説明

エレベータ装置

【課題】 エレベータ装置の運転動力を低減し、安全なエレベータ装置を提供すること。
【解決手段】 釣合錘は常に取付けておく錘1a(以下、固定釣合錘と記述する)と重量調節用の錘2a(以下、調節用釣合錘と記述する)からなる。
調節用釣合錘2aの着脱作業は、エレベータ装置の昇降路内底部に取付けたジャッキ設置台15上のジャッキ11bでジャッキ頭部11aを待機位置10bから所定の作業位置10aに上昇させ、固定釣合錘1aと調節用釣合錘2aの重量が支えられ、それぞれの錘を固定している固定ピン(3種類のピン形状7g、8g或いは9g)に掛かる重量がなくなり着脱が可能になる。
そこで、液体或いは気体の圧力、又は磁力や電動サーボモータで操作される固定ピンを着脱する装置を用いて固定ピンを一斉に操作し、調節用錘の個数を一括調節するエレベータ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
釣合錘を有し運転動力を軽減するエレベータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ装置では、運転動力を低減するため、かごと運搬する荷重に相当する釣合錘を装着するのが一般的である。しかし、かごにかかる負荷は大きく変動する。例えば、オフィスビルでは、出勤時には、大勢の人が乗り込むが、通常の業務時間帯では、1〜2名の人しか乗っていないのが実情である。そのため、エレベータ装置の動力は、人や荷物よりも釣合錘を運搬するために使われている時間帯が永くなる。
そこで、エレベータ装置の運転動力を軽減する種々の装置が開発されている。それらは、いずれも、エレベータ装置のかごが上昇する際、負荷を超過する釣合錘が降下する重量を用いて電動機を回転させることで、発電機として回生電力を得て、電源側に戻す方法(例えば特許文献1及び2参照)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2002−338151
【特許文献2】 特開2010−64864
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、エレベータ装置のかごが降下するときは、負荷を超過する釣合錘を引き上げるための動力を軽減することは出来ない。更に、ブレーキの利きが悪くなると、事故が発生する虞がある。例えば、かごから降りるときに荷重が解放されることで、釣合錘の重量で、かごが上昇を開始し、降りる人が挟まれて死亡する事故が発生している。
【0005】
本発明はこのような事情に基づいてなされたもので、エレベータ装置の運転動力を低減し、安全なエレベータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明によると、動力を低減するために釣合錘を有するエレベータ装置であって、
設定した時間(設定時間は随時変更できる)毎に荷重の平均値を自動計算し、当該時間内に於けるエレベータ装置の運行回数で、前記の平均値を除した値から、常時必要な固定釣合重量(かごの重量に1名分の平均体重を加算した重量)を減じた値を、釣合錘1個の重量で除し、小数点以下を四捨五入して、当該時間における固定重量に付加すべき釣合錘の最適な個数を算出するプログラムが提供される。
釣合錘1個の重量を小さくすると、細かい調節が可能となる。状況に応じて最少重量を決定することが好ましい。また、釣合錘の重量は1種類のほうが計算と、錘の取り換え作業が単純化できて好ましい。
また、本発明の装置は、エレベータ装置の運行スケジュールと釣合錘の個数を手動で入力できることが好ましい。
【0007】
設定時間毎に、上記で求めた、付加する釣合錘の個数と、その時、運転中のエレベータ装置に装着されている固定の釣合錘に付加された釣合錘の個数に差異があれば、前記で決定した個数に変更するため、エレベータ装置が運転されていない時、一時的にエレベータ装置を、釣合錘付け替え作業位置(例えば、エレベータ装置の待機階)に停止し、自動的に釣合錘を交換する釣合錘着脱装置が提供される。
着脱作業中は、かご内及びエレベータ・ホールなどに作業内容と作業の残り時間を表示するのが好ましい。
【0008】
上記の釣合錘の着脱装置を用いるときは、錘と錘を接続する固定ピンが、錘の重量で圧迫されていて着脱ができないため、プログラムで作動する釣合錘の重量を支えるジャッキが提供される。
前記のジャッキのプログラムで特徴的なのは、エレベータ装置の昇降路内底部に設置されるものでは、待機中はジャッキの荷重面を降下させて、ジャッキに乗っている待機中の釣合錘と、運転中の釣合錘とが、接触するのを防ぐことである。
また、昇降路内中段の壁面に釣合錘着脱装置を設置する場合のジャッキでは、運転中の釣合錘に接触しないよう、待機中の釣合錘及び釣合錘着脱装置を搭載しているせり出し台を、壁面の凹みに引き込み、釣合錘の交換作業に備えてジャッキの荷重面を降下して待機する。
上記の釣合錘、着脱装置、ジャッキは既存のエレベータ装置に、容易に改装して取り付けることのできる構造としている。
【0009】
上記の釣合錘の着脱装置による作業は、上記のジャッキで、圧迫を受けている固定ピンに掛かる重量を除いたのち、この固定ピンを着脱する作業である。
前記固定ピン着脱作業のための装置は、液体或いは気体の圧力でピンを着脱する装置、或いは、電動サーボモータでピンを着脱する装置、又は磁力を用いてピンを着脱する装置が提供される。
これらの装置は、着脱作業時間を短縮するため、全ての固定ピンの着脱を一斉に行う。
【0010】
釣合錘着脱作業の作業プログラム(以下、作業プログラムと記述する)は、エレベータ装置の運転プログラム(以下、運転プログラムと記述する)とは独立していて、運転プログラムから着脱作業開始を作業プログラムに指示すると、この後は、作業プログラムで着脱作業が行われ、作業が完了した時点で、作業プログラムから運転プログラムに完了報告がなされる。この後は、運転プログラムによってエレベータ装置の運転が再開される。すなわち、プログラムを独立させることで、既存のエレベータ装置のプログラムに容易に組み込むことができる着脱作業のためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
負荷変動の大きいエレベータ装置の釣合錘を、負荷の変動に応じて実際の負荷に近い重量に保つことで、エレベータ装置の運転動力を低減することができる。また、ブレーキの作動不良が生じたとしても、負荷と釣合錘に大きな差がないことで、かごの異常な動作を緩和し事故を軽減することができる。
エレベータ装置の設置されている環境に応じて釣合錘の数量を調節する装置の方式を選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】 釣合錘着脱装置の方式別の動作の違いを説明するため、エレベータ装置の釣合錘を昇降路内の底部において数種類の着脱装置で固定ピンを釣合錘の側面に着脱する場合の説明図。
【図2】 釣合錘の側面の穴に着脱する固定ピンの形状がコの字状のピンであって、液体或いは気体の圧力を用いる着脱装置の説明図。
【図3】 固定ピンを閂として用いる方式であって、液体或いは気体の圧力を用いる着脱装置の説明図。
【図4】 液体或いは気体の圧力で作動する固定ピンの押し込みロッドと引き抜きロッドの説明図。
【図5】 図3と同様の方式であるが、液体や気体に代えて磁力を用いる着脱装置の説明図。
【図6】 図5の装置を昇降路内の中段の壁に配して用いる場合の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至図6は、本発明の好ましい実施形態によるエレベータ装置の釣合錘を着脱するための装置、及び部品を示す。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
図1には3つの形状の固定ピンと、作動を比較するため、1つの図面に3つのピンが釣合錘を正面から見る位置で釣合錘の側面に着脱する様子を示している。
釣合錘は、常に取付けておく錘1a(以下、固定釣合錘と記述する)と、重量調節用の錘2a(以下、調節用釣合錘と記述する)からなり、固定釣合錘1aにはシーブを介して、かごに接続されるロープ20が固定金具1bで取付けられている。
調節用釣合錘2aの着脱作業は、エレベータ装置の昇降路内底部に取付けたジャッキ設置台15上のジャッキ11bで、ジャッキ頭部11aを待機位置10bから所定の作業位置10aに上昇さて開始する。
所定の作業位置10aでは、ジャッキによって固定釣合錘1aと調節用釣合錘2aの重量が支えられるため、それぞれの錘を固定している固定ピン(3種類のピン形状7g、8g或いは9g)に掛かる重量がなくなり、着脱が可能な状態になる。
そこで、液体或いは気体の圧力、又は磁力や電動サーボモータで操作される固定ピンを着脱する装置を用いて、固定ピンを一斉に操作し、調節用錘の取付個数を一括調節する。
ジャッキ11bを作動する加圧装置(図面省略)は、蓄圧槽を有し供給圧力が安定しているものを昇降路内、或いは外部に設置し、管14を介して圧力を供給する。
【0014】
コの字形固定ピン7gを用いる着脱装置では、液体或いは気体の圧力を操作シリンダ7bに供給して固定ピン7gを押し込むための押し込みロッド7e、及び固定ピンを引く抜くための引き抜きロッド7dを駆動する。コの字形固定ピン7gは、上下の釣合錘の側面のそれぞれの固定ピン挿入穴2bに挿入することで上下の釣合錘を接続する。
一の字形固定ピン8gを用いる装置も、前記のコの字形固定ピンの着脱と同様に、押し込みロッド7eと引き抜きロッド7dを用いる。上記のコの字形固定ピン方式と異なるのは、ピンと釣合錘の形状が異なるところである。
上記の一の字形固定ピン8gでは、この固定ピンを調節用釣合錘2aの上面突起2dの固定ピン挿入孔2jに、閂として用いることで、調節用釣合錘2aを上面の釣合錘に固定する。
前記の一の字形固定ピン8gと同様に用いるのが固定ピン9gで、磁力によって着脱動作を行うことを特徴とする。上記の操作シリンダ7bに代わって、電磁コイル9dと、固定ピン9g内部の永久磁石9eと、釣合錘内部の電磁コイル2fによる引力、或いは斥力で動作する。電磁コイル操作のための制御装置からの電力は、外部からのケーブル9hを用いる。
上記錘内部の電磁コイル2fには、電力ケーブルを接続する接続装置2ebと、接点2eを介して、リード線2eaを用いて電力を供給する。
押し込みロッドと引き抜きロッドを有する方式は、液体或いは気体によるロッド駆動方式の他に、電動サーボを用いてもよい。
操作シリンダ7bをサーボモータに置き換えることで変更する。(図面省略)
【0015】
図2は、作業位置における釣合錘の側面図(a)、同側面図のカバーを外したもの(b)、固定ピンを釣合錘に挿入した平面図(c)、固定ピンを挿入する様子を示す平面図(d)から成る釣合錘の側面に着脱するコの字形固定ピン7gの作動についての説明図で、釣合錘の側面は、錘の振れ防止ガイド3aを設置し、このガイド3aとガイド3a内部に位置する釣合錘に挿入された固定ピン7gの一部の突出部を利用して、錘が振れるのを防止する。ガイド3aに固定ピン7gの突出部が痞えないよう、ガイド下端部はベルマウス状3bにしている{図2(a)(b)(c)参照}。
上記の固定ピン7gの着脱操作シリンダ7bは、カバー7aとサポートカバー7c内に取付けられステー7fで、これらのカバーの横方向の応力を支えている。固定ピン7gも待機中及び操作中はサポートカバー7cに収まっている。そして、このサポートカバー7cは、釣合錘の固定ピン挿入穴2bの正面に位置していることと、挿入穴2bの入り口をベルマウス状にしているので、押し込みロッド7e、或いは引き抜きロッド7dによる固定ピン7gの着脱が容易に行われる{図2(d)}。
【0016】
エレベータ装置が、固定釣合錘1aのみで運転されることを想定して、調節用釣合錘2aの全てが待機中であっても十分な高さのカバー6で調節用釣合錘2aの転倒を防止するため、待機している調節用釣合錘2aの4隅に、この転倒防止カバー6を設ける。(図面が煩雑になるため1つだけ表示している{図2(a)})
この転倒防止カバー6は、調節用釣合錘2aが痞えるのを防止し、ジャッキ頭部11aの上に釣合錘を確実に乗せるため、上端をベルマウス状6aにして、釣合錘に近接して設置している。また、カバー下部6bもジャッキに整合させた形状としている。
【0017】
図3は、作業位置における釣合錘の側面図(a)、同側面図のカバーを外したもの(b)、固定ピンを釣合錘に挿入した平面図(c)、固定ピンを引き抜く様子を示す平面図(d)、固定ピンを閂状に用いたところを示す断面図(e)から成り、ガイド4a、操作シリンダカバー7a、転倒防止カバー6、ジャッキ11bなどの基本構成は図2と同様であるが、固定ピンと調節用釣合錘の形状が図2とは異なる。調節用釣合錘2aは側面の固定ピン挿入穴2cと下面の突起挿入穴2hの2つの穴を有している。また調節用釣合錘2aの上面には、前記の突起挿入穴2hの形状に整合させた突起2dを有し、この突起2dに一の字形の固定ピン8gを、閂として用いることのできる固定ピン挿入孔2jを有する。{図3(a)(b)(c)(e)参照}
上記固定ピン8gの着脱は、コの字形の固定ピンと同様に液体或いは気体の圧力、或いは電動サーボで、押し込みロッド7eと引き抜きロッド7dを用いて行う。
【0018】
図4にて、液体或いは気体で操作シリンダ7bを介して操作される、押し込みロッド7eと引き抜きロッド7dを説明する。
図4(a)は、押し込みロッド7eで、操作シリンダ7bによってスピンドル7ebが押し出されると、固定ピンに接触する凹み7eaで固定ピンを錘に挿入する。所定の位置まで固定ピンを挿入すると、スピンドル7ebは、操作シリンダ7bによって引き戻される。
図4(b)は、引き抜きロッド7dで、固定ピンを捉えるための反時計回り方向に湾曲したアーム7daを作動するための突起7dcと、アーム7daの作動を解除するための突起7deの2つの突起を有する。
上述した固定ピン7g、或いは固定ピン8gを引き抜くときは、操作シリンダ7bが、スピンドル7ddを、挿入されている前記固定ピンに向かって押し出す。すると、アーム7da付属の突起7dcが、固定ピンに押し付けられるので、アーム7daは、スピンドル7dd先端部に位置するアームの支点7dbを中心に、反時計回りに作動し、固定ピンを捉える。この状態でスピンドル7ddは、操作シリンダ7bによって引き戻されるため、アーム7daは、固定ピンを引き抜き、待機位置まで持ってくる。そうして、スピンドル7ddが、更に操作シリンダ7bに引き込まれると、アーム7da付属の突起7dcが操作シリンダ7bに取付けられている突起7deによって押し上げられて、アーム7daを、支点7dbを中心に時計回りに作動させて、固定ピンを解放することで、一連の引き抜き作業を終える。
【0019】
図5は、作業位置における釣合錘の側面図(a)、同側面図のカバーを外したもの(b)、固定ピンを釣合錘に挿入した平面図(c)、固定ピンを挿入した正面図(d)、固定ピンを挿入する様子を示す平面図(e)、磁力作動式の固定ピンを閂状に用いたところを示す断面図(f)から成り、ガイド5a、操作シリンダカバー9a、転倒防止カバー6、ジャッキ11bなどの基本構成は図3の装置と同様で、更に固定ピンと調節用釣合錘の使用方法も図3の装置と同様であるが{図5(a)(b)(c)(f)参照}、固定ピン9gが磁力によって作動するところが異なる。
磁力を用いるため、側面の穴2cの奥に固定ピン9gの内部の永久磁石9eを、引力或いは斥力で、引き付け或いは押し戻すため電磁コイル2fと電磁石2gを有する。この電磁石2gの引力、或いは斥力は、接点2eを介して電磁コイル2fに供給される電流の方向を変えて固定ピン9gの永久磁石9e先端の極性と異極或いは同極にすることで行う。
同様に図3の操作シリンダ7bと同じ場所に設置される電磁石9bは、その円周に沿って巻かれた電磁コイル9dの電流方向を変えて、固定ピン9g内部の永久磁石9e後端の磁極と、異極、或いは同極にすることで固定ピン9gとの間に引力或いは斥力を得る。
上記の操作で固定ピン9gは、サポートカバー9c上を素早く移動し釣合錘に着脱される。その際、固定ピン9gの衝突で装置が壊れないよう固定ピン9gの後端9gaは緩衝材としてゴム系の材質で覆われ、サポートカバー9c等の周辺部品はアルミニウム、銅、18−8系ステンレス、プラスチックなどの非磁性材料で構成されるのが好ましい。
【0020】
調整用釣合錘2aに内蔵される電磁コイル2fに、外部から電力を供給するための外部側の装置は、図面で省略している着脱装置制御盤で、この盤からケーブル9hで調整用釣合錘2aに近接する接続装置2ebに送電する。
接続装置2ebはバネを内蔵しており、調節用釣合錘2aの表面に位置する接点2eとバネの弾力で接触することで接続を維持する。なお、接続装置2ebは、永久磁石2ecと電磁コイル2edを内蔵し、調節用釣合錘2aに接続するときに接続装置2ebの接点部を調節用釣合錘2aの接点2eに向かって押し付けるが、通常は、接続部を引き込んで、調節用釣合錘2aに接触して、回路の短絡事故が発生することのないようにしている。(上記の電磁コイル2edを作動する電気配線は図面が煩雑になるので省略する)
ケーブル9hなどの電気配線は、機械装置が動くので、結線は圧着方式を用い、結線後は塗料で接続部の腐食を防止するのが好ましい。
【0021】
図6に示す装置は、図5の電磁石方式の固定ピン着脱装置を、釣合錘の背後であってエレベータ装置の昇降路内壁12に設置する場合である。
固定ピン9gの挿入は、調節用釣合錘2aの長辺の中央に一ヶ所とする。したがって、調節用釣合錘2aの転倒防止カバー6は、中央部の断面図に示されていないが、図2、3、5と同様に釣合錘の4隅に取付ける。
調節用釣合錘2aの背後に一ヶ所、固定ピンを挿入して重量を受けるので、バランスが取れるよう調節用釣合錘2aの上面の突起2dや下面の突起挿入穴2hを中央に設ける。
昇降路内壁12を凹ませた壁16に、ジャッキ頭部11aを下降させた状態10bで、転倒防止カバー6で保護された調節用釣合錘2aと、固定ピン9gの着脱装置を乗せたジャッキ11bを、せり出し台17に設置した状態(B)で格納する。
【0022】
着脱作業は、エレベータ装置が釣合錘付け替え作業位置に停止し、エレベータ装置の運転プログラムが作業プログラムに作業開始を指示する。そして、作業プログラムが、せり出し台17上で、収納待機状態にある調節用釣合錘2aと、固定ピン9gの着脱装置をトランク内に押し出し所定の位置(A)に、せり出し台17を固定することから始まる。このせり出し台17は、外部に設置した液体或いは気体の圧力又は電動モータで操作される(加圧装置の図面省略)。
所定の位置(A)でジャッキ頭部11aを所定の位置10aに上昇させると、全ての調節用釣合錘2aと、固定釣合錘1aが積み重なった状態になる。この状態で釣合錘の重量は、ジャッキ11bとせり出し台17が担っている。そのため、釣合錘に挿入されている固定ピン9gには、応力が掛かっていないので着脱可能状態になる。
そこで、制御装置の作業プログラムの指示に従って、固定ピン9gの着脱を磁力によって一斉に行う。固定ピン9gの挿入、或いは引き抜きが終了すると、ジャッキ頭部11aを所定の高さ10bまで下降し、せり出し台17を収納して釣合錘付け替え作業を完了する。
作業プログラムからの作業完了信号で、運転プログラムはエレベータ装置の通常運転を再開する。
図6は磁気方式の固定ピン着脱装置なので固定ピンの作動は、図5と同様に行われる。
各種の固定ピンを着脱する方式を説明してきたが、着脱装置を図6の昇降路内中段ではなく、昇降路内底部に設置し、図6と同様に釣合錘を一ヶ所で固定する方式が採ることが可能であれば、最も容易に本発明の装置を設置できる。
【符号の説明】
【0023】
1a 固定釣合錘
2a 調節用釣合錘
2b 固定ピン挿入穴
2c 固定ピン挿入穴
2d 上面突起
2e 接点
2eb 接続装置
2f 電磁コイル
2h 突起挿入穴
2j 固定ピン挿入孔
3a ガイド
4a ガイド
5a ガイド
6 転倒防止カバー
7b 操作シリンダ
7g コの字形固定ピン
8g 一の字形固定ピン
9d 電磁コイル
9g 電磁固定ピン
11b ジャッキ
17 せり出し台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力を低減するために釣合錘を有するエレベータ装置であって、
設定した時間(設定時間は随時変更できる)毎に荷重の平均値を自動計算し、当該時間内に於けるエレベータ装置の運行回数で、前記の平均値を除した値から、常時必要な固定釣合重量(かごの重量に1名分の平均体重を加算した重量)を減じた値を、釣合錘1個の重量で除し、小数点以下を四捨五入して、当該時間における固定重量に付加すべき釣合錘の最適な個数を算出する計算プログラムを有することを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
設定時間毎に、上記で求めた、付加する釣合錘の個数と、その時、運転中のエレベータ装置に装着されている固定の釣合錘に付加された釣合錘の個数に差異があれば、前記で決定した個数に変更するため、エレベータ装置が運転されていない時、一時的にエレベータ装置を、釣合錘付け替え作業位置(例えば、エレベータ装置の待機階)に停止し、自動的に釣合錘を交換する釣合錘着脱装置と、着脱作業中、かご内及びエレベータ・ホールなどに作業内容と作業の残り時間を表示する装置を有することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
上記釣合錘の着脱装置を用いるときは、錘と錘を接続する固定ピンが、錘の重量で圧迫されていて着脱ができないため、固定ピンの着脱のため、プログラムで作動する釣合錘の重量を支えるジャッキを有し、待機中はジャッキの荷重面を降下させて、ジャッキに乗っている待機中の釣合錘と、運転中の釣合錘とが接触するのを防ぐジャッキを有することを特徴とする請求項1及び2に記載のエレベータ装置。
【請求項4】
上記固定ピン着脱作業のための装置は、液体或いは気体の圧力でピンを着脱する装置、或いは、電動サーボモータでピンを着脱する装置、又は磁力を用いてピンを着脱する装置で、着脱作業時間を短縮するため、全ての固定ピンの着脱を一斉に行う着脱装置を有することを特徴とする請求項1乃至3に記載のエレベータ装置。
【請求項5】
釣合錘着脱作業の作業プログラム(以下、作業プログラムと記述する)は、エレベータ装置の運転プログラム(以下、運転プログラムと記述する)とは独立していて、運転プログラムがら着脱作業開始を作業プログラムに指示すると、この後は、作業プログラムで着脱作業が行われ、作業が完了した時点で、作業プログラムから運転プログラムに完了報告がなされ、この後は、運転プログラムによってエレベータ装置の運転が再開される。すなわち、プログラムを独立させることで、既存のエレベータ装置のプログラムに容易に組み込むことができることを特徴とする、着脱作業用プログラムを有する請求項1乃至4に記載のエレベータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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