説明

エレベータ用電気安全システム

【課題】 迅速かつ安全であって、安全用の構成部品への負荷を緩和するエレベータ用電気安全システムを提供することである。
【解決手段】 エレベータかご(2)を駆動するモータ(21)に接続される制御装置(1)を備えるエレベータ用電気安全システムが提供される。この安全システムは、安全制御装置(10)と、前記制御装置(1)が、少なくとも1つのセンサ(4,5,5’,6,7,9)からデータを受信するバスノードとの通信を可能にするバス(3)と、を備え、前記制御装置(1)は、前記モータ(21)が停止することにより前記安全制御装置(10)によって開放状態にすることが可能な安全回路(11)との通信が可能で、前記安全回路(11)が前記モータ(21)の停止を前記制御装置(1)に通知する手段を有する、あるいは、前記モータ(21)の停止が前記バスノードから前記制御装置(1)へ送信されるデータに基づいて前記制御装置(1)により検出可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに従ったエレベータ用電気安全システムに関する。
【背景技術】
【0002】
EP1159218B1は、危険な状態であると判定された場合に、安全停止するエレベータ用電気安全システムを開示する。この電気安全システムは、安全制御装置と、バスノードを構成するマイクロプロセッサおよび様々な構成部品に基づいて制御装置との間で制御信号やデータ信号をやり取りする通信バスとから構成される。バスノードは、センサ、コンタクト、スイッチにインターフェイスを提供している。安全制御装置は、バスノードから受信したデータを処理し、危険な状態があるか否かを判定する。危険な状態の場合には、危険な状態を示すステータス信号が制御装置に送信されるとともに、安全制御装置がエレベータの駆動および制動装置に対して停止信号を送信する。
【0003】
EP1159218B1により公知の安全制御装置の場合、エレベータの制御装置がバスノードからの何らかの情報を処理することは意図されていないが、エレベータの制御装置がより迅速に反応できるように、実際は制御装置がバスノードと安全制御装置から処理済みの情報を取得する。安全制御装置は、自装置でセーフティタスクを実行するという基本的な役割を果たしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、迅速かつ安全であって、安全用の構成部品への負荷が緩和される、請求項1のプリアンブルに従ったエレベータ用電気安全システムを提供することである。これにより、さらに多くの情報へのアクセスが可能となり、安全性が向上し、保守における改善が期待される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は請求項1の特徴によって達成される。
結果として、エレベータの制御装置によって、安全制御装置等の安全用の構成部品への負荷が緩和される。実際に、安全制御装置から、危険を引き起こす恐れのある事態(possible hazard potential)に対して、停止(shut-off)あるいは安全な状態へ移行している、または、移行したという通知を受けることはない。
本発明について、添付の図面で示される代表的な実施形態を用いて以下に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】エレベータかごの駆動に関係するブロック図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1に、エレベータのブロック図を示す。制御装置1は、参照番号2にて模式的に示されるエレベータかご(elevator car)を制御するために備えられる。
エレベータかご2を駆動するモータ21は、周波数変換器20によりバス3に接続される。
制御装置1は、バス3を介して、例えば、フロアレベルスイッチ4、ドアコンタクト5、コマンド送信機6、エレベータかご2のドアモータ8用の安全アクチュエータ7として示される構成部品とバスノードにより通信を行う。制御装置1は、これらの構成部品のインターフェイスとなるバスノードによりバス3を介して、これらの構成部品からの信号、すなわち、特定の階への移動要求等をエレベータかご2のコマンド送信機6を介して受信する。
【0008】
また、エレベータかご2が位置している階を推定可能なフロアレベルスイッチ4から信号が受信される。ドアコンタクト5は、関連する階のドアの開閉に関する信号を供給する。ドアコンタクト5’は、エレベータかご2のドアの開閉に関する信号を供給する。安全アクチュエータ7は、エレベータかご2のドアモータ8の駆動に用いられ、ドアモータはバス3を介して送信される適切な信号を用いて、制御装置1によって制御することができる。
【0009】
また、超音波を用いてエレベータシャフトにおけるエレベータかご2の位置を確認するために、少なくとも2つの超音波位置システムあるいはUSP(Ultrasound Position)システム9、または1つの2チャネルUSPシステムが備えられる。使用するUSPシステム9としてはSchemersal社のものが望ましく、その稼働については2007年10月31日発刊の製品カタログ「Elevator switchgear-elevator position system USP」に記載されている。この2つのUSPシステムまたは1つの2チャネルUSPシステムを用いることで冗長な位置確認が可能となり、2つのUSPシステム9によって確認されるエレベータかご2の位置を比較し、または、1つの2チャネルUSPシステムによって確認されるエレベータかご2の位置を比較することにより、厳格な安全要求を満たしている。さらに、時間をかけて確認されたエレベータかご2の位置が2つのUSPシステム9または1つの2チャネルUSPシステムにより用いられ、エレベータシャフトにおけるエレベータかご2の速度が、時間に基づいてエレベータシャフトにおけるエレベータかご2の局所的な運転の変位として判定される。2つ以上のUSPシステム9を使用できるのは言うまでもない。しかしながら、2つあれば必要とされる冗長性がすでに得られている。同様に、2チャネルUSPシステムでも冗長性がある。2チャネルUSPシステムの場合、例えば、2つの受信機を有する1つの送信機と対応する2チャネルを使用することができる。
【0010】
バス3には、CAN(Control Area Network)安全装置としての安全制御装置10が接続され、バス3を介して、フロアレベルスイッチ4、ドアコンタクト5、5’、コマンド送信機6、安全アクチュエータ7、ドアモータ8、USPシステム9からの信号を受信することができる。フロアレベルスイッチ4、ドアコンタクト5、5’、コマンド送信機6、安全アクチュエータ7、USPシステム9は、ここでは、センサと呼ぶことができる。
【0011】
制御装置1は、安全制御装置10が(安全)スイッチ12を用いて開放可能な安全回路11に接続されている。安全制御装置10は、エレベータの安全運転を監視する。安全制御装置10は、ドアコンタクト5’が2つの階の間を移動中のエレベータかご2のドアが開いていることを示している等の危険な状態を判定すると、(安全)スイッチ12を開放し、エレベータを停止させる、または、エレベータを安全な状態にする。安全回路11を開放することにより、(安全)スイッチ22が動作し、モータ21をスイッチオフする。
【0012】
エレベータかご2の速度を監視する装置13を備え、例えば、エレベータかご2の速度が所定の閾値を越えた場合に、安全回路11を開放するために、安全制御装置10とは関係なく、(安全)スイッチ14を開放することができるようにしてもよい。エレベータかご2の速度を監視する装置13は、USPシステム9とは関係なく稼動してもよいし、USPシステム9によって稼動してもよい。
【0013】
エレベータかご2の局所的な所定の位置からの超過(overshooting)を監視する1つまたは2つのリミットスイッチ15を備え、例えば、エレベータシャフトにおけるエレベータかご2が、エレベータシャフトの下端または上端の所定の限界位置を超えた場合に安全回路11を開放するように、安全制御装置10とは関係なく、(安全)スイッチ16を開放することができるようにしてもよい。リミットスイッチ15は、USPシステム9や2チャネルUSPシステムとは関係なく実装されてもよいし、2チャネルUSPシステムによって実装されてもよい。
【0014】
モータ21が停止すると、制御装置1は、安全回路11が開放され、モータ21を停止させるために(安全)スイッチ22が作動したという確認応答を、安全回路11から受信する。このため、安全回路11が開放されたことを制御装置1に報告する手段が備えられている。この手段は、例えば、(安全)スイッチ22によって実装されてもよい。代替手段として、あるいは、追加して、フロアレベルスイッチ4、ドアコンタクト5、コマンド送信機6、安全アクチュエータ7、ドアモータ8、USPシステム9等の構成部品からの情報を評価し、安全制御装置11による停止が必要か否かを判定する制御装置3を備えてもよい。また、構成部品から受信した信号を制御装置1に転送する安全制御装置11を備えてもよい。
【0015】
制御装置1は、診断とメンテナンスの機会を改善するために、バスノードに接続される個々の構成部品から受信する信号を評価することができる。
例えば、安全制御装置10は、バス3に接続される2つのUSPシステム9または1つの2チャネルUSPシステムにより、エレベータシャフトにおけるエレベータかご2の位置を重複して(redundantly)確認することができる。
【0016】
エレベータシャフトの各階のドアのいずれかが正しく閉じておらず、かつドアコンタクト5が閉じていない場合、ドアコンタクト5が閉じておらず正常に機能していないドアの上方か下方にエレベータかご2を移動させることができる。2つのUSPシステム9または1つの2チャネルUSPシステムによりエレベータかご2の位置を検出する冗長性とは、エレベータかご2が正常に機能していないドアの階領域、すなわちドアコンタクト5が開いている階領域に入っていない間にはエレベータを停止させないという安全情報のことである。これにより、エレベータの可用性が向上する。
【0017】
また、速度情報項目を備え、2つのUSPシステム9又は1つの2チャネルUSPシステムから重複して、安全制御装置10により、エレベータかご2を判定できるようにしてもよい。これにより、エレベータかご2のドアゾーンの領域に「キャッチアップする(catch up)」ことができる。すなわち、安全制御装置10は、エレベータかご2の安全アクチュエータ7に対し、ドアモータ8がドアゾーンの領域で動作可能となるようにドア領域におけるイネーブル信号を供給する。これにより、ドアゾーン監視の稼働を安全制御装置10に統合することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータかご(2)を駆動するモータ(21)に接続される制御装置(1)を備えるエレベータ用電気安全システムであって、
安全制御装置(10)と、
前記制御装置(1)が、少なくとも1つのセンサ(4,5,5’,6,7,9)からデータを受信するバスノードとの通信を可能にするバス(3)と、を備え、
前記制御装置(1)は、前記モータ(21)が停止することにより前記安全制御装置(10)によって開放状態にすることが可能な安全回路(11)との通信が可能で、
前記安全回路(11)が前記モータ(21)の停止を前記制御装置(1)に通知する手段を有する、あるいは、前記モータ(21)の停止が前記バスノードから前記制御装置(1)へ送信されるデータに基づいて前記制御装置(1)により検出可能である
ことを特徴とする電気安全システム。
【請求項2】
前記センサ(4,5,5’,6,7,9)が、前記エレベータかご(2)の位置検出を重複して行うために使用可能な、少なくとも2つのUSPシステム(9)または1つの2チャネルUSPシステムに備えられる
ことを特徴とする請求項1に記載の電気安全システム。
【請求項3】
安全アクチュエータ(7)を備え、センサ(4,5,5’,6,7,9)として、少なくとも2つのUSPシステム(9)または1つの2チャネルUSPシステムを用いて、前記エレベータかご(2)がドアゾーンの領域にあり、かつ前記エレベータかご(2)が所定の速度を超えていないことを確証する場合、前記エレベータかご(2)のドアモータ(8)を駆動するイネーブル信号を前記安全アクチュエータ(7)に対して送信可能にする
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気安全システム。

【図1】
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【公開番号】特開2011−37635(P2011−37635A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181050(P2010−181050)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(504312737)カー.アー.シュメルザル ホールディング ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー (4)
【氏名又は名称原語表記】K.A.Schmersal Holding GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Moeddinghofe 30,42279 Wuppertal,Germany
【Fターム(参考)】