説明

エレベータ

【課題】かごドアの下部に隙間が存在する状態において、かごの昇降運転を確実に禁止することが可能なエレベータを提供することである。
【解決手段】エレベータ30は、かご10に設置されたかごドア11a、11bと、かごドア11a、11bの上部に設置された上部閉扉検出装置である上部ゲートスイッチ22及び上部リミットスイッチ23と、かごドア11a、11bの下部に設置された下部閉扉検出装置である下部リミットスイッチ33と、かごドア11a、11bを開閉するかごドア開閉装置12と、かごドア開閉装置12の駆動を制御する制御装置31と、エレベータ制御装置32とを備え、かごドア開閉制御装置31は、上部閉扉検出装置及び下部閉扉検出装置によりかごドア11a、11bの閉扉が検出されたときに、かご10の昇降運転許可信号をエレベータ制御装置32に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータに係り、特にかごドアの上部に設置され、かごドアの閉扉を検出する上部閉扉検出装置を備えたエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来のかごドア10をエレベータ乗場40側から見た正面図である。同図に示すように、エレベータかご10(以下、かご10とする)には、中央開きのかごドア11a、11bが設置されている。また、かご10の上部には、上部閉扉検出装置と、かごドア開閉装置12と、上部閉扉検出装置による検出情報等に基いて、かごドア開閉装置12の駆動を制御するかごドア開閉制御装置13とが設置されている。なお、かご10の上部には、架台25が設けられ、かごドア開閉装置12の一部及びかごドア開閉制御装置13は、架台25上に設置されている。
【0003】
かごドア11a、11bは、ハンガープレート14a、14bを有し、ハンガープレート14a、14bには、ハンガーローラ15a、15bが設置されている。かごドア11a、11bは、このハンガーローラ15a、15bによって、かご10の壁面に取り付けられたかごドアレール18に懸架されており、かごドア11a、11bの下部には、かごドアガイドレール24が設けられている。また、かごドア11a、11bには、かごドア開閉装置12の駆動力を受容するためのドアアーム16と、乗場ドア42a、42bをかごドア11a、11bの開閉に追従させるための係合部材17とが設置されている。
【0004】
上部閉扉検出装置は、かごドア11a、11bの閉扉を検出する機能を有し、上部ゲートスイッチ22及び上部リミットスイッチ23の2つのスイッチが設けられる。このような構成の上部閉扉検出装置は、例えば、特許文献1にも開示されている。上部ゲートスイッチ22は、例えば、ハンガープレート14aの上部に取り付けたカム22Aと、かご10の上端に取り付けられた接触式スイッチ22Bとから構成され、かごドア11a、11bが所定位置まで閉扉したときに、カム22Aが接触式スイッチ22Bに接触することでスイッチがON操作されて、閉扉検出を行うことができる。上部リミットスイッチ23は、例えば、ハンガープレート14bの上部に取り付けられた遮蔽プレート23Aと、かご10の上端に取り付けられた投受光器23Bとから構成され、かごドア11a、11bの閉扉が完了したときに(全閉時)、遮蔽プレート23Aが投受光器23Bの光軸を遮蔽することで、スイッチがON又はOFF操作されて、全閉検出を行うことができる。
【0005】
かごドア開閉装置12は、かごドア11a、11bを開閉する機能を有し、動力源であるモータ19と、駆動プーリ20と、駆動プーリ20及びドアアーム16に固定された駆動アーム21とから構成される。モータ19の駆動力は、駆動プーリ20及び駆動アーム21を介してドアアーム16に伝達されることにより、かごドア11a、11bがドアレール18に沿ってスライドすることが可能になる。なお、上部ゲートスイッチ22による閉扉検出がなされた場合には、モータ19の出力を高めてかごドア11a、11bの押し付け(以下、全閉動作とも称する)が実行され、上部リミットスイッチ23による全閉検出がなされたときに、かご10の昇降運転が許可されることになる。
【0006】
かごドア11aに設置される係合部材17は、2本の係合バー17A、17Bから構成され、乗場ドア42a、42bのロック装置49に係合して、乗場ドア42a、42bをかごドア11a、11bの開閉に追従して開閉させるための部材である。係合バー17A、17Bは、緊急停止時等にかご10の着床位置が多少ずれた場合であっても、乗場ドア42a、42bの開閉を可能にするため、鉛直方向に長い形状を有している。そして、後述の図5に示すように、係合部材17は、2本の係合バー17A、17Bの間をロック装置49の第1当接部50及び第2当接部51が通るように取り付けられている。
【0007】
図5は、乗場ドア42a、42bをかご10側から見た正面図であり、対向するかごドア11a、11b及び係合部材17の位置を一点鎖線で示している。同図に示すように、エレベータ乗場40には、三方枠41と、乗場ドア42a、42bとが設置されている。乗場ドア42a、42bは、かごドア11a、11bと同様に、ハンガープレート43a、43bを有し、ハンガーローラ44a、44bによって、乗場ドアレール45に懸架されており、乗場ドア42a、42bの下部には、乗場ドアガイドレール46が設けられている。
【0008】
乗場ドア42aの上部には、係止片47と、係止片47が係止される係止部48とを有するロック装置49が設置されている。ロック装置49の係止片47には、かごドア11bの係合部材17によって乗場ドアレール45に沿った方向に押されて変位する第1当接部50及び第2当接部51が設置されている。また、係止片47の第1当接部50と第2当接部51との間には、図示しない支持軸が設置され、係止片47は、図5に示す第1当接部50が第2当接部51に対して内側にある状態から第1当接部50及び第2当接部51が鉛直方向に沿って並ぶ状態まで変位可能に支持されている。
【0009】
かごドア11a、11bの開扉時には、まず、係合バー17Bにより第1当接部50が外側に押されて変位することにより、ロック装置49のロックが外れる仕組みになっている。さらに、係合バー17Bにより第1当接部50及び第2当接部51が押されることにより、かごドア11a、11bの開扉と連動して、乗場ドア42a、42bが開扉される。一方、かごドア11a、11bの閉扉時には、係合バー17Aにより第1当接部50及び第2当接部51が内側に押されることにより、かごドア11a、11bの閉扉と連動して、乗場ドア42a、42bが閉扉される。そして、かごドア11a、11bの全扉した状態では、係合バー17Aと第1当接部50及び第2当接部51とは接触しないので、係止片47が下りてロック装置49がロック状態となる。
【0010】
なお、乗場ドア42a、42bの上方には、左右に設けられた滑車53と、2つの滑車53に巻き掛けられた連動ベルト54とから構成される連動機構52が設けられる。連動ベルト54の上側の一部がハンガープレート43bに、連動ベルト54の下側の一部がハンガープレート43aに、それぞれ取り付けられることにより、係合部材17により乗場ドア42aに加えられた開閉駆動力を乗場ドア42bに伝達して、乗場ドア42a、42bを互いに反対方向にスライドさせることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−67480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図5に示すように、かご10がエレベータ乗場40を通過するときにおいて、かごドア11a、11bが鉛直方向に沿って隙間なく閉扉された状態では、係合バー17A、17Bと、第1当接部50及び第2当接部51との間には隙間が存在するため、これらが互いに接触することはない。しかしながら、かごドア11a、11bに運搬物等が衝突してかごドア11a、11bが歪むなど、予期せぬ不具合が発生した場合には、図6に示すように、かごドア11a、11bの上部が閉まった状態であっても、かごドア11a、11bの下部が完全に閉じず隙間が発生する可能性がある。そして、かごドア11a、11bの上部が閉まっていれば、上部閉扉検出装置による閉扉検出がなされて、かご10の昇降運転が許可されることが起こり得る。
【0013】
図6に示すように、かごドア11a、11bの下部に隙間が存在する状態では、係合部材17が鉛直方向に対して傾く場合がある。このような状態でかご10が昇降運転されると、例えば、係合部材17が第1当接部50又は第2当接部51に衝突してロック装置49や周辺機器を破損するおそれがあるため、かご10の走行中に、係合部材17と第1当接部50等が接触してロック装置49のロックが外れたときには、かご10を緊急停止させる仕組みになっている。かかる手段によって、ロック装置49や周辺機器の破損を防止しているが、乗客は、かご10の緊急停止により一時的にかご10内での待機を余儀なくされるため、乗客の利便性向上の観点から改良の余地がある。
【0014】
本発明の目的は、かごドアの下部に隙間が存在する状態において、かごの昇降運転を確実に禁止することが可能なエレベータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るエレベータは、エレベータかごに設置されたかごドアと、かごドアの上部に設置され、かごドアの閉扉を検出する上部閉扉検出装置と、エレベータかごの上部に設置され、かごドアを開閉するかごドア開閉装置と、かごドア開閉装置の駆動を制御する制御装置と、を備えたエレベータにおいて、かごドアの下部に設置され、かごドアの閉扉を検知する下部閉扉検出装置を備え、制御装置は、上部閉扉検出装置及び下部閉扉検出装置によりかごドアの閉扉が検出されたときに、エレベータかごの昇降運転を許可することを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、かごドア下部の全閉検出が可能になる。したがって、係合部材が鉛直方向に対して傾いた状態でのかごの昇降運転を禁止することにより、係合部材と乗場ドアのロック装置とが接触することを防止でき、かごの緊急停止による乗客の不便を解消することができる。
【0017】
また、下部閉扉検出装置は、互いに近接して対向したときに、かごドアが閉扉したことを検出可能な第1検出ユニットと第2検出ユニットとから構成され、第1検出ユニットは、かごドア下部の外側端面に設置され、第2検出ユニットは、エレベータかごの外壁面において、かごドアが閉扉したときに第1検出ユニットと近接して対向する位置に設置されることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、下部閉扉検出装置の取り付けが容易であり、また、下部閉扉検出装置に乗客や運搬物等が接触することがないので、誤作動や故障が起こり難い。
【0019】
また、制御装置は、上部閉扉検出装置及び下部閉扉検出装置によりかごドアの閉扉が検出されないときには、かごドア開閉装置を制御して、かごドアの開閉を所定回数実行させることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、かごドアの下部に乗客の所持品等が挟まったときなど、エレベータの異常に起因しない閉扉不能状況を解消することができる。
【0021】
また、予め定められた警告を実行する警告手段を備え、制御装置は、上部閉扉検知センサ及び下部閉扉検知センサによりかごドアの閉扉が検知されないときには、警告手段を制御して、予め定められた警告を実行させることが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、かごドアの異常を迅速に認識して復旧作業を実施することができ、さらに、乗客の利便性を向上させることが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るエレベータによれば、かごドアの下部に隙間が存在する状態において、かごの昇降運転を確実に禁止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係るエレベータの概略構成を示す図である。
【図2】図1に示すエレベータかごにおいて、下部閉扉検知センサが設置される部分を右側面方向から見た図である。
【図3】図1に示すエレベータにおいて、かごドア閉扉時の制御手順を示すフローチャートである。
【図4】従来のかごドアをエレベータ乗場側から見た正面図である。
【図5】乗場ドアをかご側から見た正面図である。
【図6】図5において、係合部材とロック装置とが接触する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に図面を用いて本発明に係るエレベータの実施の形態につき、詳細に説明する。図1は、エレベータ30の概略構成を示す図であり、図2は、図1に示すエレベータ30のかご10において、下部閉扉検出装置である下部リミットスイッチ33が設置される部分を右側面方向から見た図である。上記のように、図5は、乗場ドア42a、42bをかご10側から見た正面図であり、エレベータ30において、エレベータ乗場40は従来と同様の構成とすることができる。なお、図4及び図5に示す構成要素と同様の構成要素には、同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0026】
エレベータ30は、図示しない昇降路内において、各階床に設けられたエレベータ乗場40の間をかご10が昇降する昇降装置であって、特に、かごドア11a、11bの下部に隙間が存在する状態でのかご10の昇降運転を禁止する機能を有する。なお、エレベータ30において、かごドア11a、11bの開閉動作及びかご10の昇降運転は、かごドア開閉制御装置31及びエレベータ制御装置32によりそれぞれ制御されている。
【0027】
昇降路は、建造物内等に鉛直方向に貫通して設けられたかご10の昇降通路である。昇降路の最下部には、ピットが設けられ、昇降路の上部には、上部機械室が設けられる。そして、上部機械室には、かご10を昇降させる巻上げ機やエレベータ制御装置32が設置されている。
【0028】
エレベータ乗場40は、かご10への乗降口である。エレベータ乗場40の壁面開口には、図5に示すように、かごドア11a、11bに追従して開閉する乗場ドア42a、42bと、乗場ドア42a、42bの周囲に設けられた三方枠41とが設置されている。また、同図に示す乗場ドア42a、42bの反対側には、かご10の到着等を表示する乗場インジケータやかご10の呼び登録を行う乗場呼び釦が設置されている。なお、乗場ドア42a、42bは、かご10の走行中においては、ロック装置49によりロックされると共に、図示しないスプリングや錘によって閉扉方向に付勢されているので、かごドア11a、11bの開閉と追従することなく、乗場ドア42a、42bが不用意に開扉することはない。
【0029】
かご10は、上部機械室に設置された巻上げ機を駆動することにより昇降路内を昇降する乗りかごであって、乗客が乗り込むことのできる室内スペースを有している。図1に示すように、かご10には、昇降運転中は閉扉し、かご10がエレベータ乗場40に着床したときに開扉するかごドア11a、11bが設置されている。また、かご10の室内には、かご10の行き先階を指定する行き先階釦やかごドア11a、11bの開閉釦等を有する図示しないかご内操作盤が設置されており、かご内操作盤の操作信号は、かごドア開閉制御装置31及びエレベータ制御装置32に伝達されるようになっている。
【0030】
かごドア11a、11bには、かごドア11a、11bの閉扉を検出する上部閉扉検出装置が設置される。エレベータ30は、上部閉扉検出装置として、1つの検出装置を備えることもできるが、上述のように、検出する閉扉状態が異なる上部ゲートスイッチ22及び上部リミットスイッチ23を設置することが好ましい。例えば、上部ゲートスイッチ22は、かごドア11a、11bの間隔が20mmとなったときの閉扉状態を検出し、上部リミットスイッチ23は、かごドア11a、11bの間隔が10mmとなったときの閉扉状態(全閉状態)を検出するように設定することができる。
【0031】
上部ゲートスイッチ22は、カム22A及び接触式スイッチ22Bの設置位置を調整することにより検出する閉扉状態を変更することができ、例えば、かごドア11a、11bの間隔が30mmとなったときに、カム22Aが接触式スイッチ22Bと接触するようにそれぞれ設置すれば、間隔30mmとなったときの閉扉状態を検出することができる。
【0032】
上部リミットスイッチ23は、上部ゲートスイッチ22と同様に、遮蔽プレート23A及び投受光器23Bの設置位置を調整することにより検出する閉扉状態を変更することができる。投受光器23Bは、投光部と受光部とから構成され、かごドア11a、11bがスライドする方向に対して、直交する方向(ほぼ直交する方向を含む)に光軸を有するように設置される。そして、かごドア11a、11bが全閉状態となったときに、投光部と受光部との間に遮蔽プレート23Aが挿入されて光軸が遮断されることにより、全閉検出が可能になる。以下では、上部ゲートスイッチ22は、全閉手前の閉扉状態を、上部リミットスイッチ23は、全閉状態を、それぞれ検出するものとして説明する。
【0033】
なお、上部ゲートスイッチ22及び上部リミットスイッチ23としては、かごドア11a、11bの閉扉を検出することができれば、種々のセンサやスイッチを使用することができる。例えば、静電容量センサ、磁気方式の近接センサや変位センサ等を使用することができ、上部ゲートスイッチ22及び上部リミットスイッチ23には、同一のセンサを適用することもできる。
【0034】
エレベータ30は、かごドア11a、11bの下部側に下部閉扉検出装置を備えることを特徴とする。下部閉扉検出装置は、かごドア11a、11bの下部における閉扉を検知する機能を有し、上部閉扉検出装置と同様のセンサやスイッチを使用することができる。なお、下部閉扉検出装置としては、上部閉扉検出装置と同様に、ゲートスイッチ及びリミットスイッチを設けることもできるが、コスト削減等の観点から全閉状態を検出する下部リミットスイッチ33のみを設置することが好ましい。
【0035】
図1に示すように、下部リミットスイッチ33は、遮蔽プレート33Aと、投受光器33Bとから構成され、かごドア11a、11bが全閉したときに、投受光器33Bの光軸を遮蔽プレート33Aが遮蔽することにより、全閉検出を行うことができる。下部リミットスイッチ33は、かごドア11a、11bに運搬物等が衝突してかごドア11a、11bに歪みが発生した場合等に、かごドア11a、11bの上部のみが閉じ、かごドア11a、11bの下部が閉じない状態において、かご10の昇降運転を禁止するために設置される。したがって、下部リミットスイッチ33の設置位置は、かごドア11a、11bの中央部よりも下部側であって、かごドア11a、11bの下端部近傍であることがより好ましい。
【0036】
図1及び図2に示すように、下部リミットスイッチ33の遮蔽プレート33Aは、かごドア11bの外側端面に設置され、投受光器33Bは、かご10の外壁面に設置される。かご10の外壁面とかごドア11a、11bとの間には、隙間が存在するので、かごドア11bと投受光器33Bとが接触することなく、また、このような位置に設置すれば、下部リミットスイッチ33に乗客や運搬物等が接触することがないので、誤作動や故障が起こり難いという利点がある。
【0037】
遮蔽プレート33Aは、プレートの厚み方向が鉛直方向に沿うように設置され、プレートの一部にかごドア11bの外側端面に締結される締結部が形成されている。遮蔽プレート33Aは、かごドア11bの外側端面から投受光器33Bが設置されるかご10の外壁面の方向に突出している。投受光器23Bは、投光部と受光部とから構成され、鉛直方向に光軸を有するように設置されると共に、かごドア11a、11bが全閉したときに、投受光器33Bの投光部と受光部との間に遮蔽プレート33Aが挿入されて光軸を遮蔽する位置に、投受光器33Bが設置される。
【0038】
遮蔽プレート33Aとしては、ゴム等の弾性体からなるプレートを用いることができる。弾性体からなるプレートを使用すれば、図6に示すように、かごドア11a、11bが傾いて遮蔽プレート33Aが投受光器33Bに衝突した場合であっても、投受光器33Bの損傷を防止することができる。なお、上部リミットスイッチ23の遮蔽プレート23Aについても、弾性体からなるプレートを用いることができる。
【0039】
また、下部リミットスイッチ33は、かごドア11a、11b同士が対向する側の端面である対向端面に設置することもできる。例えば、下部リミットスイッチ33として、2つのセンサ構成部材が互いに近接したときにON操作される近接センサを用いて、各センサ構成部材をかごドア11a及びかごドア11bの対向端面にそれぞれ設置することができる。
【0040】
また、下部リミットスイッチ33は、対向端面近傍のかごドア11a、11bの外面に設置することもできる。この場合には、遮蔽プレート33A及び投受光器33Bを、かごドア11a及びかごドア11bにそれぞれ設置する構成とすることができる。具体的に、遮蔽プレート33Aは、かごドア11aからかごドア11bの方向に突出して設置され、かごドア11a、11bが全閉されたときには、かごドア11bに設置された投受光器33Bの光軸を遮蔽する。なお、乗場ドア42a、42bが存在するため、かごドア11a、11bの外面に乗客等が接触することはないが、遮蔽プレート33Aは、かごドア11b側に突出しているため、乗客等と接触する可能性があり、ゴム等の弾性体から構成されることが好ましい。
【0041】
エレベータ30は、上部閉扉検出装置である上部ゲートスイッチ22、上部リミットスイッチ23及び下部閉扉検出装置である下部リミットスイッチ33による検出情報等に基いて、かごドア11a、11bの開閉動作を制御するかごドア開閉制御装置31を備える。具体的に、かごドア開閉制御装置31は、上部閉扉検出装置及び下部閉扉検出装置による検出情報やかご内制御盤の操作信号等に基いて、ドア開閉装置12のモータ19の駆動状態を制御する装置であって、開閉手段、閉扉判定手段、開閉繰り替えし手段、及び警告作動手段を有する。
【0042】
なお、かごドア開閉制御装置31は、CPUと、制御パラメータ等の入力に用いられる入力装置と、入力した制御パラメータや制御プログラム等を記憶する記録装置と、入出力ポートなどを備える装置であって、コンピュータによって構成することができる。上記各手段の機能は、ソフトウェアを実行することで実現でき、具体的には、対応するかごドア開閉制御プログラムを実行することにより実現できる。また、かごドア開閉制御装置31は、上部機械室に設置されたエレベータ制御装置32と接続されており、エレベータ制御装置32との間で制御指令や信号の送受信が行われる。
【0043】
エレベータ制御装置32は、エレベータ30の機械的要素の動作を統一的に制御する装置であって、例えば、乗場呼び釦の操作信号やかごドア開閉制御装置31からの信号に応じて、巻上げ機の駆動を制御することによりかご10の昇降運転をコントロールする機能を有する。なお、エレベータ制御装置32は、かごドア開閉制御装置31と同様のコンピュータによって構成することができる。
【0044】
かごドア開閉制御装置31の開閉手段は、かごドア開閉装置12のモータ19の駆動状態を制御して、かごドア11a、11bの開閉を制御する機能を有する。具体的に、開閉手段は、かごドア11a、11bが開扉された状態において、かご内操作盤の開閉釦が操作されたとき又は所定時間が経過したときには、操作信号等を受信して、モータ19に対して、かごドア11a、11bの閉扉方向にモータ19を回転駆動させる閉扉駆動指令を出力する。一方、かご10がエレベータ乗場40に着床したときには、エレベータ制御装置32から着床信号を受信して、モータ19に対して、かごドア11の開扉方向にモータ19を回転駆動させる開扉駆動指令を出力する。また、開閉手段は、閉扉判定手段等の指令に基いて、閉扉駆動指令等を出力する。
【0045】
閉扉判定手段は、閉扉駆動指令を出力したときに、上部ゲートスイッチ22、上部リミットスイッチ23及び下部リミットスイッチ33による検知信号を取得して、かごドア11a、11bの閉扉がなされたことを判定する機能を有する。閉扉判定手段は、上部ゲートスイッチ22による検知信号を取得したときには、開閉手段を介して、モータ19の出力を上昇させてかごドア11a、11bの全閉動作を実行させる全閉駆動指令を出力する。また、上部リミットスイッチ23及び下部リミットスイッチ33による検知信号を取得したときには、かごドア11a、11bが全閉状態であると判定して、昇降運転許可信号をエレベータ制御装置32に出力する。一方、閉扉駆動指令を出力してから予め定められた所定時間内に、検知信号を受信しない場合には、閉扉判定手段は、昇降運転許可信号を出力しない。なお、開閉手段を介して指令を出力するとは、閉扉判定手段からかごドア11a、11bの開閉動作に係る指令が開閉手段に対して出力され、開閉手段によって指令が翻訳されてモータ19に出力されることを意味する(以下同様)。
【0046】
エレベータ制御装置32は、その他の昇降運転要件が満たされている場合において、昇降運転許可信号を受信したときには、巻き上げ機を駆動させてかご10の昇降運転を開始する。一方、昇降運転許可信号を受信しない限り、かご10の昇降運転は開始されないので、かごドア11a、11bの下部に隙間が存在して、係合部材17が鉛直方向に対して傾いた状態におけるかご10の昇降運転を禁止することができる。
【0047】
開閉繰り返し手段は、閉扉判定手段による昇降運転許可信号が出力されないときに、かごドア11a、11bを所定回数開閉させる機能を有する。開閉繰り替えし手段による開閉動作によって、かごドア11a、11bの下部に乗客の所持品等が挟まったときなど、エレベータ30の異常に起因しない閉扉不能状況を解消することが可能になる。具体的に、開閉繰り替えし手段は、開閉手段を介して、かごドア11a、11bの開閉を実行させる開閉繰り返し指令を出力する。なお、所定回数としては、3回程度であることが好ましく、また、開閉動作が繰り返される途中において、閉扉判定手段により検出信号が取得されたときには、開閉動作は中止される。
【0048】
警告作動手段は、閉扉判定手段による昇降運転許可信号が出力されないときに、かごドア11a、11bに異常があるものと判定して、警告手段に対して、予め定められた警告を実行させる機能を有する。エレベータ30は、予め定められた警告を実行する警告手段として、例えば、管理センターへの緊急連絡システム、警告灯、及び警報ブザー等を備えることができる。これらの警告手段は、エレベータ30の各機械的要素の異常警告時にも使用できるため、エレベータ制御装置32の制御下におくことができ、警告作動手段は、エレベータ制御装置32に異常信号を出力することにより、エレベータ制御装置32を介して警告を実行させることができる。なお、開閉繰り返し手段及び警告作動手段は、閉扉判定手段から指令を受けて又は独自に閉扉検出信号等を取得して作動する設定とすることができる。
【0049】
エレベータ制御装置32は、警告作動手段から異常信号を受けたときには、例えば、緊急連絡システムを制御して、管理センターへの緊急連絡を実行させる。なお、異常信号が出力されたときには、昇降運転許可信号は出力されないので、かご10の昇降運転は禁止される。
【0050】
上記構成のエレベータ30の作用、特にかごドア開閉制御装置31の機能について、図3を用いて詳細に説明する。ここで、図3は、かごドア11a、11bの閉扉時の制御手順を示すフローチャートであり、点線で囲んだ手順は、かごドア開閉制御装置31以外の機能によって実行される手順を示している。なお、以下では、かごドア11a、11bが開扉された状態において、かご内操作盤の開閉釦が操作された場合について説明する。
【0051】
まず初めに、かごドア開閉制御装置31は、開閉釦の操作信号を受信して、かごドア開閉装置12のモータ19に対して、閉扉駆動指令を出力する(S10)。そして、モータ19は、閉扉駆動指令に基いて駆動して、かごドア11a、11bの閉扉が開始される(S11)。
【0052】
かごドア11a、11bの閉扉が開始されると、まず、上部ゲートスイッチ22による閉扉検出がなされた否かを判定する(S12)。そして、上部ゲートスイッチ22による検知信号を受信したときには、開閉手段を介して、モータ19の出力を上昇させる全閉動作指令をモータ19に対して出力する(S15)。S12及びS15の手順は、閉扉判定手段の機能によって実行される。
【0053】
一方、閉扉駆動指令を出力後に所定時間経過しても、上部ゲートスイッチ22による検知信号を取得できないときには、例えば、運搬物等がかごドア11a、11bに挟まっていることが想定されるので、開閉手段を介して、開扉駆動指令を出力することにより(S13)、かごドア11a、11bを開扉させる(S14)。
【0054】
全閉動作指令に基いて、全閉動作が実行されると(S16)、閉扉判定手段は、上部リミットスイッチ23及び下部リミットスイッチ33による全閉検出がなされたか否かを判定する(S17)。そして、上部リミットスイッチ23及び下部リミットスイッチ33から検出信号を受信したときには、全閉状態であると判定して、昇降運転許可信号をエレベータ制御装置32に出力する(S21)。
【0055】
一方、全閉動作指令を出力後に所定時間経過しても、上部リミットスイッチ23及び下部リミットスイッチ33から検出信号を取得できないときには、開閉手段を介して、かごドア11a、11bの開閉を実行させる開閉繰り返し指令を出力して(S18)、かごドア11の開閉動作が実行される(S19)。そして、再び上部リミットスイッチ23及び下部リミットスイッチ33による閉扉検出がなされたか否かを判定して(S20)、両スイッチから検出信号を受信したときには、全閉状態であると判定して、昇降運転許可信号をエレベータ制御装置32に出力する(S21)。
【0056】
エレベータ制御装置32は、昇降運転許可信号を受信したときには、その他の昇降運転要件が満たされていることを条件として、かごの昇降運転を開始する(S22)。一方、S21において、全閉動作指令を出力後に所定時間経過しても、検出信号を取得できないときには、警告作動手段は、かごドア11a、11bに異常があるものと判定して、異常信号をエレベータ制御装置32に出力して(S23)、エレベータ制御装置32を介して警告を実行させる(S24)。なお、異常信号が出力されるときには、昇降運転許可信号は出力されないので、かご10の昇降運転は禁止される。
【0057】
なお、S10の手順は、開閉手段、S18の手順は、開閉繰り返し手段、S23の手順は、警告作動手段、その他の手順は、閉扉判定手段の機能によって実行される。
【0058】
以上のように、エレベータ30は、上部閉扉検出装置である上部ゲートスイッチ22と、上部リミットスイッチ23と、下部閉扉検出装置である下部リミットスイッチ33とを備え、かごドア開閉制御装置31は、上部閉扉検出装置及び下部閉扉検出装置によりかごドア11の閉扉が検出されたときに、かご10の昇降運転許可信号をエレベータ制御装置32に出力するので、かごドア11a、11bの下部の全閉検出が可能になる。したがって、係合部材17が鉛直方向に対して傾いた状態でのかご10の昇降運転を禁止することにより、係合部材17と乗場ドア42a、42bのロック装置49とが接触することを防止でき、かご10の緊急停止による乗客の不便を解消することが可能になる。
【符号の説明】
【0059】
10 エレベータかご、11a、11b かごドア、12 かごドア開閉装置、13 かごドア開閉制御装置、14a、14b ハンガープレート、15a、15b ハンガーローラ、16a、16b ドアアーム、17 係合部材、17A、17B 係合バー、18 かごドアレール、19 モータ、20 駆動プーリ、21 駆動アーム、22 上部ゲートスイッチ、22A カム、22B 接触式スイッチ、23 上部リミットスイッチ、23A 遮蔽プレート、23B 投受光器、24 かごドアガイドレール、30 エレベータ、31 かごドア開閉制御装置、32 エレベータ制御装置、33 下部リミットスイッチ、33A 遮蔽プレート、33B 投受光器、40 エレベータ乗場、41 三方枠、42a、42b 乗場ドア、43a、43b ハンガープレート、44a、44b ハンガーローラ、45 乗場ドアレール、46 乗場ドアガイドレール、47 係止片、48 係止部、49 ロック装置、50 第1当接部、51 第2当接部、52 連動機構、53 連動ベルト、54 滑車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータかごに設置されたかごドアと、
かごドアの上部に設置され、かごドアの閉扉を検出する上部閉扉検出装置と、
エレベータかごの上部に設置され、かごドアを開閉するかごドア開閉装置と、
かごドア開閉装置の駆動を制御する制御装置と、
を備えたエレベータにおいて、
かごドアの下部に設置され、かごドアの閉扉を検知する下部閉扉検出装置を備え、
制御装置は、上部閉扉検出装置及び下部閉扉検出装置によりかごドアの閉扉が検出されたときに、エレベータかごの昇降運転を許可することを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータにおいて、
下部閉扉検出装置は、互いに近接して対向したときに、かごドアが閉扉したことを検出可能な第1検出ユニットと第2検出ユニットとから構成され、
第1検出ユニットは、かごドア下部の外側端面に設置され、
第2検出ユニットは、エレベータかごの外壁面において、かごドアが閉扉したときに第1検出ユニットと近接して対向する位置に設置されることを特徴とするエレベータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエレベータにおいて、
制御装置は、上部閉扉検出装置及び下部閉扉検出装置によりかごドアの閉扉が検出されないときには、かごドア開閉装置を制御して、かごドアの開閉を所定回数実行させることを特徴とするエレベータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載のエレベータにおいて、
予め定められた警告を実行する警告手段を備え、
制御装置は、上部閉扉検知センサ及び下部閉扉検知センサによりかごドアの閉扉が検知されないときには、警告手段を制御して、予め定められた警告を実行させることを特徴とするエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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