスイッチの誤作動を確実に防止することができるエレベータ用調速機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、軸に固定され、かごに接続される調速用ロープが巻き掛けられた綱車と、綱車の側面に取り付けられ、綱車の回転により径方向外側に変位する作動子を有するフライウエイトと、軸を回転可能に支持する基台と、基台に取り付けられ、作動子との接触により操作されるスイッチレバーを有するスイッチと、を備え、スイッチの作動により、かごを非常停止させるエレベータ用調速機において、スイッチレバーは、綱車の外周より径方向内側に設けられることを特徴とする。
【0018】
また、スイッチレバーは、このスイッチレバーの先端に、作動子に対向し、作動子に当接する当接部と、当接部を支持する支持部と、を有し、支持部は、径方向に延びるように形成されることができる。
【0019】
また、スイッチは、少なくとも、綱車の外周とスイッチレバーとの間に位置するように形成されるカバーを有することができる。
【0020】
また、カバーは、綱車の側面外側から、スイッチレバーを覆うように形成されることが好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のエレベータ用調速機によれば、かごの昇降速度が過速度未満である場合におけるスイッチの誤作動を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係るエレベータ用調速機の構成を示す図である。
【図2】図1のA方向から見た図である。
【図3】別の実施形態のエレベータ用調速機の構成を示す図である。
【図4】従来のエレベータ用調速機の構成を示す図である。
【図5】図4のB方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るエレベータ用調速機の実施形態について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るエレベータ用調速機の構成を示す図である。なお、背景技術で図4,5を用いて説明した構成要素と同じものについては、百の位の数字を除した同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0024】
調速機10は、軸12に固定された綱車14と、軸12を回転可能に支持する基台16とを有する。綱車14には、かご(図示せず)に接続される調速用ロープ46が巻き掛けられている。
【0025】
綱車14は、これの側面に、軸12を介して互いに対峙して配置された一対のフライウエイト18を有する。フライウエイト18は、綱車14に回転自在に取り付けられ、綱車14の回転による遠心力により径方向外側に回動する。
【0026】
一方のフライウエイト18の端部には、作動子26が設けられている。作動子26は、綱車14の回転により、フライウエイト18とともに綱車14の径方向外側へと変位する。
【0027】
調速機10は、かごを非常停止させるスイッチ28を有する。スイッチ28は、基台16に取り付けられている。スイッチ28は、作動子26との接触により操作されるスイッチレバー30を有する。
【0028】
本実施形態のスイッチレバー30は、綱車14の外周より径方向内側に設けられることを特徴とする。この構成により、昇降路内にある埃などの異物48が調速用ロープ46に付着して綱車14まで運ばれたとしても、図1に示されるように、その異物48は綱車14の外周より径方向外側に位置するので、異物48とスイッチレバー30との当接が防止される。よって、かごの昇降速度が第1過速度に達していないにもかかわらず、異物48に起因するスイッチ28の誤作動を確実に防止することができる。
【0029】
次に、スイッチ28の具体的な構成について説明する。スイッチ28は、綱車14の側面側の基台16に取り付けられている。スイッチレバー30は、このスイッチレバー30の先端に、作動子26に対向し、作動子26に当接する当接部30aと、当接部30aと支持する支持部30bとを有する。支持部30bは、綱車14の径方向に延びるように形成される。つまり、径方向外側の支持部30bの一端が、当接部30aに接続し、径方向内側側の支持部30bの他端が、スイッチ28に接続される。したがって、スイッチ28は、当接部30aより綱車14の径方向内側に位置する。
【0030】
このようなスイッチ28の構成により、上述のように異物48によるスイッチ28の誤作動を防止することができるとともに、スイッチ28の取り付け位置が綱車14の側面側の基台16であるので、取り付けが容易であり、かつ調速機10の設置スペースの増大を防止することができる。特に、既設の調速機10の誤作動対策として、スイッチ28のみ交換する場合には有用である。
【0031】
また、スイッチ28は、スイッチレバー30と異物48の接触を防止するカバー50を有する。カバー50は、少なくとも、綱車14の外周とスイッチレバー30との間に位置するように形成される。このような構成により、仮に、異物48が綱車14の外周より径方向内側にはみ出ていたとしても、カバー50によって、スイッチレバー30への接触を確実に防止することができる。
【0032】
本実施形態のカバー50の構成について、図1,2を用いて説明する。図2は、図1のA方向から見た図である。カバー50は、綱車14の側面外側から、スイッチレバー30を覆うように形成されることが好適である。この構成により、調速用ローブ46に付着する異物48はもちろんのこと、調速機10の外部から飛来する異物に対しても、スイッチレバー30との接触を防止することができる。なお、既設の調速機10に、このようなカバー50を取り付ける場合、基台16の側面の一部を、スイッチ28の支持部を残しつつ切欠く必要がある。
【0033】
本実施形態においては、スイッチレバー30が当接部30aと支持部30bを有する場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。スイッチレバー30が、綱車14の外周より径方向内側に位置するのであれば、他の態様でもよい。例えば、図3に示されるように、スイッチレバー30が、綱車14の外周より径方向内側に位置し、単に軸12方向に延びるように形成されてもよい。この場合であっても、上記実施形態と同様、スイッチ28は、綱車14の側面側の基台16に取り付けられる。また、図に示されていないが、綱車14の外周とスイッチレバー30との間に位置するようにカバー50を取り付けることもできる。
【符号の説明】
【0034】
10 エレベータ用調速機、12 軸、14 綱車、16 基台、18 フライウエイト、26 作動子、28 スイッチ、30 スイッチレバー、46 調速用ロープ、48 異物、50 カバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸に固定され、かごに接続される調速用ロープが巻き掛けられた綱車と、
綱車の側面に取り付けられ、綱車の回転により径方向外側に変位する作動子を有するフライウエイトと、
軸を回転可能に支持する基台と、
基台に取り付けられ、作動子との接触により操作されるスイッチレバーを有するスイッチと、
を備え、
スイッチの作動により、かごを非常停止させるエレベータ用調速機において、
スイッチレバーは、綱車の外周より径方向内側に設けられる、
ことを特徴とするエレベータ用調速機。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータ用調速機において、
スイッチレバーは、
このスイッチレバーの先端に、作動子に対向し、作動子に当接する当接部と、
当接部を支持する支持部と、
を有し、
支持部は、径方向に延びるように形成される、
ことを特徴とするエレベータ用調速機。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエレベータ用調速機において、
スイッチは、少なくとも、綱車の外周とスイッチレバーとの間に位置するように形成されるカバーを有する、
ことを特徴とするエレベータ用調速機。
【請求項4】
請求項3に記載のエレベータ用調速機において、
カバーは、綱車の側面外側から、スイッチレバーを覆うように形成される、
ことを特徴とするエレベータ用調速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−250826(P2012−250826A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126142(P2011−126142)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】