説明

エレベータ電力調整装置

【課題】オフィスビル全体としてのデマンド量が契約電力を超えないようにエレベータを運転するエレベータ電力調整装置を提供する。
【解決手段】エレベータ電力調整装置1は、デマンド監視システム5により商用系統から受電するデマンド量が監視されるビルに設置されたエレベータの運転を制御するエレベータ制御盤11を介してエレベータの消費電力を調整するエレベータ電力調整装置において、デマンド監視システムが上記商用系統から受電するデマンド量の予測値が契約電力を超えるとき発せられるデマンド警告が発せられているときエレベータの所定の最高速度または所定の加速度にするようエレベータ制御盤に指令し、且つ所定の最高速度または所定の加速度で運転されたことによる消費電力の低減をデマンド監視システムに報告する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、契約電力を超過しないようエレベータを消費電力を調整するエレベータ電力調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータを省エネルギーで運転するためのエレベータの運転制御方法は、エレベータを制御する制御盤と、制御盤に接続され商用電源の電流を計測する電流計測部と計測した電流値から電力量を算出する電力量算出部を備え、予め設定された電力量を超えた場合には定格速度及び加減速度の何れかの速度制御定数を変更する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−55700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、単独でエレベータを省エネルギーで運転しても、デマンド監視システムと連携していないので、オフィスビル全体としてのデマンド量が契約電力を超える恐れがある。
【0005】
この発明の目的は、オフィスビル全体としてのデマンド量が契約電力を超えないようにエレベータを運転するエレベータ電力調整装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータ電力調整装置は、デマンド監視システムにより商用系統から受電するデマンド量が監視されるビルに設置されたエレベータの運転を制御するエレベータ制御盤を介して上記エレベータの消費電力を調整するエレベータ電力調整装置において、上記デマンド監視システムが上記商用系統から受電するデマンド量の予測値が契約電力を超えるとき発せられるデマンド警告が発せられているとき上記エレベータの所定の最高速度または所定の加速度にするよう上記エレベータ制御盤に指令し、且つ上記所定の最高速度または上記所定の加速度で運転されたことによる消費電力の低減を上記デマンド監視システムに報告する。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るエレベータ電力調整装置の効果は、デマンド監視システムからデマンド警報が発せられているときエレベータの運転状況に対応する速度まで最高速度を遅くするようエレベータ制御盤に指令し、且つ最高速度を遅くして運転することによる消費電力の低減をデマンド監視システムに報告するので、デマンド監視システムはエレベータでの消費電力の低減を加味して適切に他のビル内設備の消費電力を低減することができることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、この発明の実施の形態に係るエレベータ電力調整装置の構成図である。図2は、この発明の実施の形態に係るエレベータ電力調整装置が配備されたオフィスビルの構内電力系統の構成図である。
この発明の実施の形態に係るエレベータ電力調整装置1が配備されたオフィスビルには、図2に示すように、商用系統2から受電する受変電設備3、受変電設備3から電力が供給されるビル内設備4および計測したデマンド量から予測したデマンド量の予測値が契約電力を超えないようにビル内設備4を監視するデマンド監視システム5が配備されている。ビル内設備4としては、少なくともエレベータ6があり、それ以外に例えば空調設備7、照明設備8、衛生設備9またはその他の設備10がある。
デマンド監視システム5は、現在のデマンド量と過去のデマンド量履歴とから将来の30分デマンド量を予測し、予測した30分デマンド量が契約電力を超えるときデマンド警報を出力する。
【0009】
この発明の実施の形態に係るエレベータ電力調整装置1は、図1に示すように、デマンド監視システム5およびエレベータ制御盤11との間でデータを入出力する伝送インタフェース12、プログラムに従って演算処理を行うCPU13、プログラムを記憶するROM14、演算処理で必要とするデータが記憶されているRAM15および内部時計16を有するコンピュータから構成されている。
エレベータ制御盤11は、所定の時間帯でのエレベータの待ち時間の平均を求め、平均待ち時間としてエレベータ電力調整装置1にデータ送信する。
また、エレベータ制御盤11は、エレベータ電力調整装置1から最高速度の低減率が送られてきたとき、エレベータの運行パターンの最高速度を所定の低減率だけ小さくしてエレベータを運転する。
【0010】
RAM15には、図3に示すエレベータピーク時間帯表と、図4に示すエレベータ最高速度設定表とが記憶されている。エレベータピーク時間帯表には利用者が多いと予想されるピーク時間帯が開始時刻および終了時刻を規定することにより記憶されている。図3では開始時刻8時30分と終了時刻9時00分からなる出勤時、開始時刻12時00分と終了時刻13時00分からなる昼食時、開始時刻17時00分と終了時刻17時30分からなる退勤時の3つのピーク時間帯が決められている。なお、ピークの時間帯の数やそれぞれの時間帯を規定する開始時刻および終了時刻はこれに限るものではなく適宜設定すれば良い。
【0011】
エレベータ最高速度設定表には、電力低減率に対応して最高速度低減率が記憶されている。すなわち、電力を10%低減するためには、最高速度を3.16%低くする必要があり、電力を20%低減するためには、最高速度を4.47%低くする必要があり、電力を30%低減するためには、最高速度を5.4%低くする必要があるということである。なお、電力低減率に対応する最高速度低減率の値は各エレベータにより定めるものであり、上述の値は一例である。
【0012】
次に、この発明の実施の形態に係るエレベータ電力調整装置1で実行されるエレベータ電力調整手順を説明する。図5は、この発明の実施の形態に係るエレベータ電力調整手順を示すフローチャートである。
エレベータが稼動しているときには、所定の周期、例えば5分毎にエレベータ電力調整手順が開始される。
ステップS101で、デマンド警報が発せられたか否かを判断し、デマンド警報が発せられているときステップS102に進み、デマンド警報が発せられていないときエレベータ電力調整手順を終了する。
ステップS102で、エレベータピーク時間帯表を参照して現在の時刻がピーク時間帯に含まれるか否かを判断し、現在の時刻がピーク時間帯内であるときステップS104に進み、現在の時刻がピーク時間帯外であるときステップS103に進む。
ステップS103で、エレベータの平均待ち時間が予め定められた所定値を超えるか否かを判断し、平均待ち時間が所定値を超えるときステップS106に進み、平均待ち時間が所定値以下のときステップS108に進む。
【0013】
ステップS104で、電力を10%低減することが可能と判断し、エレベータ最高速度設定表を参照してエレベータ制御盤11に最高速度を3.16%下げるように指令する。
ステップS105で、デマンド監視システム5にエレベータの消費電力を10%低減したと報告しエレベータ電力調整手順を終了する。
ステップS106で、電力を20%低減することが可能と判断し、エレベータ最高速度設定表を参照してエレベータ制御盤11に最高速度を4.47%下げるように指令する。
ステップS107で、デマンド監視システム5にエレベータの消費電力を20%低減したと報告しエレベータ電力調整手順を終了する。
ステップS108で、電力を30%低減することが可能と判断し、エレベータ最高速度設定表を参照してエレベータ制御盤11に最高速度を5.4%下げるように指令する。
ステップS109で、デマンド監視システム5にエレベータの消費電力を30%低減したと報告しエレベータ電力調整手順を終了する。
【0014】
デマンド監視システム5は、デマンド量の予測値が契約電力を超えるときデマンド警告を発すると、エレベータ電力調整装置1からエレベータのサービス状況に対応したエレベータの消費電力の低減の報告を受けるので、デマンド監視システム5は、エレベータの消費電力の低減の報告を考慮して再度30分デマンド量を予測し、30分デマンド量が契約電力を超えるときエレベータ以外のビル内設備4に電力低減率を指令する。
【0015】
この発明に係るエレベータ電力調整装置1は、デマンド監視システム5からデマンド警報が発せられているときエレベータの運転状況に対応する速度に最高速度を低減するようエレベータ制御盤11に指令し、且つ最高速度の低減による消費電力の低減をデマンド監視システム5に報告するので、デマンド監視システム5はエレベータでの消費電力の低減を加味して適切に他のビル内設備4の消費電力を低減することができる。
【0016】
なお、上述の実施の形態に係るエレベータ電力調整装置1では、最高速度を下げて消費電力を低減しているが、加速度を小さくして消費電力を低減しても良い。
また、上述では特に言及していないが、1バンク内のエレベータ毎に最高速度または加速度の低減率を設定しても良い。
また、複数バンクのエレベータがあるときには、メインの乗用サービスをしているバンクのエレベータの最高速度より荷物用などのバックヤードのエレベータの最高速度の低減率を大きくするようにしても良い。
また、全てのエレベータの最高速度または加速度の低減率を一致しても良い。
また、上述の実施の形態に係るエレベータ電力調整装置1はエレベータ制御盤11と別であるが、エレベータ制御盤11内に配置しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態に係るエレベータ電力調整装置の構成図である。
【図2】この発明の実施の形態に係るエレベータ電力調整装置が配備されたオフィスビルの構内電力系統の構成図である。
【図3】この発明の実施の形態に係るエレベータピーク時間帯表である。
【図4】この発明の実施の形態に係るエレベータ最高速度設定表である。
【図5】この発明の実施の形態に係るエレベータ電力調整手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0018】
1 エレベータ電力調整装置、2 商用系統、3 受変電設備、4 ビル内設備、5 デマンド監視システム、6 エレベータ、7 空調設備、8 照明設備、9 衛生設備、10 その他の設備、11 エレベータ制御盤、12 伝送インタフェース、13 CPU、14 ROM、15 RAM、16 内部時計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デマンド監視システムにより商用系統から受電するデマンド量が監視されるビルに設置されたエレベータの運転を制御するエレベータ制御盤を介して上記エレベータの消費電力を調整するエレベータ電力調整装置において、
上記デマンド監視システムが上記商用系統から受電するデマンド量の予測値が契約電力を超えるとき発せられるデマンド警告が発せられているとき上記エレベータの所定の最高速度または所定の加速度にするよう上記エレベータ制御盤に指令し、且つ上記所定の最高速度または上記所定の加速度で運転されたことによる消費電力の低減を上記デマンド監視システムに報告することを特徴とするエレベータ電力調整装置。
【請求項2】
上記所定の最高速度または上記所定の加速度は、上記エレベータのサービス状況に対応することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ電力調整装置。
【請求項3】
上記サービス状況は、上記エレベータのサービスのピーク時間帯または平均待ち時間から決まることを特徴とする請求項2に記載のエレベータ電力調整装置。
【請求項4】
上記所定の最高速度は、1バンク内の上記エレベータにおいては同様であることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ電力調整装置。
【請求項5】
上記所定の最高速度は、上記エレベータの使用目的により異なっていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ電力調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−96582(P2009−96582A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268916(P2007−268916)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】